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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020210607
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097175
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 翼
(72)【発明者】
【氏名】須田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】山路 峻平
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022543(JP,A)
【文献】中国実用新案第206559782(CN,U)
【文献】特開2012-087630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
H05K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータが駆動することに起因して熱を発する発熱素子を実装する回路基板と、
前記発熱素子と熱結合した放熱部を備え、前記回路基板を内部に収容するケースと、
前記回路基板と前記ケースとの間に設置されて、前記ケース内に収容される少なくとも1つの弾性部材と、
前記ケース内に充填されて、前記回路基板および前記少なくとも1つの弾性部材を前記ケース内に固定する充填材と
を備え、
前記ケースは、前記回路基板の一方の面である裏面と対向する底部と、前記回路基板の側縁を囲む側壁部とを備え、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記回路基板の前記側縁と前記ケースの前記側壁部との間の隙間を埋めるように設置される電動作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機であって、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記発熱素子の付近に設置される電動作業機。
【請求項3】
請求項2に記載の電動作業機であって、
前記回路基板は、矩形状に形成されており、矩形を形成する4つの前記側縁を備え、
4つの前記側縁のうち、互いに対向する2つの前記側縁をそれぞれ第1側縁および第2側縁として、前記少なくとも1つの弾性部材は、前記回路基板の前記第1側縁と前記ケースの前記側壁部との間に設置される第1弾性部材と、前記回路基板の前記第2側縁と前記ケースの前記側壁部との間に設置される第2弾性部材とを含み、
前記第1弾性部材と前記第2弾性部材とは互いに対向するように配置され、
前記発熱素子は、前記第1弾性部材と前記第2弾性部材との間に配置されている電動作業機。
【請求項4】
請求項1請求項3の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記回路基板における前記裏面と反対側の面である表面より前記底部側に設置される電動作業機。
【請求項5】
モータと、
前記モータが駆動することに起因して熱を発する発熱素子を実装する回路基板と、
前記発熱素子と熱結合した放熱部を備え、前記回路基板を内部に収容するケースと、
前記回路基板と前記ケースとの間に設置されて、前記ケース内に収容される少なくとも1つの弾性部材と、
前記ケース内に充填されて、前記回路基板および前記少なくとも1つの弾性部材を前記ケース内に固定する充填材と
を備え、
前記ケースは、前記回路基板の一方の面である裏面と対向する底部と、前記回路基板の側縁を囲む側壁部とを備え、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記回路基板の前記側縁と前記ケースの前記側壁部との間に設置され、
前記少なくとも1つの弾性部材と前記ケースの前記側壁部との間、および、前記少なくとも1つの弾性部材と前記回路基板の前記側縁との間の少なくとも一方に前記充填材が充填されている電動作業機。
【請求項6】
モータと、
前記モータが駆動することに起因して熱を発する発熱素子を実装する回路基板と、
前記発熱素子と熱結合した放熱部を備え、前記回路基板を内部に収容するケースと、
前記回路基板と前記ケースとの間に設置されて、前記ケース内に収容される少なくとも1つの弾性部材と、
前記ケース内に充填されて、前記回路基板および前記少なくとも1つの弾性部材を前記ケース内に固定する充填材と
を備え、
前記ケースは、前記回路基板の一方の面である裏面と対向する底部と、前記回路基板の側縁を囲む側壁部とを備え、
前記少なくとも1つの弾性部材は、前記回路基板の前記裏面において前記発熱素子が配置される領域以外の領域と対向するようにして、前記回路基板の前記裏面と前記ケースの前記底部との間に設置される電動作業機。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記少なくとも1つの弾性部材は接着剤である電動作業機。
【請求項8】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の電動作業機であって、
