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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】融通システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20240813BHJP
   F24F 3/147 20060101ALI20240813BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20240813BHJP
   F24F 11/83 20180101ALI20240813BHJP
   F24F 11/76 20180101ALI20240813BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F3/147
F24F7/08 101B
F24F11/83
F24F11/76
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020141328
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037279
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】熊埜御堂 令
(72)【発明者】
【氏名】七岡 寛
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏典
(72)【発明者】
【氏名】夜久 幸希
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054175(JP,A)
【文献】特開2009-186104(JP,A)
【文献】特開2020-076571(JP,A)
【文献】特開2002-317998(JP,A)
【文献】特開2005-291559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
F24F 3/147
F24F 7/08
F24F 11/83
F24F 11/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の各室の湿度を測定する湿度測定部と、
前記建物の各室の室温を測定する室温測定部と、
前記建物の外部と前記建物の各室とを接続する第一のダクトに設けられ、前記建物の浴室で発生した湿気を前記浴室とは異なる他の室へ供給可能な供給部と、
前記浴室に隣接する脱衣室と前記供給部と前記建物の外部とを接続する第二のダクトに設けられると共に、前記脱衣室と前記供給部とを連通させるか、または、前記脱衣室と前記建物の外部とを連通させるか切り替え可能に構成された切替部と、
前記建物の各居室と各非居室とを互いに接続する少なくとも1以上の第三のダクトにそれぞれ設けられるファンと、
前記湿度測定部及び前記室温測定部の測定結果に基づいて前記供給部及び前記ファンの動作を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記建物の各室の中で最も低い湿度が第一湿度未満であり、かつ、前記浴室又は前記脱衣室の少なくとも一方の湿度が、前記第一湿度よりも高い第二湿度を超える場合に、前記脱衣室と前記供給部とを連通させるように前記切替部を切り替えると共に前記供給部を動作させ、前記建物の外部からの空気を、前記浴室から前記脱衣室及び前記第二のダクトを介して供給される空気と全熱交換し、前記浴室で発生した湿気を前記第一のダクトを介して前記他の室へ供給し、
一方、
前記建物の各室の中で最も低い湿度が第一湿度未満であり、かつ、前記浴室又は前記脱衣室の少なくとも一方の湿度が、前記第一湿度よりも高い第二湿度を超える場合ではない場合に、前記脱衣室と前記建物の外部とを連通させるように前記切替部を切り替えると共に前記供給部を動作させ、前記建物の外部からの空気を、前記浴室からの空気と全熱交換することなく、前記第一のダクトを介して前記他の室へ供給し、
かつ、
前記建物の各室の中で前記居室と前記非居室との間の互いの温度差が所定の閾値よりも大きい特定の居室と非居室とがある場合、前記温度差が小さくなるように、前記特定の居室と非居室とを接続する前記第三のダクトの前記ファンを動作させる、
融通システム。
【請求項2】
前記湿気を前記他の室へ供給する供給経路に設けられ、前記供給経路の開度を調整可能な開度調整部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記供給部を動作させる場合において、前記湿度測定部の前記他の室の測定結果が第三湿度未満である場合に、前記開度を第一開度に調整し、
前記供給部を動作させる場合において、前記湿度測定部の前記他の室の測定結果が前記第三湿度以上である場合に、前記開度を前記第一開度よりも小さい第二開度に調整する、
請求項1に記載の融通システム。
【請求項3】
前記他の室の室温を上昇可能な昇温部を具備し、
前記制御部は、
前記開度を前記第二開度に調整する場合に、前記室温測定部の測定結果に基づいて前記昇温部の動作を制御する、
請求項に記載の融通システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記開度を前記第二開度に調整する場合において、前記建物の各室の中で最も低い室温が第一室温未満である場合に前記昇温部を動作させる、
請求項に記載の融通システム。
【請求項5】
前記居室の室温を調整可能な室温調整部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記ファンを動作させて前記居室から前記非居室へと空気を導入する場合に、前記室温測定部の測定結果に基づいて前記室温調整部の動作を制御する、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の融通システム。
【請求項6】
前記制御部は、
前記居室から前記非居室へと空気を導入する場合において、前記非居室の室温が第二室温未満である場合に、前記室温調整部を動作させて前記居室の室温を上昇させる、
請求項5に記載の融通システム。
【請求項7】
前記制御部は、
前記居室から前記非居室へと空気を導入する場合において、前記非居室の室温が前記第二室温よりも高い第三室温を超える場合に、前記室温調整部を動作させて前記居室の室温を下降させる、
請求項6に記載の融通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内において湿気を融通する融通システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内において湿気を融通する融通システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の換気システム(融通システム)は、デシカント調湿機等を具備する。デシカント調湿機は、外気を取り入れて屋内へ供給可能に構成されると共に、屋内からデシカント調湿機へと戻される戻り空気を屋外へ排出可能に構成される。デシカント調湿機は、外気と戻り空気との間で湿度を交換することで、外気を加湿して屋内の各室へ供給することができる。こうして、デシカント調湿機は、建物内において湿気を融通することができる。
【0004】
