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特許7536555保護継電器及びそれを用いた保護継電システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】保護継電器及びそれを用いた保護継電システム
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/02 20060101AFI20240813BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H02H3/02 G
H02H3/02 L
H02H3/08 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020145954
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040973
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深大
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111867(JP,A)
【文献】特開2017-085777(JP,A)
【文献】特開平7-322475(JP,A)
【文献】国際公開第1996/028871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/02
H02H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出器からの信号から電流値を検知する電流検知部と、
スイッチのオンもしくはオフの指令を出力するスイッチ指令部と、
前記電流検知部が検知した前記スイッチをオンして突入電流が流れ定常時の電流になるまでの負荷電流から、前記負荷電流よりも時間軸に対して電流が上回る保護継電器の特性カーブのパラメータを決定するパラメータ決定部とを有する保護継電器。
【請求項2】
請求項1に記載の保護継電器において、
前記パラメータについて外部から指令を入力する入力部を有する保護継電器。
【請求項3】
請求項1に記載の保護継電器において
前記特性カーブと突入電流との間に裕度があることを確認する裕度確認部と、
決定した前記パラメータを設定する設定部とを有する保護継電
【請求項4】
請求項3に記載の保護継電器において、
前記パラメータ決定部は、
受電の保護継電器の前記特性カーブに近づけるように前記特性カーブを決定する保護継電
【請求項5】
請求項3に記載の保護継電器において、
前記パラメータ決定部は、
前記特性カーブの間が均等になるように前記特性カーブを決定する保護継電器。
【請求項6】
請求項3に記載の保護継電器において、
前記パラメータ決定部は、
フィーダの保護継電器の前記特性カーブに近づけるように前記特性カーブを決定する保護継電器。
【請求項7】
請求項3に記載の保護継電器において、
前記パラメータ決定部は、
外部からの指令に基づいて、前記特性カーブを決定する保護継電器。
【請求項8】
請求項7に記載の保護継電器において、
画面入力部を有し、
前記画面入力部には、設定範囲が表示されており、
前記パラメータ決定部は、
前記画面入力部から入力されるパラメータに基づいて前記特性カーブを決定する保護継電
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護継電器及びそれを用いた保護継電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
保護継電器に関する従来技術として、特許文献1がある。特許文献1には、継電器1、2、3、4、5をデータ送受信接続線6、7、8、9で接続して上位継電器が下位継電器から動作特性データを送信させて上位、下位の保護協調を得るよう構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-87658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、上、下位継電器の確実な保護協調を得るに好適な保護継電器及びこれを用いた保護継電システムが記載されている。モータや変圧器などの負荷の場合、スイッチを入れたときに大きな電流(突入電流)が流れ、その後、定常時の電流に向かって漸減する。
【0005】
負荷の突入電流や、定常時の電流では保護継電器が動作しないようにするために、過電流保護継電器の特性カーブのパラメータを適切な値に設定することが必要である。
【0006】
