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  • 特許-VEGFR-Fc融合タンパク質製剤 図1
  • 特許-VEGFR-Fc融合タンパク質製剤 図2A
  • 特許-VEGFR-Fc融合タンパク質製剤 図2B
  • 特許-VEGFR-Fc融合タンパク質製剤 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】VEGFR-Fc融合タンパク質製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240813BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240813BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240813BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240813BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240813BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240813BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240813BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240813BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240813BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240813BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20240813BHJP
   C07K 14/715 20060101ALN20240813BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K39/395 W
A61K9/08
A61K47/68
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/34
A61P27/02
A61P43/00 111
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/715
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020527828
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 US2018061644
(87)【国際公開番号】W WO2019099921
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】62/587,733
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/618,904
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェクスラー-コーエン,ヤエル
(72)【発明者】
【氏名】コーシック,ラーフル・ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】カラハン,ウィリアム・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】パダラ,サイ・チャクラーダー
(72)【発明者】
【氏名】フェシンマイヤー,ロバート・マシュー
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0323242(US,A1)
【文献】国際公開第2014/039682(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208989(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/066554(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/129685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、
b)2つの異なる糖と
を含み、緩衝剤を含まない、硝子体内投与のための液体製剤であって、第一の糖は、スクロースであり、及び第二の糖は、トレハロースであり、並びに、前記融合タンパク質は、アフリベルセプトである、製剤。
【請求項2】
pHは、5.0~7.0である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記アフリベルセプトの濃度は、約40mg/mlである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記第一の糖及び前記第二の糖の濃度は、それぞれ2%~10%(w/v)である、請求項1~のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記第一の糖及び前記第二の糖の濃度は、それぞれ約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%又は約5%(w/v)である、請求項に記載の製剤。
【請求項6】
前記第一及び第二の糖の総濃度は、約5%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%又は約10%(w/v)である、請求項に記載の製剤。
【請求項7】
界面活性剤及び/又は等張化剤をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/587,733号明細書及び2018年1月18日に出願された米国仮特許出願第62/618,904号明細書の利益を主張し、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子フォーマットの配列表と共に出願されている。配列表は、2018年11月15日に作成されたA-2208-WO-PCT_SeqList_ST25.txtという名称のファイルとして提供され、サイズが7.78kbである。電子フォーマットの配列表における情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、VEGFR-Fc融合タンパク質製剤並びにこのような製剤、例えば緩衝剤を含まない製剤又は製剤が緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する、緩衝剤を含む製剤を製造及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、VEGF-Aとも称され、新しい血管の成長を促進し、VEGFR-1及びVEGFR-2に結合するシグナルタンパク質である。VEGFは、多くの腫瘍で上昇することが分かっており、血管新生における役割を有する。VEGFは、滲出加齢黄斑変性(AMD)の有意な態様である、脈絡膜血管新生(CNV)などの眼内血管新生において役割を有することも分かっている。
【0005】
VEGF阻害剤、例えば抗VEGF抗体及び断片並びにデコイ受容体又はキメラ受容体は、様々な病態、例えば癌及び眼障害などを処置するための治療薬として開発されてきた。例えば、抗VEGF抗体及び抗VEGF Fabは、両方ともそれぞれベバシズマブ及びラニビズマブとして市販されている。また、アフリベルセプト、VEGFR-Fc融合タンパク質又は「VEGF-trap」は、市販されている。
【0006】
アフリベルセプトは、VEGFR-1のIgドメイン2及びVEGFR-2のIgドメイン3に融合したIgG1 Fcドメインで構成される融合タンパク質である。アフリベルセプトは、滲出型AMDを含む様々な眼病態処置のためのEylea(登録商標)(Regeneron,Tarrytown,NY)として販売されており、硝子体内投与のために製剤化される。融合タンパク質は、特定の型の癌処置のためのZaltrap(登録商標)(ziv-アフリベルセプト)(Regeneron,Tarrytown,NY)としても販売されており、静脈内投与のために製剤化される。
【0007】
