(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】液体残量検知装置
(51)【国際特許分類】
G01F 23/32 20060101AFI20240813BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01F23/32 A
B41J2/175 315
B41J2/175 119
(21)【出願番号】P 2020165956
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 順司
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-115757(JP,A)
【文献】特開2017-128050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 23/00、23/14-23/2965、23/80
B41J 2/01、2/165-2/20、2/21-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体カートリッジに収容された液体の残量を検知する液体残量検知装置であって、
一対の発光部と受光部とを有する光学センサと、
液体を収容する収容部と、前記収容部に配置され液体の浮力を受けるフロートと、前記フロートの変位に連動して前記発光部が発する検知光の光路と交差する経路上を変位する遮光部と、をそれぞれが有する複数の液体カートリッジと、
を備え、
複数の前記遮光部は、
それぞれ単独では、前記受光部が受光する前記検知光の光量を所定の光量より小さくすることができない大きさであり、
前記複数の液体カートリッジのそれぞれにおいて前記フロートの位置が最大の高さにあるときに、前記光路と交差する方向に並んだ配置となって前記光路を遮り、前記受光部が受光する前記検知光の光量を所定の光量より小さくすることを特徴とする液体残量検知装置。
【請求項2】
前記所定の光量は、前記液体の残量が所定量未満であるか否かの判定の基準となる光量であることを特徴とする請求項1に記載の液体残量検知装置。
【請求項3】
前記遮光部は、前記経路に沿った方向の幅が、前記受光部の直径の半分よりも広く、前記直径より狭い請求項1又は2に記載の液体残量検知装置。
【請求項4】
複数の前記遮光部は、前記経路に沿った方向に並んだ配置となる請求項1~3のいずれか1項に記載の液体残量検知装置。
【請求項5】
前記液体カートリッジを2つ備え、
前記受光部は、2つの前記遮光部に対応して2分割された受光領域を有する2分割フォトダイオードである請求項1~4のいずれか1項に記載の液体残量検知装置。
【請求項6】
前記液体カートリッジを4つ備え、
4つの前記遮光部は、4つの前記液体カートリッジのそれぞれにおいて前記フロートの位置が最大の高さにあるときに、前記経路に沿った方向に2つ、前記経路と直交する方向に2つ、並ぶように配置される請求項1~3のいずれか1項に記載の液体残量検知装置。
【請求項7】
前記受光部は、4つの前記遮光部に対応して4分割された受光領域を有する4分割フォトダイオードである請求項6に記載の液体残量検知装置。
【請求項8】
前記液体カートリッジは、前記検知光を透過させる検知窓を有し、
前記遮光部は、前記検知窓の内部を変位し、
複数の前記液体カートリッジは、それぞれの前記検知窓が所定の方向に並ぶように配置され、
一対の前記発光部と前記受光部は、複数の前記検知窓を前記所定の方向に挟むように配置される請求項1~7のいずれか1項に記載の液体残量検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に液体を吐出して画像を記録する画像記録装置に備えられる液体残量検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙等の記録材に液体吐出ヘッドからインクに代表される液体を吐出して画像を記録する画像記録装置(液体吐出装置と称される場合もある。)が知られている。インク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。この画像記録装置には、記録ヘッドへ供給するインクを貯蔵するインクカートリッジ(液体カートリッジ)が設けられる。インクカートリッジは、画像記録装置に対して着脱可能でありインクカートリッジ内のインクが無くなると、そのインクカートリッジが画像記録装置から取り外されて、新しいインクカートリッジが画像記録装置に装着される。このようなインクカートリッジの交換時期を判定するために、インクカートリッジ内のインク残量を検知する手段が提案されている。
