(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】包装箱の製造方法、包装箱、及びブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 5/44 20060101AFI20240813BHJP
B65D 5/02 20060101ALI20240813BHJP
B31B 50/62 20170101ALI20240813BHJP
B31B 100/00 20170101ALN20240813BHJP
B31B 110/35 20170101ALN20240813BHJP
B31B 120/10 20170101ALN20240813BHJP
【FI】
B65D5/44 N
B65D5/02 G
B31B50/62
B31B100:00
B31B110:35
B31B120:10
(21)【出願番号】P 2020055872
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019200568
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505437044
【氏名又は名称】広瀬 康男
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 康男
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009841(JP,A)
【文献】実公昭37-029466(JP,Y1)
【文献】特開2019-038590(JP,A)
【文献】特開2019-018899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/44
B65D 5/02
B31B 50/62
B31B 100/00
B31B 110/35
B31B 120/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースペーパーの表面に蒸着フィルムの層もしくは金属層が形成されてなるブランクシートを用いた包装箱の製造方法であって、
表面に紙層が形成され裏面に樹脂層が形成されてなる溶着紙を、前記ブランクシートの前記表面のブランクが形成される領域の、前記包装箱を封緘するための接着剤が塗布される領域に熱溶着し、
前記ブランクシートから切り抜いた前記ブランクを用いて包装箱を組み立てる、
包装箱の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の包装箱の製造方法であって、
前記紙層の素材として50g/m
2程度の厚みの用紙を用いる、
包装箱の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の包装箱の製造方法であって、
前記ブランクシートは、前記溶着紙の前記樹脂層に熱溶着される樹脂層を有する、
包装箱の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の包装箱の製造方法であって、
前記ブランクシートは、蒸着フィルムをベースペーパーの表面にラミネートした構造を有する、
包装箱の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の包装箱の製造方法であって、
前記ブランクは、
筒体を構成する4つの側面板、
前記筒体の一方の端面を塞ぐように前記側面板の一つである第1側面板に延設される第1端面板、
前記筒体の他方の端面を塞ぐように前記第1側面板に延設される第2端面板、
前記第1端面板に延設される第1差込部、
前記第2端面板に延設される第2差込部、
を含み、
前記包装箱は、前記第1差込部の表面を前記第1側面板に対向する前記側面板である第2側面板の裏面に接着するとともに、前記第2差込部の表面を前記第2側面板の裏面に接着することにより封緘され、
前記溶着紙を、前記第1差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域、及び前記第2差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域に熱溶着する、
包装箱の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の包装箱の製造方法により製造される包装箱であって、
前記4つの側面板、前記第1端面板、前記第2端面板、前記第1差込部、前記第2差込部、を有し、
前記第1差込部の表面が前記第1側面板に対向する前記側面板である第2側面板の裏面に接着されるとともに、前記第2差込部の表面が前記第2側面板の裏面に接着することにより封緘され、
前記溶着紙が、前記第1差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域、及び前記第2差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域に熱溶着されてなる、
包装箱。
【請求項7】
包装箱用のブランクの製造方法であって、
包装箱の表面になる側の面に蒸着フィルム層もしくは金属層が形成されてなるブランクシートを準備し、
前記ブランクシートの前記蒸着フィルム層もしくは前記金属層が形成されている面において、前記ブランクの外形形状をなすべく定められた領域のうち、前記ブランクから前記包装箱を組み立てる際に接着剤が塗布される領域に、一方の面が紙層であり他方の面が樹脂層である溶着紙の前記樹脂層を熱溶着し、
前記ブランクシートから前記ブランクの外形形状をなすべく定められた前記領域を切り抜く、
ブランクの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のブランクの製造方法であって、
前記ブランクは、
筒体となる4つの側面板と、
前記筒体の一方の端面を塞ぐべく前記側面板の一つである第1側面板に延設される第1端面板と、
前記筒体の他方の端面を塞ぐべく前記第1側面板に延設される第2端面板と、
