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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】透析液を再生するのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
A61M1/16 190
A61M1/16 179
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020546491
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055338
(87)【国際公開番号】W WO2019170613
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-03-03
(31)【優先権主張番号】102018105120.4
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】マーターストック シュテファン コンラート
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-529715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087291(US,A1)
【文献】国際公開第2015/124716(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0234795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液を再生するための装置であって、
第1の回路と、
第2の回路と、を有し、
前記第1の回路は、使用された透析液を受け入れるための容器(10)を有し該容器(10)の下流にフィルタ(20)の1次側(21)が接続され
前記装置は、さらに、該フィルタ(20)の1次側(21)から前記容器(10)の中への戻りライン(30)を有し、
前記フィルタ(20)は、前記使用された透析液から超純水を調製するように構成され、
前記第2の回路は、前記フィルタ(20)の2次側(22)と、透析機(100)の透析物側と、前記透析機(100)の透析物側から前記容器(10)の中への、前記戻りライン(30)から独立した戻りライン(40)とを有し、前記戻りライン(40)が前記透析機(100)の透析物側を前記容器に連結し、
前記フィルタ(20)の2次側(22)から流れ出る水を直ぐに使える透析液を調製するための1又は2以上の濃縮物と混合するように構成された混合デバイスが、前記フィルタ(20)の2次側(22)の下流に設けられている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記フィルタ(20)は、グラフェンフィルタである、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ポンプ(50)が、前記第1の回路内の流体の流れを達成するために前記フィルタ(20)の前記1次側(21)の上流に、配置され、及び/又は
圧力を前記フィルタ(20)の前記1次側(21)にそれを用いて設定することができる圧力安全デバイス(60)が、前記フィルタ(20)の下流に、設けられている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
遮断要素(90)によって閉鎖可能なバイパスラインが、前記圧力安全デバイス(60)の周りに設けられている、
請求項3に記載の装置。
【請求項5】
センサ、好ましくは導電率セル(70)が、前記第1の回路内の物質の濃度を検出するために該第1の回路に配置されていることを特徴とし、及び/又は
センサ、好ましくは導電率セル(80)が、前記フィルタ(20)の前記2次側(22)に存在する水の純度を決定するために該第2の回路内の前記透析機の上流に配置されていることを特徴とする、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
圧力測定デバイス(102)が、前記フィルタ(20)の前記2次側(22)の下流に配置されている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
透析液を、前記戻りライン(30)から除去するための限外濾過ポンプを有し、及び/又は
前記透析機(100)への及びそこからの透析液の平衡供給及び除去のための平衡化チャンバ(B)を有する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記フィルタ(20)は、気体に対して不透過性であり、及び/又は
前記第2の回路は、脱気デバイスを持たない、
請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
コントローラを有し、