特許文献1に記載の換気システムでは、屋内を十分に加湿できない可能性がある。よってこの場合、デシカント調湿機とは異なる機器を動作させて屋内の加湿を行う必要が生じ、加湿に要する消費電力が増加する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-291559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、加湿に要する消費電力を抑制することが可能な融通システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の各室の湿度を測定する湿度測定部と、前記建物の各室の室温を測定する室温測定部と、前記建物の外部と前記建物の各室とを接続する第一のダクトに設けられ、前記建物の浴室で発生した湿気を前記浴室とは異なる他の室へ供給可能な供給部と、前記浴室に隣接する脱衣室と前記供給部と前記建物の外部とを接続する第二のダクトに設けられると共に、前記脱衣室と前記供給部とを連通させるか、または、前記脱衣室と前記建物の外部とを連通させるか切り替え可能に構成された切替部と、前記建物の各居室と各非居室とを互いに接続する少なくとも1以上の第三のダクトにそれぞれ設けられるファンと、前記湿度測定部及び前記室温測定部の測定結果に基づいて前記供給部及び前記ファンの動作を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記建物の各室の中で最も低い湿度が第一湿度未満であり、かつ、前記浴室又は前記脱衣室の少なくとも一方の湿度が、前記第一湿度よりも高い第二湿度を超える場合に、前記脱衣室と前記供給部とを連通させるように前記切替部を切り替えると共に前記供給部を動作させ、前記建物の外部からの空気を、前記浴室から前記脱衣室及び前記第二のダクトを介して供給される空気と全熱交換し、前記浴室で発生した湿気を前記第一のダクトを介して前記他の室へ供給し、一方、前記建物の各室の中で最も低い湿度が第一湿度未満であり、かつ、前記浴室又は前記脱衣室の少なくとも一方の湿度が、前記第一湿度よりも高い第二湿度を超える場合ではない場合に、前記脱衣室と前記建物の外部とを連通させるように前記切替部を切り替えると共に前記供給部を動作させ、前記建物の外部からの空気を、前記浴室からの空気と全熱交換することなく、前記第一のダクトを介して前記他の室へ供給し、かつ、前記建物の各室の中で前記居室と前記非居室との間の互いの温度差が所定の閾値よりも大きい特定の居室と非居室とがある場合、前記温度差が小さくなるように、前記特定の居室と非居室とを接続する前記第三のダクトの前記ファンを動作させるものである。
【0012】
請求項においては、前記湿気を前記他の室へ供給する供給経路に設けられ、前記供給経路の開度を調整可能な開度調整部をさらに具備し、前記制御部は、前記供給部を動作させる場合において、前記湿度測定部の前記他の室の測定結果が第三湿度未満である場合に、前記開度を第一開度に調整し、前記供給部を動作させる場合において、前記湿度測定部の前記他の室の測定結果が前記第三湿度以上である場合に、前記開度を前記第一開度よりも小さい第二開度に調整するものである。
【0013】
請求項においては、前記建物の各室の室温を測定する室温測定部と、前記他の室の室温を上昇可能な昇温部と、をさらに具備し、前記制御部は、前記開度を前記第二開度に調整する場合に、前記室温測定部の測定結果に基づいて前記昇温部の動作を制御するものである。
【0014】
請求項においては、前記制御部は、前記開度を前記第二開度に調整する場合において、前記建物の各室の中で最も低い室温が第一室温未満である場合に前記昇温部を動作させるものである。
【0016】
請求項においては、前記居室の室温を調整可能な室温調整部をさらに具備し、前記制御部は、前記導入部を動作させて前記居室から前記非居室へと空気を導入する場合に、前記室温測定部の測定結果に基づいて前記室温調整部の動作を制御するものである。
【0017】
請求項においては、前記制御部は、前記居室から前記非居室へと空気を導入する場合において、前記非居室の室温が第二室温未満である場合に、前記室温調整部を動作させて前記居室の室温を上昇させるものである。
【0018】
請求項においては、前記制御部は、前記居室から前記非居室へと空気を導入する場合において、前記非居室の室温が前記第二室温よりも高い第三室温を超える場合に、前記室温調整部を動作させて前記居室の室温を下降させるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、加湿に要する消費電力を抑制することができる。また、建物の外部からの空気に浴室で発生した湿気及び熱を移動させ、他の室へ融通することができる。また、簡易な構成で熱交換を行うことができる。また、適切なタイミングで加湿を行うことができる。また、居室と非居室の温度差に応じて、居室と非居室との間で熱を融通することができる。
【0024】
請求項においては、結露の発生を防止することができる。
【0025】
請求項においては、結露の発生を効果的に防止することができる。
【0026】
請求項においては、結露の発生を効果的に防止することができる。
【0028】
請求項においては、居室を介して非居室の室温を室温調整部で調整することができる。
【0029】
請求項においては、室温が低い非居室を効果的に温めることができる。
【0030】
請求項においては、室温が高い非居室を効果的に冷やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る融通システムが適用された住宅を示す図。
図2】全熱交換換気扇及びバイパス部と建物の各室との接続関係を示す説明図。
図3】(a)全熱交換換気扇の構成を示す図。(b)湿気を融通する様子を示す図。
図4】バイパス部の構成を示す図。
図5】湿気融通運転及び通常運転を切り替える運転切替処理を示すフローチャート。
図6】湿気融通運転の処理を示すフローチャート。
図7】湿気融通運転が行われている状態の住宅を示す図。
図8】熱融通運転を行うか否かを判断する運転判断処理を示すフローチャート。
図9】熱融通運転の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、図1を参照して、本実施形態に係る融通システム10が設けられる住宅1の構成について説明する。
【0033】
住宅1は、二階建ての戸建て住宅である。住宅1の屋内空間は、仕切り壁等によって居室2及び非居室3に区画される。
【0034】
居室2とは、人が居住、執務及び娯楽等の目的のために継続的に使用する室である。すなわち、居室2とは、人が比較的長い時間滞在する室内空間である。居室2には、例えば、LDK2a、洋室2b及び主寝室2cが含まれる。LDK2aは、住宅1の一階部分に配置される。洋室2b及び主寝室2cは、住宅1の二階部分に配置される。
【0035】
非居室3とは、居室2以外の室である。すなわち、非居室3とは、人が比較的短い時間滞在する室内空間である。非居室3には、例えば、洗面室3a、浴室3b及び廊下3cが含まれる。洗面室3a及び浴室3bは、住宅1の一階部分に配置される。浴室3bには、換気のための換気扇Fが設けられる。換気扇Fは、住宅1の外部と浴室3bとを連通するダクトの中途部に配置される。洗面室3aは、LDK2a及び浴室3bと隣接するように配置される。洗面室3aは、浴室3bを使用する際の脱衣室をかねており、浴室3bとの間に浴室ドア(不図示)が設けられる。浴室3bの空気や湿気は、当該浴室ドアに設けられたルーバー等の隙間を通って洗面室3aに流入することができる。このように、洗面室3aは、前記浴室ドアを介して浴室3bと連通される。廊下3cは、住宅1の二階部分に配置される。廊下3cは、洋室2b及び主寝室2cの間に配置される。
