(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】封止複合成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/44 20060101AFI20240813BHJP
B23K 26/352 20140101ALI20240813BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20240813BHJP
【FI】
B29C65/44
B23K26/352
B23K26/00 N
(21)【出願番号】P 2020134490
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 博覧会(FABTECH 2019)(令和1年11月11日~11月14日)にてパネル展示した。博覧会(FABTECH 2019)(令和1年11月11日~11月14日)にてパンフレットを配布した。
(73)【特許権者】
【識別番号】595138155
【氏名又は名称】ダイセルミライズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】板倉 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 潔
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝之
(72)【発明者】
【氏名】和田 法寿
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094777(JP,A)
【文献】特開2019-055537(JP,A)
【文献】特開2018-202692(JP,A)
【文献】特開2013-166349(JP,A)
【文献】特開2019-018501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
B23K 11/00 - 11/36
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状面部を有し、前記板状面部に開口部を有する金属成形体と樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の板状面部の開口部を包囲する領域に対してレーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部を形成する第1工程と、
前記金属成形体の第1粗面化部に前記樹脂成形体を圧着させた状態で、前記金属成形体の第1粗面化部とは厚さ方向反対側の前記領域または、前記金属成形体の第1粗面化部に接する粗面化されていない部分に対して通電することで前記第1粗面化部を発熱させ、前記金属成形体の第1粗面化部と、前記第1粗面化部に対応する前記樹脂成形体の面を融着させて前記金属成形体の開口部を封止する第2工程を有している、封止複合成形体の製造方法
であって、
前記第1粗面化部は、Sa(算術平均高さ)が、3.0~100μmの範囲であり、Sz(最大高さ)が、20~1000μmの範囲であり、Sdr(界面の展開面積比)が、0.2~10.0の範囲であり、Sdq(二乗平均平方根傾斜)が、0.5~10.0の範囲である、封止複合成形体の製造方法。
【請求項2】
板状面部を有する金属成形体と開口部を有する樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の板状面部の領域に対してレーザー光を照射して粗面化して第2粗面化部を形成するとき、前記第2粗面化部が前記樹脂成形体の開口部を包囲できる形状および大きさのものである第1工程、
前記金属成形体の第2粗面化部の内側に前記樹脂成形体の開口部が位置するように前記樹脂成形体を圧着させた状態で、前記金属成形体の第2粗面化部とは厚さ方向反対側の前記領域に対して通電することで前記第2粗面化部を発熱させ、前記金属成形体の第2粗面化部と、前記第2粗面化部に対応する前記樹脂成形体の第2面部を融着させて前記樹脂成形体の開口部を封止する第2工程を有している、封止複合成形体の製造方法
であって、
前記第2粗面化部は、Sa(算術平均高さ)が、3.0~100μmの範囲であり、Sz(最大高さ)が、20~1000μmの範囲であり、Sdr(界面の展開面積比)が、0.2~10.0の範囲であり、Sdq(二乗平均平方根傾斜)が、0.5~10.0の範囲である、封止複合成形体の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程が、エネルギー密度1MW/cm
2以上で、照射速度2000mm/sec以上で連続波レーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部または第2粗面化部を形成する工程である、請求項1または2記載の封止複合成形体の製造方法。
【請求項4】
前記第1工程が、パルス波レーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部または第2粗面化部を形成する工程である、請求項1または2記載の封止複合成形体の製造方法。
【請求項5】
前記第1粗面化部と前記第2粗面化部が、平面形状が円、楕円形、多角形、不定形から選ばれる粗面化部で、幅が8mm以下のものである、請求項1~4のいずれか1項記載の封止複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記第1粗面化部と前記第2粗面化部が、平面形状が円、楕円形、多角形、不定形から選ばれる粗面化部で、幅が5mm以下のものである、請求項1~4のいずれか1項記載の封止複合成形体の製造方法。
