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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】薬液注入ポート及び薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20240813BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61M39/02 102
A61M37/00 560
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020178066
(22)【出願日】2020-10-23
(65)【公開番号】P2022069094
(43)【公開日】2022-05-11
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】稲見 祐希
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04781685(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮下に埋め込まれて、外部から導電性の穿刺針を穿刺することにより、薬液を注入可能な薬液注入ポートであって、
内部に薬液貯留空間が設けられ、該薬液貯留空間に前記穿刺針を挿入するための開口を有していると共に、前記薬液貯留空間及び外部に連通する排出孔が設けられたハウジングと、
前記開口に取付けられ、前記穿刺針を穿刺可能なセプタムとを有しており、
前記ハウジングには、少なくとも一部が前記薬液貯留空間及び前記ハウジングの外部に露出する導電部が配置されており、
前記セプタムの表側周縁は、絶縁部で覆われており、
適用患者の体に接触配置される電極、及び、前記穿刺針の間に交流電圧を印加し、その際の通電パラメータの変動により、前記穿刺針が前記導電部に接触したことを検出する検出装置を利用して用いられるものであり、
前記導電部の少なくとも一部は、前記ハウジングの周壁に配置されており、前記ハウジングの周壁に配置された導電部の内周が、絶縁部で覆われて、該絶縁部が前記薬液貯留空間に露出していることを特徴とする薬液注入ポート。
【請求項2】
皮下に埋め込まれて、外部から導電性の穿刺針を穿刺することにより、薬液を注入可能な薬液注入ポートであって、
内部に薬液貯留空間が設けられ、該薬液貯留空間に前記穿刺針を挿入するための開口を有していると共に、前記薬液貯留空間及び外部に連通する排出孔が設けられたハウジングと、
前記開口に取付けられ、前記穿刺針を穿刺可能なセプタムとを有しており、
前記ハウジングには、少なくとも一部が前記薬液貯留空間及び前記ハウジングの外部に露出する導電部が配置されており、
前記セプタムの表側周縁は、絶縁部で覆われており、
適用患者の体に接触配置される電極、及び、前記穿刺針の間に交流電圧を印加し、その際の通電パラメータの変動により、前記穿刺針が前記導電部に接触したことを検出する検出装置を利用して用いられるものであり、
前記ハウジングの底部であって前記薬液貯留空間に対応する部分には、前記導電部と絶縁部とが重なって配置されており、該絶縁部が前記ハウジングの外部に露出していることを特徴とする薬液注入ポート。
【請求項3】
前記導電部の少なくとも一部は、前記ハウジングの底部において、前記ハウジングの外部に露出している請求項1又は2記載の薬液注入ポート。
【請求項4】
前記導電部の少なくとも一部は、前記ハウジングの周壁において、前記ハウジングの外部に露出しており、
前記ハウジングの底部は絶縁部とされ、該絶縁部が前記ハウジングの外部に露出している請求項1又は2記載の薬液注入ポート。
【請求項5】
前記導電部の少なくとも一部は、前記セプタムに当接して、前記セプタムの、前記ハウジングからの外れを規制している請求項1記載の薬液注入ポート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の薬液注入ポートと、
適用患者の体に接触配置される電極と、
前記導電部に接触して通電する導電性の穿刺針と、
前記電極及び前記穿刺針の間に交流電圧を印加する交流電源と、
通電パラメータの変動により、前記穿刺針が前記導電部に接触したことを検出する検出装置とを有していることを特徴とする薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下に埋め込まれて、外部から穿刺針を穿刺することにより、薬液を注入可能な、薬液注入ポート及び薬液注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、抗がん剤等の薬液を効率的に注入するための器具として、皮下に薬液注入ポートを埋め込むことが行われている。一般的に、この薬液注入ポートは、その内部に液溜まり部を有していると共に、その開口が弾性材料からなるセプタムで塞がれており、更に、心臓等の血管に留置されるチューブが接続された構造となっている。そして、体外から前記セプタムにノンコアリングニードル等の穿刺針を穿刺し、抗がん剤等の薬液を注入すると、薬液が液溜まり部を通ってチューブを流れて、血管等に薬液が供給される。
【0003】
しかしながら、体外からは薬液注入ポートのセプタムを視認することができないため、薬液注入ポートのセプタムに対して、穿刺針を適切に穿刺することは難しい。仮に、セプタムに穿刺針が穿刺できていない状態で、薬液を注入すると、ポート外に漏れ出た薬液によって、組織に炎症が生じたり、組織が壊死したりしてしまう。そのため、薬液注入ポートのセプタムに、穿刺針が適切に穿刺されたことを、確実に把握できることが望まれている。
【0004】
そのような課題に即したものとして、例えば、下記特許文献1には、皮下に埋設される皮下埋設機器(アクセスポート)が記載されている。特許文献1の図3に示す態様の場合、アクセスポートは、液状薬剤の受容器を形成した本体を有しており、受容器は隔膜でシールされている。また、受容器の底部には、コンタクトプレートが設けられている。更に、本体の底部には基板が配置されており、この基板には、集積回路を設けた電気回路体が実装されている。前記集積回路に、コンタクトプレートや、本体内に配置された音声発生器が電気的に接続されている。更に本体内には、バッテリーが内臓されており、基板と接続している。
