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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ミッドフィールド信号抽出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20240813BHJP
   A61B 5/25 20210101ALI20240813BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/25
A61N1/05
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020037525
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2020142079
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】62/814,532
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/793,084
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】シラン・エリヤフ
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール・ルビンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】リモール・プロビゾール
(72)【発明者】
【氏名】エリアス・シャミロフ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン-エヤル・レンコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】インバル・ダビナー
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0279896(US,A1)
【文献】特表2007-504917(JP,A)
【文献】特表2017-511166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0256699(US,A1)
【文献】特開2017-142788(JP,A)
【文献】特開2016-120280(JP,A)
【文献】国際公開第2018/069509(WO,A1)
【文献】特表2016-502889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療分析システムであって、
組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成され、前記組織表面に接触し、かつ前記組織表面から電気信号を受信するように構成された複数の検知電極を含む、少なくとも1つのカテーテルと、
処理回路と、を備え、前記処理回路が、
前記複数の検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することと、
前記複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信する前記受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって少なくとも一対の前記検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、
前記計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、前記計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、前記対象箇所における前記組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を行うように構成されている、医療分析システム。
【請求項2】
前記処理回路が、前記少なくとも一対の前記検知電極から受信する前記受信した単極信号の前記総和に高域通過フィルタを適用するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記処理回路が、
前記検知電極から複数の電極群を選択することと、
前記複数の電極群のうちの各1つの電極群について、前記1つの電極群から受信した前記単極信号を総和し、複数の総和された群信号を生成することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記総和された群信号を平均することに基づいて、前記加重平均を計算することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記処理回路が、前記加重平均を計算する前に、前記総和された群信号の各々に高域通過フィルタを適用するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理回路が、前記ミッドフィールド信号をディスプレイに描画するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記処理回路が、前記組織表面上の様々な場所における前記ミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて、マップをディスプレイに描画するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理回路が、前記ミッドフィールド信号の少なくとも1つの特性に基づいて、診断決定を出力するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記組織表面が、以下の、心内膜組織表面、心外膜組織表面、及び臓器組織表面のうちのいずれかを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
プログラム命令が格納される非一時的なコンピュータ可読媒体を含むソフトウェア製品であって、前記プログラム命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、前記CPUに、
組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成された少なくとも1つのカテーテルの複数検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することであって、前記検知電極が、前記組織表面に接触し、かつ前記組織表面から電気信号を受信するように構成されている、受信することと、
前記複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信された前記受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、前記少なくとも一対の前記検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、
