(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20240813BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/045 613
A61B1/00 680
A61B1/00 712
(21)【出願番号】P 2020035625
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-327623(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122586(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0012777(US,A1)
【文献】特開2012-115531(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104190(WO,A1)
【文献】特開2019-037789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/045
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡側コネクタ部を有する内視鏡装置と、
プロセッサ側コネクタ部を有するプロセッサと、
前記内視鏡装置の先端部に配置された撮像素子からの映像信号の減衰を補正する減衰補正部と、を備え
、
前記撮像素子からの映像信号は、MIPI D-PHY規格に則った信号を含み、
前記減衰補正部は、
前記映像信号をローパワーモード信号とハイスピードモード信号とに分離する分離部と、
前記ハイスピードモード信号の減衰を補正するイコライザ部と、
前記映像信号から抽出したローパワーモード信号と、前記減衰が補正されたハイスピードモード信号とを多重化して、前記プロセッサに出力するドライバ信号処理部と、
を含む内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記減衰補正部は、前記内視鏡側コネクタ部内に設けられている、内視鏡システム。
【請求項3】
請求項
1において、
前記プロセッサは、前記映像信号をMIPI D-PHY規格の信号として処理する、内視鏡システム。
【請求項4】
請求項
1から3の何れか1項において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続された第1種抵抗と、当該第1種抵抗と直列に接続され前記第1種抵抗を通過した信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するコンパレータと、を備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザを備える、内視鏡システム。
【請求項5】
請求項
1から3の何れか1項において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され前記映像信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するコンパレータを備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され、前記コンパレータからの前記ローパワーモード信号の抽出のタイミングで閉じるスイッチと、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザと、を備える、内視鏡システム。
【請求項6】
請求項
1から3の何れか1項において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続された第1種スイッチと、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され前記映像信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するコンパレータと、を備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続された第2種スイッチと、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザと、を備え、
前記ドライバ信号処理部は、前記第1種スイッチをON、前記第2種スイッチをOFFに制御して、前記撮像素子から入力されてきた映像信号から前記ローパワーモード信号の期間と前記ハイスピードモード信号の期間とを認識し、当該期間の認識後は、前記ローパワーモード信号の期間では前記第1種スイッチをON、前記第2種スイッチをOFFに、前記ハイスピードモード信号の期間では前記第1種スイッチをOFF、前記第2種スイッチをONに制御する、内視鏡システム。
【請求項7】
請求項
1から3の何れか1項において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続されたトランジスタと、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され前記映像信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するFETと、を備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続されたスイッチと、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザと、を備え、
