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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】内視鏡アダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 46/10 20160101AFI20240813BHJP
   A61B 34/35 20160101ALI20240813BHJP
【FI】
A61B46/10
A61B34/35
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020189407
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2021159740
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020061175
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 薫
(72)【発明者】
【氏名】戸次 翔太
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-031767(JP,A)
【文献】国際公開第2019/139941(WO,A1)
【文献】米国特許第10238457(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
A61B 34/30 - A61B 34/37
A61B 46/10 - A61B 46/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット手術システムのロボットアームに、ドレープを保持するドレープアダプタを介して接続される内視鏡アダプタであって、
内視鏡を保持する内視鏡保持部と、
前記ドレープアダプタに取り付けられる取付部、前記取付部に設けられ、前記ドレープアダプタを介して前記ロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材、および、前記被駆動部材の回転を前記内視鏡保持部に伝達し、前記内視鏡保持部を回転させる伝達機構を含む基部とを備え、
前記基部は、前記内視鏡に接続されるケーブルをクランプ機構によりクランプして保持するケーブル保持部をさらに含み、
前記ケーブル保持部は、前記被駆動部材の回転軸線の延びる方向において、前記基部の前記内視鏡側とは逆方向側の面から突出して配置されている、内視鏡アダプタ。
【請求項2】
前記ケーブル保持部は、前記ケーブルを保持する弾性部材を有する、請求項1に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記弾性部材を貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、
前記内視鏡に接続されるライトケーブルが挿入されるライト用孔部と、
前記内視鏡に接続されるカメラケーブルが挿入されるとともに、前記ライト用孔部よりも小さい直径のカメラ用孔部とを有する、請求項2に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項4】
前記内視鏡保持部は、前記内視鏡の回転軸線の延びる方向に直交する方向に突出した前記内視鏡の内視鏡側突出部に係合するとともに、前記内視鏡側突出部の突出方向とは逆方向に突出した保持側突出部を有しており、
前記保持側突出部は、前記内視鏡側突出部に係合する際および係合を解除する際に、音が発生するように構成されている、請求項1~のいずれか1項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項5】
前記保持側突出部は、前記内視鏡側突出部に当接することにより弾性変形するとともに、前記内視鏡側突出部を乗り越えて前記内視鏡側突出部に対して係合または係合を解除する際に、音が発生するように構成されている、請求項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記基部の長手方向に沿った方向に延びるように形成され、前記被駆動部材の回転軸線が延びる方向と、前記基部の長手方向とに直交する方向において前記貫通孔を分断する分断部をさらに有しており、
前記貫通孔は、前記弾性部材の前記分断部により、開閉可能に構成されている、請求項3に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項7】
前記ケーブル保持部は、前記弾性部材を保持した状態で、前記基部に係合される第1状態と、前記弾性部材を保持した状態で、前記基部との係合が解除される第2状態とを切替可能な保持部材をさらに有する、請求項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項8】
前記保持部材は、前記基部の長手方向に平行に延びる回転軸線回りに回動可能に、前記基部に取り付けられており、
前記保持部材は、前記第1状態において、前記基部に向かって回動する際に弾性変形することにより前記基部に係合されるとともに、前記第2状態において、弾性変形することにより前記基部との係合を解除する弾性変形部を有する、請求項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項9】
前記内視鏡保持部には、第1歯車が接続されており、
前記被駆動部材には、第2歯車が接続されており、
前記伝達機構は、
前記第1歯車に噛み合う第3歯車と、
前記第2歯車に噛み合う第4歯車と、
前記第3歯車と前記第4歯車とが接続され、前記被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸とを含み、
前記基部は、前記被駆動部材が前記ロボットアームの駆動部によって回転駆動されていないときに、前記内視鏡保持部の回転を防止する回転防止部材をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項10】
前記回転防止部材は、前記駆動伝達軸に接触することにより、前記駆動伝達軸の回転を防止して、前記内視鏡保持部の回転を防止するように構成されている、請求項に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項11】
前記回転防止部材は、前記回転防止部材と前記駆動伝達軸とが接触する部分の摩擦により、前記駆動伝達軸の回転を防止して、前記内視鏡保持部の回転を防止するように構成されている、請求項10に記載の内視鏡アダプタ。
【請求項12】
前記回転防止部材は、前記駆動伝達軸に加わるトルクが所定トルクよりも小さい場合に、前記駆動伝達軸の回転を防止するように構成されており、かつ、前記被駆動部材が前記ロボットアームの駆動部によって回転駆動され、前記駆動伝達軸に前記所定トルク以上のトルクが加えられたときに、前記回転防止部材に対して前記駆動伝達軸が回転可能なように構成されている、請求項11のいずれか1項に記載の内視鏡アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡アダプタに関し、特に、内視鏡を保持する内視鏡アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡を保持する内視鏡アダプタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、内視鏡のホルダ部を吸着して保持する永久磁石を含むマウント部と、マウント部に収容され、内視鏡のホルダ部に設けられたギアに噛合するギア部とを備える内視鏡保持装置が開示されている。この特許文献1の内視鏡保持装置では、マウント部の永久磁石に内視鏡のホルダ部が吸着されると、マウント部のギア部と、内視鏡のギアとが噛合して、ギア部の駆動により内視鏡が回転するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-129956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の内視鏡保持装置では、マウント部の永久磁石に内視鏡のホルダ部が吸着されると、マウント部のギア部と、内視鏡のギアとが噛合して、ギア部の駆動により内視鏡が回転するように構成されている。このため、マウント部と内視鏡との間に清潔操作のためのドレープを挟むと、マウント部のギア部と内視鏡のギアとが噛合しなくなるため、内視鏡を回転させることができないという不都合がある。このため、内視鏡を保持する装置にドレープをかけた状態で内視鏡を回転可能に保持することが困難であるという問題点がある。
【0006】
この発明は、内視鏡を保持するロボットアームにドレープをかけた状態で内視鏡を回転可能に保持することが可能な内視鏡アダプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による内視鏡アダプタは、ロボット手術システムのロボットアームに、ドレープを保持するドレープアダプタを介して接続される内視鏡アダプタであって、内視鏡を保持する内視鏡保持部と、ドレープアダプタに取り付けられる取付部、取付部に設けられ、ドレープアダプタを介してロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材、および、被駆動部材の回転を内視鏡保持部に伝達し、内視鏡保持部を回転させる伝達機構を含む基部とを備え、基部は、内視鏡に接続されるケーブルをクランプ機構によりクランプして保持するケーブル保持部をさらに含み、ケーブル保持部は、被駆動部材の回転軸線の延びる方向において、基部の内視鏡側とは逆方向側の面から突出して配置されている
【0008】