【0036】
次に、図1から図4を参照して、融通システム10の構成について説明する。
【0037】
融通システム10は、湿気及び熱を住宅1内で融通するものである。融通システム10は、温湿度センサ11、エアコン12、全熱交換換気扇13、切替部14、ダンパ装置15、バイパス部16及び制御部17を具備する。
【0038】
温湿度センサ11は、設置された場所の温度及び相対湿度を測定するためのものである。図1に示すように、温湿度センサ11は、住宅1の各室にそれぞれ設置され、各室の室温及び相対湿度を測定する。
【0039】
エアコン12は、室温を調整するためのものである。エアコン12は、居室2の各室(LDK2a等)に1台ずつ設置される。
【0040】
全熱交換換気扇13は、室内を換気する際に外気と室内の空気との間で全熱交換(湿気及び熱を交換)するものである。全熱交換換気扇13は、住宅1の階間(一階部分の天井と二階部分の床部との間)に設けられる。図3(a)に示すように、全熱交換換気扇13は、ケース13a及び熱交換素子13b等を具備する。
【0041】
ケース13aは、熱交換素子13b及びファン(不図示)等を収容する略箱状の部材である。熱交換素子13bは、ケース13aに導入された空気を全熱交換するものである。図1図2及び図3(a)に示すように、全熱交換換気扇13(ケース13a)は、第一ダクトD1及び第四ダクトD4を介して住宅1の外部と連通される。また、全熱交換換気扇13は、第二ダクトD2を介して住宅1の浴室3b以外の室と連通される。また、全熱交換換気扇13は、第三ダクトD3を介して廊下3cと連通される。
【0042】
第一ダクトD1は、外気OA(住宅1の外部からの空気)を全熱交換換気扇13に導入するためのもの(経路)である。第二ダクトD2は、給気SA(熱交換素子13bで全熱交換された外気OA)を室内へ供給するためのものである。第三ダクトD3は、還気RA(室内から全熱交換換気扇13へ戻す空気)を全熱交換換気扇13に導入するためのものである。第四ダクトD4は、排気EA(熱交換素子13bで全熱交換された還気RA)を住宅1の外部へと排出するためのものである。
【0043】
全熱交換換気扇13には、前記ファンの駆動により、第一ダクトD1及び第三ダクトD3を介して外気OA及び還気RAが導入される。全熱交換換気扇13は、外気OA及び還気RAを熱交換素子13bによって全熱交換し、第二ダクトD2を介して給気SAを室内へ供給すると共に、第四ダクトD4を介して排気EAを住宅1の外部へ排出する。こうして全熱交換換気扇13は、外気OAを室内の空気(還気RA)と全熱交換し、室内の温度及び相対湿度に近づけた空気(給気SA)を用いて室内の換気を行うことができる。また、全熱交換換気扇13は、第二ダクトD2を介して給気SAを浴室3b以外の室へ供給することができる。なお、以下においては、給気SAの供給対象となる室(浴室3b以外の室)を「供給先」と称する。また、全熱交換換気扇13は、1日中動作して、住宅1を24時間換気している。
【0044】
切替部14は、洗面室3aから全熱交換換気扇13への空気の導入の可否を切り替えるものである。切替部14は、所定のダクトD5を介して洗面室3a及び第三ダクトD3の中途部と接続される。また、切替部14は、所定のダクトD6を介して浴室3bの換気扇Fと接続される。切替部14は、例えば、バルブ等によって構成され、内部に設けられた通路を切り替えることで、洗面室3aからの空気を全熱交換換気扇13(第三ダクトD3)又は換気扇Fへと流通させる(流通方向を切り替える)ことができる。
【0045】
図3(b)に示すように、切替部14は、洗面室3aからの空気を全熱交換換気扇13へと流通させる(全熱交換換気扇13への空気の導入を許容する)ことで、換気扇Fへの空気の導入を規制して、洗面室3aからの空気を外気OAと全熱交換させることができる。これにより、浴室3bで発生した湿気を洗面室3aを介して外気OAに移動させ、供給先へ融通することができる。一方、図3(a)に示すように、切替部14は、洗面室3aからの空気を換気扇Fへと流通させることで、全熱交換換気扇13への空気の導入を規制して、洗面室3aからの空気と外気OAとの全熱交換を停止することができる。
【0046】
図1及び図2に示すダンパ装置15は、第二ダクトD2(給気SAを供給先へ供給する経路)の開度を調整するためのものである。ダンパ装置15は、第二ダクトD2の中途部に設けられる。ダンパ装置15は、例えば、ケースとケースの内部に設けられたダンパとを具備し、当該ダンパの開度を調整することで(不図示)、第二ダクトD2の開度を調整可能に構成される。ダンパ装置15は、開度の調整により、供給先への給気SAの風量を調整することができる。ダンパ装置15は、供給先の各室ごとに給気SAの風量を調整可能となるように、1つの室に対して1つ設けられる。
【0047】
バイパス部16は、居室2と非居室3との間で通気を行うものである。より詳細には、バイパス部16は、居室2と非居室3とを1対1で接続して通気する(例えば、LDK2aと洗面室3aとの間で通気する)ものである。バイパス部16は、住宅1の階間に設けられる。バイパス部16は、居室2のいずれか1室と、非居室3のいずれか1室と、を接続する。バイパス部16は複数設けられ、居室2と非居室3とを複数組接続している。例えば、LDK2aと洗面室3aを接続するバイパス部16、洋室2bと廊下3cとを接続するバイパス部16等が設けられる。なお、どの室同士を接続するかや、何組の室を接続するか(バイパス部16をいくつ設けるか)は任意に決定することができる。
【0048】
なお、図1図2図4及び図7では、LDK2aと洗面室3aとを接続するバイパス部16の構成のみ記載し、その他の構成(例えば、洋室2bと廊下3cとを接続する構成等)についての記載を省略している。以下では、図2及び図4を参照してバイパス部16の構成を説明する。バイパス部16は、吹出ボックス16a、ダクト16b及びファン16cを具備する。
【0049】
吹出ボックス16aは、導入された空気を室内へ向けて吹き出す略箱状の部材である。吹出ボックス16aは、LDK2a(居室2)及び洗面室3a(非居室3)にそれぞれ設けられる。
【0050】
ダクト16bは、LDK2aに設けられる吹出ボックス16aと洗面室3aに設けられる吹出ボックス16aとを互いに接続する。ファン16cは、ダクト16bの中途部に設けられる。ファン16cは、LDK2aから洗面室3aへ向けて風を送ることで、LDK2aの空気を吹出ボックス16aを介して洗面室3aへ導入する(通気を行う)ことができる。
【0051】
図1に示す制御部17は、融通システム10の各機器を制御するためのものである。制御部17は、CPU等の演算処理装置、並びにRAMやROM等の記憶装置等を具備する。制御部17は、融通システム10を動作させるための種々のプログラム等を前記記憶装置に格納している。制御部17は、温湿度センサ11、エアコン12、切替部14、ダンパ装置15及びバイパス部16のファン16cと信号を送受信可能に接続される。なお、図1及び図7においては、制御部17と一部の温湿度センサ11等とが接続された状態を記載しているが、実際には制御部17と全ての温湿度センサ11等とが接続される。
