(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】人のパーキンソン病の指標を検出するための電極パッチ、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240813BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240813BHJP
A61B 5/397 20210101ALI20240813BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B5/11 100
A61B5/397
(21)【出願番号】P 2020545120
(86)(22)【出願日】2019-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2019055002
(87)【国際公開番号】W WO2019166557
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-22
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】321004633
【氏名又は名称】アダマント ヘルス オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カリヤライネン,パシ
(72)【発明者】
【氏名】リッサネン,サラ
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0262685(US,A1)
【文献】特表2016-532468(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067101(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0240086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0109905(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272483(US,A1)
【文献】Saara M.Rissanen et al.,Analysis of EMG and Acceleration Signals for Quantifying the Effects of Deep Brain Stimulation in Parkinson’s Disease,IEEE Transactions on Biomedical Engineering,Vol.58,No.9,2011年01月13日,pp.1-21
【文献】Alexander Y.Meigal et al,Non-linear EMG parameters for differential and early diagnostics of Parkinson’s disease,Frontiers in Neurology,Vol.4,No.135,2013年09月17日,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/11
A61B 5/397
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人におけるパーキンソン病の指標を検出するための測定システムであって、
人のパーキンソン病の指標を検出するように構成された検出システム
と、
人のパーキンソン病の指標を、前記人の四肢の筋肉から検出するために構成された電極パッチと、を含み、
前記検出システムが、
前記人の四肢に取り付けられた電極パッチから発せられるEMG信号と、前記EMG信号に関連付けられた加速度信号と、を受信することと、
前記EMG信号及び前記加速度信号の主成分表現を決定することであって、前記主成分表現が、前記EMG信号の少なくとも1つの特徴及び前記加速度信号の少なくとも1つの特徴の、直交基底ベクトルによって形成される特徴空間内の無相関特徴への投影を表し、前記主成分表現を決定することが、
前記EMG信号の前記少なくとも1つの特徴及び前記加速度信号の前記少なくとも1つの特徴を抽出することと、
前記EMG信号の前記少なくとも1つの抽出された特徴及び前記加速度信号の前記少なくとも1つの抽出された特徴に基づいて、特徴ベクトルを形成することであって、前記特徴ベクトルが、サンプル相関行列の固有ベクトルの加重和として表現され、前記サンプル相関行列が、複数の人からの少なくともEMG及び加速度測定データに基づいて解かれたものである、前記特徴ベクトルを形成することと、