【0005】
そして、針が、皮膚を介して隔膜に穿刺されて、受容器内に挿入され、コンタクトプレートに接触して電気的に接続されると、基板がコンタクトプレートと同電位になり、これを集積回路が検出して、音声発生器に対して所定周波数のパルス信号を印加して、音声を発生させる。これによって、針が受容器内に位置したことを把握できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-90168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の皮下埋設機器では、アクセスポートの本体内に、電気回路体や、音声発生器、バッテリー等が配置されているので、アクセスポートが、その厚さ方向に嵩張りやすく大型化してしまい、皮下埋め込み時に目立ちやすくなるという問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、穿刺針が薬液貯留空間に位置したことを確実に把握することができると共に、薬液注入ポートの厚さを薄くしてコンパクト化を図ることができ、皮下埋め込み時に目立ちにくい、薬液注入ポート及び薬液注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る薬液注入ポートは、皮下に埋め込まれて、外部から導電性の穿刺針を穿刺することにより、薬液を注入可能な薬液注入ポートであって、内部に薬液貯留空間が設けられ、該薬液貯留空間に前記穿刺針を挿入するための開口を有していると共に、前記薬液貯留空間及び外部に連通する排出孔が設けられたハウジングと、前記開口に取付けられ、前記穿刺針を穿刺可能なセプタムとを有しており、前記ハウジングには、少なくとも一部が前記薬液貯留空間及び前記ハウジングの外部に露出する導電部が配置されており、前記セプタムの表側周縁は、絶縁部で覆われており、適用患者の体に接触配置される電極、及び、前記穿刺針の間に交流電圧を印加し、その際の通電パラメータの変動により、前記穿刺針が前記導電部に接触したことを検出する検出装置を利用して用いられるものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る薬液注入装置は、上記薬液注入ポートと、適用患者の体に接触配置される電極と、前記導電部に接触して通電する導電性の穿刺針と、前記電極及び前記穿刺針の間に交流電圧を印加する交流電源と、通電パラメータの変動により、前記穿刺針が前記導電部に接触したことを検出する検出装置とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セプタムに穿刺された穿刺針が、導電部に接触すると、交流電流が、ハウジングの外部に露出して生体組織に接触した導電部から、生体組織を通過して電極側に流れて、穿刺針が導電部を介して電極と通電し、その際の、通電パラメータの変動が検出器によって検出されるので、穿刺針が、セプタムに穿刺され、かつ、薬液貯留空間に位置したことを、確実に把握することができる。また、この薬液注入ポートは、通電構造として、ハウジングに設けた外部に露出する導電部のみを有するだけなので、薬液注入ポートの構造の簡素化を図ることができると共に、ポートの厚さを薄くしてコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る薬液注入ポートの第1実施形態を示す、分解斜視図である。
図2】同薬液注入ポートの斜視図である。
図3】同薬液注入ポートの断面図である。
図4】同薬液注入ポート及び薬液注入装置の使用状態を示す説明図である。
図5】同薬液注入ポート及び薬液注入装置の概略構成図である。
図6】同薬液注入ポート及び薬液注入装置における、通電パラメータの検出状態を示す説明図である。
図7】本発明に係る薬液注入ポートの第2実施形態を示す断面図である。
図8】本発明に係る薬液注入ポートの第3実施形態を示す断面図である。
図9】本発明に係る薬液注入ポートの第4実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る薬液注入ポート及び薬液注入装置の、一実施形態について説明する。まず、薬液注入ポートの第1実施形態について説明する。
【0014】
図4に示すように、この実施形態における薬液注入ポート10(以下、単に「ポート10」ともいう)は、皮下に埋め込まれて、外部から導電性の穿刺針120を穿刺することにより、薬液を注入可能なものである。そして、図1及び図3に示すように、このポート10は、内部に薬液貯留空間30が設けられ、該薬液貯留空間30に穿刺針120を挿入するための開口25を有すると共に、薬液貯留空間30及び外部に連通する排出孔58aが設けられたハウジング20と、前記開口25に取付けられ、穿刺針120を穿刺可能なセプタム40とを有している。
【0015】
また、図1に示すように、この実施形態におけるハウジング20は、絶縁性材料からなるケース状をなしている。このハウジング20の内側に、少なくとも一部(露出部51)が薬液貯留空間30及びハウジング20の外部に露出する導電部50が配置されている。更に、ポート10は、導電部50との間でセプタム40を挟持する、導電性材料からなる導電部材60を有している。また、導電部50の内側には、絶縁性材料からなる絶縁部材70が配置されている(図3参照)。なお、図3に示すように、このポート10は、ハウジング20の開口25の周縁が絶縁部23で覆われていると共に、ハウジング20の薬液貯留空間30の内周も、絶縁部(後述する第1絶縁部71)で覆われている。
【0016】
前記セプタム40は、薬液貯留空間30の内径よりも大きく、かつ、所定厚さで形成された円盤状をなしている。また、セプタム40は、穿刺針120を突き刺し可能で、かつ、穿刺針120を引き抜くと、突き刺された孔が弾性的に閉じるような材質、例えばゴム、シリコン樹脂、軟質樹脂等で形成されており、表面にフッ素樹脂膜等が被覆されて構成されていてもよい。なお、このセプタム40は、後述するセプタム取付部29(図3参照)に配置されて、ハウジング20の開口25に取付けられるようになっている。
【0017】