眼科用製剤、特に硝子体内投与は、他の投与経路と比較して更なる安全性の懸念を有するため、より具体的な必要条件を有し得る。例えば、炎症又は他の有害反応による対象への影響が深刻な場合があるため、より具体的な必要条件が必要になる場合がある。例えば、硝子体内投与用製剤は、より狭い範囲の許容可能な浸透圧を必要とする場合がある。硝子体内投与用製剤は、より低い閾値の許容可能な粒子化を必要とする場合がある。例えば、米国特許第<789>号明細書及び米国特許第<788>号明細書を参照されたい。向上した安定性を提供する製剤を有することも有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第<789>号明細書
【文献】米国特許第<788>号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、新規のタンパク質製剤の必要性を満たす製剤、例えば安定なVEGFR-Fc融合製剤又は硝子体内製剤を提供し、これは、凝集が少ないか又は関連する利点を有する。
【0010】
本明細書では、タンパク質製剤並びにこのような製剤を製造及び使用する方法が提供される。いくつかの実施形態において、製剤は、硝子体内投与に好適である。いくつかの実施形態において、タンパク質は、VEGFR-Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、タンパク質製剤は、緩衝剤フリーの製剤である。一実施形態において、製剤は、緩衝剤を含み、且つ緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する。一実施形態において、製剤は、緩衝剤を含まない。
【0011】
一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含む。したがって、いくつかの実施形態において、製剤は、緩衝剤を含まないか、又は残留量が製剤中の緩衝能を欠くような緩衝剤の残留量を含む。製剤は、4.0~8.5のpHを有し得る。いくつかの実施形態において、製剤は、5.0~7.0のpH又は約5.0、約5.2、約5.5、約5.8、約6.0、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5又は約6.8であるpHを有し得る。いくつかの実施形態において、pHは、5.0±0.3、5.2±0.3、5.5±0.3、5.8±0.3、6.0±0.3、6.1±0.3、6.2±0.3、6.3±0.3、6.4±0.3、6.5±0.3又は6.8±0.3である。
【0012】
別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、安定剤と、緩衝剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含み、製剤は、緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHである。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、アセテートである。いくつかの実施形態において、アセテート濃度は、0.1mM~50mM、例えば0.5mM~50mM、1mM~50mM又は2.5mM~40mMなどである。一実施形態において、アセテート濃度は、約0.5mM、約1mM、約2.5mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM又は約40mMである。製剤は、アセテートの緩衝能の範囲外のpH、例えば5.8超のpH、5.8~7.0のpH又は約6.0、約6.1又は約6.2であるpHなどを有し得る。いくつかの実施形態において、pHは、6.0±0.3、6.1±0.3又は6.2±0.3である。
【0013】
いくつかの実施形態において、製剤は、アミノ酸又は糖である安定剤を含む。一実施形態において、製剤は、2つの異なる安定剤、例えば2つの異なる糖を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、製剤は、界面活性剤、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80又はプルロニック(Pluronic)(登録商標)F68などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、界面活性剤を含まない。
【0015】
いくつかの実施形態において、製剤は、等張化剤、例えば塩化ナトリウム又は塩化カリウムなどを含む。他の実施形態において、製剤は、等張化剤を含まない。
【0016】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、アフリベルセプトである。いくつかの実施形態において、アフリベルセプトの濃度は、約40mg/mlである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に記載されている製剤に関するSE-UHPLCによって示されるとおり、アセテート濃度とアフリベルセプト凝集レベルとの間の相関関係を示す。
図2】目標pHと、バッファー交換前のpH(開始pH)及びバッファー交換後のpHの差との間の相関関係を示す。(図2Aは、目標pHとの相関関係を示す。図2Bは、滴定pHとの相関関係を示す)。
図3】実施例3に記載されているように、塩濃度と、SEC-UHPLCのパーセントメインピークとの間の相関関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、VEGFR-Fc融合タンパク質製剤並びにこのような製剤を製造及び使用する方法を提供する。いくつかの実施形態において、製剤は、緩衝剤フリーの製剤である。いくつかの実施形態において、製剤は、緩衝剤を含み、及び製剤は、緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、緩衝剤を含まない。いくつかの実施形態において、製剤は、残留量が製剤中の緩衝能を欠くような緩衝剤の残留量を含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、緩衝剤を含まない製剤は、安定したpHを維持することができる。例えば、約40℃で1又は2週間保存した後、製剤は、約0.1又は約0.2のpH単位内であるpHを有する。いくつかの実施形態において、VEGFR-Fc融合タンパク質は、対応する緩衝剤を含む製剤と比較して向上した安定性を有する。VEGFR-Fc融合タンパク質の安定性は、凝集レベルの低減、例えばサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SEC-UHPLC)などによって示され得る。VEGFR-Fc融合タンパク質は、アフリベルセプトであり得る。いくつかの実施形態において、タンパク質の濃度は、約40mg/mlである。
【0020】
いくつかの実施形態において、緩衝剤を含み、且つ緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する製剤は、安定したpHを維持することができる。例えば、約40℃で1又は2週間保存した後、製剤は、約0.1又は約0.2のpH単位内であるpHを有する。いくつかの実施形態において、VEGFR-Fc融合タンパク質は、緩衝剤の緩衝能の範囲内のpHを有する対応する緩衝剤(同じ又は異なる緩衝剤)を含む製剤と比較して向上した安定性を有する。VEGFR-Fc融合タンパク質の安定性は、凝集レベルの低減、例えばサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SEC-UHPLC)などによって示され得る。VEGFR-Fc融合タンパク質は、アフリベルセプトであり得る。いくつかの実施形態において、タンパク質の濃度は、約40mg/mlである。
【0021】
一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含む。このような実施形態において、製剤は、緩衝剤を含まない。いくつかの実施形態において、製剤は、残留量が製剤中の緩衝能を欠くような緩衝剤の残留量を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、安定したpHを維持することができる。例えば、約40℃で1又は2週間保存した後、製剤は、約0.1又は約0.2のpH単位内であるpHを有する。いくつかの実施形態において、VEGFR-Fc融合タンパク質は、同じ製剤であるが、緩衝剤を含む製剤と比較して向上した安定性を有する。タンパク質の安定性は、凝集レベルの低減、例えばSEC-UHPLCなどによって示され得る。
【0022】