前記コントローラは、前記容器(10)に閉じ込められた液体を部分的に又は完全に廃棄するように、かつそれを前記センサ、特に前記導電率セル(70)が濃度限界値を超える値を該コントローラに報告した時に清浄水と交換するように構成される、
請求項5に記載の装置。
【請求項10】
レベルセンサ(110)が前記容器(10)に配置され、
前記装置は、前記容器(10)内の充填レベルが開始値に対して低下した時にエラーメッセージを出力するように及び/又は前記装置の作動を停止するように構成されたコントローラを有している、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1及び/又は第2の回路は、閉じている、
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記容器(10)は、バッグ、特に可撓性バッグとして、更に特に単回使用(使い捨て)物品として構成されることを特徴とし、及び/又は
装置が、透析機械又は透析機械の一部を形成する、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液を再生する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ROプラント(RO=逆浸透)を通して透析機械に超純水を供給することは従来技術から公知である。超純水は、患者の処置に対して直ぐに使える透析液を取得するために1又は2以上の濃縮物と混合される。透析液は、透析機内で患者の血液から除去される物質で富化され、かつ流出物を通じて廃棄される。使用された透析液のエネルギ含量を部分的に利用することができるように、使用された透析液から直ぐに使える透析液に熱交換器を用いて熱を伝達することは更に公知である。
【0003】
これらの公知のシステム又は透析機械に関して、それらは、透析液の調製に大量の水を消費することに起因して、機械の搬送が困難を伴ってのみ可能であるか、又は全く可能でないほど必然的に大きくて重いことが欠点である。この欠点は、例えば在宅血液透析では特定の影響を有している。これに加えて、これは、処置中に患者に対して移動性を可能にすべきであるいわゆる可搬機械に等しく適用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的コンパクトに設計することができ、かつ公知の装置と比べて少ない水及びエネルギ消費を有するように最初に挙げた種類の装置を更に発展させることが本発明の基本的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を有する装置によって達成される。
【0006】
従って、装置は、第1の回路と第2の回路を有し、第1の回路が、使用された透析液を受け入れるための容器と、容器の下流に接続されたフィルタの1次側と、フィルタの1次側から容器の中への戻りラインとを有し、フィルタが、使用された透析液から清浄水、好ましくは超純水を調製するように構成され、第2の回路が、フィルタの2次側と、透析機の透析物側と、透析機の透析物側から容器の中への戻りラインとを有すると規定される。
【0007】
フィルタは、容器に含有された溶液から清浄水を調製する目的を有し、すなわち、汚染物質及びイオン、分子のような他の成分のその含有量又は濃度がフィルタに供給される溶液中のものよりも小さい水を調製する目的を有する。フィルタは、好ましくは、直ぐに使える透析液の調製に使用するのに適する水として本発明のフレーム内で理解される超純水を調製するように構成される。フィルタは、1又は複数の段にあるとすることができ、複数の段を通して溶液が次々と流される。水の望ましい純度を取得するために直列に接続された複数のフィルタの使用も考えられる。フィルタは、好ましくは、例えば巻回モジュールの形態にあるRO(逆浸透)フィルタである。
【0008】
装置は、好ましくは、直ぐに使える透析液を超純水及び1又は複数の濃縮物及び任意的に更に別の添加物から調製することができるように、超純水を誘導するラインの中に又は混合領域の中に開口する1又は2以上の濃縮物ラインを有する。
【0009】
フィルタは、好ましくはグラフェンフィルタである。これによって理解されるのは、グラフェン又は酸化グラフェンのようなグラフェン誘導体をフィルタ材料として含有するか又はこれらの材料から構成される又はそれを含むフィルタ材料を有するフィルタである。グラフェン又は酸化グラフェンは、気密かつ透水性であり、これは、第1から第2の回路の中への及び従って直ぐに使える透析液の中への気体進入が起こらないという本発明のフレーム内の利点をもたらす。
【0010】
しかし、本発明は、これらのフィルタに限定されず、むしろ、気体に対して好ましくは不透過性であるが液体を通す他のフィルタも含む。
【0011】
使用するフィルタが気体に対して不透過性のこの特性を持たない場合に、空気は、例えば、脱気リストリクタによって1次側で分離することができ、かつ次にバルブ(好ましくは圧力安全バルブ)を通じて容器の中に誘導して戻すことができ、すなわち、除去することができる。
【0012】