【請求項7】
板状面部を有し、前記板状面部に開口部を有する金属成形体と樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法、または板状面部を有する金属成形体と開口部を有する樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の板状面部の開口部を包囲する領域に対してレーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部を形成する、または前記金属成形体の板状面部の領域に対してレーザー光を照射して粗面化して前記樹脂成形体の開口部を包囲できる形状および大きさのものである第2粗面化部を形成する第1工程と、
前記金属成形体の第1粗面化部に樹脂成形体を圧着させた状態、または前記金属成形体の第2粗面化部の内側に前記樹脂成形体の開口部が位置するように前記樹脂成形体を圧着させた状態で、前記金属成形体の第1粗面化部若しくは第2粗面化部とは厚さ方向反対側の前記領域または、前記金属成形体の第1粗面化部に接する粗面化されていない部分に対して通電することで前記第1粗面化部または前記第2粗面化部を発熱させ、前記金属成形体の第1粗面化部と、前記第1粗面化部に対応する前記樹脂成形体の面を融着させて前記金属成形体の開口部を封止する、または前記金属成形体の第2粗面化部と、前記第2粗面化部に対応する前記樹脂成形体の第2面部を融着させて前記樹脂成形体の開口部を封止する第2工程を有し、
前記金属成形体に通電するとき、外側リング電極と内側リング電極を使用し、直流電流または交流電流を通電する
、封止複合成形体の製造方法。
【請求項8】
板状面部を有し、前記板状面部に開口部を有する金属成形体と樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法、または板状面部を有する金属成形体と開口部を有する樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の板状面部の開口部を包囲する領域に対してレーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部を形成する、または前記金属成形体の板状面部の領域に対してレーザー光を照射して粗面化して前記樹脂成形体の開口部を包囲できる形状および大きさのものである第2粗面化部を形成する第1工程と、
前記金属成形体の第1粗面化部に樹脂成形体を圧着させた状態、または前記金属成形体の第2粗面化部の内側に前記樹脂成形体の開口部が位置するように前記樹脂成形体を圧着させた状態で、前記金属成形体の第1粗面化部若しくは第2粗面化部とは厚さ方向反対側の前記領域または、前記金属成形体の第1粗面化部に接する粗面化されていない部分に対して通電することで前記第1粗面化部または前記第2粗面化部を発熱させ、前記金属成形体の第1粗面化部と、前記第1粗面化部に対応する前記樹脂成形体の面を融着させて前記金属成形体の開口部を封止する、または前記金属成形体の第2粗面化部と、前記第2粗面化部に対応する前記樹脂成形体の第2面部を融着させて前記樹脂成形体の開口部を封止する第2工程を有し、
前記金属成形体に通電するとき、複数の電極を環状になるように外側に配置したもの、複数の電極を環状になるように内側に配置したものを使用し、直流電流または交流電流により通電する
、封止複合成形体の製造方法。
【請求項9】
前記金属成形体が、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金から選ばれるものである、請求項1~8のいずれか1項記載の封止複合成形体の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーから選ばれるものである、請求項1~9のいずれか1項記載の封止複合成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部が封止された封止複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属成形体と樹脂成形体からなる複合成形体を製造するとき、金属成形体の表面を粗面化した後で一体化させる技術が知られている。
特許文献1には、金属成形体の表面に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射することで前記金属成形体の表面を粗面化した後、樹脂を射出成形して複合成形体を製造する方法が開示されている。
【0003】
特許文献2には、特許文献1の発明を使用して金属成形体の開口部を樹脂成形体でシールするシール方法の発明が開示されている。
【0004】
特許文献3には、金属材に通電して発熱させる抵抗発熱を使用する金属材と樹脂材を接合させる金属樹脂接合装置の発明が開示され、特許文献4には、金属材に通電して発熱させる抵抗発熱を使用する金属材と樹脂材を接合させる金属樹脂接合体の製造方法の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5701414号公報
【文献】特開2018-94777号公報
【文献】特許第6255523号公報
【文献】特開2019-93633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属成形体の開口部が樹脂成形体で封止された封止複合成形体または、樹脂成形体の開口部が金属成形体で封止された封止複合成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、板状面部を有し、前記板状面部に開口部を有する金属成形体と樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の板状面部の開口部を包囲する領域に対してレーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部を形成する第1工程と、