前記第1側面板に対向する前記側面板である第2側面板の裏面に前記接着剤によって接着されるべく、前記第1端面板に延設される第1差込部と、
前記第2側面板の裏面に前記接着剤によって接着されるべく、前記第2端面板に延設される第2差込部と、
を含み、
前記溶着紙が、前記第1差込部及び前記第2差込部の前記接着剤が塗布される各領域に熱溶着されてなる、
ブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の包装箱の製造方法であって、
前記溶着紙は、前記紙層を貫通する複数の穴を有して構成されている、包装箱の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載の包装箱であって、
前記溶着紙は、前記紙層を貫通する複数の穴を有して構成されている、包装箱。
【請求項11】
請求項7又は8に記載のブランクの製造方法であって、
前記溶着紙は、前記紙層を貫通する複数の穴を有して構成されている、ブランクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装箱の製造方法、包装箱、及びブランクの製造方法に関し、とくに接着性に難がある表面を有するブランクシートを用いた包装箱及びブランクを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「デザイン性に優れたアルミ蒸着紙等の機能性被膜が設けられた箱体形成片を使用し、作業工程が簡単でコストが安価であり、高い接着強度により蓋部を閉鎖可能な包装用箱を提供する。」、「白板紙の表面に機能性被膜が取り付けられたブランクシートから一体的に打ち抜かれた箱体形成片から成る。側面に折罫線を介して連接され、箱体形成片の一部に糊付けされて筒体の開口部を閉鎖する内蓋片と、内蓋片に折り返して接着される折返片を備える。内蓋片に折返片が折り重ねられて糊付けされた状態で折返片の裏面が露出し、内蓋片とともに折返片の裏面が箱体形成片の一部に糊付けされる。内蓋片は、折返片の裏面が露出する透孔を備え、折返片には透孔内に突出するエンボス部を備える。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装箱(包装用箱)の素材として、アルミニウム等の金属をPET(PolyEthylene Terephthalate)樹脂等の樹脂フィルムの面に蒸着し、ベースペーパー(パルプ紙、白板紙)の表面に貼り合わせた蒸着紙がある。蒸着紙は、金属光沢の平滑な表面を有して美観性に優れるため、例えば、内容物の質感や高級感を高めることを目的として、化粧品や医薬品、食品、嗜好品等の包装箱の素材として用いられる。
【0005】
しかし蒸着紙はその表面が上記の通り平滑な金属質であるため接着剤の含浸性に乏しく、とくに自動包装ラインでの包装箱の封緘において一般的に用いられているタイプの接着剤(ホットメルト等)では必ずしも十分な接着強度を得ることができず、接着性の確認も難しいという課題がある。また昨今、医薬品や食品等の業界においては、包装箱の封緘性の基準が厳しくなってきており、事前開封や改竄等を確実に検知できるようにするため、包装箱には内容物の梱包時に確実に封緘できることが求められる。
【0006】
上記特許文献1では、外蓋片の裏面を糊により内蓋片の表面に糊付けし、透孔に露出する折返片の白板紙の状態の裏面を接着し、さらに折返片の裏面にエンボス部を設けて内蓋片と面一にすることで接着強度を確保しようとしている。
【0007】
しかし特許文献1の構成では、接着面積が折返片の白板紙の状態の裏面の透孔から露出する部分の面積に限られるため必ずしも十分な接着強度を得ることができない。また折返片や透孔、エンボス部を形成する必要があり、構造や製造工程も複雑になる。
【0008】
本発明はこうした背景に鑑みてなされたもので、包装箱の素材として接着性に難がある表面を有するブランクシートを用いた場合でも十分な接着強度を確保することが可能な、包装箱の製造方法、包装箱、及びブランクの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の一つは、ベースペーパーの表面に蒸着フィルムの層もしくは金属層が形成されてなるブランクシートを用いた包装箱の製造方法であって、表面に紙層が形成され裏面に樹脂層が形成されてなる溶着紙を、前記ブランクシートの前記表面のブランクが形成される領域の、前記包装箱を封緘するための接着剤が塗布される領域に熱溶着し、前記ブランクシートから切り抜いた前記ブランクを用いて包装箱を組み立てる。
【0010】
本発明によれば、ベースペーパーの表面に蒸着フィルムの層もしくは金属層が形成されてなるブランクシートから、包装箱を封緘するための接着剤が塗布される領域に紙層が形成されたブランクを得ることができ、ホットメルト等の接着剤を塗布して包装箱を確実に封緘することができる。そのため、例えば、自動包装ラインにおいて迅速かつ確実に包装箱10を封緘することができる。
【0011】
本発明の他の一つは、上記製造方法であって、前記紙層の素材として50g/m2程度の厚み(坪量)の用紙を用いる。
【0012】
このように紙層の素材として50g/m2程度の厚み(坪量)の用紙を用いることで、包装箱を封緘した際に包装箱に膨らみを生じさせない程度に薄い、熱溶着する際に必要な熱伝導性を有する、ホットメルト等の硬化速度の早い接着剤が含浸しやすく接着性がよい、接着した際に剥がれにくく層間剥離が生じにくい等、包装箱の封緘に際して求められる様々な要件を満たすことができる。
【0013】
本発明の他の一つは、上記製造方法であって、前記ブランクシートは、前記溶着紙の前記樹脂層に熱溶着される樹脂層を有する。
【0014】
このようにブランクシートとして溶着紙の樹脂層に熱溶着される樹脂層を有するものを用いることで、溶着紙を確実にブランクシートに熱溶着することができる。
【0015】
本発明の他の一つは、上記製造方法であって、前記ブランクシートは、蒸着フィルムをベースペーパーの表面にラミネートした構造を有する。
【0016】
