(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】配線基板の生産方法及び配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20240813BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20240813BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240813BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K1/11 B
G02F1/1333 505
G06F3/041 660
(21)【出願番号】P 2021001224
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】坂上 彰利
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-171194(JP,A)
【文献】特開2019-46405(JP,A)
【文献】特開2017-77677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された導体パターンと、前記導体パターンの少なくとも一部を覆う、フレキソ印刷によって形成された絶縁膜とを含む配線基板の生産方法であって、
前記基板の上の、前記導体パターンの少なくとも一部を覆う、第1の端縁を有する第1の画成領域に、第1の絶縁膜材料のインキを第1のフレキソ版から転写する第1の印刷工程と、
前記第1の印刷工程の後に、前記第1の画成領域に転写された前記第1の絶縁膜材料のインキを硬化させる第1の硬化工程と、
前記第1の硬化工程の後に、前記基板の上の、前記第1の画成領域の少なくとも一部を覆う、第2の端縁を有する第2の画成領域であって、前記第2の端縁は前記第1の画成領域の外部に位置し、前記第2の端縁に属する何れの点からも前記第1の端縁に至る最短距離が400μm以下である第2の画成領域に、第2の絶縁膜材料のインキを第2のフレキソ版から転写する第2の印刷工程と、
前記第2の印刷工程の後に、前記第2の画成領域に転写された前記第2の絶縁膜材料のインキを硬化させる第2の硬化工程とを含むことを特徴とする配線基板の生産方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の生産方法において、
前記第2の硬化工程の後に、前記基板の上の前記第1の端縁及び前記第2の端縁を含む領域に光学透明粘着シートを貼り付ける工程を含むことを特徴とする配線基板の生産方法。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板の生産方法において、
前記配線基板は、前記絶縁膜に貫通穴が設けられ、前記貫通穴の内部には前記導体パターンに属する第1の接続部が位置しており、前記絶縁膜の上と前記貫通穴とには第2の導体パターンが形成され、前記貫通穴の内部には前記第2の導体パターンに属する第2の接続部が位置しており、前記第1の接続部と前記第2の接続部とは前記貫通穴の内部で直接に重畳することで相互に接続している構造を含む配線基板であり、
前記第1の印刷工程及び前記第2の印刷工程においては、前記第1の端縁を、前記第1の接続部がその内部に位置する第1の閉曲線とし、前記第2の端縁を、前記第1の閉曲線の内部に位置する第2の閉曲線とし、
前記第2の硬化工程の後に、前記第2の接続部が前記第2の閉曲線の内部に位置している前記第2の導体パターンを印刷形成する第2の導体パターン形成工程を含むことを特徴とする配線基板の生産方法。
【請求項4】
請求項3に記載の配線基板の生産方法において、
前記第2の導体パターン形成工程の後に、前記基板の上の、前記第1の端縁及び前記第2の端縁を含む領域に光学透明粘着シートを貼り付ける工程を含むことを特徴とする配線基板の生産方法。
【請求項5】
基板の上に形成された導体パターンと、前記導体パターンの少なくとも一部を覆う絶縁膜とを含む配線基板であって、
前記基板の上の、前記導体パターンの少なくとも一部を覆う、第1の端縁を有する第1の画成領域に第1の絶縁膜が設けられ、
前記第1の絶縁膜には前記第1の端縁に沿って延長する第1の膜厚の盛上りが形成され
、
前記基板の上の、前記第1の画成領域の少なくとも一部を覆う、第2の端縁を有する第2の画成領域であって、前記第2の端縁は前記第1の画成領域の外部に位置し、前記第2の端縁に属する何れの点からも前記第1の端縁に至る最短距離が400μm以下である第2の画成領域に第2の絶縁膜が設けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項