別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、緩衝剤と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含み、製剤は、緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、安定したpHを維持することができる。例えば、約40℃で1又は2週間保存した後、製剤は、約0.1又は約0.2のpH単位内であるpHを有する。いくつかの実施形態において、VEGFR-Fc融合タンパク質は、同じ製剤であるが、緩衝剤を含む製剤と比較して向上した安定性を有する。タンパク質の安定性は、凝集レベルの低減、例えばSEC-UHPLCなどによって示され得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含み、pHは、5.0~7.0、5.5~6.5又は5.5~5.6である。いくつかの実施形態において、pHは、約7.0、約6.9、約6.8、約6.7、約6.6、約6.5、約6.4、約6.3、6.2、約6.1、約6.0、約5.9、約5.8、約5.7、約5.6、約5.5、約5.4、約5.3、約5.2、約5.1又は約5.0である。いくつかの実施形態において、pHは、約6.2である。いくつかの実施形態において、pHは、7.0±0.3、6.9±0.3、6.8±0.3、6.7±0.3、6.6±0.3、6.5±0.3、6.4±0.3、6.3±0.3、6.2±0.3、6.1±0.3、6.0±0.3、5.9±0.3、5.8±0.3、5.7±0.3、5.6±0.3、5.5±0.3、5.4±0.3、5.3±0.3、5.2±0.3、5.1±0.3又は5.0±0.3である。いくつかの実施形態において、pHは、6.2±0.3である。
【0024】
別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、緩衝剤と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含み、製剤は、緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する。緩衝剤は、典型的には、そのpKa値を中心とした±1pH単位の範囲の緩衝能を有する。一実施形態において、緩衝剤を含む製剤は、緩衝剤のpKaから1pH単位よりも大きいpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、緩衝剤のpKaから少なくとも1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9又は2.0pH単位であるpHを有する。いくつかの実施形態において、製剤は、緩衝剤のpKaから約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9又は約2.0pH単位であるpHを有する。一実施形態において、製剤は、緩衝剤のpKaから約1.4pH単位であるpHを有する。
【0025】
一実施形態において、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、緩衝剤と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含む製剤であって、緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有する製剤は、緩衝剤としてアセテートを含む。アセテートのpKa値は、4.8であり、したがって、その緩衝能は、3.8~5.8のpH範囲である。したがって、一実施形態において、製剤は、3.8未満又は5.8超のpHを有する。一実施形態において、製剤のpHは、5.8超である。一実施形態において、pHは、4.0~8.5、5.0~8.5、5.8~8.0、5.8~7.5、5.8~7.0、5.9~7.0、6.0~7.0、6.0~6.8、6.0~6.5又は6.1~6.5である。いくつかの実施形態において、pHは、約7.0、約6.9、約6.8、約6.7、約6.6、約6.5、約6.4、約6.3、約6.2、約6.1、約6.0又は約5.9である。いくつかの実施形態において、pHは、約6.2である。いくつかの実施形態において、pHは、8.5±0.3、8.4±0.3、8.3±0.3、8.2±0.3、8.1±0.3、8.0±0.3、7.9±0.3、7.8±0.3、7.7±0.3、7.6±0.3、7.5±0.3、7.4±0.3、7.3±0.3、7.2±0.3、7.1±0.3、7.0±0.3、6.9±0.3、6.8±0.3、6.7±0.3、6.6±0.3、6.5±0.3、6.4±0.3、6.3±0.3、6.2±0.3、6.1±0.3、6.0±0.3、5.9±0.3又は5.8±0.3である。いくつかの実施形態において、pHは、6.2±03である。
【0026】
一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質と、アセテートと、安定剤と、任意選択的に界面活性剤及び/又は等張化剤とを含み、且つアセテートの緩衝能の範囲外のpH(例えば、5.8超、例えば約6.2など)を有し、アセテートは、非塩形態のアセテート由来である。一実施形態において、アセテートは、塩形態のアセテート由来である。緩衝剤は、アセテート塩又は酢酸、例えば氷酢酸など由来のアセテートであり得る。一実施形態において、アセテートは、酢酸ナトリウム由来である。一実施形態において、アセテート又はアセテートバッファーの濃度は、0.1mM~50mM、0.5mM~50mM、1mM~50mM、1mM~40mM、2.5mM~40mM、1mM~30mM、1mM~20mM、1mM~10mM又は1mM~5mMである。一実施形態において、アセテート又はアセテートバッファーの濃度は、約0.5mM、約1mM、約2.5mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM又は約50mMである。
【0027】
いくつかの実施形態において、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む1~300mg/mlの融合タンパク質は、本明細書で開示される製剤中に存在する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の製剤は、1~50mg/ml、1~300mg/ml、1~250mg/ml、1~200mg/ml、1~100mg/mlの融合タンパク質を含む。一実施形態において、製剤は、10~50mg/mlの融合タンパク質を含む。一実施形態において、製剤は、300mg/ml未満、250mg/ml未満、200mg/ml未満、100mg/ml未満、50mg/ml未満、45mg/ml未満、40mg/ml未満、30mg/ml未満又は25mg/ml未満の融合タンパク質を含む。一実施形態において、製剤は、約300mg/ml、約250mg/ml、約200mg/ml、約100mg/ml、約50mg/ml、約45mg m/、約40mg/ml、約30mg/ml又は約25mg/mlの融合タンパク質を含む。一実施形態において、製剤は、約40mg/mlの融合タンパク質を含む。
【0028】
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、VEGFR1のドメイン、VEGFR2のドメイン又はこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、VEGFR1のドメイン及びVEGFR2のドメインを含む。一実施形態において、融合タンパク質は、VEGFR1のIgドメイン2及びVEGFR2のIgドメイン3を含む。一実施形態において、融合タンパク質は、VEGFR1のIgドメイン2、VEGFR2のIgドメイン3及びIgG1のFcドメインを含む。一実施形態において、融合タンパク質は、VEGF Trapである。別の実施形態において、融合タンパク質は、アフリベルセプトである。別の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態において、製剤は、約40mg/mlのアフリベルセプトを含む。一実施形態において、製剤は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む約40mg/mlの融合タンパク質を含む。一実施形態において、製剤は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む約40mg/mlの融合タンパク質及び配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む融合タンパク質を含む。
【0029】
【化1】
【0030】
【化2】
【0031】
