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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】エアゾール化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20240813BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20240813BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/26
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/37
A61K8/89
A61Q15/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020094739
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187782
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】野口 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】蛭間 有喜子
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148785(JP,A)
【文献】特開2016-179974(JP,A)
【文献】特開平11-029456(JP,A)
【文献】特開平11-029455(JP,A)
【文献】国際公開第2001/015658(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤とからなるエアゾール化粧料であって、前記原液が、
(A)親水性粉末と、
(B)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、オレイン酸ソルビタン、およびトリイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選択される1種もしくは2種以上の界面活性剤であり、かつHLBが9未満である界面活性剤と、
(C)油相成分と
を含み、かつ(C)油相成分中に含まれる環状シリコーンが前記原液の全量に対して1質量%未満であり、
(C)油相成分中の揮発性炭化水素油の配合量が、(C)油相成分の全量に対して、20質量%以上であり、
(B)界面活性剤の配合量が、前記原液の全量に対して、0.1~5質量%である、エアゾール化粧料。
【請求項2】
前記原液中の(B)界面活性剤が、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、請求項1に記載のエアゾール化粧料。
【請求項3】
(C)油相成分が液体油性成分である、請求項1または2に記載のエアゾール化粧料。
【請求項4】
前記噴射剤が液化石油ガスである、請求項1~のいずれか一項に記載のエアゾール化粧料。
【請求項5】
(A)親水性粉末が、シリカ、タルク、およびクロルヒドロキシアルミニウムからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、請求項1~のいずれか一項に記載のエアゾール化粧料。
【請求項6】
デオドラントスプレーである、請求項1~のいずれか一項に記載のエアゾール化粧料。
【請求項7】
(C)油相成分中に含まれる環状シリコーンが、前記原液の全量に対して、0.1質量%未満である、請求項1~のいずれか一項に記載のエアゾール化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原液と噴射剤とからなるエアゾール化粧料であって、該原液が、親水性粉末と、特定の界面活性剤と、油相成分とを含み、かつ該油相成分中に含まれる環状シリコーンが原液の全量に対して一定量未満であるエアゾール化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
オクタメチルシクロテトラシロキサンや、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シリコーン化合物は、水系における生態影響への懸念から欧州化学品規則(REACH: Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals)により、2020年1月31日からオクタメチルシクロテトラシロキサンなどを使用(0.1%以上)した「使用後に水で洗い流される製品」の販売が禁止されている。従って、環境への負荷を低減するために、化粧料の処方において環状シリコーン化合物の含有を避けることが望ましい。
【0003】
一方で、環状シリコーン化合物は、粉末の分散性や、他の油性成分や界面活性剤との相溶性(油相を均一な一相に保つ性質)への寄与が高いため、環状シリコーン化合物を配合せずに分散性および相溶性を維持するエアゾール化粧料の処方の開発は非常に困難である。
【0004】
これまでに、環状シリコーン化合物を含まないデオドラント(剤)組成物も知られているが(特許文献1および2参照)、分散性や相溶性の観点からは更なる改良が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開第2009-102271号公報
【文献】特開第2016-117698号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、環状シリコーンを原液の全量に対して1質量%未満の割合で用いた場合であっても、エアゾール化粧料の原液に、親水性粉末と、特定の界面活性剤と、油相成分とを含有させることにより、界面活性剤と油性成分との高い相溶性を維持しつつ、親水性粉末の堆積速度を遅くし、および/または親水性粉末の再分散性も高めることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0007】
従って、本発明は、原液と噴射剤とからなるエアゾール化粧料であって、該原液が、親水性粉末と、特定の界面活性剤と、油相成分とを含み、かつ該油相成分中に含まれる環状シリコーンが原液の全量に対して1質量%未満であるエアゾール化粧料を開示する。
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)原液と噴射剤とからなるエアゾール化粧料であって、該原液が、
(A)親水性粉末と、
(B)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、オレイン酸ソルビタン、およびトリイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選択される1種もしくは2種以上の界面活性剤であり、かつHLBが9未満である界面活性剤と、
(C)油相成分と
を含み、かつ(C)油相成分中に含まれる環状シリコーンが原液の全量に対して1質量%未満である、エアゾール化粧料。
(2)原液中の界面活性剤が、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、(1)に記載のエアゾール化粧料。
