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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】表示制御装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240813BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240813BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20240813BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240813BHJP
【FI】
E02F9/26 B
H04N7/18 J
G01B11/00 H
G06T19/00 600
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020163449
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055808
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】指宿 康洋
(72)【発明者】
【氏名】皆川 真範
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/244574(WO,A1)
【文献】特開2020-002718(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189430(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/146782(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
H04N 7/18
G01B 11/00
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を備える作業機械の操作のために用いられる画像を表示させる表示制御装置であって、
前記作業機械に設けられたカメラから、前記作業機が写る撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記作業機の刃先を投影面に鉛直方向に向けて投影した刃先影を生成する刃先影生成部と、
前記撮像画像と、前記刃先影と、前記刃先の到達可能な範囲を前記投影面に鉛直方向に向けて投影した基準範囲図形とを重畳した表示画像を生成する表示画像生成部と、
前記表示画像を表示するための表示信号を出力する表示制御部と
を備える表示制御装置。
【請求項2】
前記基準範囲図形は、前記刃先の到達可能な範囲の前縁及び後縁の少なくとも一方を投影した図形である
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記基準範囲図形は、所定条件下における前記刃先の到達可能な範囲を投影した図形である
請求項1又は請求項2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記基準範囲図形は、前記刃先を前記投影面に接触させる条件下における前記刃先の到達可能な範囲を投影した図形である
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記作業機はブーム、アーム及びバケットを備え、
前記基準範囲図形は、前記ブーム及び前記バケットを動かさず、前記アームを動かす条件下における前記刃先の到達可能な範囲を投影した図形である
請求項3に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示画像には、前記条件を課さないときの前記刃先の到達可能な範囲を投影した到達可能範囲図形を含む
請求項3から請求項5の何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項7】
前記投影面は、前記作業機械の接地面を通る平面である
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項8】
作業機を備える作業機械の操作のために用いられる画像を表示させる表示制御方法であって、
前記作業機械に設けられたカメラから、前記作業機が写る撮像画像を取得するステップと、
前記作業機の刃先を投影面に鉛直方向に向けて投影した刃先影を生成するステップと、
前記撮像画像と、前記刃先影と、前記刃先の到達可能な範囲を前記投影面に鉛直方向に向けて投影した基準範囲図形とを重畳した表示画像を生成するステップと、
前記表示画像を表示するステップと
を備える表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示制御装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械を遠隔操作する技術が知られている。遠隔操作される作業機械にはカメラが設けられており、稼働する作業現場の画像が撮像される。撮像画像は、遠隔地に送信され、遠隔地に配置されている表示装置に表示される。遠隔地のオペレータは、表示装置に表示された撮像画像を見ながら、作業機械を遠隔操作する。表示装置に表示される撮像画像は二次元であるため、オペレータに遠近感を与えることが困難である。
特許文献1には、オペレータに遠近感を与えるため、撮像画像に写る作業対象の表面にメッシュ状の線画像を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-035645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械が備える作業機は、油圧シリンダによって駆動する。油圧シリンダのピストンがストロークエンドに当たると、ロッドの速度及び作業機の重量に応じた衝撃が発生する。ストロークエンドとは、ロッドの可動範囲の端部をいう。すなわち、ストロークエンドとは、油圧シリンダが最も縮んだ状態のロッドの位置、又は油圧シリンダが最も伸びた状態のロッドの位置をいう。オペレータは、作業機の姿勢を認識しながらピストンがストロークエンドに当たらないように作業機を制御している。
