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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】厚みムラ検査装置及び厚みムラ検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240813BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01B11/06 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020175873
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067253
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100214514
【弁理士】
【氏名又は名称】鳴村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】志水 早苗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一晃
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020880(JP,A)
【文献】国際公開第2019/229871(WO,A1)
【文献】特開2004-223437(JP,A)
【文献】再公表特許第01/071323(JP,A1)
【文献】特開2017-072393(JP,A)
【文献】特開2012-132836(JP,A)
【文献】特開2015-102442(JP,A)
【文献】特開平10-260139(JP,A)
【文献】国際公開第2008/105460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/958
G01B 9/00-G01B11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体を撮像した評価画像に基づいて、該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査装置であって、
前記被検査体に光を照射する照明部と、
前記照明部によって照明される前記被検査体を撮像する撮像部と、
を備え、
前記撮像部は、
複数の撮像素子と、
前記複数の撮像素子のうちの少なくとも2つ以上の撮像素子から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、前記評価画像を生成する処理回路と、
を含
前記照明部は、少なくとも、第1の波長の光と、該第1の波長の光の強度よりも低い光強度を有する第2の波長の光と、を出射し、
前記処理回路は、nを1以上の整数とし、mをnよりも大きい整数としたとき、
前記照明部が前記第1の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのn個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記照明部が前記第2の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのm個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記被検査体は、カラーレジスト膜である、
厚みムラ検査装置。
【請求項2】
被検査体を撮像した評価画像に基づいて、該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査装置であって、
前記被検査体に光を照射する照明部と、
前記照明部によって照明される前記被検査体を撮像する撮像部と、
を備え、
前記撮像部は、
複数の撮像素子と、
前記複数の撮像素子のうちの少なくとも2つ以上の撮像素子から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、前記評価画像を生成する処理回路と、
を含
前記照明部は、少なくとも、第3の波長の光と、該第3の波長とは異なる第4の波長の光と、を出射し、
前記複数の撮像素子各々において、前記第4の波長の光に対する受光感度は、前記第3の波長の光に対する受光感度よりも低く、
前記処理回路は、iを1以上の整数とし、jをiよりも大きい整数としたとき、
前記照明部が前記第3の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのi個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記照明部が前記第4の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのj個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記被検査体は、カラーレジスト膜である、
厚みムラ検査装置。
【請求項3】
前記撮像部は、前記照明部から出射され、前記被検査体を透過した光を受光する位置に設けられる、
請求項1又は2に記載の厚みムラ検査装置。
【請求項4】
前記撮像部は、前記照明部から出射され、前記被検査体に反射した光を受光する位置に設けられる、
請求項1又は2に記載の厚みムラ検査装置。
【請求項5】
被検査体を撮像した評価画像に基づいて、該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査方法であって、
前記被検査体に光を照射する照明ステップと、
前記照明ステップで照明される前記被検査体を撮像する撮像ステップと、
を含み、
前記撮像ステップでは、複数の撮像素子のうちの少なくとも2つ以上の撮像素子から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、前記評価画像を生成し、
前記照明ステップでは、少なくとも、第1の波長の光と、該第1の波長の光の強度よりも低い光強度を有する第2の波長の光と、を出射し、
前記撮像ステップでは、nを1以上の整数とし、mをnよりも大きい整数としたとき、
前記照明ステップで前記第1の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのn個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記照明ステップで前記第2の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのm個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記被検査体は、カラーレジスト膜である、
厚みムラ検査方法。
【請求項6】
被検査体を撮像した評価画像に基づいて、該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査方法であって、
