(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】クリーニング装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
G03G21/00 318
(21)【出願番号】P 2020157945
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【氏名又は名称】倉橋 暎
(72)【発明者】
【氏名】花山 信平
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-184321(JP,A)
【文献】特開2001-042735(JP,A)
【文献】特開2001-356600(JP,A)
【文献】特開2012-022077(JP,A)
【文献】特開2006-138990(JP,A)
【文献】特開2016-053651(JP,A)
【文献】特開2017-138360(JP,A)
【文献】特開平11-305619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な回転体の表面から除去されたトナーを収容する収容部を備えたハウジングと、
前記回転体の表面の移動方向と略直交する幅方向に沿って前記回転体の表面に当接し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の表面からトナーを除去して前記収容部に回収するクリーニングブレードと、
前記クリーニングブレードを支持する支持部材であって、前記回転体の前記幅方向と略平行な回動軸線の周りを回動可能なように前記ハウジングに支持された支持部材と、
前記支持部材と前記ハウジングとの間に配置された加圧部材と、
前記クリーニングブレードの厚さ方向と交差する面のうち前記回転体側とは反対側の面に前記回転体の前記幅方向に沿って当接するように、前記クリーニングブレードと対向して配置された封止シートと、
を有し、
前記封止シートの少なくとも前記クリーニングブレードと当接する部分に、算術平均粗さRaが5μm以上、30μm以下の粗面部が設けられていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記封止シートの前記クリーニングブレードと当接する部分の全域が前記粗面部とされていることを特徴とする請求項
1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記封止シートの前記クリーニングブレード側の面の略全域が前記粗面部とされていることを特徴とする請求項
2に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記粗面部は、前記封止シートを形成する樹脂製のシートをサンドブラスト加工することにより形成されていることを特徴とする請求項
1乃至
3のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記封止シートは、厚さが50μm以上、100μm以下の樹脂製のシートで形成されていることを特徴とする請求項
1乃至
4のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記封止シートは、ポリエチレンテレフタレート製のシートで形成されていることを特徴とする請求項
5に記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記クリーニングブレードの前記封止シートが当接する面と前記封止シートの面とがなす角度である当接角θは、20度以上、35度以下であることを特徴とする請求項
1乃至
6のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記回転体は、円筒状の感光体であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項9】
前記回転体は、ローラにバックアップされた中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項10】
記録材にトナーで画像を形成する画像形成装置であって、前記回転体と、請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のクリーニング装置と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記回転体と前記クリーニング装置とは、前記画像形成装置に対して着脱可能なユニットに含まれていることを特徴とする請求項
10に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた、複写機、プリンター、ファクシミリ装置、あるいはこれらのうち複数の機能を備えた複合機などの画像形成装置において用いられるクリーニング装置、及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光体や中間転写体などの像担持体から被転写体にトナー像を転写した後に像担持体上に残留したトナー(残トナー)を像担持体から除去するために、クリーニング装置が用いられている。クリーニング装置としては、ゴムなどの弾性体で形成されたクリーニングブレードを像担持体の表面(外周面)に当接させて、回転する像担持体の表面から残トナーを掻き取る方式(ブレードクリーニング方式)のものが広く用いられている。
【0003】
このようなクリーニング装置のハウジングには、クリーニングブレードによって像担持体から除去されたトナー(回収トナー)を貯留する回収トナー収容部が設けられている。クリーニングブレードは、その先端部のエッジ部が像担持体の表面に圧接させられた状態でハウジングに支持される。
【0004】
また、このようなクリーニング装置には、クリーニングブレードによって除去されたトナーがクリーニング装置の外部に漏出することを抑制するために、封止部材が設けられている。この封止部材として、封止対象の隙間を埋めるように用いられる比較的肉厚の発泡弾性体などの弾性体で形成された封止部材(ここでは「弾性シール部材」ともいう。)が用いられることがある。弾性シール部材は、封止対象の隙間からトナーが漏れないようにするために、圧縮された状態で該隙間を塞ぐによう配置されて用いられるのが一般的である。しかし、このような弾性シール部材からの押圧力が、クリーニング装置における不具合の原因になることがある。その一例について説明する。
【0005】
例えば、クリーニング装置には、上述の弾性シール部材の一例である端部シール部材と、シート状の弾性体で形成された封止部材(ここでは「封止シート」ともいう。)の一例である飛散防止シートと、が設けられることがある。端部シールは、クリーニングブレードの長手方向の端部と像担持体とに接触するように、クリーニングブレードの長手方向の両端部に隣接して配置される。飛散防止シートは、像担持体の表面の移動方向に関してクリーニングブレードよりも上流側でクリーニングブレードの長手方向に沿って像担持体の表面に接触するように、クリーニングブレードと対向して配置される。飛散防止シートは、基本的には、像担持体上の残トナーを掻き取らないように構成される。
【0006】
ここで、端部シールは、ハウジングと飛散防止シートとの間の隙間、像担持体とハウジングとの間の隙間を封止するために、像担持体との間で飛散防止シートを挟み込んで押圧するように設けられるのが一般的である。しかし、端部シールによって押圧される飛散防止シートの長手方向の端部では、端部シールの押圧力によって飛散防止シートの像担持体に対する接触圧が上がり、飛散防止シートによって像担持体上の残トナーを掻き取るようになることがある。
【0007】
特許文献1では、端部シールから飛散防止シートの長手方向の端部に加わる押圧力を低減するために、端部シールや飛散防止シートに切欠部を設け、飛散防止シートの先端部のみを端部シールとオーバーラップさせる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載の構成は、飛散防止シートが端部シール部材からの押圧力によって反り返ることなどを抑制するのにある程度の効果が得られるものと考えられる。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成においても、端部シールよって押圧される飛散防止シートの長手方向の端部では、飛散防止シートの長手方向の中央部に比べると、飛散防止シートの像担持体に対する押圧力が高くなっている。そのため、依然として、該飛散防止シートの長手方向の端部では、像担持体上の残トナーが飛散防止シートによって掻き取られて、飛散防止シートと像担持体との接触部に滞留することがある。また、この構成では、端部シールの飛散防止シートに対する接触面積が減少するので、回収トナー収容部の内部から外部にトナーが漏出しやすくなるおそれもある。
【0011】
そして、上述のように飛散防止シートと像担持体との接触部に滞留したトナーは、像担持体の回転に伴い、飛散防止シートと像担持体との接触部を超えて、像担持体の表面の移動方向の下流側に徐々に侵入していくことがある。その結果、このトナーが端部シールと像担持体との接触部に入り込み、最終的にはクリーニング装置の外部へと漏出してしまうことがある。
【0012】
なお、以上では、弾性シール部材からの押圧力によるクリーニング装置における不具合の一例について説明したが、該押圧力は、詳しくは後述するように、他の不具合の原因になることもある。例えば、揺動可能に支持されたクリーニングブレードの像担持体に対する当接圧に、弾性シール部材からの押圧力が影響してしまうことが挙げられる。
【0013】
また、以上では、感光体や中間転写体などの像担持体とされる回転体をクリーニングするクリーニング装置を例に説明したが、例えば、記録材担持体などの他の回転体をクリーニングするクリーニング装置に関しても同様の問題が生じ得る。
【0014】
したがって、本発明の目的は、一般には、弾性シール部材からの押圧力によるクリーニング装置における不具合を抑制することのできるクリーニング装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的の一つは、飛散防止シートの端部シールによって押圧される部分によって回転体上から掻き取られたトナーがクリーニング装置の外部へと漏出することを抑制できるクリーニング装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的の一つは、揺動可能に支持されたクリーニングブレードの回転体に対する当接圧への影響を抑制しつつ、該クリーニングブレードとハウジングとの間の隙間を封止可能なクリーニング装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的は本発明に係るクリーニング装置及び画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、回転可能な回転体の表面から除去されたトナーを収容する収容部を備えたハウジングと、前記回転体の表面の移動方向と略直交する幅方向に沿って前記回転体の表面に当接し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の表面からトナーを除去して前記収容部に回収するクリーニングブレードと、前記回転体の表面の移動方向に関して前記クリーニングブレードよりも上流側で、前記回転体の前記幅方向に沿って前記回転体の表面に接触するように、前記クリーニングブレードと対向して配置された封止シートと、前記回転体の前記幅方向に関する前記クリーニングブレードの端部に隣接して設けられ、前記封止シートを前記回転体の表面との間に挟み込んで前記封止シートを押圧するように前記封止シートと前記ハウジングとの間に配置された弾性シール部材と、を有し、前記弾性シール部材の前記回転体の表面の移動方向に関する上流側の端部には、前記回転体の前記幅方向に関する端部側から中央側に向かう方向の下流側に行くほど前記回転体の表面の移動方向に関する下流側に位置するように前記回転体の前記幅方向に対して傾斜した、前記封止シートの前記回転体側とは反対側の面に接触する傾斜部が設けられており、前記回転体の前記幅方向に関して、前記弾性シール部材の前記回転体の表面の移動方向に関する上流側の端部の一部は、前記クリーニングブレードとオーバーラップしていることを特徴とするクリーニング装置である。
【0018】
本発明の他の態様によると、回転可能な回転体の表面から除去されたトナーを収容する収容部を備えたハウジングと、前記回転体の表面の移動方向と略直交する幅方向に沿って前記回転体の表面に当接し、前記回転体の回転に伴って前記回転体の表面からトナーを除去して前記収容部に回収するクリーニングブレードと、前記クリーニングブレードを支持する支持部材であって、前記回転体の前記幅方向と略平行な回動軸線の周りを回動可能なように前記ハウジングに支持された支持部材と、前記支持部材と前記ハウジングとの間に配置された加圧部材と、前記クリーニングブレードの厚さ方向と交差する面のうち前記回転体側とは反対側の面に前記回転体の前記幅方向に沿って当接するように、前記クリーニングブレードと対向して配置された封止シートと、を有し、前記封止シートの少なくとも前記クリーニングブレードと当接する部分に、算術平均粗さRaが5μm以上、30μm以下の粗面部が設けられていることを特徴とするクリーニング装置が提供される。
【0019】
本発明の他の態様によると、記録材にトナーで画像を形成する画像形成装置であって、前記回転体と、上記本発明のクリーニング装置と、を有することを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、飛散防止シートの端部シールによって押圧される部分によって回転体上から掻き取られたトナーがクリーニング装置の外部へと漏出することを抑制できる。また、本発明の他の態様によれば、揺動可能に支持されたクリーニングブレードの回転体に対する当接圧への影響を抑制しつつ、該クリーニングブレードとハウジングとの間の隙間を封止可能である。したがって、本発明によれば、弾性シール部材からの押圧力によるクリーニング装置における不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】ドラムカートリッジの模式的な側面図である。