【0052】
制御部17は、温湿度センサ11から信号を受信することで、住宅1の各室の室温及び相対湿度を取得することができる。制御部17は、エアコン12に信号を送信することで、エアコン12の運転を制御することができる。制御部17は、切替部14に信号を送信することで、洗面室3aから全熱交換換気扇13への空気の導入可否を切り替えることができる。制御部17は、ダンパ装置15に信号を送信することで、第二ダクトD2の開度を調整することができる。制御部17は、ファン16cに信号を送信することで、ファン16cの動作を制御することができる。
【0053】
また、制御部17は、浴室3bの換気扇Fと接続され、換気扇Fに信号を送信することで換気扇Fの動作を制御することができる。
【0054】
上述の如く構成される制御部17は、湿気融通運転、通常運転及び熱融通運転を行うことができる。湿気融通運転は、全熱交換換気扇13によって、浴室3bで発生した湿気を融通することを目的とした運転である。通常運転は、浴室3bで発生した湿気を融通せずに、全熱交換換気扇13で室内の換気を行う運転である。湿気融通運転の可否は、適宜の操作具(例えば、制御部17に接続されたボタン等)が操作されることで、適宜選択可能に構成される。湿気融通運転が許可された場合、後述のように室内状態に応じて湿気融通運転と通常運転とが切り換えられる。
【0055】
熱融通運転は、バイパス部16により、居室2と非居室3との間で熱を融通する運転である。制御部17は、湿気融通運転又は通常運転のいずれか一方と、熱融通運転と、を同時に行う(併用する)ことができる。以下、これらの運転について具体的に説明する。
【0056】
まず、図3図5から図7を参照して湿気融通運転及び通常運転について説明する。なお、以下においては、前記操作具の操作により、湿気融通運転が許可されたものとする。
【0057】
図5に示すフローは、湿気融通運転と通常運転とを切り替える運転切替処理を示すものである。運転切替処理は、湿気融通運転が許可された場合に、制御部17によって実行される。制御部17は、運転切替処理を繰り返し(例えば、前回の運転切替処理が終了してから所定時間経過後に)実行する。制御部17は、運転切替処理を開始すると、ステップS110へ移行する。
【0058】
ステップS110において、制御部17は、温湿度センサ11から信号を受信して、住宅1の各室の室温及び相対湿度を取得する。制御部17は、ステップS110の処理が終了すると、ステップS120へ移行する。
【0059】
ステップS120において、制御部17は、最低相対湿度が第一相対湿度未満であり、かつ洗面室3aの相対湿度が第二相対湿度よりも大きいか否かを判断する。
【0060】
なお、最低相対湿度は、住宅1の各室の相対湿度の中で、最も値が低い相対湿度である。また、第一相対湿度は、湿気融通運転を行う必要があるか否かを判断する値である。第一相対湿度には、住宅1全体が乾燥していると考えられる程度に低い値、本実施形態では30%が設定される。また、第二相対湿度は、浴室3bからの湿気を、洗面室3aを介して融通可能であるか否かを判断する値である。第二相対湿度には、例えば浴室3bが使用されて湿気が発生していると考えられる程度に相対湿度が高くなっていると判断できる値、具体的には第一相対湿度(30%)よりも高い値が設定される。本実施形態において第二相対湿度には、60%が設定される。
【0061】
ステップS120において、制御部17は、最低相対湿度が第一相対湿度(30%)未満であり、かつ洗面室3aの相対湿度が第二相対湿度(60%)よりも大きい場合に(ステップS120:YES)、ステップS140へ移行する。一方、制御部17は、それ以外の場合に(ステップS120:NO)、ステップS130へ移行する。
【0062】
ステップS130において、制御部17は、通常運転を行う。具体的には、制御部17は、浴室3bの換気扇Fに信号を送信し、換気扇Fを動作させる。また、制御部17は、切替部14に信号を送信し、洗面室3aから換気扇Fへと空気を流通させる。こうして通常運転が開始され、洗面室3a及び浴室3bの空気は、換気扇Fによって外部へ排出される(図3(a)参照)。制御部17は、ステップS130の処理が終了すると、運転切替処理を終了する。
【0063】
ステップS140において、制御部17は、湿気融通運転を行う。上述の如く、湿気融通運転は、全熱交換換気扇13によって、浴室3bで発生した湿気を融通することを目的とした運転である。図6に示すフローは、湿気融通運転(ステップS140)の処理の詳細を示すものである。ステップS140へ移行した制御部17は、図6に示すステップS210の処理を開始する。
【0064】
ステップS210において、制御部17は、洗面室3aからの給気を開始する。具体的には、制御部17は、換気扇Fを停止させると共に、切替部14により洗面室3aから全熱交換換気扇13へと空気を流通させる。これにより、図3(b)及び図7に示すように、浴室3bの空気は、洗面室3a及び第三ダクトD3等を介して全熱交換換気扇13へ導入され、外気OAと全熱交換される。これによって、浴室3bで発生した湿気を含んだ高湿空気が、給気SAとして供給先へ供給されることとなる。こうして制御部17は、浴室3bで発生した湿気を供給先へ融通する。図6に示すように、制御部17は、ステップS210の処理が終了すると、ステップS220へ移行する。
【0065】
ステップS220において、制御部17は、最高相対湿度が第三相対湿度未満であるか否かを判断する。
【0066】
なお、最高相対湿度は、洗面室3aを除く供給先(LDK2a、洋室2b、主寝室2c及び廊下3c)の相対湿度の中で、最も値が高い相対湿度である。また、第三相対湿度は、結露の発生が懸念される程度に供給先が湿気ているか否かを判断する値である。第三相対湿度には、湿気の融通により結露の発生が懸念される程度に高い値、本実施形態では60%が設定される。
【0067】
ステップS220において、制御部17は、最高相対湿度が第三相対湿度(60%)未満である場合に(ステップS220:YES)、ステップS230へ移行する。一方、制御部17は、最高相対湿度が第三相対湿度(60%)以上である場合に(ステップS220:NO)、ステップS270へ移行する。
【0068】
ステップS230において、制御部17は、ダンパ装置15に信号を送信し、第二ダクトD2の開度を第一開度に調整する。なお、第一開度は、加湿を積極的に行うための開度である。第一開度には、加湿が促進される程度に大きい値、本実施形態では100%が設定される。制御部17は、全てのダンパ装置15に信号を送信して第二ダクトD2の開度を第一開度(100%)に調整する。制御部17は、ステップS230の処理が終了すると、ステップS240へ移行する。
【0069】
ステップS240において、制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度以上であるか否かを判断する。なお、第四相対湿度は、湿気融通運転を停止するか否かを判断する値である。第四相対湿度には、住宅1全体の相対湿度がある程度高くなったと考えられる値、本実施形態では50%が設定される。制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度(50%)以上である場合に(ステップS240:YES)、ステップS250へ移行する。一方、制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度(50%)未満である場合に(ステップS240:NO)、ステップS230へ移行する。こうして制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度(50%)以上となるまで第二ダクトD2の開度を第一開度(100%)に調整する。
