IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-画像形成装置 図1
  • 特許-画像形成装置 図2
  • 特許-画像形成装置 図3
  • 特許-画像形成装置 図4
  • 特許-画像形成装置 図5
  • 特許-画像形成装置 図6
  • 特許-画像形成装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/16 20060101AFI20240813BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240813BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G15/00 657
G03G15/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020186758
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076372
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新川 悠介
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-013667(JP,A)
【文献】特開2011-085764(JP,A)
【文献】特開2018-067023(JP,A)
【文献】特開2020-112704(JP,A)
【文献】特開2010-140060(JP,A)
【文献】特開2019-053275(JP,A)
【文献】特開2010-282185(JP,A)
【文献】特開2005-094987(JP,A)
【文献】特開平08-062920(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0040377(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0028589(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/00
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部材と、
前記感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光部材と、
記静電潜像に現像剤を供給して現像剤像を形成する現像部材と、
記現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、
前記感光体から前記被転写体に前記現像剤像が転写される際に前記被転写体を移動させる移動部材と
1ギアが設けられた軸を有するモータと、
前記第1ギアと噛み合う第2ギアを含み、前記モータの駆動力を前記感光体に伝達する第1駆動伝達部
前記第1ギアと噛み合う第3ギアを含み、前記モータの駆動力を前記移動部材に伝達する第2駆動伝達部
を備え、
前記感光体の回転方向において前記露光部材により光が照射される位置を露光位置、前記転写部材により前記現像剤像が前記被転写体に転写される位置を転写位置とし、前記第2ギアの回転中心と前記第1ギアの回転中心と前記第3ギアの回転中心との成す角度をΦ〔rad〕とし、画像形成時における前記第1ギアの回転方向と反対の方向をΦの正の方向とする場合、画像形成時に前記感光体が前記露光位置から前記転写位置まで回転するときの前記モータの回転量は、nを自然数として2πn+η〔rad〕であり、0<η<π-Φの関係が満たされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
感光体と、
前記感光体を帯電させる帯電部材と、
前記感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光部材と、
記静電潜像に現像剤を供給して現像剤像を形成する現像部材と、
記現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、
前記感光体から前記被転写体に前記現像剤像が転写される際に前記被転写体を移動させる移動部材と
1ギアが設けられた軸を有するモータと、
前記第1ギアと噛み合う第2ギアを含み、前記モータの駆動力を前記感光体に伝達する第1駆動伝達部
前記第1ギアと噛み合う第3ギアを含み、前記モータの駆動力を前記移動部材に伝達する第2駆動伝達部
を備え、
前記感光体の回転方向において前記露光部材により光が照射される位置を露光位置、前記転写部材により前記現像剤像が前記被転写体に転写される位置を転写位置とし、前記第2ギアの回転中心と前記第1ギアの回転中心と前記第3ギアの回転中心との成す角度をΦ〔rad〕とし、画像形成時における前記第1ギアの回転方向と反対の方向をΦの正の方向とする場合、画像形成時に前記感光体が前記露光位置から前記転写位置まで回転するときの前記モータの回転量は、nを自然数として2πn+η〔rad〕であり、π-Φ<η<0の関係が満たされることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
η=(π-Φ)/2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
-3π/4<Φ<3π/4の関係を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
Φ=±π/3であることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