(3)(C)油相成分中の炭化水素油の配合量が、油相成分の全量に対して、20質量%以上である、(1)または(2)に記載のエアゾール化粧料。
(4)(C)油相成分中の揮発性炭化水素油の配合量が、油相成分の全量に対して、20質量%以上である、(1)または(2)に記載のエアゾール化粧料。
(5)(C)油相成分が液体油性成分である、(1)~(4)のいずれかに記載のエアゾール化粧料。
(6)噴射剤が液化石油ガスである、(1)~(5)のいずれかに記載のエアゾール化粧料。
(7)(A)親水性粉末が、シリカ、タルクおよびクロルヒドロキシアルミニウムからなる群から選択される1種もしくは2種以上である、(1)~(6)のいずれかに記載のエアゾール化粧料。
(8)(B)界面活性剤の配合量が、原液の全量に対して、0.1~5質量%である、(1)~(7)のいずれかに記載のエアゾール化粧料。
(9)デオドラントスプレーである、(1)~(8)のいずれかに記載のエアゾール化粧料。
(10)(C)油相成分中に含まれる環状シリコーンが、原液の全量に対して、0.1質量%未満である、(1)~(9)のいずれかに記載のエアゾール化粧料。
【0009】
特に粉末を配合したスプレー剤では使い始めてから使い終わるまで均一に中味を噴射する必要があり、そのため粉末の堆積速度を遅くしたり、再分散性を高めることは重要である。また、エアゾール化粧料の充填工程を想定した場合、油性成分の相溶性を高めることは操作性や保管の観点から好ましい。本発明のエアゾール化粧料を用いることにより、環状シリコーンを原液の全量に対して1質量%未満の割合で用いた場合であっても、エアゾール化粧料において、高い相溶性を維持できる点で有利であり、また親水性粉末の堆積速度を遅くし、および/または親水性粉末の再分散性も高めることができる点でも有利である。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明は、原液と噴射剤とからなるエアゾール化粧料であって、該原液が、
(A)親水性粉末と、
(B)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレイン酸ソルビタン、およびトリイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選択される1種もしくは2種以上の界面活性剤であり、かつHLBが9未満である界面活性剤と、
(C)油相成分と
を含み、かつ(C)油相成分中に含まれる環状シリコーンが原液の全量に対して1質量%未満である、エアゾール化粧料である。
【0011】
本発明のエアゾール化粧料に含まれる噴射剤は、エアゾール製品全般に用い得る噴射剤であれば、特に限定されるものではないが、例えば、各種の液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、液化石油ガスとジメチルエーテルの混合物や、圧縮ガス等が用いられ得る。LPGはプロパン、ブタン、イソブタンを主成分とする液化石油ガスである。これらの中でも、本発明のエアゾール化粧料に含まれる噴射剤は、噴射性、溶解性の観点から、液化石油ガスが好ましい。
【0012】
本発明のエアゾール化粧料に含まれる原液は、(A)親水性粉末と、(B)トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレイン酸ソルビタン、およびトリイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選択される1種もしくは2種以上の界面活性剤と、(C)油相成分とを含むものである。以下に原液に含まれる各成分について説明する。
【0013】
本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる親水性粉末は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものではなく、無機の親水性粉末であっても、有機の親水性粉末であってもよい。本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる親水性粉末としては、例えば、シリカ、タルク、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸、マイカ、セリサイト、カオリン、硫酸アルミニウムカリウム、クロルヒドロキシアルミニウム、粘土鉱物等の無機粉末、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプン等の有機粉末が挙げられ、好ましくは、シリカおよびタルクからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはタルクである。
【0014】
本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる界面活性剤は、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、オレイン酸ソルビタン、およびトリイソステアリン酸ポリグリセリルからなる群から選択される1種もしくは2種以上の界面活性剤であり、かつHLB(hydrophile-lipophile balance)が9未満である界面活性剤である。本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる好ましいHLBが9未満であるトリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリルとしては、例えば、トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル(ポリオキシエチレン付加モル数10)、トリイソステアリン酸PEG-15グリセリル(ポリオキシエチレン付加モル数15)、およびトリイソステアリン酸PEG-20グリセリル(ポリオキシエチレン付加モル数20)が挙げられるが、再分散性の観点からはトリイソステアリン酸PEG-10グリセリルがより好ましい。本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる好ましいHLBが9未満であるトリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10E.O.)(ポリオキシエチレン付加モル数10)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(15E.O.)(ポリオキシエチレン付加モル数15)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)(ポリオキシエチレン付加モル数20)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.)(ポリオキシエチレン付加モル数30)が挙げられるが、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)が特に好ましい。ここで、HLBとは水と油への親和性の度合いを表し、本発明におけるHLB値は、デイビス法によって測定した値である。本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる界面活性剤のHLBの値は、9未満であれば特に限定されるものではない。
