(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/28 20060101AFI20240813BHJP
D01F 9/22 20060101ALI20240813BHJP
F27B 9/34 20060101ALI20240813BHJP
F27B 5/08 20060101ALI20240813BHJP
F27B 5/04 20060101ALI20240813BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F27B9/28
D01F9/22
F27B9/34
F27B5/08
F27B5/04
F27D1/00 D
(21)【出願番号】P 2020555159
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2019057981
(87)【国際公開番号】W WO2019197176
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】102018108291.6
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520086885
【氏名又は名称】ウォンチュン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ムック
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-082611(JP,A)
【文献】特開平02-175923(JP,A)
【文献】実開平01-173176(JP,U)
【文献】特開2004-099355(JP,A)
【文献】特開2001-240472(JP,A)
【文献】特開昭56-043423(JP,A)
【文献】特開昭63-017381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
F27B 5/00- 7/42
D01F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維(12)、又は、酸化ポリアクリロニトリル(PAN)からなる繊維(14)の炭化及び/又は黒鉛化のための炉であって、
a) 炉筐体(16)と、
b) 前記炉筐体(16)の内部空間(18)内に位置すると共に、
処理空間雰囲気を有する処理チャンバ筐体(24)によって区切られており、かつ、内部へ処理される材料を導入することができ
、前記処理チャンバ筐体は、その中に形成された導入開口部を含み、前記材料は、前記導入開口部を通って処理される処理空間に入る、該処理空間(22)と、
c)
前記処理チャンバ筐体の内部に配置された加熱要素を有し、前記処理空間(22)内に存在する処理空間雰囲気(30)を加熱することができ
る、加熱システム(32)と、
d)
前記炉筐体の内部側と前記処理チャンバ筐体の外部側との間に存在し、前記処理チャンバ筐体を少なくとも領域で取り囲む断熱空間であって、前記断熱空間は、前記処理空間(22)を熱的に断熱する断熱層(38)
を有する、断熱空間と、
を備えており、
e)
前記断熱空間は、前記断熱空間を少なくとも2つの断熱部分に分割する少なくとも1つの中間壁を含み、
前記断熱空間は、前記炉筐体の外面に形成された複数の閉鎖可能なアクセス開口部(70)を通じてアクセス可能であり、前記閉鎖可能なアクセス開口部(70)を通じて断熱層を補充し、かつ、高密度化することができ、
各前記閉鎖可能なアクセス開口部(70)は、それぞれ、これからアクセス可能な断熱部分を有し、各前記断熱部分における前記断熱層を補充することができ、
f) 前記断熱層(38)
は、前記処理チャンバ筐体の外部の少なくとも一部が、前記断熱層に隣接し、前記処理チャンバ筐体の内部の少なくとも一部が、前記処理空間と前記処理空間雰囲気との境界となるように、前記処理チャンバ筐体に隣接して構成された、固体粒子状材料(60)からなる断熱材充填層(58)であ
ることを特徴とする、炉。
【請求項2】
前記固体粒子状材料(60)は、粒子状材料、粉状材料、又は粉末材料の形態を成す粒状材料である、又は、ペレット材料に加工されている、ことを特徴とする請求項1に記載の炉。
【請求項3】
前記固体粒子状材料(60)は、カーボンブラック材料、又は、炭素含有率が99.5%超のカーボンブラック材料である、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炉。