前記計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、前記計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、前記対象箇所における前記組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を行わせる、ソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年3月6日に出願された、Eliyahuらの米国仮特許出願第62/814,532号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、心臓の電気的活動に関し、特に、心臓信号を計算することに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓内のある箇所における電気的活動は、心腔内の複数の箇所での電気的活動を同時に測定するための多電極カテーテルを前進させることによって測定することができる。外部ベストを使用することなどの他の方法により、心臓の活動の兆候を提供することができる。1つ又は複数の電極により測定される、時間的に変化する電位から得られる記録は、電位図として知られている。電位図は、単極誘導又は双極誘導によって測定され得、例えば、局所興奮到達時間(LAT)として知られる、ある箇所における電気伝搬の開始を判定するために使用される。
【0004】
心腔内の電極センサーは、ファーフィールド電気的活動、すなわち、センサーから離れて発生する周囲の電気的活動を検出することができ、その電気的活動は、局所的電気的活動、すなわち、センサーにおいて又はセンサーの近くで発生する信号を歪ませる又は不明瞭にする場合がある。同一出願人によるGovariらの米国特許出願公開第2014/0005664号には、電極が接触している組織に起因する、心臓内電極信号における局所成分を、遠隔場の信号への寄与と区別する方法が開示されており、組織に適用される治療手技を、区別された局所成分に応じて制御することができることが説明されている。
【0005】
Pearlmanによる米国特許出願公開第2005/0197586号には、多変量生理学的なモニタリング中に信号を分離するための方法及びシステムが記載されている。複数の電極接点により、心臓の電気的活性に関する多変量特性評価のために、前胸部及び/又は後胸部との電気的接続が行われる。中央処理装置が、合成複合電図信号、並びに特定の目的の信号を導出する。ある実施形態では、このシステムを使用して、磁気共鳴撮像装置を始動又はゲート制御して、わずかな又は反転したR波、リード分離、ノイズ、流れ信号、勾配変化、及び律動の変化からの問題を排除又は低減し、より確実には、心室の電気的活性化の開始をフラグ付けする。導出された追加的なデータは、STセグメントシフト、充填時間、及び呼吸周期である。充填時間を使用して、心房細動などの律動の乱れの存在下で、撮像を大幅に改善することができる。呼吸周期を呼吸器トリガとして使用して、心臓位置及び画像品質に対する息継ぎの影響を制御することができる。
【0006】
Thiagalingamらの米国特許出願公開第2009/0099468号には、心臓内電気生理学的データの自動処理のための方法、装置、及びコンピュータプログラム製品について記載されている。方法は、電位図データ、及び電位図データを記録する電極の対応する空間的場所データを記録するステップであって、記録された電位図データが、複数の拍動を含む、記録するステップと、時間変化する場所を判定するための、かつ記録された電位図データの拍動と比較される基準拍動を含む少なくとも1つの基準チャネルを定義するステップと、記録された電位図データを観察し、かつ記録された電位図データの各拍動についての時間変化する場所を画定するステップと、時間変化する場所のインデックス、及び記録された電位図データ内の拍動の他の情報を創出するステップと、生理学的な条件を暗示させる記録された電位図データの少なくとも1つの電気生理学的特徴をリアルタイムで分析するステップと、更新されたインデックスを提供するステップであって、他の情報が分析結果を含む、提供するステップと、を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、医療分析システムが提供され、この医療分析システムは、組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成され、組織表面に接触し、かつ組織表面から電気信号を受信するように構成された複数の検知電極を含む、少なくとも1つのカテーテルと、処理回路であって、複数の検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することと、複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信する受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、少なくとも一対の検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、対象箇所からの検知電極のそれぞれの距離に重み付けされた受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、対象箇所における組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を行うように構成されている、処理回路と、を備える。
【0008】
更に、本発明の実施形態によれば、処理回路は、少なくとも一対の検知電極から受信する受信した単極信号の総和に高域通過フィルタを適用するように構成されている。
【0009】
また更に、本発明の実施形態によれば、処理回路は、検知電極から複数の電極群を選択することと、複数の電極群のうちの各1つの電極群について、1つの電極群から受信した単極信号を総和し、複数の総和された群信号を生成することと、対象箇所からの検知電極のそれぞれの距離に重み付けされた総和された群信号を平均することに基づいて、加重平均を計算することと、を行うように構成されている。
【0010】
加えて、本発明の実施形態によれば、処理回路は、加重平均を計算する前に、総和された群信号の各々に高域通過フィルタを適用するように構成されている。
【0011】
更に、本発明の実施形態によれば、処理回路は、ミッドフィールド信号をディスプレイに描画するように構成されている。
【0012】
更に、本発明の実施形態によれば、処理回路は、組織表面上の様々な場所におけるミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて、マップをディスプレイに描画するように構成されている。
【0013】
また更に、本発明の実施形態によれば、処理回路は、ミッドフィールド信号の少なくとも1つの特性に基づいて、診断決定を出力するように構成されている。
【0014】
加えて、本発明の実施形態によれば、組織表面は、以下の、心内膜組織表面、心外膜組織表面、及び臓器組織表面のうちのいずれかを含む。
【0015】
