(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】免震構造用制動装置
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240813BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240813BHJP
F16F 15/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
E04H9/02 331B
F16F15/02 D
F16F15/06 A
(21)【出願番号】P 2020101567
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】仲村 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴司
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特許第6694195(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
F16F 15/00 - 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の免震層に免震部材とともに設置される免震構造用制動装置であって、
エネルギー吸収部材を有する制動部材にスライド可能に保持されたスライド部材が、
所定変位量以下の応答変位に対して、前記エネルギー吸収部材を作動させずに水平変位する非制動区間と、
所定変位量以上の応答変位に対して、その水平変位に伴って前記制動部材と協働して前記エネルギー吸収部材を弾性変
形させて水平変位する
第1の制動区間と、
第1の制動区間を越えた変位量の応答変位に対して、その水平変位に伴って前記制動部材と協働して前記エネルギー吸収部材を塑性変形させて水平変位する第2の制動区間と、
の間を変位することを特徴とする免震構造用制動装置。
【請求項2】
前記制動部材は、前記スライド部材をスライド可能に保持する本体プレートと、該本体プレートに取り付けられた制動ブロックとからなる請求項1に記載の免震構造用制動装置。
【請求項3】
前記スライド部材は、スライド方向に向くクサビ状のテーパ部を有し、前記制動ブロックは、前記テーパ部と対向して面接触可能なテーパ面を有する請求項2に記載の免震構造用制動装置。
【請求項4】
前記制動ブロックは、前記エネルギー吸収部材を介して前記本体プレートに取り付けられた請求項2または請求項3に記載の免震構造用制動装置。
【請求項5】
前記スライド部材のテーパ部と前記制動ブロックのテーパ面とが前記エネルギー吸収部材の弾性変形を伴って面接触して、前記
第1の制動区間での水平変位が生じる請求項3に記載の免震構造用制動装置。
【請求項6】
前記スライド部材のテーパ部と前記制動ブロックのテーパ面とが前記エネルギー吸収部材の塑性変形を伴って面接触して、前記
第2の制動区間での水平変位が生じる請求項3に記載の免震構造用制動装置。
【請求項7】
前記エネルギー吸収部材は、締め付けボルトであり、該締め付けボルトの軸部に皿バネが介装された請求項
1に記載の免震構造用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免震構造用制動装置に係り、巨大地震等において免震装置の変形性能を越えるような過大変位を制御するための免震構造用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震構造建物では、所定の変形性能を有する免震ゴムやダンパー等を備えた免震装置が設置され、発生した地震動に対しての変位制御が行われている。このような免震構造建物において、免震装置の変形性能を越えるような過大変位が発生した場合の建物の安全を考慮した技術として特許文献1の免震建物が提案されている。特許文献1に開示された免震建物は、建物下部の外周に設けられた擁壁と建物との間に、ゴム材等からなる衝撃吸収部材が設けられている。巨大地震時に建物に過大変位が生じた場合、建物の側壁が衝撃吸収部材に衝突し、建物の応答変位が制御されるとともに、建物への衝撃が緩和される。よって、この免震建物は、建物を囲む擁壁の耐力に依存することになり、その耐力を正確に把握した設計が求められる。しかし、背面土を含む擁壁の耐力算定は煩雑で設計が困難である。また、設計における制御変位量が擁壁と建物との間のクリアランスに依存するため、設計の自由度が低い等の問題がある。
【0003】
また、特許文献1における問題点となっている擁壁設計を要しない免震構造物の変形制限装置も提案されている(特許文献2)。この変形制限装置は、免震ゴムが介装されている上部構造と下部構造との間の免震層に、それぞれ設けられた少なくとも一対の緩衝材からなる。緩衝材は、その上面に所定角度に傾斜した対向面を有する、たとえば硬質ゴムブロックからなる。大地震等が発生し、免震ゴムの変位が過大になった際に、所定距離離れた位置にある緩衝材の対向面同士が摺接し、免震ゴムの変位を制限するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-77229号公報