5に記載の配線基板において、
前記第1の膜厚の盛上りの膜厚の最大値は、前記第1の絶縁膜の膜厚の最小値の1.5倍以上の大きさであることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項5
または6に記載の配線基板において、
前記第2の絶縁膜の上に、前記第1の端縁及び前記第2の端縁を含む領域に配された光学透明粘着剤層を介して光学部材が取り付けられていることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項5
または6に記載の配線基板において、
前記第1の端縁は第1の閉曲線を構成し、前記第2の端縁は前記第1の閉曲線の内部に位置する第2の閉曲線を構成することで、前記第1の絶縁膜と前記第2の絶縁膜とでなる前記絶縁膜には前記第2の閉曲線によって画成される貫通穴が設けられており、
前記貫通穴の内部には、前記導体パターンに属する第1の接続部が位置し、
前記絶縁膜の上と前記貫通穴とには、第2の導体パターンが形成されており、
前記貫通穴の内部には、前記第2の導体パターンに属する第2の接続部が位置し、
前記第1の接続部と前記第2の接続部とは、前記貫通穴の内部で直接に重畳されて相互に接続されていることを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項
8に記載の配線基板において、
前記第2の導体パターンが形成された前記絶縁膜の上に、前記第1の端縁及び前記第2の端縁を含む領域に配された光学透明粘着剤層を介して光学部材が取り付けられていることを特徴とする配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板の上に形成された導体パターンと、導体パターンの少なくとも一部を覆う、フレキソ印刷によって形成された絶縁膜とを含む配線基板の生産方法に関し、さらにその生産方法によって生産された配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には液晶装置に用いる基板において、基板上に形成した電極パターンを覆う表面保護膜(絶縁膜)をフレキソ印刷によって形成することが記載されている。
図5及び6は特許文献1に記載されているフレキソ印刷による絶縁膜形成の様子を示したものであり、
図5及び6中、11は基板を示し、12は電極パターンを示す。また、13,13a,13bはそれぞれ絶縁膜形成用の液状前駆体が転写、塗布されて形成された塗膜、下側塗膜、上側塗膜を示す。
【0003】
特許文献1にはこれら
図5及び6を参照して以下のことが記載されている。
【0004】
1)フレキソ印刷によって液状前駆体を塗布すると、
図5Aに示したように塗膜13の端縁14付近が内側領域の膜厚の2倍程度の膜厚にまで盛上り、この盛上り15が約1500Åになると、洗浄やラビング処理を行った際にひび割れが発生する。このようなひび割れは塗膜13の剥がれの原因となる。
図5Aでは750Åの表面保護膜を形成するのが限界である。
【0005】
2)
図5Bに示したように、フレキソ印刷で下側塗膜13aを形成した後、再度、フレキソ印刷で上側塗膜13bを形成し、しかる後に上側塗膜13b及び下側塗膜13aを硬化させる方法を採用すると、端縁14付近の盛上り16が約2000Åになる時、後の洗浄やラビング処理でひび割れが発生する。
図5Bでは1000Åの表面保護膜を形成するのが限界となる。
【0006】
3)
図6Aに示したように、膜厚が約650Åの下側塗膜13aを形成し、次に
図6Bに示したように膜厚が650Åの上側塗膜13bを形成する。この際、上側塗膜13bの端縁18が下側塗膜13aの端縁14から見て約200μmほど内側に位置するように上側塗膜13bを形成する。下側塗膜13aの盛上り17と上側塗膜13bの盛上り19は重ならず、下側塗膜13aと上側塗膜13bとの膜厚の和が最大の箇所(盛上り19が発生している箇所)であっても膜厚は約1950Åであり、2000Åを下回る。よって、
図6A,Bでは1300Åの膜厚をもった表面保護膜を形成でき、盛上り19が発生している箇所の膜厚は1950Åに過ぎないので、ひび割れは発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1にはフレキソ印刷による絶縁膜の形成において、絶縁膜の端縁付近に発生する盛上りが厚くなるとひび割れが発生すること、ひび割れの発生を回避しつつ厚い絶縁膜を形成するために端縁をずらして二度塗りにより絶縁膜を形成することが記載されている。