この発明の一の局面による内視鏡アダプタでは、ロボットアームとドレープアダプタとの間にドレープを挟み込んだ状態で、ロボットアームの回転駆動部の回転駆動をドレープアダプタを介して内視鏡を保持した内視鏡保持部に伝達することができるので、内視鏡を挿入部が延びる方向の回転軸線を中心に回転させることができる。これにより、内視鏡を保持するロボットアームにドレープをかけた状態で内視鏡を回転可能に保持することができる。また、内視鏡アダプタでは、内視鏡に接続されるケーブルを保持するケーブル保持部を設ける。これにより、ケーブルをケーブル保持部により保持することによって、ロボットアームにより内視鏡を動かした際に、ケーブルが大きく振れないようにすることができる。その結果、ロボットアームにより内視鏡を動かした際に、内視鏡のケーブルとロボットアームとが干渉しないようにすることができる。
【0009】
なお、この発明の他の局面による内視鏡アダプタは、ロボット手術システムのロボットアームに、ドレープを保持するドレープアダプタを介して接続される内視鏡アダプタであって、内視鏡を回転可能に保持する内視鏡保持部と、ドレープアダプタに取り付けられる取付部と、取付部に設けられ、ドレープアダプタを介してロボットアームの駆動部によって回転駆動される被駆動部材と、被駆動部材の回転を内視鏡保持部に伝達する伝達機構とを含む基部とを備え、内視鏡保持部には、第1歯車が接続されており、被駆動部材には、第2歯車が接続されており、伝達機構は、第1歯車に噛み合う第3歯車と、第2歯車に噛み合う第4歯車と、第3歯車と第4歯車とが接続され、被駆動部材の回転により回転する駆動伝達軸とを含み、基部は、被駆動部材がロボットアームの駆動部によって回転駆動されていないときに、内視鏡保持部の回転を防止する回転防止部材をさらに含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、内視鏡を保持するロボットアームにドレープをかけた状態で内視鏡を回転可能に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1および第2実施形態によるロボット手術システムの概略を示した図である。
図2】第1および第2実施形態によるロボット手術システムの制御的な構成を示したブロック図である。
図3】第1および第2実施形態によるロボットアームに内視鏡アダプタを介して内視鏡が取り付けられた状態を示した斜視図である。
図4】第1実施形態によるロボットアームからアダプタおよび内視鏡アダプタを取り外した状態を示した分解斜視図である。
図5】第1実施形態による内視鏡アダプタおよびアダプタを下方から見た分解斜視図である。
図6】第1実施形態による内視鏡アダプタの内視鏡保持部を示した分解斜視図である。
図7】第1実施形態による内視鏡アダプタの一部を示した斜視図である。
図8図7の301-301線に沿った断面の一部を示した図である。
図9】第1実施形態による内視鏡アダプタの内視鏡を内視鏡保持部に挿入する状態を示した図8のK部分の断面図である。
図10】第1実施形態による内視鏡アダプタの内視鏡側突出部により保持側突出部をY2方向側から撓ませた状態を示した断面図である。
図11】第1実施形態による内視鏡アダプタの内視鏡側突出部が保持側突出部に係合した状態を示した断面図である。
図12】第1実施形態による内視鏡アダプタの内視鏡側突出部により保持側突出部をY1方向側から撓ませた状態を示した断面図である。
図13】第1実施形態による内視鏡アダプタの取付部を示した斜視図である。
図14】第1実施形態による内視鏡アダプタの伝達機構を示した側面図である。
図15】第1実施形態による内視鏡アダプタに内視鏡を取り付けた状態を示した斜視図である。
図16】第1実施形態による内視鏡アダプタをZ2方向側から視た斜視図である。
図17】第1実施形態による内視鏡アダプタの保持部材を閉じた第1状態を示した図16の302-302線に沿った断面図である。
図18】第1実施形態による内視鏡アダプタの保持部材を開いた第2状態を示した図16の302-302線に沿った断面図である。
図19】第2実施形態によるロボットアームからアダプタおよび内視鏡アダプタを取り外した状態を示した分解斜視図である。
図20】第2実施形態による内視鏡アダプタの伝達機構を示した側面図である。
図21】第2実施形態による内視鏡アダプタのシャフトの延びる方向に沿った断面図である。
図22図21のK部分を拡大した斜視図である。
図23図21に701-701線に沿った断面図である。
図24図21の702-702線に沿った断面図である。
図25】第2実施形態の第1変形例による内視鏡アダプタの回転防止部材を示した断面図である。
図26】第2実施形態の第2変形例による内視鏡アダプタの回転防止部材を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[第1実施形態]
(ロボット手術システムの構成)
図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態によるロボット手術システム100の構成について説明する。
【0014】
図1および図2に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置1と、患者側装置2と、画像処理装置3とを備えている。遠隔操作装置1は、患者側装置2に設けられた医療器具(medical equipment)を遠隔操作するために設けられている。患者側装置2によって実行されるべき動作態様指令が術者(surgeon)である操作者13により遠隔操作装置1に入力されると、遠隔操作装置1は、動作態様指令をコントローラを介して患者側装置2に送信する。そして、患者側装置2は、遠隔操作装置1から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム2aに取り付けられた内視鏡2d、ロボットアーム2bに取り付けられた手術器具2c(surgical instrument)等の医療器具を操作する。画像処理装置3は、内視鏡2dにより撮影された術野の画像を遠隔操作装置1などに送信する。これにより、低侵襲手術が行われる。
【0015】
患者側装置2は、患者4に対して手術を行うインターフェースを構成する。患者側装置2は、患者4が横たわる手術台5の傍らに配置される。患者側装置2は、複数のロボットアーム2eを有し、このうち1つのロボットアーム2aに内視鏡2dが取り付けられ、その他のロボットアーム2bに手術器具2cが取り付けられる。患者側装置2は、ロボットアーム2aに内視鏡2dを取り付けるための内視鏡アダプタ6(図3参照)と、ロボットアーム2bに内視鏡アダプタ6を取り付けるためのアダプタ7(図3参照)とを含んでいる。複数のロボットアーム2eは、プラットホーム8に共通に支持されている。複数のロボットアーム2eは複数の関節を有し、それぞれの関節には、サーボモータを含む駆動部と、エンコーダ等の位置検出器とが設けられている。複数のロボットアーム2eは、コントローラを介して与えられた駆動信号によりロボットアーム2eに取り付けられた医療器具が所望の動作を行うように制御されるように構成されている。なお、アダプタ7は、ドレープアダプタの一例である。また、アダプタ7は、ロボットアーム2bに手術器具2cを取り付けるためのアダプタでもある。
【0016】
プラットホーム8は、手術室の床の上に載置されたポジショナ9に支持されている。ポジショナ9では、鉛直方向に調整可能な昇降軸を有する柱部10が、車輪を備え床面を移動可能なベース11に連結されている。
【0017】
ロボットアーム2aには、先端部に医療器具としての内視鏡2dが着脱可能に取り付けられる。内視鏡2dは、患者4の体腔内を撮影するものであり、撮影した画像は、画像処理装置3を介して遠隔操作装置1に対して出力される。内視鏡2dとして、3次元画像を撮影することができる3D内視鏡若しくは2D内視鏡が用いられる。患者側装置2を用いた手術において、ロボットアーム2eは、患者4に体表に留置したトロッカを介して患者4の体内に内視鏡2dを導入する。そして、内視鏡2dが手術部位の近傍に配置される。
【0018】
ロボットアーム2bには、先端部に医療器具としての手術器具2cが着脱可能に取り付けられる。手術器具2cは、ロボットアーム2bに取り付けられるハウジング(図示せず)と、細長形状のシャフト(図示せず)と、シャフトの先端部側に配置されたエンドエフェクタ(図示せず)とを備えている。エンドエフェクタとして、例えば、把持鉗子、シザーズ、フック、高周波ナイフ、スネアワイヤ、クランプ、ステイプラーなどが挙げられるがこれに限られるものではなく、各種の処置具を適用することができる。患者側装置2を用いた手術において、ロボットアーム2bは、患者4の体表に留置したカニューラ(トロッカ)を介して患者4の体内に手術器具2cを導入する。そして、手術器具2cのエンドエフェクタは、手術部位の近傍に配置される。
【0019】
遠隔操作装置1は、操作者13とのインターフェースを構成する。遠隔操作装置1は、ロボットアーム2eに取り付けられた医療器具を操作者13が操作するための装置である。すなわち、遠隔操作装置1は、操作者13によって入力された手術器具2cおよび内視鏡2dによって実行されるべき動作態様指令をコントローラを介して患者側装置2へ送信可能に構成されている。遠隔操作装置1は、たとえば、マスタの操作をしながらも患者4の様子がよく見えるように手術台5の傍らに設置される。なお、遠隔操作装置1は、例えば動作態様指令を無線で送信するようにし、手術台5が設置された手術室とは別室に設置することも可能である。
【0020】
