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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/06 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
B61D17/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020191172
(22)【出願日】2020-11-17
(65)【公開番号】P2022080158
(43)【公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 直茂
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2013/124962(JP,A1)
【文献】特開2016-222195(JP,A)
【文献】特開2005-053306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319281(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109808725(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、前記台枠に対し立設して配置され、前記台枠の軌道方向の端部に結合される前面妻構体と、を有する鉄道車両であって、前記台枠は、鉄道車両の軌道方向と略平行に長手方向を有する縦梁を有している鉄道車両において、
前記台枠の長手方向の端面に、前記前面妻構体の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合される結合面を有すること、
前記結合面は、前記縦梁の長手方向の端面により形成されており、前記縦梁は、長手方向の端部に、前記縦梁の鉄道車両の高さ方向の厚み寸法を、前記結合面まで漸増させる拡大部を有すること、
前記拡大部は、前記縦梁の、鉄道車両の天井側の面が、軌道方向に対して角度を持って傾斜することで形成されること、
前記前面妻構体は、前記台枠に対して立設して配置される妻柱を有していること、
前記妻柱と前記縦梁とは、鉄道車両の正面視において重なる位置関係であること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記角度は、30度から60度であること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両において
記結合面は、前記妻柱の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合されること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1または2に記載の鉄道車両において、
前記前面妻構体は、鉄道車両の床側の端部に配置され、前記妻柱が立設される妻土台を備えること、
前記結合面は、前記妻土台の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合されること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台枠と、台枠に対し立設して配置され、台枠の軌道方向の端部に結合される前面妻構体と、を有する鉄道車両であって、台枠は、鉄道車両の軌道方向と略平行に長手方向を有する縦梁を有している鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の車体は、特許文献1にも開示されるように、床面をなす台枠と、台枠の軌道方向の両端部に立設されることで車体の先頭部または連結部をなす妻構体(以下、車体の先頭部をなす妻構体を前面妻構体とする)と、台枠の枕木方向の両端部に立設されることで車体の側面をなす側構体と、妻構体および側構体の上端部に配置されることで車体の屋根をなす屋根構体とにより6面体をなすように構成される。
【0003】
このような鉄道車両は、例えば、図7に示すように、前面妻構体12が、台枠31に対し直角に配置され、台枠31の軌道方向の端部に結合されている。 前面妻構体12は、鉄道車両の先頭面をなす妻板121と、妻板121を支える妻柱122とからなる。また、台枠31は、端梁311と、一対の側梁312と、枕梁313と、一対の中梁314とからなる。
【0004】
