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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】真空吸着チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240813BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020157991
(22)【出願日】2020-09-20
(65)【公開番号】P2022051595
(43)【公開日】2022-04-01
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】599104794
【氏名又は名称】株式会社ジェーイーエル
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】菊地 崇
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-179672(JP,A)
【文献】特開2007-313607(JP,A)
【文献】特開昭58-059740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する先端部位まで真空圧供給路が形成されたチャック本体と、
該チャック本体に取り付けられ、前記真空圧供給路に連通した複数の吸着パッドで、前記基板を吸着保持する吸着部とを備え、
前記吸着パッドは、上端辺がリング状をなす略杯状の外形で、固定保持部材を介して前記チャック本体に取り付けられ、
前記固定保持部材には、前記吸着パッドの内部空間と前記真空圧供給路とを貫通する、孔径の異なる上下2段のノズル孔が中心軸線に沿って形成され、前記真空圧供給路に下部の微細径ノズル孔が連通し、
前記基板は、前記上下2段のノズル孔を通じて気流を通過させて真空吸引されることで前記吸着パッドの上端辺上に吸着保持され、
前記複数の吸着パッドのうち、反りのある基板と前記上端辺との間に隙間が生じた吸着パッドにおいても、前記気流が前記微細径ノズル孔を通過することで当該吸着パッドの内部空間での圧力損失が押さえられ、前記基板が吸着保持されることを特徴とする真空吸着チャック。
【請求項2】
前記固定保持部材は、ネジ部材からな請求項1に記載の真空吸着チャック。
【請求項3】
前記固定保持部材は、吸着パッド押さえ部材からな請求項1に記載の真空吸着チャック。
【請求項4】
前記微細径ノズル孔の内径は、0.2~0.5mmである請求項1に記載の真空吸着チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空吸着チャックに係り、半導体基板搬送ロボット等に搭載され、ウエハを真空吸着して搬送するための真空吸着チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板搬送ロボットでは、搬送アームの先端に装着され、真空吸着作用により搬送対象のウエハ等を保持、搬送する各種の真空吸着チャックが利用されている。従来の真空吸着チャックは、ウエハ保持部に複数個の吸着パッドを配列して、吸着パッドに形成された真空吸着ノズルで保持対象のウエハを吸着、保持するようになっている。しかし、反りがあり、硬質で倣わないようなウエハをウエハ保持部に載置した場合、吸着パッドの吸着面とウエハとの間に生じた隙間からリークが発生し、各吸着パッドの吸引圧力が著しく低下し、ウエハ保持が不可能になるという問題があった。
【0003】
この問題に対応するために、流路を通過する流体の圧力低下を低減するオリフィス構造が提案されている(特許文献1)。このオリフィス構造は、流路幅のほぼ1/2近くの長さのフィンを、対向した流路壁面での取付位置が交互になるように所定間隔に設け、オリフィスを通過する流体が蛇行するようにして各フィンの間で渦流を生じさせる構造となっている。このオリフィス構造を真空吸着チャックの流路中にノズル部品として組み込むことで、ノズルを通過する流体の通過速度を十分減速させて圧力損失を低減させ、真空吸着チャックによるウエハの吸着作用を維持させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第01/14782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したオリフィス構造のフィンの効果を実現するためには、ノズル部品の一部に微細な蛇行形状の溝を加工する必要があり、部品コストアップとなる。また、蛇行構造の溝の外面を吸着パッドの一部等で覆って閉流路を形成する必要があるため、設計の自由度が低い。さらに流路が蛇行しているため、流路内に異物混入があった場合の判断が困難である等の種々の問題がある。
