(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】陽極化成装置及び陽極化成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3063 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
H01L21/306 L
(21)【出願番号】P 2021019756
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 美恵
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131939(JP,A)
【文献】実開平01-147268(JP,U)
【文献】米国特許第06964792(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の陽極化成処理が可能な第1処理槽と、
前記基板を保持可能なホルダーと、
前記第1処理槽に第1電解液を供給可能な第1電解液供給システムと
、
前記ホルダー内に設けられた陽電極と、
前記第1処理槽内に設けられた第2処理槽と、
前記第2処理槽内に設けられた陰電極と、
前記第2処理槽の一端に、前記第1処理槽の底面に対して傾斜した状態で設置された拡散板と
を備え、前記ホルダーは、前記基板が前記第1電解液の液面に対して傾斜した状態で、前記基板を前記第1電解液に浸漬させ、
前記基板が前記第1電解液の前記液面に対して傾斜した状態で前記陽極化成処理が実行される、
陽極化成装置。
【請求項2】
前記陽極化成処理の際、前記ホルダーは回転する、
請求項1に記載の陽極化成装置。
【請求項3】
前記陽極化成処理の際、前記基板と前記拡散板はともに前記第1処理槽の底面に対して傾斜した状態に配置される、
請求項
1に記載の陽極化成装置。
【請求項4】
前記陽極化成処理の際、前記基板と前記拡散板とは平行に配置される、
請求項
1に記載の陽極化成装置。
【請求項5】
前記陽電極と前記基板との間に第2電解液を供給可能な第2電解液供給システムを更に備える、
請求項
1乃至
4のいずれか一項に記載の陽極化成装置。
【請求項6】
処理槽に第1電解液を供給する工程と、
ホルダー内に設けられた陽電極と対向するように基板を前記ホルダーにセットする工程と、
前記陽電極と前記基板との間を、第2電解液で満たす工程と、
前記ホルダーにセットされた前記基板を、前記第1電解液の液面に対して傾斜させた状態で、前記第1電解液に浸漬させる工程と、
前記基板及び前記ホルダーを傾斜させた状態で回転させる工程と、
前記陽電極と前記処理槽内に設けられた陰電極との間に電流を流す工程と
を含む、陽極化成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、陽極化成装置及び陽極化成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極化成により基板表面に多孔質膜を形成にする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-214237号公報
【文献】特開2006-131969号公報
【文献】特開2006-114783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板表面に、面内均一性が優れた多孔質膜を形成できる陽極化成装置及び陽極化成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る陽極化成装置は、基板の陽極化成処理が可能な第1処理槽と、基板を保持可能なホルダーと、第1処理槽に第1電解液を供給可能な第1電解液供給システムと、ホルダー内に設けられた陽電極と、第1処理槽内に設けられた第2処理槽と、第2処理槽内に設けられた陰電極と、第2処理槽の一端に、前記第1処理槽の底面に対して傾斜した状態で設置された拡散板と、を含む。ホルダーは、基板が第1電解液の液面に対して傾斜した状態で、基板を第1電解液に浸漬させる。基板が第1電解液の液面に対して傾斜した状態で陽極化成処理が実行される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る陽極化成装置の構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る陽極化成装置における陽極ホルダーの回転状態を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る陽極化成装置における陽極化成処理のフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る陽極化成処理システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。また、以下に示す各実施形態は、この実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0008】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る陽極化成装置について説明する。本実施形態では、半導体基板(以下、単に「基板」と表記する)の表面にシリコンの多孔質層(例えば、ポーラスSi層)を形成する陽極化成装置について説明する。
