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特許7536536単一の一体型血管内装置を使用した血塊除去、血管形成及び再狭窄の予防の合理化された治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】単一の一体型血管内装置を使用した血塊除去、血管形成及び再狭窄の予防の合理化された治療
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20240813BHJP
   A61F 2/958 20130101ALI20240813BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20240813BHJP
【FI】
A61B17/22
A61F2/958
A61F2/966
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020118295
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2021013743
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】16/508,121
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】カーク・ジョンソン
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-500757(JP,A)
【文献】特開2016-172048(JP,A)
【文献】特表2013-523352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61F 2/958
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の一体型血管内装置であって、
近位端及びその反対側の遠位端を有するプッシャ部材と、
相互に固定された複数の支柱によって形成された開いた足場材を含む自己拡張型ステントリーバであって、前記自己拡張型ステントリーバは、外部から印加された機械的力を取り除いた時に、直径が減少した圧縮状態と、直径が拡大された自己拡張状態との間で遷移可能であり、前記自己拡張型ステントリーバの近位端及び遠位端は、近位固定点及び遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材に固定されており、前記自己拡張型ステントリーバは、前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材から分離可能又は解放可能である、自己拡張型ステントリーバと、
前記自己拡張型ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンであって、前記セミコンプライアントバルーンを通って軸方向に延在する前記プッシャ部材に固定されている、セミコンプライアントバルーンと、
前記プッシャ部材内に前記軸方向に画定され、前記セミコンプライアントバルーンと流体連通している膨張ルーメンと、
を備え
前記自己拡張型ステントリーバの前記近位端及び前記遠位端が、近位スリーブ及び遠位スリーブのそれぞれを介して前記プッシャ部材に解放可能に固定可能であり、
前記自己拡張型ステントリーバの前記近位端及び前記遠位端は、前記セミコンプライアントバルーンが膨張され、前記自己拡張型ステントリーバが、前記自己拡張状態にある間よりも直径の大きい超拡張状態にある時にのみ、前記近位スリーブ及び前記遠位スリーブのそれぞれから解放可能である、装置。
【請求項2】
前記自己拡張型ステントリーバが超弾性記憶材料製である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれに近接して配置された前記自己拡張型ステントリーバの前記複数の支柱のうちのいくつかは、脆弱部分をそれぞれ含み、前記自己拡張型ステントリーバは、前記脆弱部分で、前記プッシャ部材を含まない完全に分離可能な部分と、前記近位固定点及び前記遠位固定点で前記プッシャ部材に固定されたままの残りの部分へと切断可能である、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内装置に関する。詳細には、本発明は、単一の装置を使用した血塊除去、血管形成及び/又は再狭窄の予防を含む多機能治療を提供するステントリーバ及びバルーンを含む、改善された単一の一体型血管内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的血栓除去装置(例えば、ステントトリーバ(stent triever)又はステントリーバ)は、動脈内の血流を妨げている血塊、血栓、閉塞又は障害物を除去するために使用される。標準的な撮像技術(例えばX線放射)を使用して、ガイドワイヤのみを標的血塊、血栓、閉塞又は障害物を横断させ、これを越えて動脈を通して前進させ、その後、マイクロカテーテルにガイドワイヤを追跡させてもよい。あるいは、マイクロカテーテルとマイクロカテーテルのルーメン内に配設されたガイドワイヤとを、単一ユニットとして同時に標的血塊を横断させ、これを越えて動脈を通して前進させてもよい。いずれの場合も、ガイドワイヤはマイクロカテーテルが標的部位に配置された状態で近位に引き抜かれ、機械的血栓除去装置(例えば、ステントリトリーバ又はステントリーバ)は、ステントリーバが標的血塊を横切る(横断する)ように、マイクロカテーテルのルーメンを通って前進する。ここで、マイクロカテーテルは近位に引き抜かれ、機械的血栓除去装置を引き出して(すなわち、係合解除して)、閉塞障害物と一致させる。マイクロカテーテルによって半径方向に拘束されなくなった機械的血栓除去装置は、拡大された最大直径まで自動的に半径方向に自己拡張する。ステントリーバは、自己拡張して内部で血栓と係合すると、血管壁に対して血栓を圧縮する半径方向の力を加えて、遠位の脈管構造の部分的な再灌流を直ちに回復させる。所定の時間(例えば、約2~5分)が経過すると、血栓は拡張されたステントリーバの支柱間の空間又は開口部内に十分に埋め込まれる。血塊がその中に捕捉され、埋め込まれ、又は係合されたマイクロカテーテル及び機械的血栓除去装置は、身体から単一ユニットとして同時に引き抜かれる。