負荷電流保護継電器の特性カーブを決めるためには、負荷電流についての情報をモータや変圧器メーカーのデータを入手することが必要となる。そのため、電気設備の建設や変更をした場合には、運用開始時までの時間がかかるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、電気設備の建設や変更をした場合に、運用開始時までの時間を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の好ましい一例としては、電流検出器から受け取る信号から電流値を検知する電流検知部と、
スイッチのオンもしくはオフの指令を出力するスイッチ指令部と、
前記スイッチをオンとすることで前記電流検知部が検知した負荷電流から保護継電器の特性カーブのパラメータを決定するパラメータ決定部とを有する保護継電器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気設備の建設や変更をした場合に、運用開始時までの時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】実施例1(保護継電器が単独の場合)の構成図である。
図1B】実施例1の時間と電流の特性を示す図である。
図1C】実施例1のオプションがある場合のフローチャートである。
図1D】実施例1のオプションが無い場合のフローチャートである。
図2A】実施例2(保護継電器が複数の場合)で監視装置がある場合の構成図である。
図2B】実施例2で保護継電器がマスター装置の場合の構成図である。
図2C】実施例2の時間と電流の特性を示す図である。
図2D】実施例2のフローチャートである。
図3A】実施例3の時間と電流の特性を示す図である。
図3B】実施例3のフローチャートである。
図4A】実施例4の時間と電流の特性を示す図である。
図4B】実施例4のフローチャートである。
図5A】実施例5の時間と電流の特性を示す図である。
図5B】実施例5のフローチャートである。
図5C】実施例5の入力画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1Aは、保護継電器13が単独の場合である実施例1の構成を示す図である。電源10からの電流が流れる電路に配置したスイッチ(開閉器)11と、電路に流れる電流を検出する電流検出器(CT)12と、電流検出器12からの信号を受け取り、スイッチ11にオンもしくはオフの指令を出力する保護継電器13と、電路に接続する負荷14とが図1Aに示される。
【0013】
保護継電器13は、電流検出器12からのアナログ信号をディジタル信号に変換し電流を検知する電流検知部131、スイッチ11にオンもしくはオフの指令を出力するスイッチ指令部132、電流検知部131が検知した突入電流から保護継電器13の特性カーブのパラメータを決定するパラメータ決定部133、ユーザから保護継電器13が特性カーブのパラメータを自動決定するモードを選択する入力を受付けたり、パラメータ決定部133で検討したパラメータからユーザが最適パラメータを決定するボタンからの入力を受け付ける入力部134を有する。
【0014】
図1B(a)は、保護継電器の特性カーブと負荷電流について実施例1における時間と電流の特性を示す図である。図1B(a)は、時間を縦軸に、電流値を横軸に示す。
【0015】
負荷電流は、スイッチを入れた際に大きな電流(突入電流)が電路に流れ、その後、定常時の電流に向かって漸減する。保護継電器の特性カーブは、負荷電流より右上になるようにパラメータを決定する。パラメータを決めるにあたり、必要最小限の裕度を確保する。
裕度としては、次の電流の裕度と時間の裕度とが考慮される。
【0016】
(1)電流の裕度とは、図1B(a)で示すグラフの左右方向、具体的には電流検出器(CT)及び保護継電器の電流測定の誤差。
【0017】
(2)時間の裕度とは、図1B(a)で示すグラフの上下方向、具体的には保護継電器の動作時間誤差と保護継電器の慣性動作時間がある。保護継電器は、動作する直前に電流が無くなっても、そのまま勢いで動作する。動作しないために必要な時間を、「慣性動作時間」として規定している。電流と時間それぞれに、上記を加算した裕度を確保する。
【0018】
図1B(b)は、時間と電流の特性を示す図において電流設定を示す図である。
【0019】
図1B(c)は、時間と電流の特性を示す図において時間設定を示す図である。
【0020】
図1B(d)は、時間と電流の特性を示す図においてカーブの形(特性)の設定を示す図である。
【0021】
図1B(b)、図1B(c)、図1B(d)で示した電流設定、時間設定、カーブの形(特性)の設定の3つのパラメータ設定により保護継電器の特性カーブを決めるようになっている。
【0022】
図1Cは、実施例1のオプションがある場合における保護継電器の処理フローチャートである。図1Aの構成を参照しながら説明する。