前記加重和の重みを、前記主成分表現の主成分として使用することと
を含む、決定することと、
前記主成分表現に基づいて、パーキンソン病の前記指標の大きさを決定することと、を行うように構成され
、
前記電極パッチが、
2つの測定電極と、
基準電極であって、前記基準電極の中心から前記測定電極の前記中心間を通る軸までの距離が、前記測定電極間の前記距離と同一又はそれよりも長くなるように位置決めされるように適応されている、基準電極と、を含む、
測定システム。
【請求項2】
前記EMG信号の前記少なくとも1つの特徴及び前記加速度信号の前記少なくとも1つの特徴が、少なくとも、
前記EMG信号から抽出されたサンプル尖度、交差率変数、及び反復率と、
前記加速度信号のサンプルエントロピーと、を含む、請求項1に記載の
測定システム。
【請求項3】
前記測定電極の中心間の距離が2cm超~4cm未満である
、請求項1又は2に記載の測定
システム。
【請求項4】
前記測定電極の中心間の前記距離が、2.5cm~3cmである、請求項3に記載の測定
システム。
【請求項5】
前記基準電極が、前記測定電極の前記中心間を通る前記軸から4~8cmの一定の横方向距離において位置決めされる、請求項3又は4に記載の測定
システム。
【請求項6】
前記電極パッチが、
前記電極パッチを前記人の皮膚に適用されるときに、前記測定電極の前記中心間を通る前記軸からの前記基準電極の距離を調整することができるように、前記基準電極が端部に位置決めされている細長い可撓性ストリップを含む、請求項
1~5のいずれか1項に記載の測定
システム。
【請求項7】
前記測定
システムが、
前記電極パッチの前記測定電極に接続されたセンサモジュールをさらに含み、センサモジュールが、前記測定電極からのEMG信号を測定するための手段と、前記人の前記四肢からの加速度信号を測定するための手段と、前記EMG信号及び前記加速度信号を前記検出システムに送信するための手段と、を含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の測定
システム。
【請求項8】
人のパーキンソン病の指標を検出するための方法であって、
前記人の四肢に取り付けられた電極パッチから発せられるEMG信号と、前記EMG信号に関連付けられた加速度信号と、を受信することと、
前記EMG信号及び前記加速度信号の主成分表現を決定することであって、前記主成分表現が、前記EMG信号の少なくとも1つの特徴及び前記加速度信号の少なくとも1つの特徴の、直交基底ベクトルによって形成される特徴空間内の無相関特徴への投影を表し、前記主成分表現を決定することが、
前記EMG信号の前記少なくとも1つの特徴及び前記加速度信号の前記少なくとも1つの特徴を抽出することと、
前記EMG信号の前記少なくとも1つの抽出された特徴及び前記加速度信号の前記少なくとも1つの抽出された特徴に基づいて、特徴ベクトルを形成することであって、前記特徴ベクトルが、サンプル相関行列の固有ベクトルの加重和として表現され、前記サンプル相関行列が、複数の人からの少なくともEMG及び加速度測定データに基づいて解かれたものである、前記特徴ベクトルを形成することと、
前記加重和の重みを、前記主成分表現の主成分として使用することと
を含む、決定することと、
前記主成分表現に基づいて、パーキンソン病の前記指標の大きさを決定することと、を含
み、
前記電極パッチが、人のパーキンソン病の指標を、前記人の四肢の筋肉から検出するために構成されており、
前記電極パッチが、
2つの測定電極と、
基準電極であって、前記基準電極の中心から前記測定電極の前記中心間を通る軸までの距離が、前記測定電極間の前記距離と同一又はそれよりも長くなるように位置決めされるように適応されている、基準電極と、を含む、方法。
【請求項9】
前記EMG信号の前記少なくとも1つの特徴及び前記加速度信号の前記少なくとも1つの特徴が、少なくとも、
前記EMG信号から抽出されたサンプル尖度、交差率変数、及び反復率と、
前記加速度信号のサンプルエントロピーと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定電極の中心間の距離が2cm超~4cm未満である