【0005】
一方で、二次元の撮像画像を見ながら作業機械を操作する場合、オペレータは作業機の姿勢を認識することが困難である。そのため、オペレータが作業機の姿勢の認識を誤り、油圧シリンダのピストンがストロークエンドに当たる可能性がある。
本開示の目的は、油圧シリンダのピストンがストロークエンドに当たる可能性を低減するための情報をオペレータに提示することができる表示制御装置及び表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、表示制御装置は、作業機を備える作業機械の操作のために用いられる画像を表示させる表示制御装置であって、前記作業機械に設けられたカメラから、前記作業機が写る撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記作業機の刃先を投影面に鉛直方向に向けて投影した刃先影を生成する刃先影生成部と、前記撮像画像と、前記刃先影と、前記刃先の到達可能な範囲を前記投影面に鉛直方向に向けて投影した基準範囲図形とを重畳した表示画像を生成する表示画像生成部と、前記表示画像を表示するための表示信号を出力する表示制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、油圧シリンダのピストンがストロークエンドに当たる可能性を低減するための情報をオペレータに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る作業システムの構成を示す概略図である。
図2】第1の実施形態に係る作業機械の外観図である。
図3】第1の実施形態に係る遠隔制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る刃先影画像と刃先到達ゲージ画像の関係を示す側面図である。
図6】第1の実施形態に係る遠隔制御装置による表示制御処理を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係る作業機械の外観図である。
図8】第2の実施形態に係る遠隔制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図9】第2の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る刃先影画像と刃先到達ゲージ画像の関係を示す側面図である。
図11】第3の実施形態に係る遠隔制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図12】第3の実施形態に係る刃先影画像と刃先到達ゲージ画像の関係を示す側面図である。
図13】他の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第1の実施形態〉
《作業システム1》
図1は、第1の実施形態に係る作業システム1の構成を示す概略図である。
作業システム1は、作業機械100と、遠隔運転室500とを備える。作業機械100は、作業現場で稼働する。作業現場の例としては、鉱山、採石場などが挙げられる。遠隔運転室500は、作業現場から離れた遠隔地に設けられる。遠隔地の例としては、市街、作業現場内などが挙げられる。つまり、オペレータは、作業機械100を視認できない距離から、当該作業機械100を遠隔操作する。
【0010】
作業機械100は、遠隔運転室500から送信される操作信号に基づいて遠隔操作される。遠隔運転室500は、作業現場に設けられたアクセスポイント300を介して作業機械100と接続される。遠隔運転室500において受け付けたオペレータの操作を示す操作信号は、アクセスポイント300を介して作業機械100に送信される。作業機械100は、遠隔運転室500から受信した操作信号に基づいて動作する。つまり、作業システム1は、作業機械100と遠隔運転室500とから構成される遠隔運転システムを備える。また、作業機械100は、作業対象の画像を撮像し、当該画像は遠隔運転室500において表示される。つまり、作業システム1は、表示制御システムの一例である。
【0011】
《作業機械100》
図2は、第1の実施形態に係る作業機械100の外観図である。
第1の実施形態に係る作業機械100は、ローディングショベル(フェイスショベル)である。なお、他の実施形態に係る作業機械100は、バックホウ、ホイールローダやブルドーザなどの他の作業機械であってもよい。
作業機械100は、走行体110と、走行体110に支持される旋回体120と、油圧により作動し旋回体120に支持される作業機130とを備える。旋回体120は旋回中心軸Oを中心として旋回自在に支持される。作業機130は、旋回体120の前部に設けられる。
【0012】
作業機130は、ブーム130Aと、アーム130Bと、バケット130Cとを備える。
ブーム130Aの基端部は、旋回体120にピンを介して取り付けられる。
アーム130Bは、ブーム130Aとバケット130Cとを連結する。アーム130Bの基端部は、ブーム130Aの先端部にピンを介して取り付けられる。
バケット130Cは、土砂などを掘削するための刃先130Dと掘削した土砂を収容するための容器とを備える。バケット130Cの基端部は、アーム130Bの先端部にピンを介して取り付けられる。
【0013】
作業機130は、ブームシリンダ131A、アームシリンダ131B、及びバケットシリンダ131Cの運動によって駆動する。以下、ブームシリンダ131A、アームシリンダ131B、及びバケットシリンダ131Cを総称して油圧シリンダ131ともいう。
ブームシリンダ131Aは、ブーム130Aを作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ131Aの基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ131Aの先端部は、ブーム130Aに取り付けられる。