【
図5】クリーニングブレードの近傍の模式的な断面図である。
【
図7】従来の構成を説明するための端部シールの近傍の側面図である。
【
図8】端部シールの他の例を説明するための模式図である。
【
図9】ベルトクリーニング装置の近傍の断面図である。
【
図10】ベルトクリーニング装置の模式的な側面図である。
【
図11】ベルトクリーニング装置における端部シールの近傍の側面図である。
【
図12】他の例のドラムカートリッジの概略断面図である。
【
図13】クリーニングブレードの捲れを説明するための断面図である。
【
図14】他の例のドラムカートリッジのハウジングの側面図である。
【
図15】内側シートの構成及び配置を説明するための断面図である。
【
図16】内側シートの撓み反力を説明するためのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るクリーニング装置及び画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0023】
[実施例1]
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置の概略断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる、中間転写方式を採用したタンデム型の画像形成装置(フルカラーレーザービームプリンター)である。
【0024】
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色のトナー像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部GY、GM、GC、GKを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部GY、GM、GC、GKにおいて、同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。本実施例では、画像形成部Gは、後述する感光ドラム101、帯電ローラ102、露光装置103、現像装置104、一次転写ローラ105、クリーニング装置106を有して構成される。
【0025】
第1の像担持体としての、ドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム101は、所定の周速度(プロセススピード)で
図1中の時計回り方向に回転駆動される。感光ドラム101は、本実施例におけるクリーニング装置の清掃対象を構成する回転可能な回転体の一例である。本実施例では、感光ドラム101は、円筒状のアルミニウムシリンダの外周面に帯電極性が負極性である感光層が形成されて構成されている。感光ドラム101には、画像形成装置100の装置本体110に設けられた駆動手段を構成する駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達される。回転する感光ドラム101の表面(外周面)は、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ102によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電処理される。帯電ローラ102は、感光ドラム101の表面に例えばバネなどの付勢手段によって所定の押圧力で押圧されて接触させられており、感光ドラム101の回転に伴って従動回転する。帯電処理時に、帯電ローラ102には、高圧電源である帯電電源(図示せず)から所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。また、本実施例では、帯電クリーニング手段としてのローラ状の帯電クリーニング部材であるクリーニングローラ113(
図3)が帯電ローラ102に接触して配置されている。クリーニングローラ113は、帯電ローラ102の表面に例えばバネなどの付勢手段によって所定の押圧力で押圧されて接触させられており、帯電ローラ102の回転に伴って従動回転する。
【0026】
帯電処理された感光ドラム101の表面は、露光手段(静電潜像形成手段)としての露光装置(レーザースキャナー装置)103によって画像情報に従って走査露光され、感光ドラム101上に静電潜像(静電像)が形成される。画像情報は、例えば画像形成装置100に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部装置から画像形成装置100に伝送される。露光装置103は、レーザービームを、回転ミラーを用いて走査して、一様に帯電処理された感光ドラム101の表面に照射することで、画像情報に応じた静電潜像を感光ドラム101上に書き込む。本実施例では、露光装置103は、各感光ドラム101Y、101M、101C、101Kを露光可能な1つのユニットとして構成されている。感光ドラム101上に形成された静電潜像は、現像手段としての現像装置104によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム101上にトナー像が形成される。本実施例では、現像装置104は、トナー(非磁性トナー粒子)とキャリア(磁性キャリア粒子)とを含む二成分現像剤を用いて、感光ドラム101上の静電潜像にトナーを付着させることで、静電潜像を現像する。現像時に、現像装置104が備えた現像剤担持体としての現像スリーブには、高圧電源である現像電源から所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。また、本実施例では、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム101上の露光部(イメージ部)に、感光ドラム101の帯電極性と同極性に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。現像装置104には、トナー容器としてのトナーボトル150からトナー搬送路(図示せず)を介してトナーが補給される。
【0027】
各画像形成部Gの各感光ドラム101と対向するように、第2の像担持体としての、無端状のベルトで構成された中間転写体である中間転写ベルト107が配置されている。中間転写ベルト107は、複数の張架ローラ(支持ローラ)としての二次転写対向ローラ171、二次転写前ローラ172及びテンションローラ173に掛け渡されて所定の張力(テンション)で張架されている。中間転写ベルト107は、ポリイミドなどの誘電体樹脂によって無端状に形成されている。中間転写ベルト107は、駆動ローラの機能を有する二次転写対向ローラ171が回転駆動されることで、感光ドラム101の周速度とほぼ同じ周速度(プロセススピード)で
図1中の反時計回り方向に回転(周回移動)する。二次転写対向ローラ171には、装置本体110に設けられた駆動手段を構成するベルト駆動モータ(図示せず)から駆動力が伝達される。中間転写ベルト107の内周面側には、各感光ドラム101に対応して、一次転写手段としてのローラ状の一次転写部材である一次転写ローラ105が配置されている。一次転写ローラ105は、中間転写ベルト107の内周面を感光ドラム101に向けて押圧して、感光ドラム101と中間転写ベルト107とが接触する一次転写部(一次転写ニップ部)N1を形成する。二次転写対向ローラ171以外の張架ローラ及び各一次転写ローラ105は、中間転写ベルト107の回転に伴って従動回転する。感光ドラム101上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ105によって所定の加圧力及び静電的負荷バイアスが付与されることで、回転している中間転写ベルト107上に転写(一次転写)される。一次転写時に、一次転写ローラ105には、高圧電源である一次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である一次転写電圧(一次転写バイアス)が印加される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム101上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、重ね合わせるようにして中間転写ベルト107上に順次転写される。
【0028】
中間転写ベルト107の外周面側において、二次転写対向ローラ171と対向する位置には、二次転写手段としてのローラ状の二次転写部材である二次転写ローラ108が配置されている。二次転写ローラ108は、二次転写対向ローラ171に向けて押圧され、中間転写ベルト107を介して二次転写対向ローラ171に当接して、中間転写ベルト107と二次転写ローラ108とが接触する二次転写部(二次転写ニップ部)N2を形成する。中間転写ベルト107上に形成されたトナー像は、二次転写部N2において、所定の加圧力と静電的負荷バイアスが付与されることで、中間転写ベルト107と二次転写ローラ108とに挟持されて搬送される紙などの記録材P上に転写(二次転写)される。二次転写時に、二次転写ローラ108には、高圧電源である二次転写電源(図示せず)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧である二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。記録材(転写材、記録媒体、用紙、シート)Pは、記録材収容部としての記録材カセット121に収容されている。記録材Pは、記録材カセット121から給送部材としての給送ローラ122などによって1枚ずつ給送され、搬送部材としての搬送ローラ対123などによって、搬送部材としてのレジストローラ対124へと搬送される。この記録材Pは、搬送方向の先端がレジストローラ対124のニップ部に倣わせられるようにしてループが形成されることで、斜行が修正される。その後、この記録材Pは、レジストローラ対124によって、中間転写ベルト107上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部N2へと搬送される。記録材カセット121、給送ローラ122、搬送ローラ対123、レジストローラ対124などによって、給搬送装置120が構成される。
【0029】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置109へと搬送される。定着装置109は、熱源を備えた定着ローラ191と、定着ローラ191に圧接する加圧ローラ192と、によって、未定着のトナー像を担持した記録材Pを加熱及び加圧することで、トナー像を記録材Pに定着(溶融、固着)させる。トナー像が定着された記録材Pは、排出部材としての排出ローラ対131などによって、排出部としての排出トレイ132上に排出(出力)される。
【0030】
一方、一次転写後に感光ドラム101上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、クリーニング手段としてのクリーニング装置(ドラムクリーニング装置)106によって、感光ドラム101上から除去されて回収される。また、中間転写ベルト107の外周面側において、テンションローラ173と対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置140が配置されている。つまり、ベルトクリーニング装置140は、中間転写ベルト107の表面の移動方向(回転方向)に関して、二次転写部N2よりも下流側かつ一次転写部N1(最上流の一次転写部N1Y)よりも上流側に配置されている。二次転写後に中間転写ベルト107上に残留したトナー(二次転写残トナー)や紙粉などの付着物は、ベルトクリーニング装置140によって、中間転写ベルト107上から除去されて回収される。各クリーニング装置106及びベルトクリーニング装置140に回収された残トナーなどの回収物は、廃トナー搬送部(図示せず)を介して廃トナー回収容器(図示せず)へと搬送されて回収される。廃トナー回収容器は、例えば、満杯になった場合などに空の廃トナー回収容器と交換される。
【0031】
本実施例では、クリーニング装置106は、ブレードクリーニング方式のものである。本実施例では、クリーニング装置106は、クリーニング部材として弾性ゴム材料で形成されたクリーニングブレード1(
図3)を有し、そのクリーニングブレード1の自由端部のエッジ部が感光ドラム101の表面に所定の加圧力で当接させられている。そして、クリーニング装置106は、このクリーニングブレード1によって、回転する感光ドラム101の表面から一次転写残トナーを掻き取って回収する。なお、感光ドラム101は円筒状であり、回転軸線方向の長さは処理する記録材P、画像の大きさにより決まり、おおむねA3サイズの用紙を処理する画像形成装置では約350mm程度となっている。クリーニングブレード1の長手方向の長さもA3サイズの記録材Pの短辺側の長さに近い320mm程度に設定されている。クリーニング装置106については後述して更に詳しく説明する。また、本実施例では、ベルトクリーニング装置140も同様に、ブレードクリーニング方式のものである。本実施例では、ベルトクリーニング装置140は、クリーニング部材としての弾性ゴム材料で形成されたクリーニングブレードを有し、そのクリーニングブレードの自由端部のエッジ部が中間転写ベルト107の表面に所定の加圧力で当接させられている。そして、ベルトクリーニング装置140は、このクリーニングブレードによって、回転する中間転写ベルト107の表面から二次転写残トナーなどの付着物を掻き取って回収する。
【0032】
本実施例では、各画像形成部Gにおいて、感光ドラム101、帯電ローラ102、クリーニング装置106は、一体的に装置本体110に対して着脱可能なドラムカートリッジ(プロセスカートリッジ)111を構成している。本実施例では、ドラムカートリッジ111には更に、クリーニングローラ113が設けられている。また、本実施例では、各画像形成部Gにおいて、現像装置104は、実質的に単独で装置本体110に対して着脱可能とされている。また、本実施例では、中間転写ベルト107、張架ローラ171~173、各一次転写ローラ106、ベルトクリーニング装置140は、一体的に装置本体110に対して着脱可能な中間転写ベルトユニット112を構成している。なお、本実施例では、ベルトクリーニング装置140は、中間転写ベルトユニット112に対して着脱可能とされている。
