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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240813BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/82 W
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020202214
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089650
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 将太郎
(72)【発明者】
【氏名】宇井 明生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119445(JP,A)
【文献】国際公開第2006/054605(WO,A1)
【文献】特開平09-181181(JP,A)
【文献】特開平10-135329(JP,A)
【文献】特開2000-216246(JP,A)
【文献】特開平09-232427(JP,A)
【文献】特開2006-148156(JP,A)
【文献】特開2000-100798(JP,A)
【文献】特開2018-026518(JP,A)
【文献】特開2009-141354(JP,A)
【文献】特開2011-044531(JP,A)
【文献】特開2010-171185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上に形成された第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層内に埋め込まれた環状又は枠状の導電性部材と
前記第1の絶縁層及び前記導電性部材の上に形成された第2の絶縁層と、
前記導電性部材の中央を前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層の厚さ方向に通り抜けるように形成された、外径が前記導電性部材の内径よりも小さいホールに、導電性材料を埋め込んで形成された柱状体と、
を備え、
前記導電性部材は、一部に切れ込みがある平面視形状を有する、
導体装置。
【請求項2】
前記柱状体は、前記第1の絶縁層の厚さ方向と直交する方向における最大長さと、前記第1の絶縁層の厚さ方向における最大長さと、のアスペクト比が10以上である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ホールは、前記導電性部材と接続しないように形成される、
請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記導電性部材が前記厚さ方向と交差する面上に配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記柱状体が円柱形状を有し、
前記導電性部材が環状の平面視形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記柱状体と前記導電性部材が同心円状に配置される、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記柱状体が楕円柱形状を有し、
前記導電性部材が、楕円環状の平面視形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
楕円柱形状を有する前記柱状体の外周面と、楕円環状の平面視形状を有する前記導電性部材の内周面との間隔が、前記外周面の周りで等しい、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記柱状体が、前記厚さ方向に直交する方向と、前記厚さ方向とに延びる溝形状を有し、
前記導電性部材が、枠状の平面視形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記柱状体が、前記厚さ方向に直交する方向と、前記厚さ方向とに延びる溝形状を有し、
前記導電性部材が、一部に切れ込みがある枠状の平面視形状を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
枠状の平面視形状を有する前記導電性部材のいずれの内側面も、当該内側面とそれぞれ対向する、溝形状を有する前記柱状体の外側面と等距離に離間する、請求項9又は10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記導電性部材が、前記柱状体の周りに配置される複数の小片を含み、