ポンプは、第1の回路内の流体の流れを達成するために好ましくはフィルタの上流で第1の回路に好ましくは配置される。このポンプがその搬送パワー又はその搬送圧力において調節可能である場合に、第1の回路を通る溶液のスループット及び/又はフィルタの1次側での液体の圧力は、ポンプを用いて最適フィルタ作動点に設定することができる。
【0013】
フィルタの1次側の圧力がそれを用いて調節可能である圧力安全バルブは、好ましくは、第1の回路内でフィルタの下流に位置付けられる。それは、ここでは、例えば、調節可能とすることができる圧力安全バルブとすることができる。フィルタの1次側の圧力条件は、このようにして望ましい値に又は望ましい範囲内で設定することもできる。
【0014】
圧力安全デバイスの周りにあり、かつ遮断要素によって閉鎖可能なバイパスラインは、第1の回路に設けることができる。これは、遮断要素が開いた状態でかつ膜の1次側に沿った流れがそこに存在するかつ例えばフィルム又は層として存在する可能性がある汚染物質を除去する状態でフィルタの1次側を自由に洗い流すのに必要であるとすることができる。
【0015】
センサ、好ましくは、導電率セルは、第1の回路内の物質の濃度を検出するために第1の回路に配置することができる。すなわち、全装置内で又は容器内及び/又は第1の回路内及び/又は第2の回路内のような少なくともその各部分内で水の完全な交換が必要であるような高い値を物質の濃度が既に取ったか否かを決定することが可能である。
【0016】
センサ、好ましくは、導電率セルは、透析機の前、すなわち、その上流で第2の回路に配置して2次側に存在するフィルタの水の純度を決定することができる。それが予め定められた限界内にない場合又はそれが限界値よりも低い場合に、フィルタの欠陥に関して結論を下すことができる。これを認識して相応にユーザに助言する及び/又は装置をオフに切り換えるコントローラが存在することができる。
【0017】
用語「上流」及び「下流」は、装置が作動している、すなわち、それを通して液体が流されている時の互いに対する構成要素の位置に関連することをこの時点で指摘しておく。
【0018】
圧力測定デバイスは、フィルタの2次側の下流に配置することができる。フィルタに欠陥があるか否かの表示は、そこで測定された圧力からも同様に取得することができる。これ以外にも、使用されるそれぞれのフィルタに対する理想的な値にその後に設定することができる膜間圧力がどのくらい大きいかは、1次側の圧力の知識を用いて決定することができる。これは、例えば、1次側に配置されたかつ第1の回路内でフィルタの上流に配置されたポンプによって行うことができる。
【0019】
直ぐに使える透析液を調製するための1又は2以上の濃縮物をフィルタの2次側から流出する水に供給するように構成された混合デバイスをフィルタの2次側の下流に設けることが更に考えられる。混合デバイスに至り、かつ濃縮物容器に接続することができ、又は濃縮物容器がそれに接続される1又は2以上の濃縮物ラインをこの目的のために設けることができる。
【0020】
本発明の更に別の実施形態では、装置は、望ましいか又は医師によって処方される患者の透析液損失を実現することができるように、好ましくは戻りラインからの透析液を除去するための限外濾過ポンプを有する。
【0021】
変形では、装置は、従来技術から公知であるような透析機への又はからの透析液の平衡供給及び除去のための平衡化チャンバを有する。しかし、これに代えて、例えば充填レベルセンサの支援によって第1の回路の容器を通じて平衡を実現することがこの新しい概念を用いて同じく考えられ、これは、装置の単純な設定を可能にする。
【0022】
既に上述のように、フィルタが気体に対して不透過性である場合に有利である。この場合に、第2の回路内の脱気デバイスは、省略することができる。
【0023】
装置は、好ましくは、容器に又は一方又は両方の回路に又は装置全体に位置付けられた液体を部分的に又は完全に廃棄するように、かつそれをセンサが濃度限界値を超える値をコントローラに報告した時に清浄水と交換するように構成されたコントローラを有する。これは、透析液が、再生が可能でないか又はもはや合理的に可能ではないほど非常に濃縮されているか又は非常に多くの汚染物質を有する時に該当する。
【0024】
レベルセンサは、装置が、容器内の充填レベルが開始値に対して低下した時にエラーメッセージを出力するように及び/又は装置の作動を停止するように構成されたコントローラを有すると好ましくは規定され状態で容器に配置することができる。本発明の好ましい実施形態を表す第1及び第2の回路が閉じている場合に、容器内の充填レベルの低下は、装置の漏出だけに起因するとすることができる。第1及び/又は第2の回路は、好ましくは閉じている。これにより、第1の回路は、容器からフィルタを通じて再び容器に至り、第2の回路は、フィルタから透析機を通じて容器に至り、そこから透析液が再びフィルタに供給されることは理解されるものとする。
【0025】