スラスト方向において、前記第2ギアが前記第1ギアに対して噛み合う位置と、前記第3ギアが前記第1ギアに対して噛み合う位置は、同じであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記被転写体はシートであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記被転写体は、前記感光体から前記現像剤像が転写され、転写された前記現像剤像がシートに転写される中間転写体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザビームプリンタ、LEDプリンタ)などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、感光体の表面に露光処理によって静電潜像を形成し、この静電潜像を現像処理によって現像し、現像された現像剤像を被転写体、即ちシート又は中間転写体に転写する転写処理を経て画像を形成する。なお、中間転写体に転写された現像剤像は、最終的にシートに転写される。
【0003】
ここで特許文献1では、モータの駆動力を感光体に伝達して感光体を回転駆動する構成において、シート上の画像に対するモータの回転ムラの影響を抑制する構成が記載されている。このための特許文献1の構成は、感光体の回転方向の位置に関し、露光処理が行われる位置を露光位置、転写処理が行われる位置を転写位置とする場合、感光体が露光位置から転写位置まで回転する際にモータを整数回転させる構成である。このような構成により、モータに回転ムラある場合でも、露光位置と転写位置との間でモータの位相が同じとなるため、回転ムラの影響が相殺されて、シート上の画像に対するモータの回転ムラの影響が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-140060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、一つのモータにより、感光ドラムと被転写体であるシートを搬送する搬送ベルトの双方を駆動している。ここで上述の通り、感光体におけるモータの回転ムラの影響は露光位置と転写位置との間で抑制される。しかしながら、搬送ベルトにおけるモータの回転ムラの影響は上述したモータの制御では抑制されず、画像に対してモータの回転ムラが悪影響を及ぼすおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、一つのモータによって感光体と被転写体を移動させる移動部材を駆動する構成において、モータの回転ムラによって生じる画像への悪影響を低減することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、感光体と、前記感光体を帯電させる帯電部材と、前記感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光部材と、前記静電潜像に現像剤を供給して現像剤像を形成する現像部材と、前記現像剤像を被転写体に転写する転写部材と、前記感光体から前記被転写体に前記現像剤像が転写される際に前記被転写体を移動させる移動部材と、第1ギアが設けられた軸を有するモータと、前記第1ギアと噛み合う第2ギアを含み、前記モータの駆動力を前記感光体に伝達する第1駆動伝達部前記第1ギアと噛み合う第3ギアを含み、前記モータの駆動力を前記移動部材に伝達する第2駆動伝達部、を備え、前記感光体の回転方向において前記露光部材により光が照射される位置を露光位置、前記転写部材により前記現像剤像が前記被転写体に転写される位置を転写位置とし、前記第2ギアの回転中心と前記第1ギアの回転中心と前記第3ギアの回転中心との成す角度をΦ〔rad〕とし、画像形成時における前記第1ギアの回転方向と反対の方向をΦの正の方向とする場合、画像形成時に前記感光体が前記露光位置から前記転写位置まで回転するときの前記モータの回転量は、nを自然数として2πn+η〔rad〕であり、0<η<π-Φの関係が満たされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一つのモータによって感光体と被転写体を移動させる移動部材を駆動する画像形成装置において、モータの回転ムラによって生じる画像への悪影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の断面概略図である。
図2】駆動ユニットの概略図である。
図3】段ギアの回転速度のプロファイルの一例を示すグラフである。
図4】噛み合い位相差とモータの回転量とピッチ変動の関係を示すグラフである。
図5】画像形成装置の断面概略図である。
図6】駆動ユニットの概略図である。
図7】画像形成装置の断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
<画像形成装置>
以下、まず本発明の第1実施形態に画像形成装置の全体構成を画像形成時の動作とともに図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
図1(a)は、画像形成装置100の断面概略図である。図1(b)は、図1(a)における感光ドラム1の周囲の拡大図である。図1に示す様に、画像形成装置100は、シートSに画像を形成する画像形成部45を備える。画像形成部45は、画像形成装置100に対して着脱可能に構成されたプロセスカートリッジP、レーザスキャナユニット3(露光部材)、転写ローラ5(転写部材)を備える。プロセスカートリッジPは、感光ドラム1(感光体)、帯電ローラ2(帯電部材)、現像ローラ4(現像部材)を備える。