【請求項4】
前記カーボンブラック材料は、ガスブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、クラッキングからのカーボンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、又は、これらのカーボンブラックの種類の複数の混合物である、ことを特徴とする請求項3に記載の炉。
【請求項5】
前記断熱空間(62)は、外側の境界が、前記炉筐体(16)の対応する領域(66)によって形成されている環状空間(64)として構成されている、ことを特徴とする
請求項1に記載の炉。
【請求項6】
前記加熱システム(32)は、前記処理空間(22)内に配置された、少なくとも1つの加熱要素(74)を備える、ことを特徴とする請求項1から
請求項5の何れか1項に記載の炉。
【請求項7】
前記加熱システム(32)は、前記処理空間(22)に隣接する加熱空間(82;82a,82b)内に配置された、少なくとも1つの加熱要素(74;74a,74b)を備える、ことを特徴とする請求項1から
請求項6の何れか1項に記載の炉。
【請求項8】
前記加熱空間(82;82a,82b)は、前記処理空間の上方側又は下方側に配置されている、ことを特徴とする
請求項7に記載の炉。
【請求項9】
前記加熱要素は、第1の加熱要素(74a)とされ、かつ、前記加熱空間は、第1の加熱空間(82a)とされており、前記加熱システム(32)は、前記処理空間(22)に隣接する第2の加熱空間(82b)内に配置された、少なくとも1つの第2の加熱要素(74b)を備える、ことを特徴とする
請求項7又は請求項8に記載の炉。
【請求項10】
前記第1の加熱空間(82a)は、前記処理空間(22)の上方側に配置されると共に、前記第2の加熱空間(82b)は、前記処理空間(22)の下方側に配置されている、ことを特徴とする
請求項9に記載の炉。
【請求項11】
前記処理チャンバ筐体(24)は、マッフル(26)、又は、黒鉛からなるマッフル(26)として構成されている、ことを特徴とする請求項1から
請求項10の何れか1項に記載の炉。
【請求項12】
前記処理チャンバ筐体(24)は、前記処理空間(22)と1つ又は複数の前記加熱空間(82;82a,82b)とを区切っている、ことを特徴とする
請求項7から請求項10の何れか1項に記載の炉。
【請求項13】
前記炉(10)は、連続炉とされており、前記処理される材料を、前記処理空間(22)を通じて通過させることができる、ことを特徴とする請求項1から
請求項12の何れか1項に記載の炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料、特に繊維、特に酸化ポリアクリロニトリルPANからなる繊維を熱処理するための、特に炭化及び/又は黒鉛化するための炉であって、
a) 炉筐体と、
b) 炉筐体の内部空間内に位置すると共に、処理チャンバ筐体によって区切られており、かつ、内部へ処理されるべき材料を導入することができる、処理空間と、
c) 処理空間内に存在する処理空間雰囲気を加熱することができる、加熱システムと、
d) 処理空間を熱的に断熱する断熱層と、
を備える炉に関する。
【背景技術】
【0002】
この様な炉は、特に、3段階又は4段階のプロセスでポリアクリロニトリルからなる繊維から形成される、炭素繊維の製造において使用される。ポリアクリロニトリルは、以下、大抵の場合PANと略記される。フェルト及び不織布、並びに、炭素繊維紙も、この様な炉内で処理することができる。PAN以外の材料は、例えば、ビスコース及びリグニンである。
【0003】
第1の製造段階において、ポリアクリロニトリルは、酸化PAN繊維を形成するために、酸化炉内における酸素の存在下で、摂氏約200℃から約400℃の範囲の温度において酸化される。
【0004】
次いで、これらの酸化されたPAN繊維は、第2の製造段階において、炭化によって繊維中の炭素の割合を増加させるために、摂氏約400℃から約1000℃の炉内の無酸素不活性ガス雰囲気の中で熱処理されており、酸化されたPAN繊維中の炭素の割合は約62重量パーセントとされている。通常は、不活性ガスとして窒素N2が使用される。
【0005】
第3製造段階において、熱処理は、高温炉と称される上述の形式の炉内において、摂氏800℃から1800℃の窒素雰囲気下において行われ、PAN繊維の炭素含有率が、約92重量パーセントから95重量パーセントになるまで、PAN繊維を熱分解する炭化をもたらす。
【0006】
