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  • 特許-消火用の散水ヘッド 図1
  • 特許-消火用の散水ヘッド 図2
  • 特許-消火用の散水ヘッド 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】消火用の散水ヘッド
(51)【国際特許分類】
   A62C 31/12 20060101AFI20240813BHJP
   B05B 1/00 20060101ALI20240813BHJP
   B05B 1/26 20060101ALI20240813BHJP
   A62C 37/11 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
A62C31/12
B05B1/00 Z
B05B1/26 A
A62C37/11
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020149733
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044210
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】栗本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 享介
(72)【発明者】
【氏名】小松原 佑太
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04405018(US,A)
【文献】特開平06-273571(JP,A)
【文献】特開平07-031691(JP,A)
【文献】米国特許第06854668(US,B2)
【文献】米国特許第04580729(US,A)
【文献】特開2010-053508(JP,A)
【文献】特開2017-036871(JP,A)
【文献】特開2016-163628(JP,A)
【文献】特開2001-340481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00 - 99/00
B05B 1/00 - 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火液を放出する放出口が形成されたヘッド本体と、該ヘッド本体から下方に延出するフレームと、該フレームの下方に前記放出口に対向して設けられたデフレクタとを備えた消火用の散水ヘッドであって、
前記ヘッド本体と前記デフレクタとの間に前記放出口から放出される消火液を整流する整流筒を有し、該整流筒はその下端が前記フレームの下端よりも前記デフレクタ側に延出するように設けられ
前記整流筒は、自身を前記フレームに直接的又は間接的に取り付けるための取付部を筒内に有し、該取付部の下端は、前記整流筒における高さ方向中央よりも前記放出口寄りに配置されていることを特徴とする消火用の散水ヘッド。
【請求項2】
前記整流筒は、前記ヘッド本体側よりも前記デフレクタ側の内径が縮径した形状であることを特徴とする請求項1記載の消火用の散水ヘッド。
【請求項3】
前記取付部は、筒内周壁から中心に放射状に延びる支持部と、該支持部によって筒中心部に支持された固定部を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の消火用の散水ヘッド。
【請求項4】
前記支持部における前記放出口側の面は該放出口側が凸となるように湾曲した形状になっていることを特徴とする請求項3に記載の消火用の散水ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に用いられて、消火液を放出する消火用の散水ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
消火液を放出する消火用の散水ヘッドは、放出口を有するヘッド本体と、放出口を塞ぐ弁体と、放出口と対向するデフレクタと、デフレクタとヘッド本体とを連結するフレームと、弁体を閉弁方向に押圧する感熱開弁部材とを備えており、感熱開弁部材が火災の熱を感知すると感熱開弁部材がはじけて弁体が落下し、放出口から放出された消火液がデフレクタに案内されて飛散する構成となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-165801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放出口から放出された消火液は、デフレクタに当たって飛散するため、消火液がデフレクタに均等に当たるのが望ましい。
しかしながら、デフレクタは放出口側からデフレクタ側に向かって延出するフレームによって支持されているため、放出口から放出された消火液がフレームによって遮られ、フレームの近傍のデフレクタには消火液が衝突できず、均等な散水ができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、フレームの影響を受けずに均等な散水が可能な消火用の散水ヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る消火用の散水ヘッドは、消火液を放出する放出口が形成されたヘッド本体と、該ヘッド本体から下方に延出するフレームと、該フレームの下方に前記放出口に対向して設けられたデフレクタとを備えたものであって、