前記ドライバ信号処理部は、前記スイッチをOFFに制御して、前記撮像素子から入力されてきた映像信号から前記ローパワーモード信号の期間と前記ハイスピードモード信号の期間とを認識し、当該期間の認識後は、前記ローパワーモード信号の期間では前記スイッチをOFFに、前記ハイスピードモード信号の期間では前記スイッチをONに制御する、内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、内視鏡システムは、内視鏡装置(スコープ)と、内視鏡装置を接続するプロセッサとによって構成されている。近年では、例えば、MIPI D-PHYという信号伝送規格に則った撮像ユニット(イメージセンサ)を用いて撮像した内視鏡画像をプロセッサまで伝送する試みがなされている。
【0003】
しかし、MIPI D-PHYは、数10cmの伝送距離を念頭に決められた規格であるため、内視鏡スコープの挿入部を介して撮像ユニットからプロセッサまでの長い伝送距離を担保するものではない。このため、例えば、特許文献1に開示されているように、内視鏡装置の挿入部や操作部に、MIPI D-PHYの信号をそれよりも高速な信号に変換するための中継基板を配置し、プロセッサまでの長い距離を信号伝送可能なように構成する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内視鏡装置の挿入部は屈曲するため、スペース的にも中継基板を配置することは避けたい。また、操作部も様々な管路等が配置されているため、中継基板を配置することは構造上難しい。
【0006】
このような制約を考えると、MIPI D-PHYによる信号をそのまま伝送してプロセッサで処理できるようにするのが望ましい。この点、上述のように、MIPI D-PHYによる信号をそのまま伝送すると、長い距離の伝送によって信号が減衰してしまい、適切に内視鏡画像をプロセッサ側で処理することができない。
【0007】
本開示は、このような状況に鑑みて、MIPI D-PHY規格によって撮像ユニットから出力される映像信号(内視鏡画像)を信号変換せずに処理することを可能にする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本実施形態は、内視鏡側コネクタ部を有する内視鏡装置と、プロセッサ側コネクタ部を有するプロセッサと、内視鏡装置の先端部に配置された撮像素子からの映像信号の減衰を補正する減衰補正部と、を備える内視鏡システムを提案する。
【0009】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。
本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではないことを理解する必要がある。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、MIPI D-PHY規格によって撮像ユニットから出力される映像信号(内視鏡画像)を信号変換せずに処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の内視鏡システムの全体外観構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態の内視鏡システムの概略内部構成例を示す図である。
【
図3】スコープコネクタ400が備えるスコープコネクタ回路401の内部構成例を示す図である。
【
図4】スコープコネクタ回路401で取り扱う信号の例を示す図である。
図4Aは、撮像ユニット103の出力信号(MIPI D-PHY信号:映像信号)の例を示している。
図4Bは、信号ケーブルの中を伝送されて来てスコープコネクタ回路401に入力される信号(分離前)の例を示している。
図4Cは、分離後の信号(LPmode信号)の例を示している。
図4Dは、分離後の信号(HSmode信号)であって、イコライザ処理後の信号の例を示している。
【
図5】信号分離部4011の内部構成例1を示す図である。
【
図6】信号分離部4011の内部構成例2を示す図である。
【
図7】信号分離部4011の内部構成例3を示す図である。
【
図8】信号分離部4011の内部構成例4を示す図である。
【
図9】信号分離部4011の内部構成例4におけるトランジスタ801および802、およびFET803および804の詳細な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本開示の一実施形態として内視鏡システムを例に取り説明する。
【0013】
内視鏡システムにおける観察の対象部位は、例えば、呼吸器等、消化器等である。呼吸器等は、例えば、肺、気管支、耳鼻咽喉である。消化器等は、例えば、大腸、小腸、胃、食道、十二指腸、子宮、膀胱等である。上述のような対象部位を観察する場合、特定の生体構造を強調した画像の活用がより効果的である。
【0014】
<内視鏡システムの構成>
図1は、本実施形態の内視鏡システムの全体外観例を示す図であり、
図2は、本実施形態の内視鏡システムの概略内部構成例を示す図である。内視鏡システム1は、内視鏡装置(電子スコープ)100と、プロセッサ200と、モニタ300とを備えている。なお、内視鏡装置100のプロセッサ側端部には、本実施形態の特徴に係るコネクタ回路を含むスコープコネクタ(以下、単に「コネクタ」と言うこともある)400が設けられている。
【0015】
内視鏡装置100は、被検体の内部に挿入される細長い管状の挿入部11を備えている。内視鏡装置100は、後述する光源装置201からの照射光を導くためのLCB(Light Carrying Bundle)101と、LCB101の出射端に設けられた配光レンズ102と、対物レンズ(図示せず)を介して被照射部分(観察部位)からの戻り光を受光する撮像ユニット103と、撮像ユニット103を駆動するドライバ信号処理回路105と、第1メモリ106とを備えている。
【0016】