本発明の他の一つは、上記製造方法であって、前記ブランクは、筒体を構成する4つの側面板、前記筒体の一方の端面を塞ぐように前記側面板の一つである第1側面板に延設される第1端面板、前記筒体の他方の端面を塞ぐように前記第1側面板に延設される第2端面板、前記第1端面板に延設される第1差込部、前記第2端面板に延設される第2差込部、を含み、前記包装箱は、前記第1差込部の表面を前記第1側面板に対向する前記側面板である第2側面板の裏面に接着するとともに、前記第2差込部の表面を前記第2側面板の裏面に接着することにより封緘され、前記溶着紙を、前記第1差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域、及び前記第2差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域に熱溶着する。
【0017】
本発明によれば、第1差込部の表面を第2側面板の裏面に、また第2差込部の表面を第2側面板の裏面に確実に接着することができ、包装箱を確実に封緘することができる。
【0018】
本発明の他の一つは、上記製造方法により製造される包装箱であって、前記4つの側面板、前記第1端面板、前記第2端面板、前記第1差込部、前記第2差込部、を有し、前記第1差込部の表面が前記第1側面板に対向する前記側面板である第2側面板の裏面に接着されるとともに、前記第2差込部の表面が前記第2側面板の裏面に接着することにより封緘され、前記溶着紙が、前記第1差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域、及び前記第2差込部の表面の前記接着に用いる接着剤が塗布される前記ブランクの領域に熱溶着されてなる。
【0019】
本発明の他の一つは、包装箱用のブランクの製造方法であって、包装箱の表面になる側の面に蒸着フィルム層もしくは金属層が形成されてなるブランクシートを準備し、前記ブランクシートの前記蒸着フィルム層もしくは前記金属層が形成されている面において、前記ブランクの外形形状をなすべく定められた領域のうち、前記ブランクから前記包装箱を組み立てる際に接着剤が塗布される領域に、一方の面が紙層であり他方の面が樹脂層である溶着紙の前記樹脂層を熱溶着し、前記ブランクシートから前記ブランクの外形形状をなすべく定められた前記領域を切り抜く。
【0020】
本発明によれば、蒸着フィルム層や金属層が形成されていない通常のブランクの場合と同種類の接着剤を用いて包装箱を封緘することが可能なブランクを得ることができる。
【0021】
本発明の他の一つは、上記製造方法であって、前記ブランクは、筒体となる4つの側面板と、前記筒体の一方の端面を塞ぐべく前記側面板の一つである第1側面板に延設される第1端面板と、前記筒体の他方の端面を塞ぐべく前記第1側面板に延設される第2端面板と、前記第1側面板に対向する前記側面板である第2側面板の裏面に前記接着剤によって接着されるべく、前記第1端面板に延設される第1差込部と、前記第2側面板の裏面に前記接着剤によって接着されるべく、前記第2端面板に延設される第2差込部と、を含み、前記溶着紙が、前記第1差込部及び前記第2差込部の前記接着剤が塗布される各領域に熱溶着されてなる。
【0022】
本発明によれば、蒸着フィルム層や金属層が形成されていない通常のブランクの場合と同種類の接着剤を用いて、第1差込部の表面を第2側面板の裏面に、また第2差込部の表面を第2側面板の裏面に接着可能なブランクを得ることができる。
【0023】
本発明の他の一つは、包装箱用のブランクであって、包装箱の展開形状をなし、前記包装箱の表面になる側の面に蒸着フィルム層もしくは金属層が形成されてなるブランク部材と、一方の面が紙層であり、他方の面が樹脂層である溶着紙と、を有し、前記ブランク部材の前記蒸着フィルム層もしくは前記金属層が形成されている面の、前記包装箱を組み立てる際に接着剤が塗布される領域に、前記溶着紙の前記樹脂層が熱溶着されてなる。
【0024】
本発明によれば、表面が蒸着フィルム層や金属層ではない包装箱を組み立てる際に用いる接着剤と同種類の接着剤を用いて封緘することができる。
【0025】
本発明の他の一つは、上記溶着紙は、前記紙層を貫通する複数の穴を有して構成されている。
【0026】
本発明によれば、溶着紙とブランク部材との間のエア混入を防止し、熱溶着の強度を向上させることができる。
【0027】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、包装箱の素材として接着性に難がある表面を有するブランクシートを用いた場合でも十分な接着強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】包装箱の開封前の状態(封緘状態)を示す斜視図である。
【
図2】包装箱の開封後の状態(開封状態)を示す斜視図である。
【
図3】ブランクを包装箱の表面側から眺めた図である。
【
図4】ブランクを包装箱の裏面側から眺めた図である。
【
図5】包装箱の製造から廃棄までの流れを説明するフローチャートである。
【
図6】ブランクが形成されたブランクシートの一例であり、ブランクシートの表面に溶着紙テープが熱溶着されている様子を示す図である。
【
図7】ブランクシートの表面に溶着紙テープを熱溶着してカッティングしている様子を示す図である。
【
図8】カッティング後のブランクシートの表面の様子を示す図である。
【
図9】溶着紙テープの構造を説明する図(断面図)である。
【
図10A】ブランクシートの構造を説明する図(断面図)である。
【
図10B】ブランクシートの他の構造を説明する図(断面図)である。
【
図12A】溶着紙テープの構造を説明する図(断面図)である。
【
図12B】溶着紙テープの構造を説明する図(断面図)である。
【
図13】ブランクを包装箱の表面側から眺めた図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態につき図面とともに説明する。尚、以下の説明において、同一の又は類似する構成について同一の符号を付して重複した説明を省略することがある。
【0031】
==第1実施形態==
図1は、本発明の第1実施形態として説明する包装箱10の開封前の状態(封緘(封函)状態)を示す斜視図である。また