当該複数の小片に接続する第2の連結部が更に設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記柱状体に対し、一以上の追加の前記導電性部材が設けられる、請求項1から12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記導電性部材と前記追加の前記導電性部材とに接続する第1の連結部が更に設けられる、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
基板の上に第1の絶縁層を形成し、
前記第1の絶縁層内に、環状又は枠状の導電性部材を埋め込み、
前記第1の絶縁層及び前記導電性部材の上に第2の絶縁層を形成し、
前記導電性部材の中央を前記第1の絶縁層及び前記第2の絶縁層の厚さ方向に通り抜けるように、外径が前記導電性部材の内径よりも小さいホールを形成し、
前記ホールに導電性材料を埋め込んで柱状体を形成することを含む、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの半導体装置の集積度を増大するため、トランジスタや配線などの回路要素の3次元的な配置が広く採用されている。このような状況のもとでは、例えば絶縁層等のエッチングターゲットにビアやコンタクトのために形成されるホールが、例えば10以上の高いアスペクトを有する傾向にある。
【0003】
このような高アスペクト比のホールをプラズマエッチング法により形成する場合において、エッチングターゲットと異なる物質で形成される、例えば配線やビア等の回路要素がエッチングターゲット内に含まれるときは、その回路要素により、エッチングターゲット中の電位の分布が偏ってしまうことがある。その場合、エッチングターゲット近傍のイオンの分布にばらつきが生じるため、ホールが曲がったり傾いたりしてしまうことになりかねない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-134530号公報
【文献】特開平11-260755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、エッチングターゲットに形成されるホールの曲がりや傾きを低減可能な半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、回路要素と導電性部材を備える半導体装置が提供される。回路要素は、絶縁層内で当該絶縁層の厚さ方向に延びる。導電性部材は、回路要素との間に絶縁層の一部を介在させて、回路要素の周囲の少なくとも一部を取り囲むように絶縁層内に埋め込まれ、電気的に浮いている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態による半導体装置を模式的に示す一部斜視図。
図2図1の半導体装置の形成方法を説明するための一部断面図。
図3図2に引き続き図1の半導体装置の形成方法を説明するための一部断面図。
図4図1の半導体装置により奏される効果を説明する図。
図5図1の半導体装置の変形例を説明する図。
図6図5に引き続いて、図1の半導体装置の更なる変形例を説明する図。
図7図1の半導体装置の別の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の限定的でない例示の実施形態について説明する。添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間、または、種々の層の厚さの間の相対比を示すことを目的とせず、したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されてよい。
【0009】
図1から図4までを参照しながら、本発明の実施形態による半導体装置について説明する。図1は、本実施形態による半導体装置1を模式的に示す一部斜視図である。図1に示すように、本実施形態による半導体装置1には、絶縁層10と、絶縁層10の表面10Uから絶縁層10の厚さ方向TDに延びる柱状体12と、絶縁層10内において柱状体12を取り囲むように形成された導電性部材14とが設けられている。
【0010】
絶縁層10は、例えば層間絶縁膜であってよく、下地層としての基板(不図示)、または基板上の導電層の上に形成されている。この導電層は、基板の表層に不純物を拡散することにより形成されてよく、基板上に導電性材料を堆積することにより形成されてもよい。また、絶縁層10は絶縁性材料、例えば酸化シリコンで形成されてよい。ただし、酸化シリコンの代わりに、窒化シリコンや酸窒化シリコンなどで絶縁層10が形成されてもよい。
【0011】