前記ヘッド本体と前記デフレクタとの間に前記放出口から放出される消火液を整流する整流筒を有し、該整流筒はその下端が前記フレームの下端よりも前記デフレクタ側に延出するように設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記整流筒は、前記ヘッド本体側よりも前記デフレクタ側の内径が縮径した形状であることを特徴とするものである。
【0008】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記整流筒は、自身を前記フレームに直接的又は間接的に取り付けるための取付部を筒内に有し、該取付部は、筒内周壁から中心に放射状に延びる支持部と、該支持部によって筒中心部に支持された固定部を備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記支持部の下端は、前記整流筒における高さ方向中央よりも前記放出口寄りに配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
(5)また、上記(3)又は(4)に記載のものにおいて、前記支持部における前記放出口側の面は該放出口側が凸となるように湾曲した形状になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る消火用の散水ヘッドは、ヘッド本体とデフレクタとの間に放出口から放出される消火液を整流する整流筒を有し、該整流筒はその下端がフレームの下端よりもデフレクタ側に延出するように設けられていることにより、フレームの遮りによる消火液の不均等を是正して、消火液をデフレクタに均等に衝突させることができ、均等な散水を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に消火用の散水ヘッドの斜視図である。
図2図1に示した消火用の散水ヘッドの縦断面図である。
図3図1に示した整流筒の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態に係る消火用の散水ヘッドを図1図3に基づいて説明する。なお、本明細書において、方向を示す上下等は消火用の散水ヘッドを取り付けた状態における方向を意味しており、図2における図中の上下と同方向である。
本実施の形態に係る消火用の散水ヘッド1は、図1図2に示すように、上側を配管に接続し配管から送られた消火液を開栓状態で下方に放出する放出口3が形成されたヘッド本体5と、ヘッド本体5から下方に延出するフレーム7と、フレーム7の下方に放出口3に対向して設けられたデフレクタ9とを備えた消火用の散水ヘッド1である。
そして、本実施の形態の消火用の散水ヘッド1は、ヘッド本体5とデフレクタ9との間に放出口3から放出される消火液を整流する整流筒11を有している。
【0014】
なお、本実施の形態の消火用の散水ヘッド1は、放出口3を塞ぐ弁体13と弁体13を支持する感熱部材15を有し、感熱部材15が火災時の熱によって破壊されることで、弁体13が開弁して放水するいわゆる閉鎖型のものである。もっとも、本発明は湿式タイプのものに限られず、弁体13や感熱部材15を備えていないいわゆる開放型のものも含む。
以下、各構成を詳細に説明する。
【0015】
<フレーム>
フレーム7はヘッド本体5から二股に分かれて下方に延出するように設けられ、下端において二股が連結して連結部17となっている。連結部17には、感熱部材15の下端を支持する支持部材19が設けられている。
また、連結部17のさらに下方には、整流筒11や後述のデフレクタ支持体23を固定するための筒状の固定筒部21が設けられている。
【0016】
<デフレクタ>
デフレクタ9は、放出口3に対向して設けられた円板状のもので、径方向に延びる複数の切欠き9aが放射状に設けられている。
デフレクタ9は、円柱状のデフレクタ支持体23の下端に支持固定されている。
デフレクタ支持体23の上端には径が細くなった小径部23aが形成され、小径部23aがフレーム7の下端に設けられた固定筒部21に挿入されてフレーム7に固定されている。
円柱状のデフレクタ支持体23は、図2に示されるように、整流筒11内に配置され、その下端側が整流筒11から下方に延出するように設けられている。
【0017】
デフレクタ支持体23の大径部23bの外径は、整流筒11の内径よりも小径であり、整流筒11の内壁とデフレクタ支持体23の大径部23bの外周面との間には隙間Sが形成され、この隙間Sを消火液が通過することで整流されるようになっている。
【0018】
<整流筒>
整流筒11は、放出口3から放出される消火液を整流してデフレクタ9に均等に消火液を供給する機能を有している。
このような機能を発揮するため、整流筒11はその下端がフレーム7の下端よりもデフレクタ9側に延出するように設けられている。
放出口3から放出される消火液はフレーム7によってその一部が遮られるため不均等になるが、その後、整流筒11内を通流することで整流されて、均等な状態でデフレクタ9に衝突する。
【0019】
整流筒11は、図2図3に示すように、自身をフレーム7に直接的又は間接的に取り付けるための取付部25を筒内に有している。
フレーム7に間接的に取り付けるとは、整流筒11をフレーム7に設けた別部材を介して取り付ける場合を想定している。
【0020】
取付部25は、筒内周壁から中心に放射状に延びる支持部27と、支持部27によって筒中心部に支持された円筒状固定部29を備えている。