図2は、包装箱10の開封後の状態(開封状態)を示す斜視図である。これらの図に示すように、包装箱10の全体は略直方体状を呈する。包装箱10は、例えば、医薬品、化粧品、嗜好品、菓子等の収納容器として用いられる。包装箱10の表面には、例えば、包装箱10の内容物に関する情報が印字もしくは印刷される。
【0032】
図3は、
図1又は
図2に示した包装箱10の形成片(以下、「ブランク5」とも称する。)を包装箱10の表面側から眺めた図であり、
図4は、ブランク5を、包装箱10の裏面側から眺めた図である。ブランク5は、例えば、カッタマシン等の製造機械でブランクシート2を打ち抜く(もしくは切り抜く)ことにより形成される。
【0033】
尚、詳細は後述するが、本実施形態に係るブランク5は、ブランク部材6と溶着紙K1、K2とを有して構成される。ブランク部材6は、パルプ紙等のベースペーパーの表面に蒸着フィルム層やホイル層が形成された構造を有し、包装箱10の展開形状をなしている。溶着紙K1、K2は、一方の面が紙層であり他方の面が樹脂層となる構造を有しており、ブランク部材6の所定位置に、樹脂層が蒸着フィルム層やホイル層と対面する向きに熱溶着されている。
【0034】
また上記ブランク5は、ブランクシート2の所定位置に溶着紙K1、K2を熱溶着した後、ブランクシート2を、ブランク5の外形形状(包装箱10の展開形状)に沿って切り抜くことにより形成される。
【0035】
ブランクシート2は、樹脂性のフィルム(PET(PolyEthylene Terephthalate)フィルム、PVA(PolyVinyl Alcohol)フィルム、PP(ポリプロピレン(PolyPropylene)フィルム等)にアルミニウム等の金属を蒸着させたもの(以下、蒸着フィルムと称する。)を、厚紙や白板紙等のパルプ紙(ベースペーパー)の表面に貼り合わせたものである。一般的な蒸着フィルムの場合、層厚は、例えば、10~20μm程度である。
【0036】
ブランクシート2は、その表面側にのみ蒸着フィルムが貼り合わされて蒸着フィルムの層が形成され、ブランクシート2の裏面側は全面に亘ってパルプ紙の裏面が露出している。ブランク5は、その表面側がブランクシート2の表面側となるようにブランクシート2から形成される。尚、本実施形態では、このようにブランクシート2としてパルプ紙の表面に蒸着フィルムの層が形成された蒸着紙を用いた場合を一例として説明するが、本発明は、例えば、パルプ紙等のベースペーパー(ベース紙)の表面にアルミ箔等の金属層を貼り合わせてなるホイル紙等、接着性に難がある層がベースペーパーの表面に形成された各種の加工紙を用いたブランクシート2について広く適用可能である。
【0037】
ブランクシート2(もしくはブランク部材6)の裏面(ベースペーパーの裏面)は、ベースペーパーの裏面が露出するため、包装箱10の封緘(商品を装填した後に行われる封緘)に用いられる硬化速度の早い接着剤(ホットメルト等)の含浸性が良く、接着性に優れる。一方、ブランクシート2(もしくはブランク部材6)の表面、即ち蒸着フィルムの表面は、上記裏面に比べて包装箱10の封緘に用いられる上記接着剤の含浸性に乏しく、包装箱10の組み立てや封緘に際して必要とされる接着強度を確保することが難しい。
【0038】
図3に示すように、ブランク5は、包装箱10の展開形状をなしており、夫々の長尺辺が互いに平行になるように連接された4つの側面板(第1側面板11、背面板12、第2側面板13、及び正面板14)、上記4つの側面板の連接方向の一端に延設された接続片17(グルーフラップ)、背面板12の、上記連接方向に対して直角方向の短尺辺の一方に延設された第1端面板15(天面板)、及び背面板12の上記連接方向に対して直角方向の短尺辺の他方に延設された第2端面板16(底面板)を有する。
【0039】
第1側面板11、背面板12、第2側面板13、正面板14、及び接続片17は、夫々の長尺辺を境界としてこの順に連接されており、これらを折り曲げて組み立てることにより、包装箱10の内容物が収納される空間を形成する角筒状の筒体が形成される。ここで上記筒体の形成に際し、接続片17は、例えば、その表面の蒸着フィルムに接着剤が塗布されて第1側面板11の裏面側に接着される。この接着に用いる接着剤としては、例えば、接続片17の表面の蒸着フィルムと第1側面板11の裏面との間を強固に接着可能なタイプのもの(樹脂ポリマーを分散させたエマルジョンタイプの接着剤等)が用いられる。尚、このタイプの接着剤は、前述した封緘に用いる接着剤に比べて十分な強度が得られるまでにやや時間を要するため、自動包装ラインでの包装箱10の封緘には必ずしも適さない。
【0040】
背面板12と正面板14は同形状(略長方形状)であり、これらは前述した筒体の対向する一対の側面を構成する。また第1側面板11と第2側面板13は同形状(略長方形状)であり、これらは前述した筒体の対向する一対の側面を構成する。
【0041】
第1端面板15及び第2端面板16は夫々、4つの側面板で構成される包装箱10の、前述した筒体の対面する2つの端面の全体を塞ぐように機能する。尚、本例では、背面板12又は正面板14の面積が、第1側面板11又は第2側面板13の面積よりも広くなっているが、これらの面積比は必ずしも同図に示す態様に限られない。また各側面板の長尺辺と短尺辺との関係(いずれの辺を長尺辺又は短尺辺とするか)についても同図に示す態様に限られない。
【0042】
図3に示すように、第1側面板11と背面板12との境界には山折線31が、背面板12と第2側面板13との境界には山折線32が、夫々形成されている。また第2側面板13と正面板14との境界には山折線41が、正面板14と接続片17との境界には山折線42が、夫々形成されている。山折線31、山折線32、山折線41、及び山折線42は、いずれも互いに平行である。
【0043】