前記被検査体に光を照射する照明ステップと、
前記照明ステップで照明される前記被検査体を撮像する撮像ステップと、
を含み、
前記撮像ステップでは、複数の撮像素子のうちの少なくとも2つ以上の撮像素子から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、前記評価画像を生成し、
前記照明ステップでは、少なくとも、第3の波長の光と、該第3の波長とは異なる第4の波長の光と、を出射し、
前記複数の撮像素子各々において、前記第4の波長の光に対する受光感度は、前記第3の波長の光に対する受光感度よりも低く、
前記撮像ステップでは、iを1以上の整数とし、jをiよりも大きい整数としたとき、
前記照明ステップで前記第3の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのi個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記照明ステップで前記第4の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのj個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、
前記被検査体は、カラーレジスト膜である、
厚みムラ検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚みムラ検査装置及び厚みムラ検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に塗布されたカラーレジスト膜の塗布ムラを検査する装置が開示されている。当該装置は、カラーレジスト膜をその裏面から照明する照明部と、カラーレジスト膜をその表面から撮像する撮像部と、を備える。撮像部によって撮像された画像は、カラーレジスト膜の厚み分布(厚みムラ)に対応した輝度分布を有しており、カラーレジスト膜の厚みが相対的に厚い領域は、輝度が相対的に低い(暗い)表示となり、カラーレジスト膜の厚みが相対的に薄い領域は、輝度が相対的に高い(明るい)表示となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-223437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラーレジスト膜の厚み分布が評価しやすくなるため、撮像部によって撮像された画像において、カラーレジスト膜の厚みが厚い領域(相対的に暗い領域)の輝度値と、カラーレジスト膜の厚みが薄い領域(相対的に明るい領域)の輝度値との差は、できるだけ大きいことが好ましい。しかし、照明部から出射される光の強度が低い場合、又は、照明部から出射される光の波長が、撮像部を構成する撮像素子の受光感度が低い波長である場合、カラーレジスト膜の厚みが薄い領域の輝度値が低くなるため、カラーレジスト膜の厚みが厚い領域と薄い領域の輝度差は、小さくなる。このような全体的に輝度値が低い画像では、カラーレジストの厚み分布の評価が難しくなる。
【0005】
カラーレジスト膜の厚みが厚い領域と薄い領域の輝度差が大きい画像を得るために、撮像の際、撮像部の露光時間(撮像素子を光に曝す時間)を長くして撮像素子に取り込まれる光の量を多くすることが考えられる。しかし、露光時間を長くすると、検査にかかる時間も長くなるという課題を招来する。
【0006】
また、カラーレジスト膜の厚みが厚い領域と薄い領域の輝度差が大きい画像を得るために、撮像の際、撮像部の絞り(撮像素子に達する光の量を調整する機構)を開けて撮像素子に取り込まれる光の量を多くすることが考えられる。しかし、絞りの開閉の調整にも時間がかかるため、結果として、検査にかかる時間が長くなるという課題を招来する。
【0007】
また、カラーレジスト膜の厚みが厚い領域と薄い領域の輝度差が大きい画像を得るために、撮像素子の感度・ゲインを上げて撮像することが考えられる。しかし、撮像素子の感度・ゲインを上げると、ノイズ信号も増幅されてしまい、画像の明瞭度(S/N比)が低下する。画像のS/N比が低下すると、検査の精度が低減する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被検査体を撮像した画像に基づいて、当該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査装置において、時間をかけずに、検査に有効な画像を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一実施態様に係る厚みムラ検査装置は、被検査体を撮像した評価画像に基づいて、該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査装置であって、前記被検査体に光を照射する照明部と、前記照明部によって照明される前記被検査体を撮像する撮像部と、を備え、前記撮像部は、複数の撮像素子と、前記複数の撮像素子のうちの少なくとも2つ以上の撮像素子から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、前記評価画像を生成する処理回路と、を含み、前記照明部は、少なくとも、第1の波長の光と、該第1の波長の光の強度よりも低い光強度を有する第2の波長の光と、を出射し、前記処理回路は、nを1以上の整数とし、mをnよりも大きい整数としたとき、前記照明部が前記第1の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのn個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、前記照明部が前記第2の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのm個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、前記被検査体は、カラーレジスト膜である。
上記目的を達成するため、本発明の他の実施態様に係る厚みムラ検査装置は、被検査体を撮像した評価画像に基づいて、該被検査体の厚みを検査する厚みムラ検査装置であって、前記被検査体に光を照射する照明部と、前記照明部によって照明される前記被検査体を撮像する撮像部と、を備え、前記撮像部は、複数の撮像素子と、前記複数の撮像素子のうちの少なくとも2つ以上の撮像素子から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、前記評価画像を生成する処理回路と、を含み、前記照明部は、少なくとも、第3の波長の光と、該第3の波長とは異なる第4の波長の光と、を出射し、前記複数の撮像素子各々において、前記第4の波長の光に対する受光感度は、前記第3の波長の光に対する受光感度よりも低く、前記処理回路は、iを1以上の整数とし、jをiよりも大きい整数としたとき、前記照明部が前記第3の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのi個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、前記照明部が前記第4の波長の光により前記被検査体を照明する場合には、前記複数の撮像素子のうちのj個の撮像素子から得られる輝度情報に基づいて、前記評価画像を生成し、前記被検査体は、カラーレジスト膜である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施態様に係る厚みムラ検査装置によれば、時間をかけずに、検査に有効な画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る厚みムラ検査装置の全体構造を示す模式図である。