手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、手術器具2cの動作(一連の位置および姿勢)および手術器具2c個別の機能によって実現される動作の態様である。たとえば、手術器具2cが把持鉗子である場合には、手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、エンドエフェクタの手首のロール回転位置およびピッチ回転位置と、ジョーの開閉を行う動作である。また、手術器具2cが高周波ナイフである場合には、手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、高周波ナイフの振動動作、具体的には高周波ナイフに対する電流の供給であり得る。また、手術器具2cがスネアワイヤである場合には、手術器具2cによって実行されるべき動作態様とは、束縛動作および束縛状態の解放動作であり得る。また、バイポーラやモノポーラに電流を供給することによって手術対象部位を焼き切る動作であり得る。
【0021】
内視鏡2dによって実行されるべき動作態様とは、たとえば、内視鏡2d先端の位置および姿勢、又はズーム倍率の設定である。
【0022】
遠隔操作装置1は、図1および図2に示すように、操作ハンドル1aと、操作ペダル部1bと、表示部1cと、制御装置1dとを備えている。
【0023】
操作ハンドル1aは、ロボットアーム2eに取り付けられた医療器具を遠隔で操作するために設けられている。具体的には、操作ハンドル1aは、医療器具(手術器具2c、内視鏡2d)を操作するための操作者13による操作を受け付ける。操作ハンドル1aは、水平方向に沿って2つ設けられている。すなわち、2つの操作ハンドル1aのうち一方の操作ハンドル1aは、操作者13の右手により操作され、2つの操作ハンドル1aのうち他方の操作ハンドル1aは、操作者13の左手により操作される。
【0024】
また、操作ハンドル1aは、遠隔操作装置1の後方側から、前方側に向かって延びるように配置されている。操作ハンドル1aは、所定の3次元の操作領域内で動かすことができるように構成されている。すなわち、操作ハンドル1aは、上下方向、左右方向、および前後方向に動かすことができるように構成されている。
【0025】
遠隔操作装置1と患者側装置2とは、ロボットアーム2aおよびロボットアーム2bの動作の制御においては、マスタスレーブ型のシステムを構成する。すなわち、操作ハンドル1aは、マスタスレーブ型のシステムにおけるマスタ側の操作部を構成し、医療器具が取り付けられたロボットアーム2aおよびロボットアーム2bはスレーブ側の動作部を構成する。そして、操作ハンドル1aを操作者13が操作すると、操作ハンドル1aの動きをロボットアーム2aの先端部(内視鏡2d)またはロボットアーム2bの先端部(手術器具2cのエンドエフェクタ)がトレースして移動するようにロボットアーム2aまたはロボットアーム2bの動作が制御される。
【0026】
また、患者側装置2は、設定された動作倍率に応じてロボットアーム2bの動作を制御するよう構成されている。たとえば、動作倍率が1/2倍に設定されている場合、手術器具2cのエンドエフェクタは、操作ハンドル1aの移動距離の1/2の移動距離を移動するよう制御される。これによって、精細な手術を正確に行うことができる。
【0027】
操作ペダル部1bは、医療器具に関する機能を実行するための複数のペダルを含んでいる。複数のペダルは、凝固ペダルと、切断ペダルと、カメラペダルと、クラッチペダルと、を含んでいる。また、複数のペダルは、操作者13の足により操作される。
【0028】
凝固ペダルは、手術器具2cを用いて手術部位を凝固させる操作を行うことができる。具体的には、凝固ペダルは、操作されることにより、手術器具2cに凝固用の電圧が印加されて、手術部位の凝固が行われる。切断ペダルは、手術器具2cを用いて手術部位を切断させる操作を行うことができる。具体的には、切断ペダルは、操作されることにより、手術器具2cに切断用の電圧が印加されて、手術部位の切断が行われる。
【0029】
カメラペダルは、体腔内を撮像する内視鏡2dの位置および姿勢を操作するために用いられる。具体的には、カメラペダルは、内視鏡2dの操作ハンドル1aによる操作を有効にする。すなわち、カメラペダルが押されている間は、操作ハンドル1aにより内視鏡2dの位置および姿勢を操作することが可能である。たとえば、内視鏡2dは、左右の操作ハンドル1aの両方を用いることにより操作される。具体的には、左右の操作ハンドル1aの中間点を中心に左右の操作ハンドル1aを回動させることにより、内視鏡2dが回動される。また、左右の操作ハンドル1aを共に押し込むことにより、内視鏡2dが奥に進む。また、左右の操作ハンドル1aを共に引っ張ることにより、内視鏡2dが手前に戻る。また、左右の操作ハンドル1aを共に上下左右に移動させることにより、内視鏡2dが上下左右に移動する。
【0030】
クラッチペダルは、ロボットアーム2eと、操作ハンドル1aとの操作接続を一時切断し手術器具2cの動作を停止させる場合に用いられる。具体的には、クラッチペダルが操作されている間は、操作ハンドル1aを操作しても、患者側装置2のロボットアーム2eが動作しない。たとえば、操作により操作ハンドル1aが移動可能な範囲の端部近傍に来た場合に、クラッチペダルが操作されることにより、操作接続を一時切断して、操作ハンドル1aを中央位置付近に戻すことができる。そして、クラッチペダルの操作を中止するとロボットアーム2eと操作ハンドル1aとが再び接続され、中央付近で操作ハンドル1aの操作を再開することができる。
【0031】
表示部1cは、内視鏡2dが撮像した画像を表示することができるものである。表示部1cは、スコープ型表示部または非スコープ型表示部からなる。スコープ型表示部とは、たとえば、覗き込むタイプの表示部である。また、非スコープ型表示部とは、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような覗き込むタイプではない平坦な画面を有する開放型の表示部を含む概念である。
【0032】
スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置2のロボットアーム2eに取り付けられた内視鏡2dにより撮像された3D画像が表示される。非スコープ型表示部が取り付けられた場合にも、患者側装置2に設けられた内視鏡2dにより撮像された3D画像が表示される。なお、非スコープ型表示部が取り付けられた場合、患者側装置2に設けられた内視鏡2dにより撮像された2D画像が表示されてもよい。
【0033】
制御装置1dは、例えば、CPU等の演算器を有する制御部101と、ROMおよびRAM等のメモリを有する記憶部102と、画像制御部103とを含んでいる。制御装置1dは、集中制御する単独の制御装置により構成されていてもよく、互いに協働して分散制御する複数の制御装置により構成されてもよい。制御部101は、操作ハンドル1aにより入力された動作態様指令を、操作ペダル部1bの切替状態に応じて、ロボットアーム2bによって実行されるべき動作態様指令であるか、または、内視鏡2dによって実行されるべき動作態様指令であるかを判定する。そして、制御部101は、操作ハンドル1aに入力された動作態様指令が手術器具2cによって実行されるべき動作態様指令であると判断すると、動作態様指令をロボットアーム2bに対して送信する。これによって、ロボットアーム2bが駆動され、この駆動によってロボットアーム2bに取り付けられた手術器具2cの動作が制御される。
【0034】
また、制御部101は、操作ハンドル1aに入力された動作態様指令が内視鏡2dによって実行されるべき動作態様指令であると判定すると、当該動作態様指令をロボットアーム2aに対して送信する。これによって、ロボットアーム2aが駆動され、この駆動によってロボットアーム2aに取り付けられた内視鏡2dの動作が制御される。
【0035】
記憶部102には、たとえば、手術器具2cの種類に応じた制御プログラムが記憶されていて、取り付けられた手術器具2cの種類に応じて制御部101がこれらの制御プログラムを読み出すことにより、遠隔操作装置1の操作ハンドル1aおよび/または操作ペダル部1bの動作指令が個別の手術器具2cに適合した動作をさせることができる。
【0036】
画像制御部103は、内視鏡2dが取得した画像を表示部1cに伝送する。画像制御部103は、必要に応じて画像の加工修正処理を行う。
【0037】
画像処理装置3は、内視鏡2dから取得した画像を遠隔操作装置1に伝送するとともに、内視鏡2dが取得した画像を表示するように構成されている。ここで、画像処理装置3は、必要に応じて内視鏡2dから取得した画像の加工修正処理を行う。具体的には、画像処理装置3は、外部モニタ部31を含んでいる。外部モニタ部31は、内視鏡2dが撮像した画像を表示可能に構成されている。外部モニタ部31は、通常のパーソナルコンピュータのディスプレイのような平坦な画面を有する開放型の表示部である。
【0038】
図3に示すように、ロボットアーム2eは、清潔区域において使用されるため、ドレープ12により覆われる。ここで、手術室では、手術により切開した部分および医療機器が病原菌や異物などにより汚染されることを防ぐため、清潔操作が行われる。この清潔操作においては、清潔区域および清潔区域以外の区域である汚染区域が設定される。手術部位は、清潔区域に配置される。操作者13を含む手術チームのメンバーは、手術中、清潔区域に殺菌されている物体のみが位置するよう配慮し、かつ、汚染区域に位置している物体を清潔区域に移動させるときは、この物体に滅菌処理を施す。同様に、操作者13を含む手術チームのメンバーがその手を汚染区域に位置させたときは、清潔区域に位置している物体に直接接触する前に、手の滅菌処理を行う。清潔区域において用いられる器具は、滅菌処理が行われる、または、滅菌処理されたドレープ12により覆われる。
【0039】
ここで、内視鏡アダプタ6の後述する取付部63と内視鏡2dとが並ぶ方向をZ方向とし、Z方向のうち内視鏡2d側をZ1方向とし、取付部63側をZ2方向とする。また、内視鏡アダプタ6の後述する基部62が延びる方向をY方向とし、Y方向のうち、内視鏡2dを内視鏡アダプタ6に挿入する方向をY1方向とし、Y1方向の逆方向をY2方向とする。また、Z方向およびY方向に直交する方向をX方向とし、X方向のうち一方側をX1方向とし、X方向のうち他方側をX2方向とする。