前記金属成形体の第1粗面化部に前記樹脂成形体を圧着させた状態で、前記金属成形体の第1粗面化部とは厚さ方向反対側の前記領域または、前記金属成形体の第1粗面化部に接する粗面化されていない部分に対して通電することで前記第1粗面化部を発熱させ、前記金属成形体の第1粗面化部と、前記第1粗面化部に対応する前記樹脂成形体の第1面を融着させて前記金属成形体の開口部を封止する第2工程を有している、封止複合成形体の製造方法を提供する。
【0008】
また本発明は、板状面部を有する金属成形体と開口部を有する樹脂成形体を有する封止複合成形体の製造方法であって、
前記金属成形体の板状面部の領域に対してレーザー光を照射して粗面化して第2粗面化部を形成するとき、前記第2粗面化部が前記樹脂成形体の開口部を包囲できる形状および大きさのものである第1工程、
前記金属成形体の第2粗面化部の内側に前記樹脂成形体の開口部が位置するように前記樹脂成形体を圧着させた状態で、前記金属成形体の第2粗面化部とは厚さ方向反対側の前記領域に対して通電することで前記第2粗面化部を発熱させ、前記金属成形体の第2粗面化部と、前記第2粗面化部に対応する前記樹脂成形体の第2面部を融着させて前記樹脂成形体の開口部を封止する第2工程を有している、封止複合成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、金属成形体の開口部が樹脂成形体で封止された封止複合成形体または、樹脂成形体の開口部が金属成形体で封止された封止複合成形体のいずれにおいても非常に高い気密性および液密性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】金属板の開口部が樹脂成形体で封止された封止複合成形体の斜視図。
【
図3】金属筒の開口部が樹脂成形体で封止された封止複合成形体の斜視図。
【
図5】
図1の封止複合成形体の製造方法を説明するための断面図。
【
図6】樹脂成形体の開口部が金属板で封止された封止複合成形体の斜視図。
【
図8】樹脂筒の開口部が金属板で封止された封止複合成形体の斜視図。
【
図10】
図6の封止複合成形体の製造方法を説明するための断面図。
【
図11】実施例におけるシール性試験方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の封止複合成形体の製造方法]
(第1の封止複合成形体)
図1~
図5により第1の封止複合成形体の製造方法の一実施形態を説明する。
第1工程と第2工程を含む製造方法により製造された第1の封止複合成形体1は、金属成形体10の開口部12が樹脂成形体20で封止されているものである。
封止されているとは、前記開口部内の気体が漏れ出ないこと(気密性がある)および液体が漏れ出ないこと(液密性がある)、または前記開口部内に外部から気体が侵入できないこと(気密性がある)、および液体が侵入できないこと(液密性がある)を意味し、封止のレベルは用途のほか、金属および樹脂の種類などに応じて選択することができる。
【0012】
金属成形体10は、板状面部11を有し、板状面部11に開口部12を有しているものである。開口部12は、貫通孔のほか、凹部であってもよい。
金属成形体10は、板状面部11を有していればよく、全体が板状面部11である金属板であるもののほかに、一部に板状面部11である金属板を有しているものであればよい。
板状面部(金属板)11は、平面部からなるもの、曲面部からなるものまたは平面部と曲面部が混在されているものである。
板状面部(金属板)11の厚さは、製造工程において第1面11aに直流電流または交流電流を通電したとき、厚さ方向反対側の第2面11bを発熱(抵抗発熱)させることができる程度の厚さであればよい。
板状面部(金属板)11の厚さは熱伝導率により異なるが、例えば、アルミニウムの場合は5mm以下にすることができ、鉄の場合は10mm以下にすることができる。
【0013】
金属成形体10は、通電して発熱(抵抗発熱)できる性質を有しているものであればよく、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、銅、銅合金、亜鉛、亜鉛合金などから選ばれるものから、用途に応じて適したものを選択することができる。
【0014】
樹脂成形体20は、金属成形体10の開口部12を閉塞できる大きさと形状を有しているものである。
樹脂成形体20の厚さは特に制限されるものではなく、用途において要求される耐久性、質量などを考慮して選択することができる。
【0015】
樹脂成形体20は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーから選ばれるものである。
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66などの脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂を挙げることができる。