【0070】
ステップS250において、制御部17は、洗面室3aからの給気を停止する。このとき、制御部17は、換気扇Fを動作させると共に、切替部14により洗面室3aから換気扇Fへと空気を流通させる(図3(a)参照)。制御部17は、ステップS250の処理が終了すると、ステップS260へ移行し、湿気融通運転の処理を終了する。
【0071】
制御部17は、上述したステップS210の処理により、浴室3bで発生した湿気を利用(融通)して、室内の加湿を促進することができる。これによれば、加湿器等を動作させる必要がない(あるいは動作させたとしても加湿器の出力を抑えることができる)ため、加湿に要する消費電力を低減することができる。
【0072】
また、制御部17は、最高相対湿度が第三湿度未満(60%)となって供給先が湿気ていないと考えられる場合に(ステップS220:YES)、第二ダクトD2の開度を大きくしている(ステップS230)。これによって、適切なタイミングで供給先への給気SA(浴室3bで発生した湿気を含んだ空気)の風量を増大させ、加湿を促進することができる。
【0073】
ステップS220において最高相対湿度が第三相対湿度(60%)以上である場合に移行するステップS270において、制御部17は、ダンパ装置15に信号を送信し、第二ダクトD2の開度を第二開度に調整する。なお、第二開度は、加湿を控えるための開度である。第二開度には、第一開度よりも小さい値、本実施形態では40%が設定される。制御部17は、全てのダンパ装置15に信号を送信して第二ダクトD2の開度を第二開度(40%)に調整する。制御部17は、ステップS270の処理が終了すると、ステップS280へ移行する。
【0074】
ステップS280において、制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度(50%)以上であるか否かを判断する。制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度(50%)以上である場合に(ステップS280:YES)、ステップS250へ移行する。一方、制御部17は、最低相対湿度が第四相対湿度(50%)未満である場合に(ステップS280:NO)、ステップS290へ移行する。
【0075】
ステップS290において、制御部17は、温湿度センサ11から住宅1の各室の室温を取得して、最低室温が第一閾値未満であるか否かを判断する。
【0076】
なお、最低室温は、住宅1の各室の中で、最も室温が低い室の室温である。また、第一閾値は、湿気融通運転中に暖房運転を開始するか否かを判断する値である。第一閾値には、結露の発生が懸念される程度に低い室温、本実施形態では15℃が設定される。
【0077】
ステップS290において、制御部17は、最低室温が第一閾値(15℃)未満である場合に(ステップS290:YES)、ステップS300へ移行する。一方、制御部17は、最低室温が第一閾値(15℃)以上である場合に(ステップS290:NO)、ステップS280へ移行する。
【0078】
ステップS300において、制御部17は、エアコン12に信号を送信し、暖房運転を開始させる。このとき、制御部17は、全てのエアコン12で暖房運転を開始させる。制御部17は、ステップS300の処理が終了すると、ステップS310へ移行する。
【0079】
ステップS310において、制御部17は、最低室温が第二閾値よりも大きいか否かを判断する。なお、第二閾値は、結露の発生の懸念が解消されたか否かを判断する値である。第二閾値には、第一閾値よりも高い室温、本実施形態では18℃が設定される。制御部17は、最低室温が第二閾値(18℃)よりも大きい場合に(ステップS310:YES)、ステップS320へ移行する。一方、制御部17は、最低室温が第二閾値(18℃)以下である場合に(ステップS310:NO)、ステップS300へ移行する。こうして制御部17は、最低室温が第二閾値(18℃)よりも大きくなるまで暖房運転を継続して行う。
【0080】
ステップS320において、制御部17は、前回エアコン12を操作してから所定時間以上経過したか否かを判断する。なお、本実施形態において所定時間には、30分が設定される。制御部17は、前回エアコン12を操作してから所定時間(30分)以上経過した場合にステップS330へ移行する。一方、制御部17は、前回エアコン12を操作してから所定時間(30分)以上経過していない場合にステップS300へ移行する。
【0081】
ステップS330において、制御部17は、エアコン12に信号を送信し、暖房運転を停止させる。こうして、制御部17は、所定時間(30分)が経過してから(ステップS320:YES)、暖房運転を停止させる。これによって、エアコン12が頻繁にオンオフされることを防止できる。制御部17は、ステップS330の処理が終了すると、ステップS280へ移行する。こうして制御部17は、最低相対湿度が50%以上となるまで、上述したステップS280からS330の処理を繰り返す。また、制御部17は、最低相対湿度が50%以上となると(ステップS280:YES)、洗面室3aからの給気を停止して、湿気融通運転を停止する(ステップS250・S260)。
【0082】
制御部17は、上述したステップS270からステップS330の処理(図6に破線で示す枠内の処理)により、湿気融通運転を行うことに伴う結露の発生を防止することができる。
【0083】
具体的には、制御部17は、最高相対湿度が第三湿度(60%)以上となって洗面室3aを除く供給先が湿気ていると考えられる場合に(ステップS220:NO)、第二ダクトD2の開度を小さくすることができる(ステップS270)。これにより、給気SA(浴室3bで発生した湿気を含んだ空気)の風量を減少させて、供給先が過剰に加湿されるのを防止できる。このため、結露の発生を防止することができる。
【0084】
また、制御部17は、最低室温が低い場合に(ステップS290:YES)、暖房運転によって室温を上昇させることができる(ステップS300・S310)。これにより、結露の発生を防止することができる。
【0085】
上述した湿気融通運転の処理(ステップS140)は、最低相対湿度が低く、洗面室3aの相対湿度が高い場合に行われる(ステップS120:YES)。このような構成により、室内が乾燥した状態で浴室3bが使用された場合に、浴室3bで発生した湿気を融通することができる。これにより、湿気融通運転を適切なタイミングで行うことができる。
【0086】
次に、図8及び図9を参照して熱融通運転について説明する。
【0087】
上述の如く、熱融通運転は、バイパス部16により、居室2と非居室3との間で熱を融通する運転である。図8に示すフローは、熱融通運転を行うか否かを判断する運転判断処理を示すものである。運転判断処理は、制御部17によって実行される。制御部17は、運転判断処理を繰り返し(例えば、前回の運転判断処理が終了してから所定時間経過後に)実行する。制御部17は、運転判断処理を開始すると、ステップS410へ移行する。
【0088】