前面妻構体12は、接手板123を介して、台枠31の端梁311の上面に溶接される他、前面妻構体12の妻柱122と台枠31の中梁314とが溶接されることによって、台枠31に結合されている。図8に示すように、中梁314の軌道方向の前面妻構体12側の端面が結合面314aとなっており、妻柱122と中梁314との溶接は、結合面314aが妻柱122に突き当てられた状態で、この結合面314aの周囲で行われる。図8および図9に示すように、溶接されている部分を溶接ビード118として表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-59729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
例えば、鉄道車両が通過する直前の踏切内に大型トラックが侵入し、当該大型トラックに鉄道車両が正面から衝突するという事故が発生したとする。大型トラックの荷台は、鉄道車両の台枠31よりも高い位置に位置していることが多いため、図10に示すように、大型トラックの荷台(障害物41)により衝突の衝撃力F1が、前面妻構体12に負荷されることがある。台枠31よりも高い位置で前面妻構体12に衝撃力F1が負荷されると、前面妻構体12が鉄道車両内方へ変形するとともに、結合面314aと妻柱122が溶接されている箇所において、前面妻構体12が鉄道車両の天井方向に引き抜かれようとする力(せん断力F11)が生じる。結合面314aと妻柱122が溶接されている箇所における鉄道車両高さ方向の溶接長L21(図9参照)は、中梁314の厚み分しかないため、せん断力F11に耐えきれず、破断するおそれがある。溶接されている箇所が破断すると、障害物41が乗務員室にめり込み、乗務員に危険が及ぶおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、前面妻構体と台枠の結合の強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(1)台枠と、台枠に対し立設して配置され、台枠の軌道方向の端部に結合される前面妻構体と、を有する鉄道車両であって、台枠は、鉄道車両の軌道方向と略平行に長手方向を有する縦梁を有している鉄道車両において、台枠の長手方向の端面に、前面妻構体の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合される結合面を有すること、結合面は、縦梁の長手方向の端面により形成されており、縦梁は、長手方向の端部に、縦梁の鉄道車両の高さ方向の厚み寸法を、結合面まで漸増させる拡大部を有すること、拡大部は、縦梁の、鉄道車両の天井側の面が、軌道方向に対して角度を持って傾斜することで形成されること、前面妻構体は、台枠に対して立設して配置される妻柱を有していること、妻柱と縦梁とは、鉄道車両の正面視において重なる位置関係であること、を特徴とする。なお、略平行とは、縦梁が、軌道方向に対して0度乃至45度の浅い角度をなすことを指す。
【0009】
(1)の鉄道車両によれば、縦梁は、前面妻構体の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合される結合面を有しており、さらに、縦梁の鉄道車両の高さ方向の厚み寸法を、結合面まで漸増させる拡大部を有している。つまり、結合面の鉄道車両の高さ方向の寸法は、縦梁の厚み寸法よりも大きくされている。
【0010】
結合面は、例えば溶接によって前面妻構体に結合されるため、結合面における鉄道車両の高さ方向の溶接長(以下単に溶接長とする)を、縦梁の厚み寸法よりも長くすることができる。結合面における鉄道車両の高さ方向は、前面妻構体が鉄道車両の天井方向に引き抜かれようとする力(以下単に、せん断力とする)の方向と同方向であり、せん断力の方向と同方向の溶接長を長くすることで、前面妻構体と結合面が溶接されている個所のせん断力に対する強度を向上させることができる。よって、鉄道車両が障害物に正面衝突することで、前面妻構体に衝撃力が加わり、前面妻構体と結合面が溶接されている個所においてせん断力が発生しても、溶接されている箇所が破断するおそれを低減することができる。溶接されている箇所が破断しなければ、障害物は前面妻構体によって押しのけられ、乗務員室にめり込むおそれが低減されるため、乗務員の安全を保つことができる。
【0011】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記角度は、30度から60度であること、を特徴とする。
【0012】
(2)の鉄道車両によれば、乗務員室の容積確保をしつつ、結合面における溶接長を十分に確保可能となり、溶接している箇所のせん断力に対する強度を向上させることができる。
【0013】