【0003】
液体残量検知の手段のひとつにインクカートリッジの容器内で回動可能なフロートの浮力を利用してインクの貯留量の変位を検知する方法がある。変位が連結部材の回動となって遮光板を姿勢変化させ遮光板の姿勢変化を光学的に検知し、インク室内のインク量が判定される。
【0004】
特許文献1ではフロートを逆三角形にすることで、浮力から重力への転換性を増し、インクの表面張力抵抗に対し回動しやすくすることで、インク量の検知精度を高めたインクカートリッジが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液体吐出装置の振動などによるインク液面の上下変動が遮光板に連動するので、インクの液面の上下変動が安定するまでの間インク残量検知に誤差を生じさせる。
【0007】
本発明の目的は、インク残量検知における誤差を低減させることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の液体残量検知装置は、
液体カートリッジに収容された液体の残量を検知する液体残量検知装置であって、
一対の発光部と受光部とを有する光学センサと、
液体を収容する収容部と、前記収容部に配置され液体の浮力を受けるフロートと、前記フロートの変位に連動して前記発光部が発する検知光の光路と交差する経路上を変位する遮光部と、をそれぞれが有する複数の液体カートリッジと、
を備え、
複数の前記遮光部は、
それぞれ単独では、前記受光部が受光する前記検知光の光量を所定の光量より小さくす
ることができない大きさであり、
前記複数の液体カートリッジのそれぞれにおいて前記フロートの位置が最大の高さにあるときに、前記光路と交差する方向に並んだ配置となって前記光路を遮り、前記受光部が受光する前記検知光の光量を所定の光量より小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インク残量の検知誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】インクカートリッジを2個並列させた斜視概略図
【
図3】インクカートリッジのインク貯留量が充填時の概略断面図
【
図4】インクカートリッジのインク貯留量が残量検知時の概略断面図
【
図5】光照射部7に向かって見たインク貯留量と遮光板の姿勢変化の概略図
【
図6】光照射部と遮光板の形状とインク残量検知の誤差関係を説明する概略図
【
図7】実施例1に係るインク残量検知装置及び画像記録装置の概略図
【
図8】実施例3、4に係る液体残量検知装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0012】
(実施例1)
【0013】
〔インクジェットプリンタ〕
図7を参照して、本発明の実施例1に係るインク残量検知装置及びインクジェットプリンタの概略構成について説明する。画像記録装置(液体吐出装置)であるインクジェットプリンタ100(以下、記録装置100)のインク供給装置には、カートリッジ装着部110が設けられている。制御部(CPU)104は、インク残量検知部103を含めた記録装置100全体の制御を行う。エンジン部105は、記録ヘッド108に記録動作を行わせるための駆動モータ等を有し、制御部104の指令によって動作する。ユーザインタフェイス部106は、不図示の表示パネルと操作パネルを有する。インタフェイス部107は、外部のホスト装置から記録データを受信する。
【0014】