【0033】
2.ドラムカートリッジ
次に、
図2及び
図3を参照して、本実施例におけるドラムカートリッジ111について説明する。
図2は、本実施例におけるドラムカートリッジ111の外観斜視図である。また、
図3は、
図2中の矢印A-A方向に見た概略断面図(感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する断面)である。ここでは、画像形成装置100及びその要素に関して、
図1の紙面手前側を「手前側」、紙面奥側を「奥側」とする。この手前側と奥側とを結ぶ前後方向は、感光ドラム101の回転軸線方向と略平行であるものとする。また、ドラムカートリッジ111及びその要素(クリーニング装置106及びその要素など)に関して、感光ドラム101の回転軸線方向(感光ドラム101の表面の移動方向と略直交する幅方向)と略平行な方向を単に「長手方向」ともいう。また、画像形成装置1及びその要素に関して、上下方向は、通常の使用状態と同様に配置された場合における、重力方向(鉛直方向)の上下方向を言うものである。ただし、その上下方向は、それぞれ直上、直下のみを意味するものではなく、注目する要素又は位置を通る水平面より上側、下側を含むものである。
【0034】
ドラムカートリッジ111は、感光ドラム101、帯電ローラ102、クリーニング装置106、クリーニングローラ113などが、ハウジング(ケース(筐体)、枠体(フレーム)、クリーニング容器)5に保持されることで一体化されている。なお、ハウジング5は単一の部材で構成されていても、複数の部材が適宜の固定手段を用いて連結されて構成されていてもよい。
【0035】
ドラムカートリッジ111は、一体的に装置本体110に対して着脱可能なように構成されている。本実施例では、ドラムカートリッジ111は、その長手方向に沿って手前側に向けてスライドさせて装置本体110から取り外し、奥側に向けてスライドさせて装置本体110に装着するように構成されている。ドラムカートリッジ111は、メンテナンスや交換などのために装置本体110に対して着脱される。また、ドラムカートリッジ111の交換は、例えば、感光ドラム101が寿命に達した場合などに行われる。
【0036】
本実施例では、感光ドラム101は、外径が30mm、回転軸線方向の長さが360mmのアルミニウム製シリンダー上に、厚さが約30μmの有機感光層が設けられたものである。感光ドラム101は、その回転軸線方向の両端部において、ドラム軸受部材(図示せず)を介してその回転軸線を中心にして回転可能なようにハウジング5に保持されている。感光ドラム101には、ドラムカートリッジ111が装置本体110に装着された状態で、装置本体110に設けられた駆動源としての駆動モータから駆動力を受け取るためのカップリング(図示せず)が設けられている。画像形成時に、感光ドラム101は、
図3中の矢印R方向(時計回り方向)に回転駆動される。
【0037】
帯電ローラ102は、その回転軸線方向の両端部において、その回転軸が帯電ローラ軸受部材(図示せず)に保持されることによって、その回転軸線を中心にして回転可能なようにハウジング5に支持されている。帯電ローラ軸受部材は、ハウジング5に対してスライド移動可能なようにハウジング5に支持されている。また、ハウジング5と帯電ローラ軸受部材との間には付勢手段としての帯電ローラ加圧バネ(図示せず)が設けられている。この帯電ローラ加圧バネによって、帯電ローラ102は、感光ドラム101に加圧されて接触している。
【0038】
クリーニングローラ113は、その回転軸線方向の両端部において、その回転軸がクリーニングローラ軸受部材(図示せず)に保持されることによって、その回転軸線を中心にして回転可能なようにハウジング5に支持されている。クリーニングローラ軸受部材は、帯電ローラ軸受部材に対してスライド移動可能なように帯電ローラ軸受部材に支持されている。また、帯電ローラ軸受部材とクリーニングローラ軸受部材との間には付勢手段としてのクリーニングローラ加圧バネ(図示せず)が設けられている。このクリーニングローラ加圧バネによって、クリーニングローラ113は、帯電ローラ102に加圧されて接触している。
【0039】
ドラムカートリッジ111が装置本体110に装着されると、感光ドラム101に設けられたカップリングが、装置本体110に設けられたカップリングなどを介して、装置本体110に設けられた駆動源と連結される。感光ドラム101が装置本体110に設けられた駆動源から駆動力を受けて回転すると、帯電ローラ102は感光ドラム101との摩擦力によって従動回転する。また、帯電ローラ102が回転すると、クリーニングローラ113は帯電ローラ102との摩擦力によって従動回転する。また、ドラムカートリッジ111が装置本体110に装着されると、ドラムカートリッジ111に設けられた電気接点部と、装置本体110に設けられた電気接点部とが電気的に接続される。これにより、帯電ローラ102に帯電電圧を印加することが可能となる。
【0040】
3.クリーニング装置
次に、
図3を参照して、本実施例におけるクリーニング装置106について説明する。
【0041】
クリーニング装置106は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード1と、クリーニングブレード1を支持する支持部材としての支持板2と、を有する。本実施例では、クリーニングブレード1と、支持板2と、を有して、ブレードアッシー(ブレード組立体、ブレードユニット)10が構成される。また、クリーニング装置106は、ハウジング5によって形成される回収トナー収容部51と、回収トナー収容部51内に配置された搬送部材としての搬送スクリュー(搬送コイル)7と、を有する。なお、クリーニング装置106からトナーが漏れることを抑制するためにクリーニング装置106に設けられる封止部材については後述する。
【0042】
クリーニングブレード1は、矢印Rで示す感光ドラム101の表面の移動方向(回転方向)と略直交する幅方向(回転軸線方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。つまり、クリーニングブレード1は、平面視略矩形の板状(ブレード状)の部材である。本実施例では、クリーニングブレード1は、弾性体(弾性部材)であるウレタンゴム(ポリウレタン)で形成されている。本実施例では、クリーニングブレード1は、厚さ2mmのウレタンゴム製の板材を、14mm(短手方向)×325mm(長手方向)程度にカットして形成されている。クリーニングブレード1は、その短手方向の一方(図中上方)の端部である先端部(自由端部)のエッジ部Ebが感光ドラム101の表面に当接するように、矢印Rで示す感光ドラム101の表面の移動方向に対してカウンター方向に配置される。つまり、クリーニングブレード1は、その短手方向における先端部(自由端部)が、感光ドラム101の表面の移動方向の上流側を向くように配置される。本実施例では、クリーニングブレード1を支持する支持板2は、クリーニングブレード1の感光ドラム101に対する侵入量が所定の侵入量となるようにハウジング5に固定される。これにより、クリーニングブレード1は、エッジ部Ebが感光ドラム101の表面に押し付けられて撓ませられることで、クリーニングブレード1が所定の当接圧で感光ドラム101と当接する。クリーニングブレード1は、その長手方向に沿って延びるエッジ部Ebが、感光ドラム101の回転軸線方向に整列して押圧されて、感光ドラム101上の残トナーを除去する。
【0043】
支持板2は、その長手方向と略直交する断面が略L字状になるように板金(金属板)を曲げることで形成されている。本実施例では、支持板2は、厚さ2mmの板金(本実施例では亜鉛めっき鋼板)で形成されている。つまり、支持板2は、第1の平坦部(平面部)21と、第2の平坦部(平面部)22と、を有するように板金が屈曲させられて形成されている。第1の平坦部21は、その面方向が感光ドラム101の回転軸線方向と略平行に配置される。第2の平坦部22は、第1の平坦部21から該第1の平坦部21と交差(本実施例では略直交)する方向に延び、その面方向が感光ドラム101の回転軸線方向と略平行に配置される。本実施例では、第2の平坦部22は、第1の平坦部21から感光ドラム101側とは反対側に延びるように配置される。支持板2は、上述のように曲げられることで剛性が高められている。クリーニングブレード1は、その短手方向における先端部(自由端部)とは反対側(図中下方)の端部である基端部(固定端部)が、支持板2(第1の平坦部21の短手方向における第2の平坦部22側とは反対側の端部側の一部)に接着により固定される。クリーニングブレード1の短手方向の先端部側の一部は、該短手方向に関して支持板2から感光ドラム101側に突出している。本実施例では、クリーニングブレード1は、支持板2から短手方向の先端部を8mm(自由長)突出させた状態で支持板2に固定されている。支持板2(第1の平坦部21及び第2の平坦部22)の長手方向の長さは、クリーニングブレード1の長手方向の長さと同等とされている。そして、クリーニングブレード1が固定された支持板2は、ビス20によってハウジング5に固定されている。ビス20は、支持板2の長手方向に複数配置されている。
【0044】
クリーニングブレード1によって感光ドラム101の表面から掻き取られた残トナーは、回収トナー収容部51に収容される。回収トナー収容部51は、ハウジング5のクリーニングブレード1を挟んで感光ドラム101側とは反対側の近傍に設けられている。回収トナー収容部51に収容されたトナー(回収トナー)は、回収トナー収容部51の内部を、搬送スクリュー7によって搬送される。本実施例では、回収トナー収容部51内の回収トナーは、感光ドラム101の回転軸線方向(クリーニング装置106の長手方向)に沿って、回収トナー収容部51の一端部(例えば手前側の端部)に向けて搬送される。このように、本実施例では、クリーニング装置106(ドラムカートリッジ111)は、回収トナー収容部51の内部にクリーニングブレード1によって感光ドラム101から除去された回収トナーが一時的に滞留するように構成されている。
【0045】
本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向の端部には、感光ドラム101の回転軸線を中心として感光ドラム101と一体で回転するように固定された回転部材としてのギヤ(図示せず)が設けられている。感光ドラム101が回転すると、感光ドラム101と一体で回転する上記ギヤの回転力が、搬送スクリュー7に伝達される。これにより、搬送スクリュー7が回転し、回収トナー収容部51内の回収トナーを搬送することが可能となっている。ハウジング5の上記一端部の壁部には排出口(図示せず)が形成されている。これにより、回収トナー収容部51の内部を搬送された回収トナーは、該排出口を介して回収トナー収容部51(クリーニング装置106)の外部へと排出される。回収トナー収容部51から排出された回収トナーは、前述のように、装置本体110に設けられた廃トナー搬送部(図示せず)を搬送されて廃トナー回収容器(図示せず)に貯留される。そして、廃トナー回収容器内が回収トナーで満たされると、廃トナー回収容器ごと交換される。なお、上記ハウジング5に設けられた排出口は、ドラムカートリッジ111が装置本体110に装着されると、装置本体110に設けられた廃トナー搬送部と接続されるようになっている。
【0046】
4.封止部材
次に、
図4~
図6を参照して、本実施例におけるクリーニング装置106に設けられる封止部材について説明する。
図4は、ドラムカートリッジ111を感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する方向に感光ドラム101側から見た模式的な側面図である。
図5は、
図4中の矢印B-B方向に見たクリーニングブレード1の近傍の概略断面図(感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する断面)である。
図6は、クリーニングブレード1の長手方向の端部近傍を感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する方向に感光ドラム101側から見た模式的な側面図である。なお、
図6には、クリーニングブレード1の長手方向の一方(手前側)の端部側の構成のみが示されているが、本実施例では他方の端部側の構成も同様(クリーニングブレード1の長手方向の中央に対して略対称)である。
【0047】
上述のように、クリーニング装置106(ドラムカートリッジ111)は、回収トナー収容部51の内部に回収トナーが一時的に滞留するように構成されている。そのため、回収トナー収容部51の内部から外部に回収トナーが漏出しないようにするために、クリーニング装置106には複数の封止部材が設けられている。本実施例では、クリーニング装置106は、封止部材として、飛散防止シート11、端部シール12及び内側シール13を有する。
【0048】
まず、
図4~
図6に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、飛散防止シート11が設けられている。飛散防止シート11は、シート状の弾性体で形成された封止部材である封止シートの一例である。飛散防止シート11は、感光ドラム101の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1よりも上流側で感光ドラム101の回転軸線方向に沿って感光ドラム101の表面に接触するように、クリーニングブレード1と対向して配置されている。そして、飛散防止シート11は、感光ドラム101の表面の移動方向(
図3中の矢印R方向)に関してクリーニングブレード1よりも上流側のハウジング5の開口部からの回収トナーの漏出(逆流)を抑制することができる。
【0049】