ステップS410において、制御部17は、温湿度センサ11から信号を受信して、住宅1の各室の室温及び相対湿度を取得する。制御部17は、ステップS410の処理が終了すると、ステップS420へ移行する。
【0089】
ステップS420において、制御部17は、最高室間温度差が第一温度差以上であるか否かを判断する。
【0090】
なお、最高室間温度差は、居室2のうちのいずれか1室(LDK2a等)と、非居室3のうちのいずれか1室(洗面室3a等)と、の温度差(室温の差の絶対値)の中で、最も値が大きい温度差である。また、第一温度差は、熱融通運転を行うか否かを判断する値である。第一温度差には、熱融通運転を行うことが望ましいと考えられる程度に高い値、本実施形態では5℃が設定される。
【0091】
ステップS420において、制御部17は、ステップS410で取得した住宅1の各室の室温に基づいて最高室間温度差を算出する。制御部17は、最高室間温度差が第一温度差(5℃)以上である場合に(ステップS420:YES)、ステップS440へ移行する。一方、制御部17は、最高室間温度差が第一温度差(5℃)未満である場合に(ステップS420:NO)、ステップS430へ移行する。
【0092】
ステップS430において、制御部17は、熱融通運転を行わない。制御部17は、ステップS430の処理が終了すると、運転判断処理を終了する。
【0093】
ステップS440において、制御部17は熱融通運転を開始する。図9に示すフローは、熱融通運転(ステップS440)の処理の詳細を示すものである。ステップS440へ移行した制御部17は、図9に示すステップS510の処理を開始する。
【0094】
ステップS510において、制御部17は、バイパス部16のファン16cの動作を開始させ、バイパス部16による通気を開始する。このとき、制御部17は、最高室間温度差が測定された非居室3に接続されたバイパス部16のファン16cを動作させる。これにより、バイパス部16は、当該非居室3と接続された居室2から、当該非居室3への空気の導入を開始する(図4参照)。制御部17は、ステップS510の処理が終了すると、ステップS520へ移行する。
【0095】
ステップS520において、制御部17は、温湿度センサ11から非居室3(空気の導入先)の室温を取得し、当該非居室3の室温が第三閾値未満であるか否かを判断する。なお、第三閾値は、熱融通運転中に暖房運転を開始するか否かを判断する値である。第三閾値は、暖房運転を行うことが望ましい程度に低い値、本実施形態では15℃が設定される。制御部17は、非居室3の室温が第三閾値(15℃)未満である場合に(ステップS520:YES)、ステップS530へ移行する。一方、制御部17は、非居室3の室温が第三閾値(15℃)以上である場合に(ステップS520:NO)、ステップS540へ移行する。
【0096】
ステップS530において、制御部17は、ステップS510で動作させたバイパス部16に接続された居室2(空気の導入元)に設けられたエアコン12に信号を送信し、暖房運転を開始させる。制御部17は、ステップS530の処理が終了すると、ステップS570へ移行する。
【0097】
ステップS540において、制御部17は、非居室3の室温が第四閾値よりも大きいか否かを判断する。なお、第四閾値は、熱融通運転中に冷房運転を行うか否かを判断する値である。第四閾値には、冷房運転を行うことが望ましい程度に高い値、具体的には第三閾値(15℃)よりも高い値が設定される。本実施形態において第四閾値には、30℃が設定される。制御部17は、居室2の室温が第四閾値(30℃)よりも大きい場合に(ステップS540:YES)、ステップS550へ移行する。一方、制御部17は、居室2の室温が第四閾値(30℃)以下である場合に(ステップS540:NO)、ステップS560へ移行する。
【0098】
ステップS550において、制御部17は、居室2(空気の導入元)に設けられたエアコン12に信号を送信し、冷房運転を開始させる。制御部17は、ステップS550の処理が終了すると、ステップS570へ移行する。
【0099】
ステップS560において、制御部17は、居室2(空気の導入元)に設けられたエアコン12で暖房運転及び冷房運転を行わず、ステップS580へ移行する。
【0100】
ステップS530・S550から移行するステップS570において、制御部17は、温湿度センサ11から居室2(空気の導入元)及び非居室3(空気の導入先)の室温を取得し、その温度差(室間温度差)が第二温度差未満であるか否かを確認する。なお、第二温度差は、暖房運転又は冷房運転を停止するか否かを判断する値である。第二温度差には、ある程度温度差が小さくなったと考えられる値、本実施形態では5℃が設定される。制御部17は、温度差が第二温度差(5℃)未満である場合に(ステップS570:YES)、ステップS580へ移行する。一方、制御部17は、温度差が第二温度差(5℃)以上である場合に(ステップS570:NO)、ステップS520へ移行する。
【0101】
ステップS580において、制御部17は、居室2(空気の導入元)に設けられたエアコン12に信号を送信し、エアコン12を停止させる。制御部17は、ステップS580の処理が終了すると、ステップS590へ移行する。
【0102】
ステップS590において、制御部17は、温湿度センサ11から居室2(空気の導入元)及び非居室3(空気の導入先)の室温を取得し、その温度差が第三温度差未満であるか否かを判断する。なお、第三温度差は、熱融通運転を停止するか否かを判断する値である。第三温度差には、熱融通運転を行う必要がないと考えられる程度に低い値、具体的には第一温度差(5℃)よりも低い値が設定される。本実施形態において第三温度差には、3℃が設定される。制御部17は、温度差が第三温度差(3℃)未満である場合に(ステップS590:YES)、ステップS600へ移行する。一方、制御部17は、温度差が第三温度差(3℃)以上である場合に(ステップS590:NO)、ステップS520へ移行する。こうして制御部17は、居室2と非居室3との温度差が第三温度差(3℃)未満となるまで、上述したステップS520からS580の処理を繰り返し実行する。
【0103】
ステップS600において、制御部17は、ファン16cの動作を停止させ、バイパス部16による通気を停止する。制御部17は、ステップS600の処理が終了すると、ステップS610へ移行し、熱融通運転の処理を終了する。
【0104】
制御部17は、バイパス部16で通気を行うことで(ステップS510)、居室2と非居室3との間で熱及び湿気を融通することができる。これによって、居室2と非居室3との環境差(温湿度差)を小さくすることができる。
【0105】
また、制御部17は、上述したステップS520からS580の処理(図6に破線で示す枠内の処理)により、熱の融通を効率的に行って、居室2と非居室3との温度差を効果的に小さくすることができる。
【0106】
具体的には、制御部17は、非居室3の室温が低い場合に暖房運転を行うことで(ステップS520:YES、ステップS530)、居室2の暖かい空気を非居室3に導入し、非居室3を効果的に暖めることができる。また、非居室3の室温が高い場合に冷房運転を行うことで(ステップS540:YES、ステップS550)、居室2の冷えた空気を非居室3に導入し、非居室3を効果的に冷やすことができる。これによって、非居室3のエアコン12を利用して非居室3の室温を調整し、熱の融通を効率的に行うことができる。また、非居室3を快適な室温に調整することもできる。