光源装置201からの照射光は、LCB101内に入射し、LCB101内で全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB101内を伝播した照射光は、挿入部11の先端部12内に配置されたLCB101の出射端から出射され、配光レンズ102を介して観察部位を照射する。被照射部分からの戻り光は、対物レンズを介して撮像ユニット103の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0017】
撮像ユニット103は、挿入部11の先端部12内に配置されており、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。撮像ユニット103は、受光面上の各画素で結像した光学像(生体組織からの戻り光)を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの画像信号を生成して出力する。なお、撮像ユニット103は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。撮像ユニット103から出力された信号は、後述するように、スコープコネクタ400に設けられたスコープコネクタ回路401によって処理される。
【0018】
プロセッサ200は、内視鏡装置100からの信号を処理する信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を内視鏡装置100を介して照射する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。プロセッサ200は、光源装置201と、システムコントローラ202と、光学フィルタ203と、光学フィルタドライバ204と、前段信号処理回路205と、色変換回路206と、後段信号処理回路207と、第2メモリ208とを備えている。
【0019】
プロセッサ200は、図示しない操作パネルを備えてもよい。操作パネルの構成には種々の形態がある。操作パネルの具体的構成としては、例えば、プロセッサ200のフロント面に実装された機能毎のハードウェアキーやタッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組合せ等が考えられる。施術者は、操作パネルによって後述するモード切替操作が可能となる。
【0020】
システムコントローラ202は、図示省略のメモリに格納された各種プログラムを実行し、内視鏡システム1全体を統合的に制御する。システムコントローラ202は、制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている内視鏡装置100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。また、システムコントローラ202は、上述の操作パネルに接続されてもよい。システムコントローラ202は、操作パネルより入力される施術者からの指示に応じて、内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。
【0021】
光源装置201としては、例えば、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプやLED(Light Emitting Diode)を用いることができる。光源装置201からの照射光は、主に可視光領域から不可視である赤外光領域に広がるスペクトルを持つ光(又は少なくとも可視光領域を含む光)である。光源装置201からの照射光は、光学フィルタ203に入射する。
【0022】
内視鏡装置100とプロセッサ200との間のデータ通信は、有線の電気通信方式を用いてもよいし、光無線通信方式を用いてもよい。
【0023】
図2に示されるように、内視鏡装置100とプロセッサ200は、スコープコネクタ400を介して接続される。コネクタ400は、プロセッサ200から内視鏡装置100へと続くLCB101の一部を構成するLCBと、スコープコネクタ回路401と、を備える。スコープコネクタ回路401は、詳細については後述するが、撮像ユニット103から出力されるMIPI D-PHY信号(映像信号)に含まれるLP(Low Power)mode信号と、HS(High Speed)mode信号を分離し、内視鏡装置100の中のケーブル伝送によって減衰した映像信号を補正(イコライザによる増幅と、センサ固有のノイズ補正)し、再度、LP(Low Power)mode信号と補正されたHS(High Speed)mode信号を多重化してプロセッサ200に供給する。また、本実施形態では、スコープコネクタ回路401は、スコープコネクタ400内に設けられているが、必ずしもスコープコネクタ400の内部に設けられなくても良い。例えば、プロセッサ200側のコネクタ部やプロセッサ200の内部にスコープコネクタ回路401に相当する回路を設けてもよい。
【0024】
<スコープコネクタ回路401の内部構成例>
図3は、スコープコネクタ400が備えるスコープコネクタ回路401の内部構成例を示す図である。
図4は、スコープコネクタ回路401で取り扱う信号の例を示す図である。
図4Aは、撮像ユニット103の出力信号(MIPI D-PHY信号:映像信号)の例を示している。
図4Bは、信号ケーブルの中を伝送されて来てスコープコネクタ回路401に入力される信号(分離前)の例を示している。
図4Cは、分離後の信号(LPmode信号)の例を示している。
図4Dは、分離後の信号(HSmode信号)であって、イコライザ処理後の信号の例を示している。
【0025】