飛散防止シート11は、感光ドラム101の表面の移動方向と略直交する幅方向(回転軸線方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。つまり、飛散防止シート11は、平面視略矩形のシート状の部材である。飛散防止シート11は、その短手方向の一方(図中下方)の端部である先端部(自由端部)が、感光ドラム101の回転軸線方向に沿って、所定の接触圧で感光ドラム101に接触する。また、飛散防止シート11は、その短手方向の先端部(自由端部)とは反対側(図中上方)の端部である基端部(固定端部)が、ハウジング5に例えば両面テープにより固定されている。飛散防止シート11は、その短手方向の先端部が感光ドラム101に接触するようにハウジング5の縁部から突き出した状態でハウジング5に固定されている。飛散防止シート11は、その短手方向における先端部が、感光ドラム101の表面の移動方向の下流側を向くように配置されており、基本的には、感光ドラム101上の残トナーを掻き取らないように構成されている。
【0050】
飛散防止シート11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン樹脂などの樹脂で形成される。本実施例では、飛散防止シート11は、PETで形成されている。飛散防止シート11の厚さは、例えば、50~100μm程度とされる。本実施例では、飛散防止シート11の厚さは100μm程度とされている。
【0051】
図4に示すように、本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、クリーニングブレード1の長さL1よりも、飛散防止シート11の長さL2の方が長い。そして、飛散防止シート11は、クリーニングブレード1の長手方向に沿って、クリーニングブレード1の全域にわたってクリーニングブレード1と対向し、クリーニングブレード1の長手方向の両端部側においてクリーニングブレード1の外側まで延びている。
【0052】
また、
図4~
図6に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、クリーニングブレード1の長手方向の両端部に隣接して、それぞれ端部シール12が設けられている。端部シール12は、封止対象の隙間を埋めるように圧縮されて用いられる、発泡弾性体などの弾性体で形成された封止部材である弾性シール部材の一例である。本実施例では、端部シール12は、ハウジング5と後述する内側シール13との上に跨って配置されている。そして、端部シール12は、飛散防止シート11とハウジング5との間の隙間、感光ドラム101とハウジング5との間の隙間を封止することができる。本実施例では、端部シール12は、クリーニングブレード1の長手方向の端部において、感光ドラム101、飛散防止シート11、及びクリーニングブレード1の端面に接触するように配置されている。そして、端部シール12は、感光ドラム101との間で飛散防止シート11を挟み込んで押圧する。また、端部シール12は、感光ドラム101及び飛散防止シート11側とは反対側の面において、後述する内側シール13とハウジング5とに例えば両面テープにより固定されることで、ハウジング5に固定されている。
【0053】
端部シール12は、例えば、発泡弾性体としての発泡ウレタンゴム、封止対象に接触する表面にブラシ状の部材(植毛布など)が取り付けられた発泡弾性体などの弾性材料で形成される。本実施例では、端部シール12は、発泡ウレタンゴムで形成されている。端部シール12の厚さは、例えば、1~5mm程度とされる。
【0054】
図6に示すように、本実施例では、端部シール12は、飛散防止シート11の感光ドラム101側(回転体側)とは反対側の面に接触する第1接触部12aと、感光ドラム101の表面に接触する第2接触部12bと、を有する。第1接触部12a及び第2接触部12bは、感光ドラム101の表面及び飛散防止シート11の面に沿って延在する面で構成されている。また、本実施例では、端部シール12は、クリーニングブレード1の長手方向の端部において、クリーニングブレード1の短手方向に延びる端面(ここでは「側端面」ともいう。)1aに接触する第3接触部12cを有する。また、端部シール12は、クリーニングブレード1の長手方向の端部において、クリーニングブレード1の長手方向に延在する、クリーニングブレード1の先端部側の端面(ここでは「先端面」ともいう。)1bに接触する第4接触部12dを有する。第3接触部12c及び第4接触部12dは、クリーニングブレード1の厚さ方向に延在する面で構成されている。また、第3接触部12cは、クリーニングブレード1の側端面1aと先端面1bとが接する稜線1cから、クリーニングブレード1の短手方向に沿ってクリーニングブレード1の基端部側の、側端面1aの少なくとも一部の領域に接触する。また、第4接触部12dは、上記稜線1cから、クリーニングブレード1の長手方向に沿ってクリーニングブレード1の中央側の、先端面1aの一部に接触する。
【0055】
本実施例では、端部シール12における、感光ドラム101の表面の移動方向に関して飛散防止シート11とオーバーラップする部分の、感光ドラム101の回転軸線方向の幅W1の全体が、飛散防止シート11の内側に配置されている。つまり、本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、端部シール12の第1接触部12aの外側の端部から飛散防止シート11の端部までの長さL3は、0mmより大きく設定されている。なお、これに限定されるものではないが、この長さL3は5mm以下程度であり、典型的には3mm以下である。また、本実施例では、端部シール12における、感光ドラム101の表面の移動方向に関して飛散防止シート11とオーバーラップしない部分の、感光ドラム101の回転軸線方向の幅は、次のようになっている。すなわち、感光ドラム101の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1とオーバーラップしない部分は、上記幅W1と同じ幅W1とされている。また、感光ドラム101の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1とオーバーラップする部分は、上記幅W1よりも小さい幅W2とされている。このように、本実施例では、端部シール12は、感光ドラム101の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1とオーバーラップする部分が一部切り欠かれるようにして、上記第3接触部12c及び第4接触部12dが形成されている。つまり、本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、第1接触部12aの内側の端部がクリーニングブレード1の側端面1aよりも内側に張り出している長さL4は、0mmより大きく設定されている。なお、これに限定されるものではないが、この長さL4は5mm以下程度であり、典型的には3mm以下である。
【0056】
さらに、
図4~
図6に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、クリーニングブレード1の長手方向の両端部に隣接して、それぞれ内側シール13が設けられている。内側シール13は、封止対象の隙間を埋めるように圧縮されて用いられる、発泡弾性体などの弾性体で形成された封止部材である弾性シール部材の一例である。本実施例では、内側シール13は、クリーニングブレード1の感光ドラム101側とは反対側の面と、端部シール12の感光ドラム101側とは反対側の面(本実施例では特に上記第2接触部12bの反対側の面)と、に接触する。そして、内側シール13は、ハウジング5とクリーニングブレード1との間の隙間、端部シール12とハウジング5との間の隙間を封止することができる。内側シール13は、感光ドラム101及び端部シール12側とは反対側の面において、ハウジング5に例えば両面テープにより固定されている。
【0057】
内側シール13は、端部シール12と同様の材料、例えば、発泡弾性体としての発泡ウレタンゴム、封止対象に接触する表面にブラシ状の部材(植毛布など)が取り付けられた発泡弾性体などの弾性材料で形成される。本実施例では、内側シール13は、発泡ウレタンゴムで形成されている。内側シール13の厚さは、例えば、1~5mm程度とされる。
【0058】
このように、クリーニング装置106に封止部材が配置されていることによって、クリーニングブレード1の長手方向の両端部と、クリーニングブレード1の図中上方と、を封止することができる。これによって、クリーニング装置106の外部へのトナーの漏出が抑制されている。
【0059】
ここで、端部シール12は、封止性を確保するために、封止する隙間以上の厚みの弾性体で形成され、圧縮されて配置されている。そのため、飛散防止シート11の長手方向の端部における端部シール12が接触する部分では、端部シール12の押圧力によって飛散防止シート11の感光ドラム101に対する接触圧が上がる。そして、端部シール12によって押圧される飛散防止シート11の長手方向の端部では、飛散防止シート11によって感光ドラム101上の残トナーを掻き取るようになる。このとき、端部シール12が詳しくは後述する本実施例の構成とされていない場合には、飛散防止シート11によって掻き取られたトナーは、飛散防止シート11と感光ドラム101との接触部で滞留を起こす。この滞留したトナーは、感光ドラム101の回転に巻き込まれて、飛散防止シート11と感光ドラム101との接触部を越えて、感光ドラム101の表面の移動方向(
図3中の矢印R方向)の下流側に徐々に侵入していくことがある。このトナーが端部シール12と感光ドラム101との接触部に入り込み、最終的にはクリーニング装置106の外部へと漏出してしまうことがある。
【0060】
5.端部シールの形状
次に、本実施例における端部シール12の詳細な構成について説明する。
【0061】
まず、前述の従来の構成で起こり得るトナーの漏出の原因について更に説明する。
図7は、端部シール12が後述する本実施例の構成とされていない場合の端部シール12の近傍のトナーの挙動を説明するための
図6と同様の図である。
図7に示すように、従来、一般に、端部シール12(第1接触部12a)の感光ドラム101の表面の移動方向の上流側の端部(ここでは「上流端部」ともいう。)12uは、感光ドラム101の回転軸線方向(幅方向)と略平行とされている。そのため、端部シール12によって押圧されて感光ドラム101に対する接触圧が上がる飛散防止シート11の部分の、感光ドラム101の表面の移動方向の上流側の端部は、感光ドラム101の回転軸線方向と略平行となる。これにより、飛散防止シート11によって掻き取られたトナーTの行き場がなく、このトナーTが飛散防止シート11と感光ドラム101との接触部に滞留してしまう。そして、この滞留したトナーTが、感光ドラム101の回転に伴って、飛散防止シート11と感光ドラム101との接触部を越えて感光ドラム101の表面の移動方向の下流側に徐々に侵入し、端部シール12と感光ドラム101との接触部に入り込むようになる。
【0062】
そこで、本実施例では、
図6に示すように、端部シール12(第1接触部12a)の感光ドラム101の表面の移動方向の上流側の端部(「上流端部」)12uを、感光ドラム101の回転軸線方向(幅方向)の端部側から中央側に向かう方向の下流側に行くほど感光ドラム101の表面の移動方向の下流側に位置するように、感光ドラム101の回転軸線方向(幅方向)に対して傾斜させる。つまり、端部シール12の上流端部12uを、感光ドラム101の表面の移動方向の上流側から下流側へと、感光ドラム101の回転軸線方向(幅方向)の端部側から中央側に向かって飛散防止シート11との接触部が順次移行するような傾斜部12iを有する形状とする。
【0063】
このように、本実施例では、端部シール12の上流端部12uが感光ドラム101の回転軸線方向に対して傾斜している。そのため、端部シール12によって押圧されて感光ドラム101に対する接触圧が上がる飛散防止シート11の部分の、感光ドラム101の表面の移動方向の上流側の端部も、端部シール12の上流端部12uの傾斜に沿って傾斜している。これにより、飛散防止シート11によって掻き取られたトナーTは、感光ドラム101の回転に伴って感光ドラム101の表面の移動方向の下流側に移動しながら、端部シール12の上流端部12uの傾斜に沿って感光ドラム101の回転軸線方向の端部側から中央側へと移動しやすくなる(
図6中の矢印Ts)。そのため、飛散防止シート11によって掻き取られたトナーTは、飛散防止シート11と感光ドラム101との接触部において滞留を起こしにくくなる。そして、このトナーTは、端部シール12に対応する位置よりも感光ドラム101の回転軸線方向の中央側に至ると、飛散防止シート11によって堰き止められなくなる。その後、このトナーTは、感光ドラム101の回転に伴ってクリーニングブレード1と感光ドラム101との接触部へと搬送され、クリーニングブレード1によって掻き取られて回収トナー収容部51の内部へと回収される。
【0064】
本実施例では、前述のように、感光ドラム101の表面の移動方向に関して飛散防止シート11とオーバーラップする端部シール12の部分の、感光ドラム101の回転軸線方向の幅W1の全体が、飛散防止シート11の内側に配置されている。言い換えると、本実施例では、感光ドラム101の表面の移動方向に関して飛散防止シート11とオーバーラップする端部シール12の部分の全体が、感光ドラム101に対して飛散防止シート11で覆われている。つまり、本実施例では、端部シール12(第1接触部12a)は、感光ドラム101の回転軸線方向の幅W1の全域で飛散防止シート11に接触して、飛散防止シート11を感光ドラム101に向けて押圧している。斯かる構成により、端部シール12の飛散防止シート11に対する接触面積を確保して、回収トナー収容部51の内部から外部にトナーが漏出しやすくなることを抑制することができる。また、斯かる構成により、残トナーが直接端部シール12に巻き込まれることもない。
【0065】
そして、本実施例では、このように飛散防止シート11に接触して飛散防止シート11を感光ドラム101に向けて押圧する端部シール12の上流端部12uの全域が、上述のように傾斜している。これにより、飛散防止シート11によって掻き取られたトナーは、飛散防止シート11と感光ドラム101との接触部で滞留を起こさずに、上流端部12uの傾斜に沿ってクリーニングブレード1側へ移動して回収されやすくなる。