同図に示すように、第1側面板11の、前述した筒体が形成された状態で第1端面板15が存在する側には、山折線61を介してフラップ111が、また第1側面板11の、前述した筒体が形成された状態で第2端面板16が存在する側には、山折線62を介してフラップ112が、夫々延設されている。また第2側面板13の、前述した筒体が形成された状態で第1端面板15が存在する側には、山折線63を介してフラップ131が、また第2側面板13の、前述した筒体が形成された状態で第2端面板16が存在する側には、山折線64を介してフラップ132が、夫々延設されている。尚、フラップの態様(枚数、形状等)は一例に過ぎない。
【0044】
第1端面板15は、山折線65を介して背面板12に連設されている。また第1端面板15の背面板12が存在する側とは逆側の端辺には、山折線67を介して差込部151(舌片)が連設されている。尚、山折線67の両端部付近は切込線になっているが、これは差込部151を筒体に差し込んで筒体の端面を第1端面板15により閉じる際の差込部151の操作性を向上させるためである。
【0045】
図3に示すように、差込部151の表面の、山折線67の近傍領域151aを除く領域(以下、「溶着領域151b」と称する。)には、裏面(他方の面)に樹脂層(後述する樹脂層92)を有し表面(一方の面)に紙層(後述する紙層91)を有する溶着紙K1が紙層を上(表面側)にして、熱溶着されている。尚、差込部151の近傍領域151aに蒸着フィルムの領域を残しているのは、包装箱10の端面が第1端面板15により閉じられている状態において質感の異なる溶着紙K1の表面が包装箱10の外観に現れにくくして包装箱10の美観性を高めるためである。尚、溶着領域151bの態様(形状、大きさ、数等)は同図に示したものに限定されず、例えば、スポット的に設けてもよい。
【0046】
第2端面板16は、山折線66を介して背面板12に連設されている。また第2端面板16の背面板12が存在する側とは逆側の端辺には、山折線68を介して差込部161(舌片)が連設されている。尚、山折線68の両端部付近は切込線になっているが、これは差込部161を筒体の端面に差し込んで筒体の端面を第2端面板16により閉じる際の差込部161の操作性を向上させるためである。
【0047】
同図に示すように、差込部161の表面の山折線68の近傍領域161aを除く領域(以下、「溶着領域161b」と称する。)には、裏面に樹脂層を有し表面に紙層を有する溶着紙K2が紙層を上(表面側)にして熱溶着されている。尚、差込部161の近傍領域161aに蒸着フィルムの領域を残しているのは、包装箱10の端面が第2端面板16により閉じられている状態において質感の異なる溶着紙K2の表面が包装箱10の外観に現れにくくして包装箱10の美観性を高めるためである。尚、溶着領域161bの態様(形状、大きさ、数等)は同図に示したものに限定されず、例えば、スポット的に設けてもよい。
【0048】
正面板14の、筒体の第1端面板15が設けられる側の端辺の中央付近には、略矩形状(略台形状)の押込部145が形成されている。押込部145の周縁は、包装箱10の開封に際してユーザが外側から押込部145を押し込むことにより破断する破断線1451になっている。
【0049】
<包装箱の組み立てと封緘>
包装箱10の組み立てと封緘は次のようにして行われる。まず第1側面板11、背面板12、第2側面板13、正面板14、及び接続片17を折り曲げて接続片17と第1側面板11とを接着し、前述した角筒状の筒体を形成する。
【0050】
続いて、筒体の底面側の構成である、フラップ112、フラップ132、第2端面板16、及び差込部161を夫々、山折線62、山折線64、山折線66、及び山折線68に沿って折り曲げる。そして差込部161に熱溶着されている溶着紙K2の表面にホットメルト等の硬化速度の早い接着剤を塗布し、差込部161を筒体の端面に沿って差し込み、差込部161の表面を正面板14の裏面に接着して筒体の一方の端面(底面)を閉じる。このように溶着紙K2の紙層が露出する表面に上記接着剤を塗布するので、接着剤が含浸し易く、差込部161と正面板14の裏面とを迅速かつ十分な強度で接着することができる。
【0051】
続いて、以上により底面が閉じられた筒体に内容物を充填し、筒体の天面側の構成である、フラップ111、フラップ131、第1端面板15、及び差込部151を、夫々、山折線61、山折線63、山折線65、及び山折線67に沿って折り曲げる。そして差込部151に熱溶着されている溶着紙K1の表面にホットメルト等の硬化速度の早い接着剤を塗布して差込部151を筒体の端面に沿って差し込み、差込部151の表面を正面板14の裏面に接着して筒体の他方の端面(天面)を閉じる。このように溶着紙K1の紙層が露出する表面に上記接着剤を塗布するので、接着剤が含浸し易く、差込部151と正面板14の裏面とを迅速かつ十分な強度で接着することができる。
【0052】
以上の手順を経ることで包装箱10の組み立てと封緘が完了する。これにより包装箱10は
図1に示した状態になる。
【0053】
<包装箱の開封>
包装箱10の開封は次のようにして行われる。まず
図1に示す封緘(封函)状態の包装箱10に対してユーザが押込部145を親指等で押し込んで破断線1451を破断させ、それにより形成される孔に指を掛けて差込部151とともに第1端面板15を引き上げる。これにより包装箱10は
図2に示した開封状態となる。
【0054】
このように包装箱10の開封に際しては必ず破断線1451を破断させる必要があり、包装箱10が開封されたか否かを第三者が容易に判別することができる。尚、差込部151の表面(ここでは溶着紙K1の紙層)を正面板14の裏面に接着する際の接着剤の塗布は、例えば、ユーザが第1端面板15を引き上げて包装箱10を開封する操作を行う際、当該操作の妨げにならないような態様(位置、形状、大きさ、数、強度等)で行われる。
【0055】
例えば、溶着紙K1の紙層と正面板14の裏面との間の接着強度は、溶着紙K1の樹脂層とブランク部材6の表面の蒸着フィルム層との間の熱溶着の強度よりも弱くなるように設定されている。逆に言えば、溶着紙K1の樹脂層とブランク部材6の表面の蒸着フィルム層との間の熱溶着の強度は、溶着紙K1の紙層と正面板14の裏面との間の接着強度よりも強くなるように設定されている。
【0056】