拡大部の傾斜の角度が小さければ、結合面の溶接長が小さくなり、傾斜の角度が大きければ、結合面の溶接長が大きくなる。拡大部の傾斜が30度より小さいと、十分に溶接長が確保できず、前面妻構体と結合面が溶接されている個所におけるせん断力に対する耐久力を十分に向上させることができない。一方で、拡大部の傾斜が60度より大きいと、溶接長は長くなり、せん断力に対する耐久力を向上させることができるものの、前面妻構体の鉄道車両の内方側であって、拡大部の直上には乗務員室が設けられるため、乗務員室の容積確保が困難となるおそれがある。そこで、拡大部の傾斜の角度を30度から60度の間とすることで、乗務員室の容積確保をしつつ、結合面における溶接長を十分に確保可能となり、溶接している箇所のせん断力に対する強度を向上させることができる。
【0014】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両において、結合面は、妻柱の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合されること、を特徴とする。
【0015】
(3)の鉄道車両によれば、結合面は、例えば溶接によって妻柱の鉄道車両の内方側の面に結合される。よって、縦梁と妻柱の溶接部において、せん断力に対する強度を向上させることができ、ひいては溶接している箇所が破断するおそれを低減することができる。
【0016】
(4)(1)または(2)に記載の鉄道車両において、前面妻構体は、鉄道車両の床側の端部に配置され、妻柱が立設される妻土台を備えること、結合面は、妻土台の鉄道車両の内方側の面に突き当てられ結合されること、を特徴とする。
【0017】
(4)の鉄道車両によれば、結合面は、例えば溶接によって妻土台の鉄道車両の内方側の面に結合される。よって、縦梁と妻土台の溶接部において、せん断力に対する強度を向上させることができ、ひいては溶接している箇所が破断するおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鉄道車両によれば、前面妻構体と台枠の結合の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】鉄道車両の側面図である。
図2】台枠と前面妻構体の結合状態を示す斜視図である。
図3】前面妻構体の妻柱と台枠の中梁との結合部分を示す部分断面図である。
図4図3のAA断面図である。
図5】鉄道車両の変形例を示す図であり、図3に対応する図である。
図6】鉄道車両の変形例を示す図であり、図3に対応する図である。
図7】従来技術に係る鉄道車両の、台枠と前面妻構体の結合状態を示す斜視図である。
図8】従来技術に係る鉄道車両の、前面妻構体の妻柱と台枠の中梁との結合部分を示す部分断面図である。
図9図8のBB断面図である。
図10】従来技術に係る鉄道車両の前面妻構体に衝撃力が加わった状態を表す図である。
図11】(a)(b)ともに中梁の構成の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。図1に示されるように、鉄道車両1の車体2は、床面をなす台枠11と、台枠11の軌道方向の一方の端部に立設されることで車体2の先頭部をなす前面妻構体12と、台枠11の他方の端部に立設されることで車体2の連結部をなす連妻構体15と、台枠11の枕木方向の両端部に立設されることで車体2の側面をなす側構体13と、前面妻構体12,連妻構体15および側構体13の上端部に配置されることで車体2の屋根をなす屋根構体14とにより6面体をなすように構成される。そして、車体2は、枕ばね18を介して車輪17を備えた台車16によって支持されている。側構体13には、乗務員室に通じる乗務員昇降口20A、客室に通じる乗客乗降口20Bおよび窓20Cが設けられている。また、台枠11の軌道方向の両端部には、前面妻構体12および連妻構体15よりも車両長手方向の外方に突出するように連結器19が設けられており、隣接する鉄道車両同士を連結することが可能である。
【0022】
図2は、台枠11と前面妻構体12の結合状態を示す斜視図である。図3は、前面妻構体12の妻柱122と台枠11の中梁114との結合部分を示す部分断面図である。図4は、図3のAA断面図である。
【0023】
前面妻構体12は、図2に示すように、鉄道車両1の先頭面をなす妻板121と、妻板121を車体2の内方側から支える妻柱122とからなる。
【0024】
妻板121は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属製である。妻板121の枕木方向の中央部には、鉄道車両1の内部と外部を連通する貫通路のための開口部121aが設けられ、さらに、開口部121aを挟むようにして、一対の窓開口121bが設けられている。窓開口121bは、窓ガラスがはめ込まれ、窓として用いられる。
【0025】