【0012】
画像形成装置100によって画像を形成する際、まず不図示の制御部が画像形成ジョブ信号を受信すると、シートカセット9に積載収納されたシートSが、ピックアップローラ10、給送ローラ11、搬送ローラ12によってレジストローラ13に搬送される。その後、レジストローラ13は、感光ドラム1と転写ローラ5から形成される転写ニップ部に所定のタイミングでシートSを搬送する。
【0013】
一方、画像形成部45においては、まず帯電ローラ2によって感光ドラム1の表面が帯電させられる。その後、不図示の外部機器から入力された画像データに応じてレーザスキャナユニット3が感光ドラム1の表面にレーザ光Lを照射する露光処理を行う。これにより感光ドラム1の表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0014】
次に、現像ローラ4は、感光ドラム1の表面に形成された静電潜像に対し、現像ローラ4の表面に担持されているトナーを供給し、感光ドラム1の表面にトナー像(現像剤像)を形成する。その後、感光ドラム1の表面に形成されたトナー像は、転写ローラ5にバイアスが印加されることによりシートS(被転写体)に転写される。
【0015】
次に、トナー像が転写されたシートSは、定着装置6に搬送される。そして定着装置6が有する加圧ローラ6aと加熱ローラ6bから形成される定着ニップ部において加熱、加圧処理が施され、これによりシートS上のトナー像がシートSに定着される。加圧ローラ6aは、回転することでシートSを搬送する。また加熱ローラ6bは、熱源を内部に備えており、加圧ローラ6aに接触して従動回転する。その後、トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ7によって排出部8に排出される。
【0016】
ここで感光ドラム1の回転方向の位置に関し、露光部材であるレーザスキャナユニット3からレーザ光Lが照射される位置を露光位置Phと定義する。また感光ドラム1の回転方向の位置に関し、トナー像が転写部材によって被転写体に転写される位置、即ち、本実施形態ではトナー像が転写部材である転写ローラ5によって被転写体であるシートSに転写される位置を転写位置Ptと定義する。このとき、感光ドラム1の画像形成時の回転方向における露光位置Phから転写位置Ptまでの回転角度ψは、本実施形態では0.889π〔rad〕(160度)に設定されている。なお、回転角度ψは、露光位置Phと感光ドラム1の回転中心Oと転写位置Ptとの成す角度とも言うことができる。
【0017】
また感光ドラム1から転写ローラ5によってシートSにトナー像が転写される際、シートSは、レジストローラ13と定着装置6の加圧ローラ6aによって搬送される。つまり
レジストローラ13と加圧ローラ6aは、感光ドラム1から被転写体であるシートSにトナー像が転写される際にシートSを移動させる移動部材である。またシートSの搬送速度は、レジストローラ13と加圧ローラ6aによって決められる。
【0018】
<駆動ユニット>
次に、画像形成装置100の各部材を駆動する駆動ユニット40の構成について説明する。本実施形態では、駆動ユニット40は、一つのモータ20によって感光ドラム1、定着装置6、ピックアップローラ10、給送ローラ11、搬送ローラ12、レジストローラ13、排出ローラ7を駆動する。
【0019】
図2は、駆動ユニット40の概略図である。図2に示す様に、駆動ユニット40は、感光ドラム1を駆動させるギア列(第1駆動伝達部)として、モータ20の軸20aに取り付けられたピニオンギア21(第1ギア)と、段ギア22(第2ギア)と、ドラム駆動ギア24を有する。
【0020】
段ギア22は、ピニオンギア21と噛み合う大ギア部22aと、ドラム駆動ギア24と噛み合う小ギア部22bを備える。ドラム駆動ギア24は、感光ドラム1に一体的に取り付けられたギアである。モータ20が駆動すると、ピニオンギア21が回転し、段ギア22を介してドラム駆動ギア24に駆動力が伝達される。これにより感光ドラム1がドラム駆動ギア24と一体的に回転する。
【0021】
ここで本実施形態では、ピニオンギア21の歯数は13歯、段ギア22の大ギア部22aの歯数は63歯、小ギア部22bの歯数は39歯、ドラム駆動ギア24の歯数は89歯に設定されている。この歯数の関係から、モータ20から感光ドラム1までのギア列の減速比は0.0904(=13/63×39/89)となっている。
【0022】
また駆動ユニット40は、ピックアップローラ10、給送ローラ11、搬送ローラ12、レジストローラ13、定着装置6、排出ローラ7を駆動させるギア列(第2駆動伝達部)として、ピニオンギア21、段ギア25、アイドラギア26、27、加圧ローラギア28などを有する。
【0023】
段ギア25(第3ギア)は、ピニオンギア21と噛み合う大ギア部25aと、アイドラギア27、28とそれぞれ噛み合う小ギア部25bを備える。加圧ローラギア28は、アイドラギア26と噛み合い、加圧ローラ6aに一体的に取り付けられたギアである。またアイドラギア26又はアイドラギア27から分岐して、不図示のギア列が更に設けられており、この不図示のギア列を介してピックアップローラ10、給送ローラ11、搬送ローラ12、レジストローラ13、排出ローラ7にモータ20の駆動力が伝達される。
【0024】
モータ20が駆動すると、ピニオンギア21が回転し、段ギア22、アイドラギア26を介して加圧ローラギア28に駆動力が伝達される。これにより加圧ローラ6aが加圧ローラギア28と一体的に回転する。またモータ20が駆動すると、ピニオンギア21が回転し、段ギア22、アイドラギア26、27、不図示のギア列を介して、ピックアップローラ10、給送ローラ11、搬送ローラ12、レジストローラ13、排出ローラ7に駆動力が伝達されて、これらの部材が回転する。