また、図3に示すように、このセプタム40には、穿刺針120を穿刺可能な穿刺可能領域41が設けられている。この穿刺可能領域41とは、セプタム40の、開口25から露出する面43(以下、単に「露出面43」ともいう)から、穿刺針120を穿刺したときに、セプタム40を通過して、薬液貯留空間30に到達させることが可能な領域であることを意味しており、ここでは図3の紙面上、左右の破線で囲まれた領域であり、穿刺針120をセプタム40に穿刺したときに、絶縁部材70等にぶつかって、薬液貯留空間30に到達させることが不可能な領域は除かれる。すなわち、穿刺可能領域41とは、ポート10の厚さ方向において、薬液貯留空間30に整合する位置に配置され、かつ、薬液貯留空間30の内径と同一又はそれよりも小さい範囲の領域とされている。
【0018】
また、図3に示すように、このポート10においては、薬液貯留空間30の底部に、導電部50の露出部51が配置されている。更に、前記セプタム40の穿刺可能領域41の表側周縁41aは、絶縁部23で覆われている。
【0019】
前記ハウジング20は、基端部側から先端部側に向けて次第に縮径する外周面を有する略円筒状をなした周壁21と、この周壁21の先端部内周から、周壁内方に向けて突出した略円環状をなした前記絶縁部23とを有する、上方及び下方が開口した略台形ケース状をなしている。
【0020】
前記周壁21の底面21a及び天井面21bは、互いに平行となるように形成されている。また、絶縁部23の突出方向先端部からは、周壁21の底面21a側に向けて、環状突部23aが突設されている。そして、絶縁部23及び環状突部23aの内周が、円形状をなした前記開口25となっている。なお、周壁21の底面21aや天井面21bは、その周縁角部を、R状にしたり、テーパ状に面取りしたりしてもよい。
【0021】
更に、周壁21の内周であって、前記開口25寄りの位置には、凹溝状をなしたセプタム取付部29が、周壁21の内周全周に亘って形成されている。また、周壁21の所定の一箇所には、周壁21の内部空間及び外部空間を互いに連通させる通孔21cが形成されている。更に図3に示すように、周壁21の底面21a側には、円形状をなした開口部27が形成されており、この開口部27から、導電部50の一部である露出部51が露出するようになっている。
【0022】
なお、図3に示すように、前記環状突部23aは、セプタム取付部29にセプタム40が取付けられた状態で、セプタム40の穿刺可能領域41の表側周縁41aに当接して、セプタム40を押え込むようになっている。
【0023】
また、図1及び図2に示すように、周壁21の底面21a側の外周には、所定間隔をあけて複数の挿通孔21dが形成されている。これらの挿通孔21dには、図示しない縫合糸が挿通されるようになっており、この縫合糸を体内の所定部位に縫い付けることで、皮下に埋め込んだ薬液注入ポート10の位置ずれが抑制される。
【0024】
上記のハウジング20は、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルフォン、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリウレタン、シリコーンゴム、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタート樹脂などの合成樹脂等の、絶縁性を有する絶縁材料で形成されていることが好ましく、絶縁性に加え生体適合性を有する材料で形成されていることがより好ましい。また、ハウジングの内部形状や外部形状は、上記態様に限定されるものではない。
【0025】
上記ハウジング20の内側に配置される導電部50は、前記開口部27内に配置される、円板状をなした露出部51と、該露出部51の周縁から立設した略円筒状をなした周壁53とからなる、上方(露出部51に対向する方向)が開口した有底の略カップ状をなしている。
【0026】
また、図3に示すように、このポート10においては、導電部50の一部である露出部51が、ハウジング20の底部(周壁21の底面21aが位置する部分)において、開口部27を介してハウジング20の外部に露出している。
【0027】
図3に示すように、露出部51及び周壁53で囲まれた内部空間が、前記薬液貯留空間30をなしている。この実施形態における薬液貯留空間30は、上方が開口すると共に、前記セプタム取付部29よりも縮径した、円形の凹状をなしている。また、図3に示すように、この薬液貯留空間30の底部に露出部51が配置されており、この露出部51の外面51aが開口部27を介して、ハウジング20の外部に露出するようになっている。また、露出部51の外面51aが、ハウジング20の周壁21の底面21aに対して面一となるように、かつ、露出部51の外面51aとは反対側の内面51bが、薬液貯留空間30側に向くように、露出部51が開口部27内に配置されている(図3参照)。なお、露出部51は、その外面51aが、ハウジング20の底面21aに対して突出したり、凹んだりしていてもよい。
【0028】
また、周壁53は、露出部51の周縁から立設する第1壁部55と、この第1壁部55の立設方向上端から壁部外方に広がる段部56と、この段部56を介して立設し、前記第1壁部55よりも拡径した第2壁部57とを有している。
【0029】
更に、導電部50の周壁53の周方向一箇所には、通孔58a(図3参照)が形成されており、この通孔58aの表側周縁から、筒状のコネクタ58が一体的に延設されている(なお、コネクタ58は導電部50とは別体でもよい)。このコネクタ58は、ハウジング20の通孔21cに挿入されて、該通孔21cの外径側の開口から挿出されており、その先端側外周にチューブ5が接続されるようになっている。また、コネクタ58は、基端側の通孔58aを介して、薬液貯留空間30に連通している。更に、コネクタ58の先端側の開口が、薬液貯留空間30に貯留された薬液を、チューブ5へと排出する排出孔58bをなしている。
【0030】
そして、図3に示すように、ハウジング20の周壁21の内周に、導電部50の第1壁部55が配置され、ハウジング20のセプタム取付部29の一端部29aに、導電部50の段部56が係合し、ハウジング20のセプタム取付部29内において、同セプタム取付部29の内周から所定隙間を空けて、導電部50の第2壁部57が配置された状態で、ハウジング20の内側に導電部50が配置されるようになっている。この状態では、上述したように、薬液貯留空間30の底部に露出部51が配置され、露出部51の外面51aが開口部27を介して、ハウジング20の外部に露出する。そのため、図4に示すように、皮下にポート10を埋め込んだ状態で(皮膚2の内面側の生体組織3に埋設するようにして埋め込んだ状態)、導電部50の一部である露出部51が生体組織3に接触するようになっている。
