(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】除染システム、除染方法及びフィルタ
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20240813BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20240813BHJP
A61L 2/28 20060101ALI20240813BHJP
A61L 101/36 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
A61L2/20
F24F7/06 101A
A61L2/28
A61L101:36
(21)【出願番号】P 2020094017
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000111085
【氏名又は名称】ニッタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】池田 卓司
(72)【発明者】
【氏名】茂田 誠
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-181491(JP,A)
【文献】特開2006-263173(JP,A)
【文献】特開2009-234887(JP,A)
【文献】特開2010-051351(JP,A)
【文献】特開2007-163108(JP,A)
【文献】特開2005-312799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
F24F 7/06
A61L 2/28
A61L 101/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋と前記部屋の空調に用いられるダクトとの間に配置されたフィルタを除染するように構成された除染システムであって、
前記フィルタを覆い前記フィルタと前記部屋とを隔離するように構成されたカバーと、
前記ダクトと前記フィルタとの間の第1空間、及び、前記フィルタと前記カバーとの間の第2空間において除染ガスを循環させるように構成されたガス循環装置とを備え、
前記ガス循環装置は、
ガス循環装置本体と、
前記ガス循環装置本体と接続される第1管および第2管と、を有し、
前記第1管は、前記第1空間と連通し、
前記第2管は、前記第2空間と連通する、除染システム。
【請求項2】
前記ガス循環装置は、前記第1空間に前記除染ガスを導入し、前記第2空間から前記除染ガスを吸引することによって、前記第1空間及び前記第2空間において前記除染ガスを循環させるように構成されている、請求項1に記載の除染システム。
【請求項3】
前記フィルタは、前記部屋と前記ダクトとの間に配置されたケース内に配置されており、
前記ケースには、前記第1空間に連通するように構成された第1孔が形成されており、
前記カバーには、前記第2空間に連通するように構成された第2孔が形成されており、
前記第1管は、前記第1孔と接続され、
前記第2管は、前記第2孔と接続される、請求項2に記載の除染システム。
【請求項4】
前記フィルタには、前記第1空間に連通するように構成された第1孔が形成されており、
前記カバーには、前記第2空間に連通するように構成された第2孔が形成されており、
前記第1管は、前記第1孔と接続され、
前記第2管は、前記第2孔と接続される、請求項2に記載の除染システム。
【請求項5】
前記第2空間に配置されたBI(Biological Indicator)をさらに備える、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の除染システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の除染システムを用いた除染方法であって、
前記カバーによって前記フィルタを覆い前記フィルタと前記部屋とを隔離するステップと、
前記第1管を介して前記第1空間に
前記除染ガスを導入する、または、前記第1空間から前記除染ガスを吸引するステップと、
前記第2管を介して前記第2空間から前記除染ガスを吸引する、または、前記第2空間に前記除染ガスを導入するステップと、を含む、除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除染システム、除染方法及びフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2008-11926号公報(特許文献1)は、複数の処理室の滅菌処理を行なう滅菌システムを開示する。この滅菌システムにおいては、空調システムのダクト内に除染ガス発生装置が配置され、ダクトを介して除染ガスが各処理室に導入される。これにより、各処理室のバイオ除染が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている滅菌システムによれば、除染ガスの流路上に配置されたフィルタのバイオ除染を行なうことができる。しかしながら、仮にこの滅菌システムをフィルタのバイオ除染のために用いる場合には、除染ガスがダクト内を流通して各部屋に向かうため、フィルタのバイオ除染のために多数の部屋のバイオ除染も行なうことが必要になる。仮に一部の部屋のみのバイオ除染を行なう場合には、ダクト内に多数のダンパを設置することが必要になる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、空調システムの構成を過度に複雑化することなく除染対象のフィルタを除染可能な除染システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う除染システムは、部屋と部屋の空調に用いられるダクトとの間に配置されたフィルタを除染するように構成されている。除染システムは、カバーと、ガス循環装置とを備える。カバーは、フィルタを覆いフィルタと部屋とを隔離するように構成されている。ガス循環装置は、ダクトとフィルタとの間の第1空間、及び、フィルタとカバーとの間の第2空間において除染ガスを循環させるように構成されている。