【0015】
本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる界面活性剤の配合量は、特に限定されるものではないが、本発明のエアゾール化粧料中の原液の全量に対して、好ましくは、0.1~5質量%であり、より好ましくは、0.1~3質量%であり、さらに好ましくは、0.1~1質量%である。
【0016】
本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる油相成分としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、通常化粧料、医薬部外品等に用いられる炭化水素油、合成エステル油、シリコーン油、液体油脂、固体油脂、ロウ、香料が挙げられ、これらの中でも炭化水素油を含むことが好ましく、揮発性炭化水素油を含むことがより好ましい。本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる油相成分としては、好ましくは、液体油性成分である。
【0017】
炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添イソパラフィンなどのイソパラフィン、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられ、これらの中でも揮発性炭化水素油が好ましい。揮発性炭化水素油とは、比較的低分子量の炭化水素油(沸点が約250℃以下)であり、具体的には炭素数が16以下の水添ポリイソブテン、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられ、これらの中でも、イソドデカンおよび/またはイソヘキサデカンが好ましい。
【0018】
合成エステル油としては、例えば、オクタン酸オクチル、ノナン酸ノニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ピバリン酸トリプロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、ジイソステアリン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート-2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、エチルヘキサン酸セチル等が挙げられ、これらの中でもエチルヘキサン酸セチルが好ましい。
【0019】
シリコーン油としては、例えば、鎖状ポリシロキサン(例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム、各種変性ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)、アクリルシリコーン類等が挙げられる。
【0020】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0021】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0022】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0023】
香料としては、動物または植物より得られる天然香料と、化学的合成手段によって製造される合成香料、およびそれらの混合物である調合香料が挙げられ、特に限定されない。香料を配合することで、香りの持続性に優れた化粧料を得ることができる。
【0024】
本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる油相成分中の炭化水素油の配合量は、特に限定されるものではないが、油相成分の全量に対して、好ましくは、20質量%以上であり、より好ましくは、30質量%以上であり、さらに好ましくは、40質量%以上である。
【0025】
本発明のエアゾール化粧料の原液に含まれる油相成分中の揮発性炭化水素油の配合量は、特に限定されるものではないが、油相成分の全量に対して、好ましくは、20質量%以上であり、より好ましくは、30質量%以上であり、さらに好ましくは、40質量%以上である。
【0026】
本発明のエアゾール化粧料の油相中に原液の全量に対して1質量%未満で含まれる環状シリコーンは、特に限定されるものではないが、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。環状シリコーン化合物は、本発明のエアゾール化粧料の原液の全量に対して1質量%未満であり、好ましくは、0.5質量%未満であり、より好ましくは、0.1質量%未満であり、さらに好ましくは、0.05質量%未満である。
【0027】
本発明のエアゾール化粧料には分散剤が含まれてもよく、特に限定されるものでないが、好ましくは、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛が挙げられる。
【0028】
本発明のエアゾール化粧料には、制汗剤、殺菌剤、および/または消臭剤を配合してもよい。本発明の好ましい態様としては、本発明のエアゾール化粧料は、デオドラントスプレーである。また、本発明の別の好ましい態様としては、本発明のエアゾール化粧料は、制汗スプレーである。
【0029】
本発明のエアゾール化粧料に含まれてもよい制汗剤としては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、β-ナフトールジスルホン酸アルミニウム、過ホウ酸ナトリウム、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、ジルコニウムクロロハイドレート、硫酸アルミニウムカリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、塩基性臭化アルミニウム、アルミニウムナフタリンスルホン酸、塩基性ヨウ化アルミニウム、酸化亜鉛が挙げられ、これらの一種または二種以上が配合されてもよく、好ましくは、酸化亜鉛および/またはクロルヒドロキシアルミニウムが配合される。
【0030】
本発明のエアゾール化粧料に含まれてもよい殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、3,4,4-トリクロロカルバニリド(T.C.C)、トリエチルサイトレート(T.E.C)、塩化ベンゾトニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、レゾルシン、フェノール、ソルビン酸、サリチル酸、ヘキサクロロフェン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、銀担持ゼオライト、銀担持シリカなどが挙げられ、これらの一種または二種以上が配合されてもよく、好ましくは、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールが配合され、より好ましくは、イソプロピルメチルフェノールが配合される。
【0031】