【0016】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0017】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0018】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維などを挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系、リグニン系などのものを用いることができる。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維などを挙げることができる。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅などからなる繊維を挙げることができる。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維などの合成繊維や天然繊維(セルロース系繊維など)や再生セルロース(レーヨン)繊維などを用いることができる。
【0019】
(第1工程)
第1工程において、金属成形体10の板状面部11の開口部12を包囲する領域(以下「包囲領域」という)に対してレーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部15を形成する。第1粗面化部15は、第1粗面化部15の全体または第1粗面化部15の一部を粗面化することができる。
レーザー光の照射は、エネルギー密度1MW/cm2以上で、照射速度2000mm/sec以上で連続波レーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部15を形成する第1のレーザー光照射方法と、パルス波レーザー光を照射して粗面化して第1粗面化部15を形成する第2のレーザー光照射方法のいずれかの方法を適用することができる。
【0020】
第1のレーザー光照射方法は、特許第5774246号公報、特許第5701414号公報、特許第5860190号公報、特許第5890054号公報、特許第5959689号、特許第6510296号公報、特許第6422701号公報、特許第6353320号公報に記載された連続波レーザー光の連続照射方法と同様にして実施することができる。
また、第1のレーザー光照射方法は、特許第6646018号公報に記載されたレーザー光の照射部分と非照射部分が交互に生じるように照射する方法も実施することができる。
【0021】
レーザー光の照射時のエネルギー密度(MW/cm2)は、レーザー出力(W)とレーザー照射スポット面積(π×〔スポット径/2〕2)から求められる。
レーザー光の照射時のエネルギー密度は、本発明の好ましい一態様は1MW/cm2以上であり、本発明の別の好ましい一態様は2~1000MW/cm2であり、本発明のさらに別の好ましい一態様は10~800MW/cm2であり、本発明のさらに別の好ましい一態様は10~700MW/cm2である。
レーザー光の照射速度は、本発明の好ましい一態様は2,000mm/sec以上であり、本発明の別の好ましい一態様は2,000~20,000mm/secであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は2,000~18、000mm/secであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は3,000~15、000mm/secである。
レーザー光の出力は、本発明の好ましい一態様は4~4000Wであり、本発明の別の好ましい一態様は50~2500Wであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は150~2000Wである。他のレーザー光の照射条件が同一であれば、出力が大きいほど孔(溝)深さは深くなり、出力が小さいほど孔(溝)深さは浅くなる。
波長は、本発明の好ましい一態様は500~11,000nmである。
ビーム径(スポット径)は、本発明の好ましい一態様は5~80μmである。
焦点はずし距離は、本発明の好ましい一態様は-5~+5mmであり、本発明の別の好ましい一態様は-1~+1mmであり、本発明のさらに別の好ましい一態様は-0.5~+0.1mmである。焦点はずし距離は、設定値を一定にしてレーザー照射しても良いし、焦点はずし距離を変化させながらレーザー照射しても良い。例えば、レーザー照射時に、焦点はずし距離を小さくしていくようにしたり、周期的に大きくしたり小さくしたりしても良い。焦点はずし距離が適正な値で-であると、孔深さは深くなる。
またレーザー光を照射するときの繰り返し回数を調整することでも、孔深さを調整することができる。繰り返し回数(一つの孔または溝を形成するための合計のレーザー光の照射回数)は、本発明の好ましい一態様は1~30回であり、本発明の別の好ましい一態様は5~20回である。同一のレーザー照射条件であれば、繰り返し回数が多いほど孔(溝)深さが深くなり、繰り返し回数が少ないほど孔(溝)深さが浅くなる。
【0022】
第2のレーザー光照射方法は、通常のパルス波レーザー光を照射する方法のほか、特許第5848104号公報、特許第5788836号公報、特許第5798534号公報、特許第5798535号公報、特開2016-203643号公報に記載のパルス波レーザー光の照射方法と同様にして実施することができる。
【0023】
第1粗面化部15は、前記包囲領域に対応する形状のものであり、
図1、
図2に示す実施形態では環状(円形)であるがそれに限定されるものではなく、その他、金属成形体10の形状および開口部12の形状に応じて、楕円形、多角形、不定形から選ばれる形状にすることができる。
第1粗面化部15の幅は、本発明の好ましい一態様は8mm以下であり、本発明の別の好ましい一態様は5mm以下である。第1粗面化部15の幅は均一でもよいし、部分的に異なっていてもよい。第1粗面化部15の幅が部分的に異なっている場合には、第1粗面化部15の幅の寸法は最大幅を基準とする。