実施形態では、容器がバッグとして、特に可撓性バッグとして設計されると規定することができる。これは、容器の容積を柔軟性として設計することができるという利点を有する。これに加えて、バッグは使い捨てとして、すなわち、単回使用のための物品として設計されると規定することができる。容器は、すなわち、処置の終了後に単純方式で任意的にフィルタ及び透析機と共に処分することができる。すなわち、少量の廃棄物だけがバッグとしての設計では科せられる。
【0026】
装置は、透析機械の構成要素を表すことができ、又は腹膜透析機械、血液透析機械、又は血液透析濾過機械のような透析機械を形成することができる。
【0027】
本発明は、更に、請求項1から13のいずれかに1項に記載の装置を有する透析液を再生する方法に関連し、透析液は、容器からフィルタの1次側に供給され、保留物は、容器の中に戻され、透過物は、透析機に供給される直ぐに使える透析液が透過物を1又は2以上の濃縮物と混合することによって調製される装置の混合領域に供給される。
【0028】
治療処置中に容器に清浄水を供給することも、使用された溶液を排出することも処置行程に応じて可能ではない。これは、モバイル用途では特に重要である。水の交換は、好ましくは、再生がもはや可能ではない又は多大な労力によってのみ可能であるほど透析液が非常に濃縮された時にのみ行われる。これは、特に高い再生率が要求されるような容器が特に小型の設計である時に必要である可能性がある。そのような実施形態は、在宅透析に特に妥当であるとすることができる。本発明の技術的ソリューションの固定式用途に対して、第1及び/又は第2の回路での液体の循環的な交換が可能である(いわゆる清浄水循環)。
【0029】
単数形の用語は、要素のうちの厳密に1つをこれが可能な実施形態を表すとしても指すとは限らず、むしろ複数の要素を指定することもできることをこの時点で指摘しておく。複数形の使用も単数の当該要素の存在を等しく含み、逆に、単数形も複数の当該要素を含む。
【0030】
本発明の更に別の詳細及び利点を図面に示す実施形態を参照してより詳細に以下に解説する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による装置の概略図である。
図2】本発明の主題ではない更に別の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明による装置を示している。容器10の中への清浄水のための入口を参照符号Iによって示し、入口ラインはバルブV1によって遮断可能である。
【0033】
使用された溶液に対する容器10からの排出口をOによって示し、排出ラインはバルブV2によって遮断可能である。容器10はまた、以下では水入口チャンバと呼ぶことになる。
【0034】
固定水接続部を有する容器10又は透析液バッグのようなバッグなどのあらゆる他の容器も一般的に使用することができる。
【0035】
容器10は、剛性又は可撓性の壁を有することができる。
【0036】
参照番号100は、好ましくは、それを通して一方の側Dで透析物が流され、かつ他方の側Bで血液が流される複数の膜、好ましくは膜バンドル、を有する透析機を示している。透析機100を通して流され、かつ従って血液からの汚染物質で充填された透析液は、使用された透析液又は使用された透析物と呼ばれる。
【0037】
透析機100からライン40を通って水入口チャンバ10の中に誘導されて戻される消費透析物は、ポンプ50によって吸い込まれ、かつ上流に位置決めされて本発明の意味での第1の回路である回路の中にポンピングされる。
【0038】
この回路は、ポンプ50と、容器10と、フィルタ20の1次側、すなわち、膜の前の又は別のフィルタ媒体の前のセクションと、圧力安全バルブ60とを実質的に含み、これらの構成要素を接続するラインを含む。参照番号30は、バルブ60から容器10への戻りラインを示している。
【0039】
参照番号60は、圧力安全バルブを示している。ポンプ50は、容器10からフィルタ20の1次側21を通ってバルブ60を通じて容器10の中に戻るように消費透析液を搬送する。バルブ60にわたって及び従って同じくフィルタ20にわたって圧力低下がここで生じる。この圧力又は圧力低下は、バルブ60によって設定することができ、かつ従ってフィルタ20の理想的な作動点を用いて調整することができる。
【0040】
超純水が2次側22に、すなわち、フィルタ媒体の後に存在している状態で、フィルタ20の1次側21と2次側22の間の圧力勾配は、流れがフィルタ膜を通って又は他のフィルタ媒体を通って生じるという結果を有する。それは、混合回路、混合容器、ラインセクションなどとして設計することができる混合デバイス200の中に入る。
【0041】
塩基性濃縮物及び酸性濃縮物のような1又は2以上の濃縮物との超純水の混合は、混合回路又は混合容器などで行われる。可能であれば透析液によって透析機100内の血液から熱が引き出されないように、透析液の加熱又は後熱もそこで行うことができる。
【0042】
保留物、すなわち、フィルタ20によって分離されない液体の部分は、1次側に残り、かつバルブ60にわたって水入口チャンバ10の中に移動して戻る。
【0043】
これは、容器10内の液体が徐々に更に濃縮され、それによって導電率が増加するという結果をもたらす。