柱状体12は、本実施形態ではほぼ円柱状の形状を有している。厚さ方向TDと直交する方向(横方向)における柱状体12の最大長さと、厚さ方向TD(縦方向)における最大長さとの比(アスペクト比)は例えば10以上であってよい。また、柱状体12は、導電性材料で形成され、例えばビアやスルーコンタクトなどと呼ばれる層間配線体であってよく、その上端は絶縁層10の表面10Uに露出している。導電性材料としては、アルミニウムや、銅、タングステン、モリブデンなどの金属、又はガリウムやヒ素、リンなどの不純物がドープされた多結晶シリコンなどの半導体が例示され得る。さらに、柱状体12は、一種類の導電性材料で形成されるだけでなく、複数の導電性材料で形成されてよい。例えば、柱状体12は、一の導電性材料で形成される中実の円柱体と、一の導電性材料と異なる材料で形成され、円柱体の外周面を覆う薄膜層とを有していてもよい。なお、ほぼ円柱状の形状には楕円柱形状も含まれる。言い換えると、柱状体12の上面及び下面は真円でなくてもよい。さらに、後に説明するようにエッチング技術を用いて柱状体12を形成する際、エッチング条件のばらつきなどにより、上面及び下面の形状が、真円ではなく、楕円になったり、角が丸まった矩形となったりしてもよい。
【0012】
なお、図示は省略するが、絶縁層10及び柱状体12の上には、更に絶縁膜が形成されてよい。また、その絶縁膜には導電性のプラグが埋め込まれ、このプラグが柱状体12の上端に接続してよい。さらに、プラグを介して、その絶縁膜の上の配線と柱状体12とが接続されてよい。一方、柱状体12の下端は、基板(不図示)に接してもよい。また、絶縁層10が導電層(不図示)を介して基板の上方に設けられる場合、柱状体12は絶縁層10を貫通し、その導電層に接続してもよい。
【0013】
導電性部材14は、本実施形態においては、柱状体12の外側面の一部を取り囲む環状形状を有している。導電性部材14の底面は、例えば絶縁層10の厚さ方向TDに直交する面に平行であってよい。また、導電性部材14は柱状体12の外径よりも大きい内径を有している。このため、導電性部材14の内側面と柱状体12の外側面との間には、絶縁層10の一部が介在することができ、これにより、導電性部材14と柱状体12とは互いに絶縁されている。また、導電性部材14は、厚さ方向TDと直交する方向について柱状体12に対して対称に配置される。具体的には、本実施形態においては、導電性部材14と柱状体12は、上方から厚さ方向TDに沿って見ると(平面視で)互いにほぼ同心円状に配置されている。さらに、導電性部材14は、絶縁層10内に埋め込まれており(または閉じ込められており)、すべての面で絶縁層10に接している。すなわち、導電性部材14は、独立しており、柱状体12を始めとして他の回路要素とは接続されておらず、電気的に浮いている。
なお、柱状体12の上面及び下面が楕円形状を有することとなる場合、導電性部材14は、楕円環状の形状を有してよい。また、この場合、柱状体12の楕円形の上面の中心(長軸と短軸の交点)と、楕円環形状の導電性部材14の中心とが平面視で一致してよい。また、柱状体12の外周面と導電性部材14の内周面との間の間隔が、柱状体12の外周面の周りで一定であってもよい。
さらに、導電性部材14は、柱状体12の通過を許容する開口が中心軸に沿って形成された円錐台状の形状を有してもよい。言い換えると、導電性部材14は、上端と下端において異なる寸法(例えば直径)を有し、上端から下端に向かって寸法が漸次変化してもよい。この場合であっても、柱状体12と導電性部材14は中心軸を共有してよい。すなわち、柱状体12と導電性部材14は互いに平面視同心円状に配置されてよい。また、柱状体12の上面及び下面が、角が丸まった矩形の平面視形状を有することとなる場合、導電性部材14は、その矩形形状と相似形の平面視形状を有してよい。
【0014】
導電性部材14は、アルミニウムや銅、タングステン、モリブデンなどの金属や、多結晶シリコンなどの半導体で形成され得る。ここに言う多結晶シリコンは、不純物がドープされていてもよく、ノンドープでもよい。すなわち、導電性部材14は、絶縁層10の導電率よりも大きい導電率、例えば半絶縁性材料の導電率と同等の導電率を有していればよい。
【0015】
次に、柱状体12と導電性部材14の形成方法について説明する。図2は、この形成方法を説明するための半導体装置1の一部断面図である。以下では、便宜上、1組の柱状体12及び導電性部材14について説明するが、複数組の柱状体12及び導電性部材14も同時に形成可能である。
【0016】
図2(a)に示すように、絶縁層10に対する下地層である基板Sの上に絶縁層10Aが形成される。基板Sは、シリコンウェハなどの半導体基板であってよい。また、半導体基板である基板Sには、例えば電界効果トランジスタ(FET)などの能動デバイスや、これに対して設けられる電極や配線などが形成されていてよい。絶縁層10Aは、上述の絶縁層10の下方部分に相当し、絶縁層10を構成する上述の絶縁性材料により形成されてよい。また、絶縁層10Aの厚さは、例えば、後に形成される柱状体12に対する導電性部材14の位置に基づいて決定されてよい。