一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、緩衝剤(例えば、アセテート、例えば2.5mM~40mMのアセテート)と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤とを含み、pHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外(例えば、緩衝剤がアセテートである場合、5.8超、例えば約6.2など)であり、安定剤は、アミノ酸又は糖である。一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、安定剤と、任意選択的に界面活性剤とを含み、安定剤は、アミノ酸又は糖である。
【0032】
一実施形態において、安定剤は、アミノ酸である。一実施形態において、アミノ酸は、プロリンである。別の実施形態において、アミノ酸は、グリシンである。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、塩基性アミノ酸、例えばアルギニン又はリジンなどである。他の実施形態において、アミノ酸は、酸性アミノ酸、例えばアスパラギン酸などである。更に他の実施形態において、アミノ酸は、疎水性アミノ酸、例えばアラニンなどである。いくつかの実施形態において、製剤は、2つの異なるアミノ酸を含む。一実施形態において、安定剤は、糖である。糖は、スクロース、ソルビトール、グリセロール、トレハロース(例えば、α,α-トレハロース又はトレハロース二水和物)、マンニトール、デキストロース、デキストラン、グルコース又はこれらの任意の組み合わせであり得る。一実施形態において、安定剤は、スクロースである。別の実施形態において、安定剤は、トレハロースである。別の実施形態において、安定剤は、シクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)などである。更に別の実施形態において、製剤は、2つの異なる糖、例えばスクロース及びトレハロースなどを含む。別の実施形態において、安定剤は、シクロデキストリンである。更に別の実施形態において、製剤は、1つ以上の糖及び1つ以上のアミノ酸を含む。
【0033】
安定剤の濃度は、1mM~300mM、10mM~300mM、100mM~300mM、200mM~300mM及び200mM~280mMであり得る。一実施形態において、安定剤の濃度は、約200mM、例えば約200mMのプロリンである。別の実施形態において、安定剤の濃度は、約280mM、例えば約280mMのグリシンである。
【0034】
更に他の実施形態において、製剤は、0~50%(w/v)の安定剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、0~20%(w/v)の安定剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、0~10%(w/v)、5~10%(w/v)又は2~10%(w/v)の安定剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%又は約10%(w/v)の安定剤、例えば糖などを含む。糖は、スクロース又はトレハロースであり得る。一実施形態において、製剤は、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%又は約10%(w/v)のスクロースを含む。一実施形態において、本製剤は、約5%のスクロースを含む。更に別の実施形態において、製剤は、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%又は約10%(w/v)のトレハロースを含む。一実施形態において、製剤は、約3%(w/v)のトレハロースを含む。一実施形態において、製剤は、約3.5%(w/v)のトレハロースを含む。一実施形態において、製剤は、約4%(w/v)のトレハロースを含む。一実施形態において、製剤は、約4.5%(w/v)のトレハロースを含む。一実施形態において、製剤は、約5%(w/v)のトレハロースを含む。別の実施形態において、製剤は、約6.5%(w/v)のトレハロースを含む。
【0035】
一実施形態において、製剤は、2つの異なる糖を含む。一実施形態において、第1の糖及び第2の糖の濃度は、それぞれ0~10%(w/v)、5~10%(w/v)又は2~10%(w/v)である。一実施形態において、第1の糖及び第2の糖の総濃度は、0~10%(w/v)、5~10%(w/v)又は2~10%(w/v)である。別の実施形態において、第1の糖の濃度は、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%又は約5%(w/v)である。別の実施形態において、第2の糖の濃度は、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、4%又は約5%(w/v)である。一実施形態において、第1の糖は、スクロースであり、及び第2の糖は、トレハロースである。更に別の実施形態において、製剤は、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%又は約10%(w/v)のスクロース及びトレハロース、例えば約1%(w/v)のスクロース及び約7%(w/v)のトレハロース、約2%(w/v)のスクロース及び約6%(w/v)のトレハロース、約3%(w/v)のスクロース及び約5%(w/v)のトレハロース、約4%(w/v)のスクロース及び約4%(w/v)のトレハロース、約5%(w/v)のスクロース及び約3%(w/v)のトレハロース、約6%(w/v)のスクロース及び約2%(w/v)のトレハロース又は約7%(w/v)のスクロース及び約1%(w/v)のトレハロースを含む。別の実施形態において、製剤は、約5%(w/v)のスクロース及び約3.5%(w/v)のトレハロース、約5%(w/v)のスクロース及び約4%(w/v)のトレハロース、約5%(w/v)のスクロース及び約2.5%(w/v)のトレハロース、約5%(w/v)のスクロース及び約2%(w/v)のトレハロース、約5%(w/v)のスクロース及び約1.5%(w/v)のトレハロース又は約4%(w/v)のスクロース及び約2.5%(w/v)のトレハロースを含む。
【0036】
一実施形態において、製剤は、界面活性剤を含まない。別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、緩衝剤(例えば、アセテート、例えば2.5mM~40mMのアセテート)と、安定剤(例えば、スクロース及び/又はトレハロース)と、界面活性剤とを含み、pHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外(例えば、緩衝剤がアセテートである場合、5.8超、例えば約6.2など)である。
【0037】
一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、安定剤(例えば、スクロース及び/又はトレハロース)と、界面活性剤とを含む。界面活性剤は、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、グルコシドアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル、グリセロールアルキルエステル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、ポロキサマー、ポリエトキシル化獣脂アミン(POEA)又はこれらの組み合わせであり得る。一実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベートである。一実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20である。別の実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート80である。更に別の実施形態において、界面活性剤は、ポロキサマー、例えばポロキサマー188などである。一実施形態において、界面活性剤は、プルロニック(登録商標)F-68である。