このように第1粗面化部15の幅を狭くすることができるため、加工時間を短縮できること、金属成形体10の厚みが薄い場合にも変形などを抑制できること、金属成形体10が小さな部品である場合でも対応できることなどの利点がある。
【0024】
図2の第1粗面化部15を形成するために第1のレーザー光照射方法と第2のレーザー光照射方法によりレーザー光を照射するときは、スパイラル状に照射する方法、直径の異なる複数の円を形成するように照射する方法、ジグザグに照射する方法、クロスするように照射する方法、ランダムに照射する方法を適用することができる。
第1粗面化部15は、全体が粗面化されたものでもよいし、一部が粗面化され、残部は粗面化されていないものでもよい。
なお、第1粗面化部15の全体を粗面化する場合であっても、第1粗面化部15の全体にくまなくレーザー光を照射する必要はなく、狭い間隔でレーザー光を照射することで、レーザー光を照射してない部分であっても照射時の熱により粗面化される。
【0025】
第1粗面化部15の粗面化状態は、次の各要素を満たすようにすることができる。
Sa(算術平均高さ)は、本発明の好ましい一形態3.0~100μm、本発明の別の好ましい一形態は4.0~50μm、本発明のさらに別の好ましい一形態は5.0~30μmである。
Sz(最大高さ)は、本発明の好ましい一形態は20~1000μm、本発明の別の好ましい一形態は30~800μm、本発明のさらに別の好ましい一形態は40~400μmである。
Sdr(界面の展開面積比)は、本発明の好ましい一形態は0.2~10.0、本発明の別の好ましい一形態は0.3~8.0、本発明のさらに別の好ましい一形態は0.3~1.0である。
Sdq(二乗平均平方根傾斜)は、本発明の好ましい一形態は0.5~10.0、本発明の別の好ましい一形態は0.6~6.0、本発明のさらに別の好ましい一形態は0.6~2.0である。
上記の各要素の数値範囲が満たされるようにして第1粗面化部15を形成すると、得られた封止複合成形体の気密性および液密性を高めることができる。
【0026】
(第2工程)
第2工程において、金属成形体10の第1粗面化部15と、第1粗面化部15に対応する樹脂成形体20の第1環状面22を融着させて、金属成形体10の開口部12を封止する。
第2工程では、金属成形体10の第1粗面化部15に樹脂成形体20の第1環状面22を圧着させた状態で、金属成形体10の第1粗面化部15とは厚さ方向反対側の環状面(第1反対環状面16)に対して直流電流または交流電流を通電することで第1環状粗面化部を発熱(抵抗発熱)させる。
圧着は、金属成形体10の第1粗面化部15に対して、樹脂成形体20の第1環状面22を25g/cm2以上の圧力で、樹脂成形体20が変形しないように押しつける方法を適用することができる。
【0027】
通電方法は、第1反対環状面16に対して通電することで発熱させることができる方法であればよい。
例えば、
図5に示すとおり直流電流を通電するときは、+のリング電極と-のリング電極を使用し、+のリング電極を外側に配置し、-のリング電極を内側に配置して、それぞれを第1面11aに当接させた状態で直流電流を通電する方法を実施することができるほか、-のリング電極を外側に配置し、+のリング電極を内側に配置して、それぞれを第1面11aに当接させた状態で直流電流通電する方法を実施することができる。
また、複数の+電極と複数の-電極を使用し、複数の+電極を環状になるように外側に配置し、複数の-電極を環状になるように内側に配置して、それぞれを第1面11aに当接させた状態で直流電流通電する方法を実施できるほか、複数の-電極を環状になるように外側に配置し、複数の+電極を環状になるように内側に配置して、それぞれを第1面11aに当接させた状態で直流電流通電する方法を実施することができる。
さらに間隔をおいて棒状の+電極と棒状の-電極を配置して、それぞれを第1面11aに当接させた状態で直流電流を通電する方法を実施することができる。
交流電流を使用して通電するときは、
図5に示すように+と-の電極を配置する必要はない。
【0028】
第1工程と第2工程を含む製造方法により製造された第1の封止複合成形体1は、金属成形体10の板状面部11の第2面11bの開口部12を包囲する第1粗面化部15と、第1粗面化部15に対応する樹脂成形体20の第1環状面部22が融着(接合)されているものである。
金属成形体10の第1粗面化部15は、全体または一部が粗面化されているものであり、粗面化されている部分には微細な凹凸が形成されている。第1粗面化部15は、粗面化されている部分を含んでいる面を意味し、必ず全体が粗面化されているものではない。
融着(接合)されているとは、金属成形体10の第1粗面化部15と樹脂成形体20が接触された状態にあるとき、第1粗面化部15の微細な凹凸部の凹部内に、第1粗面化部15に対応する樹脂成形体20の第1環状面部22の樹脂が溶融して入り込んだ後で固化されることで、金属成形体10と樹脂成形体20が一体化された状態になっていることである。
【0029】
第1粗面化部15の全体が粗面化されているときは、金属成形体10の第1粗面化部15と樹脂成形体20の第1環状面部22の全体が接触されており、かつ金属成形体10の第1粗面化部15と樹脂成形体20の第1環状面部22の全体が融着(接合)されているため、融着(接合)面積率(%)=融着(接合)面積/接触面積×100=100%になる。
第1粗面化部15の一部が粗面化されているときは、金属成形体10の第1粗面化部15と樹脂成形体20の第1環状面部22の全体が接触されており、かつ金属成形体10の第1粗面化部15と樹脂成形体20の第1環状面部22の一部が融着(接合)されているため、融着(接合)面積率(%)=融着(接合)面積/接触面積×100=100%未満になる。