本発明のエアゾール化粧料に含まれてもよい消臭剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化亜鉛複合粉末、表面疎水化処理酸化亜鉛、活性炭、緑茶抽出物などの植物抽出物等が挙げられ、これらの一種または二種以上が配合されてもよく、好ましくは、酸化亜鉛、酸化亜鉛複合粉末または表面疎水化処理酸化亜鉛が配合され、より好ましくは、酸化亜鉛が挙げられる。
【0032】
本発明のエアゾール化粧料には、上記成分の他に、例えば、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調製剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【実施例
【0033】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。配合量は特記しない限り、質量%で示す。
【0034】
試験例1:エアゾール化粧料中における親水性粉末の相溶性、堆積速度、および再分散性の評価
下記の処方例1~11のエアゾール化粧料について、「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」について評価を行った。
【0035】
「油相部の相溶性」は、処方例1~11について、「調製直後」、「調製後に室温で2週間後」、および「調製後に40℃で3日後」の各時点で、下記の評価基準に基づいて評価した。
<油相部の相溶性の評価基準>
A:澄明な一層である
B:カスミがみられる
C:沈殿がみられる
【0036】
「堆積速度」は、処方例1~11を耐圧ガラス瓶に充填し、振とう後、静置してから5秒後の粉末の堆積量を目視で判断し、下記の評価基準に基づいて評価した。
<堆積速度の評価基準>
±:Controlと同程度
-1:Controlの2倍程度
-2:Controlの3倍程度
【0037】
「再分散性」は、処方例1~11を耐圧ガラス瓶に充填し、0℃、室温、および40℃で4週間静置後に振とうしてガラス瓶底から粉末が剥がれるまでの各温度における振とう回数の平均値を求めて、下記の評価基準に基づいて評価した。例えば、0℃における振とう回数が10回、室温における振とう回数が10回、40℃における振とう回数が15回の場合には、振とう回数の平均値が約11.7回となり、評価は「±」となる。
<再分散性の評価基準>
-2:振とう回数の平均値が20回以上
-1:振とう回数の平均値が15回以上20回未満
±:振とう回数の平均値が10回以上15回未満
+1:振とう回数の平均値が5回以上10回未満
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
エアゾール化粧料に、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレイン酸ソルビタン、またはトリイソステアリン酸ポリグリセリル(界面活性剤)を加えることにより(処方例9~11参照)、環状シリコーン(デカメチルシクロペンタシロキサン)およびPEG-10 ジメチコンを加えた場合と同程度の「油相部の相溶性」、「粉末の堆積速度」、および「粉末の再分散性」を達成できることが分かった。また、処方例9~11のエアゾール化粧料の中でも、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を加えた処方例11のエアゾール化粧料が、「油相部の相溶性」、「粉末の堆積速度」、および「粉末の再分散性」の観点で非常に優れた化粧料であることが分かった。
【0043】
試験例2:エアゾール化粧料中における界面活性剤の種類と、親水性粉末の相溶性、堆積速度、および再分散性の評価
下記の処方例12~22のエアゾール化粧料について、「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」について評価を行った。「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」の評価は試験例1と同様に行った。
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【0048】
エアゾール化粧料に、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、PEG-10グリセリル、もしくはPEG-15グリセリルまたはトリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10E.O.)、(15E.O.)、もしくは(30E.O.)を加えた場合(処方例12~15または19~20)の方が、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)、(50E.O.)、もしくは(60E.O.)またはトリイソステアリン酸PEG-30グリセリルもしくはPEG-40グリセリルを加えた場合(処方例16~18または21~22)に比べて、油相部の相溶性の観点で優れ、かつ親水性粉末の堆積速度および/または親水性粉末の再分散性の観点で優れていることが分かった。すなわち、HLB値が9未満の特定の界面活性剤を用いることにより油相部の相溶性について優れ、かつ親水性粉末の堆積速度および/または親水性粉末の再分散性について優れた効果を奏することが分かった。
【0049】
試験例3:エアゾール化粧料中における界面活性剤の配合量と、親水性粉末の相溶性、堆積速度、および再分散性の評価
下記の処方例11および23~26のエアゾール化粧料について、「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」について評価を行った。「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」の評価は試験例1と同様に行った。
【0050】
【表9】
【0051】
【表10】
【0052】
エアゾール化粧料に、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(20E.O.)に加えた場合において、この界面活性剤を原液の全量に対して、0.6、1、3、または5質量%を加えた場合(処方例11および23~26参照)には、いずれの場合であっても油相部の相溶性の観点について良好な結果が得られ、かつ親水性粉末の堆積速度および/または親水性粉末の再分散性の観点について良好な結果が得られた。
【0053】
試験例4:エアゾール化粧料中における非極性油性成分の比率と、親水性粉末の相溶性、堆積速度、および再分散性の評価
下記の処方例11および27~29のエアゾール化粧料について、「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」について評価を行った。「油相部の相溶性」、「親水性粉末の堆積速度」、および「親水性粉末の再分散性」の評価は試験例1と同様に行った。
【0054】
【表11】
【0055】
【表12】
【0056】
エアゾール化粧料において、油相中の非極性油の比率がどのような比率であっても(処方例11および27~29参照)、油相部の相溶性の観点で優れ、かつ親水性粉末の堆積速度および/または親水性粉末の再分散性の観点で優れていることが分かった。