アームシリンダ131Bは、アーム130Bを駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ131Bの基端部は、ブーム130Aに取り付けられる。アームシリンダ131Bの先端部は、アーム130Bに取り付けられる。
バケットシリンダ131Cは、バケット130Cを駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ131Cの基端部は、ブーム130Aに取り付けられる。バケットシリンダ131Cの先端部は、バケット130Cに取り付けられる。
【0014】
作業機130には、ブーム130A、アーム130B及びバケット130Cの姿勢を検出するブーム姿勢センサ132A、アーム姿勢センサ132B及びバケット姿勢センサ132Cが取り付けられる。以下、ブーム姿勢センサ132A、アーム姿勢センサ132B及びバケット姿勢センサ132Cを総称して姿勢センサ132ともいう。第1の実施形態に係る姿勢センサ132は、油圧シリンダ131に取り付けられたストロークセンサである。すなわち、姿勢センサ132は、油圧シリンダ131のストローク長を検出する。ストローク長とは、油圧シリンダ131のストロークエンドからのロッドの移動距離である。ストロークエンドとは、ロッドの可動範囲の端部をいう。すなわち、ストロークエンドとは、油圧シリンダ131が最も縮んだ状態のロッドの位置、又は油圧シリンダ131が最も伸びた状態のロッドの位置をいう。
【0015】
ブーム姿勢センサ132Aは、ブームシリンダ131Aに設けられ、ブームシリンダ131Aのストローク長を検出する。
アーム姿勢センサ132Bは、アームシリンダ131Bに設けられ、アームシリンダ131Bのストローク長を検出する。
バケット姿勢センサ132Cは、バケットシリンダ131Cに設けられ、バケットシリンダ131Cのストローク長を検出する。
【0016】
なお、他の実施形態に係る姿勢センサ132はこれに限られない。例えば、他の実施形態においては、姿勢センサ132は、ブーム130A、アーム130B及びバケット130Cの基端部に設けられたポテンショメータによって相対回転角を検出してもよいし、IMUによって鉛直方向に対する回転角を検出するものであってもよいし、傾斜計によって鉛直方向に対する回転角を検出するものであってもよい。
【0017】
旋回体120には、運転室121が備えられる。運転室121には、カメラ122が設けられる。カメラ122は、運転室121内の前部かつ上部に設置される。カメラ122は、運転室121前部のフロントガラスを通して、運転室121の前方を撮像する。ここで、「前方」とは、旋回体120において作業機130が装着された方向をいい、「後方」は「前方」の逆方向をいう。「側方」とは、前後方向に対して交差する方向(左右方向)をいう。カメラ122の例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサ、及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサを用いた撮像装置が挙げられる。なお、他の実施形態においては、カメラ122は、必ずしも運転室121内に設けられなくてもよく、少なくとも施工対象と作業機130とを撮像可能な位置に設けられていればよい。つまり、カメラ122の撮像範囲には、少なくとも作業機130の一部が含まれる。
【0018】
作業機械100は、カメラ122、位置方位演算器123、傾斜計測器124、油圧装置125、車両制御装置126を備える。
【0019】
位置方位演算器123は、旋回体120の位置及び旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器123は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器123は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(車体座標系の原点)の位置を検出する。位置方位演算器123は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。なお、他の実施形態においては、位置方位演算器123は、ロータリーエンコーダやIMUの計測値に基づいて旋回体120が向く方位を検出してもよい。
【0020】
傾斜計測器124は、旋回体120の加速度及び角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角)を検出する。傾斜計測器124は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器124は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0021】
油圧装置125は、油圧シリンダ131に作動油を供給する。油圧シリンダ131に供給する作動油の流量は、車両制御装置126から受信する制御指令に基づいて制御される。
【0022】
車両制御装置126は、カメラ122が撮像した画像、旋回体120の旋回速度、位置、方位及び傾斜角、作業機130の姿勢、ならびに走行体110の走行速度を、遠隔運転室500に送信する。また、車両制御装置126は、遠隔運転室500から操作信号を受信し、受信した操作信号に基づいて、作業機130、旋回体120及び走行体110を駆動させる。
【0023】
《遠隔運転室500》
遠隔運転室500は、運転席510、表示装置520、操作装置530、遠隔制御装置540を備える。
表示装置520は、運転席510の前方に配置される。表示装置520は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの眼前に位置する。表示装置520は、並べられた複数のディスプレイによって構成されてもよいし、図1に示すように、1つの大きなディスプレイによって構成されてもよい。また、表示装置520は、プロジェクタ等によって曲面や球面に画像を投影するものであってもよい。