図2図1に示す被検査対象Kの一部分を示す平面図である。
図3図1に示す照明部の構造及び構成を示す模式図である。
図4図3に示す光源の発光強度特性を示すグラフである。
図5図1に示す撮像部の構造及び構成を示す模式図である。
図6図5に示す撮像素子の受光感度特性を示すグラフである。
図7図1に示す制御部の構成を示すブロック図である。
図8図1に示す制御部による検査処理の流れを示すフローチャートである。
図9図8に示すフローチャートの続きを示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る厚みムラ検査装置の全体構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
[厚みムラ検査装置の全体構造]
図1を参照して、第1実施形態に係る厚みムラ検査装置1の全体構造を説明する。理解を容易にするため、水平面を構成するX軸及びY軸、並びに、X軸及びY軸に直交するZ軸からなるXYZ直交座標系を設定する。図1において、右方向をX軸正方向に設定し、左方向をX軸負方向に設定する。また、奥行方向をY軸正方向に設定し、手前方向をY軸負方向に設定する。また、上方向をZ軸正方向に設定し、下方向をZ軸負方向に設定する。
【0013】
厚みムラ検査装置1は、被検査体Kに光Lを照射する照明部11と、照明部11によって照明される被検査体Kを撮像する撮像部12と、被検査体Kを移動させる移動部13と、照明部11,撮像部12,移動部13等を制御し、被検査体Kの厚みに係る検査の合否を判定する制御部(判定部)14と、撮像部12によって撮像された画像を表示する表示部15と、制御部14に種々の情報を入力する入力部16と、を備える。なお、本実施形態において、被検査体Kは、透光性を有するガラス基板Tの上に設けられたカラーレジストの薄膜である。
【0014】
図2には、被検査体Kの一部分の平面パターンが例示される。本実施形態において、被検査体Kは、赤レジスト膜R、緑レジスト膜G及び青レジスト膜Bが周期的に配列するカラーレジストの薄膜である。赤レジスト膜Rは赤色光(波長約730nm)を透過し、緑レジスト膜Gは緑色光(波長約520nm)を透過し、青レジスト膜Bは青色光(波長約470nm)を透過するものとする。
【0015】
図1に戻って、厚みムラ検査装置1の全体構造の説明を続ける。照明部11は、被検査体Kをその下方(Z軸負方向側)から照明する。照明部11は、制御部14の制御により、所望の波長の光Lを出射する。照明部11は、本実施形態においては、赤色光Lr(波長約730nm)、緑色光Lg(波長約520nm)及び青色光Lb(波長約470nm)を出射するものとする。
【0016】
撮像部12は、被検査体Kをその上方(Z軸正方向側)から撮像する。撮像部12は、照明部11から出射され、被検査体Kを透過した光Lを受光する。撮像部12は、フォトダイオード(受光素子)が1次元的に配列する撮像素子を複数含む、いわゆる時間遅延積分(TDI:Time Delay Integration)方式を採用するカメラである。なお、フォトダイオードが1次元的に配列する撮像素子は、一般にラインセンサと呼ばれる。また、TDI方式とは、複数のラインセンサ各々の撮像により得られる輝度値を積算して、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きい画像を生成する方式をいう。なお、撮像部12は、制御部14の制御により、撮像に利用するラインセンサの個数を選択できる機能を有している。
【0017】
移動部13は、例えば、被検査体KをX軸に沿って移動させるベルトコンベアである。なお、移動部13は、被検査体Kに対して、撮像部12を相対的に移動させるものであればよく、照明部11及び撮像部12を移動させる機構であってもよい。
【0018】
制御部14には、例えば、一般的なコンピュータが用いられる。制御部14は、例えば、照明部11から出射される光の波長を制御する。また、制御部14は、撮像部12に被検査体Kを撮像させる。また、制御部14は、移動部13を制御することにより、被検査体Kの移動方向、移動速度等を制御する。
【0019】
表示部15には、例えば、液晶モニタ、有機EL(Electro-Luminescense)ディスプレイ等が用いられる。表示部15には、撮像部12によって撮像された画像が表示される。また、表示部15には、照明部11、撮像部12、移動部13等の制御に係るパラメータ、被検査体Kにおいて厚み異常と判定する厚みの閾値等を設定できるグラフィック画面が映し出される。
【0020】
入力部16は、例えばキーボードを含む。ユーザは、入力部16を介して、制御部14に、照明部11、撮像部12、移動部13等の制御に係るパラメータ、被検査体Kにおいて厚み異常と判定する厚みの閾値等を入力することができる。
【0021】
[照明部の構造及び構成]
図3を参照して、図1に示される照明部11の詳細な構造及び構成について説明する。照明部11は、演色性が高い白色光を出射する光源111と、光源111から出射される白色光のうち、特定の波長帯の光のみを透過する赤フィルタ112r,緑フィルタ112g及び青フィルタ112bと、を含む。赤フィルタ112r,緑フィルタ112g及び青フィルタ112bは、被検査体Kの赤レジスト膜R,緑レジスト膜G及び青レジスト膜Bの透過波長に合わせて設けられる。
【0022】
本実施形態において、赤フィルタ112rは、中心透過波長が730nmである光学フィルタである。また、緑フィルタ112gは、中心透過波長が520nmである光学フィルタである。また、青フィルタ112bは、中心透過波長が470nmである光学フィルタである。赤フィルタ112r,緑フィルタ112g及び青フィルタ112bは、中心透過波長においてほぼ100%の光透過率を有するものとする。
【0023】
光源111には、例えば発光ダイオードが用いられる。具体的には、青色光を出射する半導体発光素子と、青色光を吸収して黄色光を放出する蛍光体部材(波長変換部材)と、を含む発光ダイオードが用いられる。
【0024】
赤フィルタ112r,緑フィルタ112g及び青フィルタ112bは、フィルタ切換機構113によって保持される。フィルタ切換機構113は、制御部14からの制御信号に基づいて、赤フィルタ112r,緑フィルタ112g及び青フィルタ112bのいずれかを、光源111の光路上に配置する。