前記少なくとも1つの弾性部材はスポンジである電動作業機。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか1項に記載の電動作業機であって、
当該電動作業機はブロアである電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの駆動によってファンを回転させて空気を吐出する電動作業機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6491025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動作業機を駆動させて作業を行うと、モータの駆動を制御する回路基板に実装された電子部品の発熱によって回路基板が変形することで、放熱性能が低下し回路基板の温度がさらに上昇する恐れがある。
本開示の一態様は、回路基板の変形を防止し、放熱性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、モータと、回路基板と、ケースと、少なくとも1つの弾性部材と、充填材とを備える電動作業機である。
回路基板は、モータが駆動することに起因して熱を発する発熱素子を実装する。ケースは、発熱素子と熱結合した放熱部を備え、回路基板を内部に収容する。少なくとも1つの弾性部材は、回路基板とケースとの間に設置されて、ケース内に収容される。充填材は、ケース内に充填されて、回路基板および少なくとも1つの弾性部材をケース内に固定する。
【0006】
このように構成された本開示の電動作業機では、発熱素子における発熱によって充填材が高温になって膨張しても、ケース内に設置された弾性部材が回路基板よりも先に変形して充填材の膨張力を吸収する。これにより、本開示の電動作業機は、充填材の膨張によって回路基板に掛かる力を抑制し、充填材の膨張によって回路基板が変形するのを抑制することができる。このため、本開示の電動作業機は、回路基板の変形によって発生する発熱素子と熱結合部との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機の駆動による回路基板の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0007】
電動作業機では、ケースは、回路基板の一方の面である裏面と対向する底部と、回路基板の側縁を囲む側壁部とを備え、少なくとも1つの弾性部材は、回路基板の側縁とケースの側壁部との間の隙間を埋めるように設置されてもよい。
【0008】
電動作業機では、少なくとも1つの弾性部材は、発熱素子の付近に設置されてもよい。これにより、本開示の電動作業機は、発熱素子の付近における回路基板の変形を抑制することができる。このため、本開示の電動作業機は、回路基板の変形によって発生する発熱素子と熱結合部との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機の駆動による回路基板の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0009】
電動作業機では、回路基板は、矩形状に形成されており、矩形を形成する4つの側縁を備え、少なくとも1つの弾性部材は、第1弾性部材と、第2弾性部材とを含み、第1弾性部材と第2弾性部材とは互いに対向するように配置され、発熱素子は、第1弾性部材と第2弾性部材との間に配置されてもよい。第1弾性部材は、回路基板の第1側縁とケースの側壁部との間に設置される。第2弾性部材は、回路基板の第2側縁とケースの側壁部との間に設置される。第1側縁および第2側縁は、4つの側縁のうち、互いに対向する2つの側縁である。
【0010】
これにより、本開示の電動作業機は、発熱素子の付近における複数個所で回路基板の変形を抑制することができる。このため、本開示の電動作業機は、回路基板の変形によって発生する発熱素子と熱結合部との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機の駆動による回路基板の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0011】
電動作業機では、少なくとも1つの弾性部材は、回路基板における裏面と反対側の面である表面より底部側に設置されてもよい。これにより、本開示の電動作業機は、回路基板とケースの底部との間に存在する充填材の膨張によって回路基板が熱結合部から離れる方向に変形するのを抑制することができる。このため、本開示の電動作業機は、回路基板の変形によって発生する発熱素子と熱結合部との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機の駆動による回路基板の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0012】
電動作業機では、ケースは、回路基板の一方の面である裏面と対向する底部と、回路基板の側縁を囲む側壁部とを備え、少なくとも1つの弾性部材は、回路基板の側縁とケースの側壁部との間に設置されてもよい。そして、少なくとも1つの弾性部材とケースの側壁部との間、および、少なくとも1つの弾性部材と回路基板の側縁との間の少なくとも一方に充填材が充填されてもよい。
【0013】