【0025】
ここで段ギア25の大ギア部25aは、歯数・モジュールが段ギア22の大ギア部22aと同一であり、ピニオンギア21に対しスラスト方向の略同一位置で噛み合っている。ここでいう略同一位置には、大ギア部22aと大ギア部25aのスラスト方向の位置が完全に同一の場合と公差の範囲でずれている場合とが含まれる。
【0026】
またピニオンギア21と噛み合うギアであり感光ドラム1にモータ20の駆動力を伝達するギア列に含まれるギアの回転中心と、ピニオンギア21の回転中心21cと、ピニオンギア21と噛み合うギアであり感光ドラム1からトナー像が転写される被転写体を移動させる移動部材にモータ20の駆動力を伝達するギア列に含まれるギアの回転中心との成す角度を以下では噛み合い位相差Φと称する。本実施形態では、段ギア22の回転中心22cとピニオンギア21の回転中心21cと段ギア25の回転中心25cとの成す角度が噛み合い位相差Φであり、Φ=4π/3〔rad〕(240度)に設定されている。噛み合い位相差Φの正方向は、ピニオンギア21の画像形成時の回転方向である矢印R方向と反対の方向である。
【0027】
<モータの回転ムラの影響>
次に、モータ20の回転ムラによって生じるシートS上の画像への影響について説明する。ここでモータ20の回転ムラは、モータ20が一周する間の速度変動であり、モータ20内部のベアリングの偏心等を原因とするモータ自身の回転ムラ、モータ20の軸20aの振れ、ピニオンギア21の偏心などに起因して発生する。
【0028】
図3(a)は、モータ20が一周する間の、感光ドラム1を駆動するギア列に含まれる段ギア22の回転速度Vdのプロファイルの一例を示すグラフである。図3(a)において、線G1はモータ20の回転ムラに起因する段ギア22の回転速度変動の波形、線G2はモータ20自身の回転ムラに起因する段ギア22の速度変動の波形、線G3はモータ20の軸20aの振れ、及び、ピニオンギア21の偏芯に起因する段ギア22の速度変動の波形をそれぞれ示す。
【0029】
図3(a)に示す様に、モータ20の回転ムラに起因する段ギア22の回転速度変動の波形は、モータ20自身の回転ムラに起因する段ギア22の速度変動の波形と、モータ20の軸20aの振れ、及び、ピニオンギア21の偏芯に起因する段ギア22の速度変動の波形との合成波である。なお、これらの正弦波の位相は、モータ20やピニオンギア21の製造上のばらつきやモータ20の軸20aに対するピニオンギア21の取り付け位相等で変化する。
【0030】
そこでモータ20の回転ムラに起因する段ギア22の回転速度Vdの変動は、時間tの関数として次の式1として表される。式1において、Aはモータ20自身の回転ムラの振幅、Bはモータ20の軸20aの振れとピニオンギア21の偏芯の振幅、ωはモータ20の角速度、θはモータ20自身の回転ムラに対する軸20aの振れとピニオンギア21の偏芯の位相差である。
【0031】
(式1)
【0032】
図3(b)は、モータ20が一周する間の、シートSを搬送するレジストローラ13や加圧ローラ6aを駆動するギア列に含まれる段ギア25の回転速度Vhのプロファイルの一例を示すグラフである。図3(b)において、線G4はモータ20の回転ムラに起因する段ギア25の回転速度変動の波形、線G5はモータ20自身の回転ムラに起因する段ギア25の速度変動の波形、線G6はモータ20の軸20aの振れ、及び、ピニオンギア21の偏芯に起因する段ギア25の速度変動の波形をそれぞれ示す。
【0033】
図3(b)に示す様に、段ギア25におけるモータ20自身の回転ムラに起因する速度変動の波形の位相は、図3(a)に示す波形と同じである。一方でピニオンギア21と段ギア22、25の間には噛み合い位相差Φがあるため、モータ20の軸20aの振れ、及び、ピニオンギア21の偏芯に起因する段ギア25の速度変動の波形の位相は、噛み合い位相差Φの分、段ギア22の同波形に対してずれている。モータ20の回転ムラに起因する段ギア25の回転速度Vhの変動は、時間tの関数として次の式2として表される。
【0034】
(式2)
【0035】
次に、モータ20の回転ムラがシートS上の画像に与える影響の発生メカニズムについて説明する。まず露光位置Phでレーザスキャナユニット3に静電潜像を形成する際、モータ20の回転ムラに起因する段ギア22の回転速度変動に応じて感光ドラム1の露光位置Phでの回転速度が変動するため、静電潜像のピッチが変動する。具体的には、段ギア22の回転速度が増加すると静電潜像のピッチが広がり、減少すると静電潜像のピッチが狭まる。感光ドラム1の露光時の時間をtaとする場合、この静電潜像のピッチ変動はVd(ta)と表される。
【0036】
また転写位置Ptにおいてトナー像がシートSに転写される際、モータ20の回転ムラに起因する段ギア22の回転速度変動に応じて感光ドラム1の転写位置Ptでの回転速度が変動するため、シートSに転写されるトナー像のピッチが変動する。具体的には、段ギア22の回転速度が増加するとトナー像のピッチが狭まり、減少するとトナー像のピッチが広がる。感光ドラム1の転写時の時間をtbとする場合、このトナー像のピッチ変動は-Vd(tb)と表される。
【0037】
また転写位置Ptにおいてトナー像がシートSに転写される際、モータ20の回転ムラに起因する段ギア25の回転速度変動に応じてシートSの移動速度が変動するため、シートSに転写されるトナー像のピッチが変動する。具体的には、段ギア25の回転速度が増加するとトナー像のピッチが狭まり、減少するとトナー像のピッチが広がる。このトナー像のピッチ変動はVh(tb)と表される。