【0017】
次いで、図2(b)に示すように、絶縁層10Aの上にレジスト膜R1が形成される。レジスト膜R1は開口OP1を有している。開口OP1は、レジスト膜R1において、上述の絶縁層10に形成されるべき柱状体12の位置及び形状に基づいて形成される。具体的には、回路要素としての柱状体12が導電性部材14の中央を貫通できるように、環状の平面視形状を有する開口OP1がレジスト膜R1に設けられる。また、開口OP1の内径は、柱状体12の外径よりも大きく、柱状体12が導電性部材14と接触しない程度の余裕を有するように決定されてよい。このレジスト膜R1をマスクとして絶縁層10Aをエッチングすると、平面視環状の凹部RCが形成される(図2(c))。
【0018】
この後、図2(d)に示すように、例えばスパッタ法によりレジスト膜R1上に金属膜MFを形成すると、凹部RCもまた金属膜MFにより埋め込まれる。ここで、金属膜MFは例えばアルミニウムで形成されてよい。そして、レジスト膜R1を剥離することによりレジスト膜R1上の金属膜MFを除去すると、図3(a)に示すように、凹部RCに金属が残り、これにより導電性部材14が形成される。
【0019】
なお、スパッタ法に代わり、メッキ法により金属膜MFを形成してもよい。この場合、まず、凹部RCが形成された後にレジスト膜R1が除去される。次いで、露出した絶縁層10A上にメッキ法により金属膜MFが形成され、凹部RCが金属で埋め込まれる。続けて、絶縁層10A上の金属膜MFが例えば化学機械研磨(CMP)法により除去される。これにより、導電性部材14が得られる。
【0020】
次に、図3(b)に示すように、絶縁層10A及び導電性部材14の上に絶縁層10Bが形成される。絶縁層10Bは、本実施形態では、絶縁層10Aの材料と同じ材料により形成され、絶縁層10A、10Bにより絶縁層10が形成される。次いで、絶縁層10(10B)上にレジスト膜R2が形成される(図3(c))。レジスト膜R2は開口OP2を有している。開口OP2は、レジスト膜R2において、柱状体12が形成されるべき位置、すなわち、環状形状を有する導電性部材14の中央を柱状体12が貫通可能な位置に配置される。レジスト膜R2をマスクとして、例えば反応性イオンエッチング(RIE)などのプラズマを利用したエッチング方法により絶縁層10をエッチングすると、図3(d)に示すように、ホールHLが形成される。ホールHLは、例えば10以上のアスペクト比を有することができる。
【0021】
次いで、例えば化学気相堆積(CVD)法により、例えばタングステン等の金属をホールHLに埋め込む。この後、絶縁層10上に堆積された金属を例えばCMP法により除去すると、柱状体12が形成される。以上により、図1に示した構造が得られる。
【0022】
次に、本実施形態による半導体装置1により奏される効果について説明する。図4(a)は、柱状体12のためのホールHLを形成しているときの絶縁層10の一部を示す断面図であり、ホールHLの周辺の電位分布をシミュレーションにより求めた結果を示す図である。図示のとおり、絶縁層10内には、後に柱状体12となるべきホールHLと、平面視同心円状にホールHLを取り囲む導電性部材14とが形成されている。また、図4(a)には、ホールHL(柱状体12)から所定の距離だけ離間して設けられる部材16も図示されている。部材16は、柱状体12とは異なる回路要素であり、導電性材料で形成されている。また、同図中に示す等電位線ELは、シミュレーションにより求めた、プラズマエッチング中の絶縁層10における電位分布を示している。
【0023】
図4(b)を参照すると、絶縁層10内には、ホールHLと部材16が設けられているが、導電性部材14は設けられていない。図4(a)及び図4(b)における等電位線ELを比較すると、導電性部材14が無い場合には、プラズマエッチング中に、絶縁層10内では、ホールHLに対して非対称に電位が分布していることが分かる。例えばプラズマエッチング中にホールHLの内面が帯電すると、ホールHLの一方側の部材16にも電荷が誘起され、これらに基づく電界がホールHLと部材16の間に生じる。一方で、ホールHLの他方側ではそのような電界が生じないため、電位分布が非対称になると考えられる。
【0024】
プラズマエッチングプロセス中に絶縁層10内で電位が非対称に分布すると、プラズマ中のイオン等の荷電粒子は、電位勾配に影響され、ホールHLの底部に向かって、直進するのではなく、曲がった軌跡に沿って進んでいく。この場合、例えばホールHLの内面の一方側により多くの荷電粒子が衝突することとなり、そちら側でエッチングが促進されることとなり得る。その結果、ホールHLは曲がったり、傾いたりすることになりかねない。
