(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】調節されたグリカンプロファイルを有する抗体
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
(21)【出願番号】P 2020560390
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 US2019029850
(87)【国際公開番号】W WO2019213043
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-04-21
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クローウェル,クリストファー・ケニヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジアン
(72)【発明者】
【氏名】ナギ,アテナ・デニース
(72)【発明者】
【氏名】キッチン,ニール・アントニー
(72)【発明者】
【氏名】ガレスピー,アリソン・ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ペトロバン,シミナ・クリナ
(72)【発明者】
【氏名】ブランデンスタイン,マイケル・チャールズ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/159259(WO,A1)
【文献】特表2016-531581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デノスマブ分子上に存在する高マンノース
-5グリカンのレベルを増加させる方法であって、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものであり、
(a)細胞密度が少なくとも1×10
6生細胞/mLになるまで、増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞をインキュベートする工程
であって、前記第1の培養培地は、1g/L~20g/Lのグルコースを含
む工程と、その後、
(b)産生期の間、第2の培養培地中で前記工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程
であって、前記第2の培養培地は、0g/L~10g/Lのグルコース及び5g/L~20g/Lのガラクトースを含む
工程と、
を含み、
前記デノスマブ分子の2%~14%は、N-298部位に高マンノース
-5グリカンを含み、
前記デノスマブは、25pM以下の結合親和性(KD)値でヒトRANKLに結合し、
前記デノスマブ分子の少なくとも5%が、ガラクトース部分を含む一つ以上の糖化リジン残基を含む、方法。
【請求項2】
前記増殖期の間、前記グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって4g/L~20g/Lに維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宿主細胞が、前記産生期の間、前記第2の培養培地中でインキュベートされるとき、ボーラス供給又は灌流によって、前記グルコース濃度は、0g/L~8g/Lに維持され、前記ガラクトース濃度は、7g/L~15g/Lに維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記産生期の間、前記宿主細胞は最初に
、3~15日間、前記第1の培養培地中に維持され、その後、灌流又はボーラス供給によって、前記第2の培養培地中に移される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)において、
前記増殖期の間、前記第1の培養培地中の前記哺乳動物宿主細胞は、細胞密度が5×10
6
生細胞/mL~60×10
6
生細胞/mLに達するまで、インキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記デノスマブ分子
の4%
~11%は、N-298部位に高マンノース
-5グリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳動物宿主細胞は、CS-9細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の培養培地は、メトトレキサート(MTX)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞をインキュベートし、1回以上のボーラス供給により培養物を補充する工程
であって、前記増殖期の間、前記グルコース濃度は
、4g/L
~18g/Lに維持される
工程と、
(b)工程(a)からの宿主細胞を増殖期から産生期へ移行させ
、3日
~15日間、前記グルコース濃度
を4g/L
~18g/Lに維持する工程と、その後、
(c)前記(b)の宿主細胞を第2の培養培地に移す工程
であって、前記第2の培養培地は
、1g/L
~5g/Lのグルコース及び10g/L
~12g/Lのガラクトースを含む
工程と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記デノスマブ分子の4%~11%は、N-298部位に高マンノース
-5グリカンを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下、2018年5月1日に出願された米国仮特許出願第62/665,045号明細書に基づく利益を主張するものであり、その出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、組換え発現抗体、及びこのような抗体のグリカンプロファイルを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
糖タンパク質のグリカン部分の構造及び組成は、治療用タンパク質の安全性及び有効性、例えば、その免疫原性、溶解性及び半減期に影響し得る。哺乳動物細胞の培養で産生されるタンパク質は、マンノース5(Man-5)、マンノース6(Man-6)、マンノース7(Man-7)、マンノース8(Man-8)及びマンノース9(Man-9)などの高マンノースグリコフォームを様々なレベルで含有し得る。マンノース含量の高い抗体は、Man-5グリカン及びMan-7、8又は9グリカンを有する抗体によって示される治療活性及びクリアランス速度に差があるために興味深いものになっている。例えば、キフネンシン処理で生成された高マンノース抗体は、高いADCC活性、及びFCγRIIIAに対する高い親和性を示した(Zhou et al.,(2008),Biotechnol Bioeng 99(3):652-665)。同様に、Yuらは、Man-5及びMan-8/9グリコフォームがADCC活性を増加させ、CDC活性を減少させ、FcγRIIIAへの結合親和性を増加させ、FcγRIIA及びIIBへの結合親和性を減少させたようにみえると報告している(Yu et al.,MAbs. 2012 Jul 1;4(4):475-487.doi:10.4161/mabs.20737)。したがって、高マンノースグリカン(例えば、Man-5)を増加させた抗体組成物は、いくつかの治療上の利益を提供することができる。
【0004】
一方、Man-5及びMan-6グリコフォームはまた、複合体フコシル化グリコフォームよりも速いクリアランス速度を示すことも報告されている(Yuら、上記)。したがって、高レベルのMan-5グリカンは、抗体の半減期の減少及び迅速なクリアランスをもたらし得る。したがって、PK特性と治療活性(例えば、ADCC)との間の望ましいバランスを達成するために、抗体の高マンノース含量を制御し調節する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zhou et al.,(2008),Biotechnol Bioeng 99(3):652-665
【文献】Yu et al.,MAbs.2012 Jul 1;4(4):475-487
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書中に開示され、且つ例示されるように、デノスマブ上の高マンノースグリカンのレベルを調節するための方法が開発された。特に、産生期の間、培養培地中のグルコースの量を減少させ、且つガラクトースの量を増加させることによって、高マンノースグリカンのレベルを増加させた。種々のグリカンプロファイルを含む、組換え産生デノスマブもまた、本明細書中に開示され、例示される。
【0007】
本明細書の記載に基づき、当業者であれば、単なる日常的な実験により、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の実施形態(E)に包含されるものとする。
【0008】
E1.デノスマブ分子上に存在する高マンノースのレベルを増加させる方法(ここで、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものである)であって、
(a)増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞を、細胞密度が少なくとも1×106生細胞/mLになるまでインキュベートする工程(ここで、前記第1の培養培地は、約1g/L~約20g/Lのグルコースを含む)と、その後の、
(b)産生期の間、第2の培養培地中で工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程(ここで、前記第2の培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)と
を含み、
デノスマブ分子の約2%~約14%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、方法。
E2.デノスマブ分子上に存在する高マンノースのレベルを増加させる方法(ここで、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものである)であって、
(a)増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞を、細胞密度が少なくとも1×106生細胞/mLになるまでインキュベートする工程(ここで、前記第1の培養培地は、約1g/L~約20g/Lのグルコースを含む)と、その後の、
(b)産生期の間、第2の培養培地中で工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程(ここで、前記第2の培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)とを含み、
N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、対照と比較して増加している、方法。
E3.デノスマブ分子の約2%~約14%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、E2に記載の方法。
E4.増殖期の間、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって約1g/L~約20g/Lに維持される、E1~E3のいずれか一つに記載の方法。
E5.増殖期の間、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって約4g/L~約20g/Lに維持される、E1~E3のいずれか一つに記載の方法。
E6.産生期の間、宿主細胞は最初に、約3~約15日間、第1の培養培地中に保持され、その後、灌流又はボーラス供給によって、第2の培養培地中に移される、E1~E5のいずれか一つに記載の方法。
E7.宿主細胞が、産生期の間、第2の培養培地中でインキュベートされる場合、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約0g/L~約10g/L、又は約0g/L~約8g/Lに維持される、E1~E6のいずれか一つに記載の方法。
E8.宿主細胞が、産生期の間、第2の培養培地中でインキュベートされる場合、ガラクトース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約5g/L~約20g/L、又は約7g/L~約15g/Lに維持される、E1~E7のいずれか一つに記載の方法。
E9.宿主細胞が、産生期の間、第2の培養培地中でインキュベートされる場合、ボーラス供給又は灌流によって、グルコース濃度は約0g/L~約10g/Lに維持され、且つガラクトース濃度は約5g/L~約20g/Lに維持される、E1~E8のいずれか一つに記載の方法。
E10.宿主細胞が、産生期の間、第2の培養培地中でインキュベートされる場合、ボーラス供給又は灌流によって、グルコース濃度は約0g/L~約8g/Lに維持され、且つガラクトース濃度は約7g/L~約15g/Lに維持される、E1~E9のいずれか一つに記載の方法。
E11.
(a)増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞をインキュベートし、1回以上のボーラス供給により培養物を補充する工程(ここで、増殖期の間、グルコース濃度は、約1g/L~約20g/Lに維持される)と;
(b)工程(a)からの宿主細胞を増殖期から産生期へ移行させ、約3日~約15日間、グルコース濃度を約1g/L~約20g/Lに維持する工程と、その後の、
(c)(b)の宿主細胞を第2の培養培地に移す工程(ここで、前記第2の培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)と
を含む、E1~E10のいずれか一つに記載の方法。
E12.工程(a)及び(b)において、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約1g/L~約20g/Lに維持される、E11に記載の方法。
E13.工程(a)及び(b)において、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約4g/L~約20g/Lに維持される、E11又は12に記載の方法。
E14.工程(c)において、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約0g/L~約10g/L、又は約0g/L~約8g/Lに維持される、E11~E13のいずれか一つに記載の方法。
E15.工程(c)において、ガラクトース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約5g/L~約20g/L、又は約7g/L~約15g/Lに維持される、E11~E14のいずれか一つに記載の方法。
E16.工程(c)において、ボーラス供給又は灌流によって、グルコース濃度は、約0g/L~約8g/Lに維持され、ガラクトース濃度は、約7g/L~約15g/Lに維持される、E11~E15のいずれか一つに記載の方法。
E17.前記第1及び第2の培養培地は合成培養培地である、E1~E16のいずれか一つに記載の方法。
E18.前記第1の培養培地は、約4g/L~約18g/Lのグルコースを含む、E1~E17のいずれか一つに記載の方法。
E19.前記第2の培養培地は、約1g/L~約8g/L、約1g/L~約7g/L、約1g/L~約6g/L、約1g/L~約5/Lのグルコースを含む、E1~E18のいずれか一つに記載の方法。
E20.前記第2の培養培地は、約1g/L~約5/Lのグルコースを含む、E1~E19のいずれか一つに記載の方法。
E21.前記第2の培養培地は、約8g/L~約14g/L、約9g/L~約13g/L、又は約10g/L~約12g/Lのガラクトースを含む、E1~E20のいずれか一つに記載の方法。
E22.前記第2の培養培地は、約10g/mL~約12g/mLのガラクトースを含む、E1~E21のいずれか一つに記載の方法。
E23.前記第2の培養培地は、約1g/L~約5/Lのグルコース、及び約10g/mL~約12g/mLのガラクトースを含む、E1~E21のいずれか一つに記載の方法。
E24.工程(a)において、前記細胞密度は、少なくとも約2×106生細胞/mL、少なくとも約5×106生細胞/mL、又は少なくとも約10×106生細胞/mLである、E1~E23のいずれか一つに記載の方法。
E25.デノスマブ分子の約4%~約11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E24のいずれか一つに記載の方法。
E25b.デノスマブ分子の約4%~約14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E24のいずれか一つに記載の方法。
E25c.デノスマブ分子の約5%~約14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E24のいずれか一つに記載の方法。
E25d.デノスマブ分子の約5%~約11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E24のいずれか1つに記載の方法。E26.デノスマブ分子の2%~6.5%、又は8.5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E25のいずれか一つに記載の方法。
E27.デノスマブ分子の4%~6.5%、又は8.5%~11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E26のいずれか一つに記載の方法。
E27b.デノスマブ分子の4%~6.5%、又は8.5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E25のいずれか一つに記載の方法。
E27c.デノスマブ分子の5%~6.5%、又は8.5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E25のいずれか一つに記載の方法。
E27d.デノスマブ分子の5%~6.5%、又は8.5%~11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E1~E25のいずれか一つに記載の方法。
E28.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が6.5%~7.5%ではないことを条件とする、E1~E27のいずれか一つに記載の方法。
E29.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が6.5%~8.5%ではないことを条件とする、E1~E27のいずれか一つに記載の方法。
E30.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が7.5%~8.5%ではないことを条件とする、E1~E27のいずれか一つに記載の方法。
E31.前記宿主細胞は、灌流によって第1の培養培地から第2の培養培地に移される、E1~E30のいずれか一つに記載の方法。
E32.前記宿主細胞は、ボーラス供給によって第1の培養培地から第2の培養培地に移される、E1~E30のいずれか一つに記載の方法。
E33.デノスマブ分子上に存在する高マンノースのレベルを増加させる方法(ここで、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものである)であって、
(a)最初の細胞培養を確立する工程(前記哺乳動物宿主細胞の密度は少なくとも1×106生細胞/mlである)と、その後の、
(b)産生期の間、培養培地中で工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程(ここで、前記培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)と
を含み、
デノスマブ分子の約2%~約14%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、方法。
E34.デノスマブ分子上に存在する高マンノースのレベルを増加させる方法(ここで、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものである)であって、
(a)最初の細胞培養を確立する工程(前記哺乳動物宿主細胞の密度は少なくとも1×106生細胞/mlである)と、その後の、
(b)産生期の間、培養培地中で工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程(ここで、前記培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)と
を含み、
N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、対照と比較して増加している、方法。
E35.デノスマブ分子の約2%~約14%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、E34に記載の方法。
E36.工程(b)において、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって約0g/L~約10g/Lに維持される、E33~E35のいずれか一つに記載の方法。
E37.工程(b)において、ガラクトース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって約5g/L~約20g/Lに維持される、E33~E36のいずれか一つに記載の方法。
E38.前記培養培地は合成培養培地である、E33~E37のいずれか一つに記載の方法。
E39.前記培養培地は、約1g/L~約8g/L、約1g/L~約7g/L、約1g/L~約6g/L、約1g/L~約5/Lのグルコースを含む、E33~E38のいずれか一つに記載の方法。
E40.前記培養培地は、約1g/L~約5/Lのグルコースを含む、E33~E39のいずれか一つに記載の方法。
E41.前記培養培地は、約8g/L~約14g/L、約9g/L~約13g/L、又は約10g/L~約12g/Lのガラクトースを含む、E33~E40のいずれか一つに記載の方法。
E42.前記第2の培養培地は、約10g/mL~約12g/mLのガラクトースを含む、E33~E41のいずれか一つに記載の方法。
E43.工程(a)において、前記細胞密度は、少なくとも約2×106生細胞/mL、少なくとも約5×106生細胞/mL、又は少なくとも約10×106生細胞/mLである、E33~E42のいずれか一つに記載の方法。
E44.デノスマブ分子の約4%~約11%がN-298部位に高マンノースを含む、E33~E43のいずれか一つに記載の方法。
E44b.デノスマブ分子の約4%~約14%がN-298部位に高マンノースを含む、E33~E43のいずれか一つに記載の方法。
E44c.デノスマブ分子の約5%~約14%がN-298部位に高マンノースを含む、E33~E43のいずれか一つに記載の方法。
E44d.デノスマブ分子の約5%~約11%がN-298部位に高マンノースを含む、E33~E43のいずれか一つに記載の方法。
E45.デノスマブ分子の2%~6.5%、又は8.5%~14%が、N-298部位に高マンノースを含む、E33~E44のいずれか一つに記載の方法。
E46.デノスマブ分子の4%~6.5%、又は8.5%~11%が、N-298部位に高マンノースを含む、E33~E45のいずれか一つに記載の方法。
E46b.デノスマブ分子の4%~6.5%、又は8.5%~14%が、N-298部位に高マンノースを含む、E33~E45のいずれか一つに記載の方法。
E46c.デノスマブ分子の5%~6.5%、又は8.5%~14%が、N-298部位に高マンノースを含む、E33~E45のいずれか一つに記載の方法。