【0024】
操作装置530は、遠隔運転システム用の操作装置である。操作装置530は、オペレータの操作に応じて、ブームシリンダ131Aの操作信号、アームシリンダ131Bの操作信号、バケットシリンダ131Cの操作信号、旋回体120の左右への旋回操作信号、走行体110の前後進のための走行操作信号を生成し遠隔制御装置540に出力する。操作装置530は、例えばレバー、ノブスイッチ及びペダル(図示略)により構成される。
操作装置530は、運転席510の近傍に配置される。操作装置530は、オペレータが運転席510に座ったときにオペレータの操作可能な範囲内に位置する。
【0025】
遠隔制御装置540は、作業機械100から受信したデータに基づいて表示画像を生成し、表示画像を表示装置520に表示させる。また遠隔制御装置540は、操作装置530の操作を表す操作信号を作業機械100に送信する。遠隔制御装置540は、表示制御装置の一例である。
【0026】
図3は、第1の実施形態に係る遠隔制御装置540の構成を示す概略ブロック図である。
遠隔制御装置540は、プロセッサ610、メインメモリ630、ストレージ650、インタフェース670を備えるコンピュータである。ストレージ650は、プログラムを記憶する。プロセッサ610は、プログラムをストレージ650から読み出してメインメモリ630に展開し、プログラムに従った処理を実行する。遠隔制御装置540は、インタフェース670を介してネットワークに接続される。
【0027】
ストレージ650の例としては、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ650は、遠隔制御装置540の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース670を介して遠隔制御装置540に接続される外部メディアであってもよい。ストレージ650は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0028】
プロセッサ610は、プログラムの実行により、データ取得部611、姿勢特定部612、刃先影生成部613、表示画像生成部614、表示制御部615、操作信号入力部616、操作信号出力部617を備える。
なお、他の実施形態においては、遠隔制御装置540は、上記構成に加えて、又は上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ610によって実現される機能の一部又は全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0029】
データ取得部611は、カメラ122による撮像画像、旋回体120の旋回速度、位置、方位及び傾斜角、作業機130の姿勢、ならびに走行体110の走行速度を示すデータを作業機械100から取得する。
【0030】
姿勢特定部612は、データ取得部611が取得したデータに基づいて、作業機械100の車体座標系における姿勢及び現場座標系における姿勢を特定する。車体座標系とは、旋回体120の旋回中心軸Oと走行体110の底面との交点を原点とし、旋回体120の前後軸、左右軸及び上下軸の3軸で規定されるローカル座標系である。現場座標系とは、作業現場の所定地点(基準局など)を原点とし、緯度軸、経度軸及び鉛直軸の3軸で規定されるグローバル座標系である。姿勢特定部612は、ブーム130Aの先端、アーム130Bの先端及び刃先130Dの左右両端の車体座標系における位置及び現場座標系における位置を特定する。データ取得部611による具体的な各部分の位置の特定方法は、後述する。
【0031】
刃先影生成部613は、姿勢特定部612が特定した現場座標系における刃先130Dの両端の位置に基づいて、刃先130Dを投影面に鉛直方向に向けて投影した刃先影を表す刃先影画像を生成する。第1の実施形態に係る投影面は、走行体110の底面を通る平面である。具体的には、刃先影生成部613は、以下の手順で刃先影画像を生成する。刃先影生成部613は、刃先130Dの両端の位置のうち上下軸成分の値をゼロに書き換えることで、投影面に投影された投影した刃先影の現場座標系における位置を特定する。刃先影生成部613は、カメラ122の撮像画像に係る2次元直交座標系である画像座標系と現場座標系との関係を示す既知のカメラパラメータに基づいて、刃先影の現場座標系における位置を画像座標系における位置に変換する。刃先影生成部613は、変換した位置に刃先130Dを表す線分を描画することで、刃先影画像を生成する。
【0032】
表示画像生成部614は、データ取得部611が取得した撮像画像に、刃先影画像G1と刃先到達ゲージ画像G2を重畳することで、表示画像を生成する。図4は、第1の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。刃先到達ゲージ画像G2は、左ラインG21、右ラインG22、最大到達ラインG23、目盛りラインG24、目盛り値G25、基準範囲図形G26を含む。
【0033】
左ラインG21は、刃先130Dの左端の到達可能範囲を示す線である。図4に示すように、左ラインG21は刃先影画像G1の左端を通る。
右ラインG22は、刃先130Dの右端の到達可能範囲を示す線である。図4に示すように、右ラインG22は刃先影画像G1の右端を通る。
【0034】
最大到達ラインG23は、刃先130Dの到達可能範囲の前縁を示す線である。最大到達ラインG23は、左ラインG21の前端と右ラインG22の前端とを接続する。目盛りラインG24は、旋回体120の旋回中心軸Oからの距離を表す線である。
目盛りラインG24は、等間隔に設けられる。図4に示す例では、目盛りラインG24は2メートル間隔で設けられる。各目盛りラインG24は、左ラインG21と右ラインG22とを接続するように設けられる。
最大到達ラインG23及び目盛りラインG24は、刃先影画像G1と平行な線である。