【0009】
このように絶縁膜を2層の重畳印刷で形成すれば、1回の印刷で形成することができる膜厚の限界よりも厚い膜厚の絶縁膜を形成することができ、また印刷形成された絶縁膜に発生する可能性のある膜厚方向に貫くピンホールによって絶縁膜の両側(上下)が連通してしまうといった不具合の発生を防止することができる。
【0010】
しかるに、絶縁膜を2層の重畳印刷で形成する場合、特許文献1に記載されているような形態、即ち下層としての第1層に対し、その上に形成される第2層の端縁を第1層の端縁よりも膜の領域内に後退させる形態で重畳印刷すると、
図6Bに示されている通り、第1層の端縁付近の盛上り17と第2層の端縁付近の盛上り19の間に膜厚の顕著な谷間が形成される。
【0011】
この谷間は例えば絶縁膜上に光学透明粘着剤(OCA:Optical Clear Adhesive)の層を配してその上にカバー等の光学部材を取り付ける場合に、その谷間の箇所において絶縁膜と光学透明粘着剤層との間に気泡が生じ(気泡がとじ込められ)、そのような気泡が例えば絶縁膜の周縁に沿って存在することで適切な接着ができず、十分な取り付け強度が得られなくなるといった問題を引き起こす。
【0012】
また、例えばこの絶縁膜の谷間がデバイスの視認される領域に存在する場合には、当該箇所の面が歪んで見えたり、干渉縞が生じる等の視認上の不具合が生じるといった問題がある。
【0013】
図7及び8は上述したように、
図6Bに示したような形態を有する第1及び第2の絶縁膜21,22上に光学透明粘着剤層23を介してカバー24を取り付けた場合に、気泡が生じる様子を示したものである。図中、21aは第1の絶縁膜21の端縁付近の盛上りを示し、22aは第2の絶縁膜22の端縁付近の盛上りを示す。25は盛上り21aと22aの間の谷間に生じた(残った)気泡を示す。また、26は基板を示し、27は導体パターンを示す。なお、
図8は絶縁膜に貫通穴28が設けられている場合の貫通穴28周りの盛上り21aと22aの間の谷間に気泡25が生じた状態を示している。
【0014】
この発明の目的はこのような状況に鑑み、フレキソ印刷の重畳印刷で形成される絶縁膜を含む配線基板の生産において、絶縁膜の表面に谷間が形成されないようにした生産方法を提供することにあり、さらに2層構成の絶縁膜を含む配線基板において、絶縁膜の表面に谷間が存在しない配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明によれば、基板の上に形成された導体パターンと、導体パターンの少なくとも一部を覆う、フレキソ印刷によって形成された絶縁膜とを含む配線基板の生産方法は、基板の上の、導体パターンの少なくとも一部を覆う、第1の端縁を有する第1の画成領域に、第1の絶縁膜材料のインキを第1のフレキソ版から転写する第1の印刷工程と、第1の印刷工程の後に、第1の画成領域に転写された第1の絶縁膜材料のインキを硬化させる第1の硬化工程と、第1の硬化工程の後に、基板の上の、第1の画成領域の少なくとも一部を覆う、第2の端縁を有する第2の画成領域であって、第2の端縁は第1の画成領域の外部に位置し、第2の端縁に属する何れの点からも第1の端縁に至る最短距離が400μm以下である第2の画成領域に、第2の絶縁膜材料のインキを第2のフレキソ版から転写する第2の印刷工程と、第2の印刷工程の後に、第2の画成領域に転写された第2の絶縁膜材料のインキを硬化させる第2の硬化工程とを含む。
【0016】
また、この発明によれば、基板の上に形成された導体パターンと、導体パターンの少なくとも一部を覆う絶縁膜とを含む配線基板において、基板の上の、導体パターンの少なくとも一部を覆う、第1の端縁を有する第1の画成領域に第1の絶縁膜が設けられ、基板の上の、第1の画成領域の少なくとも一部を覆う、第2の端縁を有する第2の画成領域であって、第2の端縁は第1の画成領域の外部に位置し、第2の端縁に属する何れの点からも第1の端縁に至る最短距離が400μm以下である第2の画成領域に第2の絶縁膜が設けられているものとされる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、フレキソ印刷の重畳印刷で形成される絶縁膜を含む配線基板の生産において、重畳印刷される第1の絶縁膜と第2の絶縁膜とよりなる絶縁膜の端縁付近の表面に谷間が形成されないようにした生産方法を提供することができる。
【0018】