、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記測定電極の中心間の前記距離が、2.5cm~3cmである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号の測定及び分析に関し、具体的には、人から測定された生体信号におけるパーキンソン病(PD)の少なくとも1つの指標を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病(PD)は、主に運動系に影響を与える中枢神経系の長期変性疾患である。症状は通常、経時的にゆっくりと現れる。疾患が進行するにつれて、症状はますます予測不能になる。症状に関する正確なデータ分析は存在しない。時間的に変化する症状の総合的な見解を得て、正しい薬剤及びその投与量、ならびに投与のスケジューリングを見出すことは、特に疾患がすでに後期に進行している場合には困難である。また、脳深部刺激(DBS)の設定を調整し、各状況に応じて最適な治療方法を選択することも困難な場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示の目的は、上記の欠点を軽減するように、方法及び該方法を実施する装置を提供することである。本開示の目的は、独立請求項に記載されていることを特徴とする方法及び配置によって達成される。本開示の好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0004】
PDの指標の検出は、本開示による電極パッチ、ならびに検出システム及び方法を用いて実施され得る。
【0005】
電極パッチは、その中にEMG電極が固定構成に埋め込まれている粘着性のパッチ又はストリップの形態であり得る。電極パッチは、例えば、可撓性又は剛性体であってもよい。電極は固定された構成にあるため、互いに関するそれらの距離及び位置決めは、常に一定のままである。これは、一貫した測定結果が確実とし、それにより、変数の数を低減させる。
【0006】
本開示による検出システム及び方法は、測定データにおけるPDの異なる指標を検出するために使用され得る。主成分表現は、EMG及び加速度データから形成され得る。主成分表現の主成分は、測定データを、PDの症状のタイプ及び/もしくは段階及び/もしくは重症度、又は治療反応の異なる指標を表す意味のあるカテゴリにグループ化するように選択され得る。測定データ内のPDの異なる指標の大きさを計算することができ、これらの大きさに基づいて人の状態の評価を作成することができる。
【0007】
本開示による電極パッチ及び検出システムは、人のPDの指標を検出する際、人のPDの進行を評価する際、及び人のPDのための治療/投薬の効率を判定する際に使用することができる情報を提供するための、信頼性が高く、計算コスト効率の高いツールを提供する。
【0008】
この方法及び電極パッチは、測定期間中に人が自由に動くことを可能にする。したがって、この方法及び電極パッチは、数分又は数時間ではなく、数日間続き得る測定期間を可能にする。長期間にわたる継続的な測定データの監視と分析を行う能力は、薬剤のタイプ、その投与量、及び投与のスケジューリングに関する症状の把握及び最適な治療計画の立案に大きな効果を発揮し得る。データの継続的で長時間の監視はまた、脳深部刺激の設定を調整し、各状況での最適な治療方法を選択するのに役立つこともある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下において、本発明は、添付の図面を参照して、好ましい実施形態によってより詳細に説明される。
【
図1】本開示による電極パッチの例示的な実施形態を示す。
【
図3】好適な指標を判定するための例示的で簡略化されたフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、可撓性又は剛性の電極パッチ、及び人のPDの指標を検出するための検出システム/方法を説明する。少なくとも1つの指標は、人のEMG及び加速度信号データなどの生体信号データにおいて検出され得る。本開示との関係において、生体信号データは、例えば、人から測定された単一又は複数の生体信号のサンプルを表し得る。
【0011】
本開示による電極パッチは、人の上肢又は下肢の筋肉からのEMG信号を測定するために位置決めされた電極を含み得る。電極の位置決めは、本開示に従った検出システムがEMG信号を受信したときに、検出システムが人のPDの指標を検出することができるようなものであり得る。加速度信号データは、人の四肢の動きを測定した測定値のサンプルを表し得る。加速度データは、人の四肢に取り付けられた加速度センサから生成され得る。加速度センサのタイプ及び構成(サンプルレート、動作範囲)は、筋活動、特に例えば震えなどのPDに関連した加速度データを測定するために選択され得る。
