(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインを自動的に制御する方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20240813BHJP
F16H 59/04 20060101ALI20240813BHJP
F16H 59/18 20060101ALI20240813BHJP
F16H 59/54 20060101ALI20240813BHJP
F16H 61/68 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/04
F16H59/18
F16H59/54
F16H61/68
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020158633
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】102019000017519
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519463178
【氏名又は名称】フェラーリ エッセ.ピー.アー.
【氏名又は名称原語表記】FERRARI S.p.A.
【住所又は居所原語表記】Via Emilia Est, 1163, 41100 MODENA, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ バローネ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ナンニーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジャコモ センセリーニ
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ マルコーニ
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173177(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051481(WO,A1)
【文献】特開2005-113946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0375893(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 59/04
F16H 59/18
F16H 59/54
F16H 61/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボアシストトランスミッション(7)を備えるドライブトレイン(6)を自動的に制御する方法であって、
内燃エンジン(4)の回転速度(ω
E)を測定するステップと、
前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が下限閾値(TH
DOWN)に達するときに、自律的な態様で且つドライバーの操作とは無関係に、より低速のギアへのシフトを実行するステップと、
前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が上限閾値(TH
UP)に達するときに、自律的な態様で且つドライバーの操作とは無関係に、より高速のギアへのシフトを実行するステップと、
を含む制御方法において、
第1の時点(t
1)にアクセルペダル(22)の解放を検出するステップと、
前記第1の時点(t
1)を起点として、前記第1の時点(t
1)の後である第2の時点(t
2)まで時間間隔(TO)を待つステップと、
前記第2の時点(t
2)において前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が依然として前記下限閾値(TH
DOWN)を超える場合には、前記第2の時点(t
2)を起点として前記アクセルペダル(22)の次の踏み込みまで前記下限閾値(TH
DOWN)の値を増大させるステップと、
を更に含むことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記下限閾値(TH
DOWN)は、前記第2の時点(t
2)の前は標準値(VS)であるとともに、前記第2の時点(t2)の後に前記標準値(VS)よりも大きい増大値(VA)になる、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記アクセルペダル(22)の次の踏み込みの後、前記下限閾値(TH
DOWN)は減少して再び前記標準値(VS)をとる、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第2の時点(t
2)で前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が増大値(VA)以上である場合には、前記第2の時点(t
2)において前記下限閾値(TH
DOWN)が前記増大値(VA)に増大し、前記第2の時点(t
2)で前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が前記増大値(VA)よりも小さい場合には、前記第2の時点(t
2)において前記下限閾値(TH
DOWN)が前記第2の時点(t
2)における前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)に等しい即時値(V
*)に増大する、請求項1、2又は3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第2の時点(t
2)で前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が前記増大値(VA)よりも小さい場合に、前記第2の時点(t