また、この発明による配線基板では、2層構成の絶縁膜の端縁付近の表面に谷間が存在しないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】Aはこの発明による配線基板における絶縁膜の要部形態を示す断面図、Bは絶縁膜の端縁付近がなす、Aと異なる形態を示す断面図。
【
図2】
図1Aに示した構成に光学透明粘着剤層を介してカバーが取り付けられた状態を示す断面図。
【
図3】この発明による配線基板の生産方法が適用されるタッチパネルの概要を示す平面図。
【
図4】Aは
図3における要部拡大平面図、Bは光学透明粘着剤層を介してカバーが取り付けられた場合のAに示す部分の断面図。
【
図5】Aは従来のフレキソ印刷により形成された絶縁膜の端縁付近を示す断面図、Bは従来のフレキソ印刷により二度塗り(重畳印刷)されて形成された絶縁膜の端縁付近を示す断面図。
【
図6】Aは従来のフレキソ印刷により形成された絶縁膜の端縁付近を示す断面図、BはAの上に端縁がずらされてフレキソ印刷により絶縁膜が重畳印刷された状態を示す断面図。
【
図7】
図6Bと同様の構成に光学透明粘着剤層を介してカバーが取り付けられた状態を示す断面図。
【
図8】貫通穴周りの絶縁膜の端縁が
図7と同様の形態を有する構成に光学透明粘着剤層を介してカバーが取り付けられた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0021】
図1Aは基板31の上に形成された導体パターン32と、導体パターン32の少なくとも一部を覆う絶縁膜40とを含み、絶縁膜40は第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42とによって構成されている、この発明による配線基板における絶縁膜40の端縁付近を示したものである。
【0022】
図1Aでは全体を示していないが、第1の絶縁膜41は基板31の上の、導体パターン32の少なくとも一部を覆う第1の画成領域f1に設けられている。第2の絶縁膜42は基板31の上の第1の画成領域f1の少なくとも一部を覆う第2の画成領域f2に設けられている。
【0023】
図1A中、e1は第1の画成領域f1の端縁(第1の端縁)を示し、e2は第2の画成領域f2の端縁(第2の端縁)を示す。この例では端縁e2は第1の画成領域f1の外部に位置し、端縁e2に属する何れの点からも端縁e1に至る最短距離dが400μm以下とされている。
【0024】
上述した第1の絶縁膜41及び第2の絶縁膜42よりなる絶縁膜40はフレキソ印刷によって形成されており、絶縁膜40の形成工程を以下、順に示す。
(1)第1の印刷工程
第1の画成領域f1に第1の絶縁膜材料のインキを第1のフレキソ版から転写する。
(2)第1の硬化工程
第1の画成領域f1に転写された第1の絶縁膜材料のインキを硬化させる。これにより、第1の絶縁膜41が形成され、第1の絶縁膜41には端縁e1に沿って延長する膜厚の盛上り41aが形成される。
(3)第2の印刷工程
第2の画成領域f2に第2の絶縁膜材料のインキを第2のフレキソ版から転写する。
(4)第2の硬化工程
第2の画成領域f2に転写された第2の絶縁膜材料のインキを硬化させる。これにより、第2の絶縁膜42が形成され、即ち第1の絶縁膜41と第2の絶縁膜42とよりなる絶縁膜40が完成する。
【0025】
上記の工程において、第1の絶縁膜材料と第2の絶縁膜材料はこの例では同一組成の材料とされ、例えばポリイミドやエポキシ樹脂、アクリル樹脂などの絶縁膜材料が用いられる。これら絶縁膜材料のインキは熱処理のみで硬化する。具体的に言えば、第1の硬化工程及び第2の硬化工程は、共に、
1)60℃で3分の仮乾燥
2)160℃で10分の本乾燥
という1),2)の工程を含んで構成される。
【0026】
上記のように第1及び第2の絶縁膜41,42をそれぞれ形成する第1及び第2の画成領域f1,f2の各端縁e1,e2の位置関係を規定し、硬化した第1の絶縁膜41の上から端縁e1を覆って外側に及ぶ領域に第2の絶縁膜材料のインキを転写すると、第2の絶縁膜材料のインキはその流動性により第1の絶縁膜41の膜厚の高低を補償し、第1の絶縁膜41の端縁付近に存在する膜厚の盛上り41aを完全に隠蔽し、盛上り41aは埋没する。
【0027】
このような第2の絶縁膜材料のインキの作用は、第2の絶縁膜材料のインキに対して、硬化した第1の絶縁膜41の表面は親和性を有するのに対し、基板31の表面は親和性を有さないことによる。
【0028】