記録ヘッド108は外部のホスト装置から送られてきた記録データに基づき、記録ヘッド108内部にある電気熱変換素子に電気エネルギーを供給することで熱エネルギーを発生させる。発生した熱エネルギーによってインクに気泡が発生し、気泡発生の際に生じる圧力によって記録媒体と対向する面に配された各吐出口からインク滴が吐出される。記録ヘッド108が記録媒体に対して往復移動しながらインク滴を吐出するとともに、記録ヘッド108の往復ごとに記録媒体が間欠搬送されることで、記録媒体全体に画像が記録される。
【0015】
複数のインク貯留部としてのインクタンク1、2は、ユーザによって着脱可能なカートリッジ式で、装着部110に色毎に装着されている。本実施例では、2色分のインクタンクのみを示しているが、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色分のインクタンクを着脱可能に構成してもよい。装着部110には各インクタンクの供給口3、4が接続されるジョイント部が設けられ、記録ヘッド108とジョイント部は、可撓性チュ
ーブなどで形成されたインク流路101、102によって接続される。なお、本実施例ではインク貯留部の一例として記録装置100本体に固定されたインクタンクのインク残量を検知する構成を例示するが、これに限らず、記録ヘッド108と共にキャリッジに搭載されるサブタンク等の形態であってもよい。
【0016】
制御部104は、後述する液体残量検知装置の残量検知によりインク残量が所定量未満の枯渇状態が検知されると、ユーザインタフェイス部106の表示パネルを介してユーザに報知し、インクカートリッジの確認及び新しいインクカートリッジへの交換を促す。
【0017】
〔インクカートリッジ〕
図1、
図2を参照して、液体カートリッジとしてのインクカートリッジの構成について説明する。カートリッジ装着部110には液体としてインクが貯留される容器であるインクカートリッジ1、2が装着され得る。インクカートリッジ1、2がカートリッジ装着部110に装着されるとインク供給口3、4を通じてインクが装置本体側へ流出可能となる。インクカートリッジ1、2の上部にはインクの残量を光学的に検知する、例えば赤外光を透過させる透光性の合成樹脂からなる検知窓5、6が突出している。
【0018】
〔インク残量検知器〕
液体残量検知装置としてのインク残量検知器は、インク残量を遮光板の姿勢変化で光学的に判定する光学検知部とインクカートリッジの容器内のインク貯留量の変位を回動可能なフロートで認知する残量変位検知部とからなる。
【0019】
〔光学的検知部〕
図1、
図2を参照して光学的検知部(光学センサ)の構成と動作について説明する。インクカートリッジ1の隣にインクカートリッジ1と同様の外形を有する別色のインクカートリッジ2が所定の方向に並列され、両インクカートリッジ1、2の検知窓5、6を挟むように一対の光照射部7と光受光部8が検知窓5、6に対面して配置される。光照射部(発光部)7は、LEDなどの発光素子であり、光受光部8は、フォトトランジスタ、フォトダイオードなどの受光素子からなる。
【0020】
インクカートリッジ1、2の容器内には、インク貯留量によって変位を認知する回動可能なフロート9、10と支軸11、12から連結部材であるアーム13、14で連動する遮光板15、16を有する。フロート9、10と支軸11、12、及びアーム13、14は同形状をなしているが、光照射部7から光受光部8に向かう光線を遮光する遮光板15、16は異なる形状を成す。よって、光学的検知部の主構成は、一対の光照射部7と光受光部8と、2個のインクカートリッジ1、2の検知窓5、6と、遮光部としての遮光板15、16と、からなる。
【0021】
インク貯留量が減ってフロート9、10がインクカートリッジ1、2の底面側に変位する回転方向に対し、前記光線を垂直線方向に等分割した光照射部7に向かって、遮光板15は右半分を、遮光板16は左半分を遮光する遮光板形状を有する。インクカートリッジの容器内にインクが充填されている場合は、光照射部7からの光線は遮光板15、16で遮光されるので、光受光部8では前記光線が受光されず、出力をOFF状態と判定する。遮光板15または16の姿勢が変化し前記光線が光受光部8に到達すると出力をON状態と判定する。すなわち、遮光板15,16は、インクカートリッジ1、2のインク収容部に配置されたフロート9、10の変位に連動して検知光としての前記光線の光路と交差する経路上を変位する。