E46d.デノスマブ分子の5%~6.5%、又は8.5%~11%が、N-298部位に高マンノースを含む、E33~E45のいずれか一つに記載の方法。
E47.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が6.5%~7.5%ではないことを条件とする、E33~E46のいずれか一つに記載の方法。
E48.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が6.5%~8.5%ではないことを条件とする、E33~E46のいずれか一つに記載の方法。
E49.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が7.5%~8.5%ではないことを条件とする、E33~E46のいずれか一つに記載の方法。
E50.前記培養物は、回収時に少なくとも約10g/Lのデノスマブを産生する、E1~E49のいずれか一つに記載の方法。
E51.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、対照と比較して増加している、E1又はE33に記載の方法。
E52.前記対照は、参照バッチが約5g/L~約15g/Lのグルコースを含み、ガラクトースを含まない培養培地中で産生される場合の、前記参照バッチからのN-298部位における高マンノースの割合である、E2~E32及びE34~E51のいずれか一つに記載の方法。
E53.前記対照は、N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の約1.5%以下である、E2~E32及びE34~E52のいずれか一つに記載の方法。
E54.前記哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である、E1~E53のいずれか一つに記載の方法。
E55.前記CHO細胞は、CS-9細胞、CHO-K1細胞、CHO-DG44細胞又はCHO-S細胞である、E54に記載の方法。
E56.前記CHO細胞はCS-9細胞である、E54に記載の方法。
E57.前記CHO細胞はAM1/D細胞である、E54に記載の方法。
E57b.前記CHO細胞はCHO DUX-B11細胞である、E54に記載の方法。
E57c.前記CHO細胞はCHO GSノックアウト細胞である、E54に記載の方法。
E57d.前記CHO細胞はCHO-K1細胞である、E54に記載の方法。
E58.前記CHO細胞は、メトトレキサート(MTX)選択によって増幅されている、E54~E57のいずれか一つに記載の方法。
E59.前記第1の培養培地はメトトレキサート(MTX)を含む、E1~E32及びE50~E57のいずれか一つに記載の方法。
E60.工程(a)における前記哺乳動物宿主細胞は、メトトレキサート(MTX)選択によって増幅されている、E33~E57のいずれか1つに記載の方法。
E61.前記哺乳動物宿主細胞は、デノスマブをコードする核酸配列を約500コピー以上含む、E1~E60のいずれか一つに記載の方法。
E62.前記哺乳動物宿主細胞は、配列番号3を含む核酸配列を約500コピー以上含む、E1~E61のいずれか一つに記載の方法。
E63.前記哺乳動物宿主細胞は、配列番号4を含む核酸配列を約500コピー以上含む、E1~E62のいずれか一つに記載の方法。
E64.デノスマブ分子の約7%~約10%がN-298部位に高マンノースを含む、E1~E63のいずれか一つに記載の方法。
E65.前記高マンノースは、Man-5であるE1~E64のいずれか一つに記載の方法。
E66.デノスマブ分子の約7%~約10%は、N-298部位にMan-5を含む、E1~E65のいずれか一つに記載の方法。
E67.デノスマブ分子の約48%~約70%は、N-298部位にA2F-G0を含む、E1~E66のいずれか一つに記載の方法。
E68.デノスマブ分子の約9%~約26%は、N-298部位にA2F-G1を含む、E1~E67のいずれか一つに記載の方法。
E69.デノスマブ分子の約4%~約8%は、N-298部位にA2-G0を含む、E1~E68のいずれか一つに記載の方法。
E70.デノスマブ分子の約0.3%~約5%は、N-298部位にA2F~G2を含む、E1~E69のいずれか一つに記載の方法。
E71.デノスマブ分子の約0.5%~約3%は、N-298部位にA2-G1を含む、E1~E70のいずれか一つに記載の方法。
E72.デノスマブ分子の約0.5%~約3%は、N-298部位にA1-G0を含む、E1-E71のいずれか1つに記載の方法。
E73.デノスマブ分子の約1%~約5%は、N-298部位にA1F-G0を含む、E1~E72のいずれか1つに記載の方法。
E74.組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、デノスマブ分子の少なくとも15%は1つ以上の糖化リジン残基を含む組成物。
E75.前記糖化リジン残基は、グルコース部分又はガラクトース部分を含む、E74に記載の組成物。
E76.組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、デノスマブ分子の少なくとも5%は、ガラクトース部分を含む1つ以上の糖化リジン残基を含む組成物。
E77.デノスマブ分子の約7%~約20%は、ガラクトース部分を含む1つ以上の糖化リジン残基を含む、E76に記載の組成物。
E78.デノスマブ分子の70%以下は、1つ以上の糖化リジン残基を含む、E74~E77のいずれか一つに記載の組成物。
E79.デノスマブ分子の約20%~約30%は、1つ以上の糖化リジン残基を含む、E74~E78のいずれか一つに記載の組成物。
E80.ガラクトース-糖化リジン対グルコース-糖化リジンの比は、約1:10~約10:1である、E74~E79のいずれか一つに記載の組成物。
E81.ガラクトース-糖化リジン対グルコース-糖化リジンの比は、約1:1である、E74~E80のいずれか一つに記載の組成物。
E82.デノスマブ分子の約2%~約14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E81のいずれか一つに記載の組成物。
E83.デノスマブ分子の2%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E82のいずれか一つに記載の組成物。
E83b.デノスマブ分子の約4%~約14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E82のいずれか一つに記載の組成物。
E83c.デノスマブ分子の4%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E82のいずれか一つに記載の組成物。
E83d.デノスマブ分子の約5%~約14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E82のいずれか一つに記載の組成物。
E83e.デノスマブ分子の5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E82のいずれか一つに記載の組成物。E84.デノスマブ分子の約4%~約11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E83のいずれか一つに記載の組成物。
E85.デノスマブ分子の4%~11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E84のいずれか一つに記載の組成物。
E85b.デノスマブ分子の約5%~約11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E84のいずれか一つに記載の組成物。
E85c.デノスマブ分子の5%~11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E84のいずれか一つに記載の組成物。
E86.デノスマブ分子の2%~6.5%、又は8.5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E85のいずれか一つに記載の組成物。
E87.デノスマブ分子の4%~6.5%、又は8.5%~11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E86のいずれか一つに記載の組成物。
E87b.デノスマブ分子の4%~6.5%、又は8.5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E86のいずれか一つに記載の組成物。
E87c.デノスマブ分子の5%~6.5%、又は8.5%~14%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E86のいずれか一つに記載の組成物。
E87d.デノスマブ分子の5%~6.5%、又は8.5%~11%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E86のいずれか一つに記載の組成物。
E88.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が6.5%~7.5%ではないことを条件とする、E74~E87のいずれか一つに記載の組成物。
E89.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が6.5%~8.5%ではないことを条件とする、E74~E88のいずれか一つに記載の組成物。
E90.N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が7.5%~8.5%ではないことを条件とする、E74~E89のいずれか一つに記載の組成物。
E91.デノスマブ分子の約7%~約10%は、N-298部位に高マンノースを含む、E74~E90のいずれか一つに記載の組成物。
E92.前記高マンノースは、Man-5である、E74~E91のいずれか一つに記載の組成物。
E93.デノスマブ分子の約7%~約10%は、N-298部位にMan-5を含む、E74~E92のいずれか一つに記載の組成物。
E94.デノスマブ分子の約48%~約70%は、N-298部位にA2F-G0を含む、E74~E93のいずれか一つに記載の組成物。
E95.デノスマブ分子の約9%~約26%は、N-298部位にA2F-G1を含む、E74~E94のいずれか一つに記載の組成物。
E96.デノスマブ分子の約0.5%~約3%は、N-298部位にA1-G0を含む、E74~E95のいずれか一つに記載の組成物。
E97.デノスマブ分子の約1%~約5%は、N-298部位にA1F-G0を含む、E74~E96のいずれか一つに記載の組成物。
E98.デノスマブ分子の約4%~約8%は、N-298部位にA2-G0を含む、E74~E97のいずれか一つに記載の組成物。
E99.デノスマブ分子の約0.5%~約4%は、N-298部位にA2-G1を含む、E74~E98のいずれか一つに記載の組成物。
E100.デノスマブ分子の約0.3%~約5%は、N-298部位にA2F-G2を含む、E74~E99のいずれか一つに記載の組成物。
E101.前記糖化リジンは、(i)重鎖K76、K98、K218、K249、K318、K327、及びK335(配列番号1による番号付け);並びに(ii)軽鎖K104、K108、K150、K184、及びK191(配列番号2による番号付け)からなる群から選択される、E74~E100のいずれか一つに記載の組成物。
E102.組換え産生デノスマブ分子を含み、デノスマブ分子の約0.2%~約1.8%はN-298部位に高マンノースグリカンを含む組成物。
E103.デノスマブ分子の0.2%~1.8%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、E102に記載の組成物。
E104.デノスマブ分子の約0.5%~約1%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、E102又はE103に記載の組成物。
E105.デノスマブ分子の0.5%~1%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、E102~E104のいずれか一つに記載の組成物。
E106.前記高マンノースグリカンは、Man-5である、E102~E105のいずれか一つに記載の組成物。
E107.デノスマブ分子の0.2%~1.8%は、N-298部位にMan-5を含む、E102~E106のいずれか一つに記載の組成物。
E108.デノスマブ分子の約0.5%~約1%は、N-298部位にMan-5を含む、E102~E107のいずれか一つに記載の組成物。
E109.デノスマブ分子の0.5%~1%は、N-298部位にMan-5を含む、E102~E108のいずれか一つに記載の組成物。
E110.デノスマブ分子の約30%~約60%は、N-298部位にA2F-G0を含む、E102~E109のいずれか一つに記載の組成物。
E111.デノスマブ分子の約20%~約50%は、N-298部位にA2F-G1を含む、E102~E110のいずれか一つに記載の組成物。
E112.デノスマブ分子の約0.1%~約3%は、N-298部位にA1-G0を含む、E102~E111のいずれか一つに記載の組成物。
E113.デノスマブ分子の約0.1%~約4%は、N-298部位にA1F-G0を含む、E102~E112のいずれか一つに記載の組成物。
E114.デノスマブ分子の約4%~約10%は、N-298部位にA2-G0を含む、E102~E113のいずれか一つに記載の組成物。
E115.デノスマブ分子の約1%~約7%は、N-298部位にA2-G1を含む、E102~E114のいずれか一つに記載の組成物。
E116.デノスマブ分子の約3%~約10%は、N-298部位にA2F-G2を含む、E102~E115のいずれか一つに記載の組成物。
E117.前記デノスマブは、約25pM以下の結合親和性(KD)値でヒトRANKLに結合する、E74~E116のいずれか一つに記載の組成物。
E118.前記デノスマブは、約1pM~約25pMの結合親和性(KD)値でヒトRANKLに結合する、E74~E117のいずれか一つに記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、CP2プロセスからの試料のN-グリカンプロファイルを示すグラフである。
【
図2】
図2は、糖化の分析のためのCP2プロセスからのデノスマブ試料のCE-HPLCプロファイルを示すグラフである。
【
図3A】
図3Aは、CP2プロセス及びCP3プロセスからの試料、並びに参照標準のN-グリカンプロファイルを示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、CP2プロセス及びCP3プロセスからの試料のN-グリカンプロファイルを要約した表である。
【
図4A】
図4A~4Eは、CP2プロセス及びCP3プロセスによって産生されたデノスマブのPK/PDプロファイルを要約している。
図4A~4Bは、それぞれ、均等目盛り(
図4A)及び片対数目盛り(
図4B)で表示した、健常志願者へ60mgのデノスマブCP3又はCP2をSC投与した後の平均(±SD)血清デノスマブ濃度-時間プロファイル(ng/mL)を示す。
図4Cは、健常志願者に60mgのデノスマブCP3又はCP2を皮下(SC)投与した後の血清c-テロペプチド(CTX1)のベースラインからの平均(±SD)変化率を示す。
図4D~4Eは、デノスマブのMan-5レベルが経時的に減少する一方、Gal-種はほぼ一定であったことを示している。4人の総CP2患者から経時変化を分析した。
【
図4B】
図4A~4Eは、CP2プロセス及びCP3プロセスによって産生されたデノスマブのPK/PDプロファイルを要約している。
図4A~4Bは、それぞれ、均等目盛り(
図4A)及び片対数目盛り(
図4B)で表示した、健常志願者へ60mgのデノスマブCP3又はCP2をSC投与した後の平均(±SD)血清デノスマブ濃度-時間プロファイル(ng/mL)を示す。
図4Cは、健常志願者に60mgのデノスマブCP3又はCP2を皮下(SC)投与した後の血清c-テロペプチド(CTX1)のベースラインからの平均(±SD)変化率を示す。
図4D~4Eは、デノスマブのMan-5レベルが経時的に減少する一方、Gal-種はほぼ一定であったことを示している。4人の総CP2患者から経時変化を分析した。
【
図4C】
図4A~4Eは、CP2プロセス及びCP3プロセスによって産生されたデノスマブのPK/PDプロファイルを要約している。
図4A~4Bは、それぞれ、均等目盛り(
図4A)及び片対数目盛り(
図4B)で表示した、健常志願者へ60mgのデノスマブCP3又はCP2をSC投与した後の平均(±SD)血清デノスマブ濃度-時間プロファイル(ng/mL)を示す。
図4Cは、健常志願者に60mgのデノスマブCP3又はCP2を皮下(SC)投与した後の血清c-テロペプチド(CTX1)のベースラインからの平均(±SD)変化率を示す。
図4D~4Eは、デノスマブのMan-5レベルが経時的に減少する一方、Gal-種はほぼ一定であったことを示している。4人の総CP2患者から経時変化を分析した。
【
図4D】
図4A~4Eは、CP2プロセス及びCP3プロセスによって産生されたデノスマブのPK/PDプロファイルを要約している。
図4A~4Bは、それぞれ、均等目盛り(
図4A)及び片対数目盛り(
図4B)で表示した、健常志願者へ60mgのデノスマブCP3又はCP2をSC投与した後の平均(±SD)血清デノスマブ濃度-時間プロファイル(ng/mL)を示す。
図4Cは、健常志願者に60mgのデノスマブCP3又はCP2を皮下(SC)投与した後の血清c-テロペプチド(CTX1)のベースラインからの平均(±SD)変化率を示す。
図4D~4Eは、デノスマブのMan-5レベルが経時的に減少する一方、Gal-種はほぼ一定であったことを示している。4人の総CP2患者から経時変化を分析した。
【
図4E】
図4A~4Eは、CP2プロセス及びCP3プロセスによって産生されたデノスマブのPK/PDプロファイルを要約している。
図4A~4Bは、それぞれ、均等目盛り(
図4A)及び片対数目盛り(
図4B)で表示した、健常志願者へ60mgのデノスマブCP3又はCP2をSC投与した後の平均(±SD)血清デノスマブ濃度-時間プロファイル(ng/mL)を示す。
図4Cは、健常志願者に60mgのデノスマブCP3又はCP2を皮下(SC)投与した後の血清c-テロペプチド(CTX1)のベースラインからの平均(±SD)変化率を示す。
図4D~4Eは、デノスマブのMan-5レベルが経時的に減少する一方、Gal-種はほぼ一定であったことを示している。4人の総CP2患者から経時変化を分析した。
【
図5】
図5は、グリカンマップ(HP-AEX)オーバーレイを示す。CP2-デノスマブとCP4-デノスマブは同様のN-グリカンプロファイルを示した。
【
図6A-1】
図6Aは、デノスマブ重鎖のヌクレオチド及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。ヌクレオチド1~57はシグナルペプチドをコードし、これがタンパク質合成の間に切断されて成熟重鎖を生成する。成熟重鎖の最初のアミノ酸(E)を太字で且つ拡大して示す。
【
図6A-2】
図6Aは、デノスマブ重鎖のヌクレオチド及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。ヌクレオチド1~57はシグナルペプチドをコードし、これがタンパク質合成の間に切断されて成熟重鎖を生成する。成熟重鎖の最初のアミノ酸(E)を太字で且つ拡大して示す。
【
図6B】
図6Bは、デノスマブ軽鎖のヌクレオチド及びアミノ酸配列(配列番号4)を示す。ヌクレオチド1~60はシグナルペプチドをコードし、これがタンパク質合成の間に切断されて成熟軽鎖を生成する。成熟軽鎖の最初のアミノ酸(E)を太字で且つ拡大して示す。
【
図7A】
図7Aは、デノスマブ高マンノース含量に対するグルコース及びガラクトース濃度の効果を示す。
図7Aは、17日目のMan-5のフルモデル解析を示し、実験中心点での予測プロファイルを含む。
【
図7B】
図7Bは、デノスマブ高マンノース含量に対するグルコース及びガラクトース濃度の効果を示す。
図7Bは、グルコースレベルを2.5g/Lに設定したMan-5の17日目の予測を示す。
【
図7C】
図7Cは、デノスマブ高マンノース含量に対するグルコース及びガラクトース濃度の効果を示す。
図7Cは、11日目から17日目までのMan-5の経時変化を示す。
【
図8A】
図8Aは、17日目のMan-5のフルモデル分析を示す。
【
図8B】
図8Bは、HILICによって評価されたMan-5レベルを示す。
【
図8C】
図8Cは、CP2参照と比較した、Man-5及び全高マンノース種を示す。
【
図9B】
図9Bは、10日流加培養の間、高い生存率を維持した細胞培養物を示す。全ての試料は、全ての試験条件で>80%の生存率を示した。黒塗りの丸、矩形、及び菱形は、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するようにグルコースを補充し、ガラクトースは添加しなかった対照条件を表す。白抜きの丸、矩形及び菱形は、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するように、10g/Lのガラクトースをグルコースと共に補充した条件を表す。斜線入りバーは、供給期間中、10g/Lのガラクトースを補充する一方、バイオリアクター中のグルコースレベルが消費によって1~5g/Lレベルまで低下するのを許容した条件を表す。
【
図9C】
図9Cは、供給日及び回収日におけるバイオリアクター中のグルコースレベルを示す。グルコースの測定は、2つの培養条件に必要なグルコース供給量を導くために行った。3、6及び8日目に、対照及びgal/gluc培養物(それぞれ黒色バー及び白色バー)に約5~6g/Lのグルコースを補充したが、galのみの培養物(斜線入りバー)にはグルコースを添加しなかった。
【
図10】
図10A~10Cは、細胞増殖、力価及び比生産性に対する糖源修飾効果を示す。
図10Aは、全ての試料の生細胞密度(VCD)を示す折れ線グラフである。
図10Bは、力価を示す棒グラフであり、
図10Cは、10日流加培養の比生産性を示す。黒色のバーは、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するようにグルコースを補充した対照条件を表す。白色のバーは、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するように、10g/Lのガラクトースをグルコースと共に補充した条件を表す。斜線入りバーは、供給期間中、10g/Lのガラクトースを補充する一方、バイオリアクター中のグルコースレベルが消費によって1~5g/Lレベルまで低下するのを許容した条件を表す。
【
図11】
図11は、ガラクトースが添加され、グルコースレベルが低かった場合に、高マンノースレベルが増加したことを示す。棒グラフは、10日流加培養の終わりにおける各プール中のMan-5の報告された領域%を示す。黒色のバーは、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するようにグルコースを補充した対照条件を表す。白色のバーは、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するように、10g/Lのガラクトースをグルコースと共に補充した条件を表す。斜線入りバーは、供給期間中、10g/Lのガラクトースを補充する一方、バイオリアクター中のグルコースレベルが消費によって1~5g/Lレベルまで低下するのを許容した条件を表す。
【
図12】