目盛り値G25は、目盛りラインG24に対応して設けられ、当該目盛りラインG24が示す距離を数値で表す。図4に示す例では、目盛り値G25は、目盛りラインG24の右端の近傍に設けられる。
【0035】
基準範囲図形G26は、投影面上における刃先130Dの到達可能範囲を示す図形である。第1の実施形態に係る基準範囲図形G26は、左ラインG21と右ラインG22と、投影面上の到達可能範囲の前縁と、投影面上の到達可能範囲の後縁とで囲まれる四角形である。投影面上における刃先130Dの到達可能範囲は、投影面と刃先130Dとが接触する条件下における刃先130Dの到達可能範囲である。基準範囲図形G26は、ハッチングや色付け等によって強調表示される。
【0036】
なお、最大到達ラインG23、並びに左ラインG21及び右ラインG22の前端は、投影面と刃先130Dとが接触する条件を課さないときの刃先130Dの到達可能範囲の前縁を表す。最大到達ラインG23、左ラインG21及び右ラインG22は、条件を課さないときの前記刃先の到達可能な範囲を投影した到達可能範囲図形の一例である。
【0037】
図5は、第1の実施形態に係る刃先影画像G1と刃先到達ゲージ画像G2の関係を示す側面図である。第1の実施形態に係る刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2は、走行体110の底面を通る平面である投影面F1上に描画される。そのため、刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2を撮像画像に重畳すると、地表面F2のうち投影面F1より高い部分については刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2が地表面F2に対して沈み込んでいるように写る。地表面F2のうち投影面F1より低い部分については刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2が地表面F2に対して浮いているように写る。
【0038】
図5に示すように、刃先到達ゲージ画像G2の前縁すなわち最大到達ラインG23は、刃先130Dの到達可能範囲Rのうち旋回中心軸Oから最も離れた位置を投影面F1上に投影した位置に写る。そのため、刃先130Dがどのような姿勢であったとしても、刃先影画像G1は常に最大到達ラインG23より手前側に位置する。
図5に示すように、基準範囲図形G26は、刃先130Dの到達可能範囲と投影面とが重なる範囲を示す。
【0039】
なお、カメラ122は、旋回体120に固定されるため、旋回体120の旋回や走行体110の走行によらず、画像座標系上において投影面における刃先130Dの到達可能範囲は変化しない。つまり、刃先到達ゲージ画像G2は、作業機械100の位置及び姿勢によらず一定である。したがって、第1の実施形態に係る表示画像生成部614は、予め用意された刃先到達ゲージ画像G2を撮像画像に重畳することで表示画像を生成する。
【0040】
表示制御部615は、表示画像生成部614が生成した表示画像を表示する表示信号を表示装置520に出力する。
操作信号入力部616は、操作装置530による操作信号を受け付ける。
操作信号出力部617は、操作信号入力部616が受け付けた操作信号を、作業機械100に送信する。
【0041】
《姿勢の特定方法》
ここで、姿勢特定部612による姿勢の特定方法について説明する。姿勢特定部612は、以下の手順で、ブーム130Aの先端(先端部のピン)、アーム130Bの先端(先端部のピン)及び刃先130Dの両端の車体座標系における位置及び現場座標系における位置を特定する。
【0042】
姿勢特定部612は、ブームシリンダ131Aのストローク長に基づいて旋回体120に対するブーム130Aの角度すなわち車体座標系の前後軸に対する角度を特定する。姿勢特定部612は、ブーム130Aの角度と既知のブーム130Aの長さとに基づいて、車体座標系においてブーム130Aの基端(基端部のピン)からブーム130Aの先端(先端部のピン)へ伸びるブームベクトルを特定する。姿勢特定部612は、車体座標系におけるブーム130Aの基端(基端部のピン)の既知の位置ベクトルとブームベクトルを加算することで、車体座標系におけるブーム130Aの先端(先端部のピン)の位置ベクトルを特定する。
【0043】
姿勢特定部612は、アームシリンダ131Bのストローク長に基づいてブーム130Aに対するアーム130Bの角度を特定する。姿勢特定部612は、特定したアーム130Bの角度と車体座標系の前後軸に対するブーム130Aの角度を加算することで、前後軸に対するアーム130Bの角度を特定する。姿勢特定部612は、アーム130Bの角度と既知のアーム130Bの長さとに基づいて、車体座標系においてアーム130Bの基端(基端部のピン)からアーム130Bの先端(先端部のピン)へ伸びるアームベクトルを特定する。姿勢特定部612は、車体座標系におけるブーム130Aの先端(先端部のピン)の位置ベクトルとアームベクトルを加算することで、車体座標系におけるアーム130Bの先端(先端部のピン)の位置ベクトルを特定する。
【0044】
姿勢特定部612は、バケットシリンダ131Cのストローク長に基づいてアーム130Bに対するバケット130Cの角度を特定する。姿勢特定部612は、特定したバケット130Cの角度と車体座標系の前後軸に対するアーム130Bの角度を加算することで、前後軸に対するバケット130Cの角度を特定する。姿勢特定部612は、バケット130Cの角度と、バケット130Cの基端(基端部のピン)から刃先130Dまでの既知の長さと、刃先130Dの既知の幅とに基づいて、右バケットベクトル及び左バケットベクトルを特定する。右バケットベクトルは、車体座標系においてバケット130Cの基端(基端部のピン)から刃先130Dの右端へ伸びるベクトルである。左バケットベクトルは、バケット130Cの基端から刃先130Dの左端へ伸びるベクトルである。姿勢特定部612は、車体座標系におけるアーム130Bの先端(先端部のピン)の位置ベクトルと左バケットベクトルを加算することで、車体座標系における刃先130Dの左端の位置ベクトルを特定する。また、姿勢特定部612は、車体座標系におけるアーム130Bの先端(先端部のピン)の位置ベクトルと右バケットベクトルを加算することで、車体座標系における刃先130Dの右端の位置ベクトルを特定する。