【0066】
端部シール12の上流端部12uの感光ドラム101の回転軸線方向に対する傾斜角θiは、飛散防止シート11によって掻き取られたトナーの滞留を十分に抑制できるように適宜設定することができる。この傾斜角θiは、感光ドラム101の表面の移動方向に関して飛散防止シート11とオーバーラップしている端部シール12の領域(第1接触部12a)内に上流端部12uの傾斜の全域が収まるように設定することができる。なお、これに限定されるものではないが、この傾斜角θiは、10度以上とすることが好適である。また、この傾斜角θiは、45度以下で十分であることが多く、典型的には30度以下である。また、本実施例では、端部シール12の上流端部12uは、直線状に傾斜しているが、例えば
図8(a)、(b)に示すように、感光ドラム101の表面の移動方向の上流側又は下流側に凸となるような曲線状に傾斜(傾斜角が連続的に変化)していてもよい。
【0067】
また、本実施例では、前述のように、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、端部シール12の第1接触部12aの内側の端部は、クリーニングブレード1の側端面1aよりも長さL4分だけ内側に張り出している。つまり、本実施例では、端部シール12(上流端部12u)は、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、クリーニングブレード1の端部と一部がオーバーラップしている。そのため、上述のように端部シール12の上流端部12uの傾斜に沿って移動して端部シール12に対応する位置よりも感光ドラム101の回転軸線方向の中央側に至ったトナーTは、より確実にクリーニングブレード1によって掻き取られるようになる。これにより、クリーニングブレード1の側端面1aと端部シール12との間の隙間からトナーが漏出することなどを抑制することができる。なお、本実施例とは異なり、端部シール12がクリーニングブレード1とオーバーラップしていない場合には、トナーTがクリーニングブレード1の側端面1aと端部シール12との間の隙間に入りやすくなることがある。
【0068】
以上説明したように、本実施例によれば、飛散防止シート11の端部シール12によって押圧される部分によって感光ドラム101上から掻き取られたトナーがクリーニング装置106の外部へと漏出することを抑制することが可能となる。
【0069】
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0070】
実施例1では、回転体としての感光体のクリーニング手段であるクリーニング装置106に関して説明したが、同様の構成を回転体としての中間転写体のクリーニング手段であるベルトクリーニング装置140(
図1)に適用することもできる。
【0071】
1.ベルトクリーニング装置
図9は、本実施例におけるベルトクリーニング装置140及びその周辺部品を示す断面図(テンションローラ173の回転軸線方向と略直交する断面)である。なお、ベルトクリーニング装置140において、実施例1におけるクリーニング装置106のものと対応する機能あるいは構成を有する要素については、200番台の対応する符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0072】
本実施例では、クリーニングブレード201は、テンションローラ173にバックアップされた中間転写ベルト107の表面に当接し、中間転写ベルト107上の残トナーを除去する。本実施例では、クリーニングブレード201は、板状の弾性体によって形成されて支持板202を介してハウジング205に固定されている。本実施例では、クリーニングブレード201と、支持板202と、を有してブレードアッシー210が構成される。クリーニングブレード201は、長手方向に沿って延びるエッジ部Ebが中間転写ベルト107の表面の移動方向と略直交する幅方向(テンションローラ173の回転軸線方向)に整列して、中間転写ベルト107を介してテンションローラ173に押圧される。
【0073】
二次転写部N2において記録材Pにトナー像を転写した後、中間転写ベルト107上に残留した残トナーは、
図9中の矢印R方向に回転する中間転写ベルト107と共に、ベルトクリーニング装置140へと運ばれてくる。中間転写ベルト107上の残トナーは、クリーニングブレード201によって中間転写ベルト107上から除去されてハウジング205の回収トナー収容部251に収容される。回収トナーは、回収トナー収容部251内の搬送スクリュー(搬送コイル)207によって例えば
図9の紙面手前方向に搬送され、ハウジング205(ベルトクリーニング装置140)から排出される。ベルトクリーニング装置140から排出された回収トナーは、装置本体110に設けられた廃トナー搬送部(図示せず)を搬送されて廃トナー回収容器(図示せず)に貯留される。このように、本実施例では、ベルトクリーニング装置140は、回収トナー収容部251の内部にクリーニングブレード201によって中間転写ベルト107から除去された回収トナーが一時的に滞留するよう構成されている。
【0074】
2.封止部材
図10は、ベルトクリーニング装置140を中間転写ベルト107の幅方向と略直交する方向に中間転写ベルト107側から見た模式的な側面図である。
図11は、クリーニングブレード201の長手方向の端部近傍を中間転写ベルト107の幅方向と略直交する方向に中間転写ベルト107側から見た模式的な側面図である。なお、
図11には、クリーニングブレード201の長手方向の一方(手前側)の端部側の構成のみが示されているが、本実施例では他方の端部側の構成も同様(クリーニングブレード201の長手方向の中央に対して略対称)である。
【0075】
上述のように、ベルトクリーニング装置140は、回収トナー収容部251の内部に回収トナーが一時的に滞留するように構成されている。そのため、回収トナー収容部251の内部から外部に回収トナーが漏出しないようにするために、ベルトクリーニング装置140には複数の封止部材が設けられている。本実施例では、ベルトクリーニング装置140は、封止部材として、実施例1のクリーニング装置106におけるものと同様の飛散防止シート211、端部シール212及び内側シール213を有する。
【0076】
まず、
図10及び
図11に示すように、ベルトクリーニング装置140には、封止部材として、飛散防止シート211が設けられている。飛散防止シート211は、中間転写ベルト107の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1よりも上流側で中間転写ベルト107の幅方向に沿って中間転写ベルト107の表面に接触するように、クリーニングブレード201と対向して配置されている。そして、飛散防止シート211は、中間転写ベルト107の表面の移動方向(
図9中の矢印R方向)に関してクリーニングブレード201よりも上流側のハウジング205の開口部からの回収トナーの漏出(逆流)を抑制することができる。飛散防止シート211は、平面視略矩形のシート状の部材である。飛散防止シート211は、その短手方向の一方(図中下方)の端部である先端部が、中間転写ベルト107の幅方向に沿って、所定の接触圧でテンションローラ173にバックアップされた中間転写ベルト107に接触する。本実施例では、飛散防止シート211は、PETで形成されている。
【0077】
また、
図10及び
図11に示すように、ベルトクリーニング装置140には、封止部材として、クリーニングブレード201の長手方向の両端部に隣接して、それぞれ端部シール212が設けられている。本実施例では、端部シール212は、ハウジング205と後述する内側シール13との上に跨って配置されている。そして、端部シール212は、飛散防止シート211とハウジング205との間の隙間、テンションローラ173にバックアップされた中間転写ベルト107とハウジング205との間の隙間を封止することができる。本実施例では、端部シール212は、クリーニングブレード201の長手方向の端部において、テンションローラ173にバックアップされた中間転写ベルト107、飛散防止シート211、及びクリーニングブレード1の端面に接触するように配置されている。そして、端部シール212は、テンションローラ173にバックアップされた中間転写ベルト107との間で飛散防止シート211を挟み込んで押圧する。本実施例における端部シール212は、実施例1における端部シール12と同様に、第1接触部212a、第2接触部212b、第3接触部212c、及び第4接触部212dを有する。ただし、本実施例では、第2接触部212bは、テンションローラ173にバックアップされた中間転写ベルト107の表面に接触する。本実施例では、端部シール212は、発泡ウレタンゴムで形成されている。
【0078】
さらに、
図10及び
図11に示すように、ベルトクリーニング装置140には、封止部材として、クリーニングブレード201の長手方向の両端部に隣接して、それぞれ内側シール213が設けられている。本実施例では、内側シール213は、クリーニングブレード201の中間転写ベルト107側とは反対側の面と、端部シール212の中間転写ベルト107側とは反対側の面に接触する。そして、内側シール213は、ハウジング205とクリーニングブレード201との間の隙間、端部シール212とハウジング205との間の隙間を封止することができる。本実施例では、内側シール213は、発泡ウレタンゴムで形成されている。
【0079】
このように、ベルトクリーニング装置140に封止部材が配置されていることによって、クリーニングブレード201の長手方向の両端部と、クリーニングブレード201の図中上方と、を封止することができる。これによって、ベルトクリーニング装置140の外部へのトナーの漏出が抑制されている。
【0080】
そして、ベルトクリーニング装置140においても、端部シール212が後述する本実施例の構成とされていない場合には、実施例1で説明したクリーニング装置106の場合と同様の問題が生じることがある。つまり、飛散防止シート211によって掻き取られたトナーが飛散防止シート211と中間転写ベルト107との接触部に滞留し、この滞留したトナーが端部シール212と中間転写ベルト107との接触部に進入するようになる。そして、このトナーが最終的にベルトクリーニング装置140の外部に漏出してしまうことがある。
【0081】
3.端部シールの形状
図11に示すように、本実施例における端部シール212の形状は、実施例1における端部シール12と実質的に同じである。つまり、本実施例では、端部シール212(第1接触212a)の中間転写ベルト107の表面の移動方向の上流側の端部(「上流端部」)212uを、中間転写ベルト107の幅方向の端部側から中央側に向かう方向の下流側に行くほど中間転写ベルト107の表面の移動方向の下流側に位置するように、中間転写ベルト107の幅方向に対して傾斜させる。つまり、端部シール212の上流端部12uを、中間転写ベルト107の表面の移動方向の上流側から下流側へと、中間転写ベルト107の幅方向の端部側から中央側に向かって飛散防止シート211との接触部が順次移行するような傾斜部12iを有する形状とする。これにより、飛散防止シート211によって掻き取られたトナーTは、中間転写ベルト107の回転に伴って中間転写ベルト107の表面の移動方向の下流側に移動して行きながら、端部シール212の上流端部212uの傾斜に沿って中間転写ベルト107の幅方向の端部側から中央側へと移動しやすくなる(
図11中の矢印Ts)。そのため、飛散防止シート211によって掻き取られたトナーTは、飛散防止シート211と中間転写ベルト107との接触部において滞留を起こしにくくなる。そして、このトナーTは、端部シール212に対応する位置よりも中間転写ベルト107の幅方向の中央側に至ると、飛散防止シート211によって堰き止められなくなる。その後、このトナーTは、中間転写ベルト107の回転に伴ってクリーニングブレード201と中間転写ベルト107との接触部へと搬送され、クリーニングブレード201によって掻き取られて回収トナー収容部251の内部へと回収される。
【0082】
本実施例では、端部シール212は、中間転写ベルト107の幅方向の幅W1の全域で飛散防止シート211に接触して、飛散防止シート211を感光ドラム101に向けて押圧している。斯かる構成により、端部シール212の飛散防止シート211に対する接触面積を確保して、回収トナー収容部251の内部から外部にトナーが漏出しやすくなることを抑制することができる。また、斯かる構成により、残トナーが直接端部シール212に巻き込まれることもない。
【0083】
また、本実施例では、飛散防止シート211に接触して飛散防止シート211を中間転写ベルト107に向けて押圧する端部シール212の上流端部212uの全域が上述のように傾斜している。これにより、飛散防止シート211によって掻き取られたトナーは、飛散防止シート211と中間転写ベルト107との接触部で滞留を起こさずに、上流端部212uの傾斜に沿ってクリーニングブレード201側へ移動して回収されやすくなる。
【0084】
また、本実施例では、端部シール212(上流端部212u)は、中間転写ベルト107の幅方向に関して、クリーニングブレード201の端部と一部がオーバーラップしている。これにより、クリーニングブレード201の側端面201aと端部シール212との間の隙間からトナーが漏出することなどを抑制することができる。
【0085】
以上説明したように、本実施例によれば、飛散防止シート211の端部シール212によって押圧される部分によって中間転写ベルト107上から掻き取られたトナーがベルトクリーニング装置140の外部へと漏出することを抑制することが可能となる。
【0086】
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0087】
1.揺動ブレード方式