【0044】
図1から見ることができるように、第1及び第2の回路は、2つの閉じたカスケード接続の水回路又は液体回路である。これらの回路の2よりも多くが、一般的に存在してもよい。
【0045】
フィルタ20は、特に、グラフェンフィルタ技術に基づくことができ、それによって超純水を、溶存酸素なしでフィルタから同時に分離することができる。これは、個別の脱気回路のような透析機械内の更に別の構成要素を節約する。
【0046】
バルブ60を通じたフィルタ20のその1次側21での「洗浄」によって高い性能を達成することができ、フィルタ20の汚染を防止する又は遅らせることができる。フィルタ20の使用寿命は、それによって延びる。フィルタ20は、これに加えて、バルブ90が圧力安全バルブ60を短絡させることなく洗い流すことができる。この場合に、液体は、バルブ60をバイパスしながらバルブ90を含むバイパスの中に移動し、かつそこから容器の中に移動して戻る。この手順は、フィルタ性能が顕著に低下した場合に有利である。
【0047】
図1から更に見ることができるように、充填レベルセンサ110は、容器10に位置付けられる。これが、容器10内の充填レベルが限界値未満に低下したと報告する場合に、第1の回路と第2の回路の両方が閉じており、かつ充填レベルが従って同じに留まるべきであると考えられるので、漏出に関して結論を下すことができる。バルブV1及びV2は、通常作動時には、すなわち、水の交換が行われない時には閉じている。
【0048】
ポンプの後方、すなわち、その下流に、導電率セル70が存在することは、図1から更に分かる。回路作動によって生じた汚染液体の濃度は、従って測定可能であり、回路内の水を完全に交換すべき時期(清浄水循環)は、このようにして導出することができる。この交換は、バルブV1及びV2を使用して行うことができ、かつ容器10内のレベルセンサ110の支援によって容積的に平衡させることができる。
【0049】
通常透析作動時に、バルブV1及びV2は閉じており、それによってレベルセンサ10を、上述のように漏出モニタとして使用することができる。2つの閉回路のうちの一方が液体を失う場合に、これは、容器10内のレベルを参照して検出可能である。これは、患者安全性に寄与する。
【0050】
フィルタ20の機能を、フィルタ20の後方に、すなわち、その下流にある更に別の導電率セル80によってモニタすることができる。フィルタ膜又は別のフィルタ媒体への関連の損傷が存在すると直ぐに、導電性イオンがフィルタ20を通過し、これは、次に、センサ80によって検出することができる。
【0051】
任意的に、フィルタの性能の劣化又は喪失を決定することができるように、フィルタ20の下流に配置された圧力センサ102を用いて膜間圧力をフィルタ20にわたってモニタすることができる。
【0052】
2つの回路が閉じているので、透析物の加熱に対するエネルギ要件は大幅に落ちる。その結果、従来技術から公知の機械を用いる場合よりも小型の加熱デバイスを使用することができる。熱交換器は、確かに任意的に清浄水循環に対して考えられるが、コストの理由から同じく省くことができる。
【0053】
上述のように、フィルタ20の2次側22で生じる超純水は、機械の混合部200の中に移動し、かつ直ぐに使える透析液が患者の血液と交換するのに透析機100で利用可能であるようにそこで例えば重炭酸塩及び酸で富化される。
【0054】
参照符号B/Uは、医師による処方に対応して消費透析液から部分容積を引き出す平衡ユニット及び/又は限外濾過ポンプを示している。
【0055】
水よりも大きい有害物質は、2段(カスケード式)フィルタ付属品によって患者から依然として除去することができる。透析液からのNa及びClのようなイオンも含むこれらの物質は、続いて容器10内で濃縮され、かつ清浄水循環の一部として排出口Oを通じて廃棄される。限外濾過は、例えば、直接に排出口の中に搬送するユニットB/U内のUFポンプを通じて依然として行われる。これらの回路は閉回路であるので、例えば平衡化チャンバの支援によって今日行われるような容積平衡の利点を維持することができる。
【0056】
追加の脱気手段/脱気装置に対する要件は、フィルタ20が気体に対して不透過性であるという特性に起因してこの設計では省略される。これに代えて、必要であれば、使用するフィルタに応じて、脱気リストリクタ/脱気装置を図1で参照符号Eによって示すように上流回路、すなわち、第1の回路の中に導入することもできる。フィルタモジュール20又は例えば図1で20と60の間に配置することができる同じく個別の空気分離チャンバは、ここでは空気分離チャンバとして機能することができる。
【0057】
図2は、本発明の保護範囲の対象ではない変形を示している。同じである又は同じ機能を有する要素は、図1と同じ参照番号を有している。
【0058】