【0040】
ドレープ12は、アダプタ7と、ロボットアーム2a(2b)との間に配置される。アダプタ7は、ドレープ12を挟み込むようにして、ロボットアーム2eに取り付けられる。すなわち、アダプタ7は、ロボットアーム2eとの間にドレープ12を挟み込むためのドレープアダプタである。
【0041】
内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に回転可能に保持されている。内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に着脱可能に取りつけられる。内視鏡2dは、本体部21と、細長形状の挿入部22と、撮像部23とを含んでいる。また、内視鏡2dは、挿入部22が延びる方向(Y方向)の回転軸線C1(図5参照)を中心に回転可能に内視鏡アダプタ6に保持されている。回転軸線C1は、挿入部22の中心線と略重なっている。本体部21は、Y方向に延びる細長形状を有している。本体部21は、一方端に挿入部22が接続され、他方端にケーブル24が接続されている。
【0042】
ケーブル24は、内視鏡2dにより撮影された画像を送るためのカメラケーブル24aと、内視鏡2dにより体腔内を撮影する際に光を照射するためのライトケーブル24bとを含む。カメラケーブル24aの直径は、ライトケーブル24bの直径よりも小さい。カメラケーブル24aは、ライトケーブル24bよりもZ1方向側に配置されている。また、内視鏡2dには、汎用の内視鏡を用いてもよいし、ロボットアーム2aに取り付けるための専用の内視鏡を用いてもよい。
【0043】
挿入部22は、患者4の体内に挿入される部分である。挿入部22は、たとえば、変形しずらい硬さを有している。すなわち、内視鏡2dは硬性内視鏡である。挿入部22は、患者4の体表に配置されたトロッカを介して患者4の体内に挿入される。挿入部22の先端(本体部21とは反対側の端部)には、撮像部23が設けられている。これにより、撮像部23が患者4の体内に配置されて、手術部分を撮像することが可能である。
【0044】
撮像部23は、単眼または複眼により、撮像することが可能である。すなわち、撮像部23は、複数の位置または1つの位置から対象を撮像する。また、撮像部23には照明が設けられている。照明は、撮像時に点灯して、撮像対象に光を照射する。
【0045】
図4および図5に示すように、内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に取り付けられた状態で、ロボット手術システム100のロボットアーム2aにアダプタ7を介して接続される。ロボットアーム2aは、内視鏡2dを回転させるために、アダプタ7を介して内視鏡アダプタ6に動力を伝達する。具体的には、ロボットアーム2aは、回転駆動部201を備えている。回転駆動部201は、モータなどの駆動源により、Z方向に延びる回転軸線C2を中心に回動するように構成されている。なお、回転駆動部201は、駆動部の一例である。
【0046】
アダプタ7は、基体71と、複数の駆動伝達部材72とを含んでいる。駆動伝達部材72は、Y2方向側に配置された複数の第1駆動伝達部材73と、Y1方向側に配置された複数の第2駆動伝達部材74とを含んでいる。駆動伝達部材72は、基体71に回転可能に設けられている。具体的には、駆動伝達部材72は、Z方向に延びる回転軸線C3を中心に回転可能に設けられている。駆動伝達部材72は、ロボットアーム2aの回転駆動部201の駆動力を、内視鏡アダプタ6の被駆動部材64に伝達する。
【0047】
(内視鏡アダプタ)
第1実施形態の内視鏡アダプタ6は、Y1方向側に垂れ下がるケーブル24(図1参照)を保持することにより、まとめるように構成されている。すなわち、内視鏡2dには、内視鏡2dにより撮影された画像を送るなどのためのケーブル24が接続されている。このケーブル24の長さは、余裕をもって長めに設定されている。このため、第1実施形態の内視鏡アダプタ6では、ロボットアーム2aにより内視鏡2dを動かした際に、ケーブル24が振れること(動くこと)に起因して、内視鏡2dのケーブル24とロボットアーム2aとが干渉することを防止するために、内視鏡アダプタ6においてケーブル24が保持されている。
【0048】
内視鏡アダプタ6は、ロボット手術システム100のロボットアーム2aに、ドレープ12を保持するアダプタ7を介して接続されている。内視鏡アダプタ6は、内視鏡保持部61と、基部62とを含んでいる。内視鏡保持部61は、内視鏡2dを回転可能に保持する。基部62は、アダプタ7に取り付けられる取付部63を有している。基部62は、取付部63に設けられ、アダプタ7を介してロボットアーム2aの回転駆動部201によって回転駆動される被駆動部材64を有している。基部62は、被駆動部材64の回転を内視鏡保持部61に伝達する伝達機構65(図14参照)を有している。基部62は、内視鏡2dに接続されるケーブル24を保持するケーブル保持部66を有している。
【0049】
これにより、ロボットアーム2aとアダプタ7との間にドレープ12を挟み込んだ状態で、ロボットアーム2aの回転駆動部201の回転駆動をアダプタ7を介して内視鏡2dを保持した内視鏡保持部61に伝達することができるので、内視鏡2dを挿入部22が延びる方向の回転軸線C1を中心に回転させることができる。これにより、内視鏡2dを保持するロボットアーム2aにドレープ12をかけた状態で内視鏡2dを回転可能に保持することができる。また、内視鏡アダプタ6の基部62では、内視鏡2dに接続されるケーブル24を保持するケーブル保持部66を設ける。これにより、ケーブル24をケーブル保持部66により保持することによって、ロボットアーム2aにより内視鏡2dを動かした際に、ケーブル24が大きく振れないようにすることができる。この結果、ロボットアーム2aにより内視鏡2dを動かした際に、内視鏡2dのケーブル24とロボットアーム2aとが干渉しないようにすることができる。
【0050】
以下の内視鏡アダプタ6の説明において、内視鏡保持部61、基部62、取付部63、被駆動部材64、伝達機構65およびケーブル保持部66の構成について順に説明していく。
【0051】
まず、図6および図7に示すように、内視鏡保持部61は、挿入された内視鏡2dを保持するように構成されている。すなわち、内視鏡保持部61は、内視鏡2dを基部62に取り付けている。具体的には、内視鏡保持部61は、保持部本体67と、ロック部68とを有している。
【0052】
保持部本体67は、円筒形状を有している。保持部本体67は、内視鏡2dが挿入される挿入孔67aを有している。挿入孔67aは、保持部本体67をY方向に貫通している。保持部本体67は、ロック部68を取り付けるための一対の係合部67bを有している。一対の係合部67bは、Y方向に直交する方向に突出している。保持部本体67は、ロック部68のY2方向側に配置されている。
【0053】
内視鏡保持部61は、内視鏡2dの被係合部210と係合する係合部67cを有している。
【0054】
これにより、内視鏡2dを内視鏡保持部61に取り付けと同時に、内視鏡2dの被係合部210と内視鏡保持部61の係合部67cとを係合させることができるので、内視鏡2dの被係合部210と内視鏡保持部61の係合部67cとを容易に係合させることができる。
【0055】
具体的には、係合部67cは、内視鏡2dの外表面21aから突出した凸形状の被係合部210としての操作部211に係合するとともに、内視鏡保持部61に内視鏡2dを挿入する際のY1方向(挿入方向)に、内視鏡保持部61を窪ませた切り欠き67dである。
【0056】
これにより、操作部211は内視鏡2dの外表面21aから突出していることにより、操作部211は外部に露出した位置に配置されているので、切り欠き67dも外部に露出した位置に配置されている。この結果、作業者は切り欠き67dおよび操作部211を視認しつつ操作部211を切り欠き67dに係合することができる。また、内視鏡2dの被係合部210と内視鏡保持部61の係合部67cとを係合させる構成を、内視鏡2dの操作部211を利用して簡易な構造により設けることができるので、内視鏡保持部61の構造の複雑化を抑制することができる。
【0057】
詳細には、切り欠き67dは、保持部本体67のY2方向側の端部をY1方向側に窪ませている。切り欠き67dは、Z1方向側から視て、内視鏡2dの操作部211のY1方向側の部分に合わせた形状を有している。すなわち、切り欠き67dは、Z1方向側から視て、略U字形状を有している。
【0058】
図8に示すように、切り欠き67dは、係合部67cと被係合部210とを係合させた状態で、内視鏡2dをY1方向(挿入方向)の所定位置15に位置決めさせるように構成されている。
【0059】
これにより、係合部67cと内視鏡2dの被係合部210とを係合させることができるだけでなく、内視鏡2dの位置決めをすることができるので、上記係合させる構造と内視鏡2dの位置決めを行う構造とを別々に設ける場合と比較して、内視鏡保持部61の大型化を抑制することができる。
【0060】
ここで、所定位置15とは、内視鏡保持部61に内視鏡2dが挿入されて、ロック部68によりY方向の内視鏡2dの位置決めがなされた位置を示す。また、切り欠き67dは、係合部67cと被係合部210とを係合させた状態で、Y方向に沿った回転軸線C1回りの周方向に内視鏡2dを位置決めするように構成されている。
【0061】
図6に示すように、ロック部68は、内視鏡2dの本体部21の先端部分が挿入される挿入孔68aを有している。挿入孔68aは、ロック部68をY方向に貫通している。ロック部68は、保持部本体67の一対の係合部67bが係合する一対の係合孔68bを有している。一対の係合孔68bは、Y方向に直交する方向にロック部68を貫通している。ロック部68は、保持部本体67のY1方向側に配置されている。