図12は、D-ガラクトースの添加がモノ-及びビ-ガラクトグリカン残基を増加させたが、アガラクト残基は増加させなかったことを示す。棒グラフは、10日流加培養の終わりにおける各プール中のグリカンの報告された領域%を示す。黒色のバーは、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するようにグルコースを補充した対照条件を表す。白色のバーは、供給期間中、バイオリアクター中で10~12g/Lレベルを維持するように、10g/Lのガラクトースをグルコースと共に補充した条件を表す。斜線入りバーは、供給期間中、10g/Lのガラクトースを補充する一方、バイオリアクター中のグルコースレベルが消費によって1~5g/Lレベルまで低下するのを許容した条件を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.概要
デノスマブは、ヒトRANKL(核因子カッパBリガンドの受容体活性化因子)に対する親和性及び特異性を有するヒトIgG2モノクローナル抗体である。デノスマブはおおよその分子量が147kDであり、現在、遺伝子操作された哺乳動物(チャイニーズハムスター卵巣)細胞で生産されている。組換え産生プロセスの過程で、グリカン部分が、翻訳後修飾、例えば、酵素媒介プロセス(グリコシル化)又は非酵素媒介プロセス(糖化)によって、デノスマブに結合される。グリカンは抗体の治療効果及びインビボ半減期に重要な役割を有するので、規制当局の要求を満たすために、治療用糖タンパク質のグリコフォームプロファイルを特徴付ける必要がある。
【0011】
本明細書に開示し、例示されているように、デノスマブのグリカンプロファイルを改変する様々な培養プロセスが開発されている。デノスマブは、各重鎖の第2定常ドメインに位置する2つのN-グリコシル化部位を有する(残基N-298)。さらに、糖部分がリジン残基を介して抗体に結合する場合、抗体はまた糖化(ときに「非酵素的グリコシル化」とも呼ばれる)によって修飾され得る。
【0012】
第1の例示的な培養プロセス(本明細書では「CP2」と呼ぶ)では、AM-1/Dに由来するCHO細胞株を使用した。細胞を改変DMEM/F12培地で培養し、2回のボーラス供給を3日目と9日目に行い、その後、14日目に培養物を回収した。得られた重要なグリコフォームは、以下のものを含んだ:A2F-G0 約55%~65%、A2F-G1 約15%~25%、及びMan-5 約4%~9%。
【0013】
第2の例示的な培養プロセス(本明細書では「CP3」と呼ぶ)では、わずかに異なるプロセスを使用することによって、全体としてより高い生成物収率が達成された。CS-9 CHO細胞に基づく細胞株を、増殖期に、メトトレキサート(MTX)選択により増幅した。MTX選択により、デノスマブをコードする核酸のコピー数は、CP2プロセスで使用した宿主細胞と比較して大きく増加した。一般に、MTX選択に伴い、宿主細胞は約700~1000コピーの組換え配列を含み、それによって組換えタンパク質産生の全体的な収率を増加させると推定される。特に、CP3によって産生された組換えデノスマブはまた、1%未満の低いMan-5含量を示した。CP3プロセスにより産生されたデノスマブは、患者においてより高い血清半減期とより遅いクリアランスを示した。
【0014】
第3の例示的な培養プロセスは、本明細書では「CP4」と呼ばれる。CP3と同様に、CS-9 CHO細胞に基づく細胞株は、増殖期に、MTX選択により増幅し、それによりデノスマブ産生の全体的な収量が増加した。さらに、産生期の間、11日目に灌流培地の変換があった。培地の変換には、グルコース濃度を低下させること、及び代替炭水化物源としてガラクトースを添加することが含まれた。CP4プロセスにより産生されたデノスマブは、CP2-デノスマブと比較して、A2F-G0(約55%~65%)、A2F-G1(約10%~19%)、及びMan-5(約4%~9%)のレベルが同程度であり、CP3-デノスマブと比較して、Man-5のレベルが高かった。CP4プロセスによって産生されたデノスマブでは、糖化レベルの上昇が観察された。さらに、CP4では代替炭素源としてガラクトースを使用したため、CP4-デノスマブは新しい種であるガラクトース-糖化リジンを含んだ。
【0015】
驚くべきことに、CP4-デノスマブはCP2-デノスマブと比較してはるかに高い糖化レベルを示したが、RANKLリガンドへの結合、及び生物学的活性は影響を受けなかった。リジン残基は荷電しており、しばしばタンパク質-タンパク質相互作用に関与しているので、糖化の大きな上昇が生物学的活性に影響しなかったことは驚くべきことであった。別の驚くべき発見は、ガラクトース-糖化リジンがデノスマブの免疫原性に影響しなかったことである。ガラクトースは、天然では、ヒト血清中に約0.3mg/dL存在する。このような低い血清ガラクトースレベルでは、ガラクトース血症患者を除いて、健常な人が測定可能なレベルのガラクトース糖化を含む血中蛋白質を有する可能性は低い。したがって、ガラクトース糖化の臨床的安全性はこれまで不明であった。デノスマブの場合、高レベルのガラクトース-糖化デノスマブは免疫原性に影響を与えないことがわかった。
【0016】
2.定義
「デノスマブ」(商品名Prolia(登録商標)及びXgeva(登録商標))は、配列番号1を含む重鎖及び配列番号2を含む軽鎖を含むヒトモノクローナル抗体を指す。デノスマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を表1に示す。配列番号1及び2をコードする核酸配列を
図6A~6Bに示す。実施例に示すように、デノスマブのグリカンプロファイルは変化し得る。
【0017】
【0018】
抗体は糖タンパク質であり、グリコシル化の多様性が予想される。モノクローナル抗体は各HCのCH2 Fcドメイン中に単一のコンセンサスN結合グリコシル化部位を含むが、LCはコンセンサスN結合グリコシル化部位を欠く。Fcグリカンは主に次の3つのグリカンクラスからなる:(1)末端ガラクトース含量が異なる非シアル化二分枝型コアフコシル化構造(A2GxF(ここで、x=0、1又は2));(2)ガラクトース含量が異なる非シアル化一分枝型コアフコシル化ハイブリッド構造(A1GxMyF(ここで、x=0又は1、及びy=3、4又は5));及び(3)高マンノース構造(Mx(x=5、6、7、又は8))。デノスマブは、コンセンサス配列の存在、及び哺乳動物細胞培養物から産生したIgG2モノクローナル抗体の歴史的特徴付けに基づいて、各重鎖上のN-298に単一のNグリコシル化部位を含むと予想される。
【0019】
文献では、N-グリコシル化部位は、Kabat EU番号付けにより、一般に残基N-297と呼ばれている。実際の残基番号は、配列番号1の残基298である。この違いは、番号付けシステムによるものであり、両方とも同じN残基を指す。
【0020】
炭水化物部分は、オリゴ糖に一般に使用されている命名法を参照して本明細書に記載される。この命名法を使用する炭水化物化学の概説は、例えば、Hubbard and Ivatt,Ann. Rev.Biochem.50:555-583(1981)に見出すことができる。この命名法には、例えば、マンノースを表すMan、ガラクトースを表すGal、及びグルコースを表すGlcが含まれる。一般に知られているグリカンを表2に示す。
【0021】
【0022】
【0023】
「高マンノース」グリカンは、高マンノース5(Man-5)グリカン、高マンノース6(Man-6)グリカン、高マンノース7(Man-7)グリカン、高マンノース8(Man-8)グリカン、及び高マンノース9(Man-9)グリカンなどの5~9個のマンノース単位を含むグリカン部分である。
【0024】
抗体の高マンノース含量は、当該技術分野で知られた方法により評価することができる。一般に、アッセイは、酵素(PNGアーゼ-F又はEndo-H)処理又は化学的処理(すなわち、ヒドラジン分解)によるmAbからのグリカンの放出を含む。次いで、放出されたグリカンを精製し、その後、さらに誘導体化することなく、又は異なる発色団/蛍光団で標識した後に分析する。例えば、酵素的又は化学的に処理された試料を、通常、クロマトグラフィー、電気泳動又は質量分析によって分析し、mAbの高マンノース含有グリコフォームを同定する。高マンノースアッセイの例は、本明細書に提示される。
【0025】
デノスマブのグリカン含量は、通常、特定のパーセンテージ(例えば、2%~14%の高マンノース)として表される。特に明記しない限り、グリカンのパーセンテージは、試料中の全デノスマブ分子のうち、そのようなグリカンを含むデノスマブ分子の数として理論的に計算される。例えば、2%の高マンノースは、100個のデノスマブ分子のうちの2個のデノスマブ分子が高マンノースを含むことを意味する。この理論的計算は、N-298部位のアスパラギンの100%がグリコシル化されていると仮定している。しかし、実際には、ごくわずかな割合の抗体分子は非グリコシル化又は脱グリコシル化され得る(例えば、以下の実施例3.1を参照されたい。約0.3%以下の抗体分子がN-298部位で非グリコシル化又は脱グリコシル化され得る)。さらに、個々の分子レベルでグリカン種を計数することは、非実用的/不可能である。したがって、本明細書に記載されるグリカン含量の割合は一般に、汎用されている分析方法による相対的割合に基づいて計算される。例えば、実施例3.2に例示するように、酵素を使用して、タンパク質から全てのN-グリカンを放出させ、次いで、グリカンを、高性能陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によって分離する。HPAECは種々のピークをもたらし、各ピークはグリカン種を表す。ピーク番号8は、Man-5を表す。したがって、Man-5の割合(この場合、8.4%)は全てのピークの合計面積のうち、ピーク8の面積に基づいて計算される。別の例は実施例7.1であり、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を用いてN-グリカンの割合を評価する。したがって、特に明記しない限り、グリカンの割合は、汎用の分析法(HPAEC、CE-SDS、HILICなど)のいずれかを用いて、N-298部位における全N-グリカンのうち、その特定のグリカン種の相対的割合によって計算される。割合は、個々の分子レベルのグリカン含量を指すものとして文字通りに解釈されるべきではない。
【0026】
組換えタンパク質産生プロセスは、一般的には、2つの段階に分けられる。一般的に「増殖期」と呼ばれる第1段階では、細胞増殖が起こる。一般的に「産生期」と呼ばれる第2段階では、組換えタンパク質の発現は、一般に、誘導物質(IPTGなど)を添加することによって、又は培養条件(温度の変化など)を変えることによって、宿主細胞内で開始される。
【0027】
なお、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上明らかに他の意味であると解釈すべき場合を除いて、複数の指示対象を含んでいる。用語「1つの(a)」(又は「1つの(an)」)、並びに用語「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書においては、互換的に使用することができる。
【0028】
3.組換え産生デノスマブの高マンノース含量
3.1 デノスマブの高マンノース含量を増加させる方法
高マンノースグリコフォームは、治療用モノクローナル抗体の重要な品質属性として認識が高まっている。本明細書に記載するように、組換え産生デノスマブ上に存在する高マンノースは、細胞培養培地中のグルコース及びガラクトースの濃度を操作することによって制御し得る。
【0029】
本発明は、低濃度又は限られた濃度のグルコースを、代替炭素源、特にガラクトース又はスクロースと組み合わせて使用することによって、組換え産生デノスマブ、特にMan-5の高マンノース含量を増加させる方法を提供する。本明細書に記載するように、代替炭素源(例えば、ガラクトース)と組み合わせて、細胞培養培地中のグルコースの濃度を低下させることによってグルコースが制限された細胞培養培地中で細胞を培養することにより、細胞増殖、生存率及び力価を許容可能なレベルに維持しながら、高マンノース含量の濃度が増加したデノスマブ組成物が得られた。
【0030】
一態様において、本発明は、デノスマブ分子上に存在する高マンノースのレベルを増加させる方法(ここで、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものである)であって、(a)増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞を、細胞密度が少なくとも1×106生細胞/mLになるまでインキュベートする工程(ここで、前記第1の培養培地は、約1g/L~約20g/Lのグルコースを含む)と、その後の、(b)産生期の間、第2の培養培地中で工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程(ここで、前記第2の培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)とを含み、デノスマブ分子の約2%~約14%は、N-298部位に高マンノースグリカンを含む、方法を提供する。
【0031】
一般に、糖源(グルコース、スクロース、又はガラクトースなど)及び他の栄養素の濃度を議論する場合、数(例えば、20g/L)は一般に、バイオリアクターに供給している濃度を指す。培地がバイオリアクターの内部に到達した後、濃度は細胞代謝、消費、及び希釈のためにしばしば変化する。バイオリアクター内の実際の濃度は、細胞密度及び代謝速度に大きく依存するので、時間の経過とともに著しく変化し得、常にモニターされるとは限らない場合がある。したがって、容易さ及び一貫性のために、数字は一般に、バイオリアクター内の消費又は希釈を考慮せず、培地がバイオリアクターに供給される前に測定された濃度を指す。一方、バイオリアクター内部の濃度は一般に、「使用済み培地」の濃度、又は「バイオリアクター内部」の濃度と呼ばれる。
【0032】
一般に、増殖期の間、グルコース濃度は、宿主細胞を確実に効率良く増殖させるために、ボーラス供給及び灌流のいずれかによって、約1g/L~約20g/Lに維持される。
特定の実施形態では、グルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約2g/L~約20g/L、約3g/L~約20g/L、約4g/L~約20g/L、約2g/L~約19g/L、約3g/L~約19g/L、約4g/L~約19g/L、約2g/L~約18g/L、約3g/L~約18g/L、又は約4g/L~約18g/Lに維持される。
【0033】
特定の実施形態では、増殖期の間、使用済み培地のグルコース濃度は、宿主細胞を確実に効率良く増殖させるために、ボーラス供給及び灌流のいずれかによって、約1g/L~約10g/Lに維持される。特定の実施形態では、使用済み培地のグルコース濃度は、ボーラス供給又は灌流によって、約2g/L~約10g/L、約3g/L~約10g/L、約4g/L~約10g/L、約2g/L~約9g/L、約3g/L~約9g/L、約4g/L~約9g/L、約2g/L~約8g/L、約3g/L~約8g/L、又は約4g/L~約8g/Lに維持される。
【0034】
特定の実施形態では、増殖期の間、使用済み培地のグルコース濃度は、細胞を少なくとも1×106生細胞/mLまで増殖させるレベルに維持される(ここで、グルコース濃度はボーラス供給又は灌流によって維持され、ボーラス供給又は灌流培地中のグルコース濃度は約4g/L~約20g/L、約4g/L~約19g/L、約4g/L~約18g/L、約5g/L~約20g/L、約5g/L~約19g/L、約5g/L~約18g/L、約6g/L~約20g/L、約6g/L~約19g/L、約6g/L~約18g/L、約7g/L~約20g/L、約7g/L~約19g/L、又は約7g/L~約18g/Lである)。ボーラス供給の時機選択/頻度、又は灌流の流量は、細胞培養物の消費/代謝速度に依存し、当業者の知識の範囲内である。
【0035】
特定の実施形態では、細胞密度は、増殖期の間、約1×106生細胞/mL~約80×106生細胞/mL、例えば、少なくとも約1×106生細胞/mL、少なくとも約2×106生細胞/mL、少なくとも約3×106生細胞/mL、少なくとも約4×106生細胞/mL、少なくとも約5×106生細胞/mL、少なくとも約6×106生細胞/mL、少なくとも約7×106生細胞/mL、少なくとも約8×106生細胞/mL、少なくとも約9×106生細胞/mL、少なくとも約10×106生細胞/mL、少なくとも約20×106生細胞/mL、少なくとも約30×106生細胞/mL、少なくとも約40×106生細胞/mL、少なくとも約50×106生細胞/mL、少なくとも約60×106生細胞/mL、少なくとも約70×106生細胞/mL、少なくとも約80×106生細胞/mL、約2×106生細胞/mL~約20×106生細胞/mL、約2×106生細胞/mL~約15×106生細胞/mL、約2×106生細胞/mL~約10×106生細胞/mL、又は約2×106生細胞/mL~約10×106生細胞/mLに達する。
【0036】
宿主細胞を増殖期から産生期に移行させて、高マンノース(例えば、Man-5)含量を増加させる場合、細胞に、ガラクトース又はスクロース、好ましくはガラクトースなどの代替炭素源と組み合わせて、グルコース濃度を減少させた(例えば、0~8g/L)第2の培養培地を供給することができる。
【0037】
低グルコース培養培地への切り替えは、産生期の開始時に行う必要はない。多くの場合、産生期の間、低グルコース培地に切り替える前に、十分なグルコース(例えば、約4g/L~約20g/L、又はそれ以上)を含有する培地中に3~15日間(例えば、3~11日間)宿主細胞を維持することが望ましい。これは、望ましい培養パラメータ(生細胞密度、又は細胞生存率など)を確立し、これらのパラメーターを維持するのに役立ち得る。産生期に入って3~15日(例えば、3~11日)後、組換え産生デノスマブの高マンノース含量を増加させることが望ましい場合、次に、細胞培養物に、グルコース濃度が低く、代替炭素源が提供される細胞培養培地を供給し、所望の高マンノース含量に増加させることができる。
【0038】
グルコース濃度をどの程度低下させる必要があるかを決定する因子としては、代替炭素源として何が使用され、またどのくらいの量が使用されるか;細胞培養産生プロセス;細胞の種類及び質量、並びにグルコース消費量が挙げられる。バイオリアクター中の細胞質量が大きいほど、細胞培養物によるグルコース消費量が多くなり、したがって、所望の高マンノース含量を生じる低グルコース状態をなお維持しながら、供給することができるグルコース量が多くなる。グルコースを細胞培養物に供給する方法もまた、所望の高いマンノース含量を産生する低グルコース状態を維持するのに必要なグルコースの量に影響を及ぼし得る。例えば、流加細胞培養において、グルコースは、細胞培養培地に配合し、ボーラス供給によって補充することができる。灌流細胞培養プロセスでは、グルコース濃度は、灌流培地の供給速度(g/L/日)に依存する。さらに、産生中の培養培地中のグルコースの量は、灌流培養のための使用済み培地分析などによって測定することができる。さらに、産生中の培養培地中のグルコースの量は、灌流培養のための使用済み培地分析などによって測定することができる。使用済み培地中のグルコースの量が0g/L又はほぼ0g/Lである場合に、Man-5レベルが増加することが観察された。このような状況では、タンパク質の収量がグルコースの減少によってさほど影響されないように、ほぼ全部が消費されるだけのグルコースが細胞に供給される。
【0039】
バイオリアクター内のグルコース濃度の低下は、例えば、灌流によって第1の培養培地を第2の培養培地で置換することによって達成することができる。或いは、最初の培養培地中のグルコースが細胞によって消費されるのを待ち、次いで、バイオリアクター内部のグルコース濃度が低下するように、ボーラス供給計画及び/又は濃度を調節することによって達成することができる。
【0040】
特定の実施形態では、第2の培養培地中のグルコースの量が、例えば、灌流培地供給物において、使用済み培地中で測定されるグルコースの量が適宜0g/L以上であるように、制限量まで低下される。グルコース消費速度は、グルコース添加速度及び/又は細胞培養物の質量によって決定することができる。グルコースは、約0g/L~約10g/Lの濃度で供給することができる。
【0041】
特定の実施形態では、第2の培養培地中のグルコース濃度は、約0g/L~約10g/L、約0g/L~約9g/L、約0g/L~約8g/L、約0g/L~約7g/L、約0g/L~約6g/L、約0g/L~約5g/L、約1g/L~約10g/L、約1g/L~約9g/L、約1g/L~約8g/L、約1g/L~約7g/L、約1g/L~約6g/L、又は約0g/L~約5g/Lに維持される。
【0042】
低下したグルコース濃度と組み合わせて、第2の培養培地は、ガラクトース又はスクロースなどの代替炭素源を含有、又は補充されるべきである。特定の実施形態では、第2の培養培地は最大20g/Lの濃度のガラクトースを含む。例えば、第2の培養培地中のガラクトース濃度は、約5g/L~約20g/L、約5g/L~約19g/L、約5g/L~約18g/L、約5g/L~約17g/L、約5g/L~約16g/L、約5g/L~約15g/L、約5g/L~約14g/L、約5g/L~約13g/L、約5g/L~約12g/L、約7g/L~約20g/L、約7g/L~約19g/L、約7g/L~約18g/L、約7g/L~約17g/L、約7g/L~約16g/L、約7g/L~約15g/L、約7g/L~約14g/L、約7g/L~約13g/L、約7g/L~約12g/L、約10g/L~約20g/L、約10g/L~約19g/L、約10g/L~約18g/L、約10g/L~約17g/L、約10g/L~約16g/L、約10g/L~約15g/L、約10g/L~約14g/L、約10g/L~約13g/L、又は約10g/L~約12g/Lに維持することができる。
【0043】
特定の実施形態では、デノスマブの高マンノース含量を増加させるために、産生期に入って3~15日後に、グルコース濃度を低下させ、ガラクトースを代替糖源として使用する。例えば、(i)約0g/L~約10g/L、約0g/L~約9g/L、約0g/L~約8g/L、約0g/L~約7g/L、約0g/L~約6g/L、約0g/L~約5g/L、約1g/L~約10g/L、約1g/L~約9g/L、約1g/L~約8g/L、約1g/L~約7g/L、約1g/L~約6g/L、又は約1g/L~約5g/Lのグルコース、及び(ii)約5g/L~約20g/L、約5g/L~約19g/L、約5g/L~約18g/L、約5g/L~約17g/L、約5g/L~約16g/L、約5g/L~約15g/L、約5g/L~約14g/L、約5g/L~約13g/L、約5g/L~約12g/L、約7g/L~約20g/L、約7g/L~約19g/L、約7g/L~約18g/L、約7g/L~約17g/L、約7g/L~約16g/L、約7g/L~約15g/L、約7g/L~約14g/L、約7g/L~約13g/L、約7g/L~約12g/L、約10g/L~約20g/L、約10g/L~約19g/L、約10g/L~約18g/L、約10g/L~約17g/L、約10g/L~約16g/L、約10g/L~約15g/L、約10g/L~約14g/L、約10g/L~約13g/L、又は約10g/L~約12g/Lのガラクトースを含むボーラス供給培地又は灌流培地を使用することによって、グルコース濃度を低下させることができる。
【0044】
例示的な一実施形態において、グルコース濃度は、(i)約1g/L~約5g/Lのグルコース、及び(ii)約10g/L~約12g/Lのガラクトースを含むボーラス供給培地又は灌流培地を使用することによって低下される。ボーラス供給の時機選択/頻度、又は灌流の流量は、細胞培養物の消費/代謝速度に依存し、当業者の知識の範囲内である。
【0045】
低グルコース培地の総糖含量を最初の増殖培地のグルコース含量に一致させることが望ましい場合がある。例えば、増殖培地が15g/Lのグルコースを含み、産生期の間、低グルコース培地が3g/Lのグルコースのみを含む場合、総糖含量が15mg/Lになるように、12g/Lのガラクトースをそれに補充することが好ましい場合がある。