【0025】
制御部14の制御により赤フィルタ112rが光源111の光路上に配置された場合に、照明部11は赤色光Lrを出射する。また、制御部14の制御により緑フィルタ112gが光源111の光路上に配置された場合に、照明部11は緑色光Lgを出射する。また、制御部14の制御により青フィルタ112bが光源111の光路上に配置された場合に、照明部11は青色光Lbを出射する。
【0026】
図4は、本実施形態で用いられる光源111の発光強度特性を示すグラフである。このグラフの横軸は光源111から放出される光の波長を示し、縦軸はその波長の光の相対的な強度を示す。光源111から放出される光の強度は、以下のように、波長によって異なる。
【0027】
本実施形態で用いられる光源111において、約400nmから約450nmまでの波長範囲では、波長の増加とともに発光強度も増加する。発光強度は、波長約400nmにおいてはほぼ0である。また、発光強度は、波長約450nmにおいて最大となる。
【0028】
また、約450nmから約480nmまでの波長範囲では、波長の増加とともに発光強度は減少する。波長約480nmの発光強度は、波長約450nmの発光強度の40%程度である。
【0029】
また、約480nmから約550nmまでの波長範囲では、波長の増加とともに発光強度も増加する。波長約550nmの発光強度は、波長約450nmの発光強度の80%程度である。
【0030】
また、約550nmから約730nmまでの波長範囲では、波長の増加とともに発光強度は徐々に減少する。波長約730nmの発光強度は、波長約450nmの発光強度の10%程度である。
【0031】
なお、波長約520nmの光(緑色光Lg)を第1の波長の光と呼び、波長約470nmの光(青色光Lb)又は波長約730nmの光(赤色光Lr)を第2の波長の光と呼ぶことがある。また、波長約520nmの光(緑色光Lg)を第3の波長の光と呼び、波長約470nmの光(青色光Lb)を第4の波長の光と呼ぶことがある。
【0032】
[撮像部の構造及び構成]
図5を参照して、図1に示される撮像部12の詳細な構造及び構成について説明する。撮像部12は、いわゆるTDI方式を採用するカメラであり、Y軸に沿って伸長し、X軸に沿って配列する4つのラインセンサ121~124と、ラインセンサ121~124から取得される輝度情報に基づいて画像を生成する処理回路125と、を含む。処理回路125には、例えばDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。
【0033】
ラインセンサ121~124各々は、Y軸に沿って配列する複数のフォトダイオード(受光素子)PD~PDを含む。フォトダイオードPD~PDは、受光により、電荷を発生する。
【0034】
ラインセンサ121~124各々は、それらの下方(Z軸負方向)を通過する被検査体Kを、被検査体Kの通過速度に応じたタイミングで撮像する。ラインセンサ121~124各々は、撮像のたびに、フォトダイオードPD~PDに発生した電荷の量を含む輝度情報を、処理回路125に供給する。
【0035】
処理回路125は、ラインセンサ121~124各々から取得した輝度情報に基づいて、行列状に配列された複数の画素からなる撮影画像P1~P4を生成する。処理回路125は、輝度情報を取得するたびに、ラインセンサ121~124各々のフォトダイオードPD~PDに発生した電荷の量に基づいて、撮影画像P1~P4各々の行方向に配列する画素各々の輝度値を設定する。
【0036】
なお、処理回路125は、ラインセンサ121~124のうちのいくつかのラインセンサから取得した輝度情報を加工・合成することにより、撮影画像P1~P4各々のよりも暗い領域と明るい領域の輝度差が大きい画像を生成することができる。いくつかのラインセンサから取得した輝度情報を加工・合成して、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きい画像を生成する処理を、TDI処理と呼ぶこととする。また、TDI処理によって生成された画像を、TDI画像と呼ぶこととする。なお、処理回路125がTDI処理を実行するか否か、また、処理回路125がTDI処理を実行する際に利用するラインセンサ121~124の個数は、制御部14により制御される。
【0037】
TDI処理において、処理回路125は、ラインセンサ121~124からそれぞれ異なるタイミングで取得した輝度情報に基づいて、TDI画像を生成する。例えば、被検査体Kの一部分K1を、ラインセンサ121が時刻tに撮像し、ラインセンサ122が時刻tに撮像し、ラインセンサ123が時刻tに撮像し、ラインセンサ124が時刻tに撮像したとする。処理回路125は、時刻t~tにおいてラインセンサ121~124のフォトダイオードPD~PDに発生したそれぞれの電荷の量を積算して、被検査体Kの一部分K1が描写される画像を生成する。処理回路125は、このような処理を繰り返して、被検査体Kの全体が描写されるTDI画像を生成する。
【0038】
図6は、本実施形態で用いられるラインセンサ121~124各々に含まれるフォトダイオードPD~PDの受光感度特性を示すグラフである。なお、フォトダイオードPD~PDは、互いにほぼ同じ受光感度特性を有しているものとする。また、ラインセンサ121~124の受光感度特性という場合、それらを構成するフォトダイオードPD~PDの受光感度特性を指すものとする。
【0039】
このグラフの横軸はフォトダイオードPD~PDが受光する光の波長を示し、縦軸はその波長の光に対する相対的な受光感度(光電変換効率)を示す。本実施形態で用いられるフォトダイオードPD~PDは、可視光域を含む波長域で、受光する光の波長が長くなるとともに受光感度も概ね増加する傾向を有する。
【0040】
図4及び図6のグラフを参照して、フォトダイオードPD~PDに発生する電荷の量について説明する。フォトダイオードPD~PDは、受光する光の強度が高い場合、又は、受光する光に対する感度が高い場合に、より多くの電荷を発生する。逆に、フォトダイオードPD~PDは、受光する光の強度が低い場合、又は、受光する光に対する感度が低い場合には、より少ない電荷を発生する。つまり、フォトダイオードPD~PDに発生する電荷の量は、光源111の発光強度特性及びフォトダイオードPD~PDの受光感度特性に依存する。
【0041】
フォトダイオードPD~PDに発生する電荷の量について、より具体的に説明する。光源111の波長約450nmにおける発光強度を、基準強度Iと呼ぶこととする。また、フォトダイオードPD~PDの波長約450nmにおける受光感度の約2倍の受光感度を、基準感度Sと呼ぶこととする。
【0042】
例えば、フォトダイオードPD~PDが光源111から出射された波長約520nmの緑色光Lgを受光した場合、フォトダイオードPD~PDは、当該緑色光Lgの発光強度(約0.7I)と当該緑色光Lgに対する受光感度(約0.6S)とを乗算した値(約0.42IS)に比例した量の電荷を発生する。