即ち、第2の絶縁膜材料のインキは、硬化した第1の絶縁膜41の表面に対する濡れ性の良さと、端縁e2で大きな接触角を形成して接触する基板31の表面に対するはじきの良さとの顕著な対比から、第1の絶縁膜41の上から第1の絶縁膜41の盛上り41aを低抵抗に乗り越え、端縁e1とe2の間の基板31の表面上の領域に良好に流れ込んで滞留する。
【0029】
このように、この例では第2の絶縁膜42は高度なレベリングの効果を奏し、結果として絶縁膜40の端縁付近の表面形状は
図1Aに示したように、なだらかに下り、途中でいったん略水平となって再びなだらかに下る形状となるか、または
図1Bに示したように単調なスロープを描いて下る形状となる。第2の絶縁膜42の端縁付近には膜厚の盛上りは基本的には形成されず、形成されたとしても有意な大きさで形成されない。よって、この例では絶縁膜40の表面には谷間は形成されない。なお、第1の絶縁層41に形成される膜厚の盛上り41aの膜厚の最大値は、第1の絶縁膜41の膜厚の最小値に対し、一般に1.5倍以上の大きさである。
【0030】
端縁e1とe2の距離(最短距離)dは上述した例では400μm以下としているが、400μmを越えると、第1の絶縁膜41の上から第1の絶縁膜41の盛上り41aを乗り越えて流れ込んだ第2の絶縁膜材料のインキの影響が端縁e2付近に及ばなくなり、第2の絶縁膜42の端縁e2に沿う膜厚の盛上りが顕在化してしまうので、このように距離dを400μm以下とする条件下で、上述した表面に谷間を形成しない絶縁膜40を良好に得ることができる。なお、端縁e1とe2の距離dはあまり小さくせず、400μm以下の範囲で大きめに設定するのが好ましい。
【0031】
図2は
図1Aに示した構成を有する配線基板において、基板31の上の端縁e1及びe2を含む領域に光学透明粘着シートを貼り付けることによって光学透明粘着剤層23を設け、前述した
図7と同様、光学透明粘着剤層23を介してカバー24を取り付けた状態を示したものである。光学透明粘着シートは光学透明粘着剤の膜が2枚のセパレータ(離型紙)によって挟まれてシート状をなすもので、セパレータをはがすことによって貼り付けられる。絶縁膜40の表面には谷間が存在しないため、従来のように谷間に気泡が生じるといったことは発生せず、良好な接着状態が得られる。
【0032】
図3はこの発明による配線基板の生産方法により生産される配線基板の具体例として静電容量式のタッチパネルを示したものである。タッチパネルは矩形状の透明基板50を有し、透明基板50上には透明基板50の短辺と平行なX方向に沿って延び、かつ透明基板50の長辺と平行なY方向に並列配置された複数の第1のセンサ電極列61と、Y方向に沿って延び、かつX方向に並列配置された複数の第2のセンサ電極列62が形成されている。
【0033】
各第1のセンサ電極列61の一端からは引出し配線71がそれぞれ引き出され、各第2のセンサ電極列62の一端からは引出し配線72がそれぞれ引き出されている。これら引出し配線71,72は透明基板50の一方の短辺の中央近傍に形成された端子部73まで延びている。
【0034】
第1のセンサ電極列61はX方向に配列された複数の島状電極61aと、隣接する島状電極61aを連結する連結部61bとよりなり、第2のセンサ電極列62はY方向に配列された複数の島状電極62aと、隣接する島状電極62aを連結する連結部62bとよりなる。なお、
図3ではそれらの外形のみ示しているが、本実施例のタッチパネルでは、第1及び第2のセンサ電極列61,62、詳しくは島状電極61a及び連結部61b並びに島状電極62a及び連結部62bは、それぞれ印刷形成された導電性の細線のメッシュで構成されている。
【0035】
図4Aは第2のセンサ電極列62から引出し配線72が引き出されている部分を拡大して示したものであり、
図4Bは
図4Aに対応させてタッチパネルの断面構成を示したものである。
【0036】
タッチパネルは
図4Bに示したように、透明基板50上に第1の導体パターン81、絶縁膜90、第2の導体パターン82が順次、積層形成され、さらに
図3及び
図4Aでは図示を省略しているが、第2の導体パターン82上に光学透明粘着剤層83を介してカバー84が取り付けられた構成を有している。複数の第1のセンサ電極列61、引出し配線71,72及び端子部73は第1の導体パターン81に属し、複数の第2のセンサ電極列62は絶縁膜90により第1の導体パターン81と絶縁された第2の導体パターン82に属する構成となっている。第1のセンサ電極列61と第2のセンサ電極列62は互いに絶縁された状態で交差しており、連結部61bと62bは互いに重なる位置に位置されている。
【0037】