いくつかの実施形態において、製剤は、0.001~3%(w/v)、0.001~2%(w/v)、0.001~1%(w/v)、0.001~0.5%(w/v)又は0.01%~0.1%(w/v)の界面活性剤を含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.03%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート80などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.02%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート20などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.01%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート80などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.005%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート80などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.03%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート20などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.02%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート20などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.01%(w/v)の界面活性剤、例えばポリソルベート20などを含む。いくつかの実施形態において、製剤は、約0.1%(w/v)の界面活性剤、例えばプルロニック(登録商標)F-68などを含む。
【0038】
一実施形態において、製剤は、アセテートと、スクロースと、トレハロースと、界面活性剤とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約2.5mMのアセテートと、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.01%(w/v)のポリソルベート80とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約2.5mMのアセテートと、約5%(w/v)のスクロースと、約3%(w/v)のトレハロースと、約5mMのNaClと、約0.01%(w/v)のポリソルベート80とを含む。
【0039】
一実施形態において、製剤は、緩衝剤を含まない。いくつかの実施形態において、製剤は、残留量が製剤中の緩衝能を欠くような緩衝剤の残留量を含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.01%(w/v)の界面活性剤(例えば、ポリソルベート)とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.02%(w/v)の界面活性剤(例えば、ポリソルベート)とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.03%(w/v)の界面活性剤(例えば、ポリソルベート)とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.01%(w/v)のポリソルベート80とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.02%(w/v)のポリソルベート80とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3.5%(w/v)のトレハロースと、約0.03%(w/v)のポリソルベート20とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3%(w/v)のトレハロースと、約5mMの塩化ナトリウムと、約0.01%(w/v)の界面活性剤(例えば、ポリソルベート)とを含む。一実施形態において、製剤は、約6.2のpHにおいて、約5%(w/v)のスクロースと、約3%(w/v)のトレハロースと、約5mMの塩化ナトリウムと、約0.01%(w/v)のポリソルベート80とを含む。
【0040】
一実施形態において、製剤は、等張化剤を含まない。別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、緩衝剤(例えば、アセテート、例えば2.5mM~40mMのアセテート)と、安定剤(例えば、スクロース及び/又はトレハロース)と、等張化剤とを含み、pHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外(例えば、緩衝剤がアセテートである場合、5.8超、例えば約6.2など)である。別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、緩衝剤(例えば、アセテート、例えば2.5mM~40mMのアセテート)と、安定剤(例えば、スクロース及び/又はトレハロース)と、等張化剤と、界面活性剤とを含み、pHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外(例えば、緩衝剤がアセテートである場合、5.8超、例えば約6.2など)である。一実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、安定剤(例えば、スクロース及び/又はトレハロース)と、等張化剤とを含む。別の実施形態において、製剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体のドメイン及びFcドメインを含む融合タンパク質(例えば、アフリベルセプト、例えば約40mg/mlのアフリベルセプト)と、安定剤(例えば、スクロース及び/又はトレハロース)と、等張化剤と、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)とを含む。
【0041】
等張化剤の濃度は、1mM~250mM、5mM~200mM、40mM~200mM又は40mM~150mMであり得る。一実施形態において、等張化剤の濃度は、約1mM、約5mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、約50mM、約100mM、約140mM又は約150mMである。等張化剤は、塩、例えば塩化物塩などであり得る。一実施形態において、等張化剤は、塩化ナトリウムである。別の実施形態において、等張化剤は、塩化カリウムである。
【0042】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、更なる賦形剤を含み得る。一実施形態において、製剤は、ポリマー賦形剤、例えばヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)又はポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を更に含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、硝子体内投与、例えば滲出型加齢黄斑変性(AMD)などの眼病態の治療に使用される。いくつかの実施形態において、病態は、網膜静脈閉塞症(RVO)又は糖尿病性網膜症(DR)後の黄斑浮腫である。更に他の実施形態において、病態は、失明を引き起こす。一実施形態において、製剤は、プレフィルドシリンジで使用することができる。一実施形態において、プレフィルドシリンジは、製剤の硝子体内投与のためのものである。
【0044】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、10μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり100粒子未満、75粒子未満、50粒子未満、25粒子未満、20粒子未満、15粒子未満、10粒子未満、5粒子未満又は2粒子未満の粒子数(例えば、不可視粒子濃度又は数)を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、25μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり100粒子未満、75粒子未満、50粒子未満、25粒子未満、20粒子未満、15粒子未満、10粒子未満、5粒子未満又は2粒子未満の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、50μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり100粒子未満、75粒子未満、50粒子未満、25粒子未満、20粒子未満、15粒子未満、10粒子未満、5粒子未満又は2粒子未満の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