【0046】
特定の実施形態では、産生期の間、低グルコース培地に切り替えた後、使用済み培地のグルコース濃度を、ボーラス供給又は灌流によって、約0~約5g/L、約0g/L~約4g/L、又は約0g/L~約3g/Lに維持し、使用済み培地のガラクトース濃度を、ボーラス供給又は灌流によって、約2g/L~約12.5g/L、約3g/L~約12.5g/L、約4g/L~約12.5g/L、約2g/L~約10g/L、約3g/L~約10g/L、約4g/L~約10g/L、約2g/L~約9g/L、約3g/L~約9g/L、約4g/L~約9g/L、約2g/L~約8g/L、約3g/L~約8g/L、又は約4g/L~約8g/Lに維持することができる。
【0047】
特定の実施形態では、低下したグルコース濃度と組み合わせて、細胞培養培地は、最大で約48g/L、例えば、約16g/L~約24g/Lの濃度のスクロースを含有するか、又は補充される。
【0048】
哺乳動物細胞培養物は、通常、バイオリアクター、例えば、500L~20000Lバイオリアクターで増殖される。特定の実施形態では、1000L~2000Lバイオリアクターが使用される。バイオリアクターの血清を含まない培養培地に、少なくとも0.5×106以下且つ3.0×106生細胞/mL超を接種する。特定の実施形態では、接種は、約1.0×106生細胞/mLである。産生バイオリアクターに接種されると、哺乳動物細胞は、指数増殖期に入る。増殖期は、約1g/L~約20g/Lのグルコースを含む無血清供給培地のボーラス供給による流加法により維持することができる。これらの補充ボーラス供給は、通常、細胞がバイオリアクターに接種された後まもなく、細胞培養物が供給を必要とすると予想されるか又は決定される時点で、開始する。例えば、補充供給は、培養の3日目若しくは4日目頃、又はその1日若しくは2日前若しくは後に開始することができる。培養物は、増殖期の間、2回、3回又はそれ以上のボーラス供給を受け得る。基礎細胞培養培地もボーラス供給培地も、ガラクトースを含有せず、スクロースも含有しない。
【0049】
細胞が定常期若しくは産生期に入るか、又は細胞培養物が所望の生細胞密度及び/若しくは細胞力価を達成したとき、流加ボーラス供給を中断し、灌流を開始することができる。灌流培養は、細胞培養物が新鮮な灌流供給培地を受け、同時に使用済み培地を除去するものである。灌流は、連続的であっても、段階的であっても、断続的であっても、これらのいずれか又は全ての組み合わせであってもよい。灌流速度は、1日当たりの作動容積未満から数作動容積とすることができる。細胞が培養物中に保持され、除去される使用済み培地には細胞が実質的に含まれないか、又は培養物に比べて非常に少ないことが好ましい。灌流は、遠心分離、沈降、又は濾過を含む多くの手段によって達成することができる。例えば、Voisard et al.,(2003),Biotechnology and Bioengineering 82:751-65を参照されたい。好ましい濾過方法は、交互タンデンシャルフローフィルトレーションである。交互タンデンシャルフローは、中空ファイバフィルタモジュールを通して培地をポンプ注入することにより維持される。例えば、米国特許第6,544,424号明細書を参照されたい。中空糸モジュールは、精密濾過器又は限外濾過器であり得る。
【0050】
流加培養物が、所望の細胞生存率、細胞密度、圧縮細胞量率、力価、圧縮細胞量調整力価、年齢などの所定のトリガーポイントに達すると、流加培養と灌流との間の切り替えを行うことができる。例えば、この切り替えは培養の7日目前後に行うことができるが、その1日又は2日前又は後であってもよい。灌流供給処方には、20g/L以下又はそれ以上の濃度のグルコースが含まれるが、ガラクトースもスクロースも含まれない。一実施形態では、灌流培地は、約4g/L~約18g/Lのグルコースを含有する。
【0051】
灌流培養物が、所望の細胞生存率、細胞密度、圧縮細胞量率、力価、圧縮細胞量調整力価、年齢などの所定のトリガーポイントに達すると、細胞培養培地中のグルコース濃度が低下する。例えば、このシフトは培養の11日目に開始され得るが、その1日又は2日前又は後に起こり得る。この時点で、低濃度のグルコースを含む細胞培養培地で細胞培養物を灌流する。
【0052】
細胞培養物中の低グルコース状態は、使用済み培地中のグルコース濃度を測定し、灌流培地処方中のグルコース濃度を所望のレベルに維持するように調整するなど、細胞培養物中のグルコース濃度をモニターすることによって維持することができる。
【0053】
細胞培養物は、ガラクトース又はスクロースを補充した低グルコース状態で連続して維持することができる。細胞培養物は、回収まで、ガラクトース又はスクロースを補充した低グルコース状態で維持することができる。細胞培養物は、ガラクトースもスクロースも補充しない標準のグルコースレベルに戻し、全プロセスを再び開始することができる。
【0054】
細胞培養物はまた、増殖期及び産生期の両方のための灌流培養系で維持することができる。産生バイオリアクターに接種されるとすぐに、哺乳動物細胞は指数増殖期に入り、その間、細胞培養物は、無血清で、且つ/又は合成の細胞培養培地で灌流される。
【0055】
1つの例示的な実施形態は、以下に詳細に説明するように、CP4プロセスである。
【0056】
一態様において、本発明は、デノスマブ分子上に存在する高マンノースのレベルを増加させる方法(ここで、前記デノスマブ分子は哺乳動物宿主細胞によって組換え発現されたものである)であって、(a)増殖期の間、第1の培養培地中で前記哺乳動物宿主細胞を、細胞密度が少なくとも1×106生細胞/mLになるまでインキュベートする工程(ここで、前記第1の培養培地は、約1g/L~約20g/Lのグルコースを含む)と、その後の、(b)産生期の間、第2の培養培地中で工程(a)からの宿主細胞をインキュベートして、前記デノスマブ分子を発現させる工程(ここで、前記第2の培養培地は、約0g/L~約10g/Lのグルコース及び約5g/L~約20g/Lのガラクトースを含む)とを含む、方法を提供する。開示した方法の結果として、N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合が、対照と比較して増加する。
【0057】
対照は、所定の範囲又は閾値、当該技術分野で一般に許容されている範囲、又はデノスマブ産生からの歴史的範囲であり得る。或いは、対照は、宿主細胞が、グルコース濃度が低下されないか、又は代替の炭素源を補充されない培養培地中で培養される参照バッチであり得る。例えば、宿主細胞は、約0g/L~約10g/L(例えば、約1g/L~約5g/L)のグルコース及び約5g/L~約20g/L(例えば、約10g/L~約12g/L)のガラクトースを含む第2の培養培地に移行されず、全産生期の間、約1g/L~約20g/L(例えば、約4g/L~約18g/L)のグルコースを含む第1の培地中で培養され得る。
【0058】
特定の実施形態では、対照は所定の閾値である。例えば、対照は、約1.8%以下、約1.7%以下、約1.6%以下、約1.5%以下、約1.4%以下、約1.3%以下、約1.2%以下、約1.1%以下、約1.0%以下、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、又は約0.1%以下の高マンノースレベルであり得る。
【0059】
別の態様において、本発明は、約2%~約14%のデノスマブ分子がN-298部位に高マンノースを含む組換え産生デノスマブを提供する。例えば、約2%~約14%、約3%~約14%、約4%~約14%、約5%~約14%、約2%~約13%、約2%~約12%、約2%~約11%、約3%~約13%、約3%~約12%、約3%~約11%、約4%~約13%、約4%~約12%、約4%~約11%、約2%~約6.5%、約3%~約6.5%、約4%~約6.5%、約8.5%~約14%、約8.5%~約13%、約8.5%~約12%、約8.5%~約11%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%、約12%、約12.5%、約13%、約13.5%、又は約14%のデノスマブ分子がN-298部位に高マンノースを含む。
【0060】
特定の実施形態では、N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、約5%~約14%である。特定の実施形態では、N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、約5%~約12%である。特定の実施形態では、N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、約5%~約11%である。
【0061】
特定の実施形態では、N-298部位に高マンノースを含むデノスマブ分子の割合は、6.5%~7.5%ではなく、6.5%~8.5%ではなく、又は7.5%~8.5%ではない。
【0062】
上述のように、ここで割合として表される高マンノースレベルは、文字通り個々の分子レベルでの高マンノース含量を計数することを意味すると解釈されるべきではない。それよりむしろ、割合は、一般に使用されている分析方法のいずれかを使用して、抗体組成物の全体的なN-グリカン含量に基づく高マンノース種の相対的な割合を反映するものである。例えば(例えば、実施例3.2、実施例7.1を参照)、割合は、クロマトグラフィーのピークの面積に基づいて計算され得る。
【0063】
本明細書で提示されるデノスマブの高マンノース含量の範囲は、主にPK/PD評価(市販のProlia(登録商標)及びXgeva(登録商標)と比較して実質的に類似のPK)に基づいている。最も広い範囲(例えば、2%~14%)は、FDAによる生物学的類似性評価のための決定基準として単に解釈されるべきものではない。生物学的類似性の評価に関して、FDAは、提案されたバイオシミラー製品と革新的な(参照)生物学的製品との間の生物学的類似性を実証するエビデンスの統合を得るための段階的アプローチを推奨している。段階的アプローチは、提案されたバイオシミラー製品の製造プロセスの様々な段階での機能的及び構造的特徴付けのための分析研究から始まる。分析的類似性評価には、臨床転帰に関連する重要品質特性(CQA)の特定が含まれる。したがって、生物学的類似性を実証するために、異なる又はより狭い範囲の高マンノース含量が必要とされ得る。生物学的類似性はまた、他の特性(例えば、他の型のグリカン)に一致するバイオシミラー製品を必要とし得る。
【0064】
3.2 高マンノースレベルが減少したデノスマブ
高マンノースレベルが減少したデノスマブもまた、本明細書において提供される。1つの例示的な実施形態(以下に詳細に記載するCP3プロセスを参照)においては、N-298部位にMan-5を有する組換え産生デノスマブは1%未満である。
【0065】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約0.2%~約1.8%のデノスマブ分子がN-298部位に高マンノースグリカンを含む組成物を提供する。特定の実施形態では、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約0.2%~約1.8%、約0.2%~約1.7%、約0.2%~約1.6%、約0.2%~約1.5%、約0.2%~約1.4%、約0.2%~約1.3%、約0.2%~約1.2%、約0.2%~約1.1%、約0.2%~約1.0%、約0.3%~約1.8%、約0.4%~約1.8%、約0.5%~約1.8%、約0.3%~約1.5%、約0.4%~約1.5%、約0.5%~約1.5%、約0.3%~約1.2%、約0.4%~約1.2%、約0.5%~約1.2%、約0.3%~約1.0%、約0.4%~約1.0%、又は約0.5%~約1.0%のデノスマブ分子がN-298部位に高マンノースグリカンを含む。
【0066】
治療用抗体の有効性は、血清クリアランス速度、すなわち抗体の血清中半減期によって影響を受ける。IgG抗体の血清中半減期は、高マンノース含有病原体及び内因性タンパク質の両方に結合するマンノース受容体を含む多くの受容体によって調節される。一般に、高マンノースグリカンを含むIgGは、ヒトにおいて、他のグリカン形態よりも急速に除かれる(Goetze et al. Glycobiology vol.21 no.7 pp.949-959,2011)。したがって、高マンノース含有グリコフォームの減少は、望ましい品質特性である抗体組成物の半減期を改善する。
【0067】
特に、Goetzeは、モノクローナル抗体(Mab1)とM5含有Mab1集団との間の消失半減期の差が、用量の減少と共に増加し(表VII)、M5含有IgGがより低い静脈内用量で比較的速く除去されることを示した。著者らは、マンノース受容体がM5 IgG集団のより速いクリアランスに寄与し、より高用量でのより遅い相対的クリアランスがこの受容体の飽和を反映している可能性があることを示唆した。血清IgGの半減期は一般にFcRnによって媒介され、治療用IgGの半減期はさらに標的に基づくクリアランスによって調節される可能性があるが、マンノース受容体は治療的IgGの非天然(高マンノース)グリカン変異体のより迅速なクリアランスに明らかに寄与する。これは、外因性病原体及び望ましくない内因性分子のクリアランスにおけるマンノース受容体が果たす役割と一致しており、マウスにおけるM5含有IgG1のより速いクリアランスを示した初期の研究により支持されている。
【0068】
臨床試験では、健常志願者にCP2-デノスマブ又はCP3-デノスマブを投与した。PK/PD分析の結果、CP3-デノスマブはCP2-デノスマブと比較して平均して半減期が10%長いことが示された。したがって、CP3-デノスマブは、その良好なPK/PDプロファイルのため、治療効果がより長い潜在的有益性を有する。この有益な効果は、必要とされる投与頻度を減少させ、患者のコンプライアンスを高めるであろう。
【0069】
3.3 高マンノース含量を評価するための分析方法
組換え産生されたデノスマブ上の高マンノース構造を分析するために、様々な方法を使用することができる。このような方法を用いて、以下の1つ以上を測定することができる:グリカン又は糖タンパク質調製物中の高マンノースの存在及び/又は量(例えば、総グリカン質量に対する)、高マンノース構造の相対比(例えば、高マンノース種相互の相対比(例えば、Man-5、Man-6、Man-7、Man-8、及び/又はMan-9、並びにそれらの異性体の相対存在量又は相対比)、高マンノース構造とハイブリッド構造との相対比、高マンノース構造と複合型構造との相対比、高マンノース構造とフコシル化構造との相対比);修飾高マンノース構造の存在又は量(例えば、フコシル化高マンノース構造の存在又は量)。
【0070】
高マンノース含量は、例えば、Wuhrer et al. (Journal of Chromatography B Vol.825:124-133,2005)及びDell et al. (Science Vol.291:2351-2356)に記載されているような当該技術分野でよく知られている1つ以上の方法、並びに、例えば、糖タンパク質のN-グリカンマッピングのための分析方法を含む、本明細書中に記載されている方法によって測定することができる。簡潔に記載すると、組換えモノクローナル抗体などの組換え糖タンパク質からN-グリカンを酵素により除去し、還元末端に蛍光タグ(2-アミノベンズアミド)で標識する。蛍光N-グリカンを、高pH陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によって分離し、蛍光検出によって検出する。一般に、中性N-グリカンの分離は、N-グリカン構造の複雑さの増加に基づく。荷電N-グリカンの分離は、シアル酸、硫酸塩、又は電荷数を導き出すことができる存在する他の修飾の数及びタイプに基づく。試験試料のこれらのグリカンプロファイルを、適切な標準と視覚的に比較する。
【0071】
高マンノース含量はまた、糖タンパク質の高マンノース含量を検出及び/又は定量するためのハイスループット方法である、国際公開第2007/087384号パンフレットに開示される方法を使用して測定することができる。簡潔に記載すると、糖タンパク質をエンドグリコシダーゼで消化し、続いて、(必要であれば)還元剤を用いて消化された糖タンパク質を還元し、そして変性電気泳動によって消化された糖タンパク質を分離する。高マンノース/ハイブリッド型グリカンの比率は、非グリコシル化重鎖の画分(エンドグリコシダーゼ処理なしのピーク画分)を、脱グリコシル化重鎖の画分(エンドグリコシダーゼ消化後のピーク)から差し引くことによって決定される。エンドグリコシダーゼ処理なしの非グリコシル化重鎖画分又はピーク画分は、エンドグリコシダーゼがその中に含まれない以外は、同じ試料又は組成物を同じ消化条件に供することによって生成される。この工程はエンドグリコシダーゼ消化工程と同時に、又は別々に実施することができる。
【0072】
コアグリカン上のGlcNAc1とGlcNAc2との間の高マンノース及びハイブリッドグリカンを選択的に切断する(又は、タンパク質上に短いグリカンを生成する)一方、複合型N結合グリカンを無傷のまま残す任意のエンドグリコシダーゼを使用することができる。酵素の濃度、インキュベーション温度及び消化時間を含む、エンドグリコシダーゼ消化を実施するための特定の条件は、使用するエンドグリコシダーゼの種類に依存する。本発明に関連するエンドグリコシダーゼの例としては、エンドグリコシダーゼH及びエンドグリコシダーゼF1が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、糖タンパク質を含む試料は、37℃で約2時間、エンドグリコシダーゼHで処理され、β-メルカプトエタノールで還元され、CE-SDS分析に供される。
【0073】
グリコシル化糖タンパク質、例えば、グリコシル化抗体から、脱グリコシル化糖タンパク質、例えば、脱グリコシル化抗体を分離するための方法の例としては、以下の2つの方法が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0074】
1)還元条件下でのCE-SDS。グリコシル化糖タンパク質、例えば抗体を、SDS及び還元剤で変性し、グリカンを有するその重鎖(HC)を、キャピラリー電気泳動-SDS(CE-SDS)によって、切断されたHC(脱グリコシル化HC)から分離する。UV信号の電気泳動図を生成する。ピーク下の面積は相対量に比例する。したがって、高マンノース/ハイブリッド型の量は、より早い脱グリコシル化HC位置で溶出する画分から決定される。GlcNAc-HCは脱グリコシル化HCと共移動するので、未消化試料からの脱グリコシル化HC%を消化試料のプレピークから差し引いて、高マンノース%値を得る。分離には、構成に依存して、15~30分を要する。
【0075】
2)マイクロ流体ベースのCE-SDS。糖タンパク質は、1)と同様に変性させるが、CaliperによるLC90などの「ラボオンチップ」機器を使用して分離する。タンパク質を検出するために蛍光色素を使用するが、アッセイ及び分離には同じ原理を使用する。分離時間は1アッセイ当たり約30秒に短縮され、それはマイクロタイタープレートからサンプリングされ得る。
【0076】
実施例7.1は、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を使用する。簡潔に記載すると、グリカン種は、以下の工程に基づいて分析することができる:(i)N-グリカンの放出(例えば、PNGアーゼFなどの酵素による)、(ii)標識(例えば、2-アミノ安息香酸又は2-アミノベンズアミドによる)、(iii)遊離標識の除去(例えば、ゲル濾過又は固相抽出による)、(iv)HILICによるグリカン種の分離、及び(v)検出(例えば、蛍光分光法による)。HILICのさらなる詳細は、Melmer et al.,Analytical and Bioanalytical Chemistry、September 2010、Volume 398、Issue 2、pp905-914によって提供される。
【0077】
一般的に使用されている別の方法は、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS)である。N-グリカンの放出、標識化、及び遊離標識の除去の後、試料は、液体クロマトグラフィー(又はHPLC)の物理的な分離機能を質量分析(MS)の質量分析機能と組み合わせる技術によって分析され得る。例えば、Wang et al.,Biotech Method、17 January 2018、doi.org/10.1002/biot.201700185を参照されたい。
【0078】
さらに他の好適な方法としては、陽イオンMALDI-TOF分析、陰イオンMALDI-TOF分析、HPLC,弱陰イオン交換(WAX)クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー(NP-HPLC)、Bio-Gel P-4クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、及び一次元NMR分光法、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Pace et al.,Biotechnol.Prog.,2016,Vol.32,No.5 pages 1181-1192、Shah,B.et al. J.Am.Soc. Mass Spectrom.(2014)25:999、Mattu et al.,JBC 273:2260-2272(1998)、Field et al.,Biochem J 299(Pt 1):261-275(1994)、Yoo et al.,MAbs 2(3):320-334(2010)Wuhrer M.et al.,Journal of Chromatography B,2005,Vol.825,Issue 2,pages 124-133、Ruhaak L.R.,Anal Bioanal Chem,2010,Vol.397:3457-3481、Kurogochi et al.,PLOS One 10(7):e0132848;doi:10.1371/journal.pone.0132848、Thomann et al.,PLOS One10(8):e0134949. Doi:10.1371/journal.pone.0134949、Pace et al.,Biotechnol. Prog.32(5):1181-1192(2016)、及びGeoffrey,R.G.et.al. Analytical Biochemistry 1996,Vol.240,210-226頁を参照されたい。
【0079】
高マンノース含量を評価する場合、対照は、上記のように、比較目的のために使用され得る。
【0080】
4.組換え産生デノスマブの糖化
糖化(非酵素的グリコシル化と呼ばれることもある)は、グルコース又はフルクトースなどの糖分子のタンパク質又は脂質分子への共有結合の結果であり、酵素の制御作用を受けない。糖化は、一般にタンパク質分子の表面に位置する正に荷電した第一級アミンで起こる。潜在的な糖化部位が特定されたことを示す特異的配列は確認されていない。しかし、塩基性残基(アルギニン及び他のリジン)は、既知の構造を有するいくつかのタンパク質における糖化の発生と相関することが観察されている。糖化はN-298部位のN-グリコシル化とは異なる。
【0081】
治療用mAbでは、生物学的機能部位の遮断又は凝集を誘発するさらなる分解などの糖化の潜在的効果が、糖化を潜在的な重要品質特性(CQA)にする。抗体活性に及ぼす糖化の影響は、影響なし(Quan et al.,Anal Biochem 2008;373(2):179-91、Miller et al.,J Pharm Sci 2011;100(7):2543-50)から活性喪失(Kennedy et al.,Clin Exp Immunol 1994;98(2):245-51、Dolhofer et al.,Biol Chem Hoppe Seyler 1985;366(4):361-6)まで幅があった。