電動作業機では、ケースは、回路基板の一方の面である裏面と対向する底部と、回路基板の側縁を囲む側壁部とを備え、少なくとも1つの弾性部材は、回路基板の裏面とケースの底部との間に設置されてもよい。
【0014】
電動作業機では、少なくとも1つの弾性部材は接着剤であってもよいし、スポンジであってもよい。
電動作業機は、ブロアであってもよい。ブロアは、長時間に亘って連続してモータを駆動させて使用されることが多く、モータの駆動によって回路基板の温度が上昇し易い。このため、本開示の電動作業機は、ブロアに適用するのが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電動作業機の斜視図である。
図2】電動作業機の電気的構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態の制御ユニットの斜視図である。
図4】第1実施形態の制御ユニットの組み立て手順を示す図である。
図5】第1実施形態の制御ユニットの断面図である。
図6】回路基板が変形する原因を説明する図である。
図7】第2実施形態の制御ユニットの断面図である。
図8】第3実施形態の制御ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下に本開示の例示的な第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の電動作業機1は、図1に示すように、ゴミおよび埃などを吹き飛ばすために使用されるブロワである。
【0017】
電動作業機1は、本体部2と、パイプ3とを備える。本体部2は、図示しないファンを内蔵し、ファンを回転させることにより空気を吐出する。パイプ3は、本体部2から吐出された空気を、パイプ3の先端に形成された吐出口3aから排出する。
【0018】
本体部2における上側には、電動作業機1の使用者により把持されるハンドル4が配置されている。ハンドル4は、パイプ3が本体部2から突出する方向を前方とした場合に、本体部2の上方で、本体部2の前方から後方にかけて、電動作業機1を把持するための空間を本体部2との間に形成するように架け渡されている。
【0019】
ハンドル4には、トリガスイッチ5が取り付けられている。電動作業機1の使用者は、ハンドル4を握った状態で、トリガスイッチ5に対して引き操作および戻し操作をすることができる。本体部2の後端には、2個のバッテリパック6が、着脱自在に装着される。
【0020】
本体部2に2個のバッテリパック6が装着されている状態で、トリガスイッチ5が引き操作されると、本体部2内のファンが回転し、吐出口3aから空気が排出される。
図2に示すように、電動作業機1は、制御ユニット10を備える。
【0021】
制御ユニット10は、バッテリパック6内のバッテリ7から電力供給を受けて、ファンを回転させるモータ11を駆動制御する。本実施形態では、モータ11は、3相ブラシレスモータである。2個のバッテリパック6内の各バッテリ7は互いに直列に接続される。
【0022】
制御ユニット10は、駆動回路21、ゲート回路22、制御回路23およびレギュレータ24を備える。
駆動回路21は、バッテリ7から電力供給を受けて、モータ11の各相巻線に電流を流すための回路である。本実施形態では、駆動回路21は、6つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6を備える3相フルブリッジ回路として構成されている。本実施形態では、スイッチング素子Q1~Q6はMOSFETである。
【0023】
駆動回路21において、スイッチング素子Q1~Q3は、モータ11の各端子U,V,Wと、バッテリ7の正極側に接続された電源ラインとの間に設けられている。スイッチング素子Q4~Q6は、モータ11の各端子U,V,Wと、バッテリ7の負極側に接続されたグランドラインとの間に設けられている。
【0024】
ゲート回路22は、制御回路23から出力された制御信号に従い、駆動回路21内の各スイッチング素子Q1~Q6をオン/オフさせることで、モータ11の各相巻線に電流を流し、モータ11を回転させる回路である。
【0025】
制御回路23は、CPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを含んでいる。マイクロコンピュータの各種機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPUが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御回路23は複数のマイコンを備えてもよい。
【0026】
レギュレータ24は、バッテリ7から電力供給を受けて、制御回路23を動作させるための電源電圧Vccを生成し、制御ユニット10の内部回路に電源供給を行う。
制御ユニット10は、更に、スイッチング素子Q7およびブートストラップ26を備える。スイッチング素子Q7は、上記の電源ラインにおけるバッテリ7と駆動回路21との間に設けられている。実施形態では、スイッチング素子Q7はMOSFETである。そして、スイッチング素子Q7のゲートは、ブートストラップ26を介して制御回路23に接続される。スイッチング素子Q7は、制御ユニット10を保護するために設けられた素子であり、通常時はオン状態を維持している。