また、本発明の別の実施形態によれば、電気生理学的分析方法も提供され、この電気生理学的分析方法は、組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成された少なくとも1つのカテーテルの複数の検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することであって、検知電極が、組織表面に接触し、かつ組織表面から電気信号を受信するように構成されている、受信することと、複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信する受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、少なくとも一対の検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、対象箇所からの検知電極のそれぞれの距離に重み付けされた受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、対象箇所における組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を含む。
【0016】
更に、本発明の実施形態によれば、本方法は、少なくとも一対の検知電極から受信する受信した単極信号の総和に高域通過フィルタを適用することを含む。
【0017】
更に、本発明の実施形態によれば、本方法は、検知電極から複数の電極群を選択することと、複数の電極群のうちの各1つの電極群について、1つの電極群から受信した単極信号を総和し、複数の総和された群信号を生成することと、対象箇所からの検知電極のそれぞれの距離に重み付けされた総和された群信号を平均することに基づいて、加重平均を計算することと、を含む。
【0018】
また更に、本発明の実施形態によれば、本方法は、加重平均を計算する前に、総和された群信号の各々に高域通過フィルタを適用することを含む。
【0019】
加えて、本発明の実施形態によれば、本方法は、ミッドフィールド信号をディスプレイに描画することを含む。
【0020】
更に、本発明の実施形態によれば、本方法は、組織表面上の様々な場所におけるミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて、マップをディスプレイに描画することを含む。
【0021】
更に、本発明の実施形態によれば、本方法は、ミッドフィールド信号の少なくとも1つの特性に基づいて、診断決定を出力することを含む。
【0022】
また更に、本発明の実施形態によれば、組織表面は、以下の、心内膜組織表面、心外膜組織表面、及び臓器組織表面のうちのいずれかを含む。
【0023】
また、本発明の更なる別の実施形態によれば、ソフトウェア製品も提供され、このソフトウェア製品は、プログラム命令が格納されている非一時的なコンピュータ可読媒体を含み、命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、CPUに、組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成された少なくとも1つのカテーテルの複数の検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することであって、検知電極が、組織表面に接触し、かつ組織表面から電気信号を受信するように構成されている、受信することと、複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信する受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、少なくとも一対の検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、対象箇所からの検知電極のそれぞれの距離に重み付けされた受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、対象箇所における組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は、添付の図面に関連してなされる以下の詳細な説明から理解されよう。
図1】本発明の実施形態に基づいて構築され、かつ動作可能である心臓分析システムの部分絵画部分ブロック図である。
図2A図1のシステムにより提供された心臓信号の図である。
図2B図1のシステムにより提供された心臓信号の図である。
図2C図1のシステムにより提供された心臓信号の図である。
図3A図1のシステムにより提供されたミッドフィールド信号の図である。
図3B図1のシステムにより提供されたミッドフィールド信号の図である。
図3C図1のシステムにより提供されたミッドフィールド信号の図である。
図4】心臓の電気的活動を例示する心臓組織の断面の概略図である。
図5図1のシステムで使用するためのカテーテルの概略図である。
図6図1のシステムの動作方法における典型的なステップを含むフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
概論
心室などの厚い組織では、電気は、心内膜及び心筋の異なる層全体にわたって伝導する。アブレーションを実施した後(心内膜又は心外膜側から)、残留伝導は、概して、アブレーションが不十分であることの兆候であるため、対象となる領域内のアブレーション表面の下での電気的活動を測定することが必要である場合がある。残留伝導を確認することは、単なる例として、心室性頻拍症の治療にとって、特に重要であり得る。
【0026】
心腔内の電極は、電極から受信した双極信号に基づいて、表面電気的活動を検出することができる。電極から受信した単極信号は、一般に、表面活動及び表面下活動を示す。しかしながら、単極信号はまた、ファーフィールド電気的活動、すなわち、周囲の組織に由来する、電極から離れたところで発生する環境電気的活動も含み、その環境電気的活動は、局所的電気的活動、すなわち、電極において又はその近くで発生する信号を歪ませる又は不明瞭にする場合がある。表記上の利便性のため、表面電気的活動及び表面下活動は、本明細書では、それぞれ、ニアフィールド信号及びミッドフィールド信号を表すものとして記載される。
【0027】
それゆえに、ニアフィールド信号及び全電気的フィールド信号は、それぞれ、双極信号及び単極信号から推論され得るが、ミッドフィールド信号は、心外膜アクセスに加えて、例えば、胸部を穿刺して表面下信号を測定することによって、心内膜アクセスを提供すること以外に、直接測定可能であるようには見えない。しかしながら、胸部を穿刺することは、煩雑かつ危険であり、様々な訓練を有する追加の医療専門家を必要とし得、手技を長引かせる可能性がある。
【0028】
本発明の典型的な実施形態は、追加のアクセス(例えば、心外膜又は心内膜アクセス)を必要とせずに、身体部分(例えば、心臓の心室、又は任意の他の臓器若しくは身体部分)の中に挿入された1つ又は複数のカテーテルの検知電極からの単極信号に基づいて、対象箇所のミッドフィールド信号を計算するためのシステム及び方法を提供する。
【0029】
DC成分は、一般に、アーチファクトを除去するために各単極信号から抽出され、低域通過フィルタが、単極信号に任意選択的に適用されて、以下に説明する処理の前に、高周波ノイズを除去する。
【0030】
組み合わされたファーフィールド及びミッドフィールド信号は、検知電極のうちの検知電極対の単極信号を総和及びフィルタリングすることに基づいて、計算される。検知電極対は、対象箇所の周りに配設される。フィルタリングは、高域通過フィルタを、総和された信号に適用することを含む。ここで使用され、以下に述べる高域通過フィルタは、信号からニアフィールド成分を除去する。