【0045】
姿勢特定部612は、車体座標系における各部分の位置を、作業機械100の現場座標系における位置に基づいて平行移動させ、かつ旋回体120の方位(ヨー角)、作業機130のロール角及びピッチ角に基づいて回転させることで、現場座標系における各部分の位置を特定することができる。
【0046】
《表示制御方法》
図6は、第1の実施形態に係る遠隔制御装置540による表示制御処理を示すフローチャートである。オペレータが遠隔運転室500による作業機械100の遠隔運転を開始すると、遠隔制御装置540は、一定時間ごとに、図6に示す表示制御処理を実行する。
【0047】
データ取得部611は、作業機械100の車両制御装置126から、カメラ122による撮像画像、旋回体120の旋回速度、位置、方位及び傾斜角、作業機130の姿勢、ならびに走行体110の走行速度を示すデータを取得する(ステップS1)。次に、姿勢特定部612は、ステップS1で取得したデータに基づいて刃先130Dの両端の車体座標系における位置を特定する(ステップS2)。
【0048】
刃先影生成部613は、ステップS2で特定した車体座標系における刃先130Dの両端の位置のうち上下軸成分の値をゼロに書き換えることで、投影面に投影された投影した刃先影の車体座標系における位置を特定する(ステップS3)。刃先影生成部613は、カメラパラメータに基づいて、刃先影の車体座標系における位置を画像座標系における位置に変換する(ステップS4)。刃先影生成部613は、変換した位置に線分を描画することで、刃先影画像G1を生成する(ステップS5)。
【0049】
表示画像生成部614は、ステップS1で取得した撮像画像に、ステップS5で生成した刃先影画像G1と、予め用意された刃先到達ゲージ画像G2とを重畳することで、表示画像を生成する(ステップS6)。表示制御部615は、ステップS6で生成した表示画像を表示する表示信号を表示装置520に出力する(ステップS7)。
これにより、表示装置520には、図4に示すような表示画像が表示される。
【0050】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態によれば、遠隔制御装置540は、作業機130が写る撮像画像と、刃先130Dを投影面に鉛直方向に向けて投影した刃先影画像G1と、刃先影画像G1の両端を通り投影面に沿って前後方向に伸びる左ラインG21及び右ラインG22とを重畳した表示画像を、表示装置520に表示させる。これにより、オペレータは、作業対象のうち作業機130によって掘削される範囲を容易に認識することができる。すなわち、オペレータは、撮像画像に写る作業対象のうち、左ラインG21と右ラインG22によって挟まれた部分が掘削されることを認識し、掘削される土量を推定することができる。したがって、遠隔制御装置540は、作業機械100を用いて作業する際の作業効率の低下を抑制することができる。
【0051】
第1の実施形態に係る表示画像には、投影面F1に刃先130Dを接触させる条件下における到達可能範囲を表す基準範囲図形G26を含む。これにより、オペレータは、刃先130Dを投影面F1上で移動させる場合に油圧シリンダ131のピストンがストロークエンドに当たる可能性がある範囲を認識することができる。したがって、オペレータは、刃先影画像G1と基準範囲図形G26との位置関係を認識しながら操作装置530を操作することで、油圧シリンダ131のピストンがストロークエンドに当たる可能性を低減することができる。
【0052】
第1の実施形態に係る表示画像における刃先130Dの到達可能範囲のうち作業機械100の旋回中心軸Oから最も離れた位置には、最大到達ラインG23が表示される。これにより、オペレータは、表示画像を視認することで、現在位置から前方の掘削目標を掘削することができるか否かを判断することができる。なお、他の実施形態においては、最大到達ラインG23が表示されず、左ラインG21及び右ラインG22が到達可能範囲の前縁まで伸びているだけでも、同様の効果を奏することができる。また、他の実施形態においては、最大到達ラインG23が表示されていれば、左ラインG21及び右ラインG22が無限遠まで伸びていても、同様の効果を奏することができる。
【0053】
また、第1の実施形態に係る表示画像に含まれる左ラインG21及び右ラインG22は、刃先130Dの到達可能範囲のうち作業機械100の旋回中心軸Oから最も離れた位置まで伸びている。また刃先130Dの到達可能範囲のうち作業機械100の旋回中心軸Oから最も離れた位置には、最大到達ラインG23が表示される。これにより、オペレータは、表示画像を視認することで、現在位置から前方の掘削目標を掘削することができるか否かを判断することができる。なお、他の実施形態においては、最大到達ラインG23が表示されず、左ラインG21及び右ラインG22が到達可能範囲の前縁まで伸びているだけでも、同様の効果を奏することができる。また、他の実施形態においては、最大到達ラインG23が表示されていれば、左ラインG21及び右ラインG22が無限遠まで伸びていても、同様の効果を奏することができる。
【0054】
また、第1の実施形態に係る表示画像には、旋回中心軸Oから離れた複数の位置それぞれについての旋回中心軸Oからの距離を示す目盛りラインG24及び目盛り値G25が含まれる。これにより、オペレータは、表示画像を視認することで、刃先130Dの奥行方向の位置を認識することができる。なお、他の実施形態においては、目盛りラインG24及び目盛り値G25の何れか一方が表示されなくても、同様の効果を奏することができる。
【0055】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2は、走行体110の底面を通る平面である投影面F1に投影された画像である。これに対し、第2の実施形態に係る刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2は、地表面F2に投影される。すなわち、第2の実施形態に係る投影面は、地表面F2である。
