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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】位置計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20240813BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G01B11/00 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020154266
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048443
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高桑 真歩
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-147028(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052781(WO,A1)
【文献】特開2004-289126(JP,A)
【文献】特開2007-048857(JP,A)
【文献】特開2013-187206(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078688(WO,A1)
【文献】特表2019-525227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンの少なくとも一部を含む基板を保持可能な基板保持部と、
前記基板保持部に保持される基板に対して照明光を照射し、前記基板に照射された照明光の前記基板からの反射光を透過する投影部と、
前記基板保持部に保持される前記基板と前記投影部の間の空間に液体を供給可能な液体供給部と、
前記投影部を透過した前記反射光を入射し、当該反射光に基づく画像信号を生成する撮像部と、
前記基板保持部の位置に関する位置情報を取得する位置測定部と、
前記投影部を前記基板に対して移動させる移動機構と、
前記空間に前記液体を保持しつつ前記投影部が前記基板に対して所定の距離の移動と一時停止を繰り返すように前記移動機構を制御するように構成され、前記位置情報と前記画像信号とに基づき、前記基板内の前記回路パターンの少なくとも一部の座標位置を決定し、前記座標位置を、前記基板を露光するに先立って露光機に送信する制御部と、
を備え、
前記液体供給部は、前記投影部に取り付け可能なアタッチメントを含み、
前記アタッチメントは、液体用の第1の導管と、気体用の第2の導管と、を備え、
前記第1の導管は、前記アタッチメントにおいて前記第2の導管よりも内側に設けられ、
前記液体供給部は、液体貯留容器からの液体を前記第1の導管を通して前記空間に供給し、
前記アタッチメントには、一方から前記液体を供給し、他方から前記液体を排出するための少なくとも2つの前記第1の導管が設けられ、前記空間に前記液体がある状態とない状態とを必要に応じて切り替える、
位置計測装置。
【請求項2】
前記基板保持部が温度制御部を有する、請求項1に記載の位置計測装置。
【請求項3】
前記液体が空気の屈折率よりも大きな屈折率を有する、請求項1または2に記載の位置計測装置。
【請求項4】
回路パターンの少なくとも一部を含む基板を基板保持部に保持させ、
液体供給部は、前記基板保持部に保持される前記基板と、当該基板に対して照明光を照射する投影部との間の空間に液体を供給し、
前記投影部は前記基板の上方に近接したまま前記液体を伴って前記基板に対し所定の距離の移動と一時停止を繰り返しながら移動し、
前記投影部から前記液体を通して前記基板に対して照明光を照射し、
前記基板からの反射光を前記液体を通して撮像部に入射して当該反射光に基づく画像信号を生成し、
前記基板保持部の位置に関する位置情報を取得し、
前記位置情報と前記画像信号とに基づき、前記基板内の前記少なくとも一部の回路パターンの座標位置を決定し、
前記座標位置を、前記基板を露光するに先立って露光機に送信し、
前記液体供給部は、前記投影部に取り付け可能なアタッチメントを含み、
前記アタッチメントは、液体用の第1の導管と、気体用の第2の導管と、を備え、
前記第1の導管は、前記アタッチメントにおいて前記第2の導管よりも内側に設けられ、
前記液体供給部は、液体貯留容器からの液体を前記第1の導管を通して前記空間に供給し、
前記アタッチメントには、一方から前記液体を供給し、他方から前記液体を排出するための少なくとも2つの前記第1の導管が設けられ、前記空間に前記液体がある状態とない状態とを必要に応じて切り替える、