妻柱122は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属製であり、平板状の材料を、プレス成型や溶接などにより角筒状に形成したものである。一対の妻柱122が、妻板121の開口部121aを挟むようにして配置され、妻板121の車体2の内方側の面に溶接されている。
【0026】
台枠11は、端梁111と、縦梁としての側梁112および中梁114と、枕梁113とからなる。端梁111と、側梁112と、中梁114と、枕梁113はステンレス鋼や炭素鋼,アルミ合金などの金属板により断面コの字型、または筒状に形成されるのが一般的である。
【0027】
一対の端梁111のそれぞれは、鉄道車両1の枕木方向に沿って長手方向を有するように一直線上に配置され、台枠11の軌道方向の端部を形成する。一対の端梁111のそれぞれの、枕木方向の鉄道車両1の外方側の端部には、鉄道車両1の軌道方向と略平行に長手方向を有するように配置される側梁112の端部が結合されている。なお、側梁112は、軌道方向と略平行と説明したように、必ずしも平行である必要はなく、側梁112を軌道方向に対して角度を持つものとし、鉄道車両1の枕木方向の全幅が、前面妻構体12に向かって漸減していくような形状としても良い。この場合の側梁112の軌道方向に対する角度は、荷重を支える目的を果たすために、0度乃至45度の浅い角度であることが望ましい。
【0028】
対向する一対の側梁112の間には、台車16が取り付けられる枕梁113が鉄道車両1の枕木方向に延在し、枕梁113の枕木方向の両端部は、側梁112に結合されている。
【0029】
また、一対の端梁111のそれぞれの、枕木方向の鉄道車両1の内方側の端部には、軌道方向と略平行に配置された中梁114が結合されており、中梁114の端梁111が結合されている側の端部とは反対側の端部は、枕梁113の枕木方向の中央部付近に結合されている。なお、端梁111、側梁112、枕梁113および中梁114のそれぞれの梁同士は、溶接により強固に結合されている。なお、中梁114は、軌道方向と略平行と説明したように、必ずしも平行である必要はなく、軌道方向に対して角度を持たせ、前面妻構体12に向かって、一対の中梁114,114同士の距離が漸減また漸増するものとしても良い。このとき、中梁114の軌道方向に対する角度は、荷重を支える目的を果たすために、0度乃至45度の浅い角度であることが望ましい。
【0030】
中梁114は、端梁111側の端面が、前面妻構体12の妻柱に結合される結合面114b(図3参照)となっている。さらに、中梁114は、結合面114b側の端部において、中梁114の鉄道車両1の天井側の面が、軌道方向に対して角度θ(図3参照)を持って傾斜することで拡大部114aが形成されている。なお、この角度θは30度から60度の角度であることが望ましい。
【0031】
拡大部114aは、中梁114の鉄道車両1の高さ方向の厚み寸法L12(図4参照)を、結合面114bまで漸増させている。この拡大部114aにより、結合面114bの鉄道車両1の高さ方向の寸法が、中梁114の厚み寸法L12よりも大きくとられている。なお、本実施形態における中梁114は、拡大部114aとその他の部分とが別部材により構成されているが、一体であっても良い。一体とした場合には、例えば、図11(a)に示すように、平板フランジ1141と、平板ウェブ1142と、拡大部114aを構成するために曲げ加工をされた平板フランジ1143と、の3部材を溶接することにより中梁114を構成することとしても良いし、図11(b)に示すように、断面L字状のアングル1144と、拡大部114aを構成するために曲げ加工をされた平板フランジ1143と、の2部材を溶接することにより中梁114を構成することとしても良い。
【0032】
以上のような構成を有する前面妻構体12と台枠11とは、以下のようにして結合されている。
【0033】
前面妻構体12は、台枠11に対して直角に位置されるとともに、妻板121の鉄道車両1の内方側の面(以下、単に内面とする)の下端部に、台枠11の端梁111が突き当たるようにして位置されている。そして、妻板121の内面に突設するように結合された接手板123が、端梁111の、鉄道車両1の天井側の面に結合されることで、前面妻構体12と台枠11の結合が行われている。なお、妻板121と接手板123の結合および接手板123と端梁111の結合はともに溶接により行われている。
【0034】
さらに、前面妻構体12と台枠11との結合は、前面妻構体12の妻柱122と、台枠11の中梁114との結合によっても行われている。妻柱122と中梁114との結合は、図3に示すように、中梁114の結合面114bが、妻柱122の妻板121の側とは反対側の面に突き当てられ、結合面114bの周囲を溶接することで行われる。図3および図4に示すように、溶接している箇所を溶接ビード115として示す。なお、この妻柱122と中梁114との結合は、前面妻構体12と台枠11を結合する際に行われるものである。つまり、妻柱122に結合された中梁114に、台枠11を構成するその他の梁を結合していくのではなく、事前の別工程において、端梁111、側梁112、枕梁113および中梁114のそれぞれの梁同士を溶接して、強固な台枠11を構成しておき、当該台枠11に、同様に事前の別工程において組み立てられた前面妻構体12を結合するのである。