【0022】
〔残量変位検知部〕
図3、
図4を参照して、残量変位検知部の構成と動作について説明する。
図3と
図4は
、インクカートリッジの容器内のインク貯留量が充填している場合と残量を検知している場合の状態をそれぞれに示す。
図3は、インクカートリッジ1がカートリッジ装着部に装着され、インク供給口3を通じてインクが装置本体側へ流出可能となる状態である。
図4は、インク室内のインクが所定量未満になり、新しいインクカートリッジに交換する時期を認知した状態である。
【0023】
図3において、残量変位検知器部の主構成はフロート9、支軸11及び連結部材のアーム13とストッパ17とからなる。フロート9は、インクよりも比重の小さい例えば、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂などからなる密閉容器からなる。フロート9は、支軸11と連結しており、支軸11からアーム13で検知窓5にある遮光板15と連結されている。インク充填時にはフロート9に発生する浮力が支軸11で連動された遮光板15に、光照射部7かの光線に向かって左回転を成す回動力を生じさせている。しかしながら、フロート9がインク内に強制的に沈められた状態を保たせられるようにインクカートリッジ1の容器内に設けてあるストッパ17に突き当てられる。この為、インク面がフロート9より下に下がるまで、左回転への回動力が生じ、フロート位置はストッパ17で固定され、遮光板15は光線を遮光する起立位置に保たれることになる。
【0024】
図4においては、インク面がフロート9より下に下がることで、フロート9は浮力よりも重力が勝り、支軸11で連動された遮光板15に光照射部7からの光線に向かって右回転を成す回動力を生じさせる。インク面が所定量未満になるとフロート9はインクカートリッジ1の底面に近接した残量認知状態に至る。この時、支軸11でフロート9と連動した遮光板15は、光照射部7の光線領域を避けた検知窓5の右端部に姿勢変化し、前記光線を光受光部8に受光させる。残量認知状態おけるフロート9は浮力よりも重力が勝り、装置の振動などによりインク液面が上下に変動しても安定してインクカートリッジ1の底面に近接した状態を保つ為、支軸11で連動した遮光板15も検知窓5の右端部に保持される。
【0025】
〔インク残量検知器の動作〕
図5に光受光部8から光照射部7に向かって見たときのインク貯留量に応じた遮光板15、16の姿勢変化の概略図を示す。2個のインクカートリッジ1、2のインク残量を1対の光照射部7と光受光部8とで判定する際に光受光部8が受光か否かを検知する遮光板15、16の姿勢変化を説明する。
【0026】
図5(a)は光照射部7からの光線が遮光板15、16で遮光されており、紙面の手前側に位置する光受光部8には光線が到達し得ていないので、光受光部8は出力をOFFとしてインク充填状態と判定する。尚
図5(a)は
図3におけるフロート9がストッパ17に突き当り、遮光板15が光線を遮光する起立位置に保たれている状態である。
【0027】
図5(b)は遮光板15、16が光照射部7の光線領域の外側に姿勢変化しており、紙面の手前側に位置する光受光部8に光線が到達し得えるので、光受光部8は出力をONとしてインクが所定量未満と判定する。尚、
図5(b)は
図4におけるフロート9の浮力よりも重力が勝る為、装置の振動などによりインク液面が上下に変動してもインクカートリッジ1の底面にフロート9が近接した状態を保ち、遮光板15は検知窓5の右端部に保持されている状態である。遮光板16も同様である。前記出力ONの信号が装置本体側に表示されるので、インクカートリッジを目視して、インクが無くなったインクカートリッジを新しいインクカートリッジに交換する。
【0028】
図5(c)の遮光板15は光照射部7の光線領域の外側に姿勢変化し終えているが、遮光板16は前記光線を遮光している。これにより、光受光部8では光線の半分、50%を受光し得ている。光受光部8は出力をONとしてインクが所定量未満と判定する。前記出