【0043】
また、フォトダイオードPD~PDが光源111から出射された波長約470nmの青色光Lbを受光した場合、フォトダイオードPD~PDは、当該青色光Lbの発光強度(約0.4I)と当該青色光Lbに対する受光感度(約0.5S)とを乗算した値に比例した量(約0.20IS)の電荷を発生する。青色光Lbの受光により発生した電荷の量は、緑色光Lgの受光により発生した電荷の量の約1/2(=0.20IS/0.42IS)となる。
【0044】
また、フォトダイオードPD~PDが光源111から出射された波長約730nmの赤色光Lrを受光した場合、フォトダイオードPD~PDは、当該赤色光Lrの発光強度(約0.15I)と当該赤色光Lrに対する受光感度(約0.8S)とを乗算した値(約0.12IS)に比例した量の電荷を発生する。赤色光Lrの受光により発生した電荷の量は、緑色光Lgの受光により発生した電荷の量の約1/4(=0.12IS/0.42IS)となる。
【0045】
このように、フォトダイオードPD~PDに発生する電荷の量は、光源111の発光強度特性及びフォトダイオードPD~PDの受光感度特性に依存する。つまり、フォトダイオードPD~PDに発生する電荷の量は、フォトダイオードPD~PDが受光する光の波長によって変化する。
【0046】
次に、ラインセンサ121~124各々から取得される輝度情報に基づいて生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差について説明する。処理回路125は、ラインセンサ121~124各々から取得される輝度情報に基づいて、撮影画像P1~P4を生成する。より具体的には、処理回路125は、ラインセンサ121~124各々に含まれるフォトダイオードPD~PDにおいて発生した電荷の量を示す情報に基づいて、撮影画像P1~P4を構成する複数の画素の輝度値を設定する。
【0047】
このため、フォトダイオードPD~PDに発生した電荷の量が少ないと、撮影画像P1~P4を構成する複数の画素の輝度値も小さく設定され、その結果、生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差も小さくなる。例えば、本実施形態において、青色光Lbを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成された撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差は、緑色光Lgを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成された撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差の約1/2になる。また、赤色光Lrを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成された撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差は、緑色光Lgを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成された撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差の約1/4になる。
【0048】
なお、処理回路125は、ラインセンサ121~124各々から取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、撮影画像P1~P4よりも暗い領域と明るい領域の輝度差が大きいTDI画像を生成することができる。例えば、ラインセンサ121~124が青色光Lbを受光する場合、処理回路125は、ラインセンサ121~124のうちの2つのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行する。このTDI処理によって生成されるTDI画像の暗い領域と明るい領域の輝度差は、青色光Lbを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成された撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差の約2倍になる。
【0049】
また、例えば、ラインセンサ121~124が赤色光Lrを受光する場合、処理回路125は、4つのラインセンサ121~124のすべてから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行する。このTDI処理によって生成されるTDI画像の暗い領域と明るい領域の輝度差は、赤色光Lrを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成された撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差の約4倍になる。
【0050】
[制御部の構成]
図7を参照して、図1に示される制御部14の構成について説明する。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)141と、ROM(Read Only Memory)142と、RAM(Random Access Memory)143と、インターフェース144と、を備える。
【0051】
CPU(演算部)141は、演算処理を行い、制御部14の全体動作を統括制御する。CPU141は、ROM142に記憶される制御プログラムを読み出し、RAM143にロードして、各種機能に関する演算,ハードウェアユニットの制御等を行う。CPU141は、制御プログラムにしたがって、例えば、移動部13を駆動し、照明部11から光を出射させ、撮像部12に被検査体Kを撮像させる。また、撮像部12により撮像された画像を解析して、被検査体Kの局所的な厚み異常を評価する。
【0052】
ROM142は、例えば、被検査体Kの厚みムラ検査に係るプログラム、データ等を長期的に記憶する。ROM142には、例えば、マスクROM,EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリが用いられる。
【0053】
RAM143は、例えば、アプリケーションプログラム,ハードウェアユニットに設定される数値情報等を一時的に記憶する。RAM143には、例えば、SRAM(Static RAM),DRAM(Dynamic RAM)等の揮発性メモリが用いられる。
【0054】
インターフェース144は、CPU141と、照明部11、撮像部12、移動部13、表示部15、及び、入力部16を含む外部機器と、の間の通信を仲介する。CPU141は、インターフェース144を介して、それらの外部機器に情報を発信し、また、それらの外部機器から情報を受信する。
【0055】
[厚みムラ検査装置の動作]
図8及び図9に示されるフローチャートを参照して、制御部14が実行する検査処理を説明する。なお、上述したように、本実施形態において、被検査体Kは、赤レジスト膜R,緑レジスト膜G及び青レジスト膜Bを含むカラーレジスト膜である。