【0031】
上記導電部50は、例えば、Ti、Ti系合金、ステンレス、Ta、Ta系合金、Ti-Al-V系合金、Ti-Al-Nb-Ta系合金、Ti-Zr-Nb-Ta系合金Ti-Mo-Zr-Al系合金、Co-Cr系合金、Co-Cr-Mo系合金等の、導電性を有する導電性材料で形成されている。これらの中でも、Ti、Ti系合金、ステンレスを用いることが好ましく、また、生体適合性を有するものを用いることがより好ましい。
【0032】
また、この実施形態における導電部50は、露出部51、周壁53(第1壁部55、段部56、第2壁部57)、コネクタ58が全て一体形成されている。更に導電部の形状や構造は、上記態様に限定されるものではなく、例えば、円板状のものだけであってもよく(これについては後述の実施形態で説明する)、穿刺針120が接触して通電可能な導電部を有していればよい。また、この実施形態の露出部51は、ハウジング20底部からハウジング外部に露出しているが、ハウジングの周壁からハウジング外部に露出するようにしてもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。
【0033】
更に、導電部50の内側に配置される絶縁部材70は、上方及び下方が開口した略円筒状のスリーブ形状となっている。
【0034】
具体的には、この絶縁部材70は、第1絶縁部71と、この第1絶縁部71の立設方向上端から壁部外方に広がる段状絶縁部72と、この段状絶縁部72を介して立設し、前記第1絶縁部71よりも拡径する第2絶縁部73とからなる。
【0035】
そして、図3に示すように、導電部50の第1壁部55の内周に、絶縁部材70の第1絶縁部71が配置され、導電部50の段部56に、絶縁部材70の段状絶縁部72が係合し、導電部50の第2壁部57の内周に、絶縁部材70の第2絶縁部73が配置された状態で、導電部50の内側に絶縁部材70が配置されるようになっている。なお、第2絶縁部73の内周に、セプタム40の外周が当接すると共に、段状絶縁部72に、セプタム40の穿刺可能領域41の裏側周縁41bが係合するようになっている。
【0036】
また、図3に示すように、絶縁部材70は、導電部50の内側に配置された状態で、導電部50の第1壁部55、段部56、第2壁部57の内側に、第1絶縁部71、段状絶縁部72、第2絶縁部73がそれぞれ配置されるので、導電部50の周壁53の内側が覆われる。その結果、薬液貯留空間30の内周が、第1絶縁部71によって覆われる。そのため、穿刺針120が、導電部50に接触しようとしても、カバーされる。この第1絶縁部71が、本発明における「絶縁部」の一つとなっている。
【0037】
一方、上記のように、導電部50の内側に絶縁部材70が配置された状態では、絶縁部材70の第1絶縁部71の下方開口から、導電部50の露出部51の内面51bが露出しており、穿刺針120が接触して通電可能となっている。更に、上記状態では、セプタム40の外周及び穿刺可能領域41の裏側周縁41bに、絶縁部材70の第2絶縁部73及び段状絶縁部72がそれぞれ配置されるので、セプタム40の外周及び穿刺可能領域41の裏側周縁41bがカバーされて、セプタム40に対して穿刺針120が斜めに穿刺されても、導電部50には接触しないようになっている。
【0038】
上記の絶縁部材70は、ハウジング20と同様に、例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスルフォン、ポリアセタール、液晶ポリマー、ポリウレタン、シリコーンゴム、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタート樹脂などの合成樹脂等の、絶縁性を有する絶縁材料で形成されていることが好ましく、絶縁性に加え生体適合性を有する材料で形成されていることがより好ましい。また、この実施形態における絶縁部材70は、第1絶縁部71、段状絶縁部72、第2絶縁部73が全て一体形成されている。なお、絶縁部材の形状や構造は、上記態様に限定されるものではなく、更に絶縁部材をハウジング内に設けなくてもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。
【0039】
また、この実施形態では、ハウジング20の開口25の周縁、及び、ハウジング20の薬液貯留空間30の内周の両方が、絶縁部23及び第1絶縁部71で覆われているが、少なくとも薬液貯留空間30の内周を、第1絶縁部71で覆う構造が望ましい。
【0040】
一方、導電部材60は、略円筒状の周壁61と、この周壁61の先端部内周から周壁内方に向けて突出した略円環状をなした押え突部63とからなる、下方が開口し上方が覆われた略キャップ状をなしている。なお、押え突部63は、導電部50の第2壁部57の一端面、絶縁部材70の第2絶縁部73の一端面、及び、セプタム40の穿刺可能領域41の表側周縁41aに至る長さで突出している。
【0041】
そして、この導電部材60は、絶縁部材70の段状絶縁部72に、セプタム40の穿刺可能領域41の裏側周縁41bに支持させた状態で、導電部50に外装されるようになっている。すなわち、上記状態で、導電部材60の周壁61を、導電部50の第2壁部57の外周に配置することで、導電部材60の押え突部63が、導電部50の第2壁部57の一端面、絶縁部材70の第2絶縁部73の一端面にそれぞれ当接し、かつ、セプタム40の穿刺可能領域41の表側周縁41aに当接して押え込むようにして、導電部50と導電部材60との間で、絶縁部材70を介して間接的にセプタム40が挟持される(図3参照)。その結果、導電部50に、絶縁部材70、セプタム40、導電部材60が組付けられて、一体化される(アッセンブリ化される)。
【0042】