【0031】
ファーフィールド信号は、対象箇所からの検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた、受信した単極信号の加重平均として計算される。この平均化は、ファーフィールド成分を残しながら、信号のミッドフィールド成分を除去する傾向がある。加重平均の計算は、以下のように計算することができる。複数の電極対が、検知電極から選択され、各電極対について、単極信号が総和されて複数の総和された対信号を生成する。加重平均を計算する前に、高域通過フィルタが、総和された対信号の各々に適用される。加重平均は、対象箇所からの検知電極対のそれぞれの距離に応じて重み付けされた総和された対信号を平均することに基づいて計算される。
【0032】
いくつかの典型的な実施形態では、検知電極対に関して上述した上記の処理は、対象箇所の周りに配設された3つ以上の電極の電極群を使用して、実行されてもよい。同様に、上述した複数の電極対に関する上述の処理は、複数の電極群で実行されてもよく、各群は、3つ以上の電極を有する。
【0033】
ミッドフィールド信号は、対象箇所における組織表面の下での電気的活動を表しており、計算された組み合わされたファーフィールド及びミッドフィールド信号から、計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、計算される。
【0034】
組織表面上の様々な場所におけるミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて計算されたミッドフィールド信号又はマップは、ディスプレイに出力することができる。いくつかの典型的な実施形態では、ミッドフィールド信号の少なくとも1つの特性を使用して、診断決定、例えば、(追加の)アブレーションが実施されるべきかどうか、及びその場合、単なる例として、どのくらいの時間の間実行されるべきかを判定することができる。診断決定はまた、ディスプレイに出力することができる。
【0035】
ミッドフィールドを使用して、以前にアブレーションされた領域、又は瘢痕疾病領域が、見出された表面下電気的活動に起因して、アブレーションを必要とするかどうかを判定することができる。更に、又は別の方法として、ミッドフィールド信号を使用し、患者の心臓をマッピングして、患者を診断し、どんな治療が必要であるか(例えば、どこをどのくらいの時間の間、アブレーションすべきか)を判定することができる。
【0036】
簡潔にするために、本明細書に記載された典型的な実施形態は、概して、心内膜表面からアブレーションを実施すること、及び心内膜表面の下でのミッドフィールド信号を計算することについて説明することに留意されたい。本発明の典型的な実施形態はまた、心外膜表面からアブレーションを実施すること、及び心外膜表面の下でのミッドフィールド信号を計算することを含むこともできる。
【0037】
更に、例示的な実施形態が、心腔に関するミッドフィールド信号の計算について説明する。他の実施形態は、本明細書に記載された実施形態に適切な変更を適用することに基づいて、任意の生体組織、例えば、腸管に関するミッドフィールド信号を計算することを含むことができる。
【0038】
システムの説明
ここで、図1を参照すると、この図は、本発明の典型的な実施形態に基づいて構築され、かつ動作可能である心臓分析システム10の部分絵画部分ブロック図である。
【0039】
ここで、図面を見ると、最初に参照する図1は、本発明の開示された典型的な実施形態に基づいて構築され、かつ動作可能であり、電気的活動を計算及び評価し、任意選択的に、生体の心臓12にアブレーション手技を実施するための心臓分析システム10の描写説明図である。このシステムは、カテーテルなどのカテーテル14を備え、そのカテーテルは、操作者16により、患者の血管系を通じて心臓12の心室又は血管構造の中に経皮的に挿入される。操作者16は、通常、医師であり、カテーテル14の遠位先端部18を、例えば、アブレーション標的部位において、又は心臓12の1つ又は複数の心室の表面にわたる複数のサンプル場所において経時的に電位を取得するために、心臓壁に接触させる。電気的活性マップは、米国特許第6,226,542号,及び米国特許第6,301,496号、並びに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、準備されてもよい。システム10の各要素を具現化する1つの市販製品は、Biosense Webster,Inc.33 Technology Drive,Irvine,CA,92618,USA、から市販されている、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に説明される本発明の原理を具現化するように、当業者によって変更されてもよい。
【0040】
例えば電気的活性マップの評価によって異常と判定された領域は、例えば、心筋に高周波エネルギーを印加する遠位先端部18の1つ又は複数の電極に、カテーテル内のワイヤを通じて高周波電流を流すことなどにより熱エネルギーを加えることによってアブレーションすることができる。エネルギーは、組織内に吸収され、組織がその電気的興奮性を恒久的に喪失する温度(通常、約50℃)まで組織を加熱する。成功裏に行われた場合、この処置によって心臓組織に非伝導性の損傷部が形成され、この損傷部が、不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理は、異なる心腔に適用されて、多数の異なる心不整脈を診断及び治療することができる。
【0041】
カテーテル14は、通常、操作者16がカテーテル14の遠位先端部18を所望どおりに操作、位置決め、及び配向してアブレーションすることを可能にするための、上部に好適な制御部を有するハンドル20を含む。操作者16を補助するために、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に設置された処理回路22に、ケーブル38を介して信号を提供する位置決めセンサー(図示せず)が含まれる。処理回路22は、後述のようないくつかの処理機能を果たすことができる。
【0042】
アブレーションエネルギー及び電気信号は、コンソール24へのケーブル38(及びカテーテル14のシャフト34)を介して、遠位先端部18に又はその近くに位置する電極32を通じて心臓12に又は心臓12から搬送されることができる。このような方法で、電極32は、心臓12の1つ又は複数の心室の表面にわたる複数のサンプル場所において経時的に電位を取得するように構成されている。追加的に、又は別の方法として、他の電極が、心臓12の1つ又は複数の心室の表面にわたる複数のサンプル場所において経時的に電位を取得するように構成されてもよい。ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24からケーブル38及び電極32を通じて心臓12に伝達することができる。カテーテル14は、心臓12の1つ又は複数の心室の表面にわたる複数のサンプル場所において経時的に電位を取得するように構成された電極を有する診査装置として、アブレーションの能力を有さずに実現されてもよい。
【0043】