【0082】
リジン残基は荷電しており、しばしばタンパク質-タンパク質相互作用に関与しているので、糖化の有意な増加がCP4デノスマブの生物学的活性に影響しなかったことは驚くべきことであった。したがって、一態様においては、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、少なくとも15%のデノスマブ分子が1つ以上の糖化リジン残基を含む組成物を提供する。実施例に示すように、CP4-デノスマブは、CP2-デノスマブと比較してより高レベルの糖化を示す。驚くべきことに、糖化レベルがより高いにもかかわらず、デノスマブのそのリガンドへの結合、及び生物学的活性は影響されない。実際、強制糖化した1つの実験では、最大70%のデノスマブ分子が1つ以上の糖化リジン残基を含むが、その生物学的活性は維持された。したがって、特定の実施形態では、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約15%~約70%、約15%~約65%、約15%~約60%、約15%~約55%、約15%~約50%、約15%~約45%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約20%~約70%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約55%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、又は約24%のデノスマブ分子は1つ以上の糖化リジン残基を含む。
【0083】
別の驚くべき発見は、ガラクトース-糖化リジンがデノスマブの生物学的活性にも免疫原性にも影響しなかったことである。ガラクトースは、天然には、ヒト血清中に約0.3mg/dL存在する。このような低い血清ガラクトースレベルでは、ガラクトース血症患者を除いて、健常な人が測定可能なレベルのガラクトース糖化を含む血中蛋白質を有する可能性は低い。したがって、ガラクトース糖化の臨床的安全性はこれまで不明であった。デノスマブの場合、高レベルのガラクトース-糖化デノスマブは免疫原性に影響を与えないことがわかった。したがって、別の態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、少なくとも5%のデノスマブ分子が、ガラクトース部分を含む1つ以上の糖化リジン残基を含む組成物を提供する。例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、又は約10%~約15%のデノスマブ分子が、ガラクトース部分を含む1つ以上の糖化リジン残基を含む。
【0084】
上記のN-298グリカンレベルと同様に、割合として表される糖化レベルは、文字通り個々の分子レベルで糖化リジンを有する分子を計数することを意味するものと解釈されるべきではない。それよりむしろ、割合は、一般に使用されている分析方法のいずれかを使用して、抗体組成物の全リジン含量に基づく糖化リジン種の相対的な割合を反映するものである。例えば、実施例7.2を参照されたい。そこでは、K-98における糖化リジンの割合は、CE-HPLCピークに基づいて計算されている。
【0085】
特定の実施形態では、ガラクトース糖化リジンとグルコース糖化リジンの比は、約1:10~約10:1、例えば、約1:10、約1:9、約1:8、約1:7、約1:6、約1:5、約1:4、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約7:1~約1:7、約6:1~約1:6、約5:1~約1:5、約4:1~約1:4、約3:1~約1:3、又は約2:1~約1:2である。
【0086】
特定の実施形態では、糖化リジンは、(i)重鎖K76、K98、K218、K249、K318、K327及びK335、並びに(ii)軽鎖K104、K108、K150、K184及びK191からなる群から選択される。
【0087】
特定の実施形態では、本発明のデノスマブ分子は、ヒトRANKLに高い親和性で結合するが、マウスRANKLには結合しない。抗体の結合親和性は、特定の抗原-抗体相互作用の解離速度を指すKD値として表すことができる。KDは、「オフレート(koff)」とも呼ばれる解離速度と、結合速度、すなわち「オンレート(kon)」との比である。したがって、KDはkoff/kon(解離/結合)に等しく、モル濃度(M)として表され、KDが小さいほど結合親和性が強い。抗体のKD値は、当該技術分野で十分に確立された方法を使用して決定され得る。特に明記しない限り、「結合親和性」は一価の相互作用(固有活性;例えば、一価の相互作用による抗体の抗原に対する結合)を指す。
【0088】
KD値はよく知られた方法によって直接決定することができ、複雑な混合物についても、例えばCaceci et al.(1984,Byte 9:340-362)に記載されているような方法によって計算することができる。(1984,Byte 9:340-362)。例えば、KDは、Wong & Lohman(1993,Proc.Natl.Acad.Sci. USA 90:5428-5432)によって開示されているような二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを用いて確立することができる。標的抗原に対する抗体のようなリガンドの結合能力を評価するための他の標準的なアッセイは当該技術分野で知られており、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、及びフローサイトメトリー分析、並びに、本明細書の他の箇所に例示される他のアッセイが挙げられる。
【0089】
結合親和性(KD)値を測定するための1つの例示的な方法は、一般的にはBIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを使用する表面プラズモン共鳴(SPR)である。SPRは、例えば、BIACORE(登録商標)システムを使用して、バイオセンサマトリックス内のタンパク質濃度の変化を検出することによって、リアルタイムの生体特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。BIAcore動態分析は、チップからの抗原の、その表面上の固定化分子(例えば、抗原結合ドメインを含む分子)との結合及び解離、又は固定化抗原を有するチップからの抗体若しくはその抗原結合フラグメントの解離を分析することを含む。
【0090】
特定の実施形態では、結合親和性(KD)値は、溶液ベースの結合平衡除外法(KinExA(商標))を使用して測定される。特定の実施形態では、KinExA測定がKinExA(商標)3200機器(Sapidyne)を使用して行われる。結合平衡除外法(KinExA(商標))は、抗原/抗体相互作用の平衡解離定数、並びに結合及び解離速度定数を測定することができる汎用免疫アッセイプラットフォーム(基本的には、フロー蛍光分光光度計)である。KinExA(商標)は、平衡が得られた後に実施されるので、相互作用のオフレートが非常に遅い可能性がある高親和性相互作用のKDの測定に使用することが有利な技術である。KinExA(商標)方法は一般に、Drake et al(2004)Analytical Biochemistry 328,35-43に記載されているように実施することができる。
【0091】
抗体のKDを決定するための別の方法は、一般的にはOctet(登録商標)技術(Octet QKeシステム、ForteBio)を使用する、バイオレイヤー干渉法の使用による。
【0092】
デノスマブに対する結合親和性は、一般に100pM未満である。特定の実施形態では、デノスマブはヒトRANKLに約100pM以下、約75pM以下、約50pM以下、約25pM以下、約20pM以下、約10pM以下、約5pM以下、約0.1pM~約50pM、約0.5pM~約50pM、約1pM~約50pM、約0.1pM~約25pM、約0.5pM~約25pM、又は約1pM~約25pMの親和性で結合する。特定の実施形態では、結合親和性は、KinExA 3000システム(Sapidyne Instruments)を使用する溶液平衡結合分析により、Kostenuik et al.,Journal of Bone and Mineral Research,vol 24,182-195(2009)に開示されている方法に従って測定される。簡潔に記載すると、Reacti-Gel 63ビーズを20mg/mlのヒトRANKLにより、4℃で一晩プレコートし、1mg/mlのBkSAで2時間ブロックし、PBSで3回洗浄した。デノスマブ(50pM)を、種々の濃度の可溶性ヒトRANKL(0~5nM)と共に室温で>6時間インキュベートして、RANKL被覆ビーズを通過させる前に平衡結合を可能にした。遊離デノスマブのビーズへの結合を、蛍光標識した(シアニンCy5色素)ヤギ抗ヒト抗体によって定量した。
【0093】
糖化レベルの評価に多くのアッセイを用いることができる。1つの例示的な方法は、ボロン酸アフィニティークロマトグラフィーである。ボロン酸アフィニティークロマトグラフィー(BAC)は、シス-ジオール化合物の単離及び濃縮のための技術である。固定相上のボロン酸官能基は、アルカリ性pH条件下で四面体アニオンを形成し、これは、糖分子のcis-1,2-ジオールアレイと相互作用し(Quan et al.,Anal Biochem 2008;373(2):179-91)、非糖化種から糖化種を分離することができる。糖化種を溶出するために、pHを低下させるか、又はソルビトールなどの水酸基の競合源を添加することによって、相互作用を破壊する。BACは、炭水化物及び無傷のタンパク質の分析に使用されている。
【0094】
抗体糖化分析では、BACは、必要とする試料調製は最小限でよく、自然の動作条件を使用するので、糖化抗体の同定、定量及び単離の一般的な方法である。遮蔽剤、pH及び緩衝塩組成物の濃度の最適化は、原薬物質の糖化レベルの定量を可能にする。
【0095】
糖化レベルを評価する別の方法は、電荷に基づく方法である。キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)又はイメージキャピラリー電気泳動(icIEF)は、糖化部位上の正電荷の損失による糖化を検出することができる、電荷に基づく分離方法である。完全に糖化され保持されたボロン酸画分は、糖化されず保持されていないボロン酸画分と比較して、酸性領域へのシフトが存在する。icIEFは0.05-pIの差異を有する種を分離することが知られており、ブロックされたリジン残基に起因する0.09-pI単位の差異を理論的に有する糖化抗体を分離することができる。この電荷差分離は、共混合糖化及び非糖化ボロン酸画分においても観察可能である。
【0096】
イオン交換クロマトグラフィー(IEC)はまた、表面電荷差を有する糖化タンパク質及び非糖化タンパク質を分離し得る。糖化ボロン酸画分の分析は、線形勾配条件下で主ピークへの明確な酸性シフトを示す。これに対応して、IECから分画された酸性変異体もまた、糖化のわずかな富化を示す。
【0097】
Quanら(上記)は、元の未分画抗体と比較して、完全に糖化したボロン酸保持抗体の酸性領域へのシフトを報告した。シフトの量は、線形勾配における約0.5mM塩化ナトリウムに等しかった。ボロン酸保持画分のIECピークも顕著に広がったが、ボロン酸非保持画分(非糖化)のIECピークは未分画出発物質よりもシャープであった。しかし、IECは出発物質内の糖化種を十分に分離するだけの分解能を有していないことがあり、これは分子における低レベルの糖化の複数の部位からの複合電荷効果を示す。対照的に、カルボキシル末端に0、1、又は2個のリジン残基を有する分子は、明らかに樹脂との特異的且つ特有の位置的相互作用のために、互いに完全に分離される。
【0098】
糖化レベルを評価する別の方法は、液体クロマトグラフィー-質量分析である。無傷の抗体又は酵素切断mAb断片のトップダウン質量分析もまた、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)(例えば、Kislinger et al.,Ann N Y Acad Sci 2005;1043:249-59を参照)、又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)(例えば、Miller et al.,J Pharm Sci 2011;100(7):2543-50を参照)によって、糖化レベルを決定するために使用することができる。各糖化部位は+162Daの質量シフトを示すので、トップダウンアプローチを、抗体の糖化レベルの迅速な推定として使用し得る。脱グリコシル化及びC末端リジンの除去後、質量分析による糖化の定量は、1.0%の検出限界及び3.0%の定量限界を有し、BACと質量分析結果との間に相関があることが報告されている。
【0099】
糖化部位を見つけるために、ボトムアップペプチドマッピングアプローチが一般に使用される。トリプシンはリジン残基の糖化によって阻害されるので、+162Daの質量付加を伴うトリプシン切断の失敗は、糖化リジンを示す。収集されたBAC保持画分又は強制糖化試料のトリプシンペプチドマッピングは、抗体の糖化感受性の部位を明らかにする。
【0100】
質量分析における断片化の別の方法は、電子移動解離(ETD)である。断片化方法の比較に関する研究は、ETDがいかなる中性損失もなしに完全な配列断片化を提供することを示す。
【0101】
感度を改善し、糖化ペプチドの中性損失を減少させる1つの方法は、水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウム還元、続いてトリプシン切断及びMS/MS検出によるペプチドマップ分析を使用することによる(例えば、Brady et al.,Anal Chem 2007;79(24):9403-13を参照)。このアプローチにおいて、炭水化物とペプチドとの間の結合は、還元した糖化糖部分のために安定化され、これはより高品質のMS/MSスペクトルが得られる。
【0102】
液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)もまた、タンパク質糖化のレベルを調べるために一般的に使用される方法である。
【0103】
比色アッセイもまた使用することができる。抗体糖化から形成されたケトアミンは、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)還元アッセイによって定量することができる。NBTは糖化タンパク質のケトアミン形態によって還元され、これは525nmにおける吸光度の変化をもたらす。この方法は、ポリリジン及び糖化アルブミンの測定に使用されてきた。
【0104】
さらに、酵素結合免疫吸着法(ELISA)フォーマットが、試料と、特定の種類の糖化最終産物を標的とするビオチン結合一次抗体との間の結合を利用して、糖化抗体を調べるために適用されてきた。
【0105】
5.他のグリカン種
一般に知られているグリカンを表2に示す。一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約48%~約70%のデノスマブ分子がA2F-G0を含む組成物を提供する。例えば、約48%~約55%、約50%~約65%、約50%~約60%、又は約55%~約65%のデノスマブ分子がA2F-G0を含む。
【0106】
別の態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約30%~約60%(例えば、約30%~約55%、約30%~約50%、約30%~約45%、約35%~約55%、約35%~約50%、又は約35%~約45%)のデノスマブ分子が、N-298部位にA2F-G0を含む組成物を提供する。
【0107】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約9%~約26%(例えば、約10%~約26%、約11%~約26%、約12%~約26%、約13%~約26%、約10%~約20%、又は約15%~約25%)のデノスマブ分子がA2F-G1を含む組成物を提供する。
【0108】
別の態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約20%~約50%のデノスマブ分子がN-298部位にA2F-G1を含む組成物を提供する。例えば、約25%~約45%、約25%~約40%、約30%~約45%、又は約30%~約40%のデノスマブ分子がA2F-G1を含む。
【0109】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約0.1%~約3%のデノスマブ分子がN-298部位にA1-G0を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約0.5%~約3%のデノスマブ分子がN-298部位にA1-G0を含む組成物を提供する。
【0110】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約0.1%~約4%のデノスマブ分子がN-298部位にA1F-G0を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約1%~約5%のデノスマブ分子がN-298部位にA1F-G0を含む組成物を提供する。
【0111】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約4%~約10%のデノスマブ分子がN-298部位にA2-G0を含む組成物を提供する。別の態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約4%~約8%のデノスマブ分子がN-298部位にA2-G0を含む組成物を提供する。
【0112】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約1%~約7%のデノスマブ分子がN-298部位にA2-G1を含む組成物を提供する。一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約0.5%~約4%のデノスマブ分子がN-298部位にA2-G1を含む組成物を提供する。
【0113】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約3%~約10%のデノスマブ分子がN-298部位にA2F-G2を含む組成物を提供する。一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約0.3%~約5%のデノスマブ分子がN-298部位にA2F-G2を含む組成物を提供する。
【0114】
一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブ分子を含む組成物であって、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約0.1%~約5%、約0.1%~約4%、約0.1%~約3%、約0.1%~約2.5%、約0.1%~約2%のデノスマブ分子がN-298部位にシアル化N-グリカンを含む組成物を提供する。一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブを含む組成物であって、約0.3%~約1%のデノスマブ分子がN-298部位にシアル化N-グリカンを含む組成物を提供する。一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブを含む組成物であって、約0.3%~約2%のデノスマブ分子がN-298部位にシアル化N-グリカンを含む組成物を提供する。一態様において、本発明は、組換え産生デノスマブを含む組成物であって、約1%~約3%のデノスマブ分子がN-298部位にシアル化N-グリカンを含む組成物を提供する。
【0115】
上述したように、ここで割合として表される種々のグリカン種のレベルは、文字通り個々の分子レベルでのN-グリカン含量を計数することを意味すると解釈されるべきではない。割合は、一般に使用されている分析方法のいずれかを使用して、抗体組成物の全体的なN-グリカン含量に基づくグリカン種の相対的な割合を反映するものである。例えば(例えば、実施例3.2、実施例7.1を参照)、割合は、クロマトグラフィーのピークの面積に基づいて計算され得る。
【0116】
例示されたプロセスによって産生されたデノスマブ分子は、高マンノースとは異なった、上記した種の種々のグリカン含量を示したが、デノスマブの生物学的活性及びPK/PDプロファイルはこれらのグリカン種の変動によって影響されない。したがって、グリカンプロファイルは、有意な変動を潜在的に許容し得るであろう。特定の実施形態では、約48%~約70%がA2F-G0を有し、約13%~約26%がA2F-G1を有するか、又は約48%~約70%がA2F-G0を有し、約10%~約20%がA2F-G1を有することが望ましい場合がある。
【0117】
さらに、生物学的類似性評価が網羅的検証に基づいているので、最も広い範囲(例えば、デノスマブ分子の約48%~約70%がA2F-G0を含む)は、生物学的類似性評価の決定基準として決して解釈されるべきではない。例えば、Fcグリカン上の糖残基(例えば、フコース、シアル酸、末端β-ガラクトース)の存在又は非存在はFcの構造に影響を及ぼし、それによって、Fc媒介エフェクター機能に潜在的に影響を及ぼす。G0グリカンは(i)補体を活性化し、且つ(ii)血清クリアランスを促進するために、マンノース結合タンパク質と相互作用することが知られている(例えば、Dong,et al.,J.Immunol.,163(1999),pp.5427-5434、Malhotra,et al. Nat.Med.,1(1995),pp.237-243を参照)。G2グリコフォームは、妊婦及び臍帯において増加することが知られている(Kibe,et al.J.Clin.Biochem.Nutr.,21(1996),pp.57-63)。静脈内免疫グロブリン(IVIG)の脱シアル化は、KNマウスにおける抗炎症特性を喪失させることが知られている(Yang et al.,Anal.Biochem.,448(2014),pp.82-91)。IgG上のコアα(1,6)フコースの喪失は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)の活性を増強することが知られている(例えば、Ferrara,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,108(2011),pp.12669-12674、Shields,et al.J.Biol.Chem.,277(2002),pp.26733-26740を参照)。最後に、N結合複合型グリカンの末端単糖は、シアル酸によって占められることがある。このシアル酸の存在は吸収、血清中半減期、及び血清からのクリアランス、並びにそれぞれの糖タンパク質の物理的特性、化学的特性、及び免疫特性に影響を及ぼす(例えば、Bork et al.,J Pharm Sci.2009 Oct;98(10):3499-508.doi:10.1002/jps.21684を参照)。したがって、生物学的類似性を実証する目的のために、種々の、又はより狭い範囲のグリカン含量が必要とされ得る。
【0118】
6.細胞株