融着(接合)面積率(%)は、本発明の好ましい一態様は10~100%であり、第1粗面化部15の幅が大きいほど融着(接合)面積率を高くして、幅が小さいほど融着(接合)面積率を低くすることができる。
第1粗面化部15の幅が4~8mmのとき、融着(接合)面積率の本発明の好ましい一態様は80~100%である。
第1粗面化部15の幅が2~4mm未満のとき、融着(接合)面積率の本発明の好ましい一態様は30~75%である。
第1粗面化部15の幅が2mm未満のとき、融着(接合)面積率の本発明の好ましい一態様は25%以下である。
【0030】
[別実施形態の第1の封止複合成形体の製造方法]
図3および
図4に示す第1の封止複合成形体25は、
図1に示す第1の封止複合成形体1の別実施形態のもので、金属筒30の開口部32が樹脂成形体40で封止されたものである。
金属筒30は、外周面31aと内周面31bを有する周面部31が曲面の板状面部になっている。
金属筒30は、幅方向の断面形状が多角形のものでもよい。
また金属筒30は、
図3および
図4に示すような真っ直ぐなもののほか、用途に応じて、一部が湾曲しているもの、一部が曲がっているものでもよく、さらに用途に応じて、1または2以上に分岐されているものでもよいし、封止された開口部を除いた開口部の一部または全部が閉塞されているものでもよい。
金属筒30は両端部が開口され(
図4では一端部の開口部32のみ示されている)、第1端面33が第1環状粗面化部になっている。
樹脂成形体40は、第1環状粗面化部(第1端面)33に対応する第1環状面42を有している。
図3に示す封止複合成形体25は、
図4に示す金属筒30の第1環状粗面化部(第1端面)33に樹脂成形体40の第1環状面部42が融着されているものである。
【0031】
図3に示す第1の封止複合成形体25は、
図1に示す第1の封止複合成形体1と同様の第1工程と第2工程を実施することで製造することができる。
第1工程を実施するときは、
図4の金属筒30の第1端面(包囲領域)33にレーザー光を照射して粗面化して第2環状粗面化部33を形成する。
第2工程を実施するときは、
図4の金属筒30の第1端面(第2環状粗面化部)33に樹脂成形体40の第2環状面42を被せて圧着した状態で、第1端面(第2環状粗面化部)33に近接した外周面31に直流電流または交流電流を通電することで第1端面(第2環状粗面化部)33を発熱(抵抗発熱)させ、第1端面(第2環状粗面化部)33と第2環状面42を融着させることで第1の封止複合成形体25を得ることができる。
【0032】
第1工程と第2工程を含む製造方法により製造された第1の封止複合成形体1または第1の封止複合成形体25は、実施例に記載のエアリーク試験、Heリーク試験およびヒートショック後のHeリーク試験において気体の漏れがないという高い気密性および液密性を有している。
このため、第1の封止複合成形体1または第1の封止複合成形体25は、高い気密性および液密性が要求される車載用エレクトロニックコントロールユニット(ECU)、冷却ユニット、熱交換ユニット、センサーケース、冷却水配管部品、防水電子機器の筐体などに使用することができる。
【0033】
[第2の封止複合成形体の製造方法]
(第2の封止複合成形体)
図6~
図10により第2の封止複合成形体とその製造方法を説明する。
第1工程と第2工程を含む製造方法により製造された第2の封止複合成形体50は、樹脂成形体70の開口部72が金属成形体60により封止されているものである。
封止されているとは、前記開口部内の気体が漏れ出ないこと(気密性がある)および液体が漏れ出ないこと(液密性がある)、または前記開口部内に外部から気体が侵入できないこと(気密性がある)、および液体が侵入できないこと(液密性がある)ことを意味し、封止のレベルは用途のほか、金属および樹脂の種類などに応じて選択することができる。
【0034】
金属成形体60は、樹脂成形体70の開口部72を閉塞できる大きさと形状を有しているものである。
金属成形体60は、第1の封止複合成形体1と同じ金属からなるものを使用することができる。
金属成形体60は、全体が金属板であるもののほかに一部に金属板を有しているものであればよく、金属板は、平面部からなるもの、曲面部からなるものまたは平面部と曲面部が混在されているものである。
金属成形体(金属板)60の厚さは、製造工程において第1面61の第1面環状外周部61aに直流電流または交流電流を通電したとき、厚さ方向反対側の第2面62の第2面環状外周部62aを発熱(抵抗発熱)させることができる程度の厚さであればよい。
金属成形体(金属板)60の厚さは熱伝導率により異なるが、例えば、アルミニウムの場合は5mm以下にすることができ、鉄の場合は10mm以下にすることができる。
【0035】
樹脂成形体20の形状および厚さは特に制限されるものではなく、用途において要求される耐久性、質量などを考慮して選択することができる。
樹脂成形体20は、第1の封止複合成形体1と同じ樹脂からなるものを使用することができる。
【0036】
(第1工程)
第1工程において、
図7に示す金属成形体(金属板)60の第2面62の包囲領域にレーザー光を照射して粗面化して第2粗面化部62aを形成する。第2粗面化部62aは、第2粗面化部62aの全体または第2粗面化部62aの一部を粗面化することができる。
レーザー光の照射は、上記した第1の封止複合成形体1の製造方法と同じ第1のレーザー光照射方法または第2のレーザー光照射方法のいずれかの方法を適用して、同様に実施することができる。
【0037】
第2粗面化部62aは、前記包囲領域に対応する形状のものであり、
図6、