【0023】
ユーザが、オプションとして、保護継電器を自動設定モードに切り替え、自動設定モードを保護継電器13の入力部134が受付ける(ステップS1)。
【0024】
スイッチ指令部132が、スイッチ11をオンする指令を出力し、スイッチ11をオンにし、電路に負荷電流を流す(ステップS2)。
【0025】
電流検知部131が、電流検出器12からの信号に基づいて負荷電流を自動計測する(ステップS3)。
【0026】
パラメータ決定部133が、保護継電器13における特性カーブの最適なパラメータを検討する(ステップS4)。ここで、パラメータ決定部133は、自動計測した負荷電流に、必要最小限の裕度を加算し、電流と時間の裕度を両方とも満足する最小の点を繋いで、理想の特性カーブとする。
【0027】
次に、パラメータを多数の組み合わせ(望ましくは総当たり)で継電器特性カーブを引いてみて、理想カーブより右上になるカーブを候補として残す。候補の中から、理想カーブとの差が最も小さいものを選ぶ。選び方としては、最小2乗法などを使用する。
【0028】
ユーザが、オプションとして保護継電器13の決定ボタンを押し、入力部134が決定ボタンからの指令を受付ける(ステップS5)。
【0029】
パラメータ決定部133が、検討したパラメータを設定(確定)する(ステップS6)。
【0030】
図1Dは、実施例1のオプションが無い場合における保護継電器の処理フローチャートである。図1Aの構成を参照しながら説明する。
【0031】
スイッチ指令部132が、スイッチ11にオンする指令を出力し、スイッチ11がオンとなり、電路に負荷電流を流す(ステップS11)。
【0032】
電流検知部131が、電流検出器12からの信号に基づいて負荷電流を自動計測する(ステップS12)。
【0033】
パラメータ決定部133が、保護継電器13における特性カーブの最適なパラメータを検討する(ステップS13)。ここでの具体的内容は、上記したステップS4と同様である。
【0034】
パラメータ決定部133が、検討したパラメータを設定(確定)する(ステップS14)。
【0035】
実施例1によれば、負荷電流の情報を事前に入手する必要はない。本実施襟によれば負荷電流を計測し、過電流保護継電器のカーブのパラメータを適切な値に決定できるため、電気設備の建設や変更をした場合に、運用開始時までの時間を短くできる。
【実施例2】
【0036】
図2Aは、実施例2の構成を示す図である。図2Aでは、複数のスイッチ21、25、29、32と、複数の電流検出器(CT)22、26、30、33と、複数の保護継電器23、27、31、34と、変圧器28と、負荷35と、マスター装置としての監視装置24とを備えた保護継電器システムの構成を示す。
【0037】
保護継電器23は、受電の保護継電器である。保護継電器27は、変圧器1次の保護継電器である。保護継電器31は、変圧器2次の保護継電器である。保護継電器34は、フィーダ(末端線路)の保護継電器である。電力会社の系統20から負荷35に向かって、順次、保護継電器23、保護継電器27、保護継電器31、保護継電器34が配置される。
【0038】
監視装置24は、例えばパソコンで構成してもよい。監視装置24は、外部から保護継電器の特性カーブについてのパラメータや、保護継電器23、27、31、34から送られる突入電流や負荷電流の検知結果を入力する入力部241と、スイッチをオンする指示を出力するスイッチ指令部242と、保護継電器の特性カーブのパラメータを決定するパラメータ決定部243と、保護継電器の特性カーブと突入電流との間に裕度があることを確認する裕度確認部244と、決定した前記パラメータを設定する設定部245とを有する。
【0039】
保護継電器23、保護継電器27、保護継電器31、保護継電器34のそれぞれと監視装置24とは通信路が形成されている。保護継電器23、保護継電器27、保護継電器31、保護継電器34のそれぞれが計測した突入電流などの情報は、それぞれの保護継電器から監視装置24へ通信路を経由して送られる(上がり情報)。
【0040】
監視装置24から、各保護継電器に対して、突入電流を計測できるようにスイッチをオンする指令が送られる。さらに、監視装置24から、各保護継電器に対して、決定した特性カーブのパラメータの設定の指令が通信路を経由して送られる(下り情報)。
【0041】
図2Bは、図2Aと同様に、複数のスイッチ41、44、48、51と、複数の電流検出器(CT)42、45、49、52と、複数の保護継電器43、46、50、53と、変圧器47、負荷57とを備えた保護継電器システムである。図2Bでは、受電の保護継電器43がマスター装置を担っている点で図2Aの構成とは相違する。
【0042】