【0012】
検出システムは、人の上肢又は下肢に取り付けられた電極パッチから生成されるEMG信号と、EMG信号に関連付けられた加速度信号と、を受信し、EMG信号及び加速度信号の主成分表現を判定し、主成分表現の値に基づいてPDの少なくとも1つの指標の大きさを判定するように構成され得る。その後、人の状態は、少なくとも1つの指標の判定した大きさに基づいて解釈され得る。
【0013】
本開示との関連において、主成分表現は、1つ以上の主成分によって形成される。主成分表現は、直交基底ベクトルによって形成される特徴空間内で、互いに相関関係を有する可能性のある元の信号特徴を無相関信号特徴に投影したものを表す。これらの無相関の信号特徴が、主成分である。本開示との関連において、主成分表現は、例えば、EMG信号及び加速度信号のうちの少なくとも1つの特徴に基づき得る。
【0014】
PDの少なくとも1つの指標の大きさを判定する際に、測定データ(すなわち、EMG信号及び加速度信号のサンプル)の様々な特徴が利用され得る。これらの特徴には、サンプルヒストグラム、尖度、交差率などの信号の統計的特徴と、フーリエ変換、ピリオドグラム、ウェーブレットなどのスペクトルベースの特徴が含まれる。さらに、該特徴は、コヒーレンス及び異なるタイプのクロスエントロピーなどの、非線形ダイナミクス、及びEMGと加速度データの間の相互関係に基づくパラメータを含み得る。
【0015】
本開示による新規の電極パッチは、EMGの測定に使用され得る。電極パッチは、使い捨て又は再利用可能であり得る。電極パッチは、例えば、電極が埋め込まれたプラスチック及び/又は織物のシートで作製され得る。電極パッチは、柔軟性又は剛性であり得る。電極は、湿式又は乾式であり得る。電極の測定領域は、円形又は他の形状であり得る。電極は、好ましくは、EMG信号の十分な情報量を確保するために、特定の構成に配置される。
【0016】
文献では、EMG測定において測定電極間の中心間距離を2cm(0.75インチ)にすることを広く推奨している(例えば、Hermens HJ、Freriks B、Merletti R、Stegeman D、Blok J、Rau G、Disselhorst-Klug C、及びHagg G:表面筋電図に関するヨーロッパの推奨事項。Roessingh Research and Development、ISBN 90-75452-15-2、1999を参照)。しかしながら、皮膚の下のより深い内部からの電磁信号の受信を容易にするために、本開示による電極パッチでは、推奨される2cmよりも広い距離を使用され得る。2つの測定電極は、例えば、2cm超~4cm未満の中心間距離で、筋繊維に平行に位置決めされ得る。基準電極は、基準電極の中心から測定電極の中心を通る軸までの距離が、少なくとも測定電極間の距離であるように位置決めされ得る。好ましくは、測定電極の中心間の距離は、2.5~3cmである。基準電極は、好ましくは、筋肉に関して不活性領域上に配置される。この電極の構成が本開示による検出方法/システムと共に使用されている場合、EMG信号データの情報量を最大化することができる。
【0017】
本開示による新規の検出システム及び方法は、測定データに基づいて、PDの少なくとも1つの指標の大きさを判定するために、EMG信号データに使用され得る。EMG信号データは、好ましくは、本開示による電極パッチから生成される。このシステム及び方法では、主成分表現は、例えば、EMG信号データ及びEMG信号データに関連付けられた速度信号データから形成され得る。測定データから抽出された特徴を使用して、特徴ベクトルを形成し得る。各特徴ベクトルは、例えば、一人の測定の特徴を表し得る。
【0018】
特徴ベクトル内の抽出された特徴間の可能な相関を排除するために、特徴ベクトルは、次に、基底ベクトルの加重和としてモデル化され得、該基底ベクトルは、サンプル相関行列の固有ベクトルとして前もって解かれている可能性がある。サンプル相関行列は、例えば、複数の人からの測定データに基づいて形成されている可能性がある。加重和の重みを表す主成分は、例えば、最小二乗解として特徴ベクトルに対して解かれ得る。
【0019】