【0056】
本検査処理は、緑レジスト膜Gの厚み異常を検査するステップS111~S114と、青レジスト膜Bの厚み分布を検査するステップS121~S124と、赤レジスト膜Rの厚み異常を検査するステップS131~S134と、を含む。なお、厚み異常を検査するレジストの順番は、どのような順番であってもかまわない。本検査処理は、例えば、入力部16によって検査開始の操作が行われたときに、実行される。
【0057】
図8に示すように、ステップS111において、制御部14は、照明部11から緑色光Lgを出射させる。具体的には、制御部14は、図3に示すように、フィルタ切換機構113を制御して、緑フィルタ112gを光源111の光路上に配置することにより、照明部11から緑色光Lgを出射させる。
【0058】
ステップS112において、制御部14は、被検査体Kの移動を開始する。具体的には、制御部14は、図1に示すように、移動部13を制御して、被検査体Kを、撮像部12よりもX軸負方向側の位置から、X軸正方向に一定の速度で移動させる。これにより、被検査体Kは、一定時間後に、撮像部12の下方(Z軸負方向)を通過することになる。
【0059】
ステップS113において、制御部14は、撮像部12に、その下方を通過する被検査体Kを撮像させ、撮像部12から、被検査体Kの緑レジスト膜Gの局所的な厚み異常を検出するための評価画像IDgを取得する。ステップS113において、撮像部12は、制御部14の制御に基づいて、以下の処理を行う。
【0060】
すなわち、撮像部12のラインセンサ121~124は、図5に示すように、それらの下方を通過する被検査体Kを、その一端側(X軸正方向側端部)から他端側(X軸負方向側端部)まで、一定のタイミングで撮像する。そして、撮像部12の処理回路125は、ラインセンサ121~124各々から取得される輝度情報に基づいて、被検査体Kの全体が描写される撮影画像P1~P4を生成する。
【0061】
ステップS113において、照明部11からは、緑色光Lgが出射されている。上述したように、緑色光Lgを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差は、比較的大きい。このため、処理回路125は、TDI処理を実行せずに、撮影画像P1~P4のいずれかを、評価画像IDgとして、制御部14に供給する。
【0062】
ステップS113において処理回路125がTDI処理を実行しないことは、制御部14に予め設定・記憶されている。処理回路125は、制御部14の制御に基づいて、TDI処理を実行せずに、撮影画像P1~P4のいずれかを、評価画像IDgとして、制御部14に供給する。
【0063】
被検査体Kの全体が描写される評価画像IDgは、被検査体Kの緑レジスト膜Gに対応する領域が比較的高い輝度値で(明るく)表示され、青レジスト膜B及び赤レジスト膜Rに対応する領域が比較的低い輝度値で(暗く)表示された画像となる。これは、照明部11から出射された緑色光Lgは、緑レジスト膜Gを透過して、撮像部12によって受光されるが、青レジスト膜B及び赤レジスト膜Rには遮光されてしまうためである。
【0064】
以上のように、撮像部12は、評価画像IDgを生成する。制御部14は、撮像部12によって生成された評価画像IDgを取得する。
【0065】
ステップS114において、制御部14は、評価画像IDgに基づいて、被検査体Kの緑レジスト膜Gの局所的な厚み異常を検出する。制御部14は、評価画像IDgにおいて、緑レジスト膜Gに対応する、比較的高い輝度値で表示される領域を、評価領域Eと認定する。そして、制御部14は、評価画像IDgにおける評価領域E内の輝度分布が許容範囲内であると判断した場合(ステップS114:Yes)、被検査体Kの緑レジスト膜Gの局所的な厚み異常がないと判定する。この場合、制御部14は、ステップS121に移行する。
【0066】
また、制御部14は、評価画像IDgにおける評価領域E内の輝度分布が許容範囲外であると判断した場合(ステップS114:No)、被検査体Kの緑レジスト膜Gの局所的な厚み異常があると判定する。この場合、制御部14は、ステップS141に移行する。
【0067】
ステップS121において、制御部14は、ステップS111と同じ要領で、照明部11から青色光Lbを出射させる。また、ステップS122において、制御部14は、ステップS112と同じ要領で、緑レジスト膜Gの厚みムラ検査を行った被検査体Kを、撮像部12よりもX軸負方向側の位置から、X軸正方向に一定の速度で移動させる。
【0068】
ステップS123において、制御部14は、撮像部12に、その下方を通過する被検査体Kを撮像させ、撮像部12から、被検査体Kの青レジスト膜Bの局所的な厚み異常を検出するための評価画像IDbを取得する。ステップS123において、撮像部12は、制御部14の制御に基づいて、以下の処理を行う。
【0069】
すなわち、撮像部12のラインセンサ121~124は、それらの下方を通過する被検査体Kを、その一端側から他端側まで、一定のタイミングで撮像する。そして、撮像部12の処理回路125は、ラインセンサ121~124のうち2つのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行し、被検査体Kの全体が描写されるTDI画像を生成する。
【0070】
ステップS123において、照明部11からは、青色光Lbが出射されている。上述したように、青色光Lbを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差は、比較的小さく、緑色光Lgを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差の約1/2である。このため、処理回路125は、2つのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行し、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きいTDI画像を、評価画像IDbとして生成する。この評価画像IDbの暗い領域と明るい領域の輝度差は、ステップS113において生成された評価画像IDgの暗い領域と明るい領域の輝度差とほぼ同等である。
【0071】
ステップS123において処理回路125が2つのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することは、制御部14に予め設定・記憶されている。処理回路125は、制御部14の制御に基づいて、TDI処理により生成されるTDI画像を、評価画像IDgとして、制御部14に供給する。
【0072】
被検査体Kの全体が描写される評価画像IDbは、被検査体Kの青レジスト膜Bに対応する領域が比較的高い輝度値で(明るく)表示され、緑レジスト膜G及び赤レジスト膜Rに対応する領域が比較的低い輝度値で(暗く)表示された画像となる。これは、照明部11から出射された青色光Lbは、青レジスト膜Bを透過して、撮像部12によって受光されるが、緑レジスト膜G及び赤レジスト膜Rには遮光されてしまうためである。