、10μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり50粒子未満の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、25μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり5粒子未満の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、50μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり2粒子未満の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、10μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり平均50粒子以下の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、25μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり平均5粒子以下の粒子数を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される製剤は、50μm以上の粒径について、1ミリリットル当たり平均2粒子以下の粒子数を有する。
【0045】
いくつかの実施形態において、粒子数は、HIACにより開発された市販のカウンターなどの液中パーティクルカウンタの使用によるなど、光遮蔽により測定される。いくつかの実施形態において、粒子数は、25℃の温度で測定される。いくつかの実施形態において、第2の製剤と比較して第1の製剤で粒子数が少ないか又は不可視粒子数が少ない場合、第1の製剤(例えば、緩衝剤を含まない製剤又は緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外である、製剤)は、第2の製剤(例えば、緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲内である、製剤)よりも望ましいと判断される。別の実施形態において、第1の製剤は、第2の製剤と同様の粒子数又は不可視粒子数を有する(例えば、有意差がない)。
【0046】
いくつかの実施形態において、第1の製剤の融合タンパク質が、1つ以上のプロセスストレス後及び/又は所定の期間の保存後、第2の製剤の融合タンパク質よりも元々の特徴又は特性を多く保持する場合、第1の製剤(例えば、緩衝剤を含まない製剤又は緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外である、製剤)は、第2の製剤(例えば、緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲内である、製剤)よりも安定であると判断される。製剤の安定性は、例えば、米国特許第8,092,803号明細書及び同第9,982,032号明細書並びに国際公開第2017129685号パンフレット及び同第2018094316号パンフレットに記載されているような当該技術分野で公知のタンパク質の特性及び特徴を分析することにより判断され得る。
【0047】
一実施形態において、例えば国際公開第2017129685号パンフレットに記載のものなど、当該技術分野で公知の1つ以上のプロセスストレス又はストレス条件後、第1の製剤が第2の製剤よりも凝集が少ない場合、第1の製剤(例えば、緩衝剤を含まない製剤又は緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外である、製剤)は、第2の製剤(例えば、緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲内である、製剤)よりも安定であると判断される。一実施形態において、ストレス条件は、振盪である。別の実施形態において、ストレス条件は、1回以上の凍結/融解サイクル、例えば1、2、3、4又は5回の凍結/融解サイクルである。別の実施形態において、ストレス条件は、振動、圧力及び/又は落下衝撃である。一実施形態において、ストレス条件は、光露光である。一実施形態において、ストレス条件は、混合である。一実施形態において、製剤は、任意の1つ以上のストレス条件にさらされる。ストレス条件は、振盪、1回以上の凍結/融解サイクル、濾過、混合、光露光、振動、圧力、落下衝撃ストレス及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態において、ストレスプロセスは、振盪(例えば、25℃で300rpmを7日間);1℃/分の速度で25℃~-20℃において3回の凍結/融解サイクルを含み、各冷却/加熱工程後、温度を10分間一定に保つ。別の実施形態において、ストレスプロセスは、25℃~-30℃において3回の凍結/融解サイクル;0.2μmのPVDFフィルタを通す濾過;任意選択的に混合;2℃~8℃での保持、光露光及び完全な輸送シミュレーションを含む(例えば、24時間、48時間、72時間、96時間若しくは110時間超又は24~110時間、48~96時間、例えば約50時間、約60時間、約70時間、約80時間、約90時間、約100時間若しくは約100時間などの時系列で、これは、振動、圧力及び落下衝撃ストレスを含む)。
【0048】
別の実施形態において、第1の製剤が、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約3カ月、約4カ月、約5カ月、約6カ月、約7カ月、約8カ月、約9カ月、約10カ月、約11カ月、約12カ月、約15カ月、約18カ月、約21カ月、約24カ月、約30カ月又は約36カ月保存後、第2の製剤よりも凝集が少ない場合、第1の製剤(例えば、緩衝剤を含まない製剤又は緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外である、製剤)は、第2の製剤(例えば、緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲内である、製剤)よりも安定であると判断される。保存は、所定の温度、例えば約40℃、約30℃、約25℃、約5℃、約-20℃又は約-30℃でなされ得る。
【0049】
一実施形態において、第1の製剤が、1つ以上のプロセスストレス及び所定の期間(例えば、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約3カ月、約4カ月、約5カ月、約6カ月、約7カ月、約8カ月、約9カ月、約10カ月、約11カ月、約15カ月、約18カ月、約21カ月、約24カ月、約30カ月又は約36カ月、約40℃、約30℃、約25℃、約5℃、約-20℃又は約-30℃において)の保存後、第2の製剤よりも凝集が少ない場合、第1の製剤(例えば、緩衝剤を含まない製剤又は緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲外である、製剤)は、第2の製剤(例えば、緩衝剤を含む製剤であって、製剤のpHは、緩衝剤の緩衝能の範囲内である、製剤)よりも安定である。
【0050】
製剤の安定性は、例えば、米国特許第8,092,803号明細書及び同第9,982,032号明細書並びに国際公開第2017129685号パンフレット及び同第2018094316号パンフレットに記載されているような当該技術分野で公知の任意の方法により判断され得る。一実施形態において、製剤の安定性は、クロマトグラフィー、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、例えばサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)若しくはサイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)又は疎水性高速液体クロマトグラフィー(HI-HPLC)によって判断され、ここで、ストレスプロセス及び/又は保存条件前の第1の製剤からの第1のピークの変化又は差が、ストレスプロセス及び/又は保存条件後の同じ製剤からの第2のピークと比較して小さく、ストレスプロセス及び/又は保存条件前後のそれぞれの第1のピーク及び第2のピークの変化又は差が大きい第2の製剤と比較して小さいことは、第1の製剤が第2の製剤よりも安定していることを示す。
【0051】