【0006】
また、この種の真空吸着チャックは、シリコーンゴム製や合成樹脂製の吸着パッドをチャック本体に弾性変形させて嵌着、保持する構造となっている。このため、不用意な外力が作用した際に、吸着パッドがチャック本体から外れてしまうというおそれもある。
【0007】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、吸着パッドをチャック本体に確実に装着、固定できる取付構造からなり、固く倣わないウエハとの間の隙間によるリークが発生した場合にも圧力損失を最小にでき、ウエハの吸着が確実に行えるようにした真空吸着チャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の真空吸着チャックは、基板を保持する先端部位まで真空圧供給路が形成されたチャック本体と、
該チャック本体に取り付けられ、前記真空圧供給路に連通した複数の吸着パッドで、前記基板を吸着保持する吸着部とを備え、前記吸着パッドは、上端辺がリング状をなす略杯状の外形で、固定保持部材を介して前記チャック本体に取り付けられ、前記固定保持部材には、前記吸着パッドの内部空間と前記真空圧供給路とを貫通する、孔径の異なる上下2段のノズル孔が中心軸線に沿って形成され、前記真空圧供給路に下部の微細径ノズル孔が連通し、前記基板は、前記上下2段のノズル孔を通じて気流を通過させて真空吸引されることで前記吸着パッドの上端辺上に吸着保持され、前記複数の吸着パッドのうち、反りのある基板と前記上端辺との間に隙間が生じた吸着パッドにおいても、前記気流が前記微細径ノズル孔を通過することで当該吸着パッドの内部空間での圧力損失が押さえられ、前記基板が吸着保持されることを特徴とする。

【0009】
前記固定保持部材は、ネジ部材からなり、前記吸着パッドの内部空間と前記真空圧供給路とを貫通するように、前記ネジ部材の中心軸線に沿って前記微細径ノズル孔が形成されることが好ましい。
【0010】
前記固定保持部材は、吸着パッド押さえ部材からなり、前記吸着パッドの内部空間と前記真空圧供給路とを貫通するように、前記吸着パッド押さえ部材の中心軸線に沿って前記微細径ノズル孔が形成されることが好ましい。
【0011】
前記微細径ノズル孔の内径は、0.2~0.5mmであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の真空吸着チャックの第1実施形態の平面形状を示した平面図、側面形状を示した側面図。
図2図1に示した真空吸着チャックの吸着部の断面形状を拡大して示した部分断面図。
図3図1に示した真空吸着チャックによるウエハ吸着時の吸着部での真空状態を模式的に示した側面図、側断面図。
図4】パッド固定ネジの形状例を示した平面図、断面図。
図5】本発明の真空吸着チャックの第2実施形態の平面形状を示した平面図、側面形状を示した側面図。
図6図5に示した真空吸着チャックの吸着部の2方行からの断面形状を拡大して示した部分断面図。
図7図5に示した真空吸着チャックによるウエハ吸着時の吸着部での真空状態を模式的に示した側面図、側断面図。
図8】パッド押さえプレートの断面形状例を示した平面図、断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の真空吸着チャックの複数の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の真空吸着チャック10の第1実施形態について、図1図4を参照して説明する。図1は本発明の真空吸着チャック10として、図示しない基板搬送装置の搬送アームの昇降、旋回動作等により、半導体製造用の基板(以下、ウエハWと記す。)を所定の受け渡し位置に搬送する基板搬送装置に組み込まれ、ウエハWを吸着、保持するチャック本体11の平面形状を、図2は同側面形状を示している。
【0015】
チャック本体11は、図1各図に示したように、平面視して一部に湾曲部を有する略Y字形をなす、中心軸線Cに関して対称形状で、根元部分が図示しない回転駆動部に軸支されたベース部材2に保持された片持構造からなる。チャック本体11の下面には気密性を保持した真空圧供給路13を有する。本実施形態では、厚さ4mmアルミニウム板を所定形状に切り出したチャック本体11の下面を所定の深さ、幅(本実施形態では深さ1mm、幅5mm)に切削して角溝を形成し、その角溝をステンレス鋼製の薄板カバー15(図2(a))で覆うことで断面四角形状の真空圧供給路13が形成されている。真空圧供給路13の後方端部には真空圧導入口16が設けられている。真空圧導入口16を介してチャック本体11の真空圧供給路13とベース部材2側の真空圧供給路3とが連結、連通されており、図示しない真空源の駆動によりチャック本体11の真空圧供給路13内に真空圧が導入される。