2)において、自律的な態様で且つドライバーの操作とは無関係に、より低速のギアへのシフトを実行する更なるステップを含む、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記第2の時点(t
2)で前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が前記増大値(VA)よりも小さい場合に、前記第2の時点(t
2)において、自律的な態様で且つドライバーの操作とは無関係に、より低速のギアへのシフトを実行する更なるステップを含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記時間間隔(TO)の持続時間が可変である、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
ブレーキペダル(23)の踏み込みを測定するステップと、
ブレーキペダル(23)の踏み込みに基づいて前記時間間隔(TO)の持続時間を変えるステップと、
を更に含む請求項1から7のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記時間間隔(TO)の前記持続時間は、前記ブレーキペダル(23)の踏み込みが増大するにつれて減少される、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記時間間隔(TO)の前記持続時間は、前記第2の時点(t
2)において前記内燃エンジン(4)の前記回転速度(ω
E)が依然として前記下限閾値(TH
DOWN)を超えるように選択され、したがって、より低速のギアへのシフトが前記時点(t
1)から未だ実行されていない、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、その開示全体が参照により本願に組み入れられる2019年9月30日に出願されたイタリア特許出願第102019000017519号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインを自動的に制御する方法に関する。
【0003】
本発明は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインにおいて有利な用途を見出し、このため、これについては、一般性を失うことなく、以下の説明で明確に言及する。
【背景技術】
【0004】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインは、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフトと、それぞれがそれぞれの主シャフトを内燃エンジンのドライブシャフトに接続するようになっている2つの同軸クラッチと、動きを駆動輪に伝達するとともにそれぞれがギアを形成するそれぞれのギアトレインによって主シャフトに結合され得る少なくとも1つの副シャフトとを備える。
【0005】
ギアシフト中、現在のギアが副シャフトを主シャフトに結合し、一方で、追従するギアが副シャフトを他の主シャフトに結合し、結果として、ギアシフトは、2つのクラッチを交差させることによって、すなわち、現在のギアに関連付けられるクラッチを開放することによって及び同時に追従するギアと関連付けられるクラッチを閉じることによって行われる。
【0006】
ドライブトレインが自動モードで動作する際、つまり、ギアシフトがドライバーによって要求されないが(自動トランスミッションの挙動をシミュレートする)ドライブトレインの制御ユニットによって自律的に決定される際、及び、路上走行車両1が中速で前進する(つまり、路上走行車両1が非高性能モードで運転される)際には、内燃エンジンが低速(例えば、約1,500~3,000回転/分の範囲)で動作して燃料消費を最小限に抑えることができるようにするべく一般に「高速」ギアが使用される。これらの状態では、ドライブトレインの制御ユニットが下限閾値及び上限閾値を使用し、内燃エンジンの回転速度が下限閾値よりも低い場合にはダウンシフトが実行され(つまり、新たなより低速のギアが噛み合わされる)、一方、内燃エンジンの回転速度が上限閾値を超える場合にはアップシフトが実行される(つまり、新たなより高速のギアが噛み合わされる)。
【0007】
ギア間の一種の「バウンシング」を回避するために下限閾値を上限閾値に過度に近づけることができず、自動的に決定されるアップシフト(つまり、内燃エンジンの回転速度が上限閾値に達したため)中にドライバーがアクセルペダルを解放する場合には、ギアシフトの終了前に下限閾値を満たすべく内燃エンジンの回転速度が急速に低下する可能性があり(下限閾値が上限閾値に近すぎる場合)、この場合、アップシフトが中止され、したがって、前述のギア間の「バウンシング」がもたらされる。このギアの「バウンシング」現象は非常に煩わしく非常に望ましくないものであり、回避するためには、所定の距離が下限閾値と上限閾値との間で維持される必要がある。
【0008】
内燃エンジンの平均回転速度を低下させるため、したがって、内燃エンジンの消費を低減させるために、上限閾値を可能な限り低くすべきであり、結果として、上限閾値を低く保つと同時に下限閾値を上限閾値から適切に隔てた状態に維持するべく、下限閾値を最小rpm(つまり、内燃エンジンの正常な動作を確保する内燃エンジンの最小回転速度)付近に設定しなければならない。
【0009】
しかしながら、下限閾値が最小rpmに近い場合、内燃エンジンの回転速度が高い状態でドライバーがアクセルペダルを解放するとダウンシフトに過度の遅れが生じ、一例として、サーボアシストトランスミッションで高速ギアが噛み合わされて内燃エンジンが3,000回転/分で作動していると仮定すると、すなわち、アクセルペダルが解放される際、内燃エンジンを減速するためにそれが下限閾値(最小rpmに近い)に達するまで長い時間が必要とされ、この待機時間が「無駄に」長くなりすぎるという結果になる可能性があり、したがって、路上走行車両の応答が過度に遅くなっているという印象をドライバーに与える可能性がある。