【0107】
また、上述の如く、制御部17は、熱融通運転と湿気融通運転とを同時に実行することができる。当該構成によれば、冬季において非居室3で結露が発生することを効果的に防止できる。具体的には、湿気融通運転中(ステップS140)に熱融通運転を行って、非居室3を暖めることができる。これによって、熱融通運転で暖められた非居室3に浴室3bで発生した湿気を融通できるため、結露の発生を効果的に防止できる。
【0108】
以上の如く、本実施形態に係る融通システム10は、住宅1(建物)の各室の湿度を測定する温湿度センサ11(湿度測定部)と、前記住宅1の浴室3bで発生した湿気を前記浴室3bとは異なる他の室(供給先)へ供給可能な全熱交換換気扇13(供給部)と、前記温湿度センサ11の測定結果に基づいて前記全熱交換換気扇13の動作を制御する(ステップS120~S140)制御部17と、を具備するものである。
【0109】
このように構成することにより、住宅1の各室の湿度に応じて、浴室3bで発生した湿気を他の室に融通し、他の室を加湿することができる。これにより、加湿に要する消費電力を抑制することができる。
【0110】
また、前記全熱交換換気扇13は、前記住宅1の外部からの空気(外気OA)を前記浴室3bからの空気と全熱交換して前記他の室へ供給することで、前記湿気を供給するものである。
【0111】
このように構成することにより、住宅1の外部からの空気に浴室3bで発生した湿気及び熱を移動させ、他の室へ融通することができる。当該構成により、他の室の相対湿度及び室温が低い冬季等において、浴室3bで発生した湿気及び熱を融通し、室内を快適なものにすることができる。
【0112】
また、前記全熱交換換気扇13には、前記浴室3bからの空気が前記浴室3bと隣接する洗面室3aを介して供給されるものである。
【0113】
このように構成することにより、簡易な構成で熱交換を行うことができる。具体的には、浴室3bから全熱交換換気扇13へ直接空気を供給する場合、浴室3bに設けられる換気扇Fやダクト等を避けて浴室3bと全熱交換換気扇13とを接続する必要がある。これに対し、洗面室3aを介して浴室3bからの空気を全熱交換換気扇13へ供給する場合、換気扇Fやダクト等を考慮する必要がないため、洗面室3aと全熱交換換気扇13とを接続する経路(ダクトD6の形状)の簡素化を図ることができる。
【0114】
また、前記制御部17は、前記住宅1の各室の中で最も低い湿度(最低相対湿度)が第一湿度(第一相対湿度)未満であり、かつ、前記浴室3b又は前記洗面室3aの少なくとも一方の湿度が、前記第一湿度よりも高い第二湿度(第二相対湿度)を超える場合に(ステップS120:YES)前記全熱交換換気扇13を動作させるものである(ステップS210)。
【0115】
このように構成することにより、適切なタイミングで加湿を行うことができる。
【0116】
また、前記湿気を前記他の室へ供給する第二ダクトD2(供給経路)に設けられ、前記第二ダクトD2の開度を調整可能なダンパ装置15(開度調整部)をさらに具備し、前記制御部17は、前記全熱交換換気扇13を動作させる場合において(ステップS210)、前記温湿度センサ11の前記他の室の測定結果が第三湿度(三相対湿度)未満である場合に(ステップS220:YES)、前記開度を第一開度に調整し、前記全熱交換換気扇13を動作させる場合において(ステップS210)、前記温湿度センサ11の前記他の室の測定結果が前記第三湿度以上である場合に(ステップS220:NO)、前記開度を前記第一開度よりも小さい第二開度に調整するものである(ステップS270)。
【0117】
このように構成することにより、他の室の湿度が高い(第三湿度以上である)場合に第二ダクトD2からの風量を減らして他の室が過剰に加湿されるのを防止できるため、結露の発生を防止することができる。
【0118】
また、前記住宅1の各室の室温を測定する温湿度センサ11(室温測定部)と、前記他の室の室温を上昇可能なエアコン12(昇温部)と、をさらに具備し、前記制御部17は、前記開度を前記第二開度に調整する場合に(ステップS270)、前記温湿度センサ11の測定結果に基づいて前記エアコン12の動作を制御するものである(ステップS290~S330)。
【0119】
このように構成することにより、第二ダクトD2からの風量を減らすと共に、加湿する室(他の室)の室温に応じて室温を上昇させ、他の室が過剰に加湿されるのを効果的に防止できる。このため、結露の発生を効果的に防止することができる。
【0120】
また、前記制御部17は、前記開度を前記第二開度に調整する場合において(ステップS270)、前記住宅1の各室の中で最も低い室温(最低室温)が第一室温(第一閾値)未満である場合に(ステップS290:YES)前記エアコン12を動作させるものである(ステップS300)。
【0121】
このように構成することにより、結露の発生を効果的に防止することができる。
【0122】
また、前記住宅1は、居室2と、前記浴室3bを含む非居室3と、を具備し、前記融通システム10は、前記住宅1の各室の室温を測定する室温測定部(温湿度センサ11)と、前記居室2又は前記非居室3の一方から他方へと空気を導入可能なバイパス部16(導入部)と、をさらに具備し、前記制御部17は、前記温湿度センサ11の測定結果から得られた前記居室2と前記非居室3との温度差に基づいて、前記バイパス部16の動作を制御するものである(ステップS410~S440)。
【0123】
このように構成することにより、居室2と非居室3の温度差に応じて、居室2と非居室3との間で熱を融通することができる。
【0124】
また、前記居室2の室温を調整可能なエアコン12(室温調整部)をさらに具備し、前記制御部17は、前記バイパス部16を動作させて前記居室2から前記非居室3へと空気を導入する場合に(ステップS510)、前記温湿度センサ11の測定結果に基づいて前記エアコン12の動作を制御するものである(ステップS520~S570)。
【0125】
このように構成することにより、居室2を介して非居室3の室温をエアコン12で調整することができる。
【0126】
また、前記制御部17は、前記居室2から前記非居室3へと空気を導入する場合において(ステップS510)、前記非居室3の室温が第二室温(第三閾値)未満である場合に(ステップS520:YES)、前記エアコン12を動作させて前記居室2の室温を上昇させるものである(ステップS530)。
【0127】
このように構成することにより、室温が低い非居室3を効果的に温めることができる。
【0128】
また、前記制御部17は、前記居室2から前記非居室3へと空気を導入する場合において(ステップS510)、前記非居室3の室温が前記第二室温よりも高い第三室温(第四閾値)を超える場合に(ステップS540:YES)、前記エアコン12を動作させて前記居室2の室温を下降させるものである(ステップS550)。
【0129】
このように構成することにより、室温が高い非居室3を効果的に冷やすことができる。
【0130】