【0025】
一方、図4(a)では、ホールHLに対して対称に電位が分布しており、そのため、プラズマ中の荷電粒子は、ホールHL内において底部に向かって直進し、ホールHLは絶縁層10の厚さ方向に沿って形成され得る。ホールHLに対する対称的な電位分布は、ホールHLを対称に(平面視同心円状に)取り囲む導電性部材14に起因すると考えられる。
【0026】
半導体装置1には、ビアや貫通コンタクトなどとしての柱状体12が形成される前に、トランジスタなどの能動デバイスや、電極又は配線などの種々の回路要素など(不図示)が多数形成されている。これらの回路要素には、図4(a)に示すように、柱状体12に近接して配置されることとなる部材16のような回路要素も含まれている。絶縁層10内に柱状体12のためのホールHLを形成する際に、部材16のような回路要素によりホールHLが曲がったり、傾いたりしたときは、そのようなホールHLに埋め込まれる導電性材料にボイドが生じるおそれがあり、これが電気的な接続の不具合につながりかねない。
【0027】
また、ホールHLが曲がったり傾いたりすると、ホールHLの形成前に形成されていた他の回路要素(例えば図4(a)における部材16など)とホールHLが接触してしまうこともあり得る。この場合、その回路要素と、ホールHLに金属を埋め込むことにより形成される柱状体12とが短絡してしまうことともなる。
【0028】
しかし、本実施形態による半導体装置1では、ホールHLが形成される前に絶縁層10内には導電性部材14が設けられているため、その中央を通り抜けるようにホールHLが形成されるとき、絶縁層10内の電位分布がホールHLに対して対称になり得る。このため、絶縁層10において、その厚さ方向TD(図1)に対し、曲がったり傾いたりすることなく、ほぼ直線的に延びるホールHLを得ることができる。これにより、ホールHLを金属で埋め込む際にボイド等の形成が低減され、確実な電気的な接続を実現し得る。また、本実施形態によれば、絶縁層10の厚さ方向TDにほぼ直線的に延びるホールHLひいては回路要素としての柱状体12を得ることができるため、回路要素間の短絡を低減することが可能となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態による半導体装置1には、回路要素としての柱状体12を取り囲むように導電性部材14が設けられている。導電性部材14は、柱状体12のためのホールHLがプラズマエッチングにより絶縁層10に形成される際に、絶縁層10内において、ホールHLの周辺の電位分布をホールHLに対して対称にすることができる。したがって、絶縁層10の厚さ方向TDにほぼ直線的に延びるホールHLひいては回路要素としての柱状体12を得ることができる。
【0030】
なお、図1では、図示の便宜上、3つの柱状体12と、これらに対応する3つの導電性部材14とが図示されているが、3組の柱状体12及び導電性部材14に限らず、1組や2組、4組以上の柱状体12及び導電性部材14が設けられてよい。特に、柱状体12の数は、製造される半導体装置の種類や回路レイアウトに応じて決定されてよい。また、すべての柱状体12に導電性部材14が設けられていなくてよく、複数の柱状体12のうち、必要に応じて、1つの又は幾つかの柱状体12に対して導電性部材14が設けられてもよい。例えば、部材16のような回路要素に近接する柱状体12に対して導電性部材14を設けるようにしてもよい。
【0031】
(変形例1)
図5(a)は、変形例1による半導体装置1Aの一部を模式的に示す斜視図である。図5(a)では、変形例1における導電性部材14Aは、概ね環状形状を有しているものの、一部に、ほぼ半径方向に延びるスリットSLを有している。言い換えると、導電性部材14Aは、C字型の平面視形状を有している。このように柱状体12の周囲は360度に亘って取り囲まれていなくてもよい。これは、スリットSLのような隙間があっても、柱状体12のためのホールHLの周辺の電位分布をホールHLに対してほぼ対称にすることができるためである。そのような電位分布を可能とする、導電性部材14Aの円周方向におけるスリットSLの幅は、図4のようなシミュレーションから決定されてよい。また、導電性部材14Aのように一部にスリットSLがある場合には、このスリットSLを通して柱状体12に接続する配線などを形成することも考えられる。
【0032】
(変形例2)
図5(b)は、変形例2による半導体装置1Bの一部を模式的に示す斜視図である。図5(b)と図1等を参照すると、変形例2での導電性部材14Bは、導電性部材14(14A)の厚さ(絶縁層10の厚さ方向TDの長さ(高さ))よりも大きい厚さを有している。導電性部材14Bのように厚さが厚くなるほど、プラズマエッチング中の絶縁層10内の電位分布は対称になり易くなる。したがって、厚さ方向TDにほぼ直線的に延びる(下地層に対してほぼ垂直な)ホールHLひいては柱状体12が形成され得る。