このため、包装箱10の開封時に、ユーザが押込部145を親指等で押し込んで破断線1451を破断させる際に、差込部151に熱溶着されている溶着紙K1は、破れたり差込部151から剥がれたりすることなく、差込部151に溶着されたまま正面板14の裏面から剥離する。これにより、包装箱10を開封する際に、包装箱10の破損を防止し、包装箱10の美観を維持できるとともに、ユーザに内容物の高級感を感じさせることもできる。
【0057】
また、溶着紙K2についても同様であり、溶着紙K2の紙層と正面板14の裏面との間の接着強度は、溶着紙K2の樹脂層とブランク部材6の表面の蒸着フィルム層との間の熱溶着の強度よりも弱くなるように設定されている。逆に言えば、溶着紙K2の樹脂層とブランク部材6の表面の蒸着フィルム層との間の熱溶着の強度は、溶着紙K2の紙層と正面板14の裏面との間の接着強度よりも強くなるように設定されている。
【0058】
この場合は、例えば包装箱10の解体時に、ユーザが第2端面板16の側から正面板14の裏面に指などを差し込んで、差込部161と正面板14とを分離させようとする際に、差込部161に熱溶着されている溶着紙K2は、破れたり差込部161から剥がれたりすることなく、差込部161に溶着されたまま正面板14の裏面から剥離する。これにより、包装箱10を解体する際においても包装箱10の美観を維持し、ユーザに内容物の高級感を感じさせることができる。
【0059】
<包装箱の製造から廃棄まで>
続いて、
図5に示すフローチャートとともに、包装箱10の製造から廃棄(ブランク形成、組み立て→箱詰め→封緘(封函)→開封→再封→解体→廃棄)までの流れについて説明する。
【0060】
包装箱10の組み立てに際しては、まずブランクシート2からブランク5を形成する(S511)。ブランクシート2からのブランク5の形成は、例えば、カッタマシンや罫線入れ装置等の機械を用いて行うことができるが、手動で行ってもよい。尚、ブランクシート2からブランク5を形成する際の手順の詳細については後述する。
【0061】
続いて、カートニングマシン(製函機)等を用い、ブランク5の4つの側面板(第1側面板11、背面板12、第2側面板13、及び正面板14)及び接続片17を折り曲げる(S512)。
【0062】
続いて、接続片17の表面に接着剤(樹脂ポリマーを分散させたエマルジョンタイプの接着剤等)を塗布し、接続片17の表面を第1側面板11の裏面に接着する(S513)。尚、例えば、包装箱10の製造業者は、輸送(運送)効率のよいこの状態でブランク5を内容物の製造業者(商品の装填と封緘を行う業者)に引き渡す。
【0063】
続いて、カートニングマシン(製函機)等を用いてブランク5を立体的に立ち上げて前述した筒体を形成し、差込部161の表面に接着剤(ホットメルト等の硬化速度の早いもの)を塗布し、差込部161の表面を上記接着剤により正面板14の裏面に接着することにより筒体の底面(端面)を閉じる(S514)。
【0064】
続いて、箱詰機等を用いて筒体に包装箱10の内容物を箱詰めし(S515)、差込部151をその表面に接着剤(ホットメルト等の硬化速度の早いもの)を塗布し、差込部151の表面を上記接着剤により正面板14の裏面に接着することにより筒体の天面(端面)を閉じ、包装箱10を封緘(封函)する(S516)。
【0065】
尚、カートニングマシン(製函機)等を用いて製函する場合、製函機の構造上の制約や製函時の時間的な制約により、差込部151や差込部161の表面を正面板14の裏面に迅速に接着する必要があるため、上記の接着剤としてホットメルト等の硬化速度の早いものが選択されるが、ホットメルト等の硬化速度の早い接着剤は一般に蒸着フィルムに対して十分な強度を得ることが難しい。
【0066】
しかし本実形態の包装箱10は、差込部151の表面に溶着紙K1を、また差込部161の表面に溶着紙K2を、夫々熱溶着し、差込部151の表面にはホットメルト等の硬化速度の早い接着剤が含浸しやすい溶着紙K1の紙層を、差込部161の表面にはホットメルト等の硬化速度の早い接着剤が含浸しやすい溶着紙K2の紙層を、夫々露出させているので、差込部151,161の表面を正面板14の裏面に迅速かつ強固に接着することができ、製函機等を用いて効率よく包装箱10を封緘することができる。
【0067】
その後、例えば、包装箱10は出荷されて、所定の流通経路等を経て消費者等のユーザの手にわたる。ユーザは包装箱10の封緘を解いて包装箱10を開封し内容物を取り出す(S517)。尚、場合によっては、包装箱10は残りの内容物の保管等のために再封されて継続使用される(S518)。その後、最終的に使用済みとなった包装箱10は解体されて廃棄される(S519,S520)。
【0068】
<ブランクの形成>
続いて、ブランクシート2からブランク5を形成する手順について説明する。
【0069】
まず、ブランクシート2を準備する。
図6に複数(本例では3つ)のブランク5が形成される(切り出される)ブランクシート2の一例を示している。同図はブランクシート2を蒸着フィルムが形成されている表面側から眺めた図である。例示するブランクシート2の全体は長方形状を呈する。一枚のブランクシート2から形成するブランク5の数は必ずしも限定されない。ブランクシート2において、各ブランク5として切り出される領域(ブランク5の外形形状をなすべく定められた領域)の間には若干の隙間が設けられている。尚、説明の便宜上、ブランクシート2の短辺の方向にx軸を、ブランクシート2の長辺の方向にy軸を設定する。
【0070】
ブランク5として切り出される3つの領域は、4つの側面板(第1側面板11、背面板12、第2側面板13、及び正面板14)が連設される方向に並列してブランクシート2に配置される。またブランク5として切り出される3つの領域は、夫々の前述した溶着領域151b又は溶着領域161bが、y軸に沿って一列に並ぶようにブランクシート2に配置される。この例では、ブランク5として切り出される3つの領域を、各ブランク5の夫々の山折線61、山折線65、及び山折線63(もしくは山折線62、山折線66、及び山折線64)が、y軸に平行な一直線上に位置するように配置している。
【0071】
次に、ブランクシート2の蒸着フィルムが形成されている面において、ブランク5の外形形状をなすべく定められた領域のうち、包装箱10を組み立てる際に接着剤が塗布される領域(