受電の保護継電器43は、電流検出器からの信号から電路の電流を検知する電流検知部を有し、特性カーブと検知した電流とを比較し、特性カーブの電流値もしくは時間を超える(以上の場合も含む)場合には、スイッチをオフするスイッチ指令を出力する機能を有する。このような機能は、他の保護継電器も備えている。さらに、受電の保護継電器43は、図2Aで説明したマスター装置の機能である入力部241と、スイッチ指令部242と、パラメータ決定部243と、裕度確認部244と、設定部245とを有する。
【0043】
受電の保護継電器43と、変圧器1次の保護継電器46、変圧器2次の保護継電器50、フィーダ(末端線路)の保護継電器53との間には通信路が形成されている。
【0044】
保護継電器46、保護継電器50、保護継電器53のそれぞれが計測した突入電流などの情報は、それぞれの保護継電器からマスター装置である保護継電器43へ通信路を経由して送られる(上がり情報)。
【0045】
保護継電器43から、各保護継電器に対して、突入電流を計測できるようにスイッチをオンする指令が送られる。さらに、保護継電器43から、各保護継電器に対して、決定した特性カーブのパラメータの設定の指令が通信路を経由して送られる(下り情報)。ここでは、受電の保護継電器43がマスター装置である例を示したが、他の保護継電器46、50、53がマスター装置を兼用してもよい。
【0046】
図2Cは、保護継電器の特性カーブを上位側(受電側、つまり図2Cの右上)に近づけるように決定するパターンAを説明する図である。図2Cは、時間と電流の特性を示す図である。点線で示す電力会社の上限カーブ71、実線で示す受電の保護継電器の特性カーブ72、実線で示す変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73、実線で示す変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74、点線で示す変圧器への突入電流75、実線で示すフィーダの保護継電器の特性カーブ76、点線で示すフィーダの負荷電流77からなっている。
【0047】
パラメータ決定部243は、受電の保護継電器の特性カーブ72と、変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73との間を詰めるようにする。また、パラメータ決定部243は、変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74と、フィーダの保護継電器の特性カーブ76との間は、余裕を持たせる。余裕を持たせることで、フィーダ負荷増設時の変更を容易にできる。
【0048】
図2Dは、実施例2における保護継電器の処理フローチャートである。図2Aもしくは図2Bの構成を参照しながら説明する。
【0049】
マスター装置24の入力部241が、電力会社から指定された上限カーブ、変圧器の定格電流、パターンAの指定(右上に詰める)、電流検出器や保護継電器の誤差といった入力を受付ける(ステップS20)。
【0050】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、電力会社から指定された上限カーブと同一、または左下になるように、受電の保護継電器23における特性カーブのパラメータを決定する(ステップS21)。
【0051】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、受電のカーブより左下となるように、変圧器1次の保護継電器におけるパラメータを仮決定する。ただし、電流設定は、変圧器の定格電流の少し上とする。さらに、受電の保護継電器の特性カーブ72との間に、必要最小限の裕度を確保しつつ、できるだけ接近したカーブとする。必要最小限の裕度を確保した理想カーブに出来るだけ近いパラメータを選ぶ(ステップS22)。
【0052】
変圧器1次の保護継電器におけるスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242がスイッチをオンにする指令を出し、突入電流を流し、変圧器1次の保護継電器の電流検知部が、突入電流を自動計測し、マスター装置24に情報を送る。スイッチは手動でオンさせてもよい(ステップS23)。
【0053】
マスター装置24の裕度確認部244は、仮決定しておいた変圧器1次の保護継電器の特性カーブと、突入電流カーブとの間に、必要最小限の裕度があることを確認する(ステップS24)。必要最小限の裕度がない場合には、エラー表示し、ステップS20に戻り、条件入力からやり直す。
【0054】