なお、本実施形態に係る住宅1は、本発明に係る建物の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る温湿度センサ11は、本発明に係る湿度測定部及び室温測定部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る全熱交換換気扇13は、本発明に係る供給部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る洗面室3aは、本発明に係る脱衣室の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第二ダクトD2は、本発明に係る供給経路の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るダンパ装置15は、本発明に係る開度調整部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るエアコン12は、本発明に係る昇温部及び室温調整部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るバイパス部16は、本発明に係る導入部の実施の一形態である。
【0131】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0132】
例えば、本実施形態の建物は、戸建て住宅(住宅1)であるものとしたが、建物の種類はこれに限定されるものでなく、集合住宅等であってもよい。
【0133】
本実施形態では、住宅1の各室の室温及び相対湿度を1つの機器(温湿度センサ11)によって取得するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、室温及び相対湿度を別々の機器によって取得してもよい。
【0134】
また、本実施形態では、洗面室3aを介して浴室3bからの空気を全熱交換換気扇13へ導入したが、これに限定されるものではなく、洗面室3aを介さずに全熱交換換気扇13へ導入してもよい。
【0135】
また、本実施形態では、全熱交換換気扇13により浴室3bで発生した湿気を融通したが、これに限定されるものではなく、例えば、浴室3b又は洗面室3aからの空気を供給先へ直接導入することで、全熱交換換気扇13を用いることなく浴室3bの湿気を供給してもよい。
【0136】
また、制御部17は、運転切替処理及び湿気融通運転の処理において、相対湿度に基づいて適宜処理を行うものとしたが(ステップS120・S220・S240・S280)、これに限定されるものではなく、絶対湿度に基づいて処理を行ってもよい。
【0137】
また、運転切替処理等で用いた閾値(例えば、第一相対湿度等)に設定される値は、一例であり、任意の値を用いてよい。
【0138】
また、制御部17は、運転切替処理の中で(ステップS120)、洗面室3aの相対湿度と第二相対湿度(60%)とを比較したが、これに限定されるものではなく、浴室3bの相対湿度と第二相対湿度とを比較してもよい。また、洗面室3a及び浴室3bの相対湿度のそれぞれを第二相対湿度と比較してもよい。この場合、例えば、洗面室3a又は浴室3bの少なくともいずれか一方の相対湿度が第二相対湿度よりも大きいか否かを確認する等すればよい。
【0139】
また、制御部17は、運転切替処理の中で(ステップS130)、換気扇Fを動作させるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、換気扇Fを動作させないものであってもよい。すなわち、換気扇Fは、制御部17の制御により動作するのではなく、居住者の判断(操作)により動作するものであってもよい。
【0140】
また、制御部17は、湿気融通運転の処理において、第二ダクトD2の開度を供給先の全室で同じ開度に調整したが(ステップS230・S270)、これに限定されるものではなく、供給先の各室ごとに異なる開度に調整してもよい。この場合、制御部17は、例えば、供給先の各室の相対湿度に応じて開度を適宜調整すればよい。この場合、例えば、供給先の各室の相対湿度と第三相対湿度(60%)とを比較して、第二ダクトD2の開度を供給先の各室ごとに第一開度又は第二開度に調整すればよい。
【0141】
また、制御部17は、最高相対湿度(洗面室3a及び浴室3b以外の室の中で最も値が高い相対湿度)と第三相対湿度(60%)とを比較して、第二ダクトD2の開度を調整したが(ステップS220・S230・S270)、これは一例であり、供給先の相対湿度に関する情報と第三相対湿度とを比較して開度を調整すればよい。制御部17は、例えば、供給先の相対湿度の平均値と第三相対湿度とを比較して開度を調整してもよい。また、制御部17は、洗面室3a及び浴室3bも含めた住宅1の各室の相対湿度と第三相対湿度とを比較して開度を調整してもよい。この場合、制御部17は、例えば、住宅1の各室の相対湿度の中で最も値が高い相対湿度が最高相対湿度であるものとして、ステップS220の処理を行えばよい。
【0142】
また、制御部17は、第二ダクトD2の開度を第一開度及び第二開度の2段階に調整したが、開度を調整する手法はこれに限定されるものではなく、例えば3段階以上に調整することや、無段階に調整することも可能である。
【0143】
また、制御部17は、湿気融通運転の処理において、全てのエアコン12を制御するものとしたが(ステップS300・S330)、これに限定されるものではなく、住宅1の各室ごとにエアコン12を制御してもよい。この場合、制御部17は、例えば、各室の室温に応じて(第一閾値(15℃)との比較を各室ごとに行って)暖房運転を行うか否かを判断すればよい。
【0144】
また、制御部17は、湿気融通運転の処理において、エアコン12を用いて室温を上昇させたが(ステップS300・S330)、室温を上昇させる手法はこれに限定されるものではなく、例えば、ヒータ等を用いてもよい。また、制御部17は、湿気融通運転の処理において、居室2の室温のみを上昇させたが(ステップS300・S330)、室温を上昇させる対象はこれに限定されるものではなく、例えば、非居室3の室温のみを上昇させてもよい。また、居室2の室温及び非居室3の室温をそれぞれ上昇させてもよい。
【0145】
また、制御部17は、第二ダクトD2の開度を小さくした場合に室温を上昇させるものとしたが(ステップS270~S300)、これに限定されるものではなく、例えば、第二経路の開度に関わらず、室温を上昇させてもよい。
【0146】
また、制御部17は、湿気融通運転の処理において、必ずしもダンパ装置15及びエアコン12を動作させる必要はない。
【0147】
また、制御部17は、熱融通運転の処理において、エアコン12を動作させるものとしたが(ステップS530・S550)、これに限定されるものではなく、エアコン12を動作させなくてもよい。
【0148】
また、バイパス部16は、居室2から非居室3へ空気を導入するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、非居室3から居室2へ空気を導入してもよい。
【0149】
また、バイパス部16は、居室2と非居室3とを1対1で接続するものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、居室2と非居室3とを1対N(Nは2以上の正数)で接続してもよい。また、バイパス部16は、例えば、居室2と非居室3とをN対1(Nは2以上の正数)で接続してもよい。
【符号の説明】
【0150】
1 住宅(建物)
3b 浴室
10 融通システム
11 温湿度センサ(湿度測定部)
14 全熱交換器(供給部)
17 制御部
図1
図2
図3
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図8
図9