【0007】
この除染システムにおいては、除染ガスが、ダクトを含む空調システム全体で循環するわけではなく、第1空間及び第2空間で循環する。すなわち、この除染システムにおいては、より狭い範囲で除染ガスが循環する。したがって、この除染システムによれば、空調システムにおいて多数のダンパを設置する等することなくフィルタを除染することができる。
【0008】
この除染システムにおいて、ガス循環装置は、第1空間に除染ガスを導入し、第2空間から除染ガスを吸引することによって、第1空間及び第2空間において除染ガスを循環させるように構成されていてもよい。
【0009】
ダクトにダンパが設けられていない場合に、仮に第2空間から除染ガスが吸引されないと、第1空間に導入された除染ガスはダクトに多量に流入する。その結果、除染ガスが十分にフィルタを通過しない。この発明に従う除染システムにおいては、第2空間から除染ガスが吸引される。したがって、第1空間に導入された除染ガスの多くがフィルタを通過して第2空間に向かう。その結果、この除染システムによれば、ダクトにダンパが設けられなくてもフィルタを除染することができる。
【0010】
また、この除染システムにおいて、フィルタは、部屋とダクトとの間に配置されたケース内に配置されており、ケースには、第1空間に連通するように構成された第1孔が形成されており、カバーには、第2空間に連通するように構成された第2孔が形成されており、ガス循環装置は、第1孔と連通するように構成された第1管と、第2孔と連通するように構成された第2管とを備えていてもよい。
【0011】
この除染システムによれば、ケースに形成された第1孔を介して第1空間に除染ガスを導入することができる。この方式は、建物を新たに建てる場合等、本発明における特別なケースを設置しやすい場合に特に有効である。
【0012】
また、この除染システムにおいて、フィルタには、第1空間に連通するように構成された第1孔が形成されており、カバーには、第2空間に連通するように構成された第2孔が形成されており、ガス循環装置は、第1孔と連通するように構成された第1管と、第2孔と連通するように構成された第2管とを備えていてもよい。
【0013】
この除染システムによれば、フィルタに形成された第1孔を介して第1空間に除染ガスを導入することができる。この方式は、建物における大規模な工事を必要としないため、既存の空調システムを利用して本除染システムを導入する場合に特に有効である。
【0014】
また、この除染システムは、第2空間に配置されたBI(Biological Indicator)をさらに備えていてもよい。
【0015】
この除染システムによれば、BIの死滅を確認することによって、フィルタの除染の完了を確認することができる。
【0016】
また、本発明の他の局面に従う除染方法は、部屋と部屋の空調に用いられるダクトとの間に配置されたフィルタを除染する方法である。この除染方法は、カバーによってフィルタを覆いフィルタと部屋とを隔離するステップと、ダクトとフィルタとの間の第1空間、及び、フィルタとカバーとの間の第2空間において除染ガスを循環させるステップとを含む。
【0017】
この除染方法においては、除染ガスが、ダクトを含む空調システム全体で循環するわけではなく、第1空間及び第2空間で循環する。すなわち、この除染方法においては、より狭い範囲で除染ガスが循環する。したがって、この除染方法によれば、空調システムにおいて多数のダンパを設置する等することなくフィルタを除染することができる。
【0018】
また、本発明の他の局面に従うフィルタは、部屋と部屋の空調に用いられるダクトとの間に配置される。フィルタは、除染システムによって除染されるように構成されている。除染システムは、カバーと、ガス循環装置とを備える。カバーは、フィルタを覆いフィルタと部屋とを隔離するように構成されている。ガス循環装置は、ダクトとフィルタとの間の第1空間、及び、フィルタとカバーとの間の第2空間において除染ガスを循環させるように構成されている。フィルタには、第1空間に連通するように構成された第1孔が形成されている。カバーには、第2空間に連通するように構成された第2孔が形成されている。ガス循環装置は、第1孔と連通するように構成された第1管と、第2孔と連通するように構成された第2管とを備える。
【0019】
このフィルタによれば、第1孔を介して第1空間に除染ガスを導入することができる。このフィルタによって除染システムを実現する方式は、建物における大規模な工事を必要としないため、既存の空調システムを利用して除染システムを導入する場合に特に有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、空調システムの構成を過度に複雑化することなく除染対象のフィルタを除染可能な除染システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1に従う除染システムの断面を模式的に示す図である。