図6に示す溶着領域151b又は溶着領域161b)に、溶着紙K1及び溶着紙K2を熱溶着する。溶着領域151b及び溶着領域161bへの、溶着紙K1及び溶着紙K2の熱溶着は、例えば、次のようにして行われる。
【0072】
まず同図に示すように、ブランクシート2に設定されるブランク5として切り出される3つの領域のうち、-x側の3つの溶着領域151bに、夫々を含む大きさの矩形帯状の溶着紙テープT1をy軸に平行に熱溶着する。またブランクシート2に設定されるブランク5として切り出される3つの領域のうち、+x側の3つの溶着領域161bに、夫々を含む大きさの矩形帯状の溶着紙テープT2をy軸に平行に熱溶着する。尚、これらの熱溶着の工程は、例えば、熱転写装置を用いて行うことができる。
【0073】
続いて、ブランクシート2に熱溶着されている溶着紙テープT1及び溶着紙テープT2に刃入れを行い、これらを夫々、溶着紙K1及び溶着紙K2の形状になるように不要部分をカットする。尚、この工程は、例えば、カッティングマシンを用いて行うことができる。
【0074】
図7に上記熱溶着及びカッティングを行っている様子を示す。また
図8にカット後のブランクシート2の状態を示す。
【0075】
その後、カッティングマシン等を用いてブランクシート2からブランク5を打ち抜く。
【0076】
尚、以上に示した工程は、いずれも熱転写装置やカッティングマシンを用いて自動的に行うことができる。そのため、本実施形態の包装箱10(ブランク5)は、従来工程を大きく変更することなく、例えば、既存の設備を利用して容易に実施することができる。
【0077】
<溶着紙テープの構造>
図9は、一例として示す溶着紙テープT1,T2の構造を説明する断面図である。同図に示すように、溶着紙テープT1,T2は、一方の面が紙層91であり他方の面が樹脂層92となっており、紙層91の下面にラミネート加工を行うことにより、ブランクシート2に熱溶着する側の面が樹脂層92(例えば15μm程度の層厚のPET樹脂層)になるように形成されている。
【0078】
ここで溶着紙テープT1,T2には、前述した筒体の各端面を第1端面板15や第2端面板16で閉じた際に包装箱10に膨らみを生じさせない程度に薄いこと、熱溶着する際に必要な熱伝導性を有すること、紙層91がホットメルト等の硬化速度の早い接着剤が含浸しやすく接着性がよいこと、差込部151,161の表面を正面板14の裏面に接着した際に剥がれにくく層間剥離が生じにくいこと、等の条件を満たすことが要求される。上記要求を満たすために、紙層91の素材として、例えば、50g/m2程度の厚み(坪量)の用紙を用いる。
【0079】
<ブランクシート(蒸着紙、ホイル紙)の構造>
図10Aに本実施形態で例示するブランクシート2の構造を説明する断面を示す。例示するブランクシート2は、パルプ紙等のベースペーパー101の表面に、アルミ蒸着フィルム等の蒸着フィルム103を、ラミネート層102を介して接合(ラミネート加工)した構造を有する。同図に示すように、蒸着フィルム103は、包装箱10(ブランク5)の表面側の層を形成する蒸着層1032と、PET樹脂フィルム等からなるフィルム層1031とを有する。この例では、ブランクシート2の表面は蒸着層1032となる。
【0080】
図10Bは、他の一例として示すブランクシート2の構造を説明する断面図である。例示するブランクシート2は、
図10Aに示したブランクシート2の構造において、蒸着フィルム103の表裏を反転した構造を有する。その他の構造については
図10Aと同様である。このブランクシート2の場合、ブランクシート2の表面にフィルム層1031が露出するため、溶着紙テープT1,T2の熱溶着性を高めることができる。
【0081】
==第2実施形態==
第2実施形態では、溶着紙K1、K2に代わって、溶着紙K3、K4を用いてブランク5や包装箱10を形成する。尚、第2実施形態では、溶着紙K1、K2に代わって溶着紙K3、K4を用いる以外の点は第1実施形態と共通するため、重複する説明を適宜省略する。
【0082】
溶着紙K3は、
図11に示すような帯状の溶着紙テープT3を、溶着紙K3の形状になるように切り抜いたものであり、溶着紙K4は、
図11に示すような帯状の溶着紙テープT4を溶着紙K4の形状になるように切り抜いたものである。具体的には、溶着紙K3、K4は、
図7に示したように、ブランクシート2に溶着紙テープT3及び溶着紙テープT4を熱溶着した後に、カッティングマシンを用いて刃入れを行い、夫々溶着紙K3及び溶着紙K4の形状になるように不要部分をカットすることにより形成することができる。
【0083】
溶着紙テープT3、T4は、溶着紙テープT1、T2と同様に、いずれも、一方の面が紙層91であり他方の面が樹脂層92となっており、紙層91の下面にラミネート加工を行うことにより、ブランクシート2に熱溶着する側の面が樹脂層92(例えば15μm程度の層厚のPET樹脂層)になるように形成されている。
【0084】
しかしながら、溶着紙テープT3、T4には、
図11に示すように、複数の穴200が形成されている。そしてこれらの穴200は、
図12Aに示すように、紙層91と樹脂層92とを貫通するように形成されている。
【0085】
このため、溶着紙テープT3、T4をブランクシート2に熱溶着する際に、溶着紙テープT3、T4とブランクシート2との間に入り込んだ空気を穴200から排出することができ、溶着紙テープT3、T4をより確実にブランクシート2に密着させることが可能となる。これにより、溶着紙K3、K4とブランク部材6との間のエア混入を防止し、熱溶着の強度を向上させることができる。
【0086】
したがって、包装箱10の開封時に、差込部151に熱溶着されている溶着紙K3は、破れたり差込部151から剥がれたりすることなく、差込部151に溶着されたまま正面板14の裏面から剥離する。これにより、包装箱10の破損を防止し、包装箱10の美観を維持できるとともに、ユーザに内容物の高級感を感じさせることができる。
【0087】