位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、位置計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一つにフォトリソグラフィ工程がある。この工程では、エッチング対象の基板と、フォトマスク(原板とも言う)との位置合わせを精度よく行う必要がある。例えば3次元構造を有する半導体記憶装置では、基板内の一つのチップ内に形成される複数の領域において、主な構成材料が異なったり、基板からの高さが異なったりするため、チップ内で応力が働き、例えばメモリセル領域と周辺回路領域との間で位置ずれが生じる場合がある。このような場合に基板へのフォトマスクの位置合わせを精度よく行うためには、歪みによる位置ずれを補正する必要がある。そのためには、まず、精度よく位置計測を行うことが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6496734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、基板上に形成される回路パターンの位置を計測する位置計測装置及び計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、位置計測装置が提供される。この位置計測装置は、回路パターンの少なくとも一部を含む基板を保持可能な基板保持部と、前記基板保持部に保持される基板に対して照明光を照射し、前記基板に照射された照明光の前記基板からの反射光を透過する投影部と、前記基板保持部に保持される前記基板と前記投影部の間の空間に液体を供給可能な液体供給部と、前記投影部を透過した前記反射光を入射し、当該反射光に基づく画像信号を生成する撮像部と、前記基板保持部の位置に関する位置情報を取得する位置測定部と、前記投影部を前記基板に対して移動させる移動機構と、前記空間に前記液体を保持しつつ前記投影部が前記基板に対して所定の距離の移動と一時停止を繰り返すように前記移動機構を制御するように構成され、前記位置情報と前記画像信号とに基づき、前記基板内の前記少なくとも一部の回路パターンの座標位置を決定し、前記座標位置を、前記基板を露光するに先立って露光機に送信する制御部と、を備え、前記液体供給部は、前記投影部に取り付け可能なアタッチメントを含み、前記アタッチメントは、液体用の第1の導管と、気体用の第2の導管と、を備え、前記第1の導管は、前記アタッチメントにおいて前記第2の導管よりも内側に設けられ、前記液体供給部は、液体貯留容器からの液体を前記第1の導管を通して前記空間に供給し、前記アタッチメントには、一方から前記液体を供給し、他方から前記液体を排出するための少なくとも2つの前記第1の導管が設けられ、前記空間に前記液体がある状態とない状態とを必要に応じて切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態による位置計測装置を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態による位置計測装置の構成を模式的に示す図である。
図3図3は、基板ステージを模式的に示す上面図である。
図4図4は、実施形態による位置計測装置の噴射ノズルと、噴射ノズルから噴射された気体を吸引する吸引ノズルとを模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態による位置計測装置の投影部の間欠的な移動を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間
の寸法の間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されるべきものである。
【0008】
図1から図3までを参照しながら、実施形態による位置計測装置を説明する。図1は、実施形態による位置計測装置を示すブロック図であり、図2は、図1の位置計測装置の構成を模式的に示す図であり、図3は、基板ステージを模式的に示す上面図である。図1に示すように、位置計測装置1は、画像検出システム10、位置制御システム20、及び制御部30を有している。なお、本実施形態においては、位置計測の対象としての基板は、シリコンなどの半導体で形成される半導体ウエハであるとする。以下、単にウエハWと称する。
【0009】
(画像検出システム)
画像検出システム10は、撮像部11、照明部12、投影部13、及び液浸部14を有している。撮像部11は、例えば電荷結合素子(CCD)や相補型金属酸化物半導体(CMOS)素子などの撮像素子を含み、入射光に基づく画像信号を生成する。照明部12は、例えば白色光発光ダイオード(LED)や、キセノンランプなどの高圧ランプを含む光源と、所定の波長の光を透過する波長フィルターとを含むことができる。これにより、照明部12は、所定の波長を有する光LTを照明光として出射する。また、波長フィルターを用いずに、所定の波長域の光を発する光源を使用してもよい。例えば、緑色光LED(波長500~570nm)や青色光LED(波長460~500nm)を用いてもよい。