【
図2】ガス循環装置の一例を模式的に示す図である。
【
図3】カバーの底面部分を斜め下方から模式的に示した図である。
【
図4】除染システムの動作手順を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2に従う除染システムの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0023】
[1.実施の形態1]
<1-1.概要>
医薬品又は再生医療製品等の製造又は実験を行なう部屋においては、バイオ除染(以下、単に「除染」とも称する。)が行なわれる。これにより、部屋内に存在する微生物の数が抑制される。このような部屋において、部屋の外部から流入する微生物(細菌、真菌、ウイルス等)は、例えば、部屋の吹き出し口に設置されたフィルタによって捕集される。フィルタの使用を通じてフィルタに微生物が付着するため、フィルタも除染する必要がある。本実施の形態1に従う除染システム10は、このようなフィルタの除染に用いられる。以下、除染システム10について詳細に説明する。
【0024】
<1-2.除染システムの構成>
図1は、本実施の形態1に従う除染システム10の断面を模式的に示す図である。除染システム10においては、フィルタ400の除染が行なわれる。フィルタ400としては、例えば、中性能フィルタ、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ及びULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタが挙げられる。フィルタ400は、例えば、ろ材と、ろ材を収容する収容部材とによって構成されている。ろ材の種類としては、例えば、ガラスろ材、PTFEろ材、不織布ろ材及びナノファイバーを使用したろ材等が挙げられる。
【0025】
図1に示されるように、除染システム10は、ケース200と、カバー300と、ガス循環装置100とを含んでいる。ケース200は、中空の箱状であり、天井700内に埋め込まれている。ケース200内における部屋寄りの位置にフィルタ400が取り付けられることによって、部屋の吹き出し口が形成されている。ケース200は、例えば、後述の除染ガスで腐食せず、かつ、後述の除染ガスの吸引で変形しない材料で構成される。ケース200は、例えば、金属又は樹脂で構成される。金属としては、ステンレス鋼材(SUS)又はアルミニウムが好ましい。なお、腐食防止のための塗装が表面に施された鉄、銅、亜鉛鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)等が用いられてもよい。
【0026】
ケース200には、ダクト600を接続する孔が形成されている。ダクト600は、複数の部屋における空調を行なう空調システムの一部である。ケース200に形成された孔を介してケース200とダクト600とが接続されている。すなわち、フィルタ400は、部屋とダクト600との間に配置されている。さらに、ケース200には、ガス導入管120を接続するための孔H1が形成されている。ガス導入管120については後程詳しく説明する。
【0027】
カバー300は、部屋側からフィルタ400を覆い、フィルタ400と部屋とを隔離するように構成されている。カバー300の上端は開放されており、カバー300は底面と底面の周囲から上方に延びる側面とを有している。なお、カバー300の形状は、これに限定されず、フィルタ400の開口を覆うことができればどのような形状であってもよい。
【0028】
カバー300は、ケース200の部屋側の端部に取り付けられている。カバー300のケース200への取付けは、種々の公知の取付手段を介して行なわれ、例えば、ネジ、パチン錠又はナットを介して行なわれる。カバー300とケース200との接触位置には、例えば、ゴム等の弾性部材が配置されてもよい。これにより、カバー300による密閉がより強固になる。
【0029】
カバー300は、ケース200と同様、例えば、後述の除染ガスで腐食せず、かつ、後述の除染ガスの吸引で変形しない材料で構成される。カバー300は、例えば、金属又は樹脂で構成される。金属としては、ステンレス鋼材又はアルミニウムが好ましい。なお、腐食防止のための塗装が表面に施された鉄、銅、亜鉛鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)等が用いられてもよい。
【0030】
カバー300には、ガス吸引管130を接続するための孔H2が形成されている。ガス吸引管130については後程詳しく説明する。
【0031】
ガス循環装置100は、ダクト600とフィルタ400との間の空間(以下、「第1空間」とも称する。)、及び、フィルタ400とカバー300との間の空間(以下、「第2空間」とも称する。)において除染ガスを循環させるように構成されている。より具体的には、ガス循環装置100は、ガス循環装置本体110と、ガス導入管120と、ガス吸引管130とを含んでいる。ガス循環装置本体110は、ガス導入管120を介して第1空間に除染ガスを導入し、ガス吸引管130を介して第2空間から除染ガスを吸引する。これにより、第1空間及び第2空間において、除染ガスが循環する。
【0032】
除染ガスとしては、公知の種々のガスを用いることができる。除染ガスとしては、例えば、過酢酸、二酸化炭素、オゾン又は過酸化水素を用いることができる。なお、除染ガスがリークした場合における人体への有害性を考慮すると、除染ガスとして過酢酸を用いることが好ましい。