別の実施形態において、製剤の安定性は、製剤の濁度(例えば、OD405nmでの測定など)、回収されたタンパク質の割合(例えば、サイズ排除HPLC(SE-HPLC)により判断される)及び/又はタンパク質の純度(例えば、SE-HPLCにより測定される)によって測定され、ここで、より低い濁度、より高い回収率及びより高い純度が高い安定生を示す。いくつかの実施形態において、SDS-PAGE(還元又は非還元)を使用して、製剤の安定性を判断する。いくつかの実施形態において、非対称フロー式フィールドフローフラクショネーション(AF4)が使用される。他の実施形態において、等電点電気泳動(IEF)、例えばキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)が使用される。第2の製剤と比較して、第1の製剤でのフラグメントの増加及び/又はIEFの変化は、第1の製剤の安定性が低いことを示す。任意の1つの方法又は方法の組み合わせを使用して製剤の安定性を判断することができる。
【0052】
詳細な説明及び以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明をそれに限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の説明に基づき、当業者によって様々な変更形態及び修正形態がなされ得、またそのような変更形態及び修正形態は、本発明に含まれる。
【実施例
【0053】
実施例1:pH6.2のアセテート製剤のアフリベルセプト安定性
アフリベルセプトの安定性を、アセテートの理想的な緩衝能の範囲外のpHで濃度を変化させるアセテート製剤中で試験した。緩衝剤は、pKa値を中心におよそ±1のpH単位の緩衝能力範囲を有するため、アセテートのpKa値は、4.8であり、約3.8~約5.8のpH範囲の緩衝能を有する。アセテート濃度を変化させて、アフリベルセプトのpH及び安定性プロファイルを維持する能力に対するアセテート濃度の影響を試験した。Eylea(登録商標)は、pH6.2において、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%スクロース、0.03%ポリソルベート20中の40mg/mLアフリベルセプトとして製剤化されており、この製剤は、比較のために含まれた(製剤8)。
【0054】
40mg/mlのアフリベルセプトを、表1で指定された製剤とバッファー交換した。バッファー交換後、界面活性剤を異なる製剤に添加した。バッファー交換の性能は、浸透圧、タンパク質濃度及びpHを試験することにより検証した。40℃のストレス条件で最大2週間保存する前に、各製剤に濾過、3回の凍結/融解サイクル及び落下衝撃プロセスストレスを行った。
【0055】
【表1】
【0056】
表1の各製剤に関するpHを0、1週及び2週の時点で測定し、表2に示す。また、製剤についてのT=0及びT=1週のpH間のpH差又はデルタ並びにT=0及びT=2週間のpH差又はデルタを表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、T=0と、それに続く40℃において保存した2週間との間のpH差は、最大0.2のpH単位であり、典型的な製造のばらつき(通常、±0.3pH単位)内であり、アフリベルセプトの品質属性に影響を与えることが予想されないpHシフトである。更に、その緩衝能pH内に緩衝剤を含む製剤8は、0.1pH単位のシフトも示した。したがって、活性緩衝剤を含まない製剤(すなわち緩衝剤の緩衝能の範囲外のpHを有するため、活性緩衝剤ではない緩衝剤を含む製剤)は、活性緩衝剤を含む製剤と同じ程度にpHを維持することができた。
【0059】
表1に記載された製剤のタンパク質安定性を判断するために、サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)によって製剤を試験し、バッファー交換後及び保存中の凝集パターンを分析した。SEC-UHPLCは、流体力学的体積の違いに基づいて、タンパク質を分離する。より大きい流体力学的体積を有する分子は、より小さい体積を有する分子よりも早く溶出する。試料をSE-UHPLCカラム上にロードし、均一濃度で分離し、溶離液をUV吸光度でモニタリングした。統合された総面積と比較した分離された各成分のパーセンテージを計算することによって純度を決定した。SEC-UHPLCで測定された製剤のメインピーク値(パーセンテージなど)が高いほど、凝集のレベルが低いことを示すため、製剤の安定性が高くなる。安定性の向上の別の兆候は、別の製剤と比較して、最初の時点とその後の時点との間のメインピーク値の変化がないことである。
【0060】
表1の各製剤に関するメインピークのパーセンテージを、40℃で保存された製剤について0、1週及び2週の時点で測定し、表3に示す。また、製剤についてのT=0及びT=1週のメインピークパーセンテージ間の差又はデルタ値並びにT=0及びT=2週のメインピークパーセンテージ間の差又はデルタ値を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
向上した安定性プロファイルは、凝集レベルの低減によって示され、したがってメインピーク値が高く、デルタ値が低くなる。驚くべきことに、アセテートの理想的な緩衝能pH範囲の範囲外のpHであった全てのアセテートバッファー製剤(製剤1~7)は、ホスフェートの理想的な緩衝能pH範囲の範囲内のpHであったホスフェートバッファー製剤(製剤8)と比較して凝集レベルの低減を示した。また、驚くべきことに、結果は、図1に示すように、アセテート濃度の低減と凝集レベルの低減との間に強い相関関係があり、したがってアフリベルセプト安定性が向上していることを示した。
【0063】
実施例2:緩衝剤を含まない製剤のアフリベルセプト安定性
凝集レベルにより判断したように、アフリベルセプトの安定性は、アセテートの理想的な緩衝能範囲の範囲外のpHを有する製剤において、アセテート濃度が低いほど改善されることを実施例1は示した。したがって、緩衝剤を含まない製剤を試験して、緩衝剤を含まない製剤におけるアフリベルセプトの安定性を判断した。
【0064】
緩衝剤が存在しない製剤において、アフリベルセプトの安定性及び製剤が目標pHに到達して維持する能力を試験するために、アフリベルセプトを、CEXカラムを用いて細胞培養物から100mMのNaアセテート、300mMのNaCl、pH5.0に3.6mg/mLで精製した。組成物の目標pHは、それぞれpH5.0、5.5、5.8、6.2、6.4又は6.8であった。しかし、滴定される場合、pHは、それぞれ5.0、5.5、6.0、6.2、6.5及び6.9(表4)であった。次いで、タンパク質を40mg/mLまで濃縮し、5%スクロース、5%トレハロース製剤バッファーとバッファー交換した。バッファー交換後のpH及びタンパク質濃度を試験し、試料を40℃で最大2週間のストレス条件で保存した。
【0065】
【表4】
【0066】
目標pHと、バッファー交換前のpH(開始pH)とバッファー交換後のpHの差との間の相関関係を図2に示す(図2Aは、目標pHとの相関関係を示し、図2Bは、滴定pHとの相関関係を示す)。開始pHとバッファー交換後のpHとの間には、最大0.4単位の差があった。開始pHとバッファー交換後のpHとの間の差は、図2Bで示すように、線形相関を有する。したがって、目標pHは、開始pHを調節することによって得ることができる。
【0067】
表4の各製剤についてのバッファー交換前、バッファー交換及びUF/DF後、40℃で1週間及び2週間のpHを表5に示す。
【0068】
【表5】
【0069】
pHは、表5に示されるようなストレス条件で保存する期間にわたって安定を維持した。製剤のpHは、40℃での保存1週間後、製剤VIの0.1単位減少を除いて同じままであった。40℃において2週間後、pHは、典型的な製造のばらつき(通常、±0.3pH単位)内であり、アフリベルセプトの品質属性に影響を与えることが予想されないpHシフトである0.1~0.2単位ずつ低下した。
【0070】
表4で記載された製剤の安定性を判断するために、実施例1で記載されるように、SEC-UHPLCによって製剤を試験した。SEC-UHPLCで測定された製剤のメインピーク値(パーセンテージなど)が高いほど、凝集のレベルが低いことを示すため、製剤の安定性が高くなる。安定性の向上の別の兆候は、別の製剤と比較して、最初の時点とその後の時点との間のメインピーク値の変化がないことである。
【0071】
表4の各製剤についてのメインピークのパーセンテージを、40℃で保存された製剤について0、1週及び2週(それぞれT=0、T=1w、T=2w)の時点で測定し、表6に示す。また、製剤についてのT=0及びT=1週のメインピークパーセンテージ間の差又はデルタ値並びにT=0及びT=2週のメインピークパーセンテージ間の差又はデルタ値を表6に示す。
【0072】
【表6】
【0073】