また、この実施形態のポート10においては、導電部50の少なくとも一部は、ハウジング20の周壁21に配置されると共に、セプタム40に当接して、セプタム40の、ハウジング20からの外れを規制しており、ハウジング20の周壁21に配置された導電部50の内周が、絶縁部で覆われて、該絶縁部が薬液貯留空間30に露出している。すなわち、図3に示すように、導電部50の一部である段部56及び第2壁部57によって、第1絶縁部材70の段状絶縁部72及び第2絶縁部73を介して、間接的にセプタム40に当接することで、セプタム40の、ハウジング20からの外れが規制される。また、導電部50の内周である第1壁部55、段部56、第2壁部56が、絶縁部材70の第1絶縁部71、段状絶縁部72、第2絶縁部材73によって、それぞれ覆われており、絶縁部材70の第1絶縁部71、段状絶縁部72、第2絶縁部材73が、薬液貯留空間30に露出している。
【0043】
ところで、絶縁部材70が存在しない場合には、導電部50の段部56で、セプタム40の穿刺可能領域41の裏側周縁41bが支持されると共に、セプタム40の外周に、導電部50の第2壁部57が配置され、かつ、導電部材60の押え突部63が、導電部50の第2壁部57の一端面、及び、セプタム40の穿刺可能領域41の表側周縁41aに当接して、導電部50と導電部材60との間で、セプタム40が直接的に挟持される。
【0044】
なお、セプタム40は、導電性材料からなり比較的剛性の高い、略カップ状の導電部50と、同じく導電性材料からなり比較的剛性の高い、略キャップ状の導電部材60と挟み込まれて保持されているので、ポート10が高い圧力下で使用される際にも、セプタム40の潰れや変形を抑止して、所定形状に保形可能となっている。
【0045】
そして、例えば、セプタム40が挟持されて導電部50及び導電部材60で一体化したアッセンブリ部材を、図示しない型枠にセットして、ハウジング20を射出成形することで、ハウジング20の内側に上記アッセンブリ部材が配置されて、図3に示すような断面構造をなすポート10が製造される。なお、この状態では、セプタム40の外周に、絶縁部材70の第2絶縁部73、導電部50の第2壁部57、導電部材60の周壁61が、ハウジング内方から外方に向けて順に配置されると共に、セプタム40の穿刺可能領域41の表側周縁41aに、ハウジング20の絶縁部23の環状突部23a、導電部材60の押え突部63がそれぞれ当接し、セプタム40の穿刺可能領域41の裏側周縁41bに、絶縁部材70の段状絶縁部72が当接して、ハウジング20のセプタム取付部29にセプタム40が取付けられるようになっている。これによって、薬液貯留空間30の上方開口がセプタム40によって閉塞されて、薬液貯留空間30から薬液が液漏れしないように封止される。
【0046】
上記導電部材60は、導電部50と同様に、例えば、Ti、Ti系合金、ステンレス、Ta、Ta系合金、Ti-Al-V系合金、Ti-Al-Nb-Ta系合金、Ti-Zr-Nb-Ta系合金Ti-Mo-Zr-Al系合金、Co-Cr系合金、Co-Cr-Mo系合金等の、導電性を有する導電性材料で形成されている。これらの中でも、Ti、Ti系合金、ステンレスを用いることが好ましく、また、生体適合性を有するものを用いることがより好ましい。また、この実施形態における導電部材60は、周壁61及び押え突部63が一体形成されている。更に導電部材の形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。更に、本発明における薬液注入ポートでは、導電部材がない構成としてもよい。
【0047】
上記構成からなるポート10は、適用患者1の体に接触配置される電極110、及び、穿刺針120の間に交流電圧を印加し、その際の通電パラメータの変動により、穿刺針120が導電部50の一部である露出部51に接触したことを検出する検出装置150を利用して用いられるものである。
【0048】
この構成について図5を参照して説明する。前記電極110は、例えば、適用患者1の背中や腹部等に、導線性を有する両面テープなどによって固着されて、体に接触して配置される。この電極110は、リード線Lを介して交流電源130に接続されている。
【0049】
また、図2に示すように、この実施形態の穿刺針120は、図示しない注射器のシリンジや点滴の先端部が脱着可能に接続される接続部121と、該接続部121から延出する、導電性の針部123とを有している。針部123は、直線状に延びる筒状の直線部124と、該直線部124に対して所定角度で屈曲した筒状をなすと共に、先端が鋭利な刃先とされた先端部125とを有している。この先端部125の刃面125aは、直線部124の軸方向に対して平行とされている。すなわち、この穿刺針120は、セプタム40への穿刺時に、セプタム40の肉を削り取るように穿孔しない、周知のノンコアリングニードルとなっている。また、穿刺針120の先端部125の刃面125aの内周には、流体を流出させるための、図示しない先端孔が形成されている。
【0050】
なお、穿刺針120の針部123は、リード線L(図5参照)を介して交流電源に接続されている。この際には、例えば、リード線Lの先端を、図示しない、略J字フック状の接続部を有するクリップアダプターに接続し、同クリップアダプターの接続部を、穿刺針120の針部123に引き掛けることで、リード線Lを、セプタム40から露出した針部123の基部側に導通状態で接続することができる。
【0051】
また、図5に示すように、電極110と穿刺針120との間には、交流電源130及び検出装置150とが接続されている。更に、この実施形態の検出装置150には、音声発ブザーやランプ等の動作部151と、通電パラメータを計測すると共に、この計測された通電パラメータに基づいて、動作部151に動作信号を出力する検出部153とを有している。
【0052】
なお、通電パラメータとは、例えば、交流回路のインピーダンスや、抵抗、電流等の数値である。これらの通電パラメータに、所定の閾値を設定する。そして、閾値が所定値以上になるか、所定値以下となるか、又は、一定の範囲内になったと、検出部によって計測された場合に、動作部151に動作信号が出力されるようになっている。
【0053】
そして、図4に示すように、皮下に埋め込まれた状態のポート10は、導電部50の一部である、ハウジング外部に露出する露出部51が、生体組織3に接触している。そのため、穿刺針120が露出部51に接触すると、適用患者1の生体(皮膚2及び生体組織3を含む)を介して、交流電流が流れて、穿刺針120と電極110とが通電する。この際、回路内を流れる交流電流は増大する一方、オームの法則によって回路内のインピーダンスは小さくなる。このような通電パラメータの変動が、前記検出装置150によって検出され、穿刺針120が導電部50に接触しているか又は接触してないかを把握可能となっている。