ステップS24で裕度有ることが確認された場合には、マスター装置24のパラメータ決定部243が、変圧器1次の保護継電器の特性カーブと同一、または左下となるように、変圧器2次の保護継電器のパラメータを決定する。電流設定は、変圧器の定格電流の少し上とする(ステップS25)。
【0055】
フィーダのスイッチ32および、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242が、スイッチをオンとする指令を出し、電路に負荷電流を流し、フィーダの保護継電器の電流検知部がこれを自動計測し、マスター装置に情報を送る。スイッチは手動でオンさせてもよい(ステップS26)。
【0056】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、負荷電流より右上となるように、フィーダの保護継電器のパラメータを仮決定する。また、パラメータ決定部243は、負荷電流との間に、必要最小限の裕度を確保しつつ、できるだけ接近したカーブとする。必要最小限の裕度を確保した理想カーブに出来るだけ近いパラメータを選ぶ(ステップS27)。
【0057】
マスター装置24の裕度確認部244は、仮決定しておいたフィーダの保護継電器の特性カーブと、変圧器2次の保護継電器の特性カーブとの間に、必要最小限の裕度があることを確認する(ステップS28)。必要最小限の裕度が無い場合は、エラー表示し、ステップS20に戻り、条件入力からやり直す。
【0058】
ステップS28で裕度が有ることが確認された場合には、オプションとして、ユーザがマスター装置の決定ボタンを押し、マスター装置24の入力部241が決定ボタンの指令を受付ける(ステップS29)。
【0059】
決定したパラメータを、マスター装置24の設定部245が、各保護継電器に送信しパラメータを設定する(ステップS30)。
【0060】
実施例2によれば、下位側(フィーダ側)に余裕が生まれ、将来の増設でフィーダ負荷電流が増えたときに対応しやすい保護継電器システムを実現できる。
【実施例3】
【0061】
図3Aは、保護協調を確実にするため、保護継電器の特性カーブを均等配置し、各カーブをできるだけ離すように決定するパターンBを説明する図である。図3Aは、時間と電流の特性を示す図である。
【0062】
点線で示す電力会社の上限カーブ71、実線で示す受電の保護継電器の特性カーブ72、実線で示す変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73、実線で示す変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74、点線で示す変圧器への突入電流75、実線で示すフィーダの保護継電器の特性カーブ76、点線で示すフィーダの負荷電流77からなっている。
【0063】
パラメータ決定部243は、受電の保護継電器の特性カーブ72と変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73との間の最も近接している時間(A)と、変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73と変圧器への突入電流75との間の最も近接している時間(A)は等しくなるようにパラメータを決定する。
【0064】
また、パラメータ決定部243は、変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74とフィーダの保護継電器の特性カーブ76との間の最も近接している時間(B)、フィーダの保護継電器の特性カーブ76とフィーダの負荷電流77との間の最も近接している時間(B)は等しくなるようにパラメータを決定する。
【0065】
図3Bは、実施例3における保護継電器の処理フローチャートである。図2Aもしくは図2Bの構成を参照しながら説明する。
【0066】
マスター装置24の入力部241が、電力会社から指定された上限カーブ、変圧器の定格電流、パターンBを指定(均等配置)、電流検出器や保護継電器の誤差といった入力を受付ける(ステップS40)。
【0067】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、電力会社から指定された上限カーブと同一、または左下になるように、受電の保護継電器23の特性カーブのパラメータを決定する(ステップS41)。
【0068】
変圧器1次のスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242が、スイッチをオンとする指令を出し、電路に突入電流を流し、変圧器1次の保護継電器の電流検知部が、突入電流を自動計測し、マスター装置に情報を送る(ステップS42)。スイッチは手動でオンさせてもよい。