【文献】特開2017-2621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された変形制限装置は、一対の緩衝材ブロックの対向面同士が摺接する際の摩擦抵抗で上部構造の変位を制限するものであるが、地震動が振幅の異なるランダムな往復動であることから、反対方向の傾斜を有する対向面を備えた緩衝材ブロックを、少なくとも直交2方向に配置しなければならない。このため、平面が小さい建物では免震層に免震ゴム、変形制限装置をバランスよく配置するのが困難となる。また、緩衝材ブロックの対向面の摺接時の変位挙動の把握が困難であるため、制御変位量の設計が複雑になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、装置の設計の自由度が高く、地震時において免震構造の地震応答を阻害せず、巨大地震等の場合に確実に建物の免震層の過大変位を制動するようにした免震構造用制動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の免震構造用制動装置は、建物の免震層に免震部材とともに設置される免震構造用制動装置であって、エネルギー吸収部材を有する制動部材にスライド可能に保持されたスライド部材が、所定変位量以下の応答変位に対して、前記エネルギー吸収部材を作動させずに水平変位する非制動区間と、所定変位量以上の応答変位に対して、その水平変位に伴って前記制動部材と協働して前記エネルギー吸収部材を弾性変形させて水平変位する第1の制動区間と、第1の制動区間を越えた変位量の応答変位に対して、その水平変位に伴って前記制動部材と協働して前記エネルギー吸収部材を塑性変形させて水平変位する第2の制動区間と、の間を変位することを特徴とする。
【0008】
前記制動部材は、前記スライド部材をスライド可能に保持する本体プレートと、該本体プレートに取り付けられた制動ブロックとからなることが好ましい。
【0009】
前記スライド部材は、スライド方向に向くクサビ状のテーパ部を有し、前記制動ブロックは、前記テーパ部と対向して面接触可能なテーパ面を有することが好ましい。
【0010】
前記制動ブロックは、前記エネルギー吸収部材を介して前記本体プレートに取り付けられたことが好ましい。
【0011】
前記スライド部材のテーパ部と前記制動ブロックのテーパ面とが前記エネルギー吸収部材の弾性変形を伴って面接触して、前記第1の制動区間での水平変位を生じさせることが好ましい。
【0012】
前記スライド部材のテーパ部と前記制動ブロックのテーパ面とが前記エネルギー吸収部材の塑性変形を伴って面接触して、前記第2の制動区間での水平変位を生じさせることが好ましい。
【0013】
前記エネルギー吸収部材は、締め付けボルトであり、該締め付けボルトの軸部に皿バネが介装されることが好ましい。
本発明は、シンプルな構造の装置からなり、非制動区間での変位量等の仕様を装置の幾何学的形状で設定できるため、設計の自由度が高い。また、非制動区間においては免震層の地震応答を阻害することなく動作し、過大変位が生じるような巨大地震時には制動区間において最小限の衝撃で免震層の変位を制御して建物の損傷を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の免震構造用制動装置の一実施形態を示した平面図、立面図。
【
図2】本発明の免震構造用制動装置の建物の免震層への設置例を示した平面図。
【
図3】
図2に示した建物における本発明の免震構造用制動装置の動作例を模式的に示した建物部分立面図。
【
図4】本発明の免震構造用制動装置の構成部材(制動側本体プレート)を示した平面図、立面図。
【
図5】本発明の免震構造用制動装置の構成部材(スライドプレート)を示した平面図、立面図。
【
図6】本発明の免震構造用制動装置の構成部材(制動ブロック)を示した平面図、立面図。
【
図7】スライドプレートの非制動区間における動作例を示した説明図。
【
図8】スライドプレートの制動区間における動作例を示した説明図。
【
図9】本発明の免震構造用制動装置における変位-力関係の一例を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の免震構造用制動装置の一実施形態の構成例およびその動作例について、添付図を参照して説明する。
【0016】
図1各図は、本発明の免震構造用制動装置10(以下、単に制動装置10と記す。)の一構成例を示した平面図(a)、立面図(b)である。この制動装置10は、建物1の免震層2を模式的に示した平面図(
図2)、
図2の免震層2と基礎3(下部構造3)と建物上屋4(上部構造)の一部とを模式的に示した
図3(a)にあるように、建物1の平面形状を考慮して、免震層2に適正に配置された各免震ゴム5の間に水平をなして設置されている。
【0017】
ここで、本発明の制動装置10が設置される一例としての建物1について、
図2及び
図3(a)を参照して説明する。各図に例示された建物1は、公知の免震ゴム5と、本発明の制動装置10とが設置された免震層2としての下部構造3と、免震ゴム5と制動装置10を介して下部構造3に支持された建物上屋4としての上部構造からなる。下部構造3の一部である免震層2としての免震ピットは、側壁3a(擁壁)と底版3bとからなる鉄筋コンクリート構造で、その平面寸法は、地震時に本発明の制動装置10が適正に動作した際(