スコープコネクタ回路401は、撮像ユニット103から出力され、信号ケーブルの中を伝送されてきたMIPI D-PHY信号を、LPmode信号とHSmode信号に分離する信号分離部4011と、分離して得られたHSmode信号を増幅してなまったゲインを補正するイコライザ部4012と、例えばFPGAで構成され、撮像ユニット103固有のノイズ(点傷)を補正したり、LPmode信号と補正後のHSmode信号を多重化してプロセッサ200に出力したりするドライバ信号処理部4013と、撮像ユニット103のレジスタ設定など(例えば、スコープが挿入された体内の明暗によってシャッタースピードやゲインを変える設定)を行う制御部4014と、撮像ユニット103の初期設定値や、ドライバ信号処理部4013のコンフィグレーションデータなどを格納するメモリ4015と、を備えている。なお、撮像ユニット103からの映像レーン数(ch数)は、撮像素子の解像度によって決められている。また、制御部4014が実行する処理をドライバ信号処理部4013に実行させてもよい。
【0026】
撮像ユニット103から出力される信号(MIPI D-PHY信号)は、例えば、LPmode(ローパワーモード)信号の後にHSmode(ハイスピードモード)信号が続いて伝送される形態の信号となっている。
図4Aに示されるように、LPmode(ローパワーモード)信号は、HSmode(ハイスピードモード)信号よりもレベル(電圧振幅)がはるかに大きく、伝送レートが遅い。伝送レートが遅いので、LPmode(ローパワーモード)信号は、HSmode(ハイスピードモード)信号よりもケーブル伝送による信号レベルの劣化が少ないと言える。
【0027】
内視鏡装置100の信号ケーブル(MIPI D-PHY規格によって推奨される距離よりも長い距離となる)の中をMIPI D-PHY信号が伝送されてくると、
図4Bに示すように、LPmode(ローパワーモード)信号およびHSmode(ハイスピードモード)信号はなまってしまう。LPmode(ローパワーモード)信号に関しては、多少なまったとしても、信号レベルが大きいため、コンパレータ閾値レベル(LPmode信号を峻別・抽出するための閾値)よりも大きいため、ケーブル伝送の影響はほとんど受けないことが分かる。一方、HSmode(ハイスピードモード)信号に関しては、それ自体信号レベルが小さいので、ケーブル伝送によってなまってしまい、後段のプロセッサではそのまま信号処理することは困難になってしまう。このため、本実施形態では、イコライザ部4012によって、なまったHSmode(ハイスピードモード)信号を増幅して後段の信号処理に影響を与えないようにレベル補正が行われる。
【0028】
信号分離部4011によって分離されて得られたLPmode(ローパワーモード)信号は、
図4Cに示すように、ケーブル伝送によって多少なまったとしても(
図4B)、適切なコンパレータ閾値レベルを設定することにより、きれいな矩形波として抽出することができる。
【0029】
信号分離部4011によって分離された後、イコライザ部4012によって補正処理されたHSmode(ハイスピードモード)信号は、
図4Dに示すように、分離前のMIPI D-PHY信号(
図4A)のHSmode信号部分のように、レベルが補正され、くっきりとした差動信号となっている。
【0030】
<信号分離部4011の内部構成例>
図5から
図9は、信号分離部4011の内部構成例に係る図である。
【0031】
(i)構成例1
図5に示す内部構成例による信号分離部4011は、各映像ch(Data0-Pch, Data0-Nch, …, DataN-Pch, DataN-Nch)とそれぞれ直列に接続された複数の抵抗LP_501および502と、所定のコンパレータ閾値レベルよりも大きい信号を抽出して(閾値よりも大きい信号を1、それよりも小さい信号値を0とする)出力する複数のコンパレータ503および504と、各映像chと並列に接続された複数の抵抗HS505および507と、抵抗HS505と抵抗HS507の間に映像chと並列に接続され、LPmode(ローパワーモード)信号をカットし、ケーブル伝送によって減衰したHSmode(ハイスピードモード)信号を補正(増幅)するイコライザ506と、を備えている。
【0032】
抵抗LP501および502の抵抗値は、抵抗HS505および507よりの抵抗値も大きく、例えば100Ω以上とすることができる。LPmode経路のインピーダンスをHSmode経路よりも高くすることにより、HSmode信号伝送時の信号品質が低下することを防止することができる。また、HS抵抗505および507は必須の構成要素ではないが、これらを配置することにより、イコライザ506の入力側のインピーダンスと出力側(ドライバ信号処理部(例えば、FPGA)4013の入力側)のインピーダンスとを整合させることが可能となる。
【0033】
コンパレータ503および504のコンパレータ閾値は、HSmodeの電圧振幅に基づいて任意に(予め)決めることができる。例えば、220mV、385mV、550mVとすることができる。コンパレータ閾値以上の信号がLPmode信号として抽出され、
図4Cのようなパルス信号がドライバ信号処理部4013に供給される。
【0034】
(ii)構成例2
図6に示す内部構成例による信号分離部4011は、各映像ch(Data0-Pch, Data0-Nch, …, DataN-Pch, DataN-Nch)とそれぞれ直列に接続され、所定のコンパレータ閾値レベルよりも大きい信号を抽出して(閾値よりも大きい信号を1、それよりも小さい信号値を0とする)出力する複数のコンパレータ503および504と、各映像chと直列に接続され、コンパレータ503および504の出力によって作動する複数のスイッチ601および602と、スイッチ601および602に並列に接続された複数の抵抗HS505および507と、抵抗HS505と抵抗HS507の間に映像chと並列に接続され、ケーブル伝送によって減衰したHSmode(ハイスピードモード)信号を補正(増幅)するイコライザ506と、を備えている。
【0035】
スイッチ601および602は、コンパレータ503および504によってLPmode信号の抽出が完了した後、