【0062】
図7および図8に示すように、内視鏡保持部61は、内視鏡2dの回転軸線C1の延びる方向に直交する方向に突出した内視鏡2dの内視鏡側突出部212に係合するとともに、内視鏡側突出部212の突出方向とは逆方向に突出した保持側突出部68cを有している。保持側突出部68cは、内視鏡側突出部212に係合する際および係合を解除する際に、音が発生するように構成されている。
【0063】
これにより、内視鏡2dと内視鏡保持部61との係合および係合の解除を作業者が音により確認することができるので、内視鏡2dと内視鏡保持部61との係合および係合の解除を作業者が確実に行うことができる。
【0064】
詳細には、保持側突出部68cは、内視鏡2dの径方向の内側に突出している。保持側突出部68cは、ロック部68のY2方向側の端部に配置されている。保持側突出部68cと内視鏡側突出部212とは、Y2方向側から視て、オーバーラップしている。保持側突出部68cと、内視鏡側突出部212とは、Y方向において係合している。保持側突出部68cは、複数(2個)配置されている。
【0065】
図9図12に示すように、保持側突出部68cは、内視鏡側突出部212に当接することにより弾性変形するとともに、内視鏡側突出部212を乗り越えて内視鏡側突出部212に対して係合または係合を解除する際に、音が発生するように構成されている。
【0066】
これにより、保持側突出部68cの弾性変形を利用して内視鏡2dと内視鏡保持部61との係合または係合の解除の際に音を発生させることができるので、内視鏡2dと内視鏡保持部61との係合または係合の解除の際に音を発生させるための構造を簡易な構造により実現することができる。この結果、内視鏡2dと内視鏡保持部61との係合または係合の解除の際に音を発生させる構造に起因する内視鏡保持部61の構造の複雑化を抑制することができる。
【0067】
図9および図10に示すように、保持側突出部68cは、内視鏡2dを挿入する際、内視鏡側突出部212がY2方向側から当接することによりY1方向側に弾性変形する。そして、保持側突出部68cは、内視鏡側突出部212を乗り越えて内視鏡側突出部212に対して係合する際に、内視鏡2dに衝突して音を発生させる。また、図11および図12に示すように、保持側突出部68cは、内視鏡2dを取り外す際、内視鏡側突出部212がY1方向側から当接することによりY2方向側に弾性変形する。そして、保持側突出部68cは、内視鏡側突出部212を乗り越えて内視鏡側突出部212に対して係合を解除する際に、内視鏡2dに衝突して音を発生させる。
【0068】
図13および図14に示すように、取付部63は、内視鏡アダプタ6とアダプタ7とを取り外し可能に接続するために設けられている。取付部63は、基部62においてY2方向側に配置されている。取付部63には、Y1方向に延びる延長部69が設けられている。被駆動部材64は、取付部63に設けられている。
【0069】
内視鏡アダプタ6の被駆動部材64は、回転駆動されることにより、内視鏡2dを回転させる。被駆動部材64は、1つ設けられている。ロボットアーム2aには、回転駆動部201が4つ設けられている。また、アダプタ7には、回転駆動部201に係合する駆動伝達部材72が4つ設けられている。ロボットアーム2aの回転駆動部201は、アダプタ7の駆動伝達部材72と係合している。アダプタ7の駆動伝達部材72は、内視鏡アダプタ6の被駆動部材64と係合している。これにより、被駆動部材64は、アダプタ7を介してロボットアーム2aの回転駆動部201により回転駆動される。
【0070】
伝達機構65は、被駆動部材64の回転を内視鏡保持部61に伝達することにより、内視鏡2dを回転軸線C1(図5参照)回りに回転させるように構成されている。伝達機構65は、シャフト65aと、はす歯歯車65bと、円筒ウォーム65cと、シャフト65dと、歯車65eと、歯車65fとを有している。シャフト65aと、はす歯歯車65bとが、接続されている。はす歯歯車65bと、円筒ウォーム65cとが、接続されている。シャフト65dと、歯車65eとが、接続されている。歯車65eと、歯車65fとが接続されている。歯車65fは、内視鏡保持部61に接続されている。これにより、ロボットアーム2aの回転駆動部201が回転することに伴って内視鏡保持部61が回転するので、内視鏡2dが回転する。
【0071】
〈ケーブル保持部〉
図15および図16に示すように、ケーブル保持部66は、内部にケーブル24を保持するクランプ機構により構成されている。すなわち、ケーブル保持部66は、ケーブル24を保持することにより、ケーブル24を所望の配置位置に配置している。
【0072】
ケーブル保持部66は、Z方向(被駆動部材64の回転軸線C4の延びる方向)において、基部62の内視鏡2d側とは逆方向側の面62aに設けられている。
【0073】
これにより、基部62の内視鏡2d側の面にケーブル保持部を設ける場合と異なり、内視鏡2dに接続されるケーブル24をケーブル24が垂れ下がる方向に沿って保持することができるので、ケーブル保持部66によりケーブル24を容易に保持することができる。
【0074】
詳細には、ケーブル保持部66は、延長部69のZ2方向側の面62aに取り付けられている。ケーブル保持部66は、延長部69におけるY1方向側の部分に配置されている。すなわち、ケーブル保持部66は、基部62において内視鏡保持部61のZ2方向側に配置されている。ケーブル保持部66は、延長部69のZ2方向側の面62aから突出している。ケーブル保持部66は、Z方向において、基部62と隣接している。ケーブル保持部66は、X方向に沿って延びている。
【0075】
図16および図17に示すように、ケーブル保持部66は、ケーブル24を保持する弾性部材166を有している。
【0076】
これにより、弾性を有する柔らかい部材である弾性部材166によりケーブル24を保持することができるので、ケーブル24に過剰な負荷がかからないように保護することができる。
【0077】
弾性部材166は、シリコンゴムである。弾性部材166は、弾性変形することにより、ケーブル24を覆っている。弾性部材166は、ケーブル24を覆うことにより、ケーブル24を保護する機能を有している。すなわち、弾性部材166は、ケーブル保持部66によりクランプされるケーブル24の緩衝部材である。弾性部材166は、ケーブル24との間の摩擦抵抗により、ケーブル24のY方向へのずれを抑制する機能を有している。なお、弾性部材166は、シリコンゴムではなく、他の弾性を有する材質の部材であってもよい。
【0078】
弾性部材166は、弾性部材166を貫通する貫通孔166aを有している。貫通孔166aは、内視鏡2dに接続されるライトケーブル24bが挿入されるライト用孔部166bを有している。貫通孔166aは、内視鏡2dに接続されるカメラケーブル24aが挿入されるとともに、ライト用孔部166bよりも小さい直径のカメラ用孔部166cとを有している。
【0079】
これにより、弾性部材166にカメラケーブル24aおよびライトケーブル24bの直径に対応する直径のライト用孔部166bおよびカメラ用孔部166cによって、カメラケーブル24aおよびライトケーブル24bを適切に保持することができるので、弾性部材166の構造の複雑化を抑制することができる。
【0080】
ライト用孔部166bは、ライトケーブル24bの直径に合わせた直径を有している。詳細には、ライト用孔部166bは、ライトケーブル24bの直径よりも若干小さい直径を有している。ライト用孔部166bは、Y方向に弾性部材166を貫通する貫通孔である。カメラ用孔部166cは、カメラケーブル24aの直径に合わせた直径を有している。詳細には、カメラ用孔部166cは、カメラケーブル24aの直径よりも若干小さい直径を有している。カメラ用孔部166cは、Y方向に弾性部材166を貫通する貫通孔である。ライト用孔部166bと、カメラ用孔部166cとは、X方向において連通している。
【0081】
弾性部材166は、Y方向(基部62の長手方向)に沿った方向に延びるように形成され、Z方向(被駆動部材64の回転軸線C4(図5参照)が延びる方向)と、Y方向(基部62の長手方向)とに直交するX方向において貫通孔166aを分断する分断部166dを有している。貫通孔166aは、弾性部材166の分断部166dにより、開閉可能に構成されている。
【0082】
これにより、貫通孔166aを分断部166dにより開くことによって、貫通孔166aへのケーブル24の取り付けおよび貫通孔166aからのケーブル24の取り外しを行うことができるとともに、貫通孔166aを分断部166dにより閉じることによって、貫通孔166aへケーブル24を保持することができるので、貫通孔166aへのケーブル24の取り外し作業および取り付け作業の両方を容易に行うことができる。
【0083】
分断部166dは、Y方向にわたって弾性部材166に形成された微小隙間である。分断部166dは、X2方向側の弾性部材166の端部を分断している。これにより、貫通孔166aは、弾性部材166のX1方向側の端部を中心にして、弾性部材166の分断部166d側の端部を移動させることにより、ライト用孔部166bおよびカメラ用孔部166cを開放するように構成されている。
【0084】
ケーブル保持部66は、弾性部材166を保持した状態で、基部62に係合される第1状態(図17参照)と、弾性部材166を保持した状態で、基部62との係合が解除される第2状態(図18参照)とを切替可能な保持部材167を有している。
【0085】
これにより、保持部材167により第1状態と第2状態との切り替えを弾性部材166を保持した状態を維持して行うことにより、第1状態と第2状態との切り替えの際に、ケーブル24を保持した状態の弾性部材166が保持部材167から外れないようにすることができるので、ケーブル24が床に落下するのを防止することができる。