【0016】
真空圧供給路13は、図1(a)に示したように、チャック本体11の基部11aと、基部11aの先端で二股に分岐して先端側に延びる分岐部11bとからなり、基部11aの先端側に1個の吸着部20が設けられ、分岐部11bのそれぞれの先端側に吸着部20が設けられている。本発明の真空吸着チャックでは、3箇所の吸着部20での真空吸着作用によって所定直径のウエハW(たとえばφ300mm)が吸着、保持される。なお、チャック本体11に設けられる吸着部20の個数、設置位置は、チャック本体11のサイズ、真空圧供給路のレイアウト等により適宜設定されることは言うまでもない。
【0017】
図2(a)、(b)は、吸着部20の吸着パッド取付構造および真空吸着ノズルの構成を示している。吸着部20は上述したように、チャック本体11の下面に形成された真空圧供給路13の端部に形成されており、公知の吸着パッドが吸着パッド取付構造によってチャック本体11に固定保持され、吸着パッド取付構造の一部に真空吸着ノズル25が形成されている。以下、それぞれの構成について図2(a)、(b)を参照して説明する。
【0018】
[吸着パッド取付構造の構成]
吸着パッド取付構造は、チャック本体11に形成された3カ所の吸着部20において吸着パッド21をチャック本体11に取り付け、固定保持する構造である。本実施形態の吸着パッド21は、図2(a)に示したように、リップ部21aの直径が10mmの杯形状の外形で、平面視してリング状の公知のシリコーンゴム製部材である。吸着パッド21は、下部21bがパッド保持プレート23に保持された状態で、上面側から押さえプレート22を介在させてパッド固定ネジ24でパッド保持プレート23にネジ止めされる。これにより、吸着パッド21、押さえプレート22、パッド保持プレート23の各部材が一体となり、チャック本体11の真空圧供給路13の端部の所定位置に固定保持される。
【0019】
本実施形態の押さえプレート22は、PEEK樹脂製のリング部材で、本体22aの外径は吸着パッド21の開口に内接可能な寸法に設定されている。また内径部22bは、図2(a)に図示したように、ねじ込まれたパッド固定ネジ24の皿状頭部24aに密着可能な漏斗形状となっている。押さえプレートの材質としては、PEEKの他、POM等の十分な強度、耐久性を有する各種のエンジニアリングプラスチックの他、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属加工品を用いることができる。
【0020】
パッド保持プレート23は、アルミニウム製の扁平円板状プレートで、チャック本体11の上下面を貫通して設けられた吸着パッド取付孔11cの下方からはめ込まれ、肩部23aが取付孔11cの段部11dに係止されて取付孔11c内に保持される。プレート上面には吸着パッド21の下部が嵌着保持されるリング状凹所23bが形成されている。また平面中心位置にはパッド固定ネジ24が螺合する雌ねじ孔23cが形成されている。
【0021】
パッド固定ネジ24は、PEEK製の十字穴皿ネジで、締め付け時に皿状頭部24aが押さえプレート22の漏斗形状の内径部22bに密着して押さえプレート22をチャック本体11に確実に押圧保持することができる。ねじ長さは締め付け時にネジ先端24bがパッド保持プレート23からわずかに突出する程度に設定されている。パッド固定ネジ24としては、PEEKの他、PPS等の高強度を有するエンジニアリングプラスチック製ネジ、ステンレス製ネジ、スチール製ネジを用いることができる。
【0022】
[真空吸着ノズルの構成]
パッド固定ネジ24には、図2(b)に示したように、十字穴24cの底部に所定深さの真空吸着ノズル25を全体構成とする2段の円形孔からなるノズル孔26,27が形成されている。これらのうちパッド固定ネジ24の十字穴24cから連続する上部ノズル孔26は、十字穴側を開放端とするφ1=1.0mm,長さL1=3.3mmの中間連通孔で、上部ノズル孔26の底部にさらに細径の下部ノズル孔27が連通している。下部ノズル孔27は、本実施形態では直径φ2=0.3mm、長さL2=0.7mmに設定されている。下部ノズル孔27の下端はパッド保持プレート23の下面からわずかに突出した位置で真空圧供給路13と連通している。