ワイヤ接続部35は、コンソール24を、身体表面電極30、並びにカテーテル14の場所及び向きの座標を測定するための位置決めサブシステムの他の構成要素と連結する。処理回路22又は別のプロセッサ(図示せず)は、位置決めサブシステムの要素であってもよい。Govariらによる米国特許第7,536,218号に教示されているように、電極32及び身体表面電極30を使用して、アブレーション部位における組織インピーダンスを測定することができる。生体電気情報のためのセンサー、例えば、温度センサー(図示せず)、典型的には、熱電対又はサーミスタが、電極32の各々の上又はその近くに取り付けられてもよい。
【0044】
コンソール24には通常、1つ又は複数のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーなどの任意の周知のアブレーション技術を使用して心臓にアブレーションエネルギーを伝えるように適合させることができる。このような方法は、同一出願人による米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0045】
1つの典型的な実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場発生コイル28を使用して、所定の可動範囲に磁場を発生させ、カテーテル14におけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを判定する磁気式位置追跡装置を含む。位置決めサブシステムは、米国特許第7,756,576号、及び上記の同第7,536,218号に記載されている。
【0046】
上述したように、カテーテル14はコンソール24に結合され、これにより操作者16は、カテーテル14の機能を観察及び調節することができる。処理回路22は、適切な信号処理回路を備えたコンピュータとして具現化されてもよい。処理回路22は、ディスプレイスクリーン37を含むモニタ29を駆動するように結合されている。信号処理回路は、カテーテル14からの信号を受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化することができ、その信号には、電気、温度、及び接触力センサーなどのセンサー、並びにカテーテル14内の遠位に位置する場所検知電極(図示せず)により生成された信号が含まれる。デジタル化された信号は、コンソール24及び位置決めサブシステムによって受信及び使用されて、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を分析する。
【0047】
電気解剖学的マップを生成するために、処理回路22は、典型的には、電気解剖学的マップジェネレータ、画像登録プログラム、画像若しくはデータ分析プログラム、及びモニタ29上に画像情報を表示するように構成されたグラフィカルユーザインターフェースを含む。
【0048】
実際には、処理回路22のこれらの機能の一部又は全てを、単一の物理的コンポーネント内に組み込むか、あるいは複数の物理的コンポーネントを使用して具現化することが可能である。これらの物理的構成要素は、ハードワイヤード装置又はプログラマブル装置、あるいはこれら2つの組み合わせを備えてもよい。いくつかの典型的な実施形態では、処理回路の機能のうちの少なくともいくつかは、好適なソフトウェアの制御下にあるプログラム可能なプロセッサによって実行されてもよい。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態で装置にダウンロードされてもよい。あるいは又は更に、このソフトウェアは、光学的メモリ、磁気的メモリ、又は電子的メモリなどの有形の非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶されていてもよい。
【0049】
コンソール24はまた、例えば、以下に限定されないが、ポインティングデバイス(ペン型マウスなど)、キーボード、及び/又はディスプレイスクリーン37内に実現されたタッチ式スクリーンなどの任意の好適なユーザ入力デバイスを介して、操作者16からの入力命令を受信するためのインターフェース39を含んでもよい。
【0050】
簡略化のため図には示されていないが、通常、システム10には、他の要素も含まれる。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含んでもよく、この心電図モニタは、ECG同期信号をコンソール24に提供するために、身体表面電極30から信号を受信するように結合されている。上述のように、システム10は通常、被験者の身体の外部に取り付けられた外部貼付け式の基準パッチの上に、あるいは内部に置かれたカテーテルの上に、基準位置センサーを更に有し、その基準位置センサーは、心臓12の中に挿入され、心臓12に対して定位置に維持される。アブレーション部位を冷却するための液体をカテーテル14に通して循環させるための従来のポンプ及びラインが設けられている。システム10は、MRIユニット又は同様のものなどの外部の画像診断装置から画像データを受信してもよく、画像を生成及び表示するための処理回路22に組み込まれ、又はそれよって起動することができる画像プロセッサを含む。
【0051】
ここで、図2A図2Cを参照すると、それらは、図1のシステム10により提供された信号ディスプレイ40内の心臓信号の図である。図2A図2Cの各々は、身体表面(BS)信号42、双極信号44、2つの単極信号46、及び計算されたミッドフィールド信号48を示す。
【0052】
信号42は、身体表面挙動を表し、図2A図2Cにおいては、一般に、心臓12が拍動していることを示す。双極信号44は、典型的には、カテーテル14の一対の電極から受信され、表面又は表面近くのニアフィールド電気的活動を表している。単極信号46の各々は、双極信号44を提供する同じ2つの電極から個々に受信されてもよい。ミッドフィールド信号48は、図6を参照して更に詳細に説明されるように計算される。
【0053】
図2Aは、プローブで精査される心臓の領域(対象箇所)12が、健康であることを示す信号42~48を示す。
【0054】
図2Bでは、双極信号44は、平坦であり、ニアフィールド又は表面電気的活動が死んでいることを示す。しかしながら、単極信号46は、依然として電気的活動が検出されていることを示す。検出された電気的活動は、ファーフィールドからのものであってもよく、場合によっては、ミッドフィールドからのものであってもよい。計算されたミッドフィールド信号48は、単極信号46が、実際に、ミッドフィールドからの成分を含んでいること、並びに心筋の表面下、及び心外膜内に、電気的活動が存在することを示している。このような場合には、更なるアブレーションが必要なこととされてもよい。
【0055】
図2Cでは、双極信号44は、平坦であり、ニアフィールド又は表面電気的活動が死んでいることを示している。しかしながら、単極信号46は、依然として何らかの電気的活動が検出されていることを示している。検出された電気的活動は、ファーフィールドからのものであってもよく、場合によっては、ミッドフィールドからのものであってもよい。かなり平坦である計算されたミッドフィールド信号48は、単極信号46がミッドフィールドからの成分を含んでいないこと、並びに心筋の表面下に、及び心外膜内に電気的活動が存在しないことを示している。このような場合には、更なるアブレーションは、一般に必要とされない。
【0056】