【0069】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、「受電の保護継電器の特性カーブと変圧器1次の保護継電器の特性カーブの最も近接している時間(A)」と、「変圧器の突入電流と変圧器1次の保護継電器の特性カーブの最も近接している時間(A) 」が等しくなるように、変圧器1次の保護継電器の特性カーブのパラメータを仮決定する。ただし、電流設定は、変圧器の定格電流の少し上とする。さらに、パラメータを多数の組み合わせでカーブを引いてみて(総当たりが望ましい)、時間(A)が等しくなるパラメータを選ぶ(ステップS43)。
【0070】
マスター装置24の裕度確認部244は、仮決定しておいた変圧器1次の保護継電器の特性カーブと、受電の保護継電器の特性カーブおよび突入電流との間に、必要最小限の裕度があることを確認する(ステップS44)。必要最小限の裕度が無い場合は、エラー表示し、ステップS40に戻り、条件入力からやり直す。
【0071】
ステップS44で裕度が有ることが確認された場合には、マスター装置24のパラメータ決定部243が、変圧器1次の保護継電器の特性カーブと同一、または左下となるように、変圧器2次の保護継電器のパラメータを決定する。電流設定は、変圧器の定格電流の少し上とする(ステップS45)。
【0072】
フィーダのスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242が、スイッチをオンにする指令を出し、電路に負荷電流を流し、フィーダの保護継電器の電流検知部が、負荷電流を自動計測し、マスター装置24に情報を送る(ステップS46)。スイッチは手動でオンさせてもよい。
【0073】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、「変圧器2次の保護継電器の特性カーブとフィーダの保護継電器の特性カーブの最も近接している時間(B)」と、「フィーダの負荷電流とフィーダの保護継電器の特性カーブの最も近接している時間(B)」が等しくなるように、フィーダの保護継電器の特性カーブのパラメータを仮決定する。パラメータを多数の組み合わせでカーブを引いてみて(総当たりが望ましい)、時間(B)が等しくなるパラメータを選ぶ(ステップS47)。
【0074】
マスター装置24の裕度確認部244は、仮決定しておいたフィーダの保護継電器の特性カーブと、変圧器2次の保護継電器の特性カーブ、およびフィーダの負荷電流との間に、必要最小限の裕度があることを確認する(ステップS48)。必要最小限の裕度が無い場合は、エラー表示し、ステップS40に戻り、条件入力からやり直す。
【0075】
ステップS48で裕度が有ることが確認された場合には、オプションとして、ユーザがマスター装置24の決定ボタンを押し、入力部241がその決定の指令を受付ける(ステップS49)。
【0076】
マスター装置24の設定部245が、各保護継電器に、決定したパラメータを送信し設定する(ステップS50)。
【0077】
事故電流が流れたときに、下位の保護継電器が先に動作してスイッチ(開閉器)を切り、上位の保護継電器は動作しないようにする。このようにして停電範囲を最小化する。同様に、受電の保護継電器は、より上位の電力会社の系統内の継電器より先に動作しなければならないという保護協調が保護継電器には必要となる。
【0078】
実施例3によれば、保護協調を確実にすることができる。
【実施例4】
【0079】
図4Aは、保護継電器の特性カーブを、下位側(フィーダ側、つまり図4Aの左下)に近づけるように決定するパターンCを説明する図である。図4Aは、時間と電流の特性を示す図である。
【0080】
点線で示す電力会社の上限カーブ71、実線で示す受電の保護継電器の特性カーブ72、実線で示す変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73、実線で示す変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74、点線で示す変圧器への突入電流75、実線で示すフィーダの保護継電器の特性カーブ76、点線で示すフィーダの負荷電流77からなっている。
【0081】
パラメータ決定部243は、保護継電器の特性カーブ72と変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73との間は、余裕を持たせるようにパラメータを決定する。また、パラメータ決定部243は、変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73と変圧器への突入電流75との間は詰めるようにパラメータを決定する。
【0082】
図4Bは、実施例4における保護継電器の処理フローチャートである。図2Aもしくは図2Bの構成を参照しながら説明する。