【0023】
真空吸着ノズル25のノズル孔の各部の寸法としては、上述した寸法に限られず、パッド固定ネジ24の寸法、孔開け加工性を考慮して、上部ノズル孔の直径φ1=1.0~2.0mm、下部ノズル孔の直径φ2=0.2~0.5mm、下部ノズル孔の長さL2=0.5~1.0mmとすることが好ましい。
【0024】
図3(a)は、チャック本体11先端部の吸着部20でのウエハWの吸着状態の外観を示している。図3(b)は、吸着部20の真空吸着ノズル25でのウエハWの真空引き状態でのエア流路を模式的に示している。上述した真空吸着ノズル25の構成により、装置外の真空圧源の運転により、真空圧供給路13内が真空引きされると、真空吸着ノズル25を介して吸着部20の開放端側の十字穴から真空吸引され、平滑なウエハが真空吸着チャックの吸着パッド21上に載置されると、ウエハ下面と吸着パッド21のリップ部上縁とで囲まれ形成された閉空間内での真空状態が確立する。
【0025】
一方、ノズル経路中に微細径のノズル孔27を有する真空吸着ノズル25を備えた真空吸着チャックにおいて、反りがあり硬く倣わないようなウエハを吸着パッド21上に載置して搬送する場合、反りのためにウエハと吸着パッド21との間に隙間が生じ、その部分からのリークが発生する。しかし、真空吸着ノズル25のノズル孔27によって形成されるエア流路が極めて微細径に設定されているため、吸着部20での圧力損失が抑えられ、ウエハWを吸引するための真空圧供給路13の圧力がほとんど低下せず、リーク発生箇所以外の真空吸着ノズルでの圧力低下が生じない。このため、反りがあるウエハWにおいても十分な吸引作用が維持でき、ウエハWを安定して搬送することができる。
【0026】
真空吸着ノズル25はパッド固定ネジ24に孔開け加工を施してネジ内に設けられ、本実施形態ではネジの十字穴部(駆動部)がノズル開放端となる(図4(a))。パッド固定ネジ24の駆動部の形状は、ネジ締め付けが確実に行えるようなネジ種類を適宜採用でき、たとえば駆動部が六角穴24d、ヘクサロビュラ24e等のネジでも内部に同様の形状、寸法のノズル孔26,27を有する真空吸着ノズル25を設けることができる(図4(b)、(c))。
【0027】
[第2実施形態]
以下、本発明の真空吸着チャック10の第2実施形態について、図5図7の添付図面を参照して説明する。図5は、第1実施形態の真空吸着チャックと同様の動作と機能を有したチャック本体11の平面形状を、図6は同側面形状を示している。
【0028】
チャック本体11は、図5に示したように、本実施形態においてもチャック本体11内に第1実施形態と同様の構成の真空圧供給路13が形成され、真空圧供給路13を介して図示しない真空源の駆動によりチャック本体11内に真空圧が導入される。
【0029】
図6(a)、(b)は、第2実施形態の真空吸着チャックの吸着パッド取付構造および真空吸着ノズル35の構成を示している。吸着部30は第1実施形態と同様に、チャック本体11の下面に形成された真空圧供給路13の端部に形成されており、吸着パッド取付構造によって公知の吸着パッド31がチャック本体11に取り付け保持されている。この吸着パッド31の取付構造の一部に真空吸着ノズル35が形成されている。以下、それぞれの構成について図6(a)、(b)を参照して説明する。
【0030】
[吸着パッド取付構造の構成]
吸着パッド取付構造は、図5(a)に示したように、チャック本体11に形成された3カ所の吸着部30において吸着パッド31をチャック本体11に固定保持する構造である。本実施形態の吸着パッド31も、図6各図に示したように、リップ部31aの直径が10mmの杯形状をなす公知のシリコーンゴム製部材で、図6(a)に示したように、上部の扁平な杯状のリップ部31aと下部のリング状部31bとが一体となったリング形状で、押さえプレート33に保持された状態でチャック本体11に取り付けられている。吸着パッド31の内周部分にはパッド受けプレート32が嵌着されている。
【0031】
パッド受けプレート32は、PEEK樹脂製の扁平円板状プレートで、肩位置に形成された鍔状部32aが、吸着パッド31内周面に形成された周状溝31a内に係止され、吸着パッド31の内周部に保持される。パッド受けプレート32には、平面視して中央位置には、第1実施形態の真空吸着ノズル25の構成に相当する真空吸着ノズル35が形成されている。パッド受けプレート32の材質としては、ノズル孔の加工性等を考慮して、PEEKの他、POM等の各種のエンジニアリングプラスチックや、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属加工品を用いることができる。