【0009】
1.1 陽極化成装置の基本的な構成
まず、陽極化成装置の基本的な構成の一例について
図1を用いて説明する。
図1は、陽極化成装置の構成図である。
【0010】
図1に示すように、陽極化成装置1は、陽極化成槽10、陽極ホルダー11、第1電解液供給システム13、濃度調整部14、温度調整部15、第2電解液供給システム16、電流源17、及び制御回路18を含む。
【0011】
陽極化成槽10は、陽極化成処理に用いられる処理槽である。陽極化成槽10は、例えば円筒形状を有している。陽極化成槽10の内径は、陽極ホルダー11の外径よりも大きい。陽極化成槽10には、絶縁材料が用いられる。
【0012】
陽極化成槽10には、配管201及び配管202が接続されている。配管201は、第1電解液供給システム13から陽極化成槽10に第1電解液を供給する際に用いられる。第1電解液は、陽極化成処理に用いられる液体であり、少なくともフッ化水素(HF)を含む電解液である。配管202は、陽極化成槽10から第1電解液供給システム13に第1電解液を還流する際に用いられる。
【0013】
陽極化成槽10の槽内には、陰電極槽101、陰電極(カソード)102、フィルタ103、及び拡散板104が設けられている。
【0014】
陰電極槽101は、陽極化成槽10に第1電解液を供給する際、拡散板104と組み合わせることでシャワーヘッドの筐体として機能する。陰電極槽101は、例えば、円筒形状を有している。陰電極槽101の内径は、例えば、陽極化成処理の対象である基板110の外径と同じかそれ以上である方が好ましい。陰電極槽101には、絶縁材料が用いられる。陰電極槽101の底面は、陽極化成槽10内の底面に接している。陰電極槽101の上端の開口部は、拡散板104が第1電解液の液面に対して傾斜して取り付けられるように、陰電極槽101の底面に対して傾斜している。
【0015】
陰電極102は、陽極化成処理におけるカソードとして機能する。陰電極102は、例えば円盤形状を有している。陰電極102は、陰電極槽101内の底面に接している。陰電極102の直径は、例えば陰電極槽101の内径と同じである。陰電極102は、導電材料により構成され、第1電解液に対する反応性が低い(第1電解液にほとんど溶解しない)材料が用いられる。陰電極102には、例えば、コート材として、カーボン、ダイヤモンド、Pt、Au等が用いられた導電材料であってもよい。また、コート材は、ガラス状繊維カーボン、ダイヤモンドコートシリコン等であってもよい。
【0016】
フィルタ103は、陰電極槽101内において、陰電極102の上方に設けられる。換言すれば、フィルタ103は、陰電極102と拡散板104との間に設けられる。フィルタ103は、陽極化成処理の際、陰電極102で発生したパーティクルを除去する。例えば、陰電極102の電極材料に第1電解液に溶解し難い材料を用いても、経年劣化等により、電極の酸化が進み、パーティクルが発生する可能性がある。パーティクルが発生すると、陽極化成処理による多孔質シリコンの形成が阻害される可能性がある。フィルタ103により除去可能なパーティクルのサイズは、任意に設計可能である。例えば、フィルタ103として、粒径0.01μm以上のパーティクルが除去可能なフィルタが用いられてもよい。
【0017】
本実施形態では、配管201の一端が、陽極化成槽10の底部、陰電極槽101の底部、陰電極102、及びフィルタ103を貫通するように設けられており、陰電極槽101内に、第1電解液供給システム13から第1電解液が供給される。
【0018】
拡散板104は、陰電極槽101の上端の開口部に、第1電解液の液面(あるいは陽極化成槽10及び陰電極槽101の底面)に対して角度θ(0°<θ<90°)傾いた状態で固定されている。拡散板104には、第1電解液を拡散させるため複数の孔が設けられており、孔の直径及び配置は、任意に設計可能である。第1電解液は、拡散板104によって拡散された後、陽極ホルダー11に固定された基板110の表面(陽極化成される面)に供給される。以下では、陽極化成処理により多孔質層が形成される面を基板110の表面と表記し、多孔質層が形成されない面を基板110の裏面と表記する。拡散板104は、絶縁材料により構成され、第1電解液に対する反応性が低い(ほとんど溶解しない)材料が用いられる。例えば、拡散板104には、PTFE(Poly-Tetra-Fluoro-Ethylene)、ポリ塩化ビニル、または帯電防止対策が施された材料を用いることが好ましい。
【0019】
陽極ホルダー11は、基板110を固定させるホルダーとして機能する。陽極ホルダーは、陽極化成処理の際、基板110とともに第1電解液に浸漬される。
【0020】