【0054】
すなわち、このポート10においては、適用患者1に電極110が接触して配置された状態で、穿刺針120が露出部51に接触して、露出部51を介して電極110と通電したときの、通電パラメータの変動が検出装置150によって検出されるように構成されている。
【0055】
なお、この実施形態では、通電パラメータの中でも交流回路中のインピーダンスが採用され、このインピーダンスの変動によって、導電部51に対する、穿刺針120の接触の有無が把握されるようになっている。
【0056】
そして、図6のAに示すように、穿刺針120が皮膚2に穿刺されていない状態では、導電部50の露出部51は生体組織3に接触しているものの、穿刺針120は生体と接触していないため、交流回路内を交流電流がほとんど流れず、高いインピーダンスとなっている(図6中の「a」参照)。
【0057】
一方、図6のBに示すように、穿刺針120が皮膚2に穿刺されるが、ポート10のセプタム40に接触していない状態では、穿刺針120が適用患者1の生体組織3に位置しているため、生体を介して穿刺針120と電極110とが通電する。その結果、図6のAの場合よりも、高い交流電流が交流回路内を流れるので、図6のAのインピーダンス「a」よりも低いインピーダンスとなる(図6中の「b」参照)。
【0058】
更に、図6のCに示すように、穿刺針120が皮膚2に穿刺され、同穿刺針120がポート10のセプタム40を穿刺して、その先端部125が導電部50の露出部51の内面51bに接触すると、露出部51及び生体を介して、穿刺針120と電極110が通電する。すなわち、穿刺針120が露出部51の内面51bに接触すると、交流電源130から印加された交流電流が、ハウジング20の外部に露出し、生体組織3に接触した露出部51から、生体組織3を通過して電極110側へと流れて、穿刺針120が露出部51を介して電極110と通電する。その結果、図6のBの場合よりも、高い交流電流が交流回路内を流れるので、図6のBのインピーダンス「b」よりも低いインピーダンスとなる(図6中の「c」参照)。
【0059】
この実施形態では、上記のインピーダンス「c」が、通電パラメータの閾値として設定されている。そのため、インピーダンスが「c」以下となった場合に、穿刺針120が露出部51に接触したとして、検出装置150の検出部153から動作部151へと動作信号が出力されて、動作部151の音声発生ブザーからブザー音が発信すると共に、動作部151のランプが点灯したり点滅したりする。その結果、施術者は、ポート10の導電部50に、穿刺針120の先端部125が接触したことを把握することができる。なお、閾値として設定されるインピーダンス「c」は、患者による個体差や、導電部50の露出部51の、生体組織3との接触位置によるばらつきを考慮して、そのようなばらつきが生じても、検出が可能な値として設定される。
【0060】
なお、通電パラメータとしては、インピーダンスではなく、交流電流等であってもよく、また、通電パラメータの変動の検出方法は、上記態様に限定されるものではない。更に通電パラメータの閾値としては、図6のインピーダンス「b」とインピーダンス「c」との間の、符号「D」の範囲内で設定してもよい(インピーダンスが「D」の範囲内で設定された値以下となると、検出装置150からブザー音が発信したり、ランプが点灯・点滅する)。また、検出装置150の動作部としては、例えば、振動が生じたり、ディスプレイに表示される等の態様であってもよい。
【0061】
一方、本発明に係る薬液注入装置100は、上記構成からなる薬液注入ポート10と、適用患者1の体に接触配置される電極110と、ポート10の導電部50の露出部51に接触して通電する導電性の穿刺針120と、電極110及び穿刺針120の間に交流電圧を印加する交流電源130と、通電パラメータの変動により、穿刺針120が導電部50に接触したことを検出する検出装置150とを有している。
【0062】
次に、上記構成からなる薬液注入ポート10及び薬液注入装置100の作用効果について説明する。
【0063】
図4には、ポート10を適用患者1の皮下に埋め込んで、薬液注入装置100を使用した状態を示している。すなわち、このポート10は、皮膚2の内面側の生体組織3に埋設するようにして埋め込まれて、ポート10のコネクタ58に接続されたチューブ5を通じて、抗がん剤や栄養剤等の薬液を、血管等の管状器官4に供給可能とするものである。
【0064】
そして、ポート10の皮下への埋め込みに際しては、周知のセルディンガー法等によって、チューブ5の先端部を管状器官4の所定位置に留置した後、体外においてチューブ5の基端部を、ポート10のコネクタ58に接続する。その後、皮膚2を切開して、生体組織3の所定位置に配置すると共に、ポート外周の複数の挿通孔21dに挿通された縫合糸を、所定部位に縫い付けて、生体組織3に埋設するように埋め込んだ後、切開した皮膚2を閉じることで、図4に示すように、ポート10を皮下(皮膚2の下方)に留置することができる。この状態では、ハウジング20の開口部27を介して、導電部50の露出部51の外面51aがハウジング20の外部に露出している。
【0065】
また、適用患者1の背中等に、両面テープ等を介して、電極110を接触して配置しておく。なお、この状態では、図6のAに示すように、穿刺針120が皮膚2に穿刺されておらず、検出装置150により検出されるインピーダンスは「a」となっている。
【0066】
そして、ポート10の留置位置を、適用患者1の体を触る等して把握した後、穿刺針120の先端部125を、ポート10のセプタム40の穿刺可能領域41に概ね位置合わせして、皮膚2に穿刺していく。すると、図6のBに示すように、穿刺針120が適用患者1の生体組織3に位置するため、生体を介して穿刺針120と電極110とが通電し、検出装置150によるインピーダンスが「b」へと低下する。
【0067】