【0010】
投影部13は対物レンズ(不図示)を含み、図2に示すように、後述する基板ステージ22に載置されたウエハWに近接して配置される。本実施形態においては、投影部13と照明部12とは、投影部13の上方に設けられる例えばハーフミラーなどの光学部品OPにより光学的に結合されている。光学部品OPは、主軸と交差する方向から入射する光を主軸方向に反射するとともに、主軸に平行な方向から入射する光を透過させる。
【0011】
また、投影部13は、不図示の支持具により基板ステージ22の上方に上下動可能に支持される。支持具は、制御部30からの指示信号に従って、基板ステージ22に載置されるウエハWに近づく方向、又は遠ざかる方向に投影部13を移動させることができる。なお、投影部13を支持する支持具は、投影部13を水平方向に移動可能であってもよい。
【0012】
液浸部14は、本実施形態においては、投影部13に取り付け可能なアタッチメント14Aを含んでいる。アタッチメント14Aには、液体用の導管14LCと気体用の導管14GCが設けられている。液体用の導管14LCは、アタッチメント14Aにおいて気体用の導管14GCよりも内側に設けられている。液浸部14は、例えば液体貯留容器や、配管、バルブなど(いずれも不図示)を含むことができ、液体貯留容器からの液体を導管14LCを通して投影部13とウエハWとの間の空間に供給する。ここで、液体としては例えば純水や、少なくとも空気の屈折率よりも大きな屈折率を有する液体などが例示される。また、投影部13とウエハWとの間の距離は、これらの間の空間に供給される液体が表面張力により維持される程度であってよい。なお、アタッチメント14Aには少なくとも2つの導管14LCが設けられ、図2に矢印A1及びA2で示すように、液体が一方から供給され、他方から排出されてよい。これによれば、投影部13とウエハWの間の空間に液体がある状態と無い状態とを適宜切り替えることが可能となる。なお、説明の便宜上、以下の説明において、投影部13とウエハWの間の空間に供給される液体を液浸水IL(図2)と記す。
【0013】
また、気体用の導管14GCは、例えば空気(清浄乾燥空気)や不活性ガス(希ガス、窒素ガス)などの気体を液浸水ILの周囲に吹き付けるために設けられている。具体的には、液浸部14は、気体が充填されたガスシリンダ(又は、コンプレッサ)や、配管、バルブなどを含むことができる。これらにより、液浸部14は、導管14GCを通して、液浸水ILの周囲に気体等を吹き付けることができる。これにより、液浸水ILを確実に投影部13とウエハWの間に保持することが可能となる。なお、導管14GCの数は任意に決定されてよい。例えばアタッチメント14Aに、周方向に等角度間隔で複数の導管14GCを設けると、これらの導管14GCから噴射される気体はエアカーテン状となって液浸水ILを取り囲むことができる。これにより、液浸水ILを確実に維持することが可能となる。
【0014】
上記の構成によれば、照明部12から出射した照明光が光学部品OPにより投影部13に向けて反射されて、投影部13へ入射する。投影部13に入射した照明光はウエハWの表面に集光し、ウエハWの表面で反射する。この反射光(回折光や散乱光も含まれ得る)は、投影部13及び光学部品OPを透過して、撮像部11に入射する。撮像部11は、入射光に基づく画像信号を生成し、この画像信号を後述する指示部32を通して、演算部31へと送信する。演算部31は、受信した画像信号に対して種々の信号処理を行って2次元画像を生成する。この2次元画像にはウエハW上に形成されている半導体デバイス等の回路パターンが含まれ得る。
【0015】
(位置制御システム)
再び図1を参照すると、位置制御システム20は、基板搬送部21、基板ステージ22、温度計測部23、温度制御部24、位置制御部25、及び位置測定部26を有している。基板搬送部21は、ウエハWを水平方向に搬送するウエハ搬送アームや、ウエハ搬送アームからウエハWを受け取って垂直方向に搬送する昇降装置など(いずれも不図示)を有することができる。基板搬送部21は、計測対象のウエハWを基板ステージ22へと搬入し、基板ステージ22から搬出することができる。
【0016】
基板ステージ22には、ウエハWの直径よりも大きい直径を有する凹部DPが形成されており、ここにウエハWが載置される。また、凹部DPには、真空チャック、静電チャック、又はメカニカルチャックなどのチャック機構が設けられ、これにより、ウエハWが基板ステージ22上に保持される。また、図2に示すように、基板ステージ22には、温度計測部23が設けられている。温度計測部23は例えば熱電対であってよい。ただし、温度計測部23は放射温度計であってもよい。さらに、基板ステージ22は、図2に示すようにヒーター22Hを有することができる。図示の例では、ヒーター22Hは、ウエハWの外径とほぼ等しい外径を有している。また、本実施形態では、ヒーター22Hは、図3に示すように、その円周方向に沿って等角度で分割された8つのサブヒーター22HSを有することができる。これらに対応して温度計測部23を設けることにより、基板ステージ22ひいてはウエハWの温度をより細かく制御することが可能となる。ヒーター22Hは温度制御部24(図1)の一部を構成し、温度制御部24はヒーター22Hの温度を制御する温調器を有することができる。これにより、温度制御部24は、温度計測部23からの温度信号に基づき、ヒーター22Hに対して電力を供給し、基板ステージ22を例えば所定の温度に維持する。