このような取付部25を設けることで、整流筒11と放出口3との芯合わせが容易になる。
また、整流筒11の上端縁には、フレーム7と係止する係止部31が設けられており、この係止部31がフレーム7と係止することで、整流筒11の位置決めと回転防止が図られている。
【0021】
整流筒11の円筒状固定部29の穴径は、デフレクタ支持体23の大径部23bよりも小径になっている。
この整流筒11の円筒状固定部29の穴にフレーム7の下端に設けられた固定筒部21が挿入され、その状態でデフレクタ支持体23の小径部23aが固定筒部21に挿入される。これによって、整流筒11の円筒状固定部29はデフレクタ支持体23の大径部23b上端とフレーム7とで挟持され、整流筒11がフレーム7に固定される(図2参照)。
【0022】
整流筒11の支持部27における放出口3側の面は、放出口3側が凸となるように湾曲した形状になっている(図3のA-A断面図参照)。これによって、放出口3から放水される消火液の乱れを小さくする効果がある。
また、支持部27は、図3のA-A断面図に示されるように、下方に向かって幅が狭くなっており、これによって支持部27の上部で別れた消火水を下部側で再集結させる効果があり、消火水の乱れを防ぎ、より整流された消火水をデフレクタへ供給することができる。
【0023】
また、整流筒11における円筒状固定部29における上端面には、下方に外側に向かって傾斜する傾斜面部29a(図3参照)が形成されている。傾斜面部29aを設けることで、上記の支持部27の放出口3側の面と同様に、放出口3から放水される消火液の乱れを小さくする効果を奏することができる。
【0024】
支持部27の下端は、整流筒11における高さ方向中央よりも放出口3寄りに配置されているのが望ましい。
このように配置すれば、消火液が支持部27を通過した後筒内を通過する距離が長くなるので、消火液の整流効果を上げることができる。
【0025】
また、整流筒11は、放出口3側よりもデフレクタ9側の内径が縮径した形状であることが望ましい。
消火液は、整流筒11を出た後広がろうとするため、整流筒11を下方が縮径する形状にすることで、消火液の広がりを防止してデフレクタ9に効果的に衝突させることができる。
縮径の態様として、整流筒11の内径が下方に向かって徐々に縮径するテーパ状にするのがより好ましい。
【0026】
なお、整流筒11の下端とデフレクタ9との隙間距離は、散水の飛距離に影響する。例えば、前記隙間距離を短くすると飛距離が大きくなり、前記隙間距離を長くすると飛距離が短くなる。したがって、整流筒11の長さを調整することで設置現場に最も適切な飛距離とする機能も有している。なお、前記隙間距離の調整は、整流筒11自体の長さの調整の他、整流筒11とフレーム7との取付位置の調整によって行うようにしてもよい。
【0027】
以上のように構成された本実施の形態の消火用の散水ヘッド1の作用を説明する。
火災の熱によって、感熱部材15が破壊されると弁体13が開弁して放出口3から消火液がフレーム7の下方に向かって放出される。
フレーム7の下方に向かって放出された消火液は、フレーム7によって遮られる部分を含めほぼ全量が整流筒11に入る。整流筒11に入ることで、消火液はフレーム7によって遮られたものも含めて、整流筒11内で整流されて、デフレクタ9に向けて放出される。
そして、デフレクタ9には整流された消火液が均等に衝突することで、均等な散水が実現される。
【0028】
なお、整流筒11内には、放射状に設けられた支持部27があり、ここで消火液が遮られて乱されるが、支持部27の下端よりもさらに下方まで整流筒11が延出していることで、筒内で再び整流され、デフレクタ9には均等な状態で消火水が衝突する。
また、支持部27の上面が上方に凸となる湾曲面になっていることで、支持部27に消火液が衝突したときの消火水の乱れを抑制する効果がある。
さらに、支持部27が下方に向かって幅狭となっていることで、前述したように、支持部27の上部で別れた消火水を下部側で再集結させ、より整流された消火水をデフレクタへ供給することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態によれば、整流筒11を設けたことによって、消火液がフレーム7の遮りによって不均等になることを是正して、デフレクタ9に消火液を均等に衝突させることができ、均等な散水を実現できる。
【0030】
なお、上記の実施の形態では整流筒11のフレーム7への取付構造として、整流筒11の内部に取付部25を設けたものであったが、本発明の整流筒11のフレーム7への取付構造はこれに限定されるものではない。
例えば、フレーム7の下端の外周面に雄ネジを形成し、整流筒11の上端の内周面に雌ネジを形成し、両者を螺合させるようにすれば、支持部27を不要にすることができる。支持部27が不要となれば、消火水の乱れを抑制することができる。また、上記のようなネジによる取付構造にすれば、前述した整流筒11の下端とデフレクタ9との隙間距離の調整が容易になるという効果もある。
【符号の説明】
【0031】
1 消火用の散水ヘッド
3 放出口
5 ヘッド本体
7 フレーム
9 デフレクタ
9a 切欠き
11 整流筒
13 弁体
15 感熱部材
17 連結部
19 支持部材
21 固定筒部
23 デフレクタ支持体
23a 小径部
23b 大径部
25 取付部
27 支持部
29 円筒状固定部
29a 傾斜面部
31 係止部
S 隙間
図1
図2
図3