場合によっては、第3製造段階後に得られた炭素繊維に、第4製造段階において、上述の形式の炉内において、摂氏1800℃から3000℃の範囲の温度の無酸素不活性ガス雰囲気中でさらなる熱処理にさらされる。このような温度は、99重量パーセント超の炭素含有率を有し、いわゆる、グラファイト繊維と称される、炭素繊維の黒鉛化をもたらす。通常、黒鉛化の間は、不活性ガスとしてアルゴンArが使用される。
【0007】
公知の高温炉において、黒鉛から構成されると共に、マッフル(muffle)を取り囲む加熱ケージが中にある、又は、単なる加熱要素がマッフルの上方側及び下方側に収容されている、加熱空間によって取り囲まれている、マッフルによって、処理空間は、区切られている。処理空間を熱的に断熱する断熱層は、加熱空間を取り囲むと共に、通常は、黒鉛の硬質又は軟質フェルトから、時には、炉筐体と加熱空間との間に適切に配置されたセラミック繊維と組み合わされて、作られている。しかしながら、この様な断熱材料は、断熱特性が比較的劣っており、特に、上述の高い温度範囲では、かなり高い熱伝導性を示す。それゆえ、熱損失、及び、この結果として、炉温度を維持するためのエネルギー消費が発生する。
【0008】
炉が、水冷式である上述の形式の炉もある。この場合、処理空間を熱的に断熱する断熱層は、液体層によって形成されている。しかしながら、このような断熱コンセプトは、構造的にもエネルギー的にも極めて多大な手間がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、エネルギー効率のよい方法で実行することができる、上述の形式の炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を達成する炉は、
e) 断熱層は、固体粒子状材料からなる断熱材充填層(insulation fill)である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固体粒子状材料が、周知の断熱コンセプトを超える高い熱断熱作用を有することができ、特に、水冷式システムと比較して構造的な複雑さが僅かとなる、ことが認められる。固体粒子状材料は、好ましくは、自由流動性のバルク材料とされている。
【0012】
断熱材充填層の固体粒子状材料が圧縮されていることは、有利である。この結果、固体粒子状材料の圧縮されていない断熱材充填層と比較して、断熱効果を高めることができる。
【0013】
固体粒子状材料は、好ましくは、特に、粒子状材料、粉状材料、又は粉末材料の形態を成す粒状材料である、又は、ペレット材料に加工されている。
【0014】
固体粒子状材料は、カーボンブラック材料、特に、炭素含有率が99.5%超のカーボンブラック材料であると、特に良好な断熱作用を達成することができる。
【0015】
実際には、カーボンブラック材料は、有利には、ガスブラック、ファーネスブラック、ランプブラック(Flammruss)、クラッキングからのカーボンブラック(Spaltruss)、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、又は、これらのカーボンブラックの種類の複数の混合物とされてもよい。
【0016】
断熱材充填層は、好ましくは、処理チャンバ筐体を少なくとも部分的に取り囲んでいる、断熱空間内に位置している。
【0017】
断熱空間は、好ましくは、外側の境界が、炉筐体の対応する領域によって形成されている環状空間として構成されてもよい。
【0018】
断熱空間は、少なくとも部分的に、処理チャンバ筐体に隣接していると有利である。断熱空間が処理チャンバ筐体と隣接している場所では、断熱層と処理チャンバ筐体との間には、中間スペースはない。
【0019】
処理空間雰囲気を加熱するために、加熱システムは、処理空間内に配置された、少なくとも1つの加熱要素を備えることは、有利であり得る。この場合、この様な加熱コンセプトを実行するときは、例えば、断熱空間が、処理チャンバ筐体を周方向において完全に取り囲むと共に、処理チャンバ筐体に隣接することも可能である。
【0020】
代わりに、又は、追加で、加熱システムは、処理チャンバ筐体に隣接する加熱空間内に配置された、少なくとも1つの加熱要素を備えると、有利であり得る。この場合には、断熱層は、加熱空間が処理チャンバ筐体と隣接している場所では、処理チャンバ筐体とは隣接していない。
【0021】
加熱空間は、好ましくは、処理空間の上方側又は下方側に配置されている。しかしながら、加熱空間、及び、この結果として、加熱空間内に収容された加熱要素が、処理チャンバ筐体の側部に設けられている、代わりの、又は、補足的な変形例も可能である。