対象となる領域のミッドフィールド信号48が、心筋の表面下及び心外膜内の電気的活動を表しているかどうかを判定するために、カットオフ境界が、設定されてもよい。例として、この境界は、5ミリボルト(mV)又は任意の好適な値に等しく設定されてもよく、その結果、5mV超の値は、生きている心臓組織を表し、5mV未満の値は、死んでいる心臓組織を表す。
【0057】
ここで、図3A図3Cを参照すると、これらは、図1のシステムにより提供されたミッドフィールド信号48の図である。図3Aは、健康な組織の典型的なミッドフィールド信号48を示す。図3Bは、病気の組織の典型的なミッドフィールド信号48を示す。図3Cは、死んだ組織の典型的なミッドフィールド信号48を示す。
【0058】
ここで、図4を参照すると、この図は、心臓電気的活動、並びに電極32から離れて発生する周囲の電気的活動60を例示する心臓組織54の断面の概略図である。心臓組織54は、心内膜55、心筋56、及び心外膜58を含む。多電極カテーテル14は、簡潔のために、2つの検知電極32を有して図4に概略的に示されている。多電極カテーテル14は、任意の好適な数の検知電極32を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル14は、3つ以上の検知電極の群を含んでもよい。2つの検知電極32は、対象箇所に位置決めされ、心臓組織54の表面での、及び表面の真下の電気的活動を表すニアフィールド信号44を提供することができる。検知電極32の各々はまた、様々な距離からの、対象箇所における組み合わされた電気的活動を測定する単極信号を提供することができる(例えば、電気的活動は、ニアフィールド活動、ミッドフィールド活動、及びファーフィールド活動を含んでもよい)。
【0059】
図4は、カテーテル14がミッドフィールド信号48を直接測定することができないことを例示している。ミッドフィールド信号48は、対象箇所に位置決めされた電極32を囲んでいる検知電極信号の好適な選択に基づいて計算されており、図5図6を参照してより詳細に説明される。
【0060】
ここで、図5を参照すると、この図は、図1のシステム10で使用するための多電極カテーテル14の概略図である。いくつかの典型的な実施形態によれば、カテーテル14は、アブレーションを実施せずに電気的活動マッピングを実施する。カテーテル14は、心臓12の心室、又は他の身体部分の中に挿入されるように構成されており、シャフト34、並びに組織表面(例えば、心内膜組織表面若しくは心外膜組織表面、又は任意の好適な臓器若しくは身体部分の任意の他の好適な組織表面)と接触して電気信号を受信するように構成された複数の検知電極32を含む。検知電極32は、検知電極対、若しくは各群内に3つ以上の電極の検知電極群に配列され得る。簡潔にするために、検知電極対68のうちの3つが、図3に、例えば、対68-1、68-2、及び68-3とラベル付けされている。
【0061】
複数の電極を有する任意の好適なカテーテル又は(任意の好適な形状の)複数のカテーテルを使用して、データを、図6を参照して以降に説明される計算のために提供することができる。例えば、データを提供するために使用される複数の電極は、身体部分の中に挿入される2つ以上のカテーテルの一部であってもよい。図5は、Biosense Webster社から市販されているPentaray(登録商標)カテーテルの概略図を示す。また、他のカテーテル、例えば、以下に限定されないが、Biosense Webster社のOctaray(登録商標)カテーテル、又は任意の他の好適なカテーテル、例えば、以下に限定されないが、バルーン形カテーテル若しくは投げ縄形状のカテーテルが使用されてもよい。
【0062】
ここで、図6を参照すると、この図は、図1のシステム10の動作方法の典型的なステップを含むフローチャート70である。また、図5も参照される。
【0063】
以下の説明は、電極対68を使用することに関する。いくつかの典型的な実施形態では、検知電極対68-1に関して以下に述べるステップは、対象箇所の周りに配設された3つ以上の電極の電極群を使用して実行されてもよい。同様に、複数の電極対(例えば、対68-2及び68-3)に関して以下に述べるステップは、複数の電極群で実行されてもよく、各群は、3つ以上の電極を有する。
【0064】
処理回路22は、単極信号46を受信すべき、心臓組織54(図4)と接触している検知電極32を選択するように構成されている(ブロック72)。心臓組織54と接触していない検知電極32は、概して、心臓組織54の電気的活動を表す単極信号を提供しない。
【0065】
処理回路22は、選択された検知電極32の個々の検知電極からの単極信号46(図2A~C)を受信するように構成されている(ブロック74)。
【0066】
処理回路22は、アーチファクトを除去し、単極信号46内のノイズを低減するため、受信した単極信号46の各々に対してDC成分及び低域通過フィルタを抽出するように、任意選択的に構成されている(ブロック76)。以下に説明される方法で使用される信号は、既にDC成分が除去され、概して低域通過フィルタが適用されている。
【0067】
ミッドフィールド信号48、ECGquad(k,i)は、次式に基づいて計算することができる。
【0068】
【数1】
w(dk,i)は、次式から計算することができる。
【0069】
【数2】
ここで、k及びk+1は、対象箇所に位置決めされた電極対、iは、対象箇所の環境内に位置決めされた電極対を表し、w(dk,i)は、第i番目の電極対68の重みであり、第k番目の電極対68と第i番目の電極対68との間の距離dk,iに反比例し、nは、加重平均計算に使用された電極対68の数であり、mは、式2で使用される添字であり、HPFは、高域通過フィルタであり、Uni(k)は、k番目の検知電極68の単極信号46であり、Uni(i)は、i番目の検知電極68の単極信号46である。
【0070】
上に示した式1において、i=1からnまでの総和を含む第2項は、2のステップと共に実行され、その結果、iの初期値は、1に等しく、iの第2の値は、3に等しいなどであることに留意されたい。
【0071】
式1は、3つの電極の群が電極対の代わりに使用される場合、適切に修正されてもよい。例えば、群当たり3つの電極がある場合には、次式となる。
【0072】
【数3】
【0073】
すぐ上に示した式1において、i=1からnまでの総和を含む第2項は、3のステップと共に実行され、その結果、iの初期値は、1に等しく、iの第2の値は、4に等しいなどであることに留意されたい。一般に、ステップのサイズは、式1の第2項に列挙した単極信号の数に等しい。
【0074】
ここで、式1を使用したミッドフィールド信号48の計算について、より詳細に説明する。
【0075】
ここで、式1における第1項、HPF[Uni(k)+Uni(k+1)]の計算について、より詳細に説明する。
【0076】
処理回路22は、対象箇所に隣接して位置する検知電極32の一対(例えば、対68-1)の単極信号46を総和するように構成されている(ブロック78)。対68-1の検知電極32は、例として引用されている。任意の対の検知電極32が使用され、それによって、選択された電極対の電極間に位置する対象箇所の中央位置を画定することができる。単極信号46を総和することにより、ブロック80のステップにおいて以下に説明される高域通過フィルタを適用する前に、信号を強化することになる。
【0077】