図3に示すように、制御ユニット10は、上記の駆動回路21、ゲート回路22、制御回路23およびレギュレータ24を搭載する回路基板31と、回路基板31を収容する金属製のケース32とを備える。本実施形態では、ケース32は、アルミニウムによって形成されている。ケース32は、例えば鉄または銅等の金属によって形成されてもよい。
【0027】
図4に示すように、回路基板31は、4つの側縁31a,31b,31c,31dを有する略長方形状に形成されている。回路基板31の側縁31a~31dのうち、側縁31a,31cは、長方形の長辺に相当する側縁であり、側縁31b,31dは、長方形の短辺に相当する側縁である。
【0028】
回路基板31の裏面31eにおいて、側縁31bの付近に設定されたスイッチング素子配置領域SRには、スイッチング素子Q1~Q6のそれぞれを構成する6個のFETチップ41と、スイッチング素子Q7を構成する1個のFETチップ42とが実装される。
【0029】
ケース32は、回路基板31がケース32に収容された場合に回路基板31の側縁31a,31b,31c,31dをそれぞれ囲む側壁部32a,32b,32c,32dと、回路基板31がケース32に収容された場合に回路基板31の裏面31eと対向する底部32eとを備える。側壁部32aは、側縁31aの外側となる側壁部であり、側壁部32bは、側縁31bの外側となる側壁部であり、側壁部32cは、側縁31cの外側となる側壁部であり、側壁部32dは、側縁31dの外側となる側壁部である。
【0030】
ケース32の底部32eには、回路基板31がケース32に収容された場合において回路基板31のスイッチング素子配置領域SRと対向する領域に、スイッチング素子配置領域SRのFETチップ41,42と熱伝導可能な熱結合部51が形成されている。図4において斜線でハッチングが施されている部分が熱結合部51である。
【0031】
熱結合部51を形成する面は、底部32eにおいて熱結合部51以外を形成する面より高くなっている。すなわち、熱結合部51と熱結合部51以外との境界線51aにおいて、熱結合部51の方が高くなる段差が形成されている。
【0032】
ケース32の熱結合部51において、回路基板31がケース32に収容された場合に回路基板31と対向する面とは反対側の面には、放熱フィン52が設けられている。放熱フィン52は、回路基板31と対向する面とは反対側の面から突出する複数の突条52aを備える。
【0033】
また制御ユニット10は、放熱絶縁シート33を備える。放熱絶縁シート33は、電気絶縁性および熱伝導性が高い材料(例えば、シリコーン)で薄膜状に形成される。放熱絶縁シート33は、熱結合部51と接触した状態で熱結合部51上に配置される。
【0034】
そして回路基板31は、その裏面31eがケース32の底部32eと対向するようにしてケース32に収容され、その後、複数のネジ34によってケース32内に固定される。これにより、FETチップ41,42は放熱絶縁シート33と接触した状態でケース32内に固定される。したがって、FETチップ41,42は、放熱絶縁シート33を介して熱結合部51と熱結合した状態となる。
【0035】
また制御ユニット10は、図3に示すように、接着剤35を備える。本実施形態では、接着剤35は、信越化学工業株式会社製のKE-4890-Wである。なお、接着剤35としては、例えば、熱可塑性樹脂系またはエラストマー系の接着剤が挙げられる。
接着剤35は、図3および図5に示すように、スイッチング素子配置領域SRのFETチップ41,42を挟むようにして、回路基板31の側縁31aとケース32の側壁部32aとの間の隙間と、回路基板31の側縁31cとケース32の側壁部32cとの間の隙間とに充填される。
【0036】
接着剤35が充填された後に、図5に示すように、回路基板31の裏面31eとケース32の底部32eとの間の隙間を埋めるように、且つ、回路基板31の表面31fを覆うようにしてケース32内に充填材36が充填される。本実施形態では、充填材36はウレタン樹脂である。
【0037】
このように構成された電動作業機1は、モータ11と、回路基板31と、ケース32と、接着剤35と、充填材36とを備える。
回路基板31は、モータ11が駆動することに起因して熱を発するFETチップ41を実装する。ケース32は、FETチップ41と熱結合した金属製の熱結合部51を備え、回路基板31を内部に収容する。接着剤35は、回路基板31とケース32との間に設置されて、ケース32内に収容される。充填材36は、ケース32内に充填されて、回路基板31および接着剤35をケース32内に固定する。
【0038】
このように構成された電動作業機1では、FETチップ41における発熱によって充填材36が高温になって膨張しても、図5の矢印AL1,AL2で示すように、ケース32内に設置された接着剤35が回路基板31よりも先に変形して充填材36の膨張力を吸収する。これにより、電動作業機1は、充填材36の膨張によって回路基板31に掛かる力を抑制し、充填材36の膨張によって回路基板31が変形するのを抑制することができる。このため、電動作業機1は、回路基板31の変形によって発生するFETチップ41と熱結合部51との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機1の駆動による回路基板31の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0039】