【0073】
以上のように、撮像部12は、評価画像IDbを生成する。制御部14は、撮像部12によって生成された評価画像IDbを取得する。
【0074】
ステップS124において、制御部14は、評価画像IDbに基づいて、被検査体Kの青レジスト膜Bの局所的な厚み異常を検出する。制御部14は、評価画像IDbにおいて、青レジスト膜Bに対応する、比較的高い輝度値で表示される領域を、評価領域Eと認定する。そして、制御部14は、評価画像IDbにおける評価領域E内の輝度分布が許容範囲内であると判断した場合(ステップS124:Yes)、被検査体Kの青レジスト膜Bの局所的な厚み異常がないと判定する。この場合、制御部14は、ステップS131に移行する。
【0075】
また、制御部14は、評価画像IDbにおける評価領域E内の輝度分布が許容範囲外であると判断した場合(ステップS124:No)、被検査体Kの青レジスト膜Bの局所的な厚み異常があると判定する。この場合、制御部14は、ステップS141に移行する。
【0076】
図9に示すように、ステップS131において、制御部14は、ステップS111,S121と同じ要領で、照明部11から赤色光Lrを出射させる。また、ステップS132において、制御部14は、ステップS112,S122と同じ要領で、緑レジスト膜G,青レジスト膜Bの厚みムラ検査を行った被検査体Kを、撮像部12よりもX軸負方向側の位置から、X軸正方向に、一定の速度で移動させる。
【0077】
ステップS133において、制御部14は、撮像部12に、その下方を通過する被検査体Kを撮像させ、撮像部12から、被検査体Kの赤レジスト膜Rの局所的な厚み異常を検出するための評価画像IDrを取得する。ステップS133において、撮像部12は、制御部14の制御に基づいて、以下の処理を行う。
【0078】
すなわち、撮像部12のラインセンサ121~124は、それらの下方を通過する被検査体Kを、その一端側から他端側まで、一定のタイミングで撮像する。そして、撮像部12の処理回路125は、4つのラインセンサ121~124のすべてから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行し、被検査体Kの全体が描写されるTDI画像を生成する。
【0079】
ステップS133において、照明部11からは、赤色光Lrが出射されている。上述したように、赤色光Lrを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差は、比較的小さく、緑色光Lgを受光するラインセンサ121~124各々の輝度情報に基づいて生成される撮影画像P1~P4の暗い領域と明るい領域の輝度差の約1/4である。このため、処理回路125は、4つのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行し、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きいTDI画像を、評価画像IDrとして生成する。この評価画像IDrの暗い領域と明るい領域の輝度差は、ステップS113,S123において生成された評価画像IDg,IDbの暗い領域と明るい領域の輝度差とほぼ同等である。
【0080】
ステップS133において処理回路125が4つのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することは、制御部14に予め設定・記憶されている。処理回路125は、制御部14の制御に基づいて、TDI処理により生成されるTDI画像を、評価画像IDgとして、制御部14に供給する。
【0081】
被検査体Kの全体が描写される評価画像IDrは、被検査体Kの赤レジスト膜Rに対応する領域が比較的高い輝度値で(明るく)表示され、緑レジスト膜G及び青レジスト膜Bに対応する領域が比較的低い輝度値で(暗く)表示された画像となる。これは、照明部11から出射された赤色光Lrは、赤レジスト膜Rを透過して、撮像部12によって受光されるが、緑レジスト膜G及び青レジスト膜Bには遮光されてしまうためである。
【0082】
以上のように、撮像部12は、評価画像IDrを生成する。制御部14は、撮像部12によって生成された評価画像IDrを取得する。
【0083】
ステップS134において、制御部14は、評価画像IDrに基づいて、被検査体Kの赤レジスト膜Rの局所的な厚み異常を検出する。制御部14は、評価画像IDrにおいて、赤レジスト膜Rに対応する、比較的高い輝度値で表示される領域を、評価領域Eと認定する。そして、制御部14は、評価画像IDrにおける評価領域E内の輝度分布が許容範囲内であると判断した場合(ステップS134:Yes)、被検査体Kの赤レジスト膜Rの局所的な厚み異常がないと判定する。この場合、制御部14は、本検査処理を正常に終了する。
【0084】
また、制御部14は、評価画像IDrにおける評価領域E内の輝度分布が許容範囲外であると判断した場合(ステップS134:No)、被検査体Kの赤レジスト膜Rの局所的な厚み異常があると判定する。この場合、制御部14は、ステップS141に移行する。
【0085】
ステップS141において、制御部14は、移動部13の駆動を停止する。また、制御部14は、評価画像IDg,IDb,IDrにおいて、被検査体Kの厚み異常がある箇所を、表示部15に表示する。その後、制御部14は、本検査処理を終了する。
【0086】
以上説明したように、ラインセンサ121~124が受光する光の強度が低い場合、又は、ラインセンサ121~124において受光する光に対する感度が低い場合には、ラインセンサ121~124のうちいくつかのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行し、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きいTDI画像を生成する。これにより、露光時間を長くしたり、絞りの開閉に時間をかけることなく、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きいTDI画像を評価画像として得ることができる。また、いくつかのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行することにより、当該輝度情報に含まれるノイズ成分が平準化されるため、明瞭な(S/N比が高い)評価画像を得ることができる。このように生成した評価画像は、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きく、また、S/N比が高いため、被検査体Kの局所的な厚み異常を検出しやすい画像である。
【0087】
なお、評価画像IDg,IDb,IDrの暗い領域と明るい領域の輝度差は、互いに同等であることが好ましい。評価画像IDg,IDb,IDrの暗い領域と明るい領域の輝度差が互いに同等であると、ステップS114,S124,S134における被検査体Kの局所的な厚み異常の検出を効率的に行うことができる。