【0022】
特に効果的な変形例は、加熱要素が、第1の加熱要素とされ、かつ、加熱空間は、第1の加熱空間とされており、加熱システムが、処理空間に隣接する第2の加熱空間内に配置された、少なくとも1つの第2の加熱要素を備えるときに、得られる。
【0023】
好ましくは、第1の加熱空間は、処理空間の上方側に配置されると共に、第2の加熱空間は、処理空間の下方側に配置されている。
【0024】
処理チャンバ筐体が、マッフルとして、特に、黒鉛からなるマッフルとして構成されていることは、有利である。
【0025】
1つ又は複数の加熱空間が存在する場合は、処理チャンバ筐体が、処理空間と1つ又は複数の加熱空間とを区切っていることは、有利である。
【0026】
炉は、処理される材料を処理空間内へ導入し、かつ、再び処理空間から取り出すことができる、単一の導入部を有するバッチ炉として構成されてもよい。しかしながら、炉が連続炉であり、処理される材料を、処理空間を通して通過させることは、有利である。このことは、冒頭で述べた繊維が処理される場合に、特に有利である。
【0027】
本発明の実施例を、図面に基づいて以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、炭素繊維を熱処理するための炉を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された炉の第1実施例の入口部分を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された炉の第1実施例の、
図1に示された断面IIIにおける横断面図である。
【
図4】
図4は、炉の第2実施例の対応する横断面図である。
【
図5】
図5は、炉の第3実施例の対応する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1から
図5に示された実施例では、繊維12、及び、例えば、以下ではoxPAN繊維14と称する酸化ポリアクリロニトリルからなる繊維14とされている、材料の熱処理のための炉10が、図面に示されている。
【0030】
炉10は、内部空間18を区切っている、炉筐体16を備えている。炉筐体16は、記載された実施例では、鋼から構成されている。炉筐体16は、一方の端面に、
図2においてのみ見ることができる繊維導入通路20を有しており、示された表示では見ることができない反対側の端面に、繊維排出通路を有している。これらの通路を除いて、炉筐体16は、気密とされている。
【0031】
炉筐体16の内部空間18内には、マッフル26の形式の処理チャンバ筐体24によって順番に区切られている、処理空間22がある。処理チャンバ筐体24は、矩形断面を有しているが、他の、例えば、湾曲した又は円形の横断面も可能である。本実施例の場合、マッフル26は、黒鉛から作られている。処理チャンバ筐体24、すなわち、マッフル26は、一方の端面に、
図2でのみ見ることができる繊維導入開口部28を有し、反対側の端面には、図面からは見ることができない繊維排出開口部を有している。炉10の作動中、処理空間22内には処理空間雰囲気30が存在している。
【0032】
炉10は、加熱システム32を有しており、処理空間雰囲気30は、加熱システム32によって加熱される。処理空間22におけるマッフル26の繊維導入開口部22と繊維排出開口部との間には、
図1では5つの加熱区域34.1、34.2、34.3、34.4、34.5を見つけることができる、連続する加熱区域34が形成されている。温度は、処理空間22内において、摂氏約800℃から約1800℃までの温度勾配となるように、加熱区域間で上昇する。各加熱区域34には、関連する加熱区域34内のマッフル26を適切に加熱する、それ自体が知られているような、専用の加熱装置36が割り当てられている。炉10は、処理空間22を熱的に断熱する断熱層38を備える。
【0033】
加熱装置36及び断熱層38は、
図3から
図5に関連して、さらに詳しく説明される。
【0034】
導入側端部では、炉10は、別個のロック筐体42を有する取込みロック部40と、同様に、別個のロック筐体を備えた、示された表示では見ることができない、取り出しロック部と、を有する。oxPAN繊維14の熱処理が、不活性ガス雰囲気下で進められるように、見ることができない外側ロック部を介して、炉筐体16の内部空間18に、それから、処理空間22にも、不活性ガス装置44を用いて不活性ガス46が供給される。冒頭で述べたように、実際には、摂氏1800℃超の温度において、窒素N2又は、アルゴンArが不活性ガスとして使用されている。処理空間雰囲気30は、不活性ガスと、oxPAN繊維14の処理時に放出される熱分解ガスとの混合物である。