主成分は、基底ベクトルで形成された特徴空間で測定データを表現する、新たな無相関特徴量である。つまり、主成分は、主成分表現を形成する。しかしながら、データの複雑さを低減するために、最も重要な特徴量のみを選択して、測定データを、縮小された次元の特徴空間で近似してもよい。例えば、PD(又は特定のタイプのPD)を有する人からの測定データが特徴空間内でクラスタ化するように、主成分が選択されてもよい。さらに、データが、例えば、PDの異なる重症度/段階又は特定の治療の有効性を表すクラスタを形成するように、主成分が選択されてもよい。クラスタに基づいて、測定結果を分類するための簡単なルールを形成することができる。ルールが決定したら、EMGと加速度データの主成分表現にルールを適用することによって、測定を確実に分類することができる。
【0020】
本開示による検出システム及び方法を実施する測定配置は、様々な方式で実施され得る。例えば、人のPDの指標を検出するための測定配置は、本開示による可撓性又は剛性の電極パッチ、電極パッチの電極に接続された(着用可能な)センサモジュール、及び本開示による検出システムを含み得る。センサモジュールは、例えば、電極からのEMG信号を測定するための手段、人の上肢又は下肢からの加速度信号を測定するための手段、ならびにEMG信号及び加速度信号を検出システムに送信するための手段を備え得る。コンピュータ、コンピュータサーバのクラスタ、又はコンピューティングクラウドを使用して、本開示による検出システム/方法を実施し得る。検出システムは、センサモジュールから直接測定データを受信し得るか、又は測定データは、トランシーバユニットを介して中継され得る。トランシーバユニットは、例えば、無線インターネットルータなどの無線通信ユニットであり得る。スマートフォン、タブレットコンピュータ、又は無線通信能力を備えた他のポータブルコンピューティングデバイスも、トランシーバユニットとして使用され得る。
【0021】
図1は、本開示による電極パッチの例示的な実施形態を示す。
図1には、粘着性電極パッチ10の上面の概略図が示されている。電極パッチの本体14は、織物のプラスチック又はそれらの組み合わせなどの可撓性材料で作製され得る。電極パッチ10は、2つの測定電極11a、11bと、電極の表面が電極の底面上に露出し、パッチを適用したときに人の皮膚にガルバニック接続を形成するように本体14に取り付け又は埋め込まれた基準電極12と、を含む。
図1では、測定電極は、本質的に円形の形状を有する。電極の感知領域はまた、これが、製造プロセスにより好適である場合、長方形であってもよい。測定電極11a及び11bの中心は、互いに距離d
1で位置決めされる。
図1では、距離d
1は、3cmである。基準電極12は、測定電極の脇に位置決めされる(すなわち、測定電極11a及び11bの中心を通る軸Aから距離d
2で横方向に変位する)。距離d
2は、少なくとも距離d
1、好ましくは距離d
1の少なくとも2倍であってもよい。
【0022】
電極パッチ10の本体14は、その底面上に粘着表面、及びその上面上に耐水性コーティングを有し得る。
図1のパッチ10は、パッチの下の皮膚が呼吸することを可能にするように細長い開口部を備え得る。パッチ10の上面は、パッチを正しく位置決めするのに役立つガイドマーキングを有し得る。電極パッチは、測定が終了した後にパッチを容易に取り外せるように、その側面上に剥離パッドを備え得る。
【0023】
図1はまた、電極パッチの上面上の測定ユニット13を示す。測定ユニットは、柔軟な導線によって電極11a、11b、及び11cに電気的に接続されている。測定ユニット13は、電極パッチ10に一体化され得るか、又は着脱可能に接続され得る。例えば、パッチ10は、電極11a、11b、及び12と、人のEMGを測定する小型の着用可能な測定ユニット14との間にガルバニック接続を形成するために、コネクタインターフェースと、を備え得る。携帯型測定ユニット13はまた、該方法で使用される加速度データを提供する加速度センサを備え得る。測定ユニット13は、電池式であり得、かつコネクタインターフェース13を介して電極パッチ10に着脱可能に取り付けられ得る。電極パッチは、使用中に測定ユニットを入れることができるドック、ポケット、又はポーチを備え得る。
【0024】
図2は、本開示による電極パッチの別の例を示す。パッチ20の詳細は、ほとんどの部分で
図1のパッチ10と類似している。しかしながら、測定ユニット13と基準電極22との間の接続を形成する導線は、薄く、細長く可撓性を有するストリップ25の端部に配置される。該ストリップ25は、電極パッチ20の本体24から延在する。これにより、電極パッチ20の測定電極21a及び21bに対する、基準電極22の位置の調整が可能になり、四肢の直径が非常に大きい人には有用であり得る。
【0025】
図3は、好適な指標を判定する例示的な簡略化されたフロー図を示す。
図3では、手順は、最初のステップ30を含み、連続するステップ31~37をたどり、最後に終了ステップ38で終了する。