クリーニングブレードを支持する支持方式としては、固定ブレード方式と、揺動ブレード方式と、がある。固定ブレード方式では、実施例1のクリーニング装置106のように、クリーニングブレードの支持部材をハウジングに固定して、弾性体であるクリーニングブレードを撓ませたときの反発力のみを用いてクリーニングブレードを像担持体の表面に密着させる。揺動ブレード方式では、クリーニングブレードの支持部材を揺動可能にハウジングに支持させて、バネなどの加圧部材の付勢力により支持部材を加圧することで、クリーニングブレードを像担持体の表面に密着させる(特開2001-228764号公報)。揺動ブレード方式によれば、例えば、像担持体の使用に伴うクリーニングブレードの先端部と像担持体の表面との摩擦力の変動が大きい場合でも、クリーニングブレードが支持部材と共に変位する。そのため、揺動ブレード方式は、クリーニングブレードの先端部の像担持体に対する接触圧(当接圧)の変動を抑制しやすい。
【0088】
ただし、揺動ブレード方式では、画像形成装置の動作中にクリーニングブレードや支持部材が動くため、クリーニングブレードや支持部材とハウジングとの間に隙間が生じる。そのため、回収トナー収容部に収容された回収トナーがその隙間から漏れないようにするために、その隙間を封止するための封止部材を設ける必要がある。この封止部材として、クリーニングブレード又は支持部材とハウジングとの間の隙間に、クリーニングブレードの長手方向に沿って、発泡弾性体で形成された帯状の弾性シール部材を配置することが考えられる(特開2000-132040号公報)。
【0089】
しかしながら、揺動ブレード方式のクリーニング装置において、例えばクリーニングブレードの長手方向の略全域にわたりクリーニングブレード又は支持部材とハウジングとの間の隙間を封止する弾性シール部材を配置した場合には、次のようになることがある。つまり、クリーニングブレードの像担持体に対する当接圧に、弾性シール部材の圧縮反力により不安定な影響を与えてしまう場合がある。その結果、クリーニングブレードの捲れやトナーの掻き取り不良などのクリーニング不良のリスクが増加する場合がある。
【0090】
そこで、本実施例では、クリーニング装置を、揺動可能に支持されたクリーニングブレードの回転体に対する当接圧への影響を抑制しつつ、該クリーニングブレードとハウジングとの間の隙間を封止可能な構成とする。
【0091】
2.画像形成装置、ドラムカートリッジ
本実施例における画像形成装置100、トラムカートリッジ111の基本的な構成及び動作は、実質的に実施例1のものと同じであるので、詳しい説明は省略する。
【0092】
3.クリーニング装置
次に、
図12を参照して、本実施例におけるクリーニング装置106について説明する。
図12は、本実施例におけるドラムカートリッジ111の概略断面図(感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する断面)である。
【0093】
クリーニング装置106は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード1と、クリーニングブレード1を支持する支持部材2と、を有する。本実施例では、支持部材2は、第1の支持部材としての支持板(第1の板金)3と、第2の支持部材としての揺動板(第2の板金)4と、を有して構成されている。また、本実施例では、クリーニングブレード1と、支持部材2(支持板3、揺動板4)と、を有して、ブレードアッシー(ブレード組立体、ブレードユニット)10が構成される。また、クリーニング装置106は、クリーニングブレード1を感光ドラム101に所定の加圧力(付勢力)で加圧するための、付勢手段としての加圧部材(付勢部材)である圧縮コイルバネで構成されたブレード加圧バネ6を有する。また、クリーニング装置106は、ハウジング5によって形成される回収トナー収容部51と、回収トナー収容部51内に配置された搬送部材としての搬送スクリュー(搬送コイル)7と、を有する。また、クリーニング装置106は、支持部材2の揺動板4を軸支することで後述するブレードアッシー10を揺動可能(回動可能)にハウジング5により保持するための、軸部材としての揺動軸(揺動ピン)8を有する。なお、クリーニング装置106からトナーが漏れることを抑制するためにクリーニング装置106に設けられる封止部材については後述する。
【0094】
クリーニングブレード1は、矢印Rで示す感光ドラム101の表面の移動方向(回転方向)と略直交する幅方向(回転軸線方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。つまり、クリーニングブレード1は、平面視略矩形の板状(ブレード状)の部材である。本実施例では、クリーニングブレード1は、弾性体(弾性部材)であるウレタンゴム(ポリウレタン)で形成されている。本実施例では、クリーニングブレード1は、厚さ2mmのウレタンゴム製の板材を、14mm(短手方向)×325mm(長手方向)程度にカットして形成されている。クリーニングブレード1は、その短手方向の一方(図中上方)の端部である先端部(自由端部)のエッジ部Ebが感光ドラム101の表面に当接するように、矢印Rで示す感光ドラム101の表面の移動方向に対してカウンター方向に配置される。つまり、クリーニングブレード1は、その短手方向における先端部(自由端部)が、感光ドラム101の表面の移動方向の上流側を向くように配置される。本実施例では、クリーニングブレード1は、後述するように揺動板4がブレード加圧バネ6で加圧され、エッジ部Ebが感光ドラム101の表面に押し付けられることで撓ませられる。これにより、クリーニングブレード1が所定の当接圧で感光ドラム101と当接する。
【0095】
支持部材2を構成する支持板3は、その長手方向と略直交する断面が略L字状になるように板金(金属板)を曲げることで形成されている。本実施例では、支持板3は、厚さ2mmの板金(本実施例では亜鉛めっき鋼板)で形成されている。つまり、支持板3は、第1の平坦部(平面部)31と、第2の平坦部(平面部)32と、を有するように板金が屈曲させられて形成されている。第1の平坦部31は、その面方向が感光ドラム101の回転軸線方向と略平行に配置される。第2の平坦部32は、第1の平坦部31から該第1の平坦部31と交差(本実施例では略直交)する方向に延び、その面方向が感光ドラム101の回転軸線方向と略平行に配置される。本実施例では、第2の平坦部32は、第1の平坦部31から感光ドラム101側に延びるように配置される。支持板3は、上述のように曲げられることで剛性が高められている。クリーニングブレード1は、その短手方向における先端部(自由端部)とは反対側(図中下方)の端部である基端部(固定端部)が、支持板3(第1の平坦部31の短手方向における第2の平坦部32側とは反対側の端部側の一部)に接着により固定される。クリーニングブレード1の短手方向の先端部側の一部は、該短手方向に関して支持板3から感光ドラム101側に突出している。本実施例では、クリーニングブレード1は、支持板3から短手方向の先端部を8mm(自由長)突出させた状態で支持板3に固定されている。支持板3の第1の平坦部31及び第2の平坦部32の長手方向の長さは、クリーニングブレード1の長手方向の長さと同等とされている。
【0096】
支持部材2を構成する揺動板4は、その長手方向と略直交する断面が略L字状になるように板金(金属板)曲げることで形成されている。本実施例では、揺動板4は、厚さ2mmの板金(本実施例では亜鉛めっき鋼板)で形成されている。つまり、揺動板4は、第1の平坦部(平面部)41と、第2の平坦部(平面部)42と、を有するように板金が屈曲させられて形成されている。第1の平坦部41は、その面方向が感光ドラム101の回転軸線方向と略平行に配置される。第2の平坦部42は、第1の平坦部41から該第1の平坦部41と交差(本実施例では略直交)する方向に延び、その面方向が感光ドラム101の回転軸線方向と略平行に配置される。本実施例では、第2の平坦部42は、第1の平坦部41から感光ドラム101側に延びるように配置される。揺動板4は、上述のように曲げられることで剛性が高められている。そして、クリーニングブレード1が固定された支持板3は、ビス20によって揺動板4に固定されている。ビス20は、支持板3の長手方向に複数配置されている。本実施例では、揺動板4は、支持板3の第1の平坦部31の感光ドラム101側とは反対側の側面に、揺動板4の第1の平坦部41の感光ドラム101側の側面が重ねられるようにして配置されて、支持板3に固定される。揺動板4の第1の平坦部41の後述する延長部及び保持部43を除く部分並びに第2の平坦部42の長手方向の長さは、クリーニングブレード1の長手方向の長さと同等とされている。そして、揺動板4の第1の平坦部41の長手方向の両端部は、それぞれ支持板3の第1の平坦部31の長手方向の両端部よりも外側に延長されて延長部(図示せず)が形成されている。また、この第1の平坦部41の長手方向の両端部(
図12の紙面手前側及び奥側)に形成された上記延長部の端部には、それぞれ感光ドラム101側に延びるように上記延長部が曲げられて形成された保持部43が設けられている。本実施例では、保持部43は、揺動板4の他の部分(上記延長部を含む第1の平坦部41及び第2の平坦部42)と一体的に1枚の板金で形成されている。ただし、保持部43は別部材で構成されて、揺動板4の他の部分に対して固定されてもよい。保持部43は、その平面が揺動板4の第1の平坦部41及び感光ドラム101の回転軸線方向とそれぞれ交差(本実施例では略直交)する方向に配置される。揺動板4の長手方向の両端部の保持部43には、それぞれ例えば直径3mm程度の断面略円形(円筒形)の揺動穴(貫通穴)44が設けられている。両方の揺動穴44は、互いに中心が略同軸上になるように位置している。両方の保持部43の長手方向の外側には、それぞれハウジング5の一部である側面部52が設けられている。両方の側面部52には、それぞれ例えば直径3mm程度の断面略円形(円筒形)の支持穴(貫通穴)53が設けられている。両方の支持穴53は、上記両方の揺動穴43と略同軸上となるように位置している。
【0097】
上記各揺動穴43及び各支持穴53は貫通穴となっており、ハウジング5の長手方向の両端部において、それぞれ揺動穴43及び支持穴53に対し揺動軸8が、例えばハウジング5の外側から挿通される。揺動軸8は、揺動穴43及び支持穴53に対し、それぞれ嵌合公差(例えば隙間50μm程度)の隙間を持った状態で嵌合し、ブレードアッシー10を軸支する。すなわち、ブレードアッシー10は、ハウジング5により、揺動軸8を支点(揺動支点、揺動軸線、回動軸線)として揺動可能(回動可能)に支持される。本実施例では、
図12に示す断面において、揺動軸8の軸中心(回動軸線、回動中心)8aは、支持部材2をクリーニングブレード1の厚さ方向に沿って感光ドラム101側に投影した領域内、かつ、感光ドラム101をクリーニングブレード1の短手方向に沿って支持部材202側に投影した領域内に位置し、クリーニングブレード1の長手方向と略平行である。
【0098】
また、
図12に示すように、圧縮コイルバネで構成されたブレード加圧バネ6が、揺動板4とハウジング5との間に配置される。ブレード加圧バネ6は、圧縮コイルバネのコイル中心軸方向(伸縮方向)の一端部が、揺動板4(より詳細には第1の平坦部41の感光ドラム101側とは反対側の側面)に設けられた第1の当接部45に当接(着座)させられる。また、ブレード加圧バネ6は、コイル中心軸方向(伸縮方向)の他端部が、ハウジング5に設けられた第2の当接部55に当接(着座)させられる。ブレード加圧バネ6は、少なくとも揺動軸8を支点としてブレードアッシー10を
図12中の反時計回り方向(矢印CCW方向)へと回動させる回転力(モーメント)を発生させ、クリーニングブレード1を感光ドラム101に当接させるように配置される。本実施例では、ハウジング5の長手方向において、クリーニングブレード1の長手方向の両端部近傍に、それぞれ圧縮コイルバネで構成された複数のブレード加圧バネ6が、ハウジング5の長手方向に沿って並列に配置されている(
図14参照)。特に、本実施例では、ハウジング5の長手方向の両端部側に、それぞれ4個のブレード加圧バネ6が並列に配置されている。なお、本実施例では、ハウジング5の長手方向の両端部側にそれぞれ4個のブレード加圧バネ6を配置しているが、ブレード加圧バネ6の数は、設定する加圧力や配置スペースなどに応じて適宜変更することができる。
【0099】
以上のように、ブレードアッシー10は揺動軸8を支点として揺動可能であり、ブレード加圧バネ6の加圧力によりブレードアッシー10が回転力を受けることで、クリーニングブレード1が感光ドラム101に圧接する。そして、ブレードアッシー10は、回転する感光ドラム101上の残トナーをクリーニングブレード1のエッジ部Ebにより掻き取ることで、感光ドラム101の表面の清掃を行う。このように、本実施例では、クリーニング装置106は、揺動ブレード方式を採用している。これにより、例えば、感光ドラム101の使用に伴うクリーニングブレード1の先端部(自由端部)と感光ドラム101の表面との摩擦力の変動が大きい場合でも、クリーニングブレード1が支持部材2と共に変位する。そのため、クリーニングブレード1の先端部の感光ドラム101に対する接触圧(当接圧)の変動を抑制しやすい。
【0100】
なお、クリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧が所定の範囲を超えて上昇してしまうとクリーニングブレード1の捲れが発生してしまう場合がある。
図13を参照して、クリーニングブレード1の捲れについて更に説明する。
図13は、クリーニングブレード1の挙動を示す断面図(感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する断面)である。クリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧が大きすぎると、クリーニングブレード1と感光ドラム101との摩擦が大きくなる。そして、感光ドラム101の表面の移動方向(
図13中の矢印R方向)に対してカウンター方向となるようにエッジ部Ebで感光ドラム101に当接していたクリーニングブレード1(
図13(a))が、その先端位置を維持できなくなる。これにより、クリーニングブレード1のエッジ部Ebが感光ドラム101の表面の移動方向に巻き込まれてしまい、ついにはクリーニングブレード1が感光ドラム101の表面の移動方向に対して順方向に当接してしまうようになる(