【0083】
マスター装置24の入力部241が、電力会社から指定された上限カーブ、変圧器の定格電流、パターンCの指定(左下に詰める)、電流検出器や保護継電器の誤差といった入力を受付ける(ステップS60)。
【0084】
マスター装置24のパラメータ決定部243が、電力会社から指定された上限カーブと同一、または左下になるように、受電の保護継電器の特性カーブのパラメータを決定する(ステップS61)。
【0085】
変圧器1次のスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242がスイッチをオンにする指令を出し、電路に突入電流を流し、変圧器1次の保護継電器の電流検知部が、突入電流を自動計測し、マスター装置24に情報を送る(ステップS62)。スイッチは手動でオンさせてもよい。
【0086】
マスター装置24のパラメータ決定部243は、変圧器の突入電流より右上となるように、変圧器1次の保護継電器のパラメータを仮決定する。ただし、電流設定は、変圧器の定格電流の少し上とする。さらに、変圧器の突入電流との間に、必要最小限の裕度を確保しつつ、できるだけ接近したカーブとする(必要最小限の裕度を確保した理想カーブに出来るだけ近いパラメータを選ぶ)(ステップS63)、
マスター装置の裕度確認部244は、仮決定しておいた変圧器1次の保護継電器の特性カーブと、受電の保護継電器の特性カーブとの間に、必要最小限の裕度があることを確認する(ステップS64)。必要最小限の裕度が無い場合は、エラー表示し、ステップS60に戻り、条件入力からやり直し。
【0087】
ステップS64で裕度が有ることが確認された場合には、マスター装置のパラメータ決定部243は、変圧器1次の保護継電器の特性カーブと同一、または左下となるように、変圧器2次の保護継電器のパラメータを決定する。電流設定は、変圧器の定格電流の少し上とする(ステップS65)。
【0088】
フィーダのスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242がスイッチをオンにするように指令を出し、電路に負荷電流を流し、フィーダの保護継電器の電流検知部が、負荷電流を自動計測し、マスター装置24に情報を送る(ステップS66)。スイッチは手動でオンさせてもよい。
【0089】
マスター装置24のパラメータ決定部243は、負荷電流より右上となるように、フィーダの保護継電器のパラメータを仮決定する。負荷電流との間に、必要最小限の裕度を確保しつつ、できるだけ接近したカーブとする。必要最小限の裕度を確保した理想カーブに出来るだけ近いパラメータを選ぶ(ステップS67)。
【0090】
マスター装置24の裕度確認部244は、仮決定しておいたフィーダの保護継電器の特性カーブと、変圧器2次の保護継電器の特性カーブとの間に、必要最小限の裕度があることを確認する(ステップS68)。必要最小限の裕度が無い場合は、エラー表示し、ステップS60に戻り、条件入力からやり直し。
【0091】
ステップS68で裕度が有ることが確認された場合には、オプションとして、ユーザが、マスター装置の決定ボタンを押し、入力部がその決定ボタンの指令を受付ける(ステップS69)。
【0092】
マスター装置の設定部245が、各保護継電器に、決定したパラメータを、送信し設定する(ステップS70)。
【0093】
実施例4によれば、上位側の受電と変圧器1次との間に余裕が生まれ、将来の変圧器の増設に対応しやすい。
【実施例5】
【0094】
図5Aは、マスター装置の画面からユーザが指令を入力することで保護継電器の特性カーブの配置を決定するパターンDを説明する図である。図5Aは、時間と電流の特性を示す図である。
【0095】
点線で示す電力会社の上限カーブ71、実線で示す受電の保護継電器の特性カーブ72、実線で示す変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73、実線で示す変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74、点線で示す変圧器への突入電流75、実線で示すフィーダの保護継電器の特性カーブ76、点線で示すフィーダの負荷電流77からなっている。
【0096】
パラメータ決定するためにユーザが入力する画面には、電力会社の上限カーブ71と変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73との間でのカーブの配置可能な範囲(制約条件となる設定範囲)が表示される。
【0097】
また、ユーザが入力する画面には、受電の保護継電器の特性カーブ72と変圧器への突入電流75との間でのカーブの配置可能な範囲(制約条件となる設定範囲)が表示される。