上記状態から穿刺針120を押込むと、その先端部125が、セプタム40の露出面43を介して貫通して、セプタム40の露出面43とは反対面から抜き出て、先端部125の図示しない先端孔が、薬液貯留空間30内に至る。なお、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41を穿刺して押込まれる際には、穿刺抵抗が生じるが、その穿刺抵抗を感知可能となっている。
【0068】
更に穿刺針120を押込むと、その先端部125が導電部50の露出部51の内面51bに接触する。すると、導電部50の露出部51及び生体を介して、穿刺針120と電極110が通電して、図6のCに示すように、検出装置150により検出されるインピーダンスが更に低下して「c」となり、通電パラメータの閾値以下となる。すると、検出装置150の検出部153から動作部151へと動作信号が出力されて、動作部151の音声発生ブザーからブザー音が発信すると共に、動作部151のランプが点灯したり点滅したりするので、施術者は、ポート10の導電部50に、穿刺針120の先端部125が接触したことを確実に把握することができる。
【0069】
一方、穿刺針120を、皮膚2に穿刺して深く押込んでも、検出装置150により検出される通電パラメータであるインピーダンスが「b」以下とはならず、通電パラメータの閾値以下とならない。そのため、動作部151の音声発生ブザーがブザー音を発信することはなく、ランプも点灯又は点滅しないので、施術者は、ポート10の導電部50に、穿刺針120の先端部125が接触していないことを把握することができる。
【0070】
上記のように、このポート10及び薬液注入装置100においては、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺された穿刺針120が、導電部50の露出部51に接触すると、交流電流が、ハウジング20の外部に露出して生体組織3に接触した露出部51から、生体組織3を介して電極110側へと流れて、穿刺針120が露出部51を介して電極110と通電し、その際の、インピーダンス等の通電パラメータの変動が検出装置150によって検出されるので、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺され、かつ、薬液貯留空間30に位置したことを、確実に把握することができる。すなわち、穿刺針120の先端部125がセプタム40を貫通して、同先端部125の図示しない先端孔が、薬液貯留空間30内に位置したことを、確実に把握することができる。
【0071】
そのため、穿刺針120を薬液貯留空間30内に位置するように、セプタム40に適切に穿刺することができる。また、セプタム40ではない箇所に、誤って穿刺針120を穿刺することを防止して(誤穿刺の防止)、生体組織3の炎症や壊死を抑制することができる。
【0072】
なお、セプタム40が皮膚2に近い位置に配置されずに、反転して配置された場合は、皮膚2に穿刺された穿刺針120が、直ぐに導電部50の露出部51に接触するため、この場合も、インピーダンスが「c」となり、動作部151の音声発生ブザーがブザー音を発信し、ランプも点灯又は点滅する。ただし、この際には、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41を穿刺して押込まれる際の穿刺抵抗を、施術者が感知しないため、誤穿刺であり、穿刺針120が薬液貯留空間30に位置していないと判断することが可能である。
【0073】
すなわち、このポート10においては、通電パラメータの変動により、穿刺針120が導電部50の露出部51に接触したことを、検出装置150によって検出する前に、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41を穿刺して押込まれる際の、穿刺抵抗を感知するようになっている。
【0074】
また、このポート10においては、特許文献1の皮下埋設機器のように、基板や電気回路体が内蔵されておらず、通電構造として、ハウジング20に設けた、ハウジング外部に一部が露出する導電部50のみを有するだけなので、ポート10の構造の簡素化を図ることができると共に、ポート10の厚さを薄くしてコンパクト化を図ることができる。
【0075】
更に図3に示すように、この実施形態においては、導電部50の少なくとも一部は、ハウジング20の底部において、ハウジング20の外部に露出している。ここでは、導電部50の一部である露出部51が、ハウジング20の底部に設けた開口部27を介して、露出するようになっている。そのため、導電部51の、生体組織3に対する接触面積を大きく確保することができ、導電部50の露出部51に穿刺針120が接触したときに、生体組織3に対する導電部50の通電性能を高めることができる。また、薬液貯留空間30の高さを大きく確保することができる。
【0076】
また、図3に示すように、この実施形態では、ポート10は、ハウジング20の開口25の周縁が絶縁部23で覆われていると共に、ハウジング20の薬液貯留空間30の内周も第1絶縁部71で覆われているので、セプタム40の穿刺可能領域41に対して、穿刺針120が斜めに穿刺された場合でも、穿刺針120が、電極110と通電することを防ぐことができる。加えて、導電部50の少なくとも一部は、ハウジング20の周壁21に配置されるとともに、セプタム40に当接して、セプタム40の、ハウジング20からの外れを規制するため、ハウジング20の剛性を高めることができると共に、セプタム40を安定してハウジング20に取り付けることができる。
【0077】
なお、導電部50の内側に、絶縁部材70が配置されていない場合に、セプタム40に対して穿刺針120の針部123が斜めに穿刺されて、その先端部125が導電部50の第1壁部55や第2壁部57に当接すると、穿刺針120が電極110と通電した状態となる一方で、穿刺針120の先端部125の一部がセプタム内に位置する事態が生じることになり、実際には穿刺針120の先端部125の先端孔全体が薬液貯留空間30内に位置していないのに、同先端部125の先端孔全体が薬液貯留空間30内に位置していると誤認されるおそれがあるため、これを防ぐ目的で、導電部50の内側に絶縁部材70が配置されるようになっている。
【0078】
図7には、本発明に係る薬液注入ポートの、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0079】