【0088】
<第2実施形態>
図10を参照して、第2実施形態に係る厚みムラ検査装置2の構成及び動作について説明する。本実施形態に係る厚みムラ検査装置2は、照明部11及び撮像部12の配置位置を除いて、第1実施形態に係る厚みムラ検査装置1と同じ構成を有している。なお、図10において、制御部14、表示部15、及び、入力部16の表示は省略されている。
【0089】
本実施形態において、照明部11は、被検査体KをZ軸正方向側から照明する。また、撮像部12は、被検査体KをZ軸正方向側から撮像する。つまり、撮像部12は、照明部11から出射され、被検査体Kに反射した光を受光する。
【0090】
本実施形態において、被検査体Kは、ガラス基板Tの上に設けられた透光性を有する部材である。被検査体Kは、例えば、液晶表示装置において透明電極として用いられるインジウム錫酸化物からなる薄膜、又は、液晶表示装置においてスペーサとして用いられるエポキシ樹脂からなる薄膜である。また、被検査体Kは、半導体膜であっても構わない。
【0091】
被検査体Kに照射される光Lは、被検査体Kの表面及び被検査体Kとガラス基板Tとの界面により反射される。被検査体Kの表面によって反射される光を反射光L1とし、被検査体Kとガラス基板Tとの界面によって反射される光を反射光L2としたとき、被検査体Kにおいて、反射光L1,L2が強め合う(干渉する)条件に適合する厚みになっている領域は、撮像部12により高い輝度値で撮像され、当該条件に適合しない厚みになっている領域は、撮像部12により低い輝度値で撮像される。このため、撮像部12により得られる画像の輝度分布を解析することにより、被検査体Kの局所的な厚み異常を検出することができる。
【0092】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、ラインセンサ121~124が受光する光の強度が低い場合、又は、ラインセンサ121~124において受光する光に対する感度が低い場合には、ラインセンサ121~124のうちいくつかのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行し、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きい評価画像を生成する。これにより、時間をかけることなく、暗い領域と明るい領域の輝度差が大きく、また、S/N比が高い評価画像を得ることができる。
【0093】
<変形例>
第1実施形態では、3色のカラーレジストが周期的に配置される被検査体Kについて説明した。しかし、被検査体Kは、これに限らず、例えば3色以上のカラーレジストを有していても構わない。また、カラーレジストが記号,文字等の特定の平面パターンに成形されていても構わない。
【0094】
また、第1実施形態では、照明部11が、波長470nm、520nm及び730nmの光を出射すれる例を説明した。しかし、照明部11は、これら以外の波長の光を出射してもよい。種々の光学フィルタを設けることにより、被検査体Kの光学特性に応じた所望の波長の光を出射させることができる。また、光源111には、発光ダイオードのほかにも、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0095】
また、第1実施形態では、赤レジスト膜R、緑レジスト膜G及び青レジスト膜Bの透過光波長と、赤フィルタ112r、緑フィルタ112g及び青フィルタ112bの透過光波長と、が一致している例を説明した。しかし、一般に、被検査体K及び光学フィルタの透過光波長は、一定の波長幅(帯域)を有しており、被検査体Kの透過光波長の中心波長と、検査に用いる光学フィルタの透過光波長の中心波長(被検査体Kに入射される光の波長帯域の中心波長)と、はズレていても構わない。つまり、被検査体Kの透過光波長帯域と、被検査体Kに入射される光の波長帯域とが、重なっていればよい。
【0096】
また、第1実施形態では、赤レジスト膜Rの厚み異常を検出するための評価画像IDrは、TDI処理により、4つのラインセンサから取得した輝度情報に基づいて生成された。また、青レジスト膜Bの厚み異常を検出するための評価画像IDbは、TDI処理により、2つのラインセンサから取得した輝度情報に基づいて生成された。しかし、評価画像の生成に利用するラインセンサの個数はこれらに限らない。評価画像の生成に利用するラインセンサの個数は、光源111の発光強度特性、及び、ラインセンサ(あるいはフォトダイオード)の受光感度特性に応じて調整することが望ましい。
【0097】
また、上述の実施形態では、撮像部12が、4個のラインセンサ121~124を備える例を説明した。しかし、ラインセンサの個数はこれに限らず、少なくとも2個以上あればよい。なお、一般的なTDIカメラは、ラインセンサを32~256個程度含むが、ラインセンサの個数が多いと、ラインセンサ各々の被検査体Kに対するフォーカスの状態が変わって、TDI画像(評価画像)の明瞭度(シャープネス)が低下してしまう可能性がある。このため、ラインセンサの個数は、32個未満であることが好ましく、10個未満であることがさらに好ましい。
【0098】
また、上述の実施形態では、撮像部12が、4個のラインセンサ121~124を備える例を説明した。しかし、複数のライセンサの代わりにROI(Region Of Interest)機能を有したエリアカメラを用いてもよい。
【0099】
また、上述の実施形態では、撮像部12の処理回路125が、いくつかのラインセンサから取得される輝度情報に基づいてTDI処理を実行する例を説明した。しかし、TDI処理は、処理回路125ではなく、制御部14(CPU141)が行ってもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、被検査体の厚みが許容範囲外であった場合には、検査処理を終了する例を説明した。しかし、被検査体の厚みが許容範囲外であった場合でも、検査処理を続行しても構わない。また、上述の実施形態では、単一の被検査体Kの厚みを検査する例を説明した。しかし、複数の被検査体Kの厚みを連続して検査してもよい。
【0101】
以上、実施形態及びその変形例に沿って本発明を説明したが、本発明をこれらに限定されるものではない。種々の変更、改良、組合せ等が可能なことは当業者には自明である。
【符号の説明】
【0102】
1 厚みムラ検査装置(第1実施形態)
11 照明部
111 光源
112b 青フィルタ
112g 緑フィルタ
112r 赤フィルタ
113 フィルタ切換機構
12 撮像部
121~124 ラインセンサ(撮像素子)
125 DSP(処理回路)
13 移動部
14 制御部(判定部)
141 CPU(演算部)
142 ROM
143 RAM
144 インターフェース
15 表示部
16 入力部
2 厚みムラ検査装置(第2実施形態)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10