【0098】
また、ユーザが入力する画面には、変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73と変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74との間でのカーブの配置可能な範囲(制約条件となる設定範囲)が表示される。
【0099】
また、ユーザが入力する画面には、変圧器1次の保護継電器の特性カーブ73とフィーダの保護継電器の特性カーブ76との間でのカーブの配置可能な範囲(制約条件となる設定範囲)が表示される。
【0100】
また、ユーザが入力する画面には、変圧器2次の保護継電器の特性カーブ74とフィーダの負荷電流77との間でのカーブの配置可能な範囲(制約条件となる設定範囲)が表示される。
【0101】
図5Bは、実施例5における保護継電器の処理フローチャートである。図2Aもしくは図2Bの構成を参照しながら説明する。
【0102】
マスター装置24の入力部241は、電力会社から指定された上限カーブ、
変圧器の定格電流、パターンDの指定(ユーザの指令により配置)、電流検出器や保護継電器の誤差といった入力を受付ける(ステップS80)。
【0103】
変圧器1次のスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置のスイッチ指令部242がスイッチをオンする指令を出し、電路に突入電流を流し、変圧器1次の保護継電器の電流検知部が、突入電流を自動計測し、マスター装置24に情報を送る(ステップS81)。スイッチは手動でオンさせてもよい。
【0104】
フィーダのスイッチおよび、上流および下流のスイッチに対して、マスター装置24のスイッチ指令部242がスイッチをオンする指令を出し、電路の負荷電流を流し、フィーダの保護継電器の電流検知部が、負荷電流を自動計測し、マスター装置24に情報を送る(ステップS82)。スイッチは手動でオンさせてもよい。
【0105】
各保護継電器の特性カーブの配置(パラメータ)を、ユーザが入力画面から決定し、マスター装置24の入力部241から入力する。ただし、入力画面に示した制約条件を逸脱するパラメータは入力できないようにする。制約条件としては、次のようになる。
(1)受電の保護継電器の特性カーブについては、電力会社の上限カーブより左下、かつ、変圧器1次の保護継電器の特性カーブより右上となるようにする。
(2)変圧器1次の保護継電器の特性カーブについては、受電の保護継電器の特性カーブより左下、かつ、変圧器の突入電流より右上、かつ、変圧器の2次保護継電器の特性カーブより右上となるようにする。
(3)変圧器の2次の保護継電器の特性カーブについては、変圧器1次の保護継電器の特性カーブより左下、かつ、フィーダの保護継電器の特性カーブより右上となるようにする。
(4)フィーダの保護継電器の特性カーブについては、変圧器2次の保護継電器の特性カーブより左下、かつ、フィーダ負荷電流の特性カーブより右上となるようにする。必要最小限の裕度については、上記の制約に含める/含めない、を設定によって選べるようにする。裕度もユーザが決定する場合は、「含めない」設定にする(ステップS83)。
【0106】
マスター装置24の設定部245が、各保護継電器に、決定したパラメータを送信し設定する(ステップS84)。
【0107】
図5Cは、実施例5である保護継電システムの入力画面100を示す図である。
図5Cでは、横棒の長さは、保護継電器本来の設定範囲を示す。カーソルを移動させてパラメータを設定する。時間設定には、制約の上下限を示し、その範囲内でカーソル移動が可能とする。電流設定には制約を表示しないが、電流設定を変更すると、それを反映して、時間設定の上下限が移動する。上下限までの裕度を時間で表示する。
【0108】
実施例5によれば、上記した実施例に示したパターンA、パターンB、パターンCによるパラメータの決定では不充分の場合には、ユーザが本実施例のように手動によりパラメータを決定することで適切なパラメータを決定することができる。
【0109】
図1A図2Aに示した機能ブロックについては、CPUなどのプロセッサーが記録装置に記録したプログラムを読み出して、各機能もしくは処理を実行する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0110】
11、21、25、29、32、41、44、48、51…スイッチ、
12、22、26、30、33、42、45、49、52…電流検出器、
13、23、27、31、34、43、46、50、53…保護継電器、
14、35、54…負荷、
24…マスター装置
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C