【0003】
血塊の背後に潜在している狭窄部(すなわち、プラークの蓄積による動脈の狭窄)が最初は検出されず、血栓自体が除去された後にしか介入医に見えない場合がある。そのような状況では、動脈内の血流を回復させるために、別個の血管形成処置が、例えばバルーンカテーテルなどの別個の装置を使用して行われる。カテーテルが前進して血管の狭くなった開口部と一致すると、カテーテルの端部に配置されたバルーンが膨張する。バルーンが拡張するのに伴い、プラークは血管の内壁に対して半径方向外向きに押圧され、それによって血管を通る血流を回復させる。必要に応じて、血塊の除去及び血管の狭くなった開口部の手順とは別の第3の手順では、ステントリーバ及びバルーンカテーテルとは別のメッシュステントを展開し、体内に恒久的に埋め込んで開存性を維持してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、ステントリーバ及びセミコンプライアントバルーンを備える単一の一体型血管内装置を使用して、血塊捕捉、血管形成及び/又は再狭窄の予防を実行し、別個の装置を用いた別個の医療処置の実施を不要とする合理化された多機能治療を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、自己拡張型ステントリーバ及びセミコンプライアントバルーンを備える単一の一体型血管内装置を使用して、血塊捕捉、血管形成及び/又は再狭窄の予防を実行し、別個の装置を用いた別個の医療処置の実施を不要とする合理化された多機能治療に関する。
【0006】
本発明の別の一態様は、近位端及びその反対側の遠位端を有するプッシャ部材と、相互に固定された複数の支柱によって形成された開いた足場材を備える自己拡張型ステントリーバと、を含む単一の一体型血管内装置に関する。自己拡張型ステントリーバは、外部から印加された機械的力を取り除いた時に、直径が減少した圧縮状態と、直径が拡大された自己拡張状態との間で遷移可能である。自己拡張型ステントリーバの近位端及び遠位端は、近位固定点及び遠位固定点のそれぞれでプッシャ部材に固定されており、自己拡張型ステントリーバは、近位固定点及び遠位固定点のそれぞれでプッシャ部材から分離可能又は解放可能である。装置は、自己拡張型ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンであって、セミコンプライアントバルーンを通って軸方向に延在するプッシャ部材に固定されている、セミコンプライアントバルーンと、プッシャ部材内に軸方向に画定され、セミコンプライアントバルーンと流体連通している膨張ルーメンと、を更に含む。
【0007】
本発明の更に別の一態様は、前段落で記載された単一の一体型血管内装置の使用方法に関する。方法は、ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルを標的血塊を横断して血管内に前進させる工程を含む。次いで、ガイドワイヤは、マイクロカテーテルを標的血塊を横断する位置で血管内に維持しながら、近位に抜去される。収縮状態のセミコンプライアントバルーンが自己拡張型ステントリーバの中に収容された圧縮状態に自己拡張型ステントリーバがある間に、単一の一体型血管内装置がマイクロカテーテルのルーメン内に装填される。次いで、単一の一体型血管内装置は、自己拡張型ステントリーバが標的血塊と一致するように、プッシャ部材を使用してマイクロカテーテルのルーメンを通して前進する。この時点で、単一の一体型血管内装置が標的血塊を横断するように血管内に維持されている間に、マイクロカテーテルが血管から近位に抜去される。自己拡張型ステントリーバは、マイクロカテーテルから引き出されると、自己拡張状態へと自動的に遷移して、自己拡張型ステントリーバの開いた足場材内の標的血塊と係合し、一方、自己拡張型ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンは、自己拡張型ステントリーバへの標的血塊の係合及びその後の埋め込みと干渉しないように、収縮状態に維持される。
【0008】
本発明の更に別の一態様は、ステントリーバ及びステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンを含む単一の一体型血管内装置を使用するための方法に関する。単一の一体型血管内装置は、最初に血管内に導入されて、標的血塊を横断する。その後、ステントリーバは自己拡張状態に展開され、標的血塊がその中に埋め込まれる。血塊が中に埋め込まれた単一の一体型血管内装置が血管から除去される。血管内の捕捉された標的血塊の元の位置に潜在している残留狭窄部が撮像によって検出される。次いで、単一の一体型血管内装置は、ステントリーバと検出された潜在している残留狭窄部とが一致する位置まで血管内に再導入される。再び、ステントリーバが圧縮状態から自己拡張状態へと遷移するように、ステントリーバが展開される。次に、セミコンプライアントバルーンが膨張媒体で膨張され、ステントリーバを自己拡張状態よりも直径の大きい超拡張状態まで膨張させることにより、血管を検出された潜在している残留狭窄部の位置で拡張させ、同時に、ステントリーバを単一の一体型血管内装置の残りの部分から完全に分離又は解放させる。次いで、セミコンプライアントバルーンは、膨張媒体をセミコンプライアントバルーンからパージすることによって圧潰される。最後に、自己拡張状態のステントリーバの分離可能又は解放可能な部分を、検出された潜在している残留狭窄部の位置で血管内に維持しながら、単一の一体型血管内装置の残りの部分が血管から近位に抜去される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の上記及び他の特徴は、本発明を例示する以下の発明を実施するための形態及び図面からより容易に明らかになるものであり、いくつかの図面にわたり類似の参照番号は類似の要素を示す。
図1】本発明による自己拡張型ステントリーバ及びセミコンプライアントバルーンを含む、例示的な単一の一体型血管内装置の断面図である。
図2A】血管内に標的血塊を横断して配置されたガイドワイヤ及びマイクロカテーテルを示す。