【0033】
図2は、ガス循環装置100の一例を模式的に示す図である。
図2に示されるように、ガス循環装置100は、ポンプ112と、ガス発生装置114と、ガス導入管120と、ガス吸引管130とを含んでいる。ガス発生装置114には、例えば、過酢酸が貯留されている。ガス発生装置114内においては、除染ガス(過酢酸ガス)が発生する。発生した除染ガスは、ガス導入管120を介して第1空間に導入される。なお、除染ガスの発生方式は、これに限定されず、例えば、霧化式が採用されてもよい。
【0034】
ポンプ112は、ガス吸引管130側から気体を吸引し、ガス発生装置114側へ気体を送出するように構成されている。ポンプ112が作動することによって、第1空間に導入された除染ガスが、フィルタ400を通過して第2空間に導入され、その後、ポンプ112内に導入される。ポンプ112内に導入された除染ガスは、ガス発生装置114へ送出される。これにより、除染ガスが循環する。除染ガスの循環によって除染ガスがフィルタ400を通過するため、フィルタ400が除染される。なお、ガス循環装置100は、必ずしもポンプ112を含んでいる必要はなく、例えば、ポンプ112の代わりに送風機を含んでいてもよい。
【0035】
再び
図1を参照して、カバー300上には、BI(Biological Indicator)500が配置されている。除染システム10によれば、BIの死滅を確認することによって、フィルタ400の除染の完了を確認することができる。
【0036】
図3は、カバー300の底面部分を斜め下方から模式的に示した図である。
図3に示されるように、カバー300の底面部分には、スリットS1が形成されている。BI500は、スリットS1を介してカバー300の上方に挿入される。挿入されたBI500は、例えば、テープ310で固定される。なお、BI500は、カバー300上において、クリップ等の設置治具を介して設置されてもよい。
【0037】
<1-3.除染システムの動作>
図4は、除染システム10の動作手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される各工程は、カバー300のケース200への取付け等が完了した状態で、作業者によって実行される。
【0038】
図4を参照して、作業者は、除染システム10に除染ガスの循環を開始させる(ステップS100)。すなわち、作業者は、ガス循環装置100を作動させ、第1空間及び第2空間における除染ガスの循環を開始させ、除染ガス濃度を所定濃度まで上昇させる。作業者は、除染ガス濃度が所定濃度まで上昇した後、所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS110)。所定時間が経過していないと判断されると(ステップS110においてNO)、作業者は、所定時間が経過するまで待機する。
【0039】
一方、所定時間が経過したと判断されると(ステップS110においてYES)、作業者は、ガス循環装置100を停止させ、BI500が死滅しているか否かを確認する(ステップS120)。BI500が死滅している場合には、フィルタ400の除染が成功したと判断される。
【0040】
なお、除染ガス濃度が所定濃度まで上昇したことを判断するためには、例えば除染ガスの濃度計を使用することができる。しかしながら、必ずしも除染ガス濃度が直接的に測定される必要はない。例えば、湿度を指標として除染ガス濃度が推定されてもよい。
【0041】
<1-4.特徴>
以上のように、本実施の形態1に従う除染システム10においては、除染ガスが、ダクト600を含む空調システム全体で循環するわけではなく、第1空間及び第2空間で循環する。すなわち、除染システム10においては、より狭い範囲で除染ガスが循環する。したがって、除染システム10によれば、空調システムを複雑化することなくフィルタ400を除染することができる。
【0042】
また、ダクト600にダンパ等が設けられていない場合に、ガス循環装置100によって仮に第2空間から除染ガスが吸引されないと、第1空間に導入された除染ガスはダクト600に多量に流入する。その結果、除染ガスが十分にフィルタ400を通過しない。本実施の形態1に従う除染システム10においては、第2空間から除染ガスが吸引される。したがって、第1空間に導入された除染ガスの多くがフィルタ400を通過して第2空間に向かう。その結果、除染システム10によれば、ダクト600にダンパが設けられなくてもフィルタ400を除染することができる。
【0043】
また、本実施の形態1に従う除染システム10によれば、ケース200に形成された孔H1を介して第1空間に除染ガスを導入することができる。この方式は、建物を新たに建てる場合等、特別なケース200を設置しやすい場合に特に有効である。
【0044】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1に従う除染システム10においては、ケース200に形成された孔H1を介して第1空間に除染ガスが導入された。しかしながら、第1空間に除染ガスを導入する孔は、必ずしもケース200に設けられなくてもよい。本実施の形態2に従う除染システム10Aにおいては、第1空間に除染ガスを導入する孔がフィルタ400Aに形成されている。以下、上記実施の形態1と異なる点を中心に説明する。
【0045】
<2-1.除染システムの構成>
図5は、本実施の形態2に従う除染システム10Aの断面を模式的に示す図である。