この実施形態における薬液注入ポート10A(以下、単に「ポート10A」ともいう)は、前記実施形態のように、カップ状の導電部50や、キャップ状の導電部材60、更に円筒スリーブ状の絶縁部材70を有するものではない。そして、ハウジング20Aは、絶縁材料で形成されていると共に、その開口25寄りの位置に、凹状のセプタム取付部29が形成されている。このセプタム取付部29に、セプタム40の外周が嵌合して取付けられている。
【0080】
一方、ハウジング20Aの底部側には、薬液貯留空間30よりも拡径した円形状の開口部27が形成されており、この開口部27が、導電部50Aが露出するようになっている。なお、上記開口部27は、薬液貯留空間30の内径と同一又は小径でもよい。また、この開口部27に、円板状をなした導電部50Aが嵌合して配置されており、この導電部50Aの外面51aが、開口部27を介してハウジング外部に露出している。また、ハウジング20Aの通孔21cに、コネクタ58が挿入されて、薬液貯留空間30と連通している。
【0081】
上記構造のポート10Aは、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺された穿刺針120が、導電部50Aに接触すると、穿刺針120が導電部50Aを介して電極110と通電し、その際の通電パラメータの変動が検出装置150によって検出されるので、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺され、かつ、薬液貯留空間30に位置したことを、確実に把握することができる。
【0082】
図8には、本発明に係る薬液注入ポートの、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0083】
この実施形態における薬液注入ポート10B(以下、単に「ポート10B」ともいう)は、第2実施形態と基本的な構成は同様である。
【0084】
また、絶縁材料からなるハウジング20Bの底部には、絶縁部26が配置されており、この絶縁部26は、ハウジング20Bの外部に露出している。この絶縁部26の内面側に、円板状の導電部50Bが配置されている。この導電部50Bは、その外径がハウジング20Bの周壁21の外径と同一外径とされている。
【0085】
前記導電部50Bの少なくとも一部は、ハウジング20Bの周壁21において、ハウジング20Bの外部に露出している。すなわち、ハウジング20Bの周壁21の、絶縁部26に隣接する位置には、ハウジング20Bの内部空間及び外部空間を連通させる、開口部27Bが形成されている。したがって、導電部50Bは、その一部である外周面52が、ハウジング20Bの周壁21の開口部27Bを介して、ハウジング20の外部に露出するようになっている。
【0086】
上記構造のポート10Bにおいては、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺された穿刺針120が、導電部51Bに接触すると、穿刺針120が導電部50Bを介して電極110と通電し、その際の通電パラメータの変動が検出装置150によって検出されるので、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺され、かつ、薬液貯留空間30に位置したことを、確実に把握することができる。
【0087】
また、この第3実施形態のポート10Bにおいては、ハウジング20Bの周壁21に開口部27Bが形成され、この開口部27Bから導電部50Bの一部である外周面52が露出されており、ハウジング20Bの底部には、絶縁部26がハウジング20Bの外部に露出して配置されている。そのため、皮下にポート10Bが裏返しになって留置された場合(ハウジング20Bの底部が皮膚2に近接し、開口25が体内奥側に位置するように留置された場合)に、皮膚2を通して穿刺針120を穿刺しても、ポート10Bの底部側の絶縁部26に接触して、電極110と通電することを妨げることができる。
【0088】
図9には、本発明に係る薬液注入ポートの、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0089】
この実施形態における薬液注入ポート10C(以下、単に「ポート10C」ともいう)は、第2実施形態及び第3実施形態と基本的な構成は同様である。
【0090】
この実施形態における導電部50Cは、略円板状をなすと共に、その裏側が外周縁部から、円環状をなした環状突部54が突設されている。一方、絶縁材料からなるハウジング20Cの底部には、円環状をなした開口部27Cが形成されている。この開口部27Cは、その底面側がハウジング20Cの外部に連通すると共に、内周側は、薬液貯留空間30に連通している。そして、導電部50Cは、ハウジング20Cの開口部27Cに嵌合して配置されており、その環状突部54の外面54aが、開口部27Cを介して、ハウジング20Cの外部に露出するようになっている。また、導電部50Cの、環状突部54の内側には、ハウジング20Cの底部に位置するように、円板状の絶縁部26が配置されている。
【0091】
上記構造のポート10Cにおいては、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺された穿刺針120が、導電部50Cに接触すると、穿刺針120が導電部51Cを介して電極110と通電し、その際の通電パラメータの変動が検出装置150によって検出されるので、穿刺針120が、セプタム40の穿刺可能領域41に穿刺され、かつ、薬液貯留空間30に位置したことを、確実に把握することができる。
【0092】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
10,10A,10B,10C 薬液注入ポート(ポート)
20,20A,20B,20C ハウジング
21 周壁
23 絶縁部
25 開口
27,27B,27C 露出部
29 セプタム取付部
30 薬液貯留空間
40 セプタム
41 穿刺可能領域
50,50A,50B,50C 導電部
51 露出部
60 第2導電部材
70 絶縁部材
100 薬液注入装置
110 電極
120 穿刺針
130 交流電源
150 検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9