図2B】血管からのガイドワイヤの近位への抜去に続き、図1の本発明の単一の一体型血管内装置を、自己拡張型ステントリーバが血管内の標的血塊を横断するように、マイクロカテーテルのルーメンを通して前進させることを示す。
図2C】血管からのマイクロカテーテルの近位への抜去に続き、自己拡張型ステントリーバを半径方向に自己拡張状態へと引き出して自動的に展開させ、足場材の開放空間内で標的血塊と係合させることを示す。
図2D】半径方向に自己拡張して血塊が中に埋め込まれた状態の自己拡張型ステントリーバが、より大きい直径の近位カテーテル内へと近位に引き込まれることを示す。
図2E】潜在している残留狭窄部が血管内の標的血塊の元の部位に存在し、ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルが、潜在している残留狭窄部と一致する血管内の位置へと同時に又は連続的に再導入されることを示す。
図2F】血管からのガイドワイヤの近位への抜去に続き、図1の本発明の単一の一体型血管内装置を、自己拡張型ステントリーバが潜在している残留狭窄部と一致するように、マイクロカテーテルのルーメン内へと再装填することを示す。
図2G】血管からのマイクロカテーテルの近位への抜去に続き、自己拡張型ステントリーバを、検出された潜在している残留狭窄部の位置で半径方向に自己拡張状態へと引き出して自動的に展開させることを示す。
図2H】自己拡張型ステントリーバ内に収容されているセミコンプライアントバルーンを膨張させて、検出された潜在している残留狭窄部で血管を拡張させることを示す。自己拡張型ステントリーバは、図2Gの自己拡張状態にある時よりも直径の大きい超拡張状態で示されている。
図2I】膨張したセミコンプライアントバルーンによって変形され、その後セミコンプライアントバルーンを収縮させた時の自己拡張型ステントリーバの足場材の脆弱部分の破壊に続き、再狭窄を防止するために自己拡張状態の自己拡張型ステントリーバの分離可能な部分を血管内の定位置に恒久的に維持しながら、プッシャシャフトに固定されたままの自己拡張型ステントリーバの残りの部分を、収縮されたバルーンと共に単一ユニットとして血管から近位に抜去することを示す。
図2J】セミコンプライアントバルーンが膨張して自己拡張型ステントリーバを超拡張状態に遷移させた時の破壊を促進するためのより薄い断面を有する、図2Hの自己拡張型ステントリーバの支柱の部分II(J)の拡大領域である。
図3A】本発明による自己拡張型ステントリーバ及びセミコンプライアントバルーンを含む、本発明の単一の一体型血管内装置の代替的な一構成の断面図である。自己拡張型ステントリーバの遠位端及び近位端は、遠位スリーブ及び近位スリーブのそれぞれを介してプッシャ部材に解放可能に固定されている。
図3B】自己拡張型ステントリーバがマイクロカテーテルから引き出されて自己拡張状態に遷移した後の、図3Aの単一の一体型血管内装置の断面図である。
図3C】セミコンプライアントバルーンが膨張し、自己拡張型ステントリーバを(図3Bの自己拡張状態よりも直径の大きい)超拡張状態へと半径方向に拡張させると同時に、自己拡張型ステントリーバの近位端及び遠位端のそれぞれを軸方向に短縮させた時の、図3Aの単一の一体型血管内装置の断面図である。
図3D】自己拡張型ステントリーバの近位端及び遠位端が近位スリーブ及び遠位スリーブのそれぞれから解放又は係合解除され、解放された自己拡張型ステントリーバが元の形状に戻ることを可能とする、図3Aの単一の一体型血管内装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「遠位」又は「近位」という用語は、以下の説明において、治療医師若しくは医療介入医に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」は、医師若しくは介入医から離れた位置又は離れる方向である。「近位」又は「近位に」又は「近接した」は、医師若しくは医療介入医に近い位置又は向かう方向である。「閉塞」、「血塊」、「血栓」又は「障害物」という用語は、互換的に使用される。
【0011】
本発明は、自己拡張型ステントリーバ及びセミコンプライアントバルーンを含む単一の一体型血管内装置に関する。本明細書では、「セミコンプライアントバルーン」という用語は、規定圧(公称直径での圧力)と定格破裂圧(95%の信頼性を持って99.9%が定格破裂圧以下で破裂しない)との間で直径の約10%膨張するバルーンとして定義される。例示的なセミコンプライアントバルーン材料としては、ポリエチレン、ポリオレフィンコポリマー又はポリアミド(ナイロン)が挙げられるが、これらに限定されない。従来、複数の血管内治療(血塊除去、血管形成、再狭窄の予防)は、それぞれが1つの治療又は処置のみに専用の異なる個別の装置を使用して、連続して順次実施されていた。本発明の単一の一体型血管内装置では、複数の血管内治療又は処置を、単一の合理化された処置で実施することにより、時間を節約し、装置交換を削減し、ステント足場材を血栓除去処置の任意の時点で恒久的に展開させる介入の柔軟性を提供することができる。この単一の一体型血管内装置を、血塊捕捉/除去、血管形成及び/又は再狭窄の予防を含む複数の血管内治療又は処置を実行するために使用してもよい。
【0012】
図1を参照すると、本発明の単一の一体型血管内装置100は、相互に接続された複数の支柱によって形成され、支柱間に画定されている空間又は開口部116に血塊が係合し、捕捉され、時間の経過と共に埋め込まれ得るオープンメッシュ、ケージ、足場材又は骨格を備える機械的血栓除去装置(例えば、自己拡張型ステントリーバ)115を含む。自己拡張型ステントリーバ115は、以下に更に詳細に記載されるように、マイクロカテーテルのルーメン内に受容可能な圧縮状態に減径又は直径を縮小可能な、自動的に自己拡張する材料((例えばニッケル-チタンなどの)ニチノールなどの生体適合性の超弾性形状記憶材料など)で作製される。自己拡張型ステントリーバ115内に、収縮したセミコンプライアントバルーン120が収容されている。セミコンプライアントバルーン120及び自己拡張型ステントリーバ115のそれぞれの近位端及び遠位端は、近位固定点117及び遠位固定点117’のそれぞれで近位シャフト又はプッシャ部材125に固定(例えば、融着)されている。図1に示されるように、プッシャ部材125の近位部分は、セミコンプライアントバルーン120を軸方向に完全に貫通して近位に延在し、プッシャ部材125の遠位部分は、セミコンプライアントバルーン120の遠位端及び自己拡張型ステントリーバ115を越えて外向きに延在している。プッシャ部材125の剛性は、堅い近位端から、セミコンプライアントバルーン及び自己拡張型ステントリーバを越えて軸方向に延在するより柔軟な遠位端に対して、その軸方向長さに沿って変化することが好ましい。セミコンプライアントバルーン120を膨張/収縮させるために使用される膨張媒体(例えば、50%コントラスト生理食塩水溶液)を受容するための膨張/収縮ルーメン127が、プッシャ部材125の近位部分の一部を通って軸方向に画定され、セミコンプライアントバルーン120と流体連通している。図1の記載から明らかなように、膨張/収縮ルーメン127は、セミコンプライアントバルーンを越えてプッシャ部材125の遠位部分へと軸方向に延伸することなく、セミコンプライアントバルーンと流体連通している。