【0033】
なお、図4(a)から理解されるように、導電性部材14は、柱状体12の高さと同等の高さを有していなくても、ホールHLに対して対称に電位を分布させることは可能である。導電性部材14の厚さや、柱状体12に対する上下位置(すなわち、図2(a)における絶縁層10Aの厚さと、図2(c)における凹部RCの深さ)は、図4のようなシミュレーションにより決定されることが望ましい。
【0034】
(変形例3)
図5(c)は、変形例3による半導体装置1Cの一部を模式的に示す斜視図である。図5(c)を参照すると、変形例3では、1つの柱状体12に対し、上下に配列される2つの導電性部材14が設けられている。このように複数の導電性部材14が設けられれば、プラズマエッチング中の絶縁層10内の電位分布は対称になり易くなる。したがって、絶縁層10の厚さ方向TDに延びるホールHLひいては柱状体12が形成され得る。なお、上側の導電性部材14は、下側の導電性部材14の形成後、図3(b)に示す絶縁層10Bと同様の絶縁層を設け、この絶縁層に対して図2(b)から図3(a)までの工程を行うことにより形成することができる。また、導電性部材14の数は、2つに限定されることなく、例えば3つ以上であってもよい。
【0035】
(変形例4)
図5(d)は、変形例4による半導体装置1Dの一部を模式的に示す斜視図である。図5(d)を参照すると、導電性部材14Dは、第1の環状部141、第2の環状部142、及びこれらに接続する連結部140を有している。第1の環状部141及び第2の環状部142は、上述の導電性部材14と同じ形状を有することができる。導電性部材14Dもまた全体として絶縁層10内に埋め込まれており、他の回路要素とは接続されていない。このような構成によれば、第1の環状部141及び第2の環状部142は、連結部140を介してほぼ等しい電位を有し得るので、柱状体12の長さ方向に沿った広い範囲に亘って、柱状体12の周辺において電位分布を対称にすることが可能となる。したがって、絶縁層10の厚さ方向TDにほぼ直線的に延びるホールHLひいては柱状体12が形成され得る。
【0036】
(変形例5)
図5(e)は、変形例5による半導体装置1Eの一部を模式的に示す斜視図である。図5(e)に示すように、この変形例における導電性部材14Eは、互いに間隔を空けて配置される2つの半円環部14H1、14H2を有している。換言すると、導電性部材14Eは、直径方向に並ぶ2つのスリットを有するということもできる。また、導電性部材14Eは、2つの半円環部14H1、14H2だけでなく、これらに接続されたアーム部143を有している。具体的には、アーム部143は、ほぼU字型の形状を有し、その形状の2つの上端部がそれぞれ半円環部14H1、14H2に接続し、下端部が柱状体12の下方を通り抜けている。このような形状のアーム部143は、フォトリソグラフィ、エッチング、及び薄膜堆積などの所定のプロセスにより形成され得る。
【0037】
2つの半円環部14H1、14H2は、アーム部143を介してほぼ等しい電位を有することができるため、プラズマエッチング中の絶縁層10内の電位分布をホールHLに対称にすることが可能となる。したがって、絶縁層10の厚さ方向TDにほぼ直線的に延びるホールHLひいては柱状体12が形成され得る。
【0038】
また、半円環部14H1、14H2の隙間を通して、柱状体12に対しては配線を接続することも可能である。なお、導電性部材14Eでは、2つの半円環部14H1、14H2がアーム部143により互いに電気的に接続されているが、導電性部材14Eは、全体としては、他の回路要素と接続されることなく電気的に浮いている。
【0039】
(変形例6)
変形例6は、変形例5の更なる変形例である。すなわち、図5(f)に示すように、変形例6による半導体装置1Fの導電性部材14Fでは、アーム部143に代わり、2つの半円環部14H1、14H2に対してアーム部144が接続される。アーム部144は、柱状体12の延びる方向と垂直な面内に配置される。アーム部144によっても、2つの半円環部14H1、14H2が等しい電位に維持され得るので、導電性部材14Fもまた導電性部材14Dと同じ効果を奏する。
【0040】
なお、アーム部144の厚さを半円環部14H1、14H2の厚さと等しくすれば、レジスト膜の開口(例えば図2(b)における開口OP1)の形状を変更することにより、半円環部14H1、14H2の形成時にアーム部144を形成することが可能となる。すなわち、簡易に導電性部材14Fを形成することができるようになる。
【0041】