【0026】
手順はステップ30から始まり、そこから手順31に進む。ステップ31では、生EMG信号がバンドパスフィルタ処理され、増幅され、A/D変換される。バンドパスフィルタは、アナログアンチエイリアシングフィルタ(バターワース、バンドパス1~500Hz)であってもよく、D変換は、例えば、14ビットA/Dコンバータを用いて行われてもよい。さらに、四肢の動きは、加速度計、例えば3軸加速度計(範囲±16g、14ビットA/Dコンバータ)を使用することによって登録される。
【0027】
次に、ステップ32で、EMG及び加速度信号が前処理される。例えば、ローパス又はバンドパス及び/又はノッチフィルタリングを使用することによって、測定したEMGデータから見込まれるノイズを除去してもよい。ノイズは、例えば、周囲の電気機器(例えば、DBSユニットなど)及び動きに起因する場合もある。
【0028】
続くステップ33では、データの代表的な時間セグメントが分析のために選択される。好ましくは、これらのセグメントは、静的及び動的収縮中に測定された筋活動を含む。さらに、これらのセグメントは、好適には、1日の異なる時間(午前、午後、夕方、夜)を網羅する。
【0029】
次に、ステップ34では、EMG及び加速度信号からいくつかの特徴が抽出される。これらの特徴は、例えば、少なくともサンプルヒストグラム、EMG形態を説明するパラメータ(例えば、サンプル尖度と交差率変数)、非線形ダイナミクスに基づくパラメータ(例えば、EMG信号の反復率と加速度信号のサンプルエントロピー)を含んでもよい。
【0030】
次のステップ35では、抽出されたEMG及び加速度信号特徴を使用して、特徴ベクトルを形成する。次に、各特徴ベクトルは、基底ベクトルの加重和としてモデル化してもよく、基底ベクトルは、サンプル相関行列の固有ベクトルとして前もって解かれてもよい。サンプル相関行列は、例えば、収集された人物データに基づいて形成されてもよい。重み(主成分)は、例えば、人の各特徴ベクトルに対して、最小二乗解として解いてもよい。
【0031】
次のステップ36では、解いた主成分を使用して、例えば、異なる時刻間、異なるDBS設定間、又は異なる治療方法間の被験者の神経筋機能及び運動機能の変化を識別する。症状の重症度、治療反応、PDのタイプに関して最も重要な主成分のみを選択して、さらに分析してもよい。
【0032】
次に、ステップ37では、ステップ35で形成した高次元特徴が、選択した主成分を使用して低次元空間に投影される。選択した主成分は、人の臨床状態を表す指標の計算に使用される。計算した指標は、時間的に変化するスカラ値であってもよく、例えば、グラフとして提示されてもよい。指標は、例えば、二次元平面上の点などのより高次元のものであってもよい。次に、手順は、ステップ38で終了する。
【0033】
図4は、本開示による測定配置の例を示す。
図4では、本開示による電極パッチ401を使用することにより、筋肉の電気的活性化が(EMG信号の形で)登録される。電極パッチ401は、例えば、
図1及び2の例と同一又は同様であってもよい。さらに、四肢の動きは、加速度計41を使用して、
図4において同時に登録される。いくつかの実施形態では、加速度計41は、測定ユニットに統合され得る。代替的に、加速度計は、別個のユニットであってもよい。
【0034】
図4において、電極パッチ40及び加速度計41は、EMG信号及び加速度信号を(例えば、アナログ電圧信号の形で)、信号がA/D変換され得る測定ユニット42に提供する。A/D変換した信号データは、測定ユニット42のメモリカードに保存され得る(すなわちオフラインモード)か、又は例えばコンピュータもしくはスマートデバイスであり得るルータデバイス42に送信され得る(すなわちオンラインモード)。オフラインモードでは、測定セッションが終了した後、測定データは、メモリカードからルータデバイス43にアップロードされ得る。オンラインモードでは、測定ユニットは、測定セッションの終了前に、さっそく一部又はすべての信号データをルータデバイスに送信し得る。好ましくは、測定ユニット42とルータ43との間の通信は無線であり、これにより人がより自由に動くことを可能にする。ルータデバイス43は、例えば、無線インターネットルータなどの無線通信ユニットであってもよい。スマートフォン、タブレットコンピュータ、又は無線通信能力を備えた他のポータブルコンピューティングデバイスも、ルータデバイス43として使用され得る。
【0035】
測定ユニット42によってルータデバイス43に提供される信号データは、生のA/D変換信号データであり得るか、又はそれは、測定ユニット42によって前処理され得る。例えば、測定ユニットは、