絶縁膜90は第1の絶縁膜91と第2の絶縁膜92とによって構成されており、第1の絶縁膜91が設けられている第1の画成領域の端縁e1と第2の絶縁膜92が設けられている第2の画成領域の端縁e2との位置関係は前述の
図1Aで説明した位置関係と同様の位置関係となっている。
【0038】
第2のセンサ電極列62と引出し配線72との接続は絶縁膜90に形成された貫通穴93部分によって行われており、貫通穴93は
図3に示したように各第2のセンサ電極列62のY方向下端に設けられている。以下、貫通穴93部分の詳細を
図4A,Bを参照して説明する。
【0039】
第1の絶縁膜91がフレキソ印刷される第1の画成領域の端縁e1は
図4Aに示したように第1の閉曲線を構成し、第2の絶縁膜92がフレキソ印刷される第2の画成領域の端縁e2は第1の閉曲線の内部に位置する第2の閉曲線を構成することで、第1の絶縁膜91と第2の絶縁膜92とでなる絶縁膜90には第2の閉曲線によって画成される貫通穴93が設けられている。
【0040】
貫通穴93の内部には第1の導体パターン81に属する引出し配線72の接続部72aが位置している。絶縁膜90の上と貫通穴93とには第2の導体パターン82が印刷形成されており、貫通穴93の内部には第2の導体パターン82に属する第2のセンサ電極列62から延長形成された接続部62cが位置している。これら接続部72aと接続部62cは貫通穴93の内部で直接に重畳されて相互に接続され、即ち第2のセンサ電極列62と引出し配線72との接続がなされている。なお、
図3及び
図4Aではそれらの外形のみ示しているが、本実施例のタッチパネルでは、接続部72a及び接続部62cは、それぞれ印刷形成された導電性の細線のメッシュで構成されている。
【0041】
このように、絶縁膜90に貫通穴93が設けられ、貫通穴93の内部には第1の導体パターン81に属する接続部72aが位置し、絶縁膜90の上と貫通穴93とには第2の導体パターン82が形成され、貫通穴93の内部には第2の導体パターン82に属する接続部62cが位置し、接続部72aと接続部62cとは貫通穴93の内部で直接に重畳することで相互に接続している構造を含むタッチパネルは、前記した第1の印刷工程及び第2の印刷工程においては、第1の画成領域f1の端縁e1を接続部72aがその内部に位置する第1の閉曲線とし、第2の画成領域f2の端縁e2を第1の閉曲線の内部に位置する第2の閉曲線とする。
【0042】
そして、前記した第2の硬化工程の後に、第2の導体パターン形成工程により接続部62cが第2の閉曲線の内部に位置している第2の導体パターン82を印刷形成することによって生産される。
【0043】
さらに、このタッチパネルでは、第2の導体パターン82形成工程の後に、透明基板50の上の端縁e1及び端縁e2を含む領域に、前述した
図2と同様、光学透明粘着シートを貼り付けることによって光学透明粘着剤層83を設け、光学透明粘着剤層83を介してカバー84を取り付けるものとなっている。
【0044】
以上、タッチパネルを例に、絶縁層90に設けられている貫通穴93部分の詳細について説明したが、フレキソ印刷の重畳印刷により形成されて第1の絶縁膜91と第2の絶縁膜92とよりなる絶縁膜90の貫通穴93を囲む端縁付近の表面には谷間は存在しないため、第2の導体パターンを良好に印刷形成することができ、また光学透明粘着剤層83を配しても貫通穴93周りに気泡が生じるといった不具合は発生しない。
【0045】
なお、上述したタッチパネルでは光学透明粘着剤層83を介して光学部材としてのカバー84が取り付けられるものとなっているが、タッチパネルの配置形態によっては光学透明粘着剤層83を介して表示装置が取り付けられる場合もありうる。
【符号の説明】
【0046】
11 基板 12 電極パターン
13 塗膜 13a 下側塗膜
13b 上側塗膜 14 端縁
15,16,17,19 盛上り 18 端縁
21 第1の絶縁膜 21a 盛上り
22 第2の絶縁膜 22a 盛上り
23 光学透明粘着剤層 24 カバー
25 気泡 26 基板
27 導体パターン 28 貫通穴
31 基板 32 導体パターン
40 絶縁膜 41 第1の絶縁膜
41a 盛上り 42 第2の絶縁膜
50 透明基板 61 第1のセンサ電極列
61a 島状電極 61b 連結部
62 第2のセンサ電極列 62a 島状電極
62b 連結部 62c 接続部
71,72 引出し配線 72a 接続部
73 端子部 81 第1の導体パターン
82 第2の導体パターン 83 光学透明粘着剤層
84 カバー 90 絶縁膜
91 第1の絶縁膜 92 第2の絶縁膜
93 貫通穴