【0038】
ここまで説明した三つのピッチ変動が合計されて生じる、感光ドラム1からトナー像が転写される被転写体としてのシートS上の画像のピッチ変動Vは、次の式3として表される。本実施形態では、このようにしてモータ20の回転ムラによって生じるシートS上の画像への影響を、以下に説明する構成により低減する。
(式3)
【0039】
まず画像形成時に感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときのモータ20の回転量は、nを自然数とすると、2πn+η[rad]と表される。ηは、感光ドラム1が画像形成時に露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときのモータ20の整数回転量に対して増加した回転量[rad]であって-π≦η≦πである。この場合、uを任意の整数、Tをモータ20の一周の周期とすると、時間taと時間tbとの関係は次の式4で表される。
【0040】
(式4)
【0041】
またT=ω/2πであるため、式4は次の式5として書き換えられる。
【0042】
(式5)
【0043】
ここで式3に対し、式1、式2、式5を代入すると、ピッチ変動Vは次の式6として表される。
【0044】
(式6)
【0045】
ここで式6において、tb+θ/ωを時間tcとする場合、ピッチ変動Vは次の式7として表される。
【0046】
(式7)
【0047】
ここで上述した通り、段ギア22と段ギア25におけるモータ20自身の回転ムラに起因する速度変動の波形の位相は同じである。従って、以下の計算の簡略化のために、モータ20自身の回転ムラをゼロとしても議論の一般性は失われない。そこで以下の計算ではA=0、B=1としてピッチ変動Vを低減するための噛み合い位相差Φと回転量ηの関係を求める。式7にA=0、B=1を代入すると、次の式8となる。
【0048】
(式8)
【0049】
また式8の右辺の第2項、第3項について三角関数の合成を行うと、次の式9となる。
【0050】
(式9)
【0051】
次に、式9において、Vの右辺について三角関数の合成を行うと、γを合成波の位相として次の式10となる。
【0052】
(式10)
【0053】
次に、βを計算する。以下の式11の関係が成り立つため、β=(Φ+π)/2となる。
【0054】
(式11)
【0055】
ここで予め設定されている噛み合い位相差Φに対し、ピッチ変動Vの振幅が最小となるのは、式10よりcos(-β-η)=-1となるときである。つまり-β-η=πであり、この式に上で求めたβを代入すると次の式12となる。
【0056】
(式12)
【0057】
式12より、予め設定された噛み合い位相差Φに対して、ピッチ変動Vの振幅が最小となる回転量ηが求められた。この結果は次に説明するように考えると理解しやすい。式8に対し、式12を代入すると次の式13として表される。
【0058】
(式13)
【0059】
式13において、右辺の第2項の位相であるπと第3項の位相であるΦの平均は(Φ+π)/2である。また右辺の第1項の位相-η=(Φ-π)/2は、Φの平均から位相がπ(180度)ずれている(-η=(Φ-π)/2=(Φ+π)/2-π)。つまり予め設定された位相π、噛み合い位相差Φに対し、最も振幅が小さくなるようにηが決められていることが分かる。
【0060】
次に、ピッチ変動Vの振幅が最小となる噛み合い位相差Φと、そのときのピッチ変動Vの振幅を計算する。式10で計算したピッチ変動Vの振幅をVaとし、式10にcos(-β-η)=-1を代入すると、次の式14となる。
【0061】
(式14)
【0062】
また式14において、
とする場合、次の式15となる。
【0063】
(式15)
【0064】
式15より、x=1のときに振幅Vaが0となって最小となる。
また、この式をcosΦについて解くとcos=1/2となる。従って、Φ=π/3、5π/3となる。
【0065】
式12より、Φ=π/3のときにη=π/3となり、Φ=5π/3のときにη=-π/3となる。この場合(x=1)、ピッチ変動Vの振幅Vaは次の式16のように計算されてゼロとなる。つまりモータ20の軸20aの振れとピニオンギア21の偏芯の影響が完全に吸収される。
【0066】
(式16)
【0067】
この結果は、以下のように考えると理解しやすい。式8にΦ=π/3、η=π/3を代入すると次の式17となる。
【0068】
(式17)
【0069】
式17より、ピッチ変動Vは、位相が互いに2π/3(120度)ずれている3つの正弦波の和となることが分かる。即ち、3つの正弦波(Vd(ta)、-Vd(tb)、Vh(tb))の位相がお互い2π/3(120度)ずれるように噛み合い位相差Φと回転量ηを設定することで、ピッチ変動Vを最小のV=0とすることができる。
【0070】
次に、ピッチ変動Vの振幅が、感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときにモータ20が整数回転するときの振幅と同じ振幅になる回転量ηを計算する。なお、感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときにモータ20が整数回転するときη=0となるものの、以下ではη≠0の場合の解を求める。
【0071】
まず式8にη=0を代入すると、V=sin(ωtc+Φ)となり振幅は1である。従って式8において、次の式18の関係が成り立つときにも振幅は1となる。
【0072】
(式18)
【0073】
式18では、左辺と右辺で位相がπ(180度)ずれているためη=π×Φとなる。従って、η=0、π-Φの場合、ピッチ変動Vの振幅が、感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときにモータ20が整数回転するときの振幅と同じ振幅となる。