以下に、スイッチング素子Q1~Q6(すなわち、FETチップ41)の発熱によって制御ユニット10の放熱性能が低下する理由を説明する。
まず、スイッチング素子Q1~Q6のオン/オフによってモータ11を駆動させることによって、MOSFETで構成されているスイッチング素子Q1~Q6が発熱する。
【0040】
スイッチング素子Q1~Q6の発熱によってスイッチング素子Q1~Q6が高温になると充填材36が膨張する。ケース32と回路基板31の間に充填されている充填材36は、図6に示すように、その周囲および下面がケース32に囲まれ、上面が回路基板31に囲まれている。このため、充填材36は、図6の矢印AL11,AL12,AL13,AL14,AL15,AL16,AL17,AL18で示すように、回路基板31とケース32に応力を与える。
【0041】
ケース32よりも回路基板31の方が強度が低いため、回路基板31が充填材36の膨張(すなわち、応力)に負けて変形し、図6の矢印AL21で示すように、回路基板31に実装されているFETチップ41が放熱絶縁シート33から引き剥がされる。これにより、FETチップ41で発生する熱を放出するための放熱経路が遮断される。
【0042】
その後、制御ユニット10が冷却されると充填材36は元の形状に戻る。しかし、回路基板31は変形したまま元に戻らず、放熱経路が遮断されたままになる。このため、制御ユニット10を冷却しても制御ユニット10の放熱性能は回復しない。
【0043】
ケース32は、回路基板31の裏面31eと対向する底部32eと、回路基板31の側縁31a,31b,31c,31dをそれぞれ囲む側壁部32a,32b,32c,32dと備える。そして接着剤35は、FETチップ41の付近において、回路基板31の側縁31a,31cとケース32の側壁部32a,32cとの間の隙間を埋めるように設置される。これにより、電動作業機1は、FETチップ41の付近における回路基板31の変形を抑制することができる。このため、電動作業機1は、回路基板31の変形によって発生するFETチップ41と熱結合部51との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機1の駆動による回路基板31の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0044】
また回路基板31は、矩形状に形成されており、矩形を形成する4つの側縁31a,31b,31c,31dを備える。そして、回路基板31の側縁31aとケース32の側壁部32aとの間に設置される接着剤35と、回路基板31の側縁31cとケース32の側壁部32cとの間に設置される接着剤35とは互いに対向するように配置される。さらにFETチップ41は、回路基板31の側縁31aとケース32の側壁部32aとの間に設置される接着剤35と、回路基板31の側縁31cとケース32の側壁部32cとの間に設置される接着剤35との間に配置される。
【0045】
これにより、電動作業機1は、FETチップ41の付近における2個所で回路基板31の変形を抑制することができる。このため、電動作業機1は、回路基板31の変形によって発生するFETチップ41と熱結合部51との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機1の駆動による回路基板31の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0046】
また接着剤35は、回路基板31の表面31fより底部32e側にも設置されている。これにより、電動作業機1は、回路基板31とケース32の底部32eとの間に存在する充填材36の膨張によって回路基板31が熱結合部51から離れる方向に変形するのを抑制することができる。このため、電動作業機1は、回路基板31の変形によって発生するFETチップ41と熱結合部51との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機1の駆動による回路基板31の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0047】
以上説明した実施形態において、熱結合部51は放熱部の一例に相当し、接着剤35は本開示における弾性部材の一例に相当し、FETチップ41は本開示における発熱素子の一例に相当する。
また、側縁31aは本開示における第1側縁の一例に相当し、側縁31cは本開示における第2側縁の一例に相当する。
【0048】
また、回路基板31の側縁31aとケース32の側壁部32aとの間に設置される接着剤35は本開示における第1弾性部材の一例に相当し、回路基板31の側縁31cとケース32の側壁部32cとの間に設置される接着剤35は本開示における第2弾性部材の一例に相当する。
【0049】
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0050】
第2実施形態の電動作業機1は、図7に示すように、接着剤35の代わりに、スポンジ37を備える点が第1実施形態と異なる。スポンジ37としては、例えば、ポリウレタン系、発泡ゴム系、シリコン系またはポリエチレン系のスポンジが挙げられる。