また、導電性部材14Fは、2つの半円環部14H1、14H2と、これらに接続されるアーム部144を有しているが、例えば環状形状を有する導電性部材14(図1等)を円周方向に3分割することにより得られる3つの円弧部(または、4分割することにより得られる4つの円弧部)と、隣接する2つ(または3つ)のアーム部を備える導電性部材も考えられる。
【0042】
(変形例7)
図6(a)は、変形例7による半導体装置1Gの一部を模式的に示す斜視図である。図6(a)に示すように、この変形例における導電性部材14Gは、環状形状を有する導電性部材14等とは異なり、開口14OPが設けられた平板の形状を有している。開口14OPの内径は柱状体12の外径よりも大きく、柱状体12は、導電性部材14Gと接触することなく、その開口14OPを貫通している。導電性部材14Gによっても、絶縁層10内において、柱状体12のためのホールHLに対して対称に電位を分布させることが可能となり、したがって、ホールHLひいては柱状体12を絶縁層10の厚さ方向に直線的に延びるように形成することができる。
【0043】
(変形例8)
変形例8は、変形例7の更なる変形例である。すなわち、図6(b)に示すように、変形例8による半導体装置1Hにおける導電性部材14Hは、柱状体12に対応する複数の開口14OPが設けられた平板の形状を有している。各開口14OPの内径は柱状体12の外径よりも大きく、柱状体12は、導電性部材14Hと接触することなく、その開口14OPをそれぞれ貫通している。導電性部材14Hによっても、絶縁層10内において、柱状体12のためのホールHLに対して対称に電位を分布させることが可能となり、したがって、ホールHLひいては柱状体12を絶縁層10の厚さ方向に直線的に延びるように形成することができる。
【0044】
以上、変形例1から8について説明したが、これらに基づく更なる変形も可能である。例えば、変形例3における2つの導電性部材14の代わりに、2つの(又は3つ以上の)導電性部材14A(図5(a))が設けられてもよい。また、変形例4において、第1の環状部141及び第2の環状部142は、上述の導電性部材14と同じ形状を有していたが、導電性部材14Aと同じ形状を有してもよい。さらに、変形例6における導電性部材14Fを複数個設けてもよい。さらにまた、導電性部材14が楕円環状の形状を有する場合に、この導電性部材14に図5(a)に示したスリットSLが形成されてもよい。
【0045】
(変形例9)
図7は、変形例9による半導体装置1Iの一部を模式的に示す斜視図である。この変形例では、円筒形状を有する柱状体12等とは異なり、柱状体12Iが、絶縁層10の厚さ方向TDと、厚さ方向TDに直交する方向とに延びる平板の形状を有している。これに合わせ、導電性部材14Iは、平面視で枠状の形状と、所定の厚さ(高さ)とを有している。柱状体12Iは、導電性部材14Iの開口を貫通している。すなわち、導電性部材14Iは、平板形状の柱状体12Iの周囲を取り囲んでいる。このような構成は、例えば図2(b)に示すレジスト膜R1の開口OP1の平面視形状を導電性部材14Iの平面視枠形状に対応した形状に変更し、図3(d)に示すレジスト膜R2の開口OP2の平面視形状を柱状体12Iの平板形状に対応した形状に変更することにより、上述の形成方法に従って形成することができる。導電性部材14Iによっても、絶縁層10内に柱状体12Iのための凹部(溝部)を形成する際に、その凹部の周辺において、凹部に対して対称に電位を分布させることができる。したがって、柱状体12Iは、絶縁層10の厚さ方向TDに対して曲がったり傾いたりすることなく形成され得る。
【0046】
なお、柱状体12Iのすべての側面と、これらにそれぞれ対向する、導電性部材14Iの側面との間の間隔が等しくなるように、柱状体12Iと導電性部材14Iは配置されてよい。また、環状形状を有する導電性部材14が、変形例1から8までのように変形可能であるのと同様に、導電性部材14Iもまた変形可能であり、変形例1から8までに基づく更なる変形も可能である。例えば、導電性部材14Iは、一つの側面において、厚さ方向に延びる切り欠き部を有してもよい。また、そのような切り欠き部は、複数の側面に形成されてもよい。この場合には、図5(e)に示すアーム部143や、図5(f)に示すアーム部144などと同様のアーム部により、切り欠き部により切り離された側面部を連結してよい。
【0047】
本発明のいくつか実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1、1A~1I 半導体装置
10、10A、10B 絶縁層
12、12I 柱状体
14、14A、14B、14D~14H、14I 導電性部材
16 部材
HL ホール
MF 金属膜
R1、R2 レジスト膜
OP1、OP2 開口
RC 凹部
S 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7