また包装箱10の解体時も同様に、差込部161に熱溶着されている溶着紙K4は、破れたり差込部161から剥がれたりすることなく、差込部161に溶着されたまま正面板14の裏面から剥離する。これにより、包装箱10の美観を維持できるとともに、ユーザに内容物の高級感を感じさせることができる。
【0088】
また包装箱10の封緘時においては、差込部161の表面(溶着紙K4の紙層91の表面)を正面板14の裏面に接着する際に、溶着紙K4の表面に塗布された接着剤が穴200内に入り込むことにより、差込部161(溶着紙K4の表面)と正面板14の裏面との接着強度を向上させることができる。
【0089】
同様に、差込部151の表面(溶着紙K3の紙層91の表面)を正面板14の裏面に接着する際にも、溶着紙K3の表面に塗布された接着剤が穴200内に入り込むことにより、差込部151(溶着紙K3の表面)と正面板14の裏面との接着強度を向上させることができる。
【0090】
つまり、溶着紙K3、K4に複数の穴200が形成されていることにより、溶着紙K3、K4とブランク部材6の蒸着フィルム103との間の熱溶着の強度を向上させることができるとともに、溶着紙K3、K4と正面板14の裏面(ブランク部材6のベースペーパー101)と接着強度を向上させることもできる。
【0091】
尚、ブランク5の差込部151の溶着領域151bに溶着紙K3が熱溶着され、ブランク5の差込部161の溶着領域161bに溶着紙K3が熱溶着されている様子を、
図13に示す。
【0092】
また溶着紙テープT3、T4は、穴200の開いていない溶着紙テープT1、T2に不図示の針を貫通させることにより穴200を開け、その後、
図7に示すようなロール状に巻き取られるが、穴200を開ける際に針を樹脂層92の側から紙層91の側に向けて貫通させるようにすると、その後の巻き取り工程において、溶着紙テープK3、K4の幅方向のブレを小さくでき、ロールの端面を揃えることができる。
【0093】
このように、樹脂層92の側から紙層91の側に向けて針を貫通させるようにして作成された溶着紙テープT3、T4は、
図12Bに示すように、各穴200の周囲が、紙層91の側では凸となり、樹脂層92の側では凹となる。このように樹脂層92では、穴200の周囲に凹部が形成されるため、溶着紙テープT3、T4をブランク部材6に溶着する際に、溶着紙テープT3、T4とブランク部材6との間にエアが混入したとしても、穴200の周囲の凹部分からエアが穴200に向けて抜けやすくなっている。
【0094】
尚、溶着紙テープT3、T4の穴200の周囲の凹部(樹脂層92側)及び凸部(紙層91側)は、
図7に示したように、溶着紙テープT3、T4がブランクシート2に熱溶着される際に熱伝導板により押圧されることにより、
図12Aに示したように平らになるため、ブランク5の美観を損ねることがない。
【0095】
また、溶着紙K3、K4、及び、溶着紙テープT3、T4に形成される穴200は、紙層91及び樹脂層92の両方を貫通しなくても、少なくとも紙層91を貫通する形態であればよい。この場合であっても、溶着紙テープT3、T4をブランクシート2に熱溶着する際に溶着紙テープT3、T4とブランクシート2との間に入り込んだ空気は、樹脂層92が、例えば熱で溶解している間に、紙層91に形成された穴200から排出される。このため、溶着紙テープT3、T4をより確実にブランクシート2に密着させることが可能となる。そして、溶着紙K3、K4とブランク部材6との間のエア混入を防止し、熱溶着の強度を向上させることができる。
【0096】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、包装箱10のブランク5を形成するブランクシート2として、表面に蒸着紙やホイル紙等の接着性に難がある層が形成されている加工紙を用いた場合でも、包装箱10の封緘に際して必要な接着強度を確保することができる。そのため、例えば、自動包装ラインにおいて迅速かつ確実に包装箱を封緘することができる。
【0097】
また、このような接着性に難がある加工紙を用いたブランク5から包装箱10を組み立てて内容物を収容して封緘する業者は、このような接着性に難がある包装箱10を封緘する場合であっても、加工紙ではない厚紙や白板紙等のパルプ紙からなる包装箱を封緘する場合に用いる接着剤を用いることが可能となる。つまり、包装箱10の素材が加工紙であっても加工紙でなくても、接着剤を共通化することが可能になる。このため、どのような包装箱を封緘する場合であっても、接着剤の入れ替え工程が不要となり、製品の製造工程の合理化や製造コストの削減を図ることも可能となる。
【0098】
さらに、第2実施形態で説明したような複数の穴200が形成された溶着紙テープT3、T4(溶着紙K3、K4)を用いてブランク5を作成することにより、より強固に溶着紙K3、K4をブランク部材6に密着させることが可能となる。
【0099】
さらに、上記各実施形態では、ブランク5の接続片17には、樹脂ポリマーを分散させたエマルジョンタイプのような、接続片17の表面の蒸着フィルム103と第1側面板11の裏面のベースペーパー101との間を強固に接着可能なタイプの接着剤を用いたが、接続片17の表面の蒸着フィルム103にも、溶着紙K1ないしK4と同様の溶着紙を熱溶着するようにしてもよい。このような態様によれば、接続片17に塗布する接着剤も、加工紙ではない厚紙や白板紙等のパルプ紙からなる包装箱を封緘する場合に用いる接着剤と共通化することが可能になる。
【0100】
尚、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0101】
2 ブランクシート、5 ブランク、6 ブランク部材、10 包装箱、11 第1側面板、12 背面板、13 第2側面板、14 正面板、15 第1端面板、91 紙層、92 樹脂層、102 ラミネート層、103 蒸着フィルム、フィルム層1031、蒸着層 1032、151 差込部、16 第2端面板、161 差込部、200 穴、K1 溶着紙、K2 溶着紙、K3 溶着紙、K4 溶着紙、151a 近傍領域、151b 溶着領域、161a 近傍領域、1616b 溶着領域、T1 溶着紙テープ、T2 溶着紙テープ、T3 溶着紙テープ、T4 溶着紙テープ