表6は、最も低いpH(製剤I)を除いて、pH上昇とパーセントメインピークの減少との間に相関関係があることを示す。pHが低下すると、低減した凝集レベルにより判断されるように、アフリベルセプトの安定性が上昇する。
【0074】
実施例3:緩衝剤を含まず、等張化剤及び/若しくは界面活性剤を含むか又は含まない製剤のアフリベルセプト安定性
実施例2は、アフリベルセプトが、凝集レベルにより判断されるように、緩衝剤を含まない製剤で安定であることを示した。pH6.2の緩衝剤を含まない製剤における塩及び界面活性剤のアフリベルセプトの安定性への効果を試験し、pH6.2の緩衝剤を含有する製剤と比較した。
【0075】
緩衝剤が存在しない製剤において、アフリベルセプトの安定性及び製剤が目標pHに到達して維持する能力を試験するために、アフリベルセプトを、CEXカラムを用いて細胞培養物から100mMのNaアセテート、300mMのNaCl、pH5.0に6.5mg/mLで精製した。組成物のpHは、最終目標pH6.2を達成するように、pH6.4まで調節され、実施例2で観察された、バッファー交換前のpHとバッファー交換後のpHとの間のpHドリフトを計算した。次いで、タンパク質を40mg/mLまで濃縮し、表7に示される製剤とバッファー交換した。バッファー交換後、界面活性剤を異なる製剤に添加した。バッファー交換後のpH及びタンパク質濃度を試験し、試料を40℃において最大2週間のストレス条件で保存した。Eylea(登録商標)は、pH6.2において、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%スクロース、0.03%ポリソルベート20中の40mg/mLアフリベルセプトとして製剤化されており、緩衝剤を含むこの製剤は、比較のために含まれた(製剤A)。
【0076】
【表7】
【0077】
表7の各製剤についてのT=0、1週及び2週でのpHを表8に示す。
【0078】
【表8】
【0079】
表7の製剤についての出発材料は、バッファー交換後の製剤のpHシフトに適応させるためにpH6.4に調整され、T=0での製剤AのpHは、6.4(表8)であり、目標pH6.2よりも高かった(表7)が、±0.3単位の製造ばらつきの範囲内であった。T=0と、それに続く40℃において保存した2週間との間の差は、最大0.2のpH単位であり、典型的な製造のばらつきの範囲(通常、±0.3pH単位)内であり、アフリベルセプトの品質属性に影響を与えることが予想されないpHシフトである。更に、緩衝剤の存在は、緩衝剤を含まない製剤を用いた場合と同様に、0.1pH単位の違いをもたらした。したがって、試験した全ての製剤について、pHは、ストレス条件下での保存にわたって安定したままであった。
【0080】
表7で記載された製剤の安定性を判断するために、実施例1で記載されるように、SEC-UHPLCによって製剤を試験した。SEC-UHPLCで測定された製剤のメインピーク値(パーセンテージなど)が高いほど、凝集のレベルが低いことを示すため、製剤の安定性が高くなる。安定性の向上の別の兆候は、別の製剤と比較して、最初の時点とその後の時点との間のメインピーク値の変化がないことである。
【0081】
表7の各製剤についてのメインピークのパーセンテージを、40℃で保存された製剤について0、1週及び2週(それぞれT=0、T=1w、T=2w)の時点で測定し、表9に示す。また、製剤についてのT=0及びT=1週のメインピークパーセンテージ間の差又はデルタ値並びにT=0及びT=2週のメインピークパーセンテージ間の差又はデルタ値を表9に示す。
【0082】
【表9】
【0083】
表9は、塩又は界面活性剤の存在に関わらず、緩衝剤を含まない全ての製剤が、緩衝剤を含む製剤(製剤A)と比較してより高いメインピークパーセンテージを示し、凝集の減少又は安定性の向上を示したことを示す。それぞれ界面活性剤を含有及び含有しない製剤B及びF間の凝集レベルを比較する場合、匹敵するパーセントメインピークが観察され、緩衝剤を含まないアフリベルセプト製剤は、SE-HPLCにより測定されるその凝集の観点から、界面活性剤の有無に関わらず安定していることを示す。
【0084】
塩濃度とパーセントメインピークの減少との間には、図3で見られるように、直接的相関関係が観察される。しかし、緩衝剤を含まない全ての製剤は、緩衝製剤(製剤A)と比較して凝集レベルが低かった。
【0085】
実施例4:3つのより大規模の検討についての緩衝剤を含まない製剤のアフリベルセプト安定性
実施例1~3は、小規模な検討であり;約2~10mLはバッファー交換が行われ、約80μL~約280μLは、安定性を確保した。先行する実施例で試験された製剤のいくつかを、より大規模への結果の適用性を実証するために3つの別々の検討で大規模に検討した(表10)。Eylea(登録商標)は、pH6.2において、10mMリン酸ナトリウム、40mM塩化ナトリウム、5%スクロース、0.03%ポリソルベート20中の40mg/mLアフリベルセプトとして製剤化されており、緩衝剤を含み、且つ緩衝剤の緩衝範囲内のpHであるこの製剤は、3つの検討(製剤a、f及びj)の全ての比較のために含まれた。100mL~1000mLでバッファー交換を実施し、バッファー交換後、界面活性剤を異なる製剤に添加した。バッファー交換後のpH、浸透圧及びタンパク質濃度を試験し、適切なバッファー交換の実行を確保した。異なる製剤を、凍結-融解、混合、濾過、ホールド、充填、光露光及び輸送シミュレーション(振動、圧力及び落下衝撃ストレスを含む)を含む様々なプロセスストレスにかけた。プロセスストレスに続いて、全ての製剤からの試料を様々な保存温度:40℃、30℃、25℃、5℃及び-30℃で安定させた。
【0086】
【表10】
【0087】
T=0及び様々な時点並びに様々な温度でのpHは、表11A及び表11Bに示す。表11A及び表11Bで試験された全ての条件の最大及び最小pH並びに全ての製剤についてのT=0と様々な条件との最大差を表11Cに示した。
【0088】
【表11】
【0089】
【表12】
【0090】
【表13】
【0091】
表11Cは、緩衝剤の存在に関わらず、全ての製剤についてのT=0と様々な条件との最大差が、最大6カ月という長期間保存にわたって0.2pH単位であることを示す。これは、緩衝剤を含まない製剤が、様々な温度保存条件下での長期間保存にわたり、安定したpHを維持できることを示す。
【0092】
表10で記載された製剤の安定性を判断するために、実施例1で記載されるように、SEC-UHPLCによって製剤を試験した。SEC-UHPLCで測定された製剤のメインピーク値(パーセンテージなど)が高いほど、凝集のレベルが低いことを示すため、製剤の安定性が高くなる。安定性の向上の別の兆候は、別の製剤と比較して、最初の時点とその後の時点との間のメインピーク値の変化がないことである。結果を表12A及び表12B並びに図4で示す。
【0093】
【表14】
【0094】
【表15】
【0095】
表12A及び表12Bに示すように、3つ全ての検討(それぞれ検討1、2及び3について製剤a~e、f~i及びj~k)について、各検討で緩衝剤を含まない製剤(緩衝剤を含むが、緩衝剤の緩衝能の範囲外であるpHの製剤を含む)は、試験された全ての安定性条件下において、Eylea(登録商標)製剤(それぞれ製剤a、f及びj)と比較して凝集が低減されているか又は同等であった。
【0096】
加えて、製剤の不可視粒子レベルを光遮蔽(HIAC)により試験し、粒子を生成するタンパク質の傾向に対する製剤の影響を検討した。製剤a~kの1mL当たりの2μm、5μm、10μm、25μm及び50μmの粒子数の結果をそれぞれ表13A~表13Eに示す。
【0097】
【表16】
【0098】
【表17】
【0099】
【表18】
【0100】
【表19】
【0101】
【表20】
【0102】
緩衝剤を含まない製剤(緩衝剤を含むが、緩衝剤の緩衝能の範囲外であるpHの製剤を含む)は、緩衝剤を含むが、緩衝剤の緩衝能の範囲内のpHを有する製剤(すなわち製剤a、f及びj)と有意に違いがない不可視カウントを示した。
【0103】
本発明が様々な実施形態の観点から記載されている一方、変更形態及び修正形態が当業者に想到されることが理解される。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求される本発明の範囲内にあるそのような均等な変形形態の全てを包含することを意図する。加えて、本明細書で使用される項目見出しは、単に構成的な目的のためのものであり、記載する主題を限定すると解釈すべきではない。
【0104】
本出願に引用された全ての参照文献は、あらゆる目的のために参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
【配列表】
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