陽極ホルダー11は、ベース111、陽電極(アノード)112、及びウェハクランプ113を含む。
【0021】
ベース111は、例えば、円盤形状を有する。ベース111の直径は、例えば基板110の直径以上である。ベース111には、例えば絶縁材料が用いられる。
【0022】
陽電極112は、陽極化成処理におけるアノードとして機能する。陽電極112は、例えば円盤形状を有している。陽電極112の直径は、例えばベース111の直径と同じである。陽電極112は、陽極ホルダー11の少なくとも一部及び基板110が陽極化成槽10内の第1電解液に浸漬されている状態において、ベース111の底面に接している。陽電極112は、導電材料により構成され、例えば、後述する第2電解液に対する反応性の低い材料が用いられる。陽電極112には、例えばコート材として、カーボン、ダイヤモンド、Pt、Au等が用いられた導電材料であってもよい。また、コート材は、ガラス状繊維カーボン、ダイヤモンドコートシリコン等であってもよい。
【0023】
ウェハクランプ113は、円筒形状を有している。例えば、ウェハクランプ113の側面には、ベース111及び陽電極112を固定するための溝が設けられている。また、ウェハクランプ113の下端には、基板110を固定するためのエッジシールが設けられている。ウェハクランプ113の外径は、基板110、ベース111、及び陽電極112の外径よりも大きい。ウェハクランプ113のエッジシールは、陽極ホルダー11の少なくとも一部及び基板110が陽極化成槽10内の第1電解液に浸漬されている状態において、基板110の表面が、下側(拡散板104側)を向くように、基板110の外周全面に接して、基板110を固定する。
【0024】
ウェハクランプ113は、基板110の裏面(陽極化成されない面)と陽電極112とが接触せずに、且つ基板110と陽電極112とが平行になるように、基板110と陽電極112とを固定する。ウェハクランプ113は、絶縁材料により構成され、第1電解液及び第2電解液に対する反応性が低い(ほとんど溶解しない)材料が用いられる。例えば、拡散板104には、PTFE、ポリ塩化ビニル、または帯電防止対策が施された材料が好ましい。
【0025】
本実施形態では、基板110と陽電極112との間で導通をとるために、基板110の裏面と、陽電極112と、ウェハクランプ113とにより構成される空間内に、第2電解液供給システムから導電性の第2電解液が供給される。より具体的には、陽極ホルダー11には、第2電解液供給システム16から陽極ホルダー11に第2電解液を供給するための配管203、及び第2電解液供給システム16に第2電解液を還流するための配管204が接続されている。配管203及び204は、ベース111及び陽電極112を貫通するように設けられており、上述の空間内に、第2電解液供給システムから第2電解液が供給される。換言すれば、陽電極112と基板110との間が第2電解液で満たされる。
【0026】
陽極化成処理の際、第2電解液が電気分解されて、上述の空間内に気体が発生する場合があるので、その場合は、気体を放出する経路が陽極ホルダー11内に設けられていてもよい。
【0027】
なお、本例では、基板110と陽電極112との間に第2電解液を供給して基板110と陽電極112との導通をとる場合について説明したが、これに限定されない。例えば、基板110の裏面と陽電極112とが接していてもよい。陽電極112の基板110と接する面に、高濃度のドーパントを注入された低抵抗層または基板110に対してオーミックコンタクトが取れる金属が設けられてもよい。
【0028】
陽極ホルダー駆動機構12は、ベース111の上面の中心部に固定されている。陽極ホルダー11の少なくとも一部及び基板110が陽極化成槽10内の第1電解液に浸漬されている状態において、ベース111は陽極ホルダー駆動機構12によって回転可能である。換言すれば、陽極ホルダー駆動機構12は、ベース111の陽電極112が設置されている面と対向する面の中心部に、ベース111を回転可能に固定されている。陽極ホルダー駆動機構12は、ベース111を角度θ傾斜させた状態でベース111の少なくとも一部を陽極化成槽10に浸漬させ且つその状態で回転させるための機構を有する。これにより、本実施形態の陽極ホルダー11の少なくとも一部及び基板110は、陽極化成槽10の第1電解液に液面に対して角度θ傾斜させた状態で第1電解液に浸漬される。陽極ホルダー駆動機構12が、基板110及び陽電極112を、角度θ傾斜させることにより、基板110及び陽電極112と拡散板104とは、陽極化成処理の際、平行状態に配置される。基板110及び陽電極112と拡散板104が平行状態に配置されることにより、基板110に係る電流密度の面内均一性が向上する。なお、陽電極112と拡散板104とは、平行状態に配置されていてもよいし、平行状態に配置されていなくてもよい。陽電極112と陰電極102が平行状態に配置されておらず、陽電極112と陰電極102間の距離が不均一な場合であっても、基板110と拡散板104が平行状態に配置されることにより、基板110に係る電流密度の面内均一性を向上させることができる。さらに、陽極化成槽10の底面または第1電解液の液面に対して、拡散板104が基板110と同じ向きに傾斜していることで、基板110に係る電流密度の面内均一性が向上する。