【0086】
保持部材167は、樹脂材により形成されている。保持部材167は、内部に配置された弾性部材166を覆っている。保持部材167は、弾性部材166のZ2方向側の外表面に当接している。保持部材167は、弾性部材166をZ2方向側から保持している。第1状態において、保持部材167は、弾性部材166を基部62のZ2方向側の面62aとの間の収容空間167aに収容するように構成されている。保持部材167は、弾性部材166を収容空間167aに収容した状態で、基部62のZ2方向側の面62aに押圧している。これにより、弾性部材166は、圧縮される。第2状態では、保持部材167は、弾性部材166を収容空間167aに収容した状態から開放するように構成されている。これにより、収容空間167aから弾性部材166が開放された状態になることにより、弾性部材166を保持部材167から取出可能になる。すなわち、弾性部材166の分断部166d側の端部を回動させることが可能となる。
【0087】
保持部材167は、Y方向(基部62の長手方向)に平行に延びる回転軸線C5回りに回動可能に、基部62に取り付けられている。保持部材167は、第1状態において、基部62に向かって回動する際に弾性変形することにより基部62に係合されるとともに、第2状態において、弾性変形することにより基部62との係合を解除する弾性変形部167bを有する。
【0088】
これにより、弾性変形部167bを弾性変形させるだけで、弾性変形部167bによる保持部材167の基部62への取り付けおよび取り外しを行うことができるので、保持部材167の基部62への取り付けおよび取り外しを容易に行うことができる。
【0089】
弾性変形部167bは、弾性部材166に近付く方向に弾性変形可能に構成されている。すなわち、基部62に形成された取付孔62bに弾性変形部167bを挿入する際に、弾性変形部167bを弾性部材166に近付く方向に弾性変形(図17の点線を参照)することにより、弾性変形部167bを弾性部材166に近付く方向に収縮することが可能である。これにより、弾性変形部167bを取付孔62b内に挿入することが可能である。また、取付孔62bから弾性変形部167bを取り出す際に、弾性変形部167bを弾性部材166に近付く方向に弾性変形(図18の点線を参照)することにより、弾性変形部167bを弾性部材166に近付く方向に収縮することが可能である。これにより、弾性変形部167bを取付孔62b内から取り出すことが可能である。
【0090】
弾性変形部167bは、取付孔62bの突起部62cに係合する爪部167cを有している。取付孔62bの突起部62cは、取付孔62bのX1方向側の内面からX2方向側に突出している。爪部167cは、弾性変形部167bの爪部167cに対向する外表面から突起部62cの突出方向とは逆方向に突出している。爪部167cと、突起部62cとは、第1状態において、Z2方向側から視て、オーバーラップしている。爪部167cと、突起部62cとが係合している係合状態は、弾性変形部167bを弾性部材166に近付く方向に収縮することにより解除される。
【0091】
図16および図17に示すように、保持部材167は、Y方向(基部62の長手方向)に平行に延びる回転軸線C5回りに保持部材167を回動させるための回動軸167eを有している。保持部材167は、基部62から突出するとともに、回動軸167eを支持する支持部167fを有している。
【0092】
これにより、弾性部材166を保持した状態で保持部材167が回動するための構造を簡易な構造により実現することができるので、ケーブル保持部66の構造の複雑化を抑制することができる。
【0093】
保持部材167は、回動軸167eおよび支持部167fを有するヒンジ構造により構成されている。回動軸167eは、Y方向に延びる金属製のピンである。回動軸167eは、保持部材167のX2方向側に配置されている。支持部167fは、基部62のZ2方向側の面62aからZ2方向側に突出している。支持部167fは、Y方向に複数(2個)配置されている。複数の支持部167fは、回動軸167eのY1方向側の端部および回動軸167eのY2方向側の端部を支持している。
【0094】
弾性部材166は、保持部材167に着脱可能に取り付けられている。
【0095】
これにより、弾性部材166を容易に交換することができるので、弾性部材166によりケーブル24を適切に保護することができる。
【0096】
弾性部材166は、保持部材167に係合されている。詳細には、保持部材167には、係合孔167dが形成されている。係合孔167dは、保持部材167をZ方向に貫通している。係合孔167dは、Y方向に延びた長孔である。弾性部材166は、保持部材167に取り付けられた状態で、係合孔167d内に配置された縮小部166eを有している。弾性部材166は、保持部材167に取り付けられた状態で、係合孔167dのZ2方向側の縁部に係合する拡大部166fを有している。拡大部166fのサイズ(寸法)は、縮小部166eのサイズ(寸法)よりも大きい。また、Z方向に直交する方向において、拡大部166fのサイズ(寸法)は、係合孔167dのサイズ(寸法)よりも大きい。これにより、拡大部166fが弾性変形することにより、縮小部166eが係合孔167dに挿入される。そして、弾性部材166の拡大部166fと、保持部材167の係合孔167dとが、係合する。これにより、弾性部材166が保持部材167に取り付けられている。
【0097】
[第2実施形態]
図1図3、および、図19図24を参照して、第2実施形態による内視鏡アダプタ606の構成について説明する。第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、意図しないシャフト65dの回転を防止する回転防止部材762が、基部62に設けられている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じ構成については、説明を省略する。
【0098】
図1図3に示すように、ロボット手術システム100は、遠隔操作装置1と、患者側装置2と、画像処理装置3とを備えている。患者側装置2は、遠隔操作装置1から送信された動作態様指令に応答して、ロボットアーム2aに取り付けられた内視鏡2dを操作する。
【0099】
図19に示すように、内視鏡2dは、内視鏡アダプタ6に取り付けられた状態で、ロボット手術システム100のロボットアーム2aにアダプタ7を介して接続される。ロボットアーム2aは、内視鏡2dを回転させるために、アダプタ7を介して内視鏡アダプタ6に動力を伝達する。具体的には、ロボットアーム2aは、回転駆動部201を備えている。回転駆動部201は、モータなどの駆動源により、Z方向に延びる回転軸線A1を中心に回動するように構成されている。なお、回転駆動部201は、駆動部の一例である。
【0100】
アダプタ7は、基体71と、複数の駆動伝達部材72とを含んでいる。駆動伝達部材72は、Y2方向側に配置された複数の第1駆動伝達部材73と、Y1方向側に配置された複数の第2駆動伝達部材74とを含んでいる。駆動伝達部材72は、基体71に回転可能に設けられている。具体的には、駆動伝達部材72は、Z方向に延びる回転軸線A2を中心に回転可能に設けられている。駆動伝達部材72は、ロボットアーム2aの回転駆動部201の駆動力を、内視鏡アダプタ6の被駆動部材64に伝達する。
【0101】
(内視鏡アダプタ)
図20および図21に示すように、内視鏡アダプタ6は、内視鏡保持部61、基部62、取付部63、被駆動部材64、伝達機構65およびケーブル保持部66を含んでいる。
【0102】
内視鏡保持部61は、挿入された内視鏡2dを保持するように構成されている。すなわち、内視鏡保持部61は、内視鏡2dを基部62に取り付けている。具体的には、内視鏡保持部61は、保持部本体67と、ロック部68とを有している。
【0103】
保持部本体67は、円筒形状を有している。保持部本体67は、内視鏡2dが挿入される挿入孔67aを有している。挿入孔67aは、保持部本体67をY方向に貫通している。
【0104】
取付部63は、内視鏡アダプタ6とアダプタ7とを取り外し可能に接続するために設けられている。取付部63は、基部62においてY2方向側に配置されている。取付部63には、Y1方向に延びる延長部69が設けられている。被駆動部材64は、取付部63に設けられている。
【0105】
内視鏡アダプタ6の被駆動部材64は、回転駆動されることにより、内視鏡2dを回転させる。ロボットアーム2aの回転駆動部201は、アダプタ7の駆動伝達部材72と係合している。アダプタ7の駆動伝達部材72は、内視鏡アダプタ6の被駆動部材64と係合している。これにより、被駆動部材64は、アダプタ7を介してロボットアーム2aの回転駆動部201により回転駆動される。
【0106】
伝達機構65は、被駆動部材64の回転を内視鏡保持部61に伝達することにより、内視鏡2dを回転軸線A3回りに回転させるように構成されている。伝達機構65は、シャフト65aと、はす歯歯車65bと、円筒ウォーム65cと、シャフト65dと、歯車65eと、歯車65fとを有している。なお、歯車65fは、第1歯車の一例である。はす歯歯車65bは、第2歯車の一例である。歯車65eは、第3歯車の一例である。円筒ウォーム65cは、第4歯車の一例である。シャフト65dは、駆動伝達軸の一例である。
【0107】
シャフト65aと、はす歯歯車65bとが、接続されている。はす歯歯車65bと、円筒ウォーム65cとが、接続されている。シャフト65dと、歯車65eとが、接続されている。歯車65eと、歯車65fとが、接続されている。歯車65fは、内視鏡保持部61に接続されている。これにより、ロボットアーム2aの回転駆動部201が回転することに伴って内視鏡保持部61が回転するので、内視鏡2dが回転する。
【0108】