【0035】
拡大部114aにより、結合面114bの鉄道車両1の高さ方向(図3および図4中の上下方向)の寸法が、中梁114の厚み寸法L12よりも大きくなっている。これにより、結合面114bにおける鉄道車両1の高さ方向の溶接長L11を、中梁114の厚み寸法L12よりも長くすることができる。
【0036】
結合面114bにおける鉄道車両1の高さ方向は、前面妻構体12が鉄道車両1の天井方向に引き抜かれようとする力(以下単に、せん断力とする)の方向と同方向であり、せん断力の方向と同方向の溶接長L11を長くすることで、前面妻構体12と結合面114bが溶接されている個所のせん断力に対する強度を向上させることができる。よって、鉄道車両1が障害物に正面衝突することで、鉄道車両1の軌道方向の外方側から前面妻構体12に衝撃力が加わり、前面妻構体12と結合面114bが溶接されている箇所にせん断力が発生しても、溶接されている箇所が破断するおそれを低減することができる。
【0037】
なお、上記の実施形態においては、中梁114の結合面114bが、妻柱122に結合されていたが、これに限定されるものではなく、次のような変形例が考えられる。
【0038】
例えば、図5に示すように、前面妻構体12は、妻板121と妻土台125と妻柱124とからなるものとする。妻土台125は角筒状に形成されており、鉄道車両1の床側の端部において、妻板121の枕木方向の一方の端部から他方の端部まで横架された状態で、妻板121に溶接により結合されている。そして、この妻土台125に妻柱124が立設されており、妻柱124は、妻板121と妻土台125に溶接により結合されている。
【0039】
前面妻構体12がこのような構成を有する場合、中梁114の結合面114bは、妻土台125の妻板121の側とは反対側の面に突き当てられ、結合面114bの周囲を溶接することで、妻土台125に結合される。溶接している箇所を溶接ビード116として示している。
【0040】
さらには、上記実施形態においては、中梁114の拡大部114aが、中梁114の鉄道車両1の天井側の面が、軌道方向に対して角度θを持って傾斜することで形成されていたが、図6に示すように、中梁214の、鉄道車両1の天井側の面(図6中の上端面)およびその反対側の面(図6中の下端面)が、それぞれ軌道方向に対して角度θを持って傾斜することで、拡大部214aおよび拡大部214bが形成されるものとしても良い。この拡大部214a,214bにより、結合面214cの、鉄道車両1の高さ方向(図6中の上下方向)の寸法が、中梁214の厚み寸法よりも大きく取られているため、妻柱122との溶接長を中梁214の厚み寸法よりも大きく取ることができる。なお、図6中の2つの角度θは、30度から60度の間であることが望ましく、ともに同一の角度としても良いし、それぞれ異なった角度としても良い。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の鉄道車両によれば、
(1)台枠11と、台枠11に対し立設して配置され、台枠11の軌道方向の端部に結合される前面妻構体12と、を有する鉄道車両1であって、台枠11は、鉄道車両1の軌道方向と略平行に長手方向を有する中梁114(214)を有している鉄道車両1において、台枠11の長手方向の端面に、前面妻構体12の鉄道車両1の内方側の面に突き当てられ結合される結合面114b(214c)を有すること、結合面114b(214c)は、中梁114(214)の長手方向の端面により形成されており、中梁114(214)は、長手方向の端部に、中梁114(214)の鉄道車両1の高さ方向の厚み寸法L12を、結合面114b(214c)まで漸増させる拡大部114a(214a,214b)を有すること、を特徴とする。
【0042】
(1)の鉄道車両1によれば、中梁114(214)は、前面妻構体12の鉄道車両1の内方側の面に突き当てられ結合される結合面114b(214c)を有しており、さらに、中梁114(214)の鉄道車両1の高さ方向の厚み寸法L12を、結合面114b(214c)まで漸増させる拡大部114a(214a,214b)を有している。つまり、結合面114b(214c)の鉄道車両1の高さ方向の寸法は、中梁114(214)の厚み寸法L12よりも大きくされている。
【0043】