本発明において使用される細胞株(「宿主細胞」とも呼ばれる)は、デノスマブを発現するように遺伝子操作される。細胞株は、一般的には時間が制限されずに培養で維持され得る初代培養から生じる系統に由来する。細胞株の遺伝子操作には、宿主細胞に所望の組換えポリペプチドを発現させるように、細胞を組換えポリヌクレオチド分子でトランスフェクト、形質転換若しくは形質導入すること、及び/又は別の方法で改変すること(例えば、相同組換え及び遺伝子活性化、又は組換え細胞と非組換え細胞との融合によって)を含む。目的のポリペプチドを発現するように細胞及び/又は細胞株を遺伝子操作するための方法及びベクターは当業者によく知られており、例えば、種々の技術が、Molecular Biology、Ausubel et al.,eds.(Wiley & Sons,New York,1988、及び四半期ごとにアップデート)中のCurrent Protocols、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Laboratory Press,1989)、Kaufman,R.J.,Large Scale Mammalian Cell Culture,1990,pp.15-69に説明されている。
【0119】
動物細胞株は、その前駆細胞が多細胞動物に由来する細胞に由来する。動物細胞株の一種は哺乳動物細胞株である。培養での増殖に適した多種多様な哺乳動物細胞株が、American Type Culture Collection(Manassas、Va.)及び商業的ベンダーから入手可能である。産業で一般的に使用されている細胞株の例としては、VERO、BHK、HeLa、CV1(Cosを含む)、MDCK、293、3T3、骨髄腫細胞株(例えば、NSO、NS1)、PC12、WI38細胞、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。
【0120】
特定の実施形態では、哺乳動物宿主細胞は齧歯動物細胞である。齧歯動物細胞株の例としては、例えば、ベビーハムスター腎臓(BHK)(例えば、BHK21、BH TK)、マウスセルトリ(TM4)、バッファローラット肝臓(BRL3A)、マウス乳腺腫瘍(MMT)、ラット肝癌(HTC)、マウス骨髄腫(NSO)、マウスハイブリドーマ(Sp2/0)、マウス胸腺腫(EL4)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びCHO細胞誘導体、マウス胚性(NIH/3T3、3T3 Li)、ラット心筋(H9c2)、マウス筋芽細胞(C2C12)及びマウス腎臓(miMCD-3)が挙げられる。
【0121】
特定の実施形態では、哺乳動物宿主細胞はCHO細胞である。本明細書で使用される場合、「CHO細胞」にはまた、CHO細胞にさらなる遺伝子修飾が導入されているCHO誘導体が含まれる。CHO細胞は、複雑な組換えタンパク質、例えば、サイトカイン、凝固因子、及び抗体の産生のために広く使用されている(Brasel et al.,(1996),Blood 88:2004-2012、Kaufman et al.(1988),J.Biol Chem 263:6352-6362、McKinnon et al.(1991),J.Mol Endocrinol 6:231-239,Wood et al.(1990)J.Immunol.145;301 1-3016)。
【0122】
好適なCHO細胞としては、例えば、DUXB11及びDG44株が挙げられる。これらの2つの細胞株はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)活性が欠損しており、したがって、増殖はヌクレオチド前駆体の外因性供給源に依存する。DHFR欠損は、ゲノム組み込み及び外因性DNAの安定な発現を選択するのに適した、容易に操作される表現型である。ゲノム組み込みは、目的遺伝子及びDHFR遺伝子のための発現カセットで細胞をトランスフェクトすることによって達成される。トランスフェクション後、細胞を、ヌクレオチド前駆体を欠く選択培地中に置く。さらに、これらの細胞は接着性又は懸濁培養物として操作しやすく、比較的良好な遺伝的安定性を示す。CHO細胞及びそれらで組換え発現したタンパク質は広範に特徴付けられており、規制当局による臨床商業生産での使用が認められている。
【0123】
DHFR欠損細胞株における組換えタンパク質発現は、メトトレキサート(MTX)を培養物に添加することによってさらに増強され得、その結果、高コピー数の導入発現ベクターを選択することができる。MTXはDHFR酵素の競合阻害剤である。ヌクレオチド前駆体が存在しないことに加えて、この追加の選択圧を適用することにより、DHFR選択マーカーを含む組み込み発現ベクター、及び、ほとんどの場合、目的遺伝子の自発的増幅を受けた少数の細胞集団の選択及び単離が可能になる。複数の遺伝子コピーの存在は、外因性タンパク質の高レベルの発現を達成するのに役立つ。或いは、MTX選択は、DHFR欠損とは無関係に行うことができる(すなわち、MTXを使用して、元々DHFRコンピテントである宿主細胞を選択する)。
【0124】
別の好適なCHO細胞株は野生型CHO-K1細胞株(例えば、ATCC#CCL-61)、及びその誘導体CHO-K1 SVである。CHO-K1細胞株のため一般的に使用されている一選択方法は、グルタミン合成酵素(GS)選択である。グルタミンの外因性供給源がない場合、細胞生存は、グルタミンを産生するGS酵素に依存する。比較的低い内因性GS酵素活性を有するマウス骨髄腫由来NS/0細胞及びCHO細胞などの宿主細胞株を用いて、この方法は、GS選択マーカーを発現ベクター中及びグルタミンを含まない選択培地において使用する場合、単純な選択スキームを可能にする。DHFR/MTX系と同様に、GS競合阻害剤メチオニンスルホキシミン(MSX)を培地に添加して、さらなる圧力を加え、組み込みベクターから高レベルの発現を駆動するCHO細胞を選択することができる。
【0125】
DHFR欠損の有無にかかわらず、MTXに基づいて、CHO-K1細胞、又は他の一般的に使用されている任意のCHO細胞を選択することもできる。一般に、DFHR欠損細胞株を用いた場合、外因性配列のコピー数は、一般に非常に多く、数百コピーに及ぶこともある。
【0126】
本明細書に記載の本発明に好適な他のCHO細胞株としては、例えば、CHO-ICAM-1細胞、及びCHO-hlFN細胞γが挙げられる。これらの遺伝子改変細胞は、細胞の特定の遺伝子又は発現領域への組換えDNAの安定した挿入、挿入されたDNAの増幅、及び組換えタンパク質の高レベル発現を示す細胞の選択を可能にする。
【0127】
産業研究所で一般的に使用されているCHO細胞株のさらなる例としては、CS-9細胞及びAM-1/D細胞(米国特許第6,210,924号明細書に記載)が挙げられる。CS-9及びAM1/Dはいずれも、無血清培地への適応及びサブクローニングによってDUX B11から誘導される。他の例示的なCHO細胞株としては、EM9(ATCC CRL-1861)、UV20(ATCC CRL-1862)、CHO dfhr-(ECACC 94060607)、RR CHO KI(ECACC 92052129)、hCBE11(ATCC PTA-3357)、E77.4(ATCC PTA-3765)、hLT-B:R-hG1 CHO#14(ATCC CRL-1 1965)、MOR-CHO-MORAb-003-RCB(ATCC PTA-7552)、AQ.C2クローン11B(ATCC PTA-3274)、AQ.C2クローン11B(ATCC PTA-3274)、CHO-DG44のhsAQC2(ATCC PTA-3356)、xrs5(ATCC CRL-2348)、Led[元の名称はPro-5WgaRI3C](ATCC CRL-1735)、Pro-5(ATCC CRL-1781)、ACY1-E(ATCC 65421)、ACY1-E(ATCC 65420)、pgsE-606(ATCC CRL-2246)、CHO-CD36(ATCC CRL-2092)、pgsC-605(ATCC CRL-2245)、MC2/3(ATCC CRL-2143)、CHO-ICAM-1(ATCC CRL-2093)、及びpgsB-618(ATCC CRL-2241)が挙げられる。細胞株は、どの細胞株が組換えデノスマブの高発現レベルを有するかを決定することによって選択され得る。
【0128】
本明細書に例示されるように、CP3及びCP4プロセスにおいては、CHO細胞は、増殖期の間、MTX選択を使用して増幅された。一般に、MTX選択に伴い、宿主細胞は約700~1000コピーの組換え配列を含み、それによって組換えタンパク質産生の全体的な収率を増加させると推定される。したがって、特定の実施形態では、本発明の哺乳動物宿主細胞は、メトトレキサート(MTX)選択によって増幅されている。特定の実施形態では、哺乳動物宿主細胞が約500コピー以上、約600コピー以上、又は約700コピー以上など、約500コピー以上のデノスマブをコードする核酸配列を含む。
【0129】
特定の実施形態では、本発明の哺乳動物宿主細胞は、約500コピー以上の配列番号3を含む核酸配列、及び/又は約500コピー以上の配列番号4を含む核酸配列を含む。
【0130】
特定の実施形態では、本発明の哺乳動物宿主細胞は、配列番号1をコードする核酸配列、及び/又は配列番号2をコードする核酸配列を含む。特定の実施形態では、本発明の哺乳動物宿主細胞は、抗体をコードする核酸配列を含み、前記抗体は配列番号1を含む重鎖、及び配列番号2を含む軽鎖を含む。特定の実施形態では、本発明の哺乳動物宿主細胞は、配列番号3を含む核酸配列、及び/又は配列番号4を含む核酸配列を含む。
【0131】
特定の実施形態では、CHO細胞株は、十分なグルコースを提供する培地中で培養された場合に、N-298部位に低レベルの高マンノースを提供する細胞株である。このような宿主細胞には、1g/L~20g/Lのグルコース(例えば、4g/L~20g/Lのグルコース)を含む培養培地中で培養した場合に、N-298部位における高マンノースレベルが約1.8%以下であるデノスマブ組成物を産生するCHO細胞が含まれる。例えば、宿主細胞が(低グルコース培地に移行することなく)全産生期の間に約1g/L~約20g/L(例えば、約4g/L~約18g/L)のグルコースを含む培地中で培養された場合に、N-298部位における高マンノースレベルは、約1.8%以下、約1.7%以下、約1.6%以下、約1.5%以下、約1.4%以下、約1.3%以下、約1.2%以下、約1.1%以下、約1.0%以下、約0.9%、約0.8%、約0.7%、約0.6%、約0.5%、約0.4%、約0.3%、約0.2%、又は約0.1%以下である。このようなCHO細胞は通常のグルコースに富む培地中で培養された場合、N-298部位に所望の高マンノース含量を提供しないので、これらのCHO細胞宿主によって産生されるデノスマブ分子の高マンノースレベルを増加させるために、本明細書に記載される方法を使用することに特に利点がある。
【実施例】
【0132】
実施例1:CP2及びCP3培養プロセスの比較
CP2培養増殖プロセスは、70Sワーキングセルバンクからのバイアルを解凍することによって開始した。解凍したバイアルの内容物を、振盪フラスコ中のCP2細胞培養増殖培地に移した。培養物を、20Lバイオリアクターの接種のためにプールされるのに十分な細胞集団が利用可能になるまで、連続的により大きな振盪フラスコ中で継代した。その後、培養物を60Lバイオリアクターで増殖させ、3日後に300Lバイオリアクターで増殖させた。300Lバイオリアクター中で3~4日培養した後、2,000Lの産生バイオリアクターに接種した。
【0133】
CP3培養増殖プロセスは、WCBからの25B12細胞株のバイアルを解凍することによって開始した。解凍したバイアルの内容物を、振盪フラスコ中のメトトレキサート(MTX)を含有するCP3細胞培養増殖培地に移した。培養物を、10Lの培養バッグバイオリアクターの接種のためにプールされるのに十分な細胞集団が利用可能になるまで、連続的により大きな振盪フラスコ中で継代した。10L培養バッグバイオリアクター中で3日後、細胞集団を50Lバイオリアクターに接種し、この段階でMTXを増殖培地から除去した。この後、3日ごとに、100L、次いで500Lのバイオリアクターへと増殖を続けた。500Lバイオリアクター中で3日培養した後、2,000Lの産生バイオリアクターに接種した。
【0134】
CP2及びCP3細胞培養増殖及び産生プロセスを比較するプロセスフロー図を表3に示す。両方のプロセスが、産生バイオリアクターに接種するのに十分なバイオマスが生成される前、3接種バイオリアクター段階を使用した。接種バイオリアクターの操作の間、pH、温度、圧力、撹拌及び溶存酸素を、各プロセスに特異的な設定値で制御した。CP2プロセスは接種バイオリアクター間の全容量移行を含み、一方、CP3プロセスは、初期生細胞密度(VCD)を目標とした。これは、操作の優先度によるものであった。
【0135】
CP2からCP3への細胞株の変化により、より高い収率がもたらされた。CP3細胞株(25B12)は、CS-9親CHO細胞に基づく。
【0136】
もう一つの変化は、培養増殖プロセスへの培養バッグユニット操作の導入であった。これは、N-3バイオリアクターの接種に必要な振盪フラスコの数を減らすために導入した使い捨てバイオリアクター技術である。
【0137】
産生バイオリアクタープロセスは両方ともに、2,000Lの産生容器中、同じ温度設定値で操作した。産生バイオリアクターの操作の間、温度、初期VCD、pH及び溶存酸素を、異なる細胞株のために最適化した、各プロセスに特異的な設定値で制御した。
【0138】
両方のプロセスで、接種は、前のシードバイオリアクター(N-1)培養物を産生バイオリアクターバッチ培地に希釈することによって行った。CP2プロセスは、10×105細胞/mLの産生バイオリアクターにおける最大初期VCDまで、接種バイオリアクター間の全容量移行を含んだ。CP3プロセスは、5×105細胞/mLの初期VCDを目標とした。この差異は、操作の優先度によるものであった。
【0139】
CP2産生プロセスは、改変DMEM/F12培地に基づき、そして培養物が14日目に回収される前の3日目及び9日目に2回のボーラス供給があった。CP2供給媒体はACO 4.4をベースとし、大豆加水分解物を含有した。CP3産生プロセスは、IMX 7.0培地に基づき、そして培養物が10日目に回収される前の4日目、7日目及び9日目に3回のボーラス供給があった。CP3供給培地はAFM004及びAFM020培地に基づき、酵母エキス(酵母抽出物)を含有した。両方のプロセスからの培地は全て、DMEM/F12培地に基づいており、異なる細胞株のために最適化された。
【0140】
【0141】
実施例2:CP2及びCP3の回収及び精製プロセスの比較
産生期が完了した後、バイオリアクター内容物を冷却し、収穫した。CP2プロセスは18±3℃に冷却し、CP3プロセスは10~15℃に冷却した。回収物の清澄化は、ディスクスタック遠心分離、深層濾過(段階1)及び膜濾過(段階2)を包含した。
【0142】
ディスクスタック遠心分離は、培養培地からの産生細胞及び細胞残屑の一次分離を達成した。遠心分離に続いて、段階1(深層)濾過を行い、段階2(膜)濾過及びその後の精製操作を著しい汚染なしに行うことができるように、回収遠心分離液をさらに清澄化した。段階1の濾過器に続き、段階2の膜濾過器により、清澄度が高く生物汚染度が減少した回収濾液プールが提供された。
【0143】
CP2精製プロセスとCP3精製プロセスとを比較したプロセスフロー図を表4に示す。両方のプロセスが同じ基本的な種類の単位操作を含んだが、各単位操作にための操作パラメーター、及びこれらの単位操作の順序は各プロセスで最適化された。これは、上流性能パラメーターにおける細胞株の相異によるものであった。
【0144】
両方のプロセスにおいて、最初の単位操作は、清澄化された収穫物に対して行われたプロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程であった。プロテインAクロマトグラフィー工程は、固定化プロテインAリガンドとデノスマブのFc領域との間の特異的な高親和性相互作用を用いてデノスマブを捕捉する主要な精製段階であった。両方のプロセスにおいて、第2の単位操作は、エンベロープウイルスを不活化するように設計された低pHウイルス不活化段階であった。
【0145】
次に、CP2プロセスは、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)及びトリス溶液を使用して、産生物プールをpH6.5に中和した後、2段階濾過を行った。CP3プロセスは、クエン酸三ナトリウム溶液を使用して、産生物プールをpH5.2に中和した後、2段階濾過を行った。この段階で、CP2プロセスは、さらなる処理のために必要とされるまで、長期貯蔵のために2~8℃で保持することができた。CP3プロセスは、室温で5日間保持することができた。
【0146】
両方のプロセスにおいて、第2のクロマトグラフィー工程及び第3の単位操作は、陽イオン交換(CEX)であった。各プロセスの操作条件は同様であった。プロセスの次の2つの単位操作は、ウイルス濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)段階であった。両方のプロセスの最終単位操作は、精製デノスマブを製剤緩衝液に交換するための限外濾過及び透析濾過(UF/DF)であった。CP2では、最終原薬濃度は70mg/mLであった。CP3では、最終原薬濃度は120mg/mLである。
【0147】
表4に要約するように、CP3プロセスは、デノスマブ産生の収率を改善した。
【0148】
【0149】
実施例3:CP2プロセスにより産生されるデノスマブのグリカンマッピング
デノスマブのグリコシル化は、重鎖上のアスパラギン298における単一のN結合部位を占めるオリゴ糖構造を含む。
【0150】
3.1 グリカン占有率
Asn-298におけるN-グリコシル化部位の占有率を、PNGアーゼFとのインキュベーション後のデノスマブのLys-Cペプチドマップから決定した。質量分析は、PNGアーゼF処理後のグリコシル化ペプチドに対応するイオンの不在を実証し、N-グリカンの完全な除去を確認した。Asn-298のグリコシル化を欠くペプチドは非グリコシル化ペプチドとして分解され、PNGアーゼFによって除去されたAsn-298にグリカンを有するペプチドは脱グリコシル化ペプチドとして分解された。マップ中の非グリコシル化及び脱グリコシル化ペプチドの同定及び定量を、両方のペプチドについての+2~+5電荷状態の抽出イオンクロマトグラム(EIC)の再構築によって確立した。EICを再構築するために、2つのペプチドの各電荷状態のモノアイソトピックピークのみを使用した。
【0151】
非グリコシル化及び脱グリコシル化ペプチドのEICトレースの絶対ピーク面積から、N-グリコシル化部位の占有率を決定した。占有率は、以下の式を用いて計算した:
【数1】
計算は非グリコシル化種と脱グリコシル化種のイオン化効率が同等であると仮定した。実際には、非グリコシル化ペプチドがAsn残基を含有するのに対して、脱グリコシル化ペプチドが298位に負に荷電したAsp残基を含有するとすれば、非グリコシル化種のイオン化効率は脱グリコシル化種よりもわずかに高いようである。したがって、非グリコシル化ペプチドの割合は、おそらく過大に報告されている。Asn-298におけるグリコシル化の部位占有率は約99.7%であった。Asn-298での非グリコシル化フォームのレベルは、質量分析と組み合わせたLys-Cペプチドマップによって約0.3%であると決定された。
【0152】
全配列にわたるペプチドマッピング研究からの質量データに基づくと、検出可能なレベルのさらなるN-結合グリコシル化、又はO-結合グリコシル化の証拠はない。
【0153】
3.2 N-結合型グリカンとO-結合型グリカンの質量分析
オリゴ糖マッピング、質量分析、及びエキソグリコシダーゼシーケンシングにより、N-結合型グリカンを特徴付けた。オリゴ糖マッピングは、エンドグリコシダーゼPNGアーゼ-Fを用いた加水分解によるタンパク質からのN-グリカンの遊離を含んだ。次いで、遊離したグリカンの還元末端を、蛍光タグ(2-アミノベンズアミド、2-AB)による還元アミノ化によって標識し、この標識グリカンを、蛍光検出を伴う高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAEC)によって分離した。
【0154】
半分取HPAECプロファイル中の各グリカン種を質量分析のために収集した。各ピークを分析カラムに再注入して、画分の純度を確認した(ほとんどの画分で90%を超える)。次いで、精製した画分を、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間質量分析(MALDI-TOF MS)により分析し、観測質量に基づいてグリカン構造を解明した。
【0155】
各画分に割り当てられたグリカン構造(
図1を参照)、及び実験式に基づく理論質量対観測質量を表5に示す。観測質量は全て理論質量の1,000ppm以内であり、これは実験精度の範囲内である。微量種の正確な構造(ピーク1、15、16、17、及び18)は、分析条件下でのそれらの低い存在量及び不十分なイオン化特性のために同定されなかった。
【0156】
【0157】
N-グリカンプロファイルに存在する主要な種は、CHO由来抗体について予想されるように、様々な程度の末端ガラクトシル化を有する二分枝型構造であった(約85%)。次に多い種は高マンノース種(約10%)で、このサブセットの大部分はマンノース5(8.1%)であった。N-グリカンプロファイルにおいて、一分枝型構造も見出された(ピーク2及び4、3.7%)。フコシル化二分枝型形態対非フコシル化二分枝型形態の比は約9:1であった。
【0158】
優勢なN-結合オリゴ糖(表5のピーク2~9)の構造を、エキソグリコシダーゼ;α-(2-3,6,8,9)シアリダーゼ、β-(1-4)ガラクトシダーゼ、β-(1-2,3,4,6)グルコサミニダーゼ、及びα-(1-2,3,4,6)フコシダーゼを用いた酵素遊離によってさらに確認した。
【0159】
対照試料及び試料中のグリカンプロファイルを、シアル酸の切断のためにα-(2-3,6,8,9)シアリダーゼで処理した。8種の優勢種はいずれもシアリダーゼ処理の影響を受けず、これらの優勢種はシアリル化グリカンではないことが示された。
【0160】
β-(1-4)結合末端ガラクトース残基を特異的に切断するα-シアリダーゼ及びβ-(1-4)ガラクトシダーゼの組み合わせによる消化からのプロファイルも分析した。表5に列挙した3つのピーク(A2F-G1、A2F-G2、A2-G1)は、末端ガラクトースを含有する推定構造を有した。β-(1-4)ガラクトシダーゼによる処理後、これらのピークはなくなり、これらの3つのピークにおける末端β-(1-4)結合ガラクトース残基の存在を確認した。
【0161】
先に記載したα-シアリダーゼ及びβ-ガラクトシダーゼの組み合わせに加えて、末端GlcNAc残基の切断に特異的な酵素であるβ-(1-2,3,4,6)グルコサミニダーゼによる消化からのプロファイルも分析した。シアリダーゼ及びガラクトシダーゼによる連続消化の後、末端GlcNAcを含む推定構造を有する表5に列挙した4つの優勢グリカン種のA1F-G0、A2G-G0、A1-G0、及びA2-G0が存在した。β-(1-2,3,4,6)グルコサミニダーゼによる処理後は、これらのピークは存在せず、これらの4つのピークにおける末端GlcNAcの存在を確認した。
【0162】
α-シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ及びβ-グルコサミニダーゼの混合物による消化後は、プロファイルに3つのピークが残っていた。10分で溶出するピークを集め、MALDI-TOF MSにより分析した。観測質量は1,198.7Daであり、2-AB標識フコシル化マンノース3(1,198.1Da)、上記の酵素処理によるフコシル化二分枝型構造からのガラクトース及びN-アセチルガラクトサミンの除去から生じたフコシル化マンノース-3構造の予想質量と一致した。
【0163】