図5に示されるように、ガス循環装置100Aは、ガス循環装置本体110と、ガス導入管120Aと、ガス吸引管130とを含んでいる。カバー300Aには、ガス導入管120Aが貫通する孔H3と、ガス吸引管130が貫通する孔H2Aとが形成されている。フィルタ400Aには、ガス導入管120Aが貫通する孔H1Aが形成されている。
【0046】
ガス循環装置本体110において発生した除染ガスは、ガス導入管120Aを介して第1空間に導入される。第1空間に導入された除染ガスは、フィルタ400A及び第2空間を通過して、ガス循環装置本体110に吸引される。これにより、第1空間及び第2空間において除染ガスが循環する。
【0047】
なお、上述のように、フィルタ400Aにおいては、孔H1Aが形成されている。孔H1Aには、例えば、キャップが取付可能となっている。フィルタ400Aの除染時以外においては、孔H1Aは、当該キャップによって閉じられている。
【0048】
フィルタ400Aに形成されている孔H1Aは、フィルタ400Aのろ材部分に形成されていてもよく、フィルタ400Aの枠部分に形成されていてもよい。すなわち、フィルタ400Aのろ材部分にガス導入管120Aが取り付けられていてもよく、フィルタ400Aの枠部分にガス導入管120Aが取り付けられていてもよい。ガス導入管120Aとろ材やフィルタ枠との取り付け部分は、密封されて風がリークしない構造となっている。
【0049】
<2-2.特徴>
以上のように、本実施の形態2に従う除染システム10Aにおいては、除染ガスが、ダクト600を含む空調システム全体で循環するわけではなく、第1空間及び第2空間で循環する。すなわち、除染システム10Aにおいては、より狭い範囲で除染ガスが循環する。したがって、除染システム10Aによれば、空調システムを複雑化することなくフィルタ400Aを除染することができる。
【0050】
また、本実施の形態2に従う除染システム10Aにおいては、第2空間から除染ガスが吸引される。したがって、第1空間に導入された除染ガスの多くがフィルタ400Aを通過して第2空間に向かう。その結果、除染システム10Aによれば、ダクト600にダンパが設けられなくてもフィルタ400Aを除染することができる。
【0051】
また、本実施の形態2に従う除染システム10Aによれば、フィルタ400Aに形成された孔H1Aを介して第1空間に除染ガスを導入することができる。この方式は、建物における大規模な工事を必要としないため、既存の空調システムを利用して本除染システムを導入する場合に特に有効である。
【0052】
[3.変形例]
以上、実施の形態1,2について説明したが、本発明は、上記実施の形態1,2に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。
【0053】
<3-1>
上記実施の形態1,2においては、フィルタ400,400Aが天井700に取り付けられた。しかしながら、フィルタ400,400Aが取り付けられる位置は、天井に限定されない。たとえば、フィルタ400,400Aは、部屋の壁に取り付けられてもよい。
【0054】
<3-2>
また、上記実施の形態1,2において、除染システム10,10Aは、部屋における吹き出し口において適用された。しかしながら、除染システム10,10Aが適用される位置は吹き出し口に限定されない。例えば、除染システム10,10Aは、部屋の排気口に適用されてもよい。
【0055】
<3-3>
また、上記実施の形態1,2において、カバー300,300Aは、ケース200,200Aにそれぞれ取り付けられた。しかしながら、カバー300,300Aは、必ずしもケース200,200Aに取り付けられなくてもよい。カバー300,300Aは、例えば、フィルタ400,400Aに取り付けられてもよい。例えば、カバー300,300Aがフィルタ400,400Aの収容部材(枠部分)に取り付けられる場合であっても、カバー300,300Aによって、フィルタ400,400Aのろ材部分が密閉されていればよい。
【0056】
<3-4>
上記実施の形態1,2においては、
図4に示される各工程が作業者によって実行された。しかしながら、これらは、コンピュータによって自動的に実行されてもよい。
【0057】
<3-5>
上記実施の形態1,2においては、第1空間に除染ガスが導入され、第2空間から除染ガスが吸引された。しかしながら、除染ガスの流れは、必ずしもこれに限定されない。例えば、所定条件下においては、第2空間に除染ガスが導入され、第1空間から除染ガスが吸引されてもよい。
【0058】
図6は、該所定条件について説明するための図である。
図6に示されるように、この例においては、ダクト600にダンパ800が設けられ、除染ガスの流れが制限されている。この場合には、第2空間に除染ガスが導入され、第1空間から除染ガスが吸引されてもよい。例えば、ガス循環装置本体110Bにおいて発生した除染ガスがガス吸引管130を介して第2空間に導入され、フィルタ400Bを通過して第1空間に至った除染ガスがガス導入管120Bを介してガス循環装置本体110Bによって吸引されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 除染システム、100 ガス循環装置、110 ガス循環装置本体、112 ポンプ、114 ガス発生装置、120 ガス導入管、130 ガス吸引管、200 ケース、300 カバー、310 テープ、400 フィルタ、500 BI、600 ダクト、700 天井、800 ダンパ、H1,H2,H3 孔、S1 スリット。