【0013】
従来は、多機能型の血管内医療処置(すなわち、血塊捕捉/回収、血管形成、及びその後の再狭窄を防止するための恒久的なステントの埋め込み)は全て、異なる別個の医療装置を連続的な医療処置で使用することを必要としていた。これらの別個の医療処置は、本発明の単一の一体型血管内装置の使用によって合理化される。以下の説明に、本発明の単一の一体型血管内装置の多機能的な使用を概説し、次いで装置の動作の具体的な詳細を記載する。最初に、本発明の単一の一体型血管内装置の自己拡張型ステントリーバ構成要素を使用して標的血塊を捕捉し、近位カテーテル内に引き込んでもよい。その後、標的血塊の元の部位に残留狭窄部が潜在しているか否かを判定するために、撮像を行ってもよい。潜在している残留狭窄部の存在が標的血塊の元の部位で検出された場合は、同じ単一の一体型血管内装置100をマイクロカテーテル内に再装填し、潜在している残留狭窄部が検出された標的血塊の元の部位に再び導入してもよい。血管内の元の部位で、自己拡張型ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンを膨張させることにより、潜在している残留狭窄部に対する血管形成術を実施し、動脈の開口部を拡張して、その中を通る血流を回復させてもよい。セミコンプライアントバルーンの膨張により、自己拡張型ステントリーバを、単一の一体型血管内装置の残りの部分から分離又は解放(係合解除)してもよい。その後、自己拡張状態にある間に単一の一体型血管内装置の残りの部分を引き抜いて、自己拡張型ステントリーバの分離又は解放された(係合解除された)部分を血管内に恒久的に残すことにより、血管の弾性収縮又は再狭窄を防止してもよい。
【0014】
単一の一体型血管内装置の使用についての詳細な説明は、以下のとおりである。本発明の単一の一体型血管内装置はセミコンプライアントバルーンを使用するため、体内への導入前に装置から残留空気を除去、パージ又は排気することにより、単一の一体型装置の準備を行う。残留空気の除去を、近位ハブ105に接続されたシリンジ110又は他の機械的装置を使用して真空を印加することによって達成してもよい。図1の例示的な説明は、単一の膨張/収縮ルーメン127を示しているが、必要に応じて(同軸又は並列に配置された)別個の膨張及び収縮ルーメンを使用することも企図され、本発明の意図される範囲内である。
【0015】
準備が完了すると、本発明の単一の一体型装置100の使用が、図2Aに示すように、ガイドワイヤ200を動脈205内に導入し、標的血塊、血栓、閉塞又は障害物210を横断してガイドワイヤを前進させることによって開始する。その後、ルーメン225が内部に軸方向に画定されたマイクロカテーテル220が、その遠位端230が標的血塊210を横断し、これを越えて遠位に出現するまで、ガイドワイヤ200を追跡する。次いで、ガイドワイヤ200は、マイクロカテーテル220を標的血塊210を横断する位置で血管205内に維持しながら、血管から近位に抜去される。図2Bを参照すると、自己拡張型ステントリーバ115が、収縮したセミコンプライアントバルーン120が自己拡張型ステントリーバの中に収容されている圧縮状態(例えば、マイクロカテーテルによって覆われ、直径が減少した減径状態)にある間に、単一の一体型血管内装置100がマイクロカテーテル220のルーメン225内に導入される。単一の一体型血管内装置100は、自己拡張型ステントリーバ115が標的血塊210を横断するように、プッシャ部材125を使用してマイクロカテーテル220のルーメン225を通して前進する。図2Cを参照すると、マイクロカテーテル220は次いで、単一の一体型血管内装置100が標的血塊210を横切る/横断する位置で血管205内に留まっている間に、近位に引き込まれるか又は抜去される。マイクロカテーテル220は、血管205から近位に引き込まれるのに伴い、内部に配置された自己拡張型ステントリーバ115を引き出すか又は係合解除し、自己拡張型ステントリーバ115は、直径が拡大された自己拡張状態に自動的に遷移することにより、メッシュ又は足場材構造の開放空間116内で標的血塊210と係合する。自己拡張型ステントリーバ115の足場材又は骨格構造が半径方向外側に拡張する間、その中に収容されたセミコンプライアントバルーン120は、標的血塊210の係合及びその後の埋め込みに干渉しないように、収縮状態のままである。時間の経過(例えば、約2~5分)と共に、標的血塊210は、自己拡張型ステントリーバ115の足場材の空間116内に十分に埋め込まれる。図2Dに示すように、その後、自己拡張型ステントリーバ115内に埋め込まれた標的血塊210は、その中に収容された収縮したセミコンプライアントバルーン120と共に近位に抜去され、自己拡張型ステントリーバ115(自己拡張状態にある)を収容できる十分な大きさの直径を有する近位カテーテル235内に、標的血塊を圧縮したり剥離させたりすることなく受容される。
【0016】
本発明の単一の一体型血管内装置の機能は、必ずしも終了しなくてもよい。自己拡張型ステントリーバ115及びその中に捕捉された標的血塊210が近位カテーテル235内に受容されて血管205から抜去されると、捕捉された標的血塊の元の部位に潜在している残留狭窄部215の存在を、撮像によって検出することができる。
【0017】