【0017】
温度計測部23及び温度制御部24によれば、例えば、液浸水ILが蒸発する際の気化熱によるウエハWの温度低下を妨げることが可能となる。すなわち、投影部13とウエハWの間に保持される液浸水ILが蒸発する際の気化熱によりウエハWの温度が低下する可能性がある。そうすると、ウエハWは収縮し変形し得る。このような変形は位置計測の妨げとなる。しかし、温度計測部23及び温度制御部24によりウエハWの温度を一定に保つことにより、液浸水ILの蒸発に伴うウエハWの変形を防止することが可能となる。
【0018】
また、本実施形態による位置計測装置1は、基板ステージ22に保持されるウエハWに対して気体を吹き付けるブロワーを有してもよい。ブロワーは、気体が充填されたガスシリンダ(又は、コンプレッサ)や、配管、バルブなど(いずれも不図示)を始めとして、図4に示すように、ウエハWの上面に向けられ、気体Gを噴射する噴射ノズルINと、噴射ノズルINから噴射された気体Gを吸引する吸引ノズルSNとを有することができる。また、気体としては、空気(清浄乾燥空気)や不活性ガス(希ガス、窒素ガス)などが例示され得る。噴射ノズルINからウエハWに対して気体を吹き付けることにより、ウエハW上において、投影部13とウエハWの間の空間から部分的に又は全体として離脱した液浸水ILを除去することが可能となる。
【0019】
なお、本実施形態による位置計測装置1は、ブロワーに代わり、ウエハWを振動させる振動機構を有し、ウエハWを振動させることにより、ウエハW上の液浸水ILを除去してもよい。また、液浸水ILの除去のため、ヒーターやランプなどを設けてもよい。
【0020】
位置制御部25は、基板ステージ22を少なくとも水平面内に移動させる移動機構(不図示)を有する。本実施形態においては、位置制御部25が基板ステージ22を移動させることにより、投影部13がウエハWに対して相対的に移動することができる。また、位置制御部25は、位置測定部26の計測結果に基づいて、基板ステージ22を移動させることができる。位置測定部26は例えばレーザ干渉計を有する。レーザ干渉計は、レーザ素子、受光素子、及び光学系を有し、測長ビームを2つに分岐して基板ステージ22に照射し、基板ステージ22で反射した戻りビームの干渉を利用して、基板ステージ22の位置に関する情報を取得する。これにより、基板ステージ22上のウエハWの所定部位の座標位置が絶対座標上において特定される。以下の説明において、絶対座標上の座標位置を単に絶対位置と言う場合がある。なお、位置制御部25は、レーザ干渉計の代わりに、リニアエンコーダなどを有し、リニアエンコーダにより絶対位置を特定してもよい。
【0021】
(制御部)
再び図1を参照すると、位置計測装置1の制御部30は、演算部31、指示部32、及び記憶部33を有している。演算部31は、画像検出システム10や位置制御システム20などから信号を受信し、所定の演算を行うことにより、ウエハW内の所定部位の絶対位置を計測したり、画像検出システム10や位置制御システム20などへ指示信号を送信したりすることによって、位置計測装置1を包括的に制御する。
【0022】
具体的には、演算部31は指示部32を介して撮像部11及び照明部12に指示信号を送信し、照明部12に照明光を出射させるとともに、撮像部11にウエハW上の半導体デバイスの回路パターンを撮像させる。照明光が液浸水ILを透過する際には、照明光の波長が実質的に短波長化される。ここで、照明光の波長をλとし、液浸水ILの屈折率をnとすると、液浸水ILを通してウエハWの表面に照射される光の実効波長はλ/nとなる。例えば、照明光として波長555nmの緑色光を用い、液浸水ILとして純水(屈折率1.44)を用いる場合、実効波長は385nmとなる。光学的な測定における解像度は、レイリーの式によれば、k×λ/NA(k1:プロセス定数、NA:開口数)で表されるところ、波長λが実質的に短波長化されることで解像度が向上する。
【0023】
例えば、ウエハW上に3次元構造を有する半導体記憶装置の回路パターンが形成されている場合、各チップ領域には、例えば、素子領域としてのメモリセルアレイ領域と周辺回路領域とが設けられる。メモリセルアレイ領域には、複数のメモリセルが形成される複数のメモリピラーが配置され、周辺回路領域には、メモリセルを制御するための例えばロウデコーダやセンスアンプが配置されている。撮像部11の撮像対象は、例えばメモリセルアレイ領域であってよく、上述のとおり、本実施形態によれば、液浸水ILにより照明光が短波長化されるため、メモリセルアレイ領域の画像を高解像度で取得することができる。具体的には、メモリセルアレイ領域内のメモリピラーそれぞれの位置を把握することが可能となる。