図3(b)、(c))に、建物1が側壁3aに衝突しない程度のクリアランス6が側壁3aとの間に確保できるように設定されている。また、底版3b上の所定位置には免震ゴム5と制動装置10の設置架台7,8が構築されている。
【0018】
[制動装置の構成部材]
制動装置10の構成について、
図1各図、
図4~
図6を参照して説明する。
図1に示した制動装置10は、
図4~
図6に示した制動側本体プレート20、スライドプレート30、制動ブロック40の各部材を組み立てて構成されている。
図4~
図6を参照して各部材の構成について説明する。
【0019】
制動側本体プレート20は、スライドプレート30(
図5:後述する。)の一部を収容して、スライドプレート30のスライド動作をガイドするとともに、その一部に取り付けられた制動ブロック40(後述する。)によるスライドプレート30の制動動作を実現する部材である。その構成は、
図4(a)、(b)に示したように、一端に軸受リング21を介して支持プレート22が接続され、四隅に配置されたスペーサ23とガイドブロック24とによって上下に所定の隙間cを確保して重ねられた細長い同形の2枚の鋼板プレート25からなる。この隙間cは、後述するスライドプレート30の板厚tよりわずかに広く、すなわちスライドプレート30がこの隙間cに挟まれた状態で滑らかに摺動できる程度に設定されている。また、プレート25の2箇所には後述する制動ブロック40を取り付けるための切欠部25aが形成されている。
【0020】
スライドプレート30は、その一部が制動側本体プレート20の2枚のプレート25,25間の隙間cに挟まれるように保持され、地震時の変位に追従して制動側本体プレート20に対して相対的にスライド動作し、所定変位量以上の変位が生じた際に、制動ブロック40と協働して装置の制動動作を実現する部材である。その構成は、
図5(a)、(b)に示したように、一端に軸受リング31を介して支持プレート32が接続された、板厚tの細長い1枚の鋼板からなり、先端側から前方側テーパ部33、側方ガイド部34、後方側テーパ部35、直線支持部36として各役割を果たす。前方側テーパ部33と後方側テーパ部35のテーパ角(θ)、テーパ範囲(d)はともに等しく、両者を挟む位置の側方ガイド部34に関して対称形状をなす。このテーパ角θは、後述する制動ブロック40に形成されたテーパ面45の設定角度θに等しい。側方ガイド部34の部位は、制動側本体プレート20の幅より広い四角い突起形状からなる。
【0021】
制動ブロック40は、制動側本体プレート20に沿って変位するスライドプレート30のテーパ部のテーパ面45との摺接によって生じる締め付けボルト42(後述する。)の弾性変形及び塑性変形により装置の制動動作を実現する部材である。その構成は、
図6(a)~(c)に示したように、対称をなして対向配置された2個のブロック本体41と、ブロック本体41の上下位置でブロック本体41を貫通するように取り付けられた締め付けボルト(ナットを含む。)42とからなる。締め付けボルト42によって連結されたブロック本体41のそれぞれの対向面41aには
図6(a)に破線で示したようなテーパ面45となる凹部43が形成されている。制動ブロック40を制動側本体プレート20に取り付けるには、この凹部43を制動側本体プレート20の切欠部25aに合致させて締め付けボルト42を締める。ブロック本体41に取り付けられた締め付けボルト42の軸部には複数枚の皿バネ46(ベルビルスプリング)が介装されている。各皿バネ46は締め付けボルト42の締め付け時に押圧され密着した負荷状態となるように取り付けられている。この締め付けボルト42の軸部は、制動区間においてボルトに作用する軸力に応じて軸方向に弾性変形および塑性変形してエネルギー吸収部材として機能する。
【0022】
[制動装置の構成]
図1は、建物1の免震層2(
図3(a))に設置された、制動側本体プレート20、スライドプレート30、及び制動ブロック40を組み立ててなる制動装置10の構成を示している。制動装置10は、同図に示したように、制動側本体プレート20の支持プレート22が下部構造側の設置架台8に、スライドプレート30の支持プレート32が上部構造の下面に形成された取付部9に固定保持され、全体が水平をなすように、免震層2内に設置されている。本実施形態では、制動装置10の軸受間距離LはL=4,000mmで、スライドプレート30の側方ガイド部34が2個の制動ブロック40間のほぼ中央に位置するように、スライドプレート30の直線支持部36の長さが設定されている。スライドプレート30の側方ガイド部34は、制動側本体プレート20の側面から側方に突出し、その突出した部位の上下面に側方ガイド部34と同形のガイドプレート37が制動側本体プレート20の側面に沿って軽く摺接するように取り付けられている。また、制動側本体プレート20の端部には、スライドプレート30の直線支持部36の幅に合わせてガイドブロック24が取り付けられている。このようにスライドプレート30は、ガイドプレート37とガイドブロック24とによって制動側本体プレート20内での幅方向へのずれが規制されることで、制動側本体プレート20の長手方向に沿ってスムースにスライドすることができる。なお、