撮像中に残留狭窄部215が検出された場合、単一の一体型血管内装置100を洗浄し、マイクロカテーテル220内に再装填してもよい。(標的血塊210が既に捕捉され、血管から除去されている以外は)図2Aと同様に、ガイドワイヤ200及びマイクロカテーテル220は、図2Eに示すように、検出された潜在している残留狭窄部215まで血管205を通して連続的に(順次に)又は同時に再導入及び追跡される。次いで、ガイドワイヤ200が血管から近位に抜去され、マイクロカテーテル220は、潜在している残留狭窄部215と一致する位置に残される。図2Fに示すように、自己拡張型ステントリーバ115が、収縮したセミコンプライアントバルーン120が自己拡張型ステントリーバの中に収容されている圧縮状態(すなわち、直径が減少した減径状態)にある間に、単一の一体型血管内装置100がマイクロカテーテル220内に再装填され、自己拡張型ステントリーバ115と潜在している残留狭窄部215とが一致するように前進する。図2Gを参照すると、マイクロカテーテル220が血管205から近位に抜去されて自己拡張型ステントリーバ115が引き出されると、自己拡張型ステントリーバ115が自己拡張状態まで自動的に拡張することが可能となる。自己拡張型ステントリーバ115が自己拡張状態にある状態で、シリンジ110は、プッシャ部材125の膨張ルーメン127を通して膨張媒体を圧力下で供給して、セミコンプライアントバルーン120を充填する。自己拡張型ステントリーバ115は、足場材又は支柱の一部が、プッシャ部材125への近位固定点及び遠位固定点に近接した複数の支柱位置に配置された弱められた又は脆弱部分111を含むように構成されてもよい。自己拡張型ステントリーバの脆弱部分111は、支柱の(図2Jに示すような)より薄い断面を有する部分として、又は焦点集中部(ノッチ)を有する支柱として設計されてもよい。
【0018】
図2Hに示すように、セミコンプライアントバルーン120が膨張して半径方向外向きの力を加えると、自己拡張型ステントリーバ115は、膨張したセミコンプライアントバルーンの湾曲した形状を取りながら、自己拡張状態よりも大きい直径まで超拡張する。膨張したバルーンは、プラークの蓄積が存在する血管の狭い開口部を拡大又は拡張し、その中を通る血流を改善する。
【0019】
セミコンプライアントバルーン120の膨張中のある時点で、十分な半径方向外向きの力が加えられて、自己拡張型ステントリーバ115の脆弱部分111を変形させ、脆弱部分111を破壊又は破損させる。脆弱部分111が破壊されると、自己拡張型ステントリーバ115の分離可能な部分130’は、近位固定点及び遠位固定点のそれぞれでプッシャ部材125に固定されたままの自己拡張型ステントリーバ115の残りの部分130から完全に係合解除又は解放される。シリンジ110を使用して陰圧を加え、プッシャ部材125の膨張/収縮ルーメン127を介して膨張媒体を排出させることにより、圧潰したセミコンプライアントバルーン120を血管から引き抜くことができる。セミコンプライアントバルーン120が潰れると、自己拡張型ステントリーバの分離可能な部分130’は、超拡張状態(図2H)から、より直径の小さい自己拡張状態(図2I)に戻る。図2Iは、自己拡張状態の自己拡張型ステントリーバの切断された分離可能な部分130’が血管205内に維持される一方で、プッシャ部材125に固定された残りの部分130は、収縮したセミコンプライアントバルーン120と共に単一ユニットとして血管から近位に引き抜かれることを更に示している。自己拡張状態の自己拡張型ステントリーバ115の分離可能な部分130’は、再狭窄を防止するために、残留狭窄部が検出された位置で血管内に恒久的に留まる。したがって、膨張したバルーンによる血管開口部の拡張後に(典型的には約6か月~12か月以内に)再狭窄(動脈の開口部が再び狭くなること)が生じる可能性は、自己拡張型ステントリーバの分離可能な部分を血管内の定位置に恒久的に残存させることによって防止又は低減される。
【0020】
自己拡張型ステントリーバの支柱を、変形時に破損又は破壊する脆弱部分111を有するように設計する代わりに、自己拡張型ステントリーバをプッシャ部材に解放可能に固定してもよい。例示的な一例として、図3Aは、(減径状態の)自己拡張型ステントリーバ315を、その中に配置された収縮したセミコンプライアントバルーン320と共に、マイクロカテーテル370を通して血管内の標的部位へと前進させる代替的な一構成を示す。自己拡張型ステントリーバ315の近位端支柱及び遠位端支柱は、相互に対して軸方向に定位置に固定されたままの近位スリーブ又はエンドキャップ385及び遠位スリーブ又はエンドキャップ385’のそれぞれを介してプッシャ部材325に固定されている。図3Bに示すように、マイクロカテーテル370が近位に引き抜かれると、マイクロカテーテルによって拘束されなくなった自己拡張型ステントリーバ315は、自動的に自己拡張し、直径が増加して自己拡張状態となる。そのような拡張にもかかわらず、自己拡張型ステントリーバ315の遠位端支柱及び近位端支柱は、近位スリーブ385及び遠位スリーブ385’によって拘束又は固定されたままである。したがって、自己拡張状態の自己拡張型ステントリーバ315を、図2A図2Jに関して上述したものと同様に、標的血塊の係合及び除去に使用してもよい。標的血塊の除去に続いて、除去された標的血塊の部位で狭窄が撮像により検出された場合、図2A図2Jの設計に関する上記の説明及び手順に従って装置を洗浄し、血管内に再装填してもよい。自己拡張型ステントリーバが標的部位に配置されると、マイクロカテーテル370は近位に引き抜かれる。減径した自己拡張型ステントリーバ315を引き出すと、その直径が自己拡張状態まで拡大するが、それでも、自己拡張型ステントリーバの遠位端支柱及び近位端支柱は、近位スリーブ385及び遠位スリーブ385’の下でプッシャ部材325に固定されたままである。図3Cを参照すると、セミコンプライアントバルーン320が膨張して、自己拡張型ステントリーバ315を超拡張状態(すなわち、図3Bに示すように、自己拡張型ステントリーバがマイクロカテーテルによって引き出されているが、近位スリーブ385及び遠位スリーブ385’によって固定されたままである自己拡張状態におけるよりも直径が大きい)に遷移させる。セミコンプライアントバルーン320は、超拡張状態へと膨張すると直径が拡大し(軸方向を横断する方向、大きな矢印で示す)、自己拡張型ステントリーバを、自己拡張型ステントリーバの遠位端支柱及び近位端支柱が近位スリーブ385及び遠位スリーブ385’から係合解除又は解放される(これらに固定されない)程度まで縮小させる(軸方向、互いに向かう小さな矢印で示す)。(図3Dに示すように)自己拡張型ステントリーバの遠位端支柱及び近位端支柱は、近位スリーブ及び遠位スリーブから解放又は分離されると、自動的に直径が拡大して元の形状になり、狭窄の標的部位で血管の内壁と直接物理的に接触する。その後、分離された(係合解除された)自己拡張型ステントリーバ315が標的部位で血管305の内壁と恒久的に物理的に接触したままである一方で、セミコンプライアントバルーン320を収縮させ、スリーブ385、385’及びプッシャ部材325と共に近位に除去してもよい。