力ONの信号が装置本体側に表示されるので、インクカートリッジを目視して、インクが無くなったインクカートリッジを新しいインクカートリッジに交換する。
【0029】
図5(d)は遮光板15が光照射部7の光線領域の外側に姿勢変化し終えているが、遮光板16は前記光線領域と前記光線領域外の中間に姿勢変化している。すなわち、遮光板16は、
図3でいうところのフロート9がストッパ17に突き当てられた状態から、
図4でいうところのインクカートリッジ1の底面に近接した状態に姿勢変化する遷移状態に位置している。
【0030】
インク面がフロート9の上面より下に下がり始め、浮力と重力が均衡しているインク貯留量にあり、装置の振動などによりインク面が上下に変動すると、フロートが浮き沈みする状態にある。
図5(d)では、振動によりインク面が上がると浮力が増し、支軸11で連動した遮光板16が前記光線領域の内側に姿勢変化する、またインク面が下がると重力が増し、支軸11で連動した遮光板16は前記光線領域の外側に姿勢変化する。
【0031】
インク面が上下に変動し、遮光板16が光線領域の内側と外側に姿勢変化しつつも、光受光部8では常に、所定の光量として、光線の30%以上を受光し得る。なぜならば、本実施例における遮光板16は、光線径を最も大きな面積で遮光する場合である遮光板が光線の中央に位置する場合においても、受光部8での受光量が30%以上となるような大きさにしているからである。これにより、受光部8は出力をONとしてインク所定量未満と判定する。なお、遮光板15においても同様であり、最も光線径を遮る状態であっても、受光部8での受光量が30%以上となるような大きさにしている。なお、インクカートリッジの交換要否の判定においてインク残量が所定量未満であるか否かの判定の基準となる所定の光量の割合としては、30%に限定されるものではなく、装置仕様等に応じて適宜設定されるものである。
【0032】
尚、30%以上の光受光量を得る遮光板15、16の形状は、概略円形の光線を等分割する遮光板の幅Lが、光線径Φの半部よりは広く、光線径Φよりは狭い条件が必要である。すなわち、遮光板15、16は、それぞれ単独では光受光量を30%より小さくすることができない大きさである。遮光板15、16の大きさは、フロート9、10の位置がそれぞれ最大の高さとなり光線の光路と交差する方向に並んだ配置となったときに、光受光量を30%より小さくするように遮ることができるように設定される。より好ましくは、
図5(a)のインク充填状態で、光線漏れにより光受光部8に検知誤差が生じない最小の幅とする。光線漏れによる検知誤差としては、光照射部7と光受光部8の設置時における光線軸調整誤差およびインクカートリッジのカートリッジ装着時の装着位置誤差に伴う遮光板の位置誤差などが影響する。
【0033】
図5(e)は、遮光板16が光照射部7の光線領域の外側に姿勢変化し終えているが、遮光板15が前記光線領域と前記光線領域外の中間に姿勢変化している。遮光板15は
図3のフロート9がストッパ17に突き当てられた状態から
図4のインクカートリッジ1の底面に近接した状態に姿勢変化する遷移状態に位置している。遮光板16は、
図4でいうフロート9が浮力よりも重力が勝る状態にあり、装置の振動などによりインク面が上下に変動してもインクカートリッジ1の底面にフロート9が近接した状態を保つ。これにより遮光板16は検知窓6の右端部に姿勢変化した状態を保持する。よって、光受光部8では光線の半分である50%以上を受光し得ている。光受光部8は出力をONとしてインクが所定量未満と判定する。
【0034】
〔光学検知部の判定誤差低減〕
図6は光受光部8から光照射部7に向かって見た、光照射部と遮光板の形状がそれぞれに異なる場合の遮光板の姿勢変化と光学検知部の判定誤差を説明する概略図である。
図6
(a)~(d)は1個のインクカートリッジに1対の光照射部と光受光部を使用し、
図6(e)、(f)は2個のインクカートリッジに1対の光照射部と光受光部を使用した説明概略図になる。
【0035】