【0010】
米国特許第8406968号明細書は、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインを自動的に制御する方法について記載する。制御方法は、内燃エンジンの回転速度が下限閾値に達するときにドライバーの操作とは無関係に自律的にダウンシフトを実行するとともに、内燃エンジンの回転速度が上限閾値に達するときに自律的に且つドライバーの操作とは無関係にアップシフトを実行することを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインを自動的に制御する方法を提供することであり、前記方法は、前述の欠点を被らないと同時に、実施が容易で経済的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に係る、サーボアシストトランスミッションを備えるドライブトレインを自動的に制御する方法が提供される。
【0013】
添付の特許請求の範囲は、本発明の好ましい実施形態を記載し、明細書本文の一体部分を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで、本発明の非限定的な実施形態を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】本発明の制御方法にしたがって制御される、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッションを伴うドライブトレインを備える後輪駆動の路上走行車両の概略平面図である。
【
図3】一実施形態にしたがって、アクセルペダルの解放後の幾つかのダウンシフトの実行中の内燃エンジンの回転速度の時間変化を示す。
【
図4】
図3と異なる実施形態にしたがって、アクセルペダルの解放後の幾つかのダウンシフトの実行中の内燃エンジンの回転速度の時間変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、数字1は、全体として、2つの前従動(すなわち、非駆動)輪2と2つの後駆動輪3とを備える路上走行車両(特に、自動車)を示す。前方位置には、ドライブトレイン6によって駆動輪3に伝達されるトルクを生成するドライブシャフト5を備える内燃エンジン4がある。ドライブトレイン6は、後輪駆動アセンブリに配置されるデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7と、ドライブシャフト5をデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の入力に接続するトランスミッションシャフト8とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、トレインのような態様でセルフロック差動装置9に接続され、セルフロック差動装置9からは一対のアクスルシャフト10が延び、各アクスルシャフト10は駆動輪3と一体である。
【0016】
路上走行車両1は、エンジン4を制御するエンジン4の制御ユニット11と、ドライブトレイン6を制御するドライブトレイン6の制御ユニット12と、バスライン13とを備え、バスライン13は、例えばCAN(カー・エリア・ネットワーク)プロトコルにしたがって製造され、路上走行車両1全体に延びるとともに、2つの制御ユニット11,12が互いに通信できるようにする。言い換えると、エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、バスライン13に接続され、したがって、バスライン13を介して送信されるメッセージによって互いに通信できる。更に、エンジン4の制御ユニット11及びドライブトレイン6の制御ユニット12は、専用の同期ケーブル14によって互いに直接に接続可能であり、専用の同期ケーブル14は、バスライン13によって引き起こされる遅延を伴うことなく、ドライブトレイン6の制御ユニット12からエンジン4の制御ユニット11へ信号を直接に送信できる。或いは、同期ケーブル14がなくてもよく、また、2つの制御ユニット11,12間の全ての通信がバスライン13を使用してやりとりされてもよい。
【0017】
図2によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、互いに同軸で互いに独立しているとともに互いに内側に挿入される一対の主シャフト15を備える。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、それぞれがそれぞれの主シャフト15をトランスミッションシャフト8の介在により内燃エンジン4のドライブシャフト5に接続するようになっている2つの同軸クラッチ16を備え、各クラッチ16は、オイルバスクラッチであり、そのため、圧力制御され(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16内のオイルの圧力によって決定される)、別の実施形態によれば、各クラッチ16は、乾式クラッチであり、したがって、位置制御される(すなわち、クラッチ16の開閉の程度は、クラッチ16の可動要素の位置によって決定される)。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0018】
デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は、ローマ数字で示される7つの前進ギア(第1のギアI、第2のギアII、第3のギアIII、第4のギアIV、第5のギアV、第6のギアVI、及び、第7のギアVII)と後進ギア(Rで示される)とを有する。主シャフト15及び副シャフト17は複数のギアトレインによって互いに機械的に結合され、各ギアトレインは、それぞれのギアを形成するとともに、主シャフト15に取り付けられる主ギアホイール18と、副シャフト17に取り付けられる副ギアホイール19とを備える。デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7の正確な動作を可能にするために、全ての奇数ギア(第1のギアI、第3のギアIII、第5のギアV、第7のギアVII)が同じ主シャフト15に結合され、一方、全ての偶数ギア(第2のギアII、第4のギアIV、及び、第6のギアVI)は他方の主シャフト15に結合される。
【0019】
各主ギアホイール18は、常に主シャフト15と一体に回転するようにそれぞれの主シャフト15にスプライン結合されるとともに、それぞれの副ギアホイール19と恒久的に噛み合い、一方、各副ギアホイール19は、副シャフト17に遊動態様で装着される。更に、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7は4つの同期装置20を備え、各同期装置は、副シャフト17と同軸に装着され、2つの副ギアホイール19間に配置されるとともに、2つのそれぞれの副ギアホイール19を副シャフト17に対して二者択一的に取り付けるべく(すなわち、2つのそれぞれの副ギアホイール19が副シャフト17と角度的に一体になるようにするべく)動作されるように設計される。言い換えると、各同期装置20は、副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく一方向に移動され得る、或いは、他の副ギアホイール19を副シャフト17に取り付けるべく他方向に移動され得る。
【0020】
デュアルクラッチトランスミッション7は、駆動輪3に動きを伝達する差動装置9に接続される1つの単一の副シャフト17を備え、別の同等の実施形態によれば、デュアルクラッチトランスミッション7が2つの副シャフト17を備え、これらの副シャフト17はいずれも差動装置9に接続される。
【0021】
図1によれば、路上走行車両1は、ドライバーのための運転位置を確保する乗員室を備え、運転位置は、シート(図示せず)と、ステアリングホイール21と、アクセルペダル22と、ブレーキペダル23と、2つのパドルシフタ24,25とを備え、2つのパドルシフタ24,25はデュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7を制御してステアリングホイール21の両側に接続される。アップシフトパドルシフタ24は、アップシフト(すなわち、現在のギアよりも高く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作され、一方、ダウンシフトパドルシフタ25は、ダウンシフト(すなわち、現在のギアよりも低く且つ現在のギアと隣接する新しいギアの噛み合い)を要求するためにドライバーによって(短い圧力により)操作される。
【0022】
使用時、ドライブトレイン6は自動モードで動作することができ、すなわち、ギアシフトは、パドルシフタ24,25を介してドライバーにより要求されず、(自動トランスミッションの挙動をシミュレートする)ドライブトレイン6の制御ユニット12によって自律的に決定される。
図3によれば、ドライブトレイン6が自動モードで動作するとき、ドライブトレイン6の制御ユニット12は下限閾値TH
DOWN及び上限閾値TH
UPを使用し、内燃エンジン4の回転速度ω
Eが下限閾値TH
DOWNを下回るとダウンシフトが実行され(つまり、新たなより低速のギアが噛み合わされる)(自律的態様で、ドライバーの操作とは無関係に)、一方、内燃エンジン4の回転速度ω
Eが上限閾値TH
UPを超えるとアップシフトが実行される(つまり、新たなより高速のギアが噛み合わされる)(自律的態様で、ドライバーの操作とは無関係に)。
【0023】
更に、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、時点t
1でアクセルペダル22の解放を検出する(すなわち、ドライバーは時点t
1でアクセルペダル22を解放する)とともに、時点t
1を起点として時点t
1の後である(時点t
1から時間間隔TOだけ隔てられる)第2の時点t
2まで時間間隔TO(一般に数秒の持続時間を有し、例えば、時間間隔TOが2~6秒続く可能性がある)を待ち、最終的に、時点t
2において、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、アクセルペダル22の次の踏み込みまで下限閾値TH
DOWNの値を増大させる(第2の時点t2において内燃エンジン4の回転速度ω
Eが依然として下限閾値TH
DOWNを超える場合には、しかし、一般的に言えば、時間間隔TOの持続時間が路上走行車両1の大幅な減速を引き起こすのに十分長くないように選択されるため、この状態は常に満たされる)。すなわち、下限閾値TH
DOWNは、時点t
2の前に標準値(
図3の下の方に示される)を有するとともに、時点t2の後に標準値VSよりも高い増大値VA(
図3の上の方に示される)を有し、一例として、標準値VSは850-950回転/分に等しくてもよく、一方、増大値は1,400-1,600回転/分に等しくてもよい。
【0024】
下限閾値THDOWNは、減少されて、アクセルペダル22の次の踏み込み後に再び標準値VSをとり、すなわち、アクセルペダル22の次の踏み込みが下限閾値THDOWNを「リセット」し、これにより、標準値を有することに戻る。
【0025】
好ましい実施形態によれば、時点t
2において内燃エンジン4の回転速度ω
Eが増大値VA以上であれば、時点t
2において、(
図3にしたがって)下限閾値TH
DOWNが増大値VAに至らされ、一方、時点t
2において内燃エンジン4の回転速度ω
Eが増大値VAよりも小さければ、時点t
2において、(
図4にしたがって)下限閾値TH