【0021】
装置がいかなる設計又は構成であっても、自己拡張型ステントリーバが実質的に「括れて」おり、狭窄部が潜在している可能性があるにもかかわらず標的血塊を埋め込むことができない場合には、標的血塊を除去する工程を完全に省略してもよい。そのような場合、介入医は、セミコンプライアントバルーンを膨張させて、自己拡張型ステントリーバを超拡張状態に遷移させ、血塊の除去又は抜去を試みることなく、自己拡張型ステントリーバ自体をプッシャ部材から分離/解放する工程に直接進んでもよい。収縮後、セミコンプライアントバルーンをプッシャ部材と共に引き抜き、自己拡張状態の分離/解放された自己拡張型ステントリーバを、血管の壁に物理的に接触させて狭窄部位に留置する。
【0022】
したがって、本発明の単一の一体型血管内装置は、(i)標的血塊を捕捉及び除去すること、(ii)除去後の標的血塊の下に潜在している残留狭窄部が検出された血管の狭くなった開口部を拡張すること及び/又は、(iii)再狭窄を防止するために、分離可能/解放可能な(係合解除された)自己拡張型ステントリーバを、検出された潜在している残留狭窄部の位置で血管内に恒久的に維持することと、を含む多機能治療を実施するために使用される。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施形態に適用されるような本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、かつ指摘してきたが、当業者であれば、例示されたシステム/装置の形態及び詳細、並びにそれらの操作における様々な省略、置換、及び変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施し得ることが理解されよう。例えば、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行して同じ結果を達成する要素及び/又はステップの組み合わせは全て、本発明の範囲内に包含されるように明らかに意図される。また、上述のある実施形態から別の実施形態への要素の置き換えも、完全に意図及び想定の範囲内である。また、図面は必ずしも一定の比例尺で描かれておらず、あくまでも概念的なものにすぎない点も理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲に示される内容によってのみ限定されるものとする。
【0024】
本明細書に引用された全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は他の参照文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0025】
〔実施の態様〕
(1) 単一の一体型血管内装置であって、
近位端及びその反対側の遠位端を有するプッシャ部材と、
相互に固定された複数の支柱によって形成された開いた足場材を含む自己拡張型ステントリーバ(self-expanding stentriever)であって、前記自己拡張型ステントリーバは、外部から印加された機械的力を取り除いた時に、直径が減少した圧縮状態と、直径が拡大された自己拡張状態との間で遷移可能であり、前記自己拡張型ステントリーバの近位端及び遠位端は、近位固定点及び遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材に固定されており、前記自己拡張型ステントリーバは、前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材から分離可能又は解放可能である、自己拡張型ステントリーバと、
前記自己拡張型ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンであって、前記セミコンプライアントバルーンを通って軸方向に延在する前記プッシャ部材に固定されている、セミコンプライアントバルーンと、
前記プッシャ部材内に軸方向に画定され、前記セミコンプライアントバルーンと流体連通している膨張ルーメンと、
を備える装置。
(2) 前記自己拡張型ステントリーバが超弾性記憶材料製である、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれに近接して配置された前記自己拡張型ステントリーバの前記複数の支柱のうちのいくつかは、脆弱部分をそれぞれ含み、前記自己拡張型ステントリーバは、前記脆弱部分で、前記プッシャ部材を含まない完全に分離可能な部分と、前記近位固定点及び前記遠位固定点で前記プッシャ部材に固定されたままの残りの部分へと切断可能である、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記自己拡張型ステントリーバの前記近位端及び前記遠位端が、近位スリーブ及び遠位スリーブのそれぞれを介して前記プッシャ部材に解放可能に固定可能である、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記自己拡張型ステントリーバの前記近位端及び前記遠位端は、前記セミコンプライアントバルーンが膨張され、前記自己拡張型ステントリーバが、前記自己拡張状態にある間よりも直径の大きい超拡張状態にある時にのみ、前記近位スリーブ及び前記遠位スリーブのそれぞれから解放可能である、実施態様4に記載の装置。
【0026】