ケーブル保持部66は、内部にケーブル24を保持するクランプ機構により構成されている。すなわち、ケーブル保持部66は、ケーブル24を保持することにより、ケーブル24を所望の配置位置に配置している。
【0109】
(回転防止部材)
図21および図22に示すように、第2実施形態の内視鏡アダプタ6は、施術中に、内視鏡2dの視野が意図せずに変わらないようにするために、ロボットアーム2aの回転駆動部201が駆動していない際、内視鏡2dの回転を制動するように構成されている。ケーブル24に補助者が触れるなどして外力が加えられた際、内視鏡2dが意図せずに回転してしまうという課題があった。そのため、第2実施形態の内視鏡アダプタ6は、内視鏡2dが意図せずに回転しないように、内視鏡2dを制動するように構成されている。
【0110】
すなわち、内視鏡アダプタ6は、ロボットアーム2aの回転駆動部201が駆動していない際、内視鏡2dを位置固定可能なように構成されている。
【0111】
具体的には、内視鏡保持部61には、歯車65fが接続されている。被駆動部材64には、はす歯歯車65bが接続されている。伝達機構65は、歯車65fに噛み合う歯車65eと、はす歯歯車65bに噛み合う円筒ウォーム65cと、歯車65eと円筒ウォーム65cとが接続され、被駆動部材64の回転により回転するシャフト65dとを含んでいる。基部62は、被駆動部材64がロボットアーム2aの回転駆動部201によって回転駆動されていないときに、内視鏡保持部61の回転を防止する回転防止部材762を含んでいる。
【0112】
これにより、補助者がケーブル24に接触するなどの外力に起因する内視鏡保持部61の回転を回転防止部材762により防止(抑制)することができるので、意図しない内視鏡2dの視野の変更を防止(抑制)することができる。
【0113】
図23および図24に示すように、回転防止部材762は、シャフト65dに接触することにより、シャフト65dの回転を防止して、内視鏡保持部61の回転を防止するように構成されている。
【0114】
これにより、回転防止部材762を内視鏡保持部61に直接接触させて内視鏡保持部61の回転を防止(抑制)する場合と異なり、内視鏡保持部61への内視鏡2dの挿入を妨げない位置に回転防止部材762を設けることができる。この結果、内視鏡保持部61への内視鏡2dの取り付けを容易に行うことができるとともに、意図しない内視鏡2dの視野の変更を防止することができる。
【0115】
すなわち、回転防止部材762は、被駆動部材64がロボットアーム2aの回転駆動部201によって回転駆動されていないときに、シャフト65dに加わるトルクが所定トルクよりも小さい場合に、シャフト65dの回転を防止するように構成されている。さらに、回転防止部材762は、被駆動部材64がロボットアーム2aの回転駆動部201によって回転駆動され、シャフト65dに所定トルク以上のトルクが加えられたときに、回転防止部材762に対してシャフト65dが回転可能なように構成されている。
【0116】
この構成によると、シャフト65dに加わるトルクが所定トルクよりも小さい場合に、シャフト65dの回転を防止するように回転防止部材762が構成されていることにより、補助者がケーブル24に接触するなどの外力に起因するシャフト65dの回転を回転防止部材762により防止(抑制)することができる。また、ロボットアーム2aの回転駆動部201からシャフト65dに伝達されるトルクが所定トルク以上になることにより、シャフト65dを回転させることができる。これらの結果、ロボットアーム2aの回転駆動部201の駆動時にシャフト65dを適切に動かすことができるので、内視鏡2dの視野の変更を適切に行うことができるとともに、ロボットアーム2aの回転駆動部201の非駆動時には、意図しない内視鏡2dの視野の変更を防止(抑制)することができる。
【0117】
ここで、回転防止部材762は、回転防止部材762とシャフト65dとが接触する部分の摩擦により、シャフト65dの回転を防止して、内視鏡保持部61の回転を防止するように構成されている。
【0118】
これにより、静電気力または磁力などを用いて非接触によりシャフト65dの回転を防止する場合と比較して、回転防止部材762がシャフト65dの回転に対してより確実に負荷を与えることができるので、より確実にシャフト65dの回転を防止(抑制)することができる。
【0119】
具体的には、シャフト65dは、基部62の内部に配置されている。回転防止部材762は、シャフト65dの外周を取り囲んだ状態で外周に接触する制動部862を有している。回転防止部材762は、基部62の内部に設けられ、制動部862を保持するとともに、基部62の内部の部分に当接する保持部962とを有している。
【0120】
これにより、基部62に保持部962を固定することなく、保持部962がシャフト65dとともに連れ回りすることを防止(抑制)することができる。また、基部62に保持部962を固定しない分だけ、回転防止部材762の基部62への組み付けを容易にすることができる。
【0121】
制動部862は、Y1方向側(シャフト65dの軸方向)から見て、Y方向に沿って延びるスリットが形成されたC字形状を有している。制動部862は、ゴム製の部材である。制動部862は、シリコンゴムにより構成されている。制動部862は、シャフト65dの外周面765にスリット以外の部分で接触している。制動部862は、シャフト65dと、制動部862とが接触する部分の摩擦により、シャフト65dに加わるトルクが所定トルクよりも小さいときに、シャフト65dの回転を停止させている。なお、制動部862は、シリコンゴム以外の部材であってもよい。
【0122】
保持部962は、第1ブラケット部962aと、第2ブラケット部962bと、第1締結部962cと、第2締結部962dと、第1抜け止め部962eと、第2抜け止め部962fとを有している。
【0123】
第1ブラケット部962aは、シャフト65dのZ1方向側(内視鏡保持部61側)に配置されている。第1ブラケット部962aは、シャフト65dをZ1方向側から制動部862を介して押圧している。第2ブラケット部962bは、シャフト65dのZ2方向側(取付部63側)に配置されている。第2ブラケット部962bは、シャフト65dをZ2方向側から制動部862を介して押圧している。
【0124】
第1ブラケット部962aは、一対の第1突出部962gと、一対の第1突出部962gを接続する断面半円弧状の第1接続部962hとを有している。一対の第1突出部962gは、シャフト65dの径方向の外側に突出している。一対の第1突出部962gは、Y1方向側から見て、シャフト65dの回転軸線Scを通るZ方向に延びる仮想線Lに対して線対称に配置されている。一対の第1突出部962gの各々は、貫通孔962iを有している。第2ブラケット部962bは、第1ブラケット部962aと同様の形状を有しており、一対の第2突出部962jと、一対の第2突出部962jを接続する断面半円弧状の第2接続部962kとを有している。一対の第2突出部962jは、シャフト65dの径方向の外側に突出している。一対の第2突出部962jは、Y1方向側から見て、シャフト65dの回転軸線Scを通るZ方向に延びる仮想線Lに対して線対称に配置されている。一対の第2突出部962jの各々は、めねじ部962lを有している。なお、一対の第2突出部962jは、一対の突出部の一例である。
【0125】
第1締結部962cは、X1方向側に配置されている。第1締結部962cは、X1方向側に配置された第1突出部962gの貫通孔962iに挿入された状態で、X1方向側に配置された第2突出部962jのめねじ部962lに螺合されている。第1締結部962cと、第2ブラケット部962bのX1方向側の第2突出部962jとは、第1ブラケット部962aのX1方向側の第1突出部962gを挟み込んでいる。第2締結部962dは、X2方向側に配置されている。第2締結部962dは、X2方向側に配置された第1突出部962gの貫通孔962iに挿入された状態で、X2方向側に配置された第2突出部962jのめねじ部962lに螺合されている。第2締結部962dと、第2ブラケット部962bのX1方向側の第2突出部962jとは、第1ブラケット部962aのX2方向側の第1突出部962gを挟み込んでいる。
【0126】
回転防止部材762は、第1ブラケット部962aと第2ブラケット部962bとの間にシャフト65dを挟み込むようにして第1ブラケット部962aと第2ブラケット部962bとを第1締結部962cおよび第2締結部962dで締結することにより、シャフト65dに取り付けられている。
【0127】
また、基部62は、シャフト65dに対向する内表面762aを含んでいる。保持部962は、シャフト65dの径方向の外側に突出する一対の第2突出部962jを有している。保持部962は、基部62の内表面762aに一対の第2突出部962jが当接している。
【0128】
これにより、簡易な構造によりシャフト65dの回転に伴う保持部962の連れ回りを防止することができるので、回転防止部材762の構造の複雑化を抑制することができる。
【0129】
詳細には、保持部962では、シャフト65dの回転方向のうちの一方向(R1方向)への回転に対して、一対の第2突出部のX2方向側(一方側)が基部62の内表面762aのうちのZ2方向側の面(取付部63側の面)のT1部分(図23参照)に当接する。これにより、保持部962のR1方向側への回転が規制される。保持部962では、シャフト65dの回転方向のうちの他方向(R2方向)への回転に対して、一対の第2突出部のX1方向側(他方側)が基部62の内表面762aのうちのZ2方向側の面(取付部63側の面)のT2部分(図23参照)に当接する。これにより、保持部962のR2方向側への回転が規制される。
【0130】