先に記載したα-シアリダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びβ-グルコサミニダーゼの混合物に加えて、トリマンノシルコアに結合したフコース残基の切断に特異的な酵素であるα-(1-2,3,4,6)フコシダーゼによる消化からのプロファイルも分析した。α-(1-2,3,4,6)フコシダーゼによる消化後、10分で溶出するピークはもはやプロファイル中に存在せず、16分で溶出するピークの強度が有意な増加があった。この結果により、10分で溶出するピークがフコシル化マンノース3であり、16分で溶出するピークが非フコシル化マンノース3であることが確認された。
【0164】
上記のエキソグリコシダーゼ処理に加えて、グリカンプールをα-(1-3,4,6)ガラクトシダーゼで消化して、デノスマブグリカン部分中の任意の潜在的に免疫原性の末端α-(1-3)ガラクトース残基を同定した。α-ガラクトシダーゼによる消化後、デノスマブのHPAECグリカンプロファイルを対照試料と比較した。プロファイルにおける微妙な変動を説明するために、対照及び消化試料の注入を3回行った。3回の注入からのクロマトグラムのオーバーレイは、グリカンプロファイルの変化を示さず、検出可能な量の末端α-(1~3)ガラクトース残基がないことを示した。
【0165】
上記のエキソグリコシダーゼによる処理の研究に基づいて、HPAEC/MALDI-TOF MS(表5)による8つの優勢なN結合オリゴ糖(表5)の同定が確認された。
【0166】
デノスマブの一次構造を特徴付けるために、包括的な質量分析に基づき配列を調べた。その結果、デノスマブにO-結合型グリコシル化のエビデンスがないことが確認された。
【0167】
3.3 糖化
可変領域に隣接する重鎖のLys-98に、非酵素的糖化が観察された。修飾は重鎖に特異的であった。糖化は正電荷(Lys)の損失を引き起こすので、電荷不均一性に寄与し、酸性変異体及び162Daの質量増加をもたらす。
【0168】
デノスマブの電荷不均一性をCE-HPLCによって評価した。デノスマブのCE-HPLCプロファイルは、4つの明確なピーク:プレピーク1(PP-1)、主ピーク(MP)、塩基性ピーク1(B-1)及び塩基性ピーク2(B-2)を含んだ(
図2A)。精製されたピークは、電荷修飾の性質及び位置を解明するために、直交電荷に基づく技術及び一次構造技術を含む種々の分析技術によって特徴付けられた。PP-1はLys-98に糖化重鎖を含んだ。精製したPP-1をLys-Cペプチドマッピングで分析した。Lys-98での糖化修飾と一致するペプチド質量は、87分の保持時間で溶出するピークで観察された。
【0169】
糖化修飾としてのピーク同一性をさらに確認するために、強制糖化試料を調製し、Lys-Cペプチドマッピングにより実行した。強制糖化はデノスマブを緩衝グルコース溶液と混合し、37℃で一晩インキュベートすることによって達成した。グルコースは調製物から省いた対照試料も並行して調製した。87分で溶出するペプチドのレベルの上昇が、精製PP-1試料及び強制糖化試料で見出された。これは精製PP-1試料における糖化変異体の存在をさらに確認するものである。
【0170】
推定糖化ペプチドピーク及び天然ペプチドピークを、ペプチドマップの溶出の間のインサイチューでのエレクトロスプレーMS分析によって特徴付けた。88分で溶出するペプチドの測定されたモノアイソトピック質量は、3+イオンのズームスキャンから5,572.48Daであった。87.02分で溶出する糖化ペプチドの3+イオンから測定されたモノアイソトピック質量は5,734.54Da(5,572.48+162.06Da)であり、糖化のための+162質量の予想される増加と一致した。PP-1のサイズプロファイルを、SE-HPLC及びrCE-SDSによって調べた。PP-1は、SE-HPLCによって天然モノマーを含むと決定された。CE-SDSの減少により、ポスト-重鎖領域における重鎖よりわずかに大きい分子量種の存在が明らかになった。
【0171】
CP2プロセスによって産生されるデノスマブは、おそらく産生細胞培養液中に存在するグルコースによる修飾で、約10%の糖化(脱グリコシル化された無傷の集団による分析)を有する。
【0172】
PP-1における電荷変異体の生物学的影響を調べるために、この画分を、HTRF受容体-リガンド結合、レポーター遺伝子、及びTRAP活性アッセイを用いて、効力について分析した(表6)。分析に強制糖化試料を含めた。PP-1及び強制糖化原薬はともに十分な効力を示した。
【0173】
【0174】
実施例3:CP2及びCP3プロセスにより産生されるデノスマブのN-グリカンプロファイルの比較
グリカンをN-グリカナーゼで処理して除去し、続いて蛍光化合物の2-アミノベンズアミドで標識した。高pH陰イオン交換クロマトグラフィーを用いてグリカン種を分離し、蛍光検出(励起λ=330nm及び発光λ=420nm)を用いて定量した。次いで、グリカンピークを定量した。全ての試験試料及び参照標準のN-グリカンプロファイルのオーバーレイを
図3Aに示す。CP3ロット及びCP2ロットからのデノスマブ中のN-グリカンの相対分布を
図3Bに示す。
【0175】
図3Aのグリカンマッププロファイルに示すように、CP3ロット及びCP2ロットはいずれも8つの名前が付されたグリカン種及び2つの名前が付されたグループを含有した。したがって、全てのグリカンマッププロファイルは、CP3ロット及びCP2ロットの両方が同様のグリカンパターンを含むことを示している。CP3ロットのプロファイルに、新たなグリコフォームは観察されなかった。しかし、CP3ロットとCP2ロットの間でグリカンの分布に違いがあった。具体的には、CP3ロットはよりガラクトシル化され、それに対応してシアリル化の程度が増加した。さらに、CP3ロットは、Man-5及び一分枝型構造の含量が少なかった(
図3B)。表7にグリカンマップ履歴データを要約する。
【0176】
CP2及びCP3について表7(最後の列)に示す「好ましい」範囲は、臨床範囲(一般的には、臨床試験中の患者曝露に基づく)と考えられることに留意されたい。臨床的範囲は、一般に、商業的範囲(商業的ロットから得られる)よりも広く、且つ厳しくない。また、これらの好ましい範囲は生物学的類似性評価の決定基準であると単に解釈されるべきではない。生物学的類似性の目的のために、異なる又はより狭い範囲の様々なグリカン含量が必要とされ得る。
【0177】
【0178】
CP3プロセスを用いて製造されたデノスマブには、CP2プロセスと比較して新しい炭水化物種は存在しなかったが、種の分布はわずかに異なっていた。デノスマブを用いて実施された研究により、グリコシル化の差がRANKリガンドへのデノスマブの結合に影響しないことが示された。脱グリコシル化デノスマブはまた、3つのバイオアッセイの全てで十分な効力を有している。
【0179】
実施例4:CP3工程で製造されたデノスマブのPK/PD試験
4.1 試験計画
健常志願者を対象とした非盲検、無作為化、単回投与、並行群間比較試験を実施した。対象者を、CP3プロセスを利用して製造されたデノスマブ60mgを単回SC投与(治療A)又はCP2プロセスを利用して製造されたデノスマブ60mgを単回SC投与(治療B)のいずれかに無作為に割り付けた(割付け比1:1)。デノスマブ投与前から試験終了までの特定の時点で、PK及びPD分析のために血液試料を採取した。全ての試験手順を実施した後、113日目に、対象者は試験を完了した
【0180】
合計115人の対象者が本試験に登録された。合計112人の対象者(97%)が本試験を完了した。3人の対象者(3%)が本試験を完了しなかった。57人の対象者にCP3-デノスマブが投与され(55人が試験を完了)、58人の対象者にCP2-デノスマブが投与された(57人が試験を完了)。
【0181】
デノスマブの血清中濃度を、検証済みの酵素結合免疫吸着法(ELISA)を用いて測定した。アッセイの定量下限(LLOQ)は20ng/mLであった。簡潔に記載すると、NF-κBリガンドの組換えヒト受容体活性化因子(RANKL)をポリスチレン96ウェルプレート上にコーティングし、キャプチャー試薬として使用した。デノスマブを100%ヒト血清にスパイクすることによって、標準(STD)及び品質管理(QC)を調製した。アッセイ希釈剤(1%BSA、1M NaCl、0.5%Tween 20を含む1×PBS)で1:10前処理した後、標準、品質管理、試験試料、及びブランクをウェルにロードした。STD、QC、及び試験試料中のデノスマブを、固定化組換えヒトRANKLによって捕捉した。洗浄工程の後、ビオチン化ウサギ抗デノスマブ検出抗体を添加した。新たな洗浄工程の後、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンを加えて複合体に結合させた。最終洗浄工程の後、テトラメチルベンジジン(TMB)-ペルオキシダーゼ基質をプレートに添加した。発色を停止し、650nmを基準として450nmで色の強度(光学濃度、OD)を測定した。品質管理及び試験試料のOD単位の濃度への変換は、同じランにおける標準曲線とのコンピューターソフトウェア媒介比較によって達成され、これをWatson LIMS バージョン7.0.0.01データ削減パッケージを使用して、1/Yの重み係数を有するロジスティック自己推定回帰モデルに従って回帰した。
【0182】
血清C-テロペプチド(CTX1)の濃度を、検証済みSerum CrossLaps(登録商標)ELISAにより測定した。LLOQは0.049ng/mLであった。簡潔に記載すると、Serum CrossLap(登録商標)ELISAは、アスパラギン酸残基(D)がβ-異性化されているEKAHD-β-GGRのアミノ酸配列に対する2つの高度に特異的なモノクローナル抗体に基づいている。Serum CrossLaps(登録商標)ELISAで特異的なシグナルを得るために、EKAHD-β-GGRの2本の鎖は架橋されていなければならない。標準(STD)、品質管理(QC)、試料対照(SC)、ブランク、及び試験試料を、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレートに加え、続いて、ビオチン化抗体とホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合抗体の混合物を添加した。STD、QC、SC、又は試料中に存在するCTX1は、ビオチン化抗体及びHRP結合抗体と複合体を形成する。この複合体は、ビオチン化抗体を介してストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートに結合した。周囲室温でインキュベートした後、プレートを洗浄した。テトラメチルベンジジン(TMB)溶液をプレートに添加した。発色を停止し、650nmを基準として450nmで色の強度(光学濃度、OD)を測定した。OD単位の濃度への変換は、同じプレート上でアッセイした標準曲線とのコンピューターソフトウェア媒介比較によって達成され、Watson バージョン7.0.0.01データ削減パッケージを使用して、1/Y2の重み係数を有する4-パラメーターロジスティック(自己推定)回帰モデルに従って回帰した
【0183】
4.2 薬物動態分析
血清デノスマブ濃度-時間データを、WinNonlin Enterprise v 5.1.1(PKS v3.1a,build200610240912)(Pharsight Corporation、Mountain View、CA)を用いて、ノンコンパートメント法により分析した。図は、SigmaPlot v 10 build10.0.1.2(SPSS Science、Chicago、IL)を用いて作成した。実際の時間のずれが10%以上でない限り、公称サンプリング時間を分析に使用し、この場合、実際の時間を使用した。定量下限(LLOQ)20ng/mL未満のデノスマブ血清中濃度を、ノンコンパートメント解析及び要約統計量の算出のためにゼロに設定した。要約統計量は、四捨五入をしていない値を用いて計算した。
【0184】
投与後の観測最高血清中デノスマブ濃度(Cmax)を、データを調べて確認した。対応するCmaxの時間(tmax)も記録した。時間0~16週の濃度-時間曲線下面積(AUC0-16週)を、Cmaxまでの線形台形則を適用し、次いで曲線の残りについて対数台形則を適用する線形対数台形法によって計算した。
【0185】
デノスマブCP3及びCP2の平均血清中デノスマブ濃度-時間プロファイルを、線形スケール及び片対数スケールで、それぞれ
図4A~4Bに示す。線形スケールでのプロファイルの評価(
図4A)は、16週(112日)までのサンプリングが両方の処置で曝露の大部分を捕捉したことを示している。CP3プロセスにより産生されたデノスマブは示した。CP2プロセスで産生されたデノスマブと比較して、CP3-デノスマブは、gal種をより多く有し、高マンノース種はより少なかった。
【0186】
図4A及び4Bに示すように、CP3プロセスにより産生されたデノスマブは患者でより高い血清半減期(平均で10%長い半減期)を示し、クリアランス速度がより遅いことを示唆した。CP2産生デノスマブの平均半減期は、約25.8(6.5)日(中央値=25.0)、CP2産生デノスマブの平均半減期は約28.3(6.5)日(中央値=27.4)である。CP3のAUC
0~16週及びC
maxの幾何平均値は、CP2の値よりもそれぞれ約16%及び14%大きかった(表8.1及び8.2)。
【0187】
図4D及び4Eに示すように、CP3-デノスマブの半減期の増加は、Man-5種のクリアランスが速いためであった。Man-5を含むデノスマブ分子は、優先的に除去され、経時的にMan-5レベル全般が減少した。対照的に、gal種のレベルは、同じ期間中、ほぼ一定であった。これは、Man-5を有するデノスマブ分子が、Man-5を有さないデノスマブと比較して、血清中で優先的に除去され、その結果、Man-5レベルが全体的に減少したことを示している。試験の開始時には、デノスマブ分子の約8%がMan-5を含み、約60日目には、Man-5を含んだデノスマブ分子は4%未満となった。
【0188】
【0189】
【0190】
4.3 薬力学分析
ベースライン血清CTX1濃度を、デノスマブの投与前に得られた3試料において決定された濃度の中央値として計算した。ベースラインからの変化率は、投与後の測定値からベースラインの測定値を差し引いた値をベースラインの測定値で除し、その値に100%を乗じて算出した。分析方法のLLOQ未満のベースライン後のCTX1濃度に、ベースラインからの変化率の計算のために、LLOQの値(0.049ng/mL)を割り当てた。全ての計算は、四捨五入をしていない値を用いて行った。実際の時間のずれが10%以上でない限り、公称サンプリング時間を分析に使用し、この場合、実際の時間を使用した。図は、SigmaPlot v 10 build 10.0.1.2(SPSS Science、Chicago、IL)を用いて作成した。
【0191】
投与後のCTX1の阻害%は、ベースラインからの変化%に-1を乗じて算出した。CTX1の個々の阻害%対時間データを、WinNonlin Enterprise v 5.1.1(Pharsight Corporation、Mountain View、CA)を用いて、ノンコンパートメント法により分析した。CTX1の最大観測阻害%(Imax)とそれが起こった時間(tmax、CTX1)を記録した。時間ゼロ~16週の効果(CTX1の阻害%対時間)曲線下面積(AUEC0-16週)を、Imaxまで線形台形則を適用し、次いで曲線の残りについて対数台形則を適用する線形対数台形法によって計算した。
【0192】
ベースラインでは、CTX1の平均(±SD)血清中濃度は、CP3群で0.555(±0.288)ng/mL、CP2群で0.488(±0.251)ng/mLであった。2つの処置についてのCTX1のベースラインからの平均(±SD)変化%対時間プロファイルを
図4Cに示す。2つの処置についてのCTX1のベースラインからの平均変化率のプロファイルは、実質的に重ね合わせ可能であった。AUEC
0-16週及びI
maxの幾何平均値は、処置間で≦3%異なった(表8.1及び8.3)。AUEC
0-16週の幾何平均値とImaxの比の90%CIは、0.80~1.25の範囲内であった。t
max、CTX1平均値はCP3とCP2の間で異なっていたが(25日対12日)、ベースラインプロファイルからの平均CTX1変化率プロファイル(
図10-3)から、阻害の全体的な程度は両処置とも7日目から112日目まで比較的一定であったことは明らかである。
【0193】
【0194】
実施例5:CP2及びCP4培養プロセスの比較
CP2プロセス対CP4プロセスの細胞培養及び回収操作を比較するプロセスフロー図を表9に示す。CP4細胞培養増殖及び産生プロセスは、CS-9 CHO(25B12)親細胞株に基づいた。CP4プロセスは、灌流モードで操作される、より小型の産生バイオリアクターを利用し、シングルユース(使い捨て)細胞培養増殖及び産生容器のみを利用する。CP2及びCP4産生培養プロセスを、各細胞株について最適化されたプロセス特異的設定値で制御した。栄養供給のための培地処方及び時機選択は、最適な細胞の健康及び産生のために設計された。CP4産生バイオリアクターは合成培地処方を使用し、メトトレキサート(MTX)で増幅した。両方のプロセスで、細胞集団の解凍及び最初の増殖は、振盪フラスコで行った。いずれのプロセスもダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12ベースの培地を使用したが、処方は異なり、異なる細胞株用に最適化された。
【0195】
【0196】
両方のプロセスで、増殖バイオリアクター段階は、流加モードで操作したCP4 N-1を除いて、バッチモードで操作した。増殖バイオリアクター期の間、CP2プロセスは4つのステンレス鋼バイオリアクターを使用し、CP4プロセスは2つの段階でそれぞれ2つのシングルユースバッグ(SUB)システムを使用した。CP4増殖プロセスにおける第1のシングルユースシステムは、プロセス固有の設定値に制御された温度、pCO2、及びオーバーレイガス流量を有する2段階50L培養バッグであった。CP4増殖プロセスにおける第2のシングルユースシステムは、第2段階(N-1)の2日目に栄養供給物を有する2段階500LのSUBであった。全ての増殖バイオリアクターの操作の間(CP2及びCP4 SUB段階)、pH、温度、圧力、撹拌及び溶存酸素をプロセスに特異的な設定値に制御した。
【0197】
産生バイオリアクターは、異なるモードで操作した。CP2プロセスは、16kLステンレス鋼の流加バイオリアクターを使用し、3日目及び9日目に供給を行い、培養物を14日目に回収した。CP4プロセスは2kLのSUBを使用し、3日目及び6日目に2回のボーラス供給を行い、灌流を7日目に開始し、11日目に培地を交換し、培養物を18日目に回収した。11日目の培地交換は、グルコース濃度を低下させ、代替炭水化物源としてガラクトースを添加した。モノクローナル抗体の高マンノースグリカンプロファイルはインビボでのクリアランスに影響を及ぼす可能性があるので、この変更は、CP4プロセスからの高マンノースグリカンプロファイルがCP2プロセスのものに匹敵するように行われた。灌流分離技術は30kDaの公称細孔サイズを有する膜を使用し、そのサイズよりもほぼ大きい、細胞及び産物を含む全ての成分が、バイオリアクター中に保持された。全ての設定値を細胞株及び産生モードごとに最適化した。
【0198】
CP2産生及び供給培地は改変DMEM/F12培地に基づいており、大豆加水分解物を含有した。CP4産生、供給、及び灌流培地は合成処方であり、加水分解物を含有しなかった。
【0199】
実施例6:CP2及びCP4の回収及び精製プロセスの比較
両方のプロセスで、産生期の完了後、バイオリアクター内容物を、CP2は10±3℃の目標温度に、CP4は≦12℃の目標温度に冷却した。CP2プロセスでは、ディスクスタック遠心分離により、産生細胞及び細胞破片の培養培地からの一次分離を達成した。CP4プロセスでは、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDADMAC)及びポリエチレングリコール(PEG)でのフロキュレーション、続く沈降により、一次分離を達成した。両プロセスは、深層濾過及び膜濾過による一次分離後に、深層濾過及び膜濾過を続けた。さらに、CP4プロセスは、回収処理中に空気又は酸素スパージを利用した。
【0200】
CP2プロセス及びCP4プロセスの精製操作を比較したプロセスフロー図を表10に示す。
【0201】
【0202】
両精製プロセスは、次の同じ基本単位操作を使用した:2回の専用ウイルス除去/不活化操作(低pHウイルス不活化及び200nmウイルス濾過)、3回のクロマトグラフィー操作(プロテインAアフィニティー、陽イオン交換、及び疎水性相互作用)、及び限外濾過(UF)/透析濾過(DF)操作により、デノスマブを濃縮し、緩衝液交換して最終DS製剤にする。各単位操作のための操作パラメーター及びこれらの単位操作の順序は、各プロセスで最適化した。さらなる違いには、クロマトグラフィー樹脂、緩衝液、フィルターの種類、並びに操作の面積及び順序の変化が含まれた。これらの差異は、細胞株の変化、及びCP4プロセス産生バイオリアクターにおいて灌流モードを使用することから生じるより高い細胞濃度によるものであった。
【0203】
最初の単位操作はカラム1のプロテインAアフィニティークロマトグラフィー工程であり、回収濾液に対して行われた。カラム1はデノスマブを捕捉するために、固定化プロテインAとIgG型抗体のFc領域との間の特異的な高親和性相互作用を利用する、一次精製段階であった。CP4プロセスはMabSelectSuRe樹脂を利用し、CP2プロセスはMabSelect樹脂を利用した。両プロセスにおける第2の単位操作は、低pHウイルス不活化工程であり、この工程は、ウイルスを不活化及び除去するための2つの専用操作のうちの最初のものであった。ウイルス不活化は、CP4プロセスでは、60~90分間、pH3.5±0.1で達成され、CP2プロセスでは、60~120分間、pH3.31~3.60で達成され、宿主細胞株及びプロセスの変化による差異があった。
【0204】
CP4プロセスにおける低pHインキュベーション期間の終わりに、ウイルス不活化プールのpHを、トリス塩基で5.0に調整し、次いで、プールを、0.2μmポリエーテルスルホン(PES)膜フィルターにより濾過した。CP2プロセスでは、プールのpHを、1-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸ナトリウム(MES)及びトリス塩基で3.31~3.60に調整し、次いで、プールを2段階濾過トレインによって清澄化した。pHの差異は、カラム2の操作の差異によるものであった。
【0205】
両方のプロセスにおいて、第3の単位操作は、カラム2、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)工程であった。この工程は、CEX樹脂を用いて、生成物流から、濾過したウイルス不活化プール中に存在する不純物を除去した。CP4プロセスはFractogel COO-(M)樹脂を使用し、CP2プロセスはFractogel SO3
-(M)樹脂を使用した。
【0206】
両方のプロセスで、次の2単位操作は、ウイルス濾過及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)段階であったが、この順序は逆であった。
【0207】
両方のプロセスの次の単位操作は、精製デノスマブを製剤緩衝液に交換するためのUF/DFであった。CP4及びCP2生成物流の両方を、10mM酢酸ナトリウム、5%ソルビトール(pH 4.80)で透析濾過し、70mg/mLの最終デノスマブ濃度とした。DSの貯蔵容器も貯蔵条件も変わらなかった。
【0208】
実施例7:CP4プロセスによって産生されたデノスマブのグリカンマッピング
7.1 CP4プロセスによって産生されたデノスマブのN-グリカンマッピング