処理回路22は、ブロック78のステップにおいて計算された総和された信号に高域通過フィルタを適用し、ファーフィールド信号及びミッドフィールド信号48の組み合わせを表すフィルタリングされた信号を生成するように構成されている(ブロック80)。高域通過フィルタは、遅い要素、例えば、ニアフィールドを減衰させる。
【0078】
それゆえに、ブロック78及び80のステップにおいて、処理回路22は、対象箇所の周りに配設された検知電極対から受信する一対の受信した単極信号を総和すること、及び次いで総和された信号をフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド及びミッドフィールド信号を計算する。
【0079】
ここで、式1における第2項、
【0080】
【数4】
の計算について、より詳細に説明する。処理回路22は、式の第2項を計算する際に使用するために、検知電極32から他の電極対68を識別及び選択するように構成されている(ブロック82)。
【0081】
処理回路22は、各電極対68(ブロック82のステップで選択された)について、当該電極対68から受信した単極信号46を総和するように構成され(ブロック84)、複数の総和された対となる信号を生成する。例として、対68-2の単極信号46は、総和され、対68-3の単極信号46は、総和される等である。
【0082】
処理回路22は、以下に説明する加重平均を計算する前に、総和された対信号の各々に高域通過フィルタを適用するように構成されている(ブロック86)。
【0083】
処理回路22は、各対68(の中央箇所)から対象箇所までの距離を計算するように構成されている(ブロック88)。例えば例として、処理回路22は、対68-2に対する距離D1、及び対68-3に対する距離D2などを計算する。該当する電極又は電極対間の距離は、カテーテル14の既知の幾何学的形状に基づいて、又は任意の好適な位置追跡を使用した、例えば、インピーダンスに基づく位置測定を使用した、検知電極32の位置追跡に基づいて、又はスキャンされた画像に基づいて、計算されてもよい。
【0084】
次いで、計算された距離を使用して、上記で与えられた式を使って、又は任意の他の好適な統計的な方法に基づいて、w(dk,i)を計算することができる。例えば、対68-2の検知電極32の単極信号に適用された重みは、対68-2から対68-1までの距離D1に反比例し、対68-3の検知電極32の単極信号に適用された重みは、対68-3から対68-1までの距離D2に反比例する。
【0085】
処理回路22は、ブロック84及び86のステップで処理された総和された対となる(かつフィルタリングされた)単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算するように構成されている(ブロック90)。加重平均は、単なる例として、重みw(dk,i)を使って、対象箇所からの検知電極32の(例えば、対68-1の)それぞれの距離に応じて重み付けされてもよい。平均を重み付けすることによって、1つの検知電極32により検出されたファーフィールドが、別の検知電極32により検出されたファーフィールドと概ねわずかに異なるときに、ファーフィールド信号を計算する際の精度を改善することができる。それゆえに、加重平均によって、対象箇所に更に近い信号に更に多くの重み付けを与えて、異なる位置で測定されたファーフィールドの差を考慮する。
【0086】
処理回路22は、計算された組み合わされたファーフィールド及びミッドフィールド信号(式1の第1項)から、計算されたファーフィールド信号(式1の第2項)を引き算することに基づいて、対象箇所における組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算するように構成されている(ブロック92)。
【0087】
処理回路22は、以下の、双極信号44、単極信号46、及び/又はミッドフィールド信号48のうちの1つ又は複数をディスプレイスクリーン37(図1)上に描画するように、任意選択的に構成されている(ブロック94)。追加的に、又は別の方法として、処理回路22は、組織表面上の様々な場所におけるミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて、マップをディスプレイスクリーンに描画するように構成されている。
【0088】
処理回路22は、ミッドフィールド信号48の少なくとも1つの特性(例えば、大きさ)に基づいて診断決定を出力するように構成されている(ブロック96)。診断決定は、例えば、(追加の)アブレーションを実施するべきかどうか、及びその場合、単なる例として、どのくらいの時間がかかるかを含んでもよい。また、診断決定は、ディスプレイスクリーン37に出力されてもよい。対象箇所のミッドフィールド信号48が、心筋の表面下の電気的活動を表しているかどうかを判定するために、カットオフ境界が設定されてもよい。例として、この境界は、0.5mV又は任意の好適な値に等しく設定されてもよく、その結果、0.5mV超の値は、生きている組織を表し、0.5mV未満の値は、死んでいる組織を表す。
【0089】
ミッドフィールドを使用して、以前にアブレーションされた領域が、見出された表面下の電気的活動に起因して、更なるアブレーションを必要とするかどうかを判定することができる。追加的に、又は別の方法として、ミッドフィールド信号を使用し、患者の心臓をマッピングして、患者を診断し、どんな治療が必要であるか(例えば、どこをどのくらいの時間の間、アブレーションするべきか)を判定することができる。例えば、虚血性心臓組織を診断し、組織がその深さ全体にわたって瘢痕化されているかどうか、又は伝導領域が存在するかどうかを見分けることができる。
【0090】
上述した式は、単なる例として引用されており、任意の好適な式が、代わりに使用されてもよい。上述した式は、単なる例として、追加的な項又は定数を含むように修正されてもよい。
【0091】
本発明の様々に異なる特徴が、明確性のために複数の別個の実施形態として記載されているが、これらが単一の実施形態中に組み合わせて提供されてもよい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において記載されている本発明の様々な特徴が、別々に又は任意の適切な部分的組み合わせとして提供されてもよい。
【0092】
上に記載される実施形態は、例として引用されており、本発明は、上に特に図示及び記載されたものによって限定されない。むしろ、本発明の範囲は、上に記載される様々な特徴の組み合わせ及び副組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者が思い付くであろう先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0093】
〔実施の態様〕
(1) 医療分析システムであって、
組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成され、前記組織表面に接触し、かつ前記組織表面から電気信号を受信するように構成された複数の検知電極を含む、少なくとも1つのカテーテルと、
処理回路と、を備え、前記処理回路が、
前記複数の前記検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することと、