図6(a)は光照射部の径が0.6Lで遮光板の幅を2Lとし、インク面の上下への変動がΔ生じるとしている。斜線で表示した遮光板はインク充填時にあった初期の起立位置を示す。遮光板の中心と光照射部の中心は一致している。実線はインク充填時からインク残量判定位置に姿勢変化する途中の遷移状態を表示する。また、インク面の上下への変動Δを点線の長方形で表示する。遮光板がフロートの変位に連動して姿勢変化を始め、光照射部7の光線領域から外れ始めると、インク面の上下への変動Δを受けるようになる。図では簡略の為、遮光板の姿勢変化を横に移動させて図示している。これにより遮光板が光照射部の光線を遮光したり、透過させたりする誤動作が生じてくる。すなわち、紙面に対し上面側に位置する光受光部は、出力をOFFにしたりONにしたりするので、光学検知部としては判定誤差を生じさせることになる。
【0036】
光受光部が安定した出力を得るには、遮光板が光照射部の光線領域より外側の右方向にインク面の上下変動ΔにLを加えただけ姿勢変化した
図6(b)の状態になる必要がある。すなわちインク充填状態である初期の遮光板位置から右へ、光照射部の中央までの長さLと光照射部の半径0.3Lと液面変動Δを加えた1.3L+Δだけ移動する必要がある。
【0037】
図6(c)は、光照射部の径を0.6Lから1.8Lに広げ、遮光板の幅とインク面の上下変動は同じく2LとΔとする。遮光板がフロートの変位に連動して姿勢変化を始め、フロートがインクカートリッジの底面に近接した状態を保持し、インク面の上下変動Δの影響を既に受けない状態にある。すなわち、光受光部が安定に出力をOFFからONに切り替えるのに必要となる遮光板の姿勢変化は、遮光板の1/2幅のLと光照射部の半径0.9Lと液面変動Δを加えた1.9L+Δとなる。
【0038】
図6(d)は光受光部での出力の切り替え、即ちONとOFFの切り替えを、受光量30%以上で行う設定にした場合の、遮光板の姿勢変化位置を示す。径が1.8Lの光照射部から30%の光量を受光するには、光照射部の左端から0.7Lだけ遮光板が光線の中央側に移動すればよい。すなわちインク面の上下変動に対し光受光部が安定した出力を得るには、初期遮光板の左端から光照射部までの距離0.1Lと光量が30%以上となる光照射部の照射幅0.7Lと液面変動の幅Δとを加えた0.8L+Δだけ遮光板が姿勢変化する必要がある。
【0039】
図6(e)と
図6(f)は、
図2に示すインク残量検知器の遮光板15と16に相当する。
図6(e)は、光照射部の径1.8Lに遮光板15がインク液面の上下変動Δの影響を既に受けないだけ姿勢変化した状態である。すなわち光照射部の半径0.9Lとインク液面の変動Δとを加えた0.9L+Δだけ右に姿勢変化させる必要がある。遮光板15が
図6(e)の状態にあると、
図6(f)の遮光板16は、光照射部7の径(直径)の約半分の幅からなるので、光照射部7からの光線のどの位置にいても30%以上の光量が得られる。この為、光学的検知部ではインク液面の誤差の影響は受けない。
【0040】
本発明ではインク液面の上下変動±Δを解消できるものではないが、光照射部の径よりも遮光板の幅を相対的に小さくすることで、光受光部の出力判定誤差を低減できるものである。例えば
図6(a)では、光照射部の径と遮光板の幅は0.6L対2Lである、
図6(c)では1.8L対2Lである、これに対し
図6(e)では1.8Lに対してL(3.6Lに対して2L)と遮光板の幅を光照射部の光線径よりも小さくしている。この時の姿勢変化距離は、
図6(a)で1.3L+Δであるのに対し、
図6(e)の遮光板は0.9
L+Δとなり、遮光板の姿勢変化による判定誤差を0.4L低減できる効果がある。
【0041】
更に、本発明では、カートリッジごとに遮光板15、16の取り付け位置が異なる構成とすること、また、光受光量の出力設定を受光量の30%以上に設定することで、隣り合うインクカートリッジのインク残量検知を一対の光照射部と光受光部で検知できるので、部品点数が削減される効果がある。その際、30%以上の受光量の判定対象となるインクカートリッジの遮光板はインク液面の上下変動Δの影響を受けないようにすることで、光線に対し垂直方向に等分割した遮光板を用いることでの光学的判定誤差の優位性が保たれる効果がある。
【0042】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された限りにおいて設計変更が可能である。