【0029】
陽極ホルダー11の回転状態の具体例について、
図2を用いて説明する。
図2は、回転状態における陽極ホルダー11の断面及びベース111の上面を示す図である。
【0030】
図2に示すように、陽極ホルダー駆動機構12は、ベース111を、角度θ傾斜させた状態で陽極ホルダー駆動機構12を回転軸として、回転させている。なお、ベース111を角度θ傾斜させることで、基板110及び陽電極112も角度θ傾斜した状態となる。例えば、陽極ホルダー駆動機構12は、ベース111及び基板110を10~100rpmの範囲で回転させる。
【0031】
次に、第1電解液供給システム13について、
図1を用いて説明する。第1電解液供給システム13は、陽極化成槽10に、第1電解液を供給する。第1電解液は、陽極化成処理に用いられる液体である。第1電解液としては、例えば、フッ化水素(HF)を含む液体が用いられる。より具体的には、例えば、第1電解液には、HF溶液と、エタノールまたはIPA(イソプロピルアルコール)との混合液が用いられる。本実施形態の第1電解液供給システム13は、陽極化成槽10と第1電解液供給システム13との間で、第1電解液を循環させるための機能を有する。第1電解液供給システム13は、配管201を介して、陰電極槽101内に濃度調整された第1電解液を供給し、配管202を介して、陽極化成槽10から第1電解液を回収する。なお、第1電解液供給システム13は、第1電解液の循環機能を有していなくてもよい。この場合、配管202は廃され、陽極化成槽10内の第1電解液は、廃液として処理される。
【0032】
第1電解液供給システム13は、原料供給部131、混合槽132、及びポンプ133を含む。
【0033】
原料供給部131は、制御回路18及び濃度調整部14の制御に基づいて、混合槽132に、第1電解液の原料を供給する。原料は、例えば、HF溶液、アルコール、及びDIW(Deionized Water)等であってもよい。なお、原料には、液体以外の材料が用いられてもよい。
【0034】
混合槽132は、配管202を用いて陽極化成槽10から回収した第1電解液に、原料供給部131から供給された原料を混合させ、陽極化成処理に使用可能な第1電解液を生成するための槽である。
【0035】
ポンプ133は、混合槽132で生成された第1電解液を、配管201を介して、陰電極槽101内に圧送する。なお、ポンプ133は、混合槽132内の第1電解液を図示せぬ廃液ラインに送る際にも用いられてもよい。また、廃液ライン用に別のポンプが設けられていてもよい。
【0036】
濃度調整部14は、第1電解液の濃度を調整する。濃度調整部14は、濃度センサ141を含む。濃度センサ141は、配管201に接続される。濃度センサ141は、第1電解液供給システム13から供給された第1電解液のイオン濃度を測定する。濃度調整部14は、濃度センサ141の測定結果を原料供給部131にフィードバックして、原料供給部131における原料の供給量を調整する。これにより、陽極化成槽10に供給される第1電解液の濃度が一定に保たれ、陽極化成処理の副生成物であるH2SiF6等がフィルタリングされる。なお、濃度調整部14は、第1電解液供給システム13内に設けられてもよい。
【0037】
温度調整部15は、第1電解液の温度を調整する。温度調整部15は、温度センサ151を含む。温度センサ151は、配管201に接続され、第1電解液の温度をモニタする。例えば、温度調整部15はチラーまたはヒーターを含み、温度モニタの結果に応じて、第1電解液の冷却及び加熱を行う。これにより、温度調整部15は、陽極化成槽10内の第1電解液の温度を一定に保つ。なお、温度調整部15は、第1電解液供給システム13内に設けられてもよい。
【0038】
第2電解液供給システム16は、陽極ホルダー11内に、第2電解液を供給する。第2電解液は、陽電極112と基板110との間で導通をとるために用いられる。第2電解液には、導電性を有する材料を少なくとも含む液体が用いられる。より具体的には、例えば、導電性を有する材料として、HF、HCl、NaCl、KCl、KOH、H3PO4、及びTMAH(Tetra-Methyl-Ammonium-Hydroxide)の少なくとも1つが含まれていてもよい。
【0039】
本実施形態の第2電解液供給システム16は、陽極ホルダー11と混合槽162との間で、第2電解液を循環させるための機能を有する。第2電解液供給システム16は、配管203を介して、陽極ホルダー11内に濃度調整された第2電解液を供給し、配管204を介して、陽極ホルダー11から第2電解液を回収する。なお、第2電解液供給システム16は、第2電解液の循環機能を有していなくてもよい。この場合、配管204は廃され、陽極ホルダー11内の第2電解液は、廃液として処理される。
【0040】
第2電解液供給システム16は、原料供給部161、混合槽162、及びポンプ163を含む。