図13(b))。この現象が、クリーニングブレード1の捲れである。一方、クリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧が小さすぎると、クリーニングブレード1と感光ドラム101との摩擦力が小さくなり、感光ドラム101上の残トナーを掻き取り切れずに、クリーニング不良が生じてしまう。
【0101】
クリーニングブレード1によって感光ドラム101の表面から掻き取られた残トナーは、回収トナー収容部51に収容される。回収トナー収容部51は、ハウジング5のクリーニングブレード1を挟んで感光ドラム101側とは反対側の近傍に設けられている。回収トナー収容部51に収容されたトナー(回収トナー)は、回収トナー収容部51の内部を、搬送スクリュー7によって搬送される。本実施例では、回収トナー収容部51内の回収トナーは、感光ドラム101の回転軸線方向(クリーニング装置106の長手方向)に沿って、回収トナー収容部51の一端部(例えば手前側の端部)に向けて搬送される。このように、本実施例では、クリーニング装置106(ドラムカートリッジ111)は、回収トナー収容部51の内部にクリーニングブレード1によって感光ドラム101から除去された回収トナーが一時的に滞留するように構成されている。
【0102】
本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向の端部には、感光ドラム101の回転軸線を中心として感光ドラム101と一体で回転するように固定された回転部材としてのギヤ(図示せず)が設けられている。感光ドラム101が回転すると、感光ドラム101と一体で回転する上記ギヤの回転力が、搬送スクリュー7に伝達される。これにより、搬送スクリュー7が回転し、回収トナー収容部51内の回収トナーを搬送することが可能となっている。ハウジング5の上記一端部の壁部には排出口(図示せず)が形成されている。これにより、回収トナー収容部51の内部を搬送された回収トナーは、該排出口を介して回収トナー収容部51(クリーニング装置106)の外部へと排出される。回収トナー収容部51から排出された回収トナーは、前述のように、装置本体110に設けられた廃トナー搬送部(図示せず)を搬送されて廃トナー回収容器(図示せず)に貯留される。そして、廃トナー回収容器内が回収トナーで満たされると、廃トナー回収容器ごと交換される。なお、上記ハウジング5に設けられた排出口は、ドラムカートリッジ111が装置本体110に装着されると、装置本体110に設けられた廃トナー搬送部と接続されるようになっている。
【0103】
4.封止部材
次に、
図12及び
図14を参照して、本実施例におけるクリーニング装置106に設けられる封止部材について説明する。
図14は、本実施例における封止部材の配置を説明するための、感光ドラム101、ブレードアッシー10が取り外しされた状態のハウジング5を、感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する方向に感光ドラム101側から見た側面図である。
図14には、クリーニングブレード1の長手方向の一方(手前側)の端部の近傍の拡大側面図も示されている。
【0104】
上述のように、クリーニング装置106(ドラムカートリッジ111)は、回収トナー収容部151の内部に回収トナーが一時的に滞留するように構成されている。そのため、回収トナー収容部51の内部から外部に回収トナーが漏出しないようにするために、クリーニング装置106には複数の封止部材が設けられている。本実施例では、クリーニング装置106は、封止部材として、飛散防止シート11、端部シール12、端部内側シール14及び内側シート15を有する。
【0105】
まず、
図12及び
図14に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、飛散防止シート11が設けられている。飛散防止シート11は、シート状の弾性体で形成された封止部材である封止シートの一例である。飛散防止シート11は、感光ドラム101の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1よりも上流側で感光ドラム101の回転軸線方向に沿って感光ドラム101の表面に接触するように、クリーニングブレード1と対向して配置されている。そして、飛散防止シート11は、感光ドラム101の表面の移動方向(
図12中の矢印R方向)に関してクリーニングブレード1よりも上流側のハウジング5の開口部からの回収トナーの漏出(逆流)を抑制することができる。
【0106】
本実施例における飛散防止シート11の構成は、実施例1における飛散防止シート11の構成と同様である。つまり、飛散防止シート11は、感光ドラム101の表面の移動方向と略直交する幅方向(回転軸線方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。つまり、飛散防止シート11は、平面視略矩形のシート状の部材である。飛散防止シート11は、その短手方向の一方(図中下方)の端部である先端部(自由端部)が、感光ドラム101の回転軸線方向に沿って、所定の接触圧で感光ドラム101に接触する。また、飛散防止シート11は、その短手方向の先端部(自由端部)とは反対側(図中上方)の端部である基端部(固定端部)が、ハウジング5に例えば両面テープにより固定されている。飛散防止シート11は、その短手方向の先端部が感光ドラム101に接触するようにハウジング5の縁部から突き出した状態でハウジング5に固定されている。飛散防止シート11は、その短手方向における先端部が、感光ドラム101の表面の移動方向の下流側を向くように配置されており、基本的には、感光ドラム101上の残トナーを掻き取らないように構成されている。
【0107】
飛散防止シート11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン樹脂などの樹脂で形成される。本実施例では、飛散防止シート11は、PETで形成されている。飛散防止シート11の厚さは、例えば、50~100μm程度とされる。本実施例では、飛散防止シート11の厚さは100μm程度とされている。
【0108】
図14に示すように、本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、クリーニングブレード1の長さL1よりも、飛散防止シート11の長さL2の方が長い。そして、飛散防止シート11は、クリーニングブレード1の長手方向に沿って、クリーニングブレード1の全域にわたってクリーニングブレード1と対向し、クリーニングブレード1の長手方向の両端部側においてクリーニングブレード1の外側まで延びている。
【0109】
また、
図14に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、クリーニングブレード1の長手方向の両端部に隣接して、それぞれ端部シール12が設けられている。端部シール12は、封止対象の隙間を埋めるように圧縮されて用いられる、発泡弾性体などの弾性体で形成された封止部材である弾性シール部材の一例である。本実施例では、端部シール12は、ハウジング5と、後述する内側シート15と、後述する端部内側シール14と、の上に跨って配置されている。そして、端部シール12は、飛散防止シート11とハウジング5との間の隙間、感光ドラム101とハウジング5との間の隙間を封止することができる。本実施例では、端部シール12は、クリーニングブレード1の長手方向の端部において、感光ドラム101、飛散防止シート11、及びクリーニングブレード1の端面に接触するように配置されている。そして、端部シール12は、感光ドラム101との間で飛散防止シート11を挟み込んで押圧する。また、端部シール12は、感光ドラム101及び飛散防止シート11側とは反対側の面において、後述する端部内側シール13とハウジング5とに例えば両面テープにより固定されることで、ハウジング5に固定されている。
【0110】
端部シール12は、例えば、発泡弾性体としての発泡ウレタンゴム、封止対象に接触する表面にブラシ状の部材(植毛布など)が取り付けられた発泡弾性体などの弾性材料で形成される。本実施例では、端部シール12は、発泡ウレタンゴムで形成されている。端部シール12の厚さは、例えば、1~5mm程度とされる。
【0111】
本実施例における端部シール12の構成は、実施例1における端部シール12の構成と同様である。つまり、端部シール12は、飛散防止シート11の感光ドラム101側とは反対側の面に接触する1接触部12aと、感光ドラム101の表面に接触する第2接触部12bと、を有する。第1接触部12a及び第2接触部12bは、感光ドラム101の表面及び飛散防止シート11の面に沿って延在する面で構成されている。また、端部シール12は、クリーニングブレード1の長手方向の端部において、クリーニングブレード1の側端面に接触する第3接触部12cを有する。また、端部シール12は、クリーニングブレード1の長手方向の端部において、クリーニングブレード1の先端面に接触する第4接触部12dを有する。第3接触部12c及び第4接触部12dは、クリーニングブレード1の厚さ方向に延在する面で構成されている。なお、実施例1と同様に、端部シール12(第1接触部12a)の感光ドラム101の表面の移動方向の上流側の端部(「上流端部」)12uは、感光ドラム101の回転軸線方向(幅方向)の端部側から中央側に向かう方向の下流側に行くほど感光ドラム101の表面の移動方向の下流側に位置するように、感光ドラム101の回転軸線方向に対して傾斜していてよい。
【0112】
また、
図14に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、クリーニングブレード1の長手方向の両端部に隣接して、それぞれ端部内側シール14が設けられている。端部内側シール14は、封止対象の隙間を埋めるように圧縮されて用いられる発泡弾性体などの弾性体で形成された封止部材である弾性シール部材の一例である。本実施例では、端部内側シール14は、縦部14aと、横部14bと、を有する。縦部14aは、後述する内側シート15の長手方向の端部に隣接して、感光ドラム101の表面の移動方向に沿って延在し、端部シール12の感光ドラム101側とは反対側の面に接触する。横部14bは、縦部14aから感光ドラム101の回転軸線方向に沿って内側に延在し、クリーニングブレード1の支持部材2の感光ドラム101側とは反対側の面(又はエッジ部)に接触する。そして、端部内側シール14は、端部シール12とハウジング5との間の隙間、ハウジング5とクリーニングブレード1(又は支持部材2)との間の隙間を封止することができる。端部内側シール14は、感光ドラム101及び端部シール12側とは反対側の面において、ハウジング5に例えば両面テープにより固定されている。
【0113】
端部内側シール14は、端部シール12と同様の材料、例えば、発泡弾性体としての発泡ウレタンゴム、封止対象に接触する表面にブラシ状の部材(植毛布など)が取り付けられた発泡弾性体などの弾性材料で形成される。本実施例では、端部内側シール14は、発泡ウレタンゴムで形成されている。端部内側シール14の厚さは、例えば、1~5mm程度とされる。なお、本実施例では、端部内側シール14の横部14bは、後述する内側シート15に対する補助的な封止部材として機能するように設けられている。感光ドラム101の回転軸線方向に関して、横部14bの長さは、後述する内側シート15の長さより十分に短い(典型的には半分以下、本実施例では1/3以下)。
【0114】
さらに、
図12及び
図14に示すように、クリーニング装置106には、封止部材として、内側シート15が設けられている。内側シート15は、シート状の弾性体で形成された封止部材である封止シートの一例である。本実施例では、クリーニングブレード1(ブレードアッシー10)は、ハウジング5に対して回動可能なように構成されているため、クリーニングブレード1(ブレードアッシー10)とハウジング5との間には空間が設けられている。回収トナーを回収トナー収容部51の内部から外部に漏らさないためには、この空間を封止することが必要となる。そのため、本実施例では、感光ドラム101の長手方向に沿って内側シート15が設けられている。内側シート15は、感光ドラム101の表面の移動方向に関してクリーニングブレード1の先端部よりも下流側で、クリーニングブレード1の感光ドラム101側とは反対側の面に、感光ドラム101の回転軸線方向に沿って接触するように、クリーニングブレード1と対向して配置されている。つまり、内側シート15は、クリーニングブレード1の厚さ方向と交差する面のうち感光ドラム101側とは反対側の面に感光ドラム101の幅方向に沿って当接するように、クリーニングブレード1と対向して配置されている。そして、内側シート15は、クリーニングブレード1(ブレードアッシー10)とハウジング5との間の隙間からのトナーの漏出を抑制することができる。
【0115】
内側シート15は、感光ドラム101の表面の移動方向と略直交する幅方向(回転軸線方向)と略平行に配置される長手方向と、該長手方向と略直交する短手方向と、にそれぞれ所定の長さを有し、所定の厚さを有する。つまり、内側シート15は、平面視略矩形のシート状の部材である。内側シート15は、その短手方向の一方(図中上方)の端部である先端部(自由端部)が、クリーニングブレード1の長手方向に沿って、所定の接触圧でクリーニングブレード1に接触する。また、内側シート15は、その短手方向の先端部(自由端部)とは反対側(図中下方)の端部である基端部(固定端部)が、ハウジング5に例えば両面テープにより固定されている。内側シート11は、その短手方向の先端部が感光ドラム101に接触するようにハウジング5の回収トナー収容部51の図中下方の縁部から突き出した状態でハウジング5に固定されている。
【0116】
内側シート15は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ウレタン樹脂などの樹脂で形成される。本実施例では、内側シート15は、PETで形成されている。飛散防止シート11の厚さは、詳しくは後述するように、50μm以上、100μm以下であることが好ましい。本実施例では、内側シート15の厚さは80μm程度とされている。