【0056】
《作業機械100》
図7は、第2の実施形態に係る作業機械100の外観図である。第2の実施形態に係る作業機械100は、第1の実施形態の構成に加え、さらに深度検出装置127を備える。深度検出装置127は、カメラ122の近傍に設けられ、カメラ122の撮像方向と同じ方向の深度を検出する。深度とは、深度検出装置127から対象物までの距離である。深度検出装置127の例としては、例えば、LiDAR装置、レーダ装置、ステレオカメラなどが挙げられる。深度検出装置127の検出範囲は、カメラ122の撮像範囲と略同一である。
【0057】
《遠隔制御装置540》
図8は、第2の実施形態に係る遠隔制御装置540の構成を示す概略ブロック図である。第2の実施形態に係る遠隔制御装置540は、第1の実施形態に係る構成に加え、さらに地形更新部618及びゲージ生成部619を備える。また、第2の実施形態に係る遠隔制御装置540は、第1の実施形態と刃先影生成部613の処理が異なる。
【0058】
地形更新部618は、データ取得部611が深度検出装置127から取得した深度データに基づいて、現場座標系における作業対象の三次元形状を示す地形データを更新する。具体的には、地形更新部618は、以下の手順で地形データを更新する。
【0059】
地形更新部618は、深度データを車体座標系に係る三次元データに変換する。深度検出装置127は、旋回体120に固定されているため、深度データと車体座標系との変換関数は予め求めておくことができる。地形更新部618は、姿勢特定部612が特定した車体座標系における作業機130の姿勢に基づいて、生成した三次元データから作業機130が写る部分を除去する。地形更新部618は、データ取得部611が取得した車体の位置及び姿勢に基づいて、車体座標系における三次元データを現場座標系における三次元データに変換する。地形更新部618は、新たに生成された三次元データを用いてメインメモリ630に既に記録されている地形データを更新する。すなわち、既に記録されている地形データのうち、新たな三次元データと重複する部分を新たな三次元データの値に置き換える。これにより、地形更新部618は、常に最新の地形データをメインメモリ630に記録することができる。
【0060】
ゲージ生成部619は、地形データに基づいて、地表面F2に投影された刃先到達ゲージ画像G2を生成する。例えば、ゲージ生成部619は以下の手順で刃先到達ゲージ画像G2を生成する。ゲージ生成部619は、データ取得部611が取得した車体の位置及び姿勢に基づいて、地形データのうち撮像範囲に含まれる部分を車体座標系に変換する。ゲージ生成部619は、車体座標系における地形データを用いて、既知の刃先130Dの到達範囲及び当該到達範囲を等間隔に切り分ける複数のラインを地表面F2に投影する。これにより、ゲージ生成部619は、左ラインG21、右ラインG22、最大到達ラインG23及び目盛りラインG24の車体座標系における位置を特定する。
【0061】
次に、ゲージ生成部619は、既知の刃先130Dの到達可能範囲Rと車体座標系における地形データとが重なる面を、地表面F2に刃先130Dを接触させる条件下における到達可能範囲を表す基準範囲図形G26として特定する。次に、ゲージ生成部619は、カメラ122のカメラパラメータに基づいて左ラインG21、右ラインG22、最大到達ラインG23、目盛りラインG24及び基準範囲図形G26を画像に変換する。ゲージ生成部619は、変換された画像の各目盛りラインG24の近傍に、目盛り値G25を付す。これにより、ゲージ生成部619は地表面F2に投影された刃先到達ゲージ画像G2を生成することができる。
刃先影生成部613は、ゲージ生成部619と同様に、地形データに基づいて刃先130Dを地表面F2に投影した刃先影画像G1を生成する。
【0062】
表示画像生成部614は、データ取得部611が取得した撮像画像に、刃先影画像G1と刃先到達ゲージ画像G2を重畳することで、表示画像を生成する。図9は、第2の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。刃先到達ゲージ画像G2は、左ラインG21、右ラインG22、最大到達ラインG23、目盛りラインG24、目盛り値G25及び基準範囲図形G26を含む。
【0063】
図10は、第2の実施形態に係る刃先影画像G1と刃先到達ゲージ画像G2の関係を示す側面図である。第2の実施形態に係る刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2は、深度検出装置127によって検出される地表面F2上に沿って描画される。そのため、刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2を撮像画像に重畳すると、刃先影画像G1及び刃先到達ゲージ画像G2が地表面F2上に張り付いているように写る。
【0064】
第2の実施形態に係る基準範囲図形G26は、地表面F2に刃先130Dを接触させる条件下における到達可能範囲を表すが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る基準範囲図形G26は、第1の実施形態と同様に走行体110の底面を通る平面に刃先130Dを接触させる条件下における到達可能範囲を表すものであってもよい。この場合、ゲージ生成部619は、走行体110の底面を通る平面に刃先130Dを接触させる条件下における到達可能範囲を地表面F2に投影させることで基準範囲図形G26を生成する。
【0065】
〈第3の実施形態〉