DOWNが第2の時点t
2における内燃エンジン4の回転速度ω
Eに等しい即時値V
*に至らされ、したがって、下限閾値TH
DOWNの即時値V
*は増大値VAよりも小さい(この場合も、先と同様に、アクセルペダル22の次の踏み込みが下限閾値TH
DOWNを「リセット」し、これにより、標準値を有することに戻る)。
【0026】
好ましい実施形態によれば、時間間隔TOの持続時間は、可変であり、好ましくはブレーキペダル23の踏み込みに応じて可変であり、すなわち、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、(例えば、ブレーキシステムの油圧回路内のブレーキ流体の圧力を検出することにより)ブレーキペダル23の踏み込みを測定するとともに、ブレーキペダル23の踏み込みに基づいて時間間隔TOの持続時間を変える。特に、時間間隔TOの持続時間は、ブレーキペダル23の踏み込みが増大するにつれて減少され、すなわち、ブレーキペダル23の踏み込みが大きければ大きいほど、時間間隔TOの持続時間が短くなる。
【0027】
既に前述したように、時間間隔TOの持続時間は、路上走行車両1の大幅な減速を引き起こすのに十分長くないように、したがって、時点t2(すなわち、アクセルペダル22が解放された時点t1から時間間隔TOが経過した後)において内燃エンジン4の回転速度ωEが依然として下限閾値THDOWNを超えるように選択され、そのため、アクセルペダル22が解放された時点t1から未だダウンシフトが実行されていない。
【0028】
図3によれば、時点t
1まで、アクセルペダル22が踏み込まれ(アクセルペダル22の位置GASを示す下側の線図を参照)、したがって、内燃エンジン4の回転速度ω
Eが時点t
1まで増大する。時点t
1では、アクセルペダル22が解放され、その後、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、時点t
1を起点として、下限閾値TH
DOWNの値が増大される時点t
2まで時間間隔TOを待つ。後続の時点t
3,t
4,t
5では、内燃エンジン4の回転速度ω
Eが下限閾値TH
DOWN(増大値VAに等しい)に達するたびにダウンシフトが自動的に実行される。下限閾値TH
DOWNが時点t
2までは標準値VSに等しく時点t
2後に増大値VAに等しいことに留意すべきである。時点t
5後にアクセルペダル22が再び踏み込まれた場合には、下限閾値TH
DOWNが標準値VSに戻る。
【0029】
図4によれば、時点t
1まで、アクセルペダル22が踏み込まれ(アクセルペダル22の位置GASを示す下側の線図を参照)、したがって、内燃エンジン4の回転速度ω
Eは時点t
1まで増大する。時点t
1では、アクセルペダル22が解放され、その後、ドライブトレイン6の制御ユニット12は、時点t
1を起点として、下限閾値TH
DOWNの値が増大される時点t
2まで時間間隔TOを待ち、時点t
2では、内燃エンジン4の回転速度ω
Eが増大値よりも小さく、したがって、時点t
2において、下限閾値TH
DOWNは、時点t
2における内燃エンジン4の回転速度ω
Eに等しい即時値V
*に至らされる(そのため、下限閾値TH
DOWNの即時値V
*は増大値VAよりも小さい)。結果として、時点t
2では、ダウンシフトが自動的に実行される(下限閾値TH
DOWNは、時点t
2における内燃エンジン4の回転速度ω
Eに等しいため)。後続の時点t
3,t
4では、内燃エンジン4の回転速度ω
Eが下限閾値TH
DOWN(即時値V
*に等しく、増大値VAよりも小さい)に達するたびに、ダウンシフトが自動的に実行される。下限閾値TH
DOWNが時点t
2までは標準値VSに等しく時点t
2後に(たとえ増大値VAより小さくても)更に大きくなることに留意すべきである。時点t
4後にアクセルペダル22が再び踏み込まれた場合には、下限閾値TH
DOWNが標準値VSに戻る。
【0030】
路上走行車両1のドライブトレイン6が単一クラッチサーボアシストトランスミッションを備えているときでさえ、大きな変更を伴うことなく、先に開示されたことを適用できる。
【0031】
前述の制御方法は様々な利点を有する。
【0032】
まず第一に、前述の制御方法により、ドライバーがアクセルペダル22を解放するときに前述のギア間の「バウンシング」を回避するにもかかわらず、閾値THDOWNを非常に低く(最小rpmに近い)維持することができ、確かに、前述の制御方法は、そうすることにより、ドライバーがアクセルペダル22を解放するときにギア間の前述の「バウンシング」を回避するべく必要な場合にのみ下限閾値THDOWNを増大させる。
【0033】
更に、前述の制御方法は、デュアルクラッチサーボアシストトランスミッション7をそれらを「自然」であると見なすドライバーによって一般に認められる(つまり、ドライバーの期待に沿う)方法で制御する。
【0034】
最後に、前述の制御方法は、その実行が限られた記憶空間と低い計算能力とを必要とするため、実施するのが簡単で経済的である。
【符号の説明】
【0035】
1 路上走行車両
2 前輪
3 後輪
4 エンジン
5 ドライブシャフト
6 ドライブトレイン
7 トランスミッション
8 トランスミッションシャフト
9 差動装置
10 アクスルシャフト
11 エンジン制御ユニット
12 ドライブトレイン制御ユニット
13 バスライン
14 同期ケーブル
15 主シャフト
16 クラッチ
17 副シャフト
18 主ギアホイール
19 副ギアホイール
20 同期装置
21 ステアリングホイール
22 アクセルペダル
23 ブレーキペダル
24 アップシフトパドルシフタ
25 ダウンシフトパドルシフタ
ωE 回転速度
ωA 回転速度
ωB 回転速度
t1 時点
t2 時点
t3 時点
t4 時点
t5 時点
TO 時間間隔
GAS アクセルペダルの位置
THDOWN 下限閾値
THUP 上限閾値
VS 標準値
VA 増大値
V* 即時値