【0117】
図14に示すように、本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、クリーニングブレード1の長さL1よりも、内側シート15の長さL3の方が長い。そして、内側シート15は、クリーニングブレード1の長手方向に沿って、クリーニングブレード1の全域にわたってクリーニングブレード1と対向し、クリーニングブレード1の長手方向の両端部側においてクリーニングブレード1の外側まで延びている。なお、本実施例では、感光ドラム101の回転軸線方向に関して、内側シート15の両端部の一部は端部シール12とオーバーラップしており、端部シール12の感光ドラム101側とは反対側の面に接触する。内側シート15の構成及び配置については、以下で更に詳しく説明する。
【0118】
5.内側シート
次に、
図14及び
図15を参照して、本実施例における内側シート15の構成及び配置について更に説明する。
図15は、本実施例における内側シート15の構成及び配置を説明するための断面図(感光ドラム101の回転軸線方向と略直交する断面)である。
【0119】
クリーニングブレード1とハウジング5との間を封止するためには、クリーニングブレード1との間に隙間を生じさせないように封止性を確保したうえで、比較的微小な力でクリーニングブレード1を加圧するように封止部材を配置することが望まれる。つまり、前述のように、封止部材の押圧力により感光ドラム101に対するクリーニングブレード1の当接圧が過度に上昇してしまうと、クリーニングブレード1の捲れなどの不具合が発生する可能性がある。
【0120】
そのため、本実施例では、クリーニングブレード1とハウジング5との間を封止する封止部材として、樹脂製の比較的薄いシート部材(封止シート)である内側シート15を用い、封止部材のクリーニングブレード1に対する当接圧を低減している。
【0121】
しかし、内側シート15として単に樹脂製の比較的薄いシート部材(封止シート)を用いた場合には、クリーニングブレード1(ブレードアッシー10)が揺動した際に、次のような問題が生じることがある。つまり、クリーニングブレード1が
図15中の矢印CW方向(時計回り方向)に回動する際に、内側シート15が突っ張る方向に屈曲し、内側シート15がクリーニングブレード1を押圧する力が許容範囲を超えて発生する場合がある。そして、クリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧が所定の範囲を超えてしまい、クリーニングブレード1の捲れなどの不具合が発生してしまう場合がある。
【0122】
この原因は、内側シート15とクリーニングブレード1との間で生じる密着力であることがわかった。つまり、クリーニングブレード1の揺動時に、内側シート15とクリーニングブレード1との間で発生する密着力によって、内側シート15がクリーニングブレード1上を動くことができず、引っ掛かりが発生することで、内側シート15が屈曲してしまう。
【0123】
そこで、本実施例では、内側シート15は、少なくともクリーニングブレード1との当接部に、粗面部15aが設けられている。内側シート15のクリーニングブレード1との当接部に粗面部15aを設けることで、内側シート15のクリーニングブレード1との接触面積が減り、密着力が減る。これにより、クリーニングブレード1の揺動時に、内側シート15がクリーニングブレード1に貼り付いてクリーニングブレード1上を動けなくなることを抑制して、内側シート15が屈曲してしまうことを抑制することができる。内側シート15のクリーニングブレード1に対する密着力を十分に低減することができれば、粗面部15aは内側シート15のクリーニングブレード1との当接部の全域でなくてもよいが、好ましくは該当接部の全域を粗面部15aとする。
【0124】
内側シート15の粗面部15aの表面粗さは、算術平均粗さ(以下、単に「表面粗さ」ともいう。)Raで5μm以上、30μm以下であることが好ましい。内側シート15の粗面部15aの表面粗さRaが5μm未満であると、内側シート15のクリーニングブレード1に対する密着力の低減が不十分となり、内側シート15がクリーニングブレード1に張り付く現象が生じる場合があることがわかった。一方、内側シート15の粗面部15aの表面粗さRaを大きくしすぎると、トナーがすり抜けやすくなり、クリーニングブレード1と内側シート15との間からトナーが漏出してしまうおそれがある。一般に、回収トナーは平均粒径が6μm程度の大きさであるので、内側シート15のクリーニングブレード1との当接部を粗面部15aとすると、回収トナーのすり抜けを起こしてしまう可能性があるものと考えられる。しかし、樹脂製のシート部材の表面の粗面加工を、例えば、サンドブラスト加工などのランダムな凹凸を形成する方法を用いて行うことで、内側シート15の表面の凹凸を不均一にすることができる。これにより、内側シート15の粗面部15aにおいて、感光ドラム101の表面の移動方向に関して上流側で仮にトナーが通過したとしても、下流側でそのトナーの通過を阻止することができる。そのため、内側シート15の粗面部15aの表面粗さRaが30μm以下であれば、上記不均一な粗さの目にトナーが詰り、トナーを堰き止めることができるため、内側シート15の封止性を損なうことはないことがわかった。このように、内側シート15の粗面部15aの表面粗さRaは、5μm以上、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以上、25μm以下、更に好ましくは15μm以上、20μm以下である。
【0125】
なお、内側シート15のクリーニングブレード1と当接しない部分(クリーニングブレード1側の面のクリーニングブレード1と当接しない位置、あるいはクリーニングブレード1側とは反対側の面など)は粗面にする必要はない。典型的には、粗面加工のしやすさや内側シート15の作製のしやすさなどの観点から、内側シート15のクリーニングブレード側の面の全体を粗面とすることができる。ただし、内側シート15のクリーニングブレード1に当接する短手方向の先端部近傍の一部、例えば、先端部のエッジ部Esから基端側の所定の範囲(例えば3~5mm程度の範囲など)のみを粗面としてもよい。
【0126】
粗面加工の方法は、上述のようにサンドブラスト加工が、内側シート15の表面に不均一な凹凸を設けることができる点で好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、樹脂製のシート部材の成型時に粗面を設けたり、樹脂製のシート部材にレーザー加工、インプリント加工、研削加工などにより粗面を設けたりしてもよい。
【0127】
ここで、表面粗さRaの測定方法について説明する。ここでは、表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、次のようにして測定した。JIS B 0601において、表面粗さ(算術平均粗さ)Raは、次のように定義される。粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(l)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0128】
【0129】
本実施例では、JIS B 0601に準拠して、三角測距方式のマクロスコープを用いて測定した。測定範囲は、内側シート15の長手方向の約50mm程度を抽出し、表面粗さ(算術平均粗さ)Raを測定した。
【0130】
また、内側シート15の厚さは、50μm以上、100μm以下であることが好ましい。内側シート15の厚さが50μm未満であると、短手方向の先端部に波打ちが発生してしまい、クリーニングブレード1と内側シート15との間からトナーが漏出してしまう場合があることがわかった。一方、
図16に示すように、内側シート15の厚さが100μmを超えると、内側シート15の撓み反力でクリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧に与える影響が急激に増大してしまう場合があることがわかった。
図16は、内側シート15を形成するPET製のシート部材の厚さと撓み反力との関係の一例を示すグラフ図である。
【0131】
ここで、本実施例では、
図15に示す感光ドラム101の回転軸線方向(クリーニングブレード1の長手方向)と略直交する断面において、内側シート15のクリーニングブレード1に接触するエッジ部Esの位置は、次のようになっている。つまり、クリーニングブレード1の短手方向と略平行な方向に関する、揺動軸8の回動中心からエッジ部Esまでの距離をαとする。また、クリーニングブレード1の短手方向と略平行な方向に関する、揺動軸8の回動中心からブレード加圧バネ26による支持部材2の加圧位置(同方向の中央で代表)までの距離をβとする。このとき、本実施例では、距離αは距離βの2倍以上とされている。そのため、クリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧に与える内側シート15によるモーメント力の影響は比較的大きくなりやすい。特に、このような構成の場合、内側シート15の撓み反力は小さく抑えることが望まれる。そのため、内側シート15は、厚さが50~100μmのポリエチレンテレフタレート製のシートなどの、樹脂で形成されたシート部材を用いることが好ましい。
【0132】
また、内側シート15は、クリーニングブレード1の位置公差と揺動によるクリーニングブレード1の位置変動に追従する必要がある。この追従が不十分であると、クリーニングブレード1と内側シート15との間に隙間が発生して、この隙間からトナーが漏出してしまう。そこで、内側シート15は次のように配置することが好ましい。
【0133】
ここで、内側シート15のクリーニングブレード1に対するオーバーラップ量(侵入量)Sを、
図15に示す感光ドラム101の回転軸線方向(クリーニングブレード1の長手方向)と略直交する断面において、次のように定義する。つまり、クリーニングブレード1の内側シート15が当接する面から、内側シート15が撓んでいないと仮定した状態での内側シート15の短手方向の先端部(エッジ部Es)までの、クリーニングブレード1の厚さ方向の距離をオーバーラップ量Sとする。なお、クリーニングブレード1の厚さ方向は、上記クリーニングブレード1の内側シート15が当接する面と略直交する方向である。また、内側シート15のクリーニングブレード1に対する当接角θを、
図15に示す感光ドラム101の回転軸線方向(クリーニングブレード1の長手方向)と略直交する断面において、次のように定義する。つまり、クリーニングブレード1の内側シート15が当接する面と、クリーニングブレード1に当接した内側シート15の面と、のなす角度を当接角度θとする(感光ドラム101は停止しているものとする。)。
【0134】
上述のように内側シート15がクリーニングブレード1に十分に追従するようにするためには、オーバーラップ量Sを確保したうえで、内側シート15をハウジング5に固定することが望まれる。このとき、当接角θが小さいと、オーバーラップ量Sを確保するために、必要以上に内側シート15の短手方向の長さが長くなってしまう。設定によってはクリーニングブレード1の先端部の位置を超えて長くなってしまう。また、当接角θが大きすぎると、オーバーラップ量Sを確保するために、内側シート15の撓み量(
図15中の矢印W)が大きくなってしまい、撓み反力が増大してしまう。そのため、内側シート15のクリーニングブレード1に対する当接角θは20度以上、35度以下であることが好ましい。より好ましくは、当接角θは25度以上、30度以下である。
【0135】
以上説明したように、本実施例によれば、揺動可能に支持されたクリーニングブレード1の感光ドラム101に対する当接圧への影響を抑制しつつ、該クリーニングブレード1とハウジング5との間の隙間を封止可能となる。これにより、回収トナーの漏出を抑制しつつ、クリーニングブレード1の捲れなどの不具合の発生を抑制することができる。
【0136】
なお、本実施例では、クリーニングブレード1の支持部材2は、支持板3と揺動板4とを有して構成されていたが、支持板3が直接ハウジング5に揺動可能(回動可能)に支持されるようになっていてもよい。この場合、例えば、支持板3に、本実施例において揺動板4に設けられていた保持部43と同様の保持部を設けて、揺動軸8を介してハウジング5によって支持板3を支持するようにすることができる。
【0137】
また、本実施例では、回転体としての感光体のクリーニング手段であるクリーニング装置106に関して説明したが、同様の構成を回転体としての中間転写体のクリーニング手段であるベルトクリーニング装置140(
図1)に適用することもできる。これによっても本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0138】
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0139】
上述の実施例では、クリーニング装置の清掃対象としての回転体が感光ドラム及び中間転写ベルトである場合について説明した。ただし、クリーニング装置の清掃対象としての回転体はこれに限定されるものではない。クリーニング装置の清掃対象としての回転体は、例えば、感光体などの像担持体上に形成されたトナー像が転写される記録材を担持して搬送する記録材担持体としての、無端状のベルトで構成された記録材担持ベルトなどであってもよい。また、その他、感光体ベルトや静電記録誘電体ベルト、あるいは記録材を加熱する定着装置などの画像加熱装置が備えた加熱回転体や加圧回転体としてのベルトなどであってもよい。つまり、典型的には、クリーニング装置の清掃対象としての回転体は、トナー像、又はトナー像を担持した記録材を搬送する像搬送体である。
【符号の説明】
【0140】
1 クリーニングブレード
2 支持部材
10 ブレードアッシー
11 飛散防止シート
12 端部シール
13 内側シール
14 端部内側シール
15 内側シート
101 感光ドラム
106 クリーニング装置
107 中間転写ベルト
140 ベルトクリーニング装置