第1、第2の実施形態に係る遠隔制御装置540が生成する基準範囲図形G26は、投影面(走行体110の底面を通る平面又は地表面)に刃先130Dを接触させる条件下における到達可能範囲を表す。これに対し、第3の実施形態に係る遠隔制御装置540は、アーム130Bのみを駆動させる条件下における刃先130Dの到達可能範囲を表す。これは、ローディングショベルの使用態様として、作業対象の掘削操作をアーム130Bの押し操作によって行うことが多く、ブームシリンダ131A及びバケットシリンダ131Cと比較して、アームシリンダ131Bのピストンがストロークエンドに当たる可能性が高いためである。第3の実施形態に係る作業システム1の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。
【0066】
《遠隔制御装置540》
図11は、第3の実施形態に係る遠隔制御装置540の構成を示す概略ブロック図である。第3の実施形態に係る遠隔制御装置540は、第1の実施形態に係る構成に加え、さらに基準範囲特定部620を備える。基準範囲特定部620は、姿勢特定部612が特定したブーム130A及びバケット130Cの姿勢に基づいて、ブーム130A及びバケット130Cを固定し、アーム130Bのみを駆動させる場合の刃先130Dの到達可能範囲を計算する。
【0067】
図12は、第3の実施形態に係る刃先影画像G1と刃先到達ゲージ画像G2の関係を示す側面図である。具体的には、基準範囲特定部620は、ブーム130Aの姿勢に基づいてアーム130Bの回転中心P(ピン中心)を特定し、バケット130Cの姿勢に基づいて回転中心から刃先130Dまでの長さLを特定する。そして、基準範囲特定部620は、既知のアーム130Bの回転範囲に基づいて、アーム130Bのみを駆動させる場合の刃先130Dの到達可能範囲R1を計算する。基準範囲特定部620は、計算した到達可能範囲R1を鉛直方向から投影面F1に投影することで基準範囲図形G26を生成する。基準範囲特定部620が生成する基準範囲図形G26は、ブーム130A及びバケット130Cの少なくとも一方の姿勢が変わるたびに変化する。
【0068】
これにより、オペレータは、刃先影画像G1が基準範囲図形G26の端に当たらないように作業機130を制御することで、アームシリンダ131Bのピストンがストロークエンドに当たらないように作業機械100を遠隔操作することができる。
【0069】
《変形例》
第3の実施形態に係る刃先到達ゲージ画像G2は、投影面F1に投影された形状であるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る刃先到達ゲージ画像G2は、第2の実施形態のように地表面F2に投影された形状であってもよい。
【0070】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0071】
上述した実施形態に係る遠隔制御装置540は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、遠隔制御装置540の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで遠隔制御装置540として機能するものであってもよい。このとき、遠隔制御装置540を構成する一部のコンピュータが遠隔運転室500内に設けられ、他のコンピュータが遠隔運転室500の外に設けられてもよい。例えば、遠隔制御装置540を構成する一部のコンピュータが作業機械100に設けられてもよい。
【0072】
図13は、他の実施形態に係る表示画像の一例を示す図である。上述した実施形態に係る刃先到達ゲージ画像G2は、左ラインG21及び右ラインG22を含むことで、オペレータに作業機130によって掘削される範囲を認識させることができる。一方で、他の実施形態に係る刃先到達ゲージ画像G2は、図13に示すように、表示画像において左ラインG21及び右ラインG22に代えて、中心ラインG27を含むものであってもよい。中心ラインG27は、刃先130Dの中心点を通り投影面に沿って前後方向に伸びる。この場合にも、オペレータは、中心ラインG27の端点、最大到達ラインG23、目盛りラインG24、目盛り値G25及び基準範囲図形G26の少なくとも1つによって、刃先130Dの奥行方向の位置を認識することができる。
【0073】
上述した実施形態に係る基準範囲図形G26は、所定条件下における刃先130Dの到達可能範囲の前縁及び後縁を示すが、他の実施形態においては、これに限られない。例えば、作業機械100がローディングショベルである場合、バケット130Cの刃先130Dが前方を向くため、通常、アーム130Bの押し動作によって掘削作業がなされる。そのため、到達可能範囲の後縁と比較して前縁の方がストロークエンドに当たる可能性が高い。したがって、他の実施形態に係る基準範囲図形G26は、所定条件下における刃先130Dの到達可能範囲の前縁のみを表すものであってもよい。他方、作業機械100がバックホウである場合、バケット130Cの刃先130Dが後方を向くため、通常、アーム130Bの引き動作によって掘削作業がなされる。そのため、到達可能範囲の前縁と比較して後縁の方がストロークエンドに当たる可能性が高い。したがって、他の実施形態に係る基準範囲図形G26は、所定条件下における刃先130Dの到達可能範囲の後縁のみを表すものであってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…作業システム 100…作業機械 110…走行体 120…旋回体 121…運転室 122…カメラ 130…作業機 130A…ブーム 130B…アーム 130C…バケット 130D…刃先 500…遠隔運転室 510…運転席 520…表示装置 530…操作装置 540…遠隔制御装置 611…データ取得部 612…姿勢特定部 613…刃先影生成部 614…表示画像生成部 615…表示制御部 616…操作信号入力部 617…操作信号出力部 618…地形更新部 619…ゲージ生成部 620…基準範囲特定部 G1…刃先影画像 G2…刃先到達ゲージ画像 G21…左ライン G22…右ライン G23…最大到達ライン G24…目盛りライン G25…目盛り値 G26…基準範囲図形
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13