結合面114b(214c)は、例えば溶接によって前面妻構体12に結合されるため、結合面114b(214c)における鉄道車両1の高さ方向の溶接長L11を、中梁114(214)の厚み寸法L12よりも長くすることができる。結合面114b(214c)における鉄道車両1の高さ方向は、前面妻構体12が鉄道車両1の天井方向に引き抜かれようとする力(以下単に、せん断力とする)の方向と同方向であり、せん断力の方向と同方向の溶接長L11を長くすることで、前面妻構体12と結合面114b(214c)が溶接されている個所のせん断力に対する強度を向上させることができる。よって、鉄道車両1が障害物に正面衝突することで、前面妻構体12に衝撃力が加わり、前面妻構体12と結合面114b(214c)が溶接されている個所においてせん断力が発生しても、溶接されている箇所が破断するおそれを低減することができる。
【0044】
(2)(1)に記載の鉄道車両1において、拡大部114a(214a)は、中梁114(214)の、鉄道車両1の天井側の面が、軌道方向に対して30度から60度の角度を持って傾斜することで形成されること、を特徴とする。
【0045】
(2)の鉄道車両1によれば、乗務員室の容積確保をしつつ、結合面114b(214c)における溶接長L11を十分に確保可能となり、溶接している箇所のせん断力に対する強度を向上させることができる。
【0046】
拡大部114a(214a)の傾斜の角度θが小さければ、結合面114b(214c)の溶接長L11が小さくなり、傾斜の角度θが大きければ、結合面114b(214c)の溶接長L11が大きくなる。拡大部114a(214a)の傾斜が30度より小さいと、十分に溶接長L11が確保できず、前面妻構体12と結合面114b(214c)が溶接されている個所におけるせん断力に対する耐久力を十分に向上させることができない。一方で、拡大部114a(214a)の傾斜が60度より大きいと、溶接長L11は長くなり、せん断力に対する耐久力を向上させることができるものの、前面妻構体12の鉄道車両1の内方側であって、拡大部114a(214a)の直上には、乗務員室が設けられるため、乗務員室の容積確保が困難となるおそれがある。そこで、拡大部114a(214a)の傾斜の角度θを30度から60度の間とすることで、乗務員室の容積確保をしつつ、結合面114b(214c)における溶接長L11を十分に確保可能となり、溶接している箇所のせん断力に対する強度を向上させることができる。
【0047】
(3)(1)または(2)に記載の鉄道車両1において、前面妻構体12は、台枠11に対して立設して配置される妻柱122を有していること、結合面114b(214c)は、妻柱122の鉄道車両1の内方側の面に突き当てられ結合されること、を特徴とする。
【0048】
(3)の鉄道車両1によれば、結合面114b(214c)は、例えば溶接によって妻柱122の鉄道車両1の内方側の面に結合される。よって、中梁114(214)と妻柱122の溶接部において、前面妻構体12が鉄道車両1の天井方向に引き抜かれようとする力(せん断力)に対する強度を向上させることができ、ひいては溶接している箇所が破断するおそれを低減することができる。
【0049】
(4)(1)または(2)に記載の鉄道車両1において、前面妻構体12は、台枠11に対して立設して配置される妻柱124と、鉄道車両1の床側の端部に配置され、妻柱124が立設される妻土台125と、を備えること、結合面114bは、妻土台125の鉄道車両1の内方側の面に突き当てられ結合されること、を特徴とする。
【0050】
(4)の鉄道車両1によれば、結合面114bは、例えば溶接によって妻土台125の鉄道車両1の内方側の面に結合される。よって、中梁114(214)と妻土台125の溶接部において、前面妻構体12が鉄道車両1の天井方向に引き抜かれようとする力(せん断力)に対する強度を向上させることができ、ひいては溶接している箇所が破断するおそれを低減することができる。
【0051】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、中梁114(214)は、中梁114(214)の軌道方向の前面妻構体12側の端部に、拡大部114a(214a,214b)および結合面114b(214c)を有することとしているが、中梁114(214)のみでなく、側梁112が拡大部および結合面を有することとし、妻柱122や妻土台125と結合されることとしても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 鉄道車両
11 台枠
12 前面妻構体
114 中梁(縦梁の一例)
114a 拡大部
114b 結合面
図1
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図11