(6) 単一の一体型血管内装置を使用する方法であって、前記単一の一体型血管内装置は、近位端及びその反対側の遠位端を有するプッシャ部材と、相互に固定された複数の支柱によって形成された開いた足場材を含む自己拡張型ステントリーバであって、前記自己拡張型ステントリーバは、外部の機械的力を取り除いた時に、直径が減少した圧縮状態と、直径が拡大された自己拡張状態との間で遷移可能であり、前記自己拡張型ステントリーバの近位端及び遠位端は、近位固定点及び遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材に固定されており、前記自己拡張型ステントリーバは、前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれにおいて分離可能又は解放可能である、自己拡張型ステントリーバと、前記自己拡張型ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンであって、前記セミコンプライアントバルーンを通って軸方向に延在する前記プッシャ部材に固定されている、セミコンプライアントバルーンと、前記プッシャ部材内に軸方向に画定され、前記セミコンプライアントバルーンと流体連通している膨張ルーメンと、を含み、前記方法が、
ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルを標的血塊を横断して血管内に前進させる工程と、
前記マイクロカテーテルを前記標的血塊を横断する位置で前記血管内に維持しながら、前記ガイドワイヤを近位に抜去する工程と、
収縮状態の前記セミコンプライアントバルーンが前記自己拡張型ステントリーバの中に収容された前記圧縮状態に前記自己拡張型ステントリーバがある間に、前記単一の一体型血管内装置を前記マイクロカテーテルの前記ルーメン内に装填する工程と、
前記自己拡張型ステントリーバが前記標的血塊と一致するように、前記プッシャ部材を使用して、前記単一の一体型血管内装置を前記マイクロカテーテルの前記ルーメンを通して前進させる工程と、
前記単一の一体型血管内装置が前記標的血塊を横断するように前記血管内に維持されている間に、前記マイクロカテーテルを前記血管から近位に抜去する工程と、
を含み、前記自己拡張型ステントリーバは、前記マイクロカテーテルから引き出されると、前記自己拡張状態へと自動的に遷移して、前記自己拡張型ステントリーバの前記開いた足場材内の前記標的血塊と係合し、一方、前記自己拡張型ステントリーバ内に収容された前記セミコンプライアントバルーンは、前記自己拡張型ステントリーバへの前記標的血塊の係合及びその後の埋め込みと干渉しないように、収縮状態に維持される、
方法。
(7) 前記自己拡張状態にある前記自己拡張型ステントリーバ内に埋め込まれた前記標的血塊を、前記自己拡張型ステントリーバ内に収容された前記収縮状態にある前記セミコンプライアントバルーンと共に、近位カテーテル内に受容可能な単一ユニットとして前記血管から近位に抜去する工程と、
前記血管内の前記捕捉された標的血塊の元の部位に潜在している残留狭窄部の存在を撮像によって検出する工程と、
前記ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルを、前記検出された潜在している残留狭窄部と一致するように前記血管内へと後進させる工程と、
前記マイクロカテーテルを前記潜在している残留狭窄部と一致する位置で前記血管内に維持しながら、前記ガイドワイヤを前記血管から近位に抜去する工程と、
前記収縮状態の前記セミコンプライアントバルーンが前記自己拡張型ステントリーバの中に収容された前記圧縮状態に前記自己拡張型ステントリーバがある間に、前記単一の一体型血管内装置を前記マイクロカテーテルの前記ルーメン内に再装填する工程と、
前記自己拡張型ステントリーバが前記検出された潜在している残留狭窄部と一致するように、前記プッシャ部材を使用して、前記単一の一体型血管内装置を前記マイクロカテーテルの前記ルーメンを通して前進させる工程と、
前記単一の一体型血管内装置が前記検出された潜在している残留狭窄部と一致するように前記血管内に維持されている間に、前記マイクロカテーテルを前記血管から近位に抜去する工程であって、前記自己拡張型ステントリーバは、前記マイクロカテーテルによって引き出されると、前記自己拡張状態へと自動的に遷移する、工程と、
前記自己拡張型ステントリーバが前記自己拡張状態にある間に、前記プッシャ部材の前記膨張ルーメンを通して、膨張媒体を圧力下で供給して、前記セミコンプライアントバルーンを膨張させる工程と、
前記バルーンが半径方向外向きの力を加えながら膨張するのに伴って、前記自己拡張型ステントリーバを前記自己拡張状態から超拡張状態へと遷移させることにより、前記自己拡張型ステントリーバを前記プッシャ部材から解放又は分離しながら、前記血管を前記検出された潜在している残留狭窄部で拡張させる工程と、
を更に含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記プッシャ部材からの前記自己拡張型ステントリーバの前記解放又は分離が、
前記セミコンプライアントバルーンが膨張して、前記自己拡張型ステントリーバを超拡張状態まで半径方向外側に拡張させるのに伴い、前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれに近接して配置された前記自己拡張型ステントリーバの複数の支柱のうちのいくつかの脆弱部分を破壊して、前記自己拡張型ステントリーバの前記プッシャ部材を含まない分離可能な部分を、前記ステントリーバの前記近位固定点及び前記遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材に固定されたままの残りの部分から完全に切断する工程を含む、
実施態様7に記載の方法。
(9) 前記プッシャ部材からの前記自己拡張型ステントリーバの前記解放又は分離が、
前記セミコンプライアントバルーンが膨張するのに伴い、前記自己拡張型ステントリーバを超拡張状態まで径方向外側に拡張させ、次いで、前記自己拡張型ステントリーバの前記遠位端及び前記近位端を前記プッシャ部材に解放可能に固定している近位スリーブ及び遠位スリーブのそれぞれから解放されるまで、前記自己拡張型ステントリーバの前記遠位端及び前記近位端を短縮する工程を含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記自己拡張型ステントリーバの前記近位端及び前記遠位端は、前記セミコンプライアントバルーンが膨張され、前記自己拡張型ステントリーバが、前記自己拡張状態にある間よりも直径の大きい超拡張状態にある時にのみ、前記近位スリーブ及び前記遠位スリーブのそれぞれから解放可能である、実施態様9に記載の方法。