【0035】
炉10は、さらに、処理空間雰囲気30を処理空間22から取り出すことができる、全体的に符号48で示された抽出システムを備える。本実施例では、取込みロック部40と炉筐体16との間に、流動空間54を区切る、抽出システム48の抽出装置52の通過筐体50を見つけることができる。不活性ガス46が、取込みロック部40から流動空間54を通って処理空間22内へ流入することができるように、この流動空間54は、一方の端部では取込みロック部40と気密に接続されると共に、他方の端部では炉筐体16と気密に接続されている。
【0036】
oxPAN繊維14は、個別には図示されていない、それ自体が、繊維カーペット56として知られている運搬システムによって、取込みロック部40を通り、流動空間54を通り、そして、さらに炉筐体16の繊維導入通路20を通って、その内部空間18内へ搬送され、そして、そこから、処理チャンバ筐体24の繊維導入開口部26を通って処理空間22内へと搬送される。繊維カーペット56は、処理空間22と、そこに設けられた加熱区域34と、を通過し、それから、処理チャンバ筐体24の繊維排出開口部を通過し、炉筐体16の繊維排出通路を通過し、そして、最後に、繊維排出通路に接続された取り出しロック部を通って炉10から出るように搬送される。
【0037】
それゆえ、炉10は、連続炉として構成されている。繊維12以外の材料に対しては、炉は、個別には示されていない変形例において、バッチ炉(Batch-Ofen)として構成されていてもよい。この場合、材料は、図示された通路を介して、処理空間22内へ導入され、処理が終了すると、処理空間22から取り出される。
【0038】
上述された断熱層38は、固体粒子状材料60からなる断熱材充填層58とされている。実際には、固体粒子状材料60は、自由流動性(rieselfaehig)のバルク材料である。
【0039】
断熱材充填層58は、処理チャンバ筐体24を少なくとも部分的に取り囲んでいる、断熱空間62内に位置している。図示された実施例では、断熱空間62は、処理チャンバ筐体24と少なくとも部分的に隣接している。
【0040】
図示された実施例では、断熱空間62は、外側の境界が、炉筐体16の対応する領域66によって形成されている、環状空間64として構成されている。取込みロック部40及び取り出しロック部の側において、環状空間64は、それぞれ1つの環状壁68によって閉じられており、対応する環状壁68は、
図2で見ることができる。
【0041】
断熱材充填層58は、最初に、個別に符号が付けられていない筐体蓋が解放された状態で、断熱空間62内に導入され、ランマー(Stampfern)で圧縮される。断熱材充填層58を、振動によって圧縮することも可能である。さらに、炉筐体16の一部分を、一時的に外部から振動させることもできる。代わりに、振動発生器を断熱材充填層58の内部へ導入することもできる。
【0042】
時間の経過と共に、断熱材充填層58は、作動に関連する加熱及び冷却時の温度変化によって圧縮される。さらに、雰囲気との反応による材料の収縮も生じ得る。このことは、特に、摂氏1800℃を超える高温において生じる。
【0043】
このような圧縮又は材料収縮を補うことができるようにするために、炉筐体16は、例えば、
図1でのみ示された導入口の形式の閉鎖可能なアクセス開口部70を有する。断熱空間62は、中間壁によって、各アクセス開口部70を介してアクセスすることができる複数の断熱部分に分割されてもよい。例えば、このような断熱部分を、各加熱区域34に割り当てることができる。
【0044】
このように補充された固体粒子状材料60も、上述のように、ランマーによって、及び/又は、振動によって圧縮することができる。
【0045】
固体粒子状材料60は、特に、粒子状材料、粉状材料、又は、粉末材料の形態を成す粒状材料であってよい。代わりに、固体粒子状材料は、ペレット材料に加工されていてもよい。カーボンブラック材料、特に、炭素含有率が99.5%超のカーボンブラック材料において、特に良好な熱断熱作用、すなわち、低い熱伝導性が得られる。カーボンブラック材料は、有利には、ガスブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、クラッキングからのカーボンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、又は、これらのカーボンブラックの種類の複数の混合物とされてもよい。