グリコシル化を、N結合オリゴ糖構造のマッピングによって評価した。この手順には、PNGアーゼF処理によりデノスマブからN-結合型グリカンを遊離させることが含まれた。遊離したグリカンを2-アミノ安息香酸(2-AA)で標識し、続いて、蛍光検出を伴う親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を行った。溶出したピークを蛍光検出器でモニターした。デノスマブNグリカンマップピークの特徴付けは、質量分析によるオリゴ糖マッピングによって行った。各グリカンに割り当てられたグリカン構造、及び実験式に基づく理論質量対観測質量を表2及び5に示す。観測質量は全て予想された実験精度の範囲内であった。
【0209】
【0210】
大部分の種は、0又は1個の末端ガラクトースを有するコアフコシル化複合二分枝型構造であり、非フコシル化二分枝型構造は比較的低いレベルであった。グリカン集団は、非常に低レベルのシアル化種及びハイブリッド型グリカン、並びに約8%の高マンノースグリカン(主に、マンノース5構造として)を含有した。デノスマブN-結合型グリカンの割合は、全てのグリカンピークの積分によって決定した。
このようなピークの例を
図5に示す。
【0211】
コンセンサス部位モチーフ(Asn-Xxx-Ser/Thr)内に存在しないAsn上のN-グリコシル化は、ヒト抗体上で低レベルで生じることが知られている。この種は、一般的にはrCE SDSによってポスト重鎖ピークとして分離される。総重鎖ピーク面積に対するこのポスト重鎖ピーク面積の相対比率の決定により、約1.5%のデノスマブにおける非コンセンサスグリコシル化のレベルを得た。
【0212】
デノスマブの一次構造を特徴付けるために、質量分析に基づき配列を調べた。その結果、デノスマブにO-結合型グリコシル化のエビデンスがないことが確認された。
【0213】
7.2 非酵素的糖化特性
7.2.1 糖化特性
非酵素的糖化は、還元糖(グルコース又はガラクトース)が糖のアルデヒド基とタンパク質の第一級アミンとの間でシッフ塩基を形成することによってタンパク質と反応するプロセスである。CP2産生デノスマブでは、CE-HPLCプレピークに富む種である非酵素的糖化がデノスマブの1つのリジン残基(Lys-98)上に位置する。
【0214】
特性化技術及び高分解能質量分析器の進歩により、デノスマブの非酵素的糖化のさらなる特性化が可能になった。デノスマブを水素化ホウ素ナトリウムで処理し、続いて還元し、アルキル化し、トリプシンで消化して、質量分析検出によるペプチドマップ分析を行った。水素化ホウ素ナトリウムによる処理は、Brady et al. (Anal. Chem.,2007,79(24),pp9403-9413)に記載されているように、糖とタンパク質との間の結合を安定化し、MS/MSによる部位の特定を可能にする。この技術を用いて、CP4産生デノスマブにおける複数の糖化部位を特定した。2つのプロセスからのデノスマブの非酵素的糖化が確認された部位を表12に示すが、糖化の同じ部位が存在することを示している。この予想された結果は、糖化がランダムな事象ではなく、溶媒露出度及びタンパク質の局在化した化学的環境に大きく依存するという事実による(Gadgil et al. J Pharm Sci. 2007 Oct;96(10):2607-21.)。
【0215】
【0216】
CP4プロセスは、細胞培養中にグルコース及びガラクトースの両方を利用し、グルコース及びガラクトースの両糖で糖化された抗体を生じる。CP4に存在する糖化は約24%であり、ガラクトース糖化により12%が推定された。
【0217】
グルコースはヒト血清中に約70~100mg/dL(Pesce and Bodourian 1982)存在し、血中蛋白質の非酵素的糖化をもたらす。ガラクトースは、天然には、ヒト血清中に約0.3mg/dL存在する。このような低い血清ガラクトースレベルでは、ガラクトース血症患者を除いて、健常な人が測定可能なレベルのガラクトース糖化を含む血中蛋白質を有する可能性は低い。ガラクトース糖化の臨床的安全性は不明であったため、新しい分子種と考えられ、安全性の懸念の可能性がある。この潜在的な安全性の懸念に対処するため、この翻訳後修飾の糖化レベル、臨床的安全性及び有効性への影響を評価する試験を実施した。
【0218】
CP4-デノスマブは約24%の糖化を有するが、CP2は約10%の糖化を有する。12の糖化部位をCP2上に確認した。同じ12の部位がCP4上に検出され、新たな糖化部位は確認されなかった。CP4、CP2及び糖化に富むCP4試料(70%)は、2つの機能的バイオアッセイにおいて同等の効力を有し、糖化レベル及びガラクトース糖化が産生機能に影響を与えないことを示した。さらに、トリプシン分解ペプチドマッピング実験は、糖化の原薬部位がCP2プロセスとCP4プロセスとの間で同一であり、合計12個の糖化部位が特定され、そのいずれもがデノスマブのCDR領域には存在しないことを確認した。
【0219】
CP4プロセスは、細胞培養の1~10日目の間、グルコース含有培地を利用し、続く11~18日目に低グルコース及び高ガラクトース含有灌流培地を利用した。培地の単糖分析は、細胞培養の12日目のグルコースレベルが検出可能なレベル未満であることを決定した。したがって、培地交換後の糖化の大部分がガラクトースによるようであった。このデータに基づいて、理論的計算を行って、CP4-デノスマブ上に存在するグルコース対ガラクトース糖化のレベルを推定した。この計算により、CP4糖化(24%)の約50%がガラクトースによるものであることがわかった。これは、8抗体中の1つがガラクトースで糖化され、8抗体中の1つがグルコースで糖化されていることに相当する。
【0220】
7.2.2 糖化の生物学的特性
治療用抗体の修飾は、臨床効力の減少をもたらす、又は患者の安全性に影響する可能性がある。したがって、糖化に特に重点を置いたCP4-デノスマブの徹底的な特徴付けを行った。HTRFによる効力分析及びレポーター遺伝子結合アッセイを用いて、CP4-デノスマブの生物学的機能をCP-デノスマブと比較して評価した。
【0221】
CP2-デノスマブの開発中、強制糖化試験を実施し、糖化及び効力への影響を評価した。デノスマブCP2は、出発物質の約68倍のレベルまで強制的に糖化された。この試料をHTRF及びレポーター遺伝子アッセイによって分析したところ、全ての効力を保持していた。
【0222】
1つのアッセイにおいて、精製されたCP4 CEXプレピーク種は、主ピーク及び塩基性画分における24%と比較して、約70%の糖化を有した。3つの精製画分の全てがHTRF及びレポーター遺伝子アッセイによってそれらの効力を保持しており、糖化のレベルの上昇が産物の機能に影響を与えないことを示した。さらに、CP2とCP4の相対的な効力は、HTRF及びレポーター遺伝子アッセイで同等であり、CP4の糖化が産物の効力に影響しないことをさらに実証した。
【0223】
7.2.3 糖化及びFc機能への潜在的影響
IgG抗体のクリアランス又は血清中半減期は、新生児Fc受容体(FcRn)によって調節される。IgG1及びIgG2抗体について行われた以前の強制糖化研究(Goetzeら、2012)は、FcRn結合に対する影響がないことを決定し、糖化修飾がタンパク質機能にほとんど影響を及ぼさないことを示唆した。しかし、FcRnをCP2及びCP4試料で実施し、これらのデータは同様のFcRnを示す。強制糖化研究結果に基づき、CP2とCP4が同じ糖化部位を有することを考慮すると、CP4糖化のレベルの上昇はFcRn結合に影響しなかった。
【0224】
7.2.4 ガラクトース糖化の免疫原性評価
ガラクトース糖化を有するデノスマブは、これまでの製剤提示では存在しなかった新しい種であり、したがって、免疫原性のリスク評価を実施した。成熟体液性免疫応答には、B細胞エピトープとT細胞エピトープの両方が必要である。B細胞エピトープは抗体結合部位であり、通常、タンパク質の構造に依存する。T細胞エピトープは抗原提示細胞表面の主要組織適合クラスII蛋白質に結合し、抗体成熟を誘発するT細胞からのサイトカイン分泌を誘発する直鎖アミノ酸配列である。免疫原性リスク評価では、以下の事項を考慮した:
【0225】
B細胞エピトープのリスク。CP4は、グルコース糖化のみを有するCP2と比較して、ガラクトースで糖化された新しい種を含む。これらの新しい種に曝露された患者はおらず、免疫応答に関しては若干の不確実性があった。糖化は最大11個の異なるリジンにわたって分布し、デノスマブ分子の約12%は1個のガラクトースを有した。したがって、ガラクトースで修飾された特定のアミノ酸を有する任意の1つの分子の濃度は低かった。
【0226】
完全ヒト型モノクローナルに対する抗体は、通常、非寛容配列のためにCDR領域に結合する。デノスマブ中のCDRは、ガラクトースで糖化される可能性を有する1つのリジンを含み、6個を隣接フレームワーク中に含有する。しかしながら、CDRにおける糖化は検出されなかった。
【0227】
T細胞エピトープのリスク。イン・シリコ解析では、わずか1個のマイナーT細胞「アグレトープ」のみが予測された。糖化はT細胞の助けを誘発するような配列変異を引き起こさない。ガラクトースは抗原プロセシングを増強し得るが、ガラクトース濃縮分子による増加した取り込みはより高次のオリゴ糖によるものであり得る。
【0228】
全体として、デノスマブの免疫原性を変化させるガラクトースによる糖化のリスクは最小限である。
【0229】
7.3 非コンセンサスN-グリカン(NCG)
非コンセンサスN-グリカン(NCG)は、Valliere-Douglas et al(J Biol Chem. 2009 Nov 20;284(47):32493-32506)に記載されているように、一般的には抗体CH2ドメインにおける、コンセンサスモチーフの一部ではないAsn残基へのオリゴ糖の結合を表す。この種は、一般的にはCE-HPLCプレピークに富み、rCE-SDSによってポスト重鎖ピークとして分離される。
【0230】
rCE-SDSによるCE-HPLC画分の分析は、CE-HPLCプレピークが非グリコシル化重鎖(NGHC)ピークでわずかに富んでいることを示した。さらに、rCE-SDSデータにより、CE-HPLCプレピーク画分がポスト重鎖ピークでわずかに富んでいることが示され(表13)、Valliere-Douglasら(2009)の所見と一致する結果が得られた。
【0231】
【0232】
実施例8:CP2及びCP4プロセスにより産生されたデノスマブのグリカンプロファイルの比較
CP2ロットとCP4ロットからの高pH陰イオン交換クロマトグラフィー(HP-AEX)によって作成されたオリゴ糖マップを比較した。CP4ロット及びCP2ロットの全てが、4%~11%のマンノース-5の同等性/同質性判定基準を満たした(表14)。CP4原薬ロットはマンノース-5~CP2歴史的データに匹敵するレベルを有し、歴史的な最小値及び最大値(5%~9%のマンノース-5)の範囲内であった。グリカンマップ(HP-AEX)オーバーレイを
図5に示す。オーバーレイは、予想されたCP2ロットと比較して、CP4原薬中のA2F-G1のレベルが低いことを示している。
【0233】
【0234】
Man-5レベルを制御するためにCP4細胞培養プロセスを改変した結果、CP4-デノスマブはCP2-デノスマブよりオリゴ糖種A2F-G1%が少なく、オリゴ糖種A2F-G0%が多いと予想された。これらの種はヒト血清中に天然に存在するグリコフォームであり、したがって、安全性又は有効性の懸念はないと考えられる。
【0235】
グリカンプロファイルの潜在的変化を評価するために、グリカンマップ分析を用いて、デノスマブのN-結合型グリカンを評価した。
図5は、2つのプロセスによって産生されたデノスマブ間の一貫したN-グリカンプロファイルを示す。CP4ロットのプロファイルに、新たなグリコフォームは観察されなかった。オリゴ糖種のA2F-G0%、A2F-G1%、及びMan5%の要約を表14に示す。CP4データは算出許容差(TI)範囲内であり、A2F-G1%結果は、算出CP2 TI範囲の下限であった。CP2ロット対CP4ロットの末端ガラクトシル化のわずかなシフトは、製品の安全性又は有効性に影響を及ぼさないと予想される。
【0236】
これらのデータが示すように、CP2プロセスと比較して、CP4プロセスを用いて製造されたデノスマブ中には、新たな炭水化物種は存在しなかった。CP4及びCP2ロットは、HP-AEXの同等性/同質性基準を満たしている。HP-AEX分析中に記録された全てのN-グリカン種の要約を表15.1及び15.2に要約する。この要約表に示すように、CP4ロットで得られた値は、CP2プロセスから得られた値と類似している。シアル化種のレベルは、CP4ロットとCP2ロットとの間で類似している。CP4ロットとCP2ロットの間でA1F-G0%レベルにわずかな差が認められるが、これらの差は本製品の有効性に影響を及ぼすことはないと予想される。
【0237】
【0238】
【0239】
CP2原薬と比較してデノスマブCP4原薬で観察された糖化レベルの増加は、CP4プロセスでなされた変化、すなわち、細胞培養プロセス期間の増加と、細胞培養培地におけるグルコース及びガラクトースの両方の使用の組み合わせと一致した。ガラクトースはCP2産生供給物には使用されず、培養培地中のガラクトースはグルコースよりも非酵素的糖化レベルを高めることが示されている(Quan et al.,Anal Biochem2008;373(2):179-91)。CP4原薬の総糖化率は約24%であり、これに対し、CP2原薬の総糖化率は約10%である。CP4原薬に存在する糖化レベルの上昇は、グルコースとガラクトースの両方の組み合わせであると予想される。
【0240】
以前の研究では、糖化が約68倍(強制糖化により)増加した場合でも、CP2原薬はHTRF及びレポーター遺伝子アッセイにより十分な効力を保持した。CP4原薬とCP2原薬の効力は、HTRF及びレポーター遺伝子アッセイにより同等であり、デノスマブCP4原薬の約2倍の高レベルの糖化は効力に影響を及ぼさないことがさらに示された(表16.1及び表16.2)。さらに、IgG1及びIgG2抗体の強制糖化は、FcRn結合に測定可能な影響を及ぼさず、糖化がデノスマブの生物学的機能にほとんど影響しないことをさらに示唆した。総合すると、これらのデータは、CP4で観察された糖化の増加が製品の安全性や有効性に影響を及ぼさないであろうことを示唆している。
【0241】
【0242】
【0243】
実施例9:高マンノース含量に及ぼすグルコース、スクロース、及びガラクトース濃度の効果
この実施例では、種々の濃度のグルコース、スクロース、及びガラクトースを用いて、デノスマブの高マンノース含量に及ぼすそれらの効果を評価した。
【0244】
グルコースに代わる2つの炭素源、二糖スクロース及び単糖ガラクトースを選択して、高マンノースを含むデノスマブ分子の割合に対するそれらの効果を評価した。上で詳細に記載したように、培養培地の交換を灌流によって11~17日目に行った。
【0245】
1つの試験では、Man-5含量に対するグルコース及びガラクトース濃度の効果を評価した。実験計画を表17に示す。
【0246】
【0247】
図7Aは、17日目のMan-5のフルモデル解析を示し、実験中心点での予測プロファイルを含む。データは、グルコースとガラクトースとの間の相互作用がMan-5レベルにとって重要である可能性が高いことを示唆している。
図7Bは、グルコースレベルを2.5g/Lに設定したMan-5の17日目の予測を示す。Man-5の結果は、HELIC分析法によって得た。
図7Cは、11日目から17日目までのMan-5の経時変化を示す。グラフは、経時的なMan-5の増加を示す。
【0248】
表18は、この試験のグリカンプロファイルを示す。これらのグリカン種のバリエーションはいずれも統計的に有意ではなかった。
【0249】
【0250】
この試験に基き、約10%のMan-5では、培養培地は、約2.5g/Lのグルコースと約11.5g/Lのガラクトースを含むべきであることがわかった。これらの濃度は、Man-5目標を達成するという主な目標を達成しつつ、増殖、生存率及び力価をバランスさせた。分析はまた、グルコース濃度と増殖及び力価との間の相関を示し、グルコースが高くなるほど、より高い増殖及び力価をもたらす。より高いガラクトースがより高いMan-5レベルをもたらす場合があるにもかかわらず、2.5g/Lガラクトースの濃度を選択したが、より高いガラクトースは培養生存率に対して潜在的な負の効果を有し得た。
【0251】
第2の試験では、Man-5含量に対するグルコース及びスクロース濃度の効果を評価した。実験計画を表19に示す。目標Man-5は少なくとも7%~9%である。
【0252】
【0253】
試験した因子のうち、全てが17日目に8%を超えるMan-5レベルを達成し、多くは15日目までに10%を超えるレベルを達成した。Man-5の17日目の値は9%から16%未満までの範囲であった。CP2レベルに最も近い2つの条件は、16又は24g/Lのスクロースと共に2g/Lのグルコースを含む条件であった。HILICアッセイによるMan-5のグラフを
図8Bに示す。
図8Cは、CP2参照と比較した、Man-5及び全高マンノース種を示す。
【0254】
実施例10:SR3 GS-KO宿主細胞に対する低グルコース及びガラクトース補充の効果
この実施例では、別のCHO宿主細胞株を使用して、代替炭素源(ガラクトース)を補充した低グルコース培養培地の効果を評価した。細胞株SR3 GS-KOは、GSノックアウトを有するCHO-K1細胞株に由来する。
【0255】
10日間の流加培養(FB)プラットフォームを使用して、以下の工程による生産条件下でのデノスマブ分子の増殖、発現及び製品品質(PQ)プロファイルを評価した(
図9A):
1.N-1接種。プールを、10日間のFBの前に>85%の生存率まで回復させた。デノスマブをトランスフェクトしたSR3-E1 GS-KO細胞の4日間のシードトレイン培養物を、培養培地中に5×10
5細胞/mlで播種した。
2.N接種。産生培養物をN-1シードトレインから準備し、細胞を50mLスピンチューブに播種した。流加培養物に、0日目に高生存率の細胞(>98%)を1×10
6細胞/mlで播種した。産生期の間、培養容器を225rpmで振盪しながら、36℃+5%CO
2で維持した。
3.工程内監視。生細胞密度及び生存率を、Vicellを用いて、3、6、8及び10日目に測定した。グルコース消費レベルを、Novaflexを用いて同じ日に測定した。
4.供給及び補充。3日目、6日目、及び8日目に産生培養物に、最初の培養開始容量の5%で供給培地を供給し、且つ1×チロシン-システイン補充物を供給用量の0.4%で供給した。10g/Lガラクトースの補充物を、供給日にボーラスとして添加する一方、グルコースレベルを消費によって低下させ、産生の間、1~5g/Lレベルを維持するためにのみ供給した。
5.力価及び製品品質評価。10日目に回収する前に、生細胞密度、生存率及びグルコースレベルを測定した。馴化培地(CM)を回収するために、培養物を200gで15分間遠心分離した。力価測定及びATOLL centricolumn精製のためにCMを回収した。HILIC、CEX-HPLC、SE-HPLC、nrCE-SDS及びrCE-SDSアッセイを含む製品品質評価に、精製材料を使用した。
【0256】
10.1 10日間の流加培養中のD-ガラクトース添加は培養生存率に影響しなかった。
デノスマブをトランスフェクトしたSR3-E1 GSKO細胞の3つのプールを、次の3つの培養条件で繰り返し試験した:1)Ctrl又は対照、培養中10~12g/Lレベルを維持するように供給日にグルコースを補充、2)Gal/Gluc、10~12g/Lレベルを維持するようにグルコースと共にボーラスとして10g/Lのガラクトースを補充、及び3)Galのみ、培養中1~5g/Lグルコースレベルを維持するようにグルコース供給なしでボーラスとして10g/Lのガラクトースを補充。10日間の流加培養中の細胞の生存率を、供給及び回収前の3、6、8及び10日目にVicellを用いて測定した。培養物は全てのプール及び条件で、10日間の流加培養を通して高い生存率(>80%)を示し(
図9B)、産生培養物中の糖レベル及び供給源の改変が生存率に最小限の影響しか及ぼさないことを示唆した。
【0257】
10.2 細胞増殖及び比生産性に及ぼす低グルコースレベルの影響。
グルコースが各条件で適切なレベルに確実に維持されるように、バイオリアクター中のグルコースレベルの測定を、供給前の3、6、8、及び10日目にNovaflexを使用して行った。galのみの培養条件では、6日目までにグルコースレベルを消費によって約2g/Lまで低下させた。この条件では、グルコースは、10日間の流加培養の残り期間を通してそのレベルが維持された(
図9C)。この観察は、糖源としてのグルコースの非存在下では、デノスマブ発現SR3-E1 GSKO細胞がその増殖及び他の細胞活性を維持するためにガラクトースを使用することに切り替え得ることを示唆している。
【0258】
低レベルのグルコースは生存率に影響しなかったが、細胞の増殖は、ガラクトースを添加した培養物ではわずかに遅かった。最も遅い増殖は、ガラクトース及びグルコースの両方が補充された培養物において観察された(
図10A)。この培養条件では力価は低下したようであったが、比生産性は対照培養(
図10B~10C)と比較して有意差を示さなかった。低グルコース条件でのガラクトースの添加は、力価のわずかな低下及び比生産性の減少に相関した。
【0259】
10.3 低グルコースと組み合わせたD-ガラクトースの添加は、デノスマブの高マンノースレベルを増加させた。
10日間流加培養からの馴化培地をATOLL精製及び製品品質特性アッセイに供した。精製製品をサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)を用いて分析し、純度が約99%、高分子量及び低分子量の不純物が<1%(データは示さず)であることがわかった。
【0260】
続いて、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を実施して、生成物のグリカンレベルを測定した。結果は、高グルコースレベルの存在下でのガラクトースの添加がデノスマブの高マンノース(M5)レベルに影響しないことを示す。一方、低グルコースレベルでの10g/Lのガラクトースの補充は、高マンノースレベルを約1.5倍以上増加させた(
図11)。このデータは、小規模生産中に糖源をグルコースからガラクトースに変化させることが、産生物の高マンノースレベルに直接的な影響を及ぼしたことを示唆している。
【0261】
10.4 ガラクトースの添加は、モノ-及びビ-ガラクトシル化グリカン残基を増加させた。
グリカンプロファイルの分析はさらに、10日間の流加培養中にガラクトース補充物を添加すると、非ガラクト残基の減少が最小限となるが、非シアロモノガラクト及びビガラクト残基が増加することを示した。これらの残基の増加は培養物中に存在するグルコースのレベルに反比例し、低グルコース条件は約2~4倍の増加を示した(
図12)。
【0262】
本明細書は、本明細書内で引用される参考文献の教示に照らせば、最もよく理解される。明細書内の実施形態は本発明の実施形態の例示を提供するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者であれば、多くの他の実施形態が本発明に包含されることを容易に認識する。本開示において引用される全ての刊行物、特許、及びGenBank配列は、その全体が参照により組み込まれる。参照によって組み込まれる材料が本明細書と矛盾するか又は整合性がない限り、いかなるそのような材料にも本明細書が優先するものとする。本明細書中のいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを容認するものではない。
【0263】
上記の個々のセクションで言及された本発明の様々な特徴及び実施形態は、必要に応じて他のセクションに準用される。その結果、1つの項で特定された特徴は、必要に応じて、他のセクションで特定された特徴と組み合わせることができる。
【0264】
当業者であれば、単に日常的な実験により、本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識又は確認することができるであろう。このような均等物は、以下の実施形態に包含されるものとする。
【配列表】