【0032】
押さえプレート33は、吸着パッド31をチャック本体11に保持させるステンレス鋼製のリング部材で、外径がチャック本体11の上面に形成された円形凹所11eにはめ込み可能な寸法に、内周には上下面を貫通して部が吸着パッド31の外周形状に倣う形状、寸法の吸着パッド取付孔33aが形成されている。吸着パッド31は、図6両図に示したように、リップ部31aが押さえプレート33の上面から突出するように吸着パッド取付孔33aに下方からはめ込まれて保持されている。押さえプレート33は、パッド受けプレート32が嵌着された吸着パッド31を保持した状態で、連結ネジ34によりチャック本体11に一体的に連結される(図6(a))。これにより、吸着パッド31、パッド受けプレート32、押さえプレート33の各部材が一体化してチャック本体11の上面に形成された円形凹所11eに固定保持される。このときチャック本体11の円形凹所11eの平面視中央位置には、チャック本体11の下面に形成された真空圧供給路13の端部とパッド受けプレート32の真空吸着ノズル35とを連通するための円形貫通孔11fが形成されている。
【0033】
連結ネジ34は、ステンレス鋼製の十字穴なべ頭ネジで、ネジ締め付け時にネジ頭部はチャック本体11下面の凹所11gに収容される。
【0034】
[真空吸着ノズルの構成]
第2実施形態の真空吸着ノズル35は、図6両図、図8(a)に示したように、パッド受けプレート32の平面視中央位置に、貫通孔として形成された直径の異なる2段のノズル孔36,37からなる。パッド受けプレート32の上面側に形成された上部ノズル孔36はφ1=2.0mm,長さL1=1.2mmの円形孔で、上部ノズル孔36の底部にさらに細径の下部ノズル孔37が連通している。下部ノズル孔37は、本実施形態では直径φ2=0.3mm、長さL2=0.7mmである。下部ノズル孔37の下端はチャック本体11に形成された円形貫通孔11fを介して真空圧供給路13に連通している。
【0035】
真空吸着ノズル35の各部の寸法としてはパッド受けプレート32への孔開け加工性を考慮して、上部ノズル孔36の直径φ1=2.0~3.0mm、下部ノズル孔37の直径φ2=0.2~0.5mm、下部ノズル孔37の長さL2=0.5~1.0mmとすることが好ましい。また、上部ノズル孔36の形状については、真空吸引時の気流の流れを考慮して、図8(b)に示したように、漏斗状孔とすることも好ましい。
【0036】
本実施形態の真空吸着ノズル35を備えた真空吸着チャック10においても、反りがあり硬く倣わないようなウエハWを吸着パッド31上に載置して搬送する際、真空吸着ノズル35によるエア流路が極めて微細径に設定されているため、圧力損失が抑えられ、ウエハを吸引するための吸引圧力が低下しにくく、ウエハWを安定して搬送することができる。
【0037】
以上の各実施形態の説明では、円形のウエハを移載することを目的とした真空吸着チャックを例に説明しているが、半導体基板以外に大型の矩形液晶ガラス基板等にも適用可能である。また、フローティングパッドタイプの真空吸着チャックを用いてガラス基板を保持搬送するような場合に、チャック本体11の自重による撓み及びガラス基板本体の自重による撓みが生じるような現象に対しても、各吸着部での圧力低下を極力抑えることができ、ガラス基板の保持機能を維持することができる。
【0038】
また、薄型のガラス基板を吸着部の吸着パッドで上面側から吸引する場合等に、ガラス基板の撓みにより吸着できないことを防止するために中間パッドを設けるが、その中間パッドを押さえて保持する部材に微細径からなる真空吸着ノズルを備え、同様の効果を得ることができる。
【0039】
なお、本明細書ではウエハを載置、保持する腕状部材をチャックと称しているが、真空吸着作用を利用してウエハを保持するような機能を備えたものであれば、ハンド、エンドエフェクタ、把持アーム、フォーク等、その他名称で呼ばれる腕状部材にも適用可能なことはいうまでもない。
【0040】
また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 真空吸着チャック
11 チャック本体
13 真空圧供給路
20,30 吸着部
21,31 吸着パッド
22 押さえプレート
23 吸着パッド保持プレート
24 パッド固定ネジ
25,35 真空吸着ノズル
26,36 上部ノズル孔
27,37 下部ノズル孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8