図7に示す実施形態では環状(円形)であるがそれに限定されるものではなく、その他、樹脂成形体70の形状および開口部72の形状に応じて、楕円形、多角形、不定形から選ばれる形状にすることができる。
第2粗面化部62aの幅は、本発明の好ましい一態様は8mm以下であり、本発明の別の好ましい一態様は5mm以下である。第2粗面化部62aの幅は均一でもよいし、部分的に異なっていてもよい。第2粗面化部62aの幅が部分的に異なっている場合には、第2粗面化部62aの幅の寸法は最大幅を基準とする。
このように第2粗面化部62aの幅を狭くすることができるため、加工時間を短縮できること、金属成形体60の厚みが薄い場合にも変形などを抑制できること、金属成形体60が小さな部品である場合でも対応できることなどの利点がある。
【0038】
第2粗面化部62aのSa(算術平均高さ)、Sz(最大高さ)、Sdr(界面の展開面積比)、Sdq(二乗平均平方根傾斜)の各数値範囲は、第1の封止複合成形体1の製造方法と同じ範囲である。
【0039】
(第2工程)
第2工程において、金属成形体60の第2粗面化部62aと、第2粗面化部62aに対応する樹脂成形体70の第2面(第2環状面)73を融着させて、樹脂成形体70の開口部72を封止する。
第2工程では、金属成形体60の第2粗面化部62aを樹脂成形体70の第2環状面部72に圧着させた状態で、金属成形体60の第2粗面化部62aとは厚さ方向反対側の環状面(第2反対環状面62b)に対して通電することで第2粗面化部62aを発熱(抵抗発熱)させる。
圧着は、樹脂成形体70の第2環状面72に対して、金属成形体60の第2粗面化部62aを25g/cm
2で、樹脂成形体70が変形しないように押しつける方法を適用することができる。
通電方法は、第1反対環状面62bに対して直流電流または交流電流を通電することで発熱させることができる方法であればよい。
例えば、
図10に示すとおり直流電流を通電するときは、+リング電極と-のリング電極を使用し、+のリング電極を外側に配置し、-のリング電極を内側に配置して、それぞれを第1反対環状面62bに当接させた状態で直流電流を通電する方法を実施できるほか、-のリング電極を外側に配置し、+のリング電極を内側に配置して、それぞれを第1反対環状面62bに当接させた状態で直流電流を通電する方法を実施することができる。
また、複数の+電極と、複数の-電極を使用し、複数の+電極を環状になるように外側に配置し、複数の-電極を環状になるように内側に配置して、それぞれを第1反対環状面62bに当接させた状態で直流電流を通電する方法を実施することができる。
さらに間隔をおいて棒状の+電極と棒状の-電極を配置して、それぞれを第1反対環状面62bに当接させた状態で直流電流を通電する方法を実施することができる。
交流電流を使用して通電するときは、
図10に示すように+と-の電極を配置する必要はない。
【0040】
第2の封止複合成形体50は、金属成形体60の第2面62の第2粗面化部62aと、第2粗面化部62aに対応する樹脂成形体70の第2環状面部73が融着されているものである。
金属成形体60の第2粗面化部62aは、全体または一部が粗面化されているものであり、粗面化されている部分には微細な凹凸が形成されている。第2粗面化部62a、粗面化されている部分を含んでいる面を意味し、必ず全体が粗面化されているものではない。
融着されているとは、金属成形体60の第2粗面化部62aと樹脂成形体70の開口部72を包囲する第2環状面部73が接触された状態にあるとき、第2粗面化部62aの微細な凹凸部の凹部内に、第2粗面化部62aに対応する樹脂成形体70の第2環状面部73の樹脂が溶融状態で入り込んだ後で固化されることで、金属成形体60と樹脂成形体70が一体化された状態になっていることである。
【0041】
[別実施形態の第2の封止複合成形体の製造方法]
図8および
図9に示す第2の封止複合成形体75は、
図6に示す第1の封止複合成形体50の別実施形態のものであり、樹脂筒90の開口部92が金属成形体80で封止されたものである。
金属成形体80は、板状面部11を有していればよく、
図9に示すように全体が金属板であるもののほかに一部に金属板を有しているものであればよい。
金属成形体(金属板)80は、平面部からなるもののほか、曲面部からなるものまたは平面部と曲面部が混在されているものでもよい。
金属成形体(金属板)80の厚さは、製造工程において第1面81aに通電したとき、厚さ方向反対側の第2面81bを発熱(抵抗発熱)させることができる程度の厚さであればよい。
金属成形体(金属板)80の厚さは熱伝導率により異なるが、例えば、アルミニウムの場合は5mm以下にすることができ、鉄の場合は10mm以下にすることができる。
【0042】
樹脂筒90は両端部が開口され(
図9では一端部の開口部92のみ示されている)、開口部92を包囲する第1端面93を有している。
樹脂筒90の幅方向の断面形状は多角形でもよい。
また樹脂筒90は、
図8および
図9に示すような真っ直ぐなもののほか、用途に応じて、一部が湾曲しているもの、一部が曲がっているものでもよく、さらに用途に応じて、1または2以上に分岐されているものでもよいし、封止された開口部を除いた開口部の一部または全部が閉塞されているものでもよい。
図8に示す第2の封止複合成形体75は、
図9に示す金属板80の第2環状粗面化部82に樹脂筒90の第1端面(第2環状面部)93が融着されているものである。
【0043】
図8に示す第2の封止複合成形体75は、
図6に示す第2の封止複合成形体50と同様の第1工程と第2工程を実施することで製造することができる。
第1工程を実施するときは、
図9の金属板80の包囲領域にレーザー光を照射して粗面化して第2環状粗面化部82を形成する。
第2工程を実施するときは、