図1に示したように、制動装置10の両端は、装置の水平面内での変位を許容する軸受けリング21,31を介して支持プレート22,32に支持されているが、軸受けリング21,31に代えてボールジョイント等の自在継手を設けてもよい。
【0023】
制動装置10の制動動作について、
図7~
図9を参照して説明する。制動装置10は、地震時における建物1の変位量に応じて以下のように設定された非制動区間、制動区間において異なる動作を示す。
図9は、制動装置に所定の水平力が作用した時における、以下の(1)非制動区間~(4)制動区間における水平変位と水平力との関係の履歴ループの一例を模式的に示したグラフである。
(1)非制動区間(スライド区間)(
図7(a)~(c))
図7(a)は、常時における制動装置10の制動側本体プレート20とスライドプレート30との位置関係を示した部分平面図である(各図ではスライドプレート30の位置を示すために、制動側本体プレート20の上側のプレートを除いて示している。)。この制動装置10において、たとえば
図7(b)、(c)に添えて模式的に示した応答変位が建物に生じると、制動側本体プレート20に挟まれたスライドプレート30は、前後位置にあるテーパ部33、35が制動ブロック40のテーパ面45に接触しない範囲で、制動側本体プレート20の長手方向に沿ってスムースにスライドする。よって、この区間(中心位置からの往復動を考慮した場合、非制動区間の2倍がスライド区間に相当する。)では、制動装置10は免震装置の応答変位を阻害することなく、すなわち水平力に抵抗することなく変位する(非制動区間S)。本実施形態の非制動区間Sは、S=600mmに設定されている。
(2)制動区間1(
図8(a)~(b))
応答変位が非制動区間の水平変位より大きくなり、スライドプレート30のテーパ部33が制動ブロック40のテーパ面45に接触した以後、スライドプレート30のテーパ部は、制動ブロック40のテーパ面45に密着した状態でクサビのように、対向する制動ブロック40の各ブロック本体41を外方に押し開くようにして水平変位が進行する。このとき対向位置にある2個のブロック本体41は、制動側本体プレート20を挟んでエネルギー吸収部材としての締め付けボルト42で緊結されている。このため、スライドプレート30は、スライドプレート30のテーパ部33と制動ブロック40のテーパ面45との間の接触面での摩擦に抗するとともに、作用した水平力の締め付けボルト42の軸方向分力によってボルトの軸方向の弾性伸びを生じさせる制動力を受けながら水平変位する。
(3)制動区間2(
図8(b)~(c))
締め付けボルト42が弾性限界に達した以後は、最終的に制動ブロック40とスライドプレート30のガイドプレート34とが接触するまでの間(本実施形態では、制動区間D=200mm)、締め付けボルト42の塑性変形(エネルギー吸収)によって水平力は増加せずに水平変位のみが進行する。
(4)制動区間3(
図8(c)~(e))
制動区間Dにおいて最大変位が保持された後に、地震波が逆向きになると装置の変位は反転して原点に向かう。この状態では、負荷がかけられた状態で締め付けボルト42に介装されていた皿バネ46の戻り力により、塑性変形後のボルトの軸部に軸方向引張力が生じている。これにより、制動ブロック40のテーパ面45がスライドプレート30のテーパ部33に押圧され、この間に所定の面摩擦が生じる。このため、スライドプレート30は所定の水平抵抗力を受けつつ原点方向に戻り、制動ブロック40のブロック本体41はボルトの塑性変形後も初期位置まで復帰することができる。
【0024】
以上の説明では、締め付けボルト42の弾性変形を含む初動時の復元力特性の履歴ループでの水平力-変位関係について述べたが、締め付けボルト42が塑性変形した以後の履歴ループでは非制動区間が増加し、制動区間が減少する。
【0025】
制動装置10を構成する各部材は、一般構造用圧延鋼(SS400)を用いた鋼材で製作されているが、たとえばスライドプレート30のテーパ部33,35と制動ブロック40のテーパ面45との接触、摺動動作における鋼材間のかじり等による摩擦の増大、制動動作の過負荷等を避けるために、部材間で硬度、機械的強度を適正に調整したり、耐力の異なる異種の鋼材、金属材料、焼結材、耐熱樹脂等の材料を選択したり、接触面に耐摩耗性のある各種の材料からなる薄板材を貼着したりすることも好ましい。
【0026】
また、上述したスライド区間(非制動区間)では、制動側本体プレート20とスライドプレート30との間での摩擦がほとんど生じないスムースなスライドを想定しているが、鋼材間の摩擦をより低減するために、プレート間の接触面にフッ素樹脂板等の底摩擦材料を介装させたり、逆に初期状態から免震構造の応答変位を制御するために、プレートの接触面の摩擦力を増大させるような各種の加圧機構を設けてもよい。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 建物
2 免震層
3 基礎(下部構造)
4 建物上屋(上部構造)
5 免震ゴム
10 免震構造用制動装置
20 制動側本体プレート
30 スライドプレート
33 前方側テーパ部
34 側方ガイド部
35 後方側テーパ部
40 制動ブロック
41 ブロック本体
42 締め付けボルト
45 テーパ面
46 皿バネ