【0046】
図2から
図5に示された全ての実施例において、処理チャンバ筐体24、すなわち、マッフル26は、断熱空間62を通って下方側へ向けて延在すると共に、炉筐体16の底部にしっかり固着されている、支柱72上に取り付けられている。処理チャンバ筐体24を、導入側端部及び排出側端部において、炉筐体16に固定することで十分であり、この場合には、支柱72を省略することができる。
【0047】
図2及び
図3は、断熱空間62が、周方向に処理チャンバ筐体24を完全に取り囲んでおり、かつ、周方向に処理チャンバ筐体24と完全に隣接している、炉10の第1実施例を示している。このことは、
図3で見ることができる。この場合、断熱材充填層58のための断熱空間62は、周方向において、一方では炉筐体16の上述した領域66によって区切られており、かつ、他方では、処理チャンバ筐体24、すなわち、マッフル26によって区切られている。
【0048】
加熱装置36は、各加熱区域34のために、処理空間22内に配置された、1つの加熱要素74を備える。加熱要素74は、本実施例では、プレート形状とされている。加熱要素74のための材料としては、例えば、黒鉛、又は、炭素繊維強化炭素CFC(炭素繊維炭素複合材料(carbon fiber carbon composite))の形式の複合材料が考えられる。加熱要素74は、炉筐体16の外部に設けられ、具体的には図示されていない加熱モジュールを介して、それ自体公知の方法で、作動されており、加熱モジュールは、接続ヘッド76及び電気的な接続ピン78を介して、加熱要素74と接続されており、接続ピン78は、処理チャンバ筐体24と、断熱空間62と、炉筐体16と、を通って延在している。
【0049】
図2及び
図3に示された実施例では、処理チャンバ筐体24は、処理空間22を区切るだけの、単一チャンバ筐体80として設計されている。
【0050】
図4に示された炉10の第2実施例では、処理空間22は、内部に加熱要素74が配置された、加熱空間82によって隣接されている。加熱空間82は、仕切り壁84によって処理空間24から分離されている。
【0051】
このために、処理チャンバ筐体24、すなわち、マッフル26は、マルチチャンバ筐体86として、この場合は、2つのチャンバ筐体88として構成されている。2つのチャンバ筐体88は、一方では処理空間22を、他方では加熱空間82を区切っている。
【0052】
具体的には図示されていない変形例では、加熱空間82は、処理チャンバ筐体24に取り付けられた、別個の筐体によって区切られてもよい。
【0053】
加熱空間82は、処理空間22の上部に位置する。具体的には図示されていない変形例では、加熱空間82は、加熱要素74と共に、処理空間22の下方側にも配置されてよい。
【0054】
図5に示された炉10の第3実施例では、処理空間22の上部の加熱空間は、第1の加熱空間82aとされており、第1の加熱空間82a内に収容された加熱要素は、第1の加熱要素74aとされている。仕切り壁は、第1の仕切り壁84aとされている。さらに、第2の加熱空間82bは、第2の加熱要素74bが配置されている処理空間22に隣接している。第2の加熱空間82bは、第2の仕切り壁84bによって処理空間24から分離されている。
【0055】
このためには、処理チャンバ筐体24、すなわち、マッフル26は、再度、マルチチャンバ筐体86として、この場合は、3つのチャンバ筐体90として構成されている。3つのチャンバ筐体90は、一方では処理空間22を、他方では第1の加熱空間82a及び第2の加熱空間82bを区切っている。
【0056】
具体的には図示されていない変形例では、これに対応して、第1の加熱空間82a及び/又は第2の加熱空間82bは、処理チャンバ筐体24に取り付けられた別個の筐体によって、それぞれ区切られ得る。
【0057】
第2の加熱空間82bは、処理空間22の下方側に位置する。
【0058】
具体的には図示されていない変形例では、加熱空間82又は82a及び82bの代わりに、又は、これに加えて、その中に、又は、その中に垂直方向に配向された加熱要素が配置されている、1つ又は複数の加熱空間が、処理空間22に続いて側方に設けられてもよい。
【0059】