図3の実施形態におけるステップ32及び33の一方又は両方を実行するように構成され得る。
図4の測定ユニット42は、オフラインモードとオンラインモードの両方をサポートし得、ユーザは、2つのモードのどちらを使用するかを選択し得る。
【0036】
図4では、信号データは、ルータデバイス43からクラウドベースのデータベース44に転送される。クラウドベースのデータベース44から、信号データは、例えば分析プログラムを含むコンピュータ又はサーバであり得るコンピューティングユニット45に送信される。ソフトウェアプログラムの形態であり得る分析プログラムは、本開示による方法を実行するように構成され得る。したがって、分析プログラムは、人のPDの指標を検出するように構成され得る。分析プログラムは、(例えば、クラウドベースのデータベース44から)人の四肢に取り付けられた電極パッチから生じるEMG信号及びEMG信号に関連付けられた加速度信号を受信することと、EMG信号及び加速度信号の主成分表現を判定することであって、主成分表現が、EMG信号及び加速度信号の少なくとも1つの特徴の、直交基底ベクトルによって形成される特徴空間への投影を表す、判定することと、主成分表現に基づいてPDの指標の大きさを判定することと、を行うように構成され得る。例えば、分析プログラムは、パーキンソン病の指標を検出するために、
図3の例のステップ34~37を実施し得る。
【0037】
コンピューティングユニット45の分析プログラムが実行されると、分析結果はコンピューティングユニット45からクラウドベースのデータベース44に送信され得、そこから、例えば、その人の治療を担当しているか、又は結果についての発言を求めらるかのいずれかの医師がアクセスすることができる。
【0038】
上述の測定システムは、例えば、以下のように使用され得る。最初に、好ましくは、対象の筋肉の上の人の皮膚を剃毛し(必要な場合)、アルコールで拭き取る。次に、本開示による電極パッチが皮膚上に配置され得、本開示に従って電極パッチに取り付けられ得る。測定セッションの担当者は、EMG信号の品質をチェックし、例えば数日間続く可能性のあるEMGと動きの連続測定を開始し得る。測定中、人は自由に動き、日常の活動を行うことができる。
【0039】
システムは、EMG及び動きベースのデータを収集し、それらを測定ユニットに保存するか、又はクラウドベースのデータベースに転送する。その後、測定データを分析し、その人の治療を担当する医師に分析結果を提供する。診断又は治療の調整を行う上で、その結果を使用するかどうかは、医師が決定する。
【0040】
本開示による測定及び分析は、例えば、DBS療法を伴うパーキンソン病患者に対して行われ得る。分析結果を使用して、DBS設定を調整するのに役立ててもよい。DBS設定の調整前後の測定を行うことで、DBS設定変更の結果を評価することができる。DBS手術の前後に測定を行うことにより、DBS手術の結果を評価することができる。
【0041】
本開示による測定及び分析はまた、薬物療法を受けているパーキンソン病患者に対しても行うことができる。時間的に変化する症状を記載した分析結果は、最適な薬物タイプの選択のため、薬物投与量の調整のため、及び薬物投与のスケジューリングのためなど、薬物療法を調整するための補助として使用することができる。分析結果はまた、DBS療法の必要性など、他のタイプの療法の必要性をスクリーニングする際の助けになることもできる。
【0042】
本開示による測定及び分析はまた、薬物開発の臨床試験に参加するパーキンソン病患者に対して行われ得る。分析結果は、異なる薬物を比較する、及び/又は薬物の有効性を評価する際に、薬物開発者の助けになり得る。
【0043】
本開示による測定及び分析はまた、神経刺激システムの移植などの外科手術中に行われ得る。測定システムは、EMG及び動きベースの信号を継続的に収集し、それらをパーソナルコンピュータ又はスマートデバイスなどのルーティングデバイスに送信し得る。測定データ及び分析結果は、パーソナルコンピュータ又はスマートデバイス上でオンライン表示される。医師は、手術中に刺激電極の配置、構成、及び刺激設定を調整するための助けとして、測定データ及び分析結果を使用し得る。
【0044】
電極パッチ及び検出方法/システムが様々な方法で実施され得ることは、当業者には明らかである。本発明及びその実施形態は、上記の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で変化してもよい。