【0027】
(11) 前記プッシャ部材の前記膨張ルーメンを介して負圧を加えて前記膨張媒体を排出することによって前記セミコンプライアントバルーンを圧潰させる工程であって、前記セミコンプライアントバルーンが圧潰するのに伴い、前記ステントリーバが前記超拡張状態から前記自己拡張状態へと自動的に戻る、工程と、
前記自己拡張状態にある間、前記解放又は分離された自己拡張型ステントリーバを、前記検出された潜在している残留狭窄部と一致するように前記血管内に維持する工程と、前記圧潰したセミコンプライアントバルーンと前記プッシャ部材とを単一ユニットとして前記血管から近位に抜去する工程と、
を更に含む、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記標的血塊を横断して前記ガイドワイヤ及び前記マイクロカテーテルを前記血管内に前進させる前記工程が、前記ガイドワイヤ及び前記マイクロカテーテルを、連続的に又は同時に、前記血管内に、かつ前記標的血塊を横断して前進させる工程を含む、実施態様6に記載の方法。
(13) 前記ガイドワイヤ及び前記マイクロカテーテルを前記検出された潜在している残留狭窄部と一致するように前記血管内へと後進させる工程が、前記ガイドワイヤ及び前記マイクロカテーテルを、連続的に又は同時に、前記検出された潜在している残留狭窄部と一致するように前記血管内に前進させる工程を含む、実施態様7に記載の方法。
(14) 前記自己拡張型ステントリーバが前記自己拡張状態にある間に、前記プッシャ部材の前記膨張ルーメンを通して、膨張媒体を圧力下で供給して、前記セミコンプライアントバルーンを膨張させる工程と、
前記バルーンが半径方向外向きの力を加えながら膨張するのに伴って、前記自己拡張型ステントリーバを前記自己拡張状態から超拡張状態へと遷移させることにより、前記自己拡張型ステントリーバを前記プッシャ部材から解放又は分離しながら、前記血管を前記検出された潜在している残留狭窄部で拡張させる工程と、
を更に含む、実施態様6に記載の方法。
(15) 前記プッシャ部材からの前記自己拡張型ステントリーバの前記解放又は分離が、
前記セミコンプライアントバルーンが膨張して、前記自己拡張型ステントリーバを前記超拡張状態まで半径方向外側に拡張させるのに伴い、前記近位固定点及び遠位固定点のそれぞれに近接して配置された前記自己拡張型ステントリーバの複数の支柱のうちのいくつかの脆弱部分を破壊して、前記自己拡張型ステントリーバの前記プッシャ部材を含まない分離可能な部分を、前記ステントリーバの前記近位固定点及び遠位固定点のそれぞれで前記プッシャ部材に固定されたままの残りの部分から完全に切断する工程を含む、
実施態様14に記載の方法。
【0028】
(16) 前記プッシャ部材からの前記自己拡張型ステントリーバの前記解放又は分離が、
前記セミコンプライアントバルーンが膨張するのに伴い、前記自己拡張型ステントリーバを前記超拡張状態まで半径方向外側に拡張させ、次いで、前記自己拡張型ステントリーバの前記遠位端及び前記近位端を前記プッシャ部材に解放可能に固定している近位スリーブ及び遠位スリーブのそれぞれから解放されるまで、前記自己拡張型ステントリーバの前記遠位端及び前記近位端を短縮する工程を含む、
実施態様14に記載の方法。
(17) 前記自己拡張型ステントリーバの前記近位端及び前記遠位端は、前記セミコンプライアントバルーンが膨張され、前記自己拡張型ステントリーバが、前記自己拡張状態にある間よりも直径の大きい前記超拡張状態にある時にのみ、前記近位スリーブ及び前記遠位スリーブのそれぞれから解放可能である、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記プッシャ部材の前記膨張ルーメンを介して負圧を加えて前記膨張媒体を排出することによって前記セミコンプライアントバルーンを圧潰させる工程であって、前記セミコンプライアントバルーンが圧潰するのに伴い、前記ステントリーバが前記超拡張状態から前記自己拡張状態へと自動的に戻る、工程と、
前記自己拡張状態にある間、前記解放又は分離された自己拡張型ステントリーバを、前記検出された潜在している残留狭窄部と一致する位置で前記血管内に維持する工程と、前記圧潰したセミコンプライアントバルーンと前記プッシャ部材とを単一ユニットとして前記血管から近位に抜去する工程と、
を更に含む、実施態様14に記載の方法。
(19) ステントリーバ及び前記ステントリーバ内に収容されたセミコンプライアントバルーンを含む単一の一体型血管内装置を使用するための方法であって、
前記単一の一体型血管内装置を血管内に導入して、標的血塊を横断させる工程と、
前記ステントリーバを自己拡張状態へと展開させ、前記標的血塊をその中に埋め込む工程と、
前記血管から、前記血塊が中に埋め込まれた前記単一の一体型血管内装置を除去する工程と、
前記血管内の前記捕捉された標的血塊の元の位置に潜在している残留狭窄部を撮像によって検出する工程と、
前記単一の一体型血管内装置を、前記ステントリーバと前記検出された潜在している残留狭窄部とが一致する位置まで前記血管内に再導入する工程と、
前記ステントリーバが圧縮状態から自己拡張状態へと遷移するように、前記ステントリーバを展開させる工程と、
前記セミコンプライアントバルーンを膨張媒体で膨張させて、前記ステントリーバを前記自己拡張状態よりも直径の大きい超拡張状態まで膨張させることにより、前記血管を前記検出された潜在している残留狭窄部の位置で拡張させ、同時に、前記ステントリーバを前記単一の一体型血管内装置の残りの部分から完全に分離又は解放させる工程と、
前記セミコンプライアントバルーンから前記膨張媒体をパージすることによって、前記セミコンプライアントバルーンを圧潰する工程と、
前記自己拡張状態の前記ステントリーバの前記分離可能又は解放可能な部分を、前記検出された潜在している残留狭窄部の位置で前記血管内に維持しながら、前記単一の一体型血管内装置の前記残りの部分を前記血管から近位に抜去する工程と、
を含む方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3A
図3B
図3C
図3D