スポンジ37は、スイッチング素子配置領域SRのFETチップ41,42を挟むようにして、回路基板31の側縁31aとケース32の側壁部32aとの間と、回路基板31の側縁31cとケース32の側壁部32cとの間とに配置される。
【0051】
但し、回路基板31の側縁31aとスポンジ37との間の隙間と、ケース32の側壁部32aとスポンジ37との間の隙間とには、充填材36が充填される。同様に、回路基板31の側縁31cとスポンジ37との間の隙間と、ケース32の側壁部32cとスポンジ37との間の隙間とには、充填材36が充填される。
【0052】
このように構成された電動作業機1は、モータ11と、回路基板31と、ケース32と、スポンジ37と、充填材36とを備える。
そしてスポンジ37は、回路基板31の側縁31a,31cとケース32の側壁部32a,32cとの間に設置される。また、スポンジ37とケース32の側壁部32a,32cとの間、および、スポンジ37と回路基板31の側縁31a,31cとの間に充填材36が充填されている。
【0053】
このように構成された電動作業機1では、FETチップ41における発熱によって充填材36が高温になって膨張しても、ケース32内に設置されたスポンジ37が回路基板31よりも先に変形して充填材36の膨張力を吸収する。これにより、電動作業機1は、充填材36の膨張によって回路基板31に掛かる力を抑制し、充填材36の膨張によって回路基板31が変形するのを抑制することができる。このため、電動作業機1は、回路基板31の変形によって発生するFETチップ41と熱結合部51との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機1の駆動による回路基板31の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0054】
以上説明した実施形態において、スポンジ37は本開示における弾性部材の一例に相当する。
[第3実施形態]
以下に本開示の第3実施形態を図面とともに説明する。なお第3実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0055】
第3実施形態の電動作業機1は、図8に示すように、接着剤35の代わりに、スポンジ38を備える点が第1実施形態と異なる。
スポンジ38は、回路基板31の裏面31eにおけるスイッチング素子配置領域SR以外の領域と対向するようにして、回路基板31とケース32の底部32eとの間に配置される。
【0056】
このように構成された電動作業機1は、モータ11と、回路基板31と、ケース32と、スポンジ38と、充填材36とを備える。
そしてスポンジ38は、回路基板31の裏面31eとケース32の底部32eとの間に設置される。
【0057】
このように構成された電動作業機1では、FETチップ41における発熱によって充填材36が高温になって膨張しても、ケース32内に設置されたスポンジ38が回路基板31よりも先に変形して充填材36の膨張力を吸収する。これにより、電動作業機1は、充填材36の膨張によって回路基板31に掛かる力を抑制し、充填材36の膨張によって回路基板31が変形するのを抑制することができる。このため、電動作業機1は、回路基板31の変形によって発生するFETチップ41と熱結合部51との熱結合による放熱性能の低下を抑制し、電動作業機1の駆動による回路基板31の温度上昇のさらなる増加を抑制することができる。
【0058】
以上説明した実施形態において、スポンジ38は本開示における弾性部材の一例に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0059】
例えば上記実施形態では、ケース32がアルミニウムによって形成されている形態を示した。しかし、ケース32は、熱結合部51が放熱素材で形成されていれば、熱結合部51以外の部分が異なる素材の材料(例えば、樹脂)で形成されてもよい。
また上記実施形態では、弾性部材が接着剤またはスポンジである形態を示した。しかし、弾性部材は、シーリング材(例えば、シリコン系)であってもよいし、放熱シート(例えば、シリコン系またはアクリル系)であってもよい。
また上記実施形態では、FETチップ41,42と熱結合部51とが熱結合している形態を示した。しかし、発熱素子を含むICチップが熱結合していてもよい。
【0060】
本開示の技術は、例えば電動ハンマ、電動ハンマドリル、電動ドリル、電動ドライバ、電動レンチ、電動グラインダ、電動マルノコ、電動レシプロソー、電動ジグソー、電動カッター、電動チェンソー、電動カンナ、電動釘打ち機(鋲打ち機を含む)、電動ヘッジトリマ、電動芝刈り機、電動芝生バリカン、電動刈払機、電動クリーナ、電動ブロア、電動噴霧器、電動散布機、電動集塵機といった各種電動作業機に適用することができる。
【0061】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…電動作業機、11…モータ、31…回路基板、32…ケース、35…接着剤、36…充填材、37,38…スポンジ、41…FETチップ、51…熱結合部
図1
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図8