【0024】
演算部31は、このように高解像度で取得されたメモリセルアレイ領域の画像信号と、位置測定部26により得られた位置情報とにより、メモリセルアレイ領域の絶対位置を決定することができる。演算部31は、このように得た絶対位置データを記憶部33へ送信し、記憶部33は絶対位置データを記憶する。記憶部33に記憶された絶対位置データは、例えば、ウエハWを露光するに先立って露光装置へ送信され、露光装置において、フォトマスクとウエハWとの位置合わせに利用され得る。
【0025】
また、演算部31は、投影部13のウエハWに対する相対移動を制御することもできる。投影部13がウエハWに対して相対的に移動する際、投影部13とウエハWの間に液浸水ILが維持されずに、例えば、液浸水ILの一部又は全部が置き去りにされる場合がある。これを防ぐため、投影部13は、例えば、一定の距離の移動と停止とを繰り返すように移動される。このような移動を実現するため、演算部31は、停止回数かつ/又は、停止までの一回当たりの移動距離を計算する。例えば、投影部13とウエハWとの間に液浸水ILを維持しつつ投影部13が移動できる距離をLmaxし、投影部13が移動しようとする距離をLとする。Lmaxは例えば予備実験等を通して求められてよい。演算部31は、距離LからLmaxを減算し、残余とLmaxを比較する。残余がLmaxよりも大きい場合には、残余から更にLmaxを減算する。以下、残余がLmaxよりも小さくなるまで減算を繰り返し、残余がLmaxより小さくなったとき、演算部31は、減算回数を停止回数と決定することができる。これに基づいて、演算部31は位置制御部25に基板ステージ22を移動させる。これにより、図5(A)に示すように、投影部13は、Lmaxだけ移動して点Pで停止することを繰り返し、最後に残余であるLmaxよりも小さい距離LLだけ移動することにより、液浸水ILを維持したまま始点Sから距離L離れた終点Eまでを移動することが可能となる。なお、距離LがLmaxよりも小さい場合には、停止回数はゼロとなり、投影部13は、Lmaxより短い距離Lを停止することなく移動することができる。
【0026】
また、演算部31は、L/Lmaxを停止回数と決定し、この停止回数で距離Lを除算することにより、停止までの一回当たりの移動距離を求めてもよい。L/Lmaxの商が自然数でない場合(距離LがLmaxの自然数倍でない場合)には、その商よりも大きい自然数を停止回数としてもよく、商の小数点以下を切り上げた値を停止回数としてよい。このようにして求めた停止回数で距離Lを除算することにより、Lmax以下の一回当たりの平均移動距離が得られる。これに基づいて、演算部31は位置制御部25に基板ステージ22を移動させる。これにより、投影部13は、図5(B)に示すように、一回当たりの平均移動距離DAの移動と、点Pでの停止とを繰り返すことにより、始点Sから距離L離れた終点Eまでを移動することが可能となる。
【0027】
演算部31は、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を始めとするハードウェアにより実現されてよい。また、演算部31は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして実現されてもよい。演算部31は、制御プログラムや各種のデータに基づいて位置計測装置1を包括的に制御する。具体的には、演算部31は、制御プログラムや各種のデータに基づいて種々の指示信号を生成し、生成した指示信号を画像検出システム10や位置制御システム20の各部へ送信することにより、各部を制御する。プログラムや各種データは、例えばハード・ディスク・ドライブ(HDD)や半導体メモリ、サーバなどの非一時的なコンピュータ可読記憶媒体から有線又は無線でダウンロードされ得る。
【0028】
以上説明したとおり、本実施形態による位置計測装置1によれば、投影部13とウエハWの間の空間に液浸水ILが維持されて、ウエハW表面に形成された回路パターンが撮像部11により撮像されるため、高解像度の画像信号を取得することができる。このため、高解像度の画像信号と、位置測定部26からの位置情報とに基づいて、回路パターン中の所定の部位や構成の絶対位置を精度よく特定することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態による位置計測装置1においては、液浸部14は、気体用の導管14GCを含み、これを通して液浸水ILの外周に対して気体を噴射することができるため、投影部13とウエハWの間の空間に液浸水ILを容易に保持することができる。これにより、液浸水ILを維持したままで投影部13を比較的早い速度で移動させることが可能となり、位置計測の短時間化が可能となる。