図2から見ることができるように、使用された透析物は、水入口チャンバ10の中に搬送されて戻る清浄水を分離するために透析機100を通って流れた後にフィルタ20に供給される。保留物は、排出口Oを通じて廃棄される。清浄水の導電率は、導電率センサ81で測定され、清浄水は、開放バルブV3を用いて容器10の中に移動する。フィルタ20は常に洗浄される訳ではなく、それによってフィルタ20がかなり迅速に詰まる、すなわち、性能を喪失するリスクがあることは、この概念では不利である。これは、増加した水部分を排出口Oにわたって廃棄するという点でのみ任意的に回避することができ、これは、水消費を増大させ、かつモバイル用途を不可能にする。濃縮された液体は、フィルタ20それ自体にのみ依然として回収することができ、これは、清浄水循環、すなわち、閉回路内の液体の交換を時間的に制御するのに導電率セルによる測定をより困難にする。
【0059】
図2の配置の更に別の欠点は、回路内の圧力状況である。フィルタにわたる膜間圧力は、いずれの更に別の構成要素もなしに透析フィルタに伝達して戻され、この透析フィルタは患者と接触している。この理由から、自由落下距離、減圧器、及び/又は同じくポンプのような更に別の構成要素が、そのようなシステムを設定するのに必要である。これは、図1による配置では、圧力側、すなわち、フィルタ20の1次側21が透析機100と直接に連通せず、むしろ2次側22と連通しているので該当しない。
【0060】
コンパクトで運搬し易く設計することができる透析機械の廉価な設計は、本発明により比較的少ない構成要素を用いて実施することができる。これは、低減した透析物流れ及び血液流れを用いてより長い透析処置を可能にすると考えられ、これは、それが腎臓の自然な機能に近づくので、処置の適合性に関してかつ患者の余命に関してその両方に有益である。
【0061】
本発明を限定しない本発明の好ましい実施形態の利点は、以下の通りである:
使用するフィルタ特性又はグラフェンフィルタ技術に応じた統合脱気が可能である;
2又は3以上の回路をカスケード形態に配置した状態で閉回路による統合平衡が可能である;
ROシステムが統合され、構成要素の節約、すなわち、コストと構成サイズの節約が従ってもたらされる;
フィルタにわたって洗浄するためにかつ同じく混合配置に対する圧力を構築して直ぐに使える透析物を調製するためにただ1つの圧力ポンプが必要であり、更に別のポンプを従って節約することができる;
フィルタの1次側が膜によって透析機から分離されるので、透析機にわたる患者への直接的な望ましくない戻り圧力の影響がない;
フィルタを全体洗浄することができ、使用寿命の増大が従ってもたらされる;
ポンプは、RO水では稼働せず、これは、ポンプの使用寿命の増大を伴う;
今日の機械と比べて水消費が少なく、従って加熱のためのエネルギ消費も少ない;
漏出が、低水警報/容器内の警報レベルよりも下への低下をもたらすので、容器内のレベルセンサを通じて漏出に対する自動検査が可能である;
フィルタの機能容量は、技術的安全方式で及び実際にフィルタの下流に配置された導電率セルなどを用いてモニタすることができる。従って、機械の以下の混合装置において透析物の正しい組成を達成することができることが保証される:
回路内の液体を交換すべき時期の時間制御は、消費溶液に接触する導電性セルを用いて可能であり(清浄水循環)、洗浄サイクルは、この導電性セルによって同じく決定することができる;
それは、コンパクトで廉価な機械概念である;
患者の液体含量の平衡化は、閉回路によって簡略化される;
単純で極めて正確な限外濾過が可能である;
透析機械の混合デバイスのための高度に無菌性の開始液体を調製することができる;
装置は、腹膜透析(PD)機械に及び血液透析(HD)機械に使用することができ、又はそれらを形成することができる。装置は、透析機械又はその一部を表すことができる。
【0062】
図1による構成要素との様々な組合せも考えられる。
【0063】
例えば、ポンプ50は、従って任意的である。
【0064】
センサ70は、固定式制御、すなわち、フィルタの固定式清浄水循環行程/洗浄行程で置換することもできる。
【0065】
脱気装置Eは、使用するフィルタに応じて存在する又は省略することもできる。
【0066】
ポンプ50は、センサ80の前又は背後に配置することもできると考えられるが、この構成では全体洗浄は可能ではなく、フィルタの性能喪失を伴う図2の問題が生じると考えられる。
【0067】
しかし、センサ80の前又は背後への又はライン40への又はB/Uユニット内へのフィルタの出力側(2次側)の更に別のポンプも同じく考えられるであろう。
【0068】
加熱は、第1の回路内及び第2の回路内の両方に提供することができる。
【0069】
透析液又は超純水を搬送するためのポンプは、好ましくは第2の回路内にも存在する。
【0070】
図1による概念は、好ましくはグラフェンフィルタ技術を使用するが、本発明は、これにも別の特定のフィルタにも限定されない。これらの膜が汚染された液体から水/超純水を分離することができる場合に、図1の概念を用いて又は本発明によって他の技術も考えられる。
【0071】
従来技術から公知のROフィルタシステムは、典型的に異なる技術に基づいている。それらは、比較的劣った性能を有する典型的に巻回モジュールであるが、これらのフィルタもフィルタ20として考えられる。
図1
図2