【0043】
(実施例2)
実施例1の光学検知部に2分割フォトダイオードを用いると、一対の光照射部と光受光部で隣り合うインクカートリッジのどちらのインクが残量検知しているかを識別することができる。2分割フォトダイオードは、2分割された光受光面への受光量差を演算させて出力を得るものである。
図2の光受光部を、2つの遮蔽板15、16に対応して2分割された受光領域を有する2分割フォトダイオードに変えて、遮光板15、16で遮光する光線に相当する受光を左右に分割された受光面で受けるものである。
【0044】
図5(a)では左右の受光部ともに受光量が等しく0%となる。
図5(b)では左右の受光部ともに等しく左右の総合受光量100%に対し、受光量はそれぞれ50%になる。
図5(c)では左の受光部が受光量0%で、左右の総合受光量100%に対し、右の受光量は50%になる。
図5(d)と
図5(e)の状態における受光量については
図6(e)と
図6(f)を参考にして説明する。
【0045】
図6(e)と
図6(f)に示すように、遮光板15のインクカートリッジ1が残量検知状態の姿勢変化をしている場合、遮光板16が光照射部7を左右に横切る。2分割フォトダイオードでは左の受光量と右の受光量とで受光量の増減が逆転し、且つ光受光量が30%以上ある時をインカートリッジ1のインクが無いと判定する。前記出力ONの信号が装置本体側に表示されるので、表示された色のインクカートリッジを新しいインクカートリッジに交換する。
【0046】
また、
図6(e)と
図6(f)の姿勢変化状態で遮光板の符号が反対の場合、すなわち、
図6(e)の状態に遮光板16を、
図6(f)の状態に遮光板15が用いられるとする。遮光板15が光照射部を左右に横切ることになるが、遮光板16が光線領域から外れているので常に左の光受光面には50%受光していることになる。よって、2分割フォトダイオードでは左の受光量が50%で、且つ右の受光量が0~50%の範囲で増減している時をインカートリッジ2のインクが無いと判定する。
【0047】
本実施例2によれば実施例1の光受光部に2分割フォトダイオードを用いることによりインクカートリッジのインク残量の色別判定が可能となる効果がある。
【0048】
(実施例3)
実施例1は、2個並列のインクカートリッジを一対の光学的手段で検知するものであるが、インクカートリッジを4個並列に並べて一対の光照射部と光受光部でインク残量を検知することも同様に可能である。ただし、実施例1の2個並列では、遮光板は光照射部からの光線に対しフロートが回動する向きに対し垂直線方向に等分割されていたが、実施例3では、更に水平線方向への等分割を加え4分割された遮光板を用いる。
図8(a)、(
b)に、4分割された遮光板15a、15b、16a、16bの構成例を示す。所定の光量として光受光部に15%以上の受光量を受光した際にインク残量が検知されように設定し、装置本体に信号が表示された場合、インクカートリッジを目視して、インクが無いカートリッジを新しいカートリッジに交換する。
【0049】
本実施例3によれば4個までのインクカートリッジを一対の光照射部と光受光部とでインク残量の検知が可能となるので部品点数が削減される効果がある。
【0050】
(実施例4)
実施例2では光受光部に2分割フォトダイオードを用いたが、実施例3の4個並列したインクカートリッジの残量を1対の光学的手段で検知する場合、光受光部に4分割フォトダイオードを使用する。
図8(c)に、4分割された遮光板15a、15b、16a、16bに対応して4分割された受光領域7a、7b、7c、7dを有する4分割フォトダイオードの構成例を示す。すなわち、4つの受光領域7a、7b、7c、7dは、遮光板の変位経路に沿った方向に2つ、該経路と直交する方向に2つ、並ぶ配置となっている。その際に、光受光部の出力設定を15%以上とすることで4個の並列インクカートリッジのインク残量を色別毎に判断可能となる効果がある。
【符号の説明】
【0051】
1、2…インクカートリッジ、3、4…供給口、5、6…検知窓、7…光照射部、8…光受光部、9、10…フロート、11、12…支軸、13、14…アーム、15、16…遮光板、17…ストッパ