【0030】
さらに、本実施形態による位置計測装置1においては、演算部31は、投影部13とウエハWの間の空間に液浸水ILを維持したまま投影部13が移動できるように投影部13を間欠的に、すなわち所定の距離の移動と一時停止を繰り返すように移動させることができる。これによっても、液浸水ILを維持したままで投影部13を比較的早い速度で移動させることが可能となる。
【0031】
さらにまた、投影部13の移動の際に液浸水ILの一部又は全部が置き去りにされた場合であっても、本実施形態による位置計測装置1には、噴射ノズルINが設けられており、噴射ノズルINからウエハWに対して噴射される気体により、置き去りにされた液浸水ILを吹き飛ばしたり、乾燥させたりすることができる。このため、液浸水ILによりウォーターマークが生じるのを防ぐことができ、ウエハWの表面を清浄に維持できる。また、置き去りにされた液浸水ILが吹き飛ばされ、乾燥されるため、気化熱によるウエハWの温度変化を低減することも可能となる。したがって、ウエハWの温度変化によって位置計測の精度が低下するのを防止し得る。
【0032】
また、本実施形態による位置計測装置1の基板ステージ22にはヒーター22Hが設けられ、ウエハWの温度が、液浸水ILが蒸発する際の気化熱により低下するのを低減することが可能となる。これによっても、ウエハWの温度変化による位置計測の精度の低下を防止し得る。
【0033】
(位置計測方法)
次に、実施形態による位置計測方法について説明する。この位置計測方法は、上述の位置計測装置1により実施することができる。初めに、基板搬送部21によりウエハWが搬送されて、基板ステージ22上に載置される。ウエハWは、所定のチャックにより、基板ステージ22の凹部DPに保持される。次に、投影部13がウエハWの上方に近接して配置され、液浸部14から、アタッチメント14Aを通して例えば純水などの液体が、投影部13とウエハWとの間の空間に供給される。供給された液体は、液浸水ILとして投影部13とウエハWとの間に維持される。また、液浸部14から、アタッチメント14Aを通して清浄乾燥空気などの気体が液浸水ILの周囲に噴出される。
【0034】
次いで、位置制御部25により基板ステージ22が移動され、投影部13がウエハWに対して相対的に移動する。このとき、投影部13はウエハWの上方に近接したまま液浸水ILを伴ってステップ・アンド・リピート方式でチップごとに移動するように制御されてよい。また、ウエハW上のチップのうちの所定の数のチップが撮像対象と予め決まっている場合には、投影部13は、一つの撮像対象チップの上方から他の撮像対象チップの上方へ液浸水ILを伴って移動するように制御されてもよい。この場合、例えば図5を参照しながら説明したように、移動と一時停止を繰り返しながら移動することが望ましい。
【0035】
投影部13が上記のように移動しつつウエハW上のチップの上方に静止したときに、撮像部11は、チップ内の所定の回路パターン(例えば、メモリセルアレイ領域)を撮像し、その回路パターンの画像信号を生成する。その画像信号は、撮像部11から指示部32を通して演算部31に送信される。
【0036】
一方、位置制御部25に移動される基板ステージ22の位置は、位置測定部26により計測され、計測結果である位置情報が位置測定部26から演算部31へ送信される。演算部31は、撮像部11から画像信号と、位置測定部26からの位置情報とに基づき、各チップの絶対位置を決定する。
【0037】
(変形例)
上述の実施形態においては、投影部13にアタッチメント14Aが取り付けられ、アタッチメント14Aに設けられた液体用の導管14LCから投影部13とウエハWの間の空間に液浸水ILが供給され、気体用の導管14GCから液浸水ILの周囲に気体が供給された。しかし、アタッチメント14Aを設けることなく、導管14LCに代わるノズルと、導管14GCに代わるノズルを設けてもよい。
【0038】
また、ヒーター22Hは、8つのサブヒーター22HSを有していたが、サブヒーター22HSの数は、任意に決定されてよい。また、ヒーター22Hは、全体として環状形状を有していたが、円形形状を有してもよい。この場合、円形形状のヒーターは、例えば複数の扇型のサブヒーターを有してよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1…位置計測装置、10…画像検出システム、11…撮像部、12…照明部、13…投影部、14…液浸部、14LC,14GC…導管、20…位置制御システム、21…基板搬送部、22…基板ステージ、22H…ヒーター、23…温度計測部、24…温度制御部、25…位置制御部、26…位置測定部、30…制御部、OP…光学部品、IN…噴射ノズル、SN…吸引ノズル、S…始点、E…終点。



図1
図2
図3
図4
図5