前記複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信する前記受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、前記少なくとも一対の前記検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、
前記計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、前記計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、前記対象箇所における前記組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を行うように構成されている、医療分析システム。
(2) 前記処理回路が、前記少なくとも一対の前記検知電極から受信する前記受信した単極信号の前記総和に高域通過フィルタを適用するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記処理回路が、
前記検知電極から複数の電極群を選択することと、
前記複数の電極群のうちの各1つの電極群について、前記1つの電極群から受信した前記単極信号を総和し、複数の総和された群信号を生成することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記総和された群信号を平均することに基づいて、前記加重平均を計算することと、を行うように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記処理回路が、前記加重平均を計算する前に、前記総和された群信号の各々に高域通過フィルタを適用するように構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記処理回路が、前記ミッドフィールド信号をディスプレイに描画するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0094】
(6) 前記処理回路が、前記組織表面上の様々な場所における前記ミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて、マップをディスプレイに描画するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記処理回路が、前記ミッドフィールド信号の少なくとも1つの特性に基づいて、診断決定を出力するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(8) 前記組織表面が、以下の、心内膜組織表面、心外膜組織表面、及び臓器組織表面のうちのいずれかを含む、実施態様1に記載のシステム。
(9) 電気生理学的分析方法であって、
組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成された少なくとも1つのカテーテルの複数の前記検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することであって、前記検知電極が、前記組織表面に接触し、かつ前記組織表面から電気信号を受信するように構成されている、受信することと、
前記複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信する前記受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、前記少なくとも一対の検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、
前記計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、前記計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、前記対象箇所における前記組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を含む、電気生理学的分析方法。
(10) 前記少なくとも一対の前記検知電極から受信する前記受信した単極信号の前記総和に高域通過フィルタを適用することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
【0095】
(11) 前記検知電極から複数の電極群を選択することと、
前記複数の電極群のうちの各1つの電極群について、前記1つの電極群から受信した前記単極信号を総和し、複数の総和された群信号を生成することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記総和された群信号を平均することに基づいて、前記加重平均を計算することと、を更に含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記加重平均を計算する前に、前記総和された群信号の各々に高域通過フィルタを適用することを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記ミッドフィールド信号をディスプレイに描画することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(14) 前記組織表面上の様々な場所における前記ミッドフィールド信号の電気的活動に基づいて、マップをディスプレイに描画することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
(15) 前記ミッドフィールド信号の少なくとも1つの特性に基づいて、診断決定を出力することを更に含む、実施態様9に記載の方法。
【0096】
(16) 前記組織表面が、以下の、心内膜組織表面、心外膜組織表面、及び臓器組織表面のうちのいずれかを含む、実施態様9に記載の方法。
(17) プログラム命令が格納される非一時的なコンピュータ可読媒体を含むソフトウェア製品であって、前記命令が、中央処理装置(CPU)によって読み取られると、前記CPUに、
組織表面を有する身体部分の中に挿入されるように構成された少なくとも1つのカテーテルの複数の前記検知電極の個々の検知電極から単極信号を受信することであって、前記検知電極が、前記組織表面に接触し、かつ前記組織表面から電気信号を受信するように構成されている、受信することと、
前記複数の検知電極のうちの少なくとも一対から受信された前記受信した単極信号のうちのそれぞれを総和及びフィルタリングすることに基づいて、組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号を計算することであって、前記少なくとも一対の前記検知電極が、対象箇所の周りに配設されている、計算することと、
前記対象箇所からの前記検知電極のそれぞれの距離に応じて重み付けされた前記受信した単極信号の加重平均として、ファーフィールド信号を計算することと、
前記計算された組み合わされたファーフィールド信号及びミッドフィールド信号から、前記計算されたファーフィールド信号を引き算することに基づいて、前記対象箇所における前記組織表面の下での電気的活動を表すミッドフィールド信号を計算及び出力することと、を行わせる、ソフトウェア製品。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6