図4CのLPmode信号の立下りのタイミングでONするように制御される。スイッチ601および602がONの状態になると、イコライザに信号(
図4BのHSmode信号に相当する部分)が供給され、減衰が補正(増幅)される。
なお、コンパレータ閾値や抵抗HS505および507については構成例1で説明した通りである。
【0036】
(iii)構成例3
図7に示す内部構成例による信号分離部4011は、各映像ch(Data0-Pch, Data0-Nch, …, DataN-Pch, DataN-Nch)とそれぞれ直列に接続された複数のLPmode用スイッチSW_LP701および702と、所定のコンパレータ閾値レベルよりも大きい信号を抽出して(閾値よりも大きい信号を1、それよりも小さい信号値を0とする)出力する複数のコンパレータ503および504と、各映像chと直列に接続されたHSmode用スイッチSW_HS703および704と、SW_HS703および704に並列に接続された複数の抵抗HS505および507と、抵抗HS505と抵抗HS507の間に映像chと並列に接続され、ケーブル伝送によって減衰したHSmode(ハイスピードモード)信号を補正(増幅)するイコライザ506と、を備えている。
【0037】
ドライバ信号処理部4013(あるいは別途設けたCPUなどの制御部(図示せず))は、撮像ユニット103からの映像信号を受信した最初のタイミング(初期動作期間)では、受信した映像信号(MIPI D-PHY信号)を全てLPmode経路側に供給するように、SW_LP701および702をON、SW_HS703および704をOFFに制御する。そして、ドライバ信号処理部4013は、この初期動作期間に取得した映像信号から、LPmode信号の出現タイミング(出現位置)を取得する。映像信号(MIPI D-PHY信号)の一周期の期間は予め分かっているので、初期動作期間以降の動作期間において、ドライバ信号処理部4013は、LPmode信号が到達する期間はSW_LP701および702をON、SW_HS703および704をOFFに制御し、HSmode信号が到達する期間はSW_LP701および702をOFF、SW_HS703および704をONに制御する。
【0038】
上記スイッチング動作によって取得されたLPmode経路のLPmode信号は、コンパレータ503および504によって、整形され、ドライバ信号処理部4013に供給される。一方、上記スイッチング動作によって取得されたHSmode経路のHSmode信号は、イコライザ506によって減衰が補正され、ドライバ信号処理部4013に供給される。
なお、コンパレータ閾値や抵抗HS505および507については構成例1で説明した通りである。
【0039】
(iv)構成例4
図8に示す内部構成例による信号分離部4011は、各映像ch(Data0-Pch, Data0-Nch, …, DataN-Pch, DataN-Nch)とそれぞれ直列に接続されたトランジスタ801および802(構成例3(
図7)のLPmode用スイッチSW_LP701および702の代わりにトランジスタを用いている)と、各トランジスタ801あるいは802と直列に接続されたFET803および804(コンパレータ503および504の代わりにFETを用いている)と、各映像chと直列に接続されたHSmode用スイッチSW_HS805および806と、SW_HS805および806に並列に接続された複数の抵抗HS505および507と、抵抗HS505と抵抗HS507の間に映像chと並列に接続され、ケーブル伝送によって減衰したHSmode(ハイスピードモード)信号を補正(増幅)するイコライザ506と、を備えている。
【0040】
ドライバ信号処理部4013(あるいは別途設けたCPUなどの制御部(図示せず))は、撮像ユニット103からの映像信号を受信した最初のタイミング(初期動作期間)では、受信した映像信号(MIPI D-PHY信号)を全てLPmode経路側に供給するように、SW_HS805および806をOFFに制御する。そして、ドライバ信号処理部4013は、この初期動作期間に取得した映像信号から、LPmode信号の出現タイミング(出現位置)を取得する。映像信号(MIPI D-PHY信号)の一周期の期間は予め分かっているので、初期動作期間以降の動作期間において、ドライバ信号処理部4013は、LPmode信号が到達する期間はSW_HS85および806をOFFに制御し、HSmode信号が到達する期間はSW_HS805および806をONに制御する。
【0041】
上記スイッチング動作によって取得されたLPmode経路のLPmode信号は、FET803および804によって整形され、ドライバ信号処理部4013に供給される。一方、上記スイッチング動作によって取得されたHSmode経路のHSmode信号は、イコライザ506によって減衰が補正され、ドライバ信号処理部4013に供給される。
なお、コンパレータ閾値や抵抗HS505および507については構成例1で説明した通りである。
【0042】
図9は、構成例4におけるトランジスタ801および802、およびFET803および804の詳細な構成を示す図である。トランジスタ801および802、およびFET803および804を組み合わせることにより、LPmode信号(パルス)を抽出することができるようになる。
【0043】
<本実施形態の効果>