【0074】
以上より、回転量ηが次の条件1、又は、条件2を満たす場合、シートS上のトナー像のピッチ変動Vは、感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときにモータ20が整数回転する場合よりも小さくなる。即ち、条件1、又は、条件2を満たすように回転量ηと噛み合い位相差Φを設定することにより、感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときにモータ20が整数回転する場合と比較して、シートS上の画像に対するモータ20の回転ムラの影響を低減することができる。
【0075】
(条件1)
0<η<π-Φ
【0076】
(条件2)
π-Φ<η<0
【0077】
ここで式12に示すη=(η-Φ)/2となるように回転量ηと噛み合い位相差Φを設定することにより、予め設定された噛み合い位相差Φに対し、ピッチ変動Vの振幅が最小となるため好ましい。またη=π/3、Φ=π/3、若しくは、η=-π/3、Φ=5π/3に設定する場合、モータ20の軸20aの振れとピニオンギア21の偏芯の影響が完全に吸収されるため更に好ましい。
【0078】
図4は、噛み合い位相差ΦがΦ1=4π/3とΦ2=5π/3の場合の回転量ηとピッチ変動Vとの関係を示すグラフである。図4に示す様に、ピッチ変動Vの振幅は、η=(π-Φ)/2のときに最小となり、η=π-Φのときにη=0のときと同じになることが分かる。またΦ2=5π/3の場合には、η=-π/3においてピッチ変動Vの振幅がゼロとなることが分かる。
【0079】
但し、配置の都合上、Φ=π/3、5π/3、即ち±π/3(±60度)に設定することが難しい場合もある。この場合であっても-3π/4(=5π/4)<Φ<3π/4の範囲にΦを設定できれば、ピッチ変動Vの低減を図ることができる。例えば、Φ=3π/4、又は、5π/4に設定する場合、ピッチ変動Vは約15%の低減効果がある。
【0080】
本実施形態では、上述した通り、モータ20から感光ドラム1までのギア列の減速比が0.0904であり、角度ψは0.889π(160度)に設定されている。従って、画像形成時に感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときのモータ20の回転量は、モータ20の一周に対して4.915倍(=1/0.0904×160/360)となる。このため、η=(4.915-5)×2×π=-0.170π(-30.5度)≒-π/6(-30度)となる。
【0081】
また本実施形態では、上述した通り、Φ=4π/3(240度)に設定されている。従って、π-Φ<η<0の関係が成り立ち、ピッチ変動Vが低減されている。またη≒(π-Φ)/2であるため、噛み合い位相差Φ(=4π/3)に対するηが最適に設定されており、ピッチ変動Vが最小化されている。また噛み合い位相差Φ(=4π/3=240度=-120度)は、-3π/4<Φ<3π/4の間にあるため、ピッチ変動Vの低減効果は十分ある。
【0082】
また本実施形態では、段ギア22の大ギア部22aと、段ギア25の大ギア部25aとがピニオンギア21に対してスラスト方向で略同一位置で噛み合っている。従って、モータ20の軸20aの振れの影響を、感光ドラム1と、シートSを搬送するレジストローラ13や加圧ローラ6aとでほぼ同じとすることができ、ピッチ変動Vの低減をより効果的に行うことができる。
【0083】
なお、ここまでの説明では、感光ドラム1の転写位置Ptにおいて、レジストローラ13と加圧ローラ6aによってシートSを搬送すると説明したものの、シートSを搬送する部材はシートSのサイズ等によって異なる。例えばシートSのサイズが大きい場合、感光ドラム1の転写位置Ptにおいて、レジストローラ13と加圧ローラ6aに加えて搬送ローラ12によってシートSを搬送する構成も考えられ、この場合には搬送ローラ12も被転写体を移動させる移動部材となる。ここで感光ドラム1の転写位置Ptにおいて、シートSの搬送方向の上流側と下流側でシートSを搬送する構成とすることで、感光ドラム1の転写位置PtにおけるシートSの搬送速度の精度が上がるため、更に高品質な画像を形成することができる。
【0084】
なお、ここでまでの計算では、式7においてA=0、B=1として簡略化して計算したものの、簡略化しない場合には、式7、式10よりピッチ変動Vは以下の式19で計算される。
【0085】
(式19)
【0086】
式19において、θはモータ20自身の回転ムラに対する軸20aの振れとピニオンギア21の偏芯の合成波との位相差である。θは、モータ20やピニオンギア21の製造上のばらつきや、モータ20の軸20aに対するピニオンギア21の取り付け位相などによって変化するため個々の画像形成装置100で値が異なる。従って、θは最悪の位相を想定して計算するのが望ましい。式19のピッチ変動Vにおいては、右辺の第1項と第2項の正弦波の位相が同じ場合、即ち-η-θ=γとなる場合が最悪となる。式19に-η-θ=γを代入すると、次の式20となる。
【0087】
(式20)
【0088】
式20の振幅は、式10の振幅をB倍してAを足したものである。従って、式10を計算して議論してきた内容がそのまま成立する。
【0089】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第2実施形態について図を用いて説明する。第1実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