図9の樹脂筒90の第1端面93に金属板80の第2環状粗面化部82を被せて圧着した状態で、
図10に示すようにして金属板80の第2環状粗面化部82の厚さ方向反対面に直流電流または交流電流を通電することで第2環状粗面化部82を発熱(抵抗発熱)させ、第2環状粗面化部82と第1端面93を融着させることで第2の封止複合成形体75を得ることができる。
【0044】
第1工程と第2工程を含む製造方法により製造された第2の封止複合成形体50または第2の封止複合成形体75は、実施例に記載のエアリーク試験、Heリーク試験およびヒートショック後のHeリーク試験において気体の漏れがないという高い気密性および液密性を有している。
このため、第2の封止複合成形体50または第1の封止複合成形体75は、高い気密性が要求される車載用エレクトロニックコントロールユニットのケース(ECUケース)リチウムイオン電池の端子、冷却・放熱ユニットなどに使用することができる。
【0045】
各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲で、適宜構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0046】
実施例1~4、比較例1~3
図1および
図2に示す封止複合成形体を製造した。金属成形体は、アルミニウム合金(A5052)からなるドーナツ形状のもの(直径50mm、開口部の直径20mm、厚さ1mm)を使用し、樹脂成形体は、PPS(ガラス繊維35質量%含有)からなる円板形状のもの(直径30mm,厚さ2mm)を使用した。
(第1工程)
図2に示す第1粗面化部15の面積(接触面積)中の一部また全部(粗面化面積)を表1に示す条件でレーザー光線を照射して粗面化した。
【0047】
(第2工程)
実施例1~4は、
図5に示すようにして+のリング電極(外側配置)と-のリング電極(内側配置)を使用して抵抗発熱させることで封止複合成形体を製造した。
金属試験片と樹脂成形体を重ねたものを外側電極(+)(直径30mm)、内側電極(-)(直径20mm)の電極にて押しつけ、直流電流を印加した。電力で押し当てた圧力は3~4kNで調整し、通電時間は1秒未満にて接合を実施した。
【0048】
比較例2、3は、射出成形により封止複合成形体を製造した。比較例2、3は、特開2018-94777号公報に記載の発明に相当するものである。
射出成形条件は、次のとおりである。
GF35%強化PPS樹脂(DURAFIDE 1135MF1:ポリプラスチックス(株)製),GF(ガ
ラス繊維)
樹脂温度:320℃
金型温度:150℃
射出成形機:ファナック製ROBOSHOT S2000i100B)
【0049】
(シール性試験)
シール性は、次のように試験した。
図11に示す金属製の試験用容器220の開口部に
図1で示す封止複合成形体1を固定した。金属製の試験用容器220と金属成形体10は溶接固定した。
その後、試験用容器220内に封止複合成形体1が完全に浸漬するまで水230を入れた。
この状態で、室温環境下、試験用容器220の側面から内部空間221内に空気を500kPaで3分間送ったときに空気漏れがあるかどうか(水230に泡が発生するかどうか)で評価した。このとき、空気漏れがない場合は〇、漏れがある場合は×とした。
【0050】
(Heリーク試験)
試験機:(株)コスモ計器 ヘリウムリークテスター G-FINE
検出方法:大気圧法
検出範囲:下限 5.0・10-7Pa・m3/s
設定圧力:500kPa
5.0・10-7Pa・m3/s以下の場合は〇、超える場合は×とした。
【0051】
(3)ヒートショック後のHeリーク試験
封止複合成形体を気層式熱衝撃試験機NT550A(楠本化成(株)製)に入れた後、-40℃で30分間保持、-40℃から125℃まで昇温させた後に30分間保持、125℃から-40℃まで降温させた後に30分間保持を1サイクルとして500サイクル繰り返した後、ヘリウムのリーク試験を実施した。
ヘリウムのリーク試験は、上記(2)と同様の方法で行った。
【0052】
【0053】
実施例1~4と比較例2、3との対比から、ヒートショック後のHeリーク試験において気密性に明確な差が認められた。
実施例1~4の封止複合成形体と比較例2、3の封止複合成形体は、エアリーク試験とHeリーク試験の結果は差が認められないが、ヒートショック後のHeリーク試験の結果から、実施例1~4の封止複合成形体と比較例2、3の封止複合成形体の気密性には明確な差があるため、例えば、常温および常圧雰囲気中であっても、5年後または10年後のように長期間経過後における気密性には差が生じることは自明である。
また実施例1は、処理幅が1mmであっても高い気密性を発揮することができたものであり、加工時間が短縮できること、金属成形体の厚みが薄い場合にも変形などを抑制できること、金属成形体が小さな部品である場合でも対応できることなどの効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の封止複合成形体の製造方法により得られた封止複合成形体は、車載用エレクトロニックコントロールユニットのケース(ECUケース)、リチウムイオン電池の端子、冷却・放熱ユニット、熱交換ユニット、センサーケース、冷却水配管部品、防水電子機器の筐体などに利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1,25 第1の封止複合成形体
10 金属成形体(金属板)
11 板状面部
12 開口部
15 第1環状粗面化部
20 樹脂成形体
22 第1環状面
50,75 第2の封止複合成形体
60 金属成形体
62a 第2環状粗面化部
70 樹脂成形体
72 開口部