本実施形態によれば、内視鏡装置100のスコープコネクタ400にスコープコネクタ回路401を設け、撮像ユニット(撮像素子)103からの映像信号(MIPI D-PHY規格に基づく信号)を信号処理する。具体的には、スコープコネクタ回路(減衰補正部)401は、MIPI D-PHY信号に含まれるLPmode信号とHSmode信号を分離し、HSmode信号の減衰(ケーブル伝送によって生じた減衰)を補正し、分離したLPmode信号と減衰補正したHSmode信号とを多重化して(MIPI D-PHY規格の信号フォーマットに戻す)、プロセッサ200に出力する。このようにすることにより、プロセッサ200は、MIPI D-PHY規格の信号を他のフォーマットに変換せずにそのまま処理することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態では、内視鏡装置(スコープ)100の挿入部や内視鏡操作部以外の場所にスコープコネクタ400内に減衰補正部を設けている(実施形態では、スコープコネクタ400内に設けるが、それ以外の場所、例えば、プロセッサ側のコネクタ部やプロセッサ200内部でもよい)ので、内視鏡装置の挿入部や操作部のサイズを大きくする必要もない。
【0045】
<本開示の特定事項>
(1)特定事項1
内視鏡側コネクタ部を有する内視鏡装置と、
プロセッサ側コネクタ部を有するプロセッサと、
前記内視鏡装置の先端部に配置された撮像素子からの映像信号の減衰を補正する減衰補正部と、
を備える内視鏡システム。
【0046】
(2)特定事項2
特定事項1において、
前記減衰補正部は、前記内視鏡側コネクタ部内に設けられている、内視鏡システム。
【0047】
(3)特定事項3
特定事項1または2において、
前記撮像素子からの映像信号は、MIPI D-PHY規格に則った信号を含み、
前記減衰補正部は、
前記映像信号をローパワーモード信号とハイスピードモード信号とに分離する分離部と、
前記ハイスピードモード信号の減衰を補正するイコライザ部と、
前記映像信号から抽出したローパワーモード信号と、前記減衰が補正されたハイスピードモード信号とを多重化して、前記プロセッサに出力するドライバ信号処理部と、
を含む内視鏡システム。
【0048】
(4)特定事項4
特定事項3において、
前記プロセッサは、前記映像信号をMIPI D-PHY規格の信号として処理する、内視鏡システム。
【0049】
(5)特定事項5
特定事項3または4において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続された第1種抵抗と、当該第1種抵抗と直列に接続され前記第1種抵抗を通過した信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するコンパレータと、を備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザを備える、内視鏡システム。
【0050】
(6)特定事項6
特定事項3または4において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され前記映像信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するコンパレータを備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され、前記コンパレータからの前記ローパワーモード信号の抽出のタイミングで閉じるスイッチと、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザと、を備える、内視鏡システム。
【0051】
(7)特定事項7
特定事項3または4において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続された第1種スイッチと、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され前記映像信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するコンパレータと、を備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続された第2種スイッチと、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザと、を備え、
前記ドライバ信号処理部は、前記第1種スイッチをON、前記第2種スイッチをOFFに制御して、前記撮像素子から入力されてきた映像信号から前記ローパワーモード信号の期間と前記ハイスピードモード信号の期間とを認識し、当該期間の認識後は、前記ローパワーモード信号の期間では前記第1種スイッチをON、前記第2種スイッチをOFFに、前記ハイスピードモード信号の期間では前記第1種スイッチをOFF、前記第2種スイッチをONに制御する、内視鏡システム。
【0052】
(8)特定事項8
特定事項3または4において、
前記分離部は、前記ローパワーモード信号を処理する第1経路と、前記ハイスピードモード信号を処理する第2経路と、を含み、
前記第1経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続されたトランジスタと、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続され前記映像信号から所定の閾値レベル以上の信号を抽出するFETと、を備え、
前記第2経路において、前記撮像素子の信号ラインと直列に接続されたスイッチと、前記撮像素子の信号ラインと並列に接続されたイコライザと、を備え、
前記ドライバ信号処理部は、前記スイッチをOFFに制御して、前記撮像素子から入力されてきた映像信号から前記ローパワーモード信号の期間と前記ハイスピードモード信号の期間とを認識し、当該期間の認識後は、前記ローパワーモード信号の期間では前記スイッチをOFFに、前記ハイスピードモード信号の期間では前記スイッチをONに制御する、内視鏡システム。
【符号の説明】
【0053】
1 内視鏡システム
100 内視鏡装置
110 内視鏡装置のコネクタ部
200 プロセッサ
210 プロセッサのコネクタ部
300 モニタ
400 スコープコネクタ
401 スコープコネクタ回路
4011 信号分離部
4012 イコライザ部
4013 ドライバ信号処理部
4014 制御部
4015 メモリ