したがって、加熱空間82又は加熱空間82a、82bを有する実施例では、断熱空間62又は断熱材充填層58が、周方向に処理空間22と完全に隣接することは不可能である。加熱空間82、82a、82bの領域内では、これらは、それぞれ処理空間22と断熱空間62及び断熱材充填層58との間に配置されている。
【0060】
同じく具体的に示されていない変形例では、炉10全体、又は、少なくとも処理空間22は、繊維12によって垂直方向に横断することができる。この場合、加熱要素74、74a、74b、及び、おそらく関連する加熱空間82、82a、82bは、それぞれ、もはや水平ではなく、垂直に整列されている。
【0061】
具体的には図示されていない更なる変形例の場合、炉筐体16は、追加の熱断熱部を更に備えることができる。
態様(1)において、材料、特に繊維(12)、特に酸化ポリアクリロニトリル(PAN)からなる繊維(14)を熱処理するための、特に炭化及び/又は黒鉛化するための炉であって、
a) 炉筐体(16)と、
b) 前記炉筐体(16)の内部空間(18)内に位置すると共に、処理チャンバ筐体(24)によって区切られており、かつ、内部へ処理される材料を導入することができる、処理空間(22)と、
c) 前記処理空間(22)内に存在する処理空間雰囲気(30)を加熱することができる、加熱システム(32)と、
d) 前記処理空間(22)を熱的に断熱する断熱層(38)と、
を備えており、
e) 前記断熱層(38)が、固体粒子状材料(60)からなる断熱材充填層(58)であることを特徴とする、炉が提供される。
態様(2)において、前記断熱材充填層(58)の前記固体粒子状材料(60)は、圧縮されている、ことを特徴とする。
態様(3)において、前記固体粒子状材料(60)は、特に、粒子状材料、粉状材料、又は粉末材料の形態を成す粒状材料である、又は、ペレット材料に加工されている、ことを特徴とする。
態様(4)において、前記固体粒子状材料(60)は、カーボンブラック材料、特に、炭素含有率が99.5%超のカーボンブラック材料である、ことを特徴とする。
態様(5)において、前記カーボンブラック材料は、ガスブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、クラッキングからのカーボンブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、又は、これらのカーボンブラックの種類の複数の混合物である、ことを特徴とする。
態様(6)において、前記断熱材充填層(58)は、前記処理チャンバ筐体(24)を少なくとも部分的に取り囲んでいる、断熱空間(62)内に位置している、ことを特徴とする。
態様(7)において、前記断熱空間(62)は、外側の境界が、前記炉筐体(16)の対応する領域(66)によって形成されている環状空間(64)として構成されている、ことを特徴とする。
態様(8)において、前記断熱空間(62)は、少なくとも部分的に、前記処理チャンバ筐体(24)に隣接している、ことを特徴とする。
態様(9)において、前記加熱システム(32)は、前記処理空間(22)内に配置された、少なくとも1つの加熱要素(74)を備える、ことを特徴とする。
態様(10)において、前記加熱システム(32)は、前記処理空間(22)に隣接する加熱空間(82;82a,82b)内に配置された、少なくとも1つの加熱要素(74;74a,74b)を備える、ことを特徴とする。
態様(11)において、前記加熱空間(82;82a,82b)は、前記処理空間の上方側又は下方側に配置されている、ことを特徴とする。
態様(12)において、前記加熱要素は、第1の加熱要素(74a)とされ、かつ、前記加熱空間は、第1の加熱空間(82a)とされており、前記加熱システム(32)は、前記処理空間(22)に隣接する第2の加熱空間(82b)内に配置された、少なくとも1つの第2の加熱要素(74b)を備える、ことを特徴とする。
態様(13)において、前記第1の加熱空間(82a)は、前記処理空間(22)の上方側に配置されると共に、前記第2の加熱空間(82b)は、前記処理空間(22)の下方側に配置されている、ことを特徴とする。
態様(14)において、前記処理チャンバ筐体(24)は、マッフル(26)として、特に、黒鉛からなるマッフル(26)として構成されている、ことを特徴とする。
態様(15)において、前記処理チャンバ筐体(24)は、前記処理空間(22)と前記1つ又は複数の加熱空間(82;82a,82b)とを区切っている、ことを特徴とする。
態様(16)において、前記炉(10)は、連続炉とされており、前記処理される材料を、前記処理空間(22)を通じて通過させることができる、ことを特徴とする。