本実施形態に係る画像形成装置100は、現像剤として、イエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックKの4色のトナーを中間転写ベルト96に転写した後、シートSに画像を転写して画像を形成する中間タンデム方式の画像形成装置である。なお、以下の説明において、上記各色のトナーを使用する部材には添え字としてY、M、C、Kを付するものの、各部材の構成や動作は使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じであるため、区別を要する場合以外は添え字を適宜省略する。
【0091】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置100の断面概略図である。図5に示す様に、画像形成装置100は、シートSに画像を形成する画像形成部45を備える。画像形成部45は、感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、レーザスキャナユニット3、帯電ローラ2(2Y、2M、2C、2K)、現像ローラ4(4Y、4M、4C、4K)を備える。
【0092】
また画像形成部45は、一次転写ローラ55(55Y、55M、55C、55K)、二次転写ローラ91、二次転写対向ローラ92、駆動ローラ93、中間転写ベルト96を備える。中間転写ベルト96(中間転写体、被転写体)は、二次転写対向ローラ92と駆動ローラ93に架け回された無端円筒状のベルトであり、駆動ローラ93の回転に従動して周回移動する。
【0093】
次に、画像形成動作について説明する。まず不図示の制御部が画像形成ジョブ信号を受信すると、シートカセット9に積載収納されたシートSが、ピックアップローラ10、給送ローラ11によってレジストローラ13に搬送される。レジストローラ13は、二次転写ローラ91と二次転写対向ローラ92から形成される二次転写部に所定のタイミングでシートSを搬送する。
【0094】
一方、画像形成部45においては、まず帯電ローラ2Yによって感光ドラム1Yの表面が帯電させられる。その後、不図示の外部機器から入力された画像データに応じてレーザスキャナユニット3が感光ドラム1Yの表面にレーザ光を照射する。これにより感光ドラム1Yの表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0095】
次に、現像ローラ4Yにより、感光ドラム1Yの表面に形成された静電潜像にイエローのトナーを供給し、感光ドラム1Yの表面にイエローのトナー像を形成する。感光ドラム1Yの表面に形成されたトナー像は、一次転写ローラ55Yにバイアスが印加されることで中間転写ベルト96に一次転写される。
【0096】
同様のプロセスにより、感光ドラム1M、1C、1Kにも、マゼンダ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。そして一次転写ローラ55M、55C、55Kにバイアスが印加されることで、これらのトナー像が中間転写ベルト96上のイエローのトナー像に対して重畳的に転写される。これにより中間転写ベルト96の表面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0097】
フルカラーのトナー像を担持した中間転写ベルト96が移動すると、トナー像が二次転写部に送られる。そして二次転写部において、二次転写ローラ91にバイアスが印加されることで、中間転写ベルト96上のトナー像がシートSに転写される。
【0098】
次に、トナー像が転写されたシートSは、定着装置6に搬送される。そして定着装置6が有する加圧ローラ6aと加熱ローラ6bから形成される定着ニップ部において加熱、加圧処理が施され、これによりシートS上のトナー像がシートSに定着される。その後、トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ7によって排出部8に排出される。
【0099】
ここで本実施形態では、第1実施形態と異なり、感光ドラム1から中間転写ベルト96に対して一次転写ローラ55によってトナー像が転写される。従って、本実施形態の転写位置Ptは、感光ドラム1の回転方向の位置において、トナー像が転写部材である一次転写ローラ55によって被転写体である中間転写ベルト96に転写される位置である。また本実施形態では、感光ドラム1の画像形成時の回転方向における露光位置Phから転写位置Ptまでの回転角度ψは0.944π〔rad〕(170度)に設定されている。
【0100】
また感光ドラム1から一次転写ローラ55によって中間転写ベルト96にトナー像が転写される際、中間転写ベルト96は、駆動ローラ93によって移動される。つまり駆動ローラ93は、感光ドラム1から被転写体である中間転写ベルト96にトナー像が転写される際に中間転写ベルト96を移動させる移動部材である。中間転写ベルト96の移動速度は、駆動ローラ93によって決められる。
【0101】
次に、本実施形態の駆動ユニット50の構成について説明する。本実施形態では、駆動ユニット50は、一つのモータ20によって感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと駆動ローラ93を駆動する。
【0102】
図6は、駆動ユニット50の概略図である。図6に示す様に、駆動ユニット50は、感光ドラム1Y~1Kを駆動させるギア列(第1駆動伝達部)として、モータ20の軸20aに取り付けられたピニオンギア21、アイドラギア82a~82c、段ギア83a、83b、ドラム駆動ギア84a~84dを有する。
【0103】