第1抜け止め部962eは、制動部862のY1方向側への抜けを防止するために第2ブラケット部962bのY1方向側に設けられている。第1抜け止め部962eは、第2ブラケット部962bのZ1方向側の面からZ1方向に突出している。第1抜け止め部962eは、Y方向において、制動部862のZ2方向側の部分とオーバーラップしている。第2抜け止め部962fは、制動部862のY2方向側への抜けを防止するために第2ブラケット部962bのY2方向側に設けられている。第2抜け止め部962fは、第2ブラケット部962bのZ1方向側の面からZ1方向に突出している。第2抜け止め部962fは、Y方向において、制動部862のZ2方向側の部分とオーバーラップしている。
【0131】
(変形例)
なお、今回開示された第1および第2実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した第1および第2実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0132】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、ケーブル保持部66は、ケーブル24を保持する弾性部材166を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ケーブル保持部は、ケーブルを保持する部材として弾性部材以外の弾性変形しない部材を用いてもよい。
【0133】
また、上記第1および第2実施形態では、貫通孔166aは、ライト用孔部166bと、カメラ用孔部166cとを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、貫通孔は、ライト用孔部およびカメラ用孔部以外に、内視鏡に接続される電力供給専用のケーブルに対応する孔部を有していてもよい。
【0134】
また、上記第1および第2実施形態では、内視鏡保持部61の係合部67cは、切り欠き67dである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、係合部は、内視鏡の被係合部の形状に合わせた形状であれば、切り欠き以外の構造であってもよい。
【0135】
また、上記第1および第2実施形態では、切り欠き67dは、係合部67cと被係合部210とを係合させた状態で、内視鏡2dをY1方向(挿入方向)の所定位置15に位置決めさせる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、切り欠きは、係合部と被係合部とを係合させた状態で、内視鏡を挿入方向の所定位置に位置決めさせなくてもよい。
【0136】
また、上記第1および第2実施形態では、保持側突出部68cは、内視鏡側突出部212に係合する際および係合を解除する際に、音が発生するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持側突出部は、内視鏡側突出部に係合する際および係合を解除する際に、音が発生しないように構成されていてもよい。
【0137】
また、上記第1および第2実施形態では、ケーブル保持部66は、Z方向において、基部62の内視鏡2d側とは逆方向側の面62aの延長部69に設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ケーブル保持部は、被駆動部材の回転軸線の延びる方向において、内視鏡側とは逆方向側の面の取付部側などの他の場所に設けられてもよい。
【0138】
また、上記第1および第2実施形態では、保持部材167は、回動軸167eと、支持部167fとを有するヒンジ構造である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持部材は、基部の取付部側の外表面に付勢する板バネにより構成されてもよい。
【0139】
また、上記第1および第2実施形態では、保持部材167は、弾性変形部167bを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持部材は、弾性変形部を有していなくてもよい。
【0140】
また、上記第1および第2実施形態では、弾性部材166は、保持部材167に着脱可能に取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、弾性部材は、保持部材に接着剤などで固定されていてもよい。
【0141】
また、上記第1および第2実施形態では、内視鏡アダプタ6に1つの被駆動部材64が設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、内視鏡アダプタに2つ以上の被駆動部材が設けられていてもよい。
【0142】
また、上記第1および第2実施形態では、ロボットアーム2bに手術器具2cを取り付ける場合と、ロボットアーム2aに内視鏡アダプタ6を取り付ける場合とで、共通のアダプタ7(ドレープアダプタ)を用いる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ロボットアームに手術器具を取り付ける場合と、ロボットアームに内視鏡アダプタを取り付ける場合とで、互いに異なる種類のドレープアダプタを用いてもよい。
【0143】
また、上記第1および第2実施形態では、アダプタ7(ドレープアダプタ)とドレープ12とが別体に設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ドレープアダプタとドレープとが一体的に設けられている構成でもよい。
【0144】
また、上記第2実施形態では、回転防止部材762は、シャフト65d(駆動伝達軸)に接触することにより、シャフト65d(駆動伝達軸)の回転を防止して、内視鏡保持部61の回転を防止するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転防止部材は、駆動伝達軸に非接触により、駆動伝達軸の回転を防止して、内視鏡保持部の回転を防止するように構成されていてもよい。
【0145】
また、上記第2実施形態では、回転防止部材762は、回転防止部材762とシャフト65d(駆動伝達軸)とが接触する部分の摩擦により、シャフト65d(駆動伝達軸)の回転を防止して、内視鏡保持部61の回転を防止するように構成されていてもよい。なお、回転防止部材は、電磁力などにより駆動伝達軸の回転を防止して、内視鏡保持部の回転を防止するように構成されていてもよい。
【0146】
また、上記第2実施形態では、基部62の内表面762aに一対の第2突出部962j(突出部)が当接することにより、保持部962の回転が規制されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、保持部は、基部の内表面に固定されていてもよい。
【0147】
また、上記第2実施形態では、回転防止部材762は、シャフト65d(駆動伝達軸)の外周を取り囲んだ状態で外周に接触する制動部862と、基部62の内部に設けられ、制動部862を保持するとともに、基部62の内部の部分に当接する保持部962とを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図25に示す第1変形例のように、シャフト65d(駆動伝達軸)は、基部62の内部に配置されている。そして、回転防止部材1062は、シャフト65d(駆動伝達軸)に接触する制動部1062aと、基部62の内部に設けられ、制動部1062aをシャフト65d(駆動伝達軸)に対して押圧するように付勢する一対の付勢部材1062bとを有していてもよい。これにより、制動部1062aを付勢部材1062bを用いてシャフト65dに押し付けるだけで、シャフト65dの回転を防止することができるので、回転防止部材1062の構造を簡略化することができる。
【0148】
また、上記第2実施形態では、回転防止部材762は、シャフト65d(駆動伝達軸)の外周を取り囲んだ状態で外周に接触する制動部862と、基部62の内部に設けられ、制動部862を保持するとともに、基部62の内部の部分に当接する保持部962とを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図26に示す第2変形例のように、回転防止部材1162は、Y方向に沿って延びる円筒ウォーム65cと、Z方向に沿って延びる円筒ウォーム1162aとにより構成されていてもよい。
【0149】
また、上記第2実施形態では、回転防止部材762は、シャフト65d(駆動伝達軸)の回転を防止する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、回転防止部材は、内視鏡に直接接触することにより、内視鏡の回転を防止してもよい。
【符号の説明】
【0150】
2a:ロボットアーム、2d:内視鏡、6:内視鏡アダプタ、7:アダプタ(ドレープアダプタ)、12:ドレープ、15:所定位置、21a:内視鏡の外表面、24:ケーブル、24a:ライトケーブル、24b:カメラケーブル、61:内視鏡保持部、62:基部、62a:基部の内視鏡側とは逆方向側の面、63:取付部、64:被駆動部材、65:伝達機構、65b:はす歯歯車(第2歯車)、65c:円筒ウォーム(第4歯車)、65d:シャフト(駆動伝達軸)、65e:歯車(第3歯車)、65f:歯車(第1歯車)、66:ケーブル保持部、67c:係合部、67d:切り欠き、68c:保持側突出部、100:ロボット手術システム、166:弾性部材、166a:貫通孔、166b:ライト用孔部、166c:カメラ用孔部、166d:分断部、167:保持部材、167b:弾性変形部、167e:回動軸、167f:支持部、201:回転駆動部(駆動部)、210:被係合部、211:操作部、212:内視鏡側突出部、762、1062、1162:回転防止部材、762a:内表面、862:制動部、962:保持部、962i:第2突出部、1062a:制動部、1062b:付勢部材、C1、C5:回転軸線、Y1:挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26