アイドラギア82a(第2ギア)はピニオンギア21(第1ギア)と噛み合い、アイドラギア82b、82cはアイドラギア82aと噛み合う。段ギア83aは、アイドラギア82bと噛み合う大ギア部83a1と、ドラム駆動ギア84a、84bと噛み合う小ギア部83a2を備える。段ギア83bは、アイドラギア82cと噛み合う大ギア部83b1と、ドラム駆動ギア84c、84dと噛み合う小ギア部83b2を備える。ドラム駆動ギア84a~84dは、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに対してそれぞれ一体的に取り付けられたギアである。
【0104】
モータ20が駆動すると、ピニオンギア21が回転し、アイドラギア82a~82c、段ギア83a、83bを介してドラム駆動ギア84a~84dに駆動力が伝達される。これにより感光ドラム1Y、1M、1C、1Kがドラム駆動ギア84a~84dと一体的に回転する。
【0105】
本実施形態では、ピニオンギア21の歯数は12歯、段ギア83a、83bの大ギア部83a1、83b1の歯数は59歯、小ギア部83a2、83b2の歯数は40歯、ドラム駆動ギア84a~84dの歯数は89歯に設定されている。この歯数の関係から、モータ20から感光ドラム1Y、1M、1C、1Kまでのギア列のそれぞれの減速比は0.0914(=12/59×40/89)となっている。
【0106】
また駆動ユニット50は、駆動ローラ93を駆動させるギア列(第2駆動伝達部)として、ピニオンギア21、アイドラギア82d~82i、駆動ローラギア85を有する。アイドラギア82d(第3ギア)は、ピニオンギア21と噛み合う。アイドラギア82e~82iは、アイドラギア82dと駆動ローラギア85との間でギア列を形成する。駆動ローラギア85は、駆動ローラ93と一体的に取り付けられたギアである。モータ20が駆動すると、ピニオンギア21が回転し、アイドラギア82d~82iを介して、駆動ローラギア85に駆動力が伝達される。これにより駆動ローラ93が駆動ローラギア85と一体的に回転する。
【0107】
ここでアイドラギア82dは、歯数・モジュールがアイドラギア82aと同一であり、ピニオンギア21に対しスラスト方向の略同一位置で噛み合っている。ここでいう略同一位置には、アイドラギア82aとアイドラギア82dのスラスト方向の位置が完全に同一の場合と公差の範囲でずれている場合とが含まれる。
【0108】
また本実施形態の噛み合い位相差Φは、アイドラギア82aのギア中心82a1とピニオンギア21のギア中心81cとアイドラギア82dのギア中心82d1との成す角度であり、Φ=π/3〔rad〕(60度)に設定されている。噛み合い位相差Φの正方向は、ピニオンギア21の画像形成時の回転方向である矢印R方向と反対の方向である。
【0109】
本実施形態では、上述した通り、モータ20から感光ドラム1までのギア列の減速比が0.0914であり、角度ψは0.944π(170度)に設定されている。従って、画像形成時に感光ドラム1が露光位置Phから転写位置Ptまで回転するときのモータ20の回転量は、モータ20の一周に対して5.166倍(=1/0.0914×170/360)となる。このため、η=(5.166-5)×2×π=0.332π(59.7度)≒π/3(60度)となる。
【0110】
また本実施形態では、上述した通り、Φ=π/3(60度)に設定されている。従って、0<η<π-Φの関係が成り立ち、ピッチ変動Vが低減されている。なお、本実施形態のピッチ変動Vは、感光ドラム1からトナー像が転写される被転写体としての中間転写ベルト96上の画像のピッチ変動Vである。またη≒(π-Φ)/2であるため、噛み合い位相差Φ(=π/3)に対するηが最適に設定されており、ピッチ変動Vが最小化されている。また噛み合い位相差Φはπ/3(60度)であり、モータ20の軸20aの振れとピニオンギア21の偏芯の成分の影響が完全に吸収されるため、ピッチ変動Vが十分に低減される。
【0111】
なお、本実施形態では、中間転写方式の画像形成装置100について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、図7に示す様に、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kから搬送ベルト94によって搬送されるシートSに対し、転写ローラ5Y、5M、5C、5Kによってトナー像を重畳的に転写して画像を形成する直接転写方式の画像形成装置100に本発明を適用することも可能である。この構成では、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kからトナー像が転写される被転写体はシートSであり、シートSを移動させる移動部材は搬送ベルト94である。また搬送ベルト94は、駆動ローラ95と張架ローラ98によって張架されており、駆動ローラ95の回転に従動して周回移動する。
【符号の説明】
【0112】
1…感光ドラム(感光体)
2…帯電ローラ(帯電部材)、
3…レーザスキャナユニット(露光部材)
4…現像ローラ(現像部材)
5…転写ローラ(転写部材)
6a…加圧ローラ(移動部材)
13…レジストローラ(移動部材)
20…モータ
20a…軸
21…ピニオンギア(第1ギア)
22…段ギア(第2ギア)
25…段ギア(第3ギア)
55…一次転写ローラ(転写部材)
82a…アイドラギア(第2ギア)
82d…アイドラギア(第3ギア)
93…駆動ローラ(移動部材)
96…中間転写ベルト(中間転写体、被転写体)
100…画像形成装置
S…シート(被転写体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7