【0041】
原料供給部161は、制御回路18の制御に基づいて、混合槽162に、第2電解液の原料を供給する。原料は、HF、HCl、NaCl、KCl、KOH、H3PO4、及びTMAH等の溶液、及びDIW(Deionized Water)等であってもよい。なお、原料には、液体以外の材料が用いられてもよい。
【0042】
混合槽162は、配管204を用いて陽極ホルダー11から回収した第2電解液に、原料供給部161から供給された原料を混合させ、第2電解液を生成するための槽である。
【0043】
ポンプ163は、混合槽162で生成された第2電解液を、配管203を介して、陽極ホルダー11内に圧送する。なお、ポンプ163は、混合槽162内の第2電解液を廃液ラインに送る際にも用いられてもよい。また、廃液ライン用に別のポンプが設けられていてもよい。なお、ポンプ163は、基板110の外周全面がウェハクランプ113のエッジシールに押し当てられるように、第2電解液の供給圧を、第1電解液の供給圧より高くしてもよい。
【0044】
電流源17は、陽電極112及び陰電極102に接続され、陽極化成処理の際に陽電極112に任意の電流を供給する。
【0045】
制御回路18は、陽極化成装置1の全体を制御する。より具体的には、制御回路18は、陽極ホルダー駆動機構12、第1電解液供給システム13、濃度調整部14、温度調整部15、第2電解液供給システム16、及び電流源17を制御する。
【0046】
1.2 陽極化成処理の流れ
次に、陽極化成処理の流れの一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、陽極化成のフローチャートである。
【0047】
図3に示すように、まず、第1電解液供給システム13は、陽極化成槽10への第1電解液の供給を開始する(ステップS1)。
【0048】
基板110の裏面(陽極化成処理をしない面)が陽電極112と対向するように、基板110が陽極ホルダー11にセットされる(ステップS2)。
【0049】
第2電解液供給システム16は、陽極ホルダー11への第2電解液の供給を開始する(ステップS3)。これにより、基板110と陽電極112との間の空間が第2電解液により満たされる。
【0050】
陽極ホルダー駆動機構12は、基板110がセットされ且つ第2電解液が供給された状態の陽極ホルダー11(ベース111)を角度θ傾ける。そして、陽極ホルダー駆動機構12は、陽極化成槽10内の第1電解液に、陽極ホルダー11の少なくとも一部及び基板110を液面に対して角度θ傾斜させて浸漬する(ステップS4)。陽極ホルダー11を傾斜させることにより、浸漬の際の空気(気泡)の巻き込みを抑制できる。なお、第1電解液は、陽極化成槽10と第1電解液供給システム13との間で循環されている。
【0051】
次に、陽極ホルダー駆動機構12は、陽極ホルダー11の回転を開始する(ステップS5)。陽極ホルダー11は液面に対して角度θ傾斜した状態で回転する。また、陽極ホルダーは液面に対して傾斜した状態で回転すれば良く、浸漬時と同じ傾斜角度に限定されない。
【0052】
電流源17は、陽電極112と陰電極102との間に電流を供給する(ステップS6)。電流源17が電流を供給している間、陽極化成処理が実行される。これにより、基板110の表面に多孔質層が形成される。
【0053】
電流源17が電流の供給を停止した後、陽極ホルダー駆動機構12は、陽極ホルダー11の回転を停止する(ステップS7)。
【0054】
次に、陽極ホルダー駆動機構12は、陽極ホルダー11を、陽極化成槽10から取り出す(ステップS8)。
【0055】
第2電解液供給システム16は、陽極ホルダー11への第2電解液の供給を停止する(ステップS9)。
【0056】
基板110が陽極ホルダー11から回収される(ステップS10)。
【0057】
1.3 本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成であれば、基板表面に、面内均一性が優れた多孔質膜を形成できる陽極化成装置を提供できる。本効果につき詳述する。
【0058】
例えば、陽極化成処理の際、電解液中のHFとシリコン基板とが反応すると、電解液中のHF濃度が減少し、水素ガスや、H2SiF6(SiF6
2-イオン)が副生成物として生成される。このため、電解液の組成(イオン濃度)が変化して、基板面内、または基板毎の多孔質層の均一性が悪くなる場合がある。また、陽極化成処理の際に、基板表面に正負の荷電粒子が対を形成して層状に並んだ電界二重層が発生することにより、基板表面へのイオンの供給と、副生成物の排出が滞る場合がある。
【0059】
これに対し、本実施形態に係る構成であれば、陽極化成装置1は、基板110を、第1電解液に対して傾斜させた状態で浸漬させることができる。更に、陽極化成装置1は、基板110を傾斜させた状態で回転させながら陽極化成処理を実行できることができる。これにより、陽極化成装置1は、基板110を第1電解液に浸漬させる際に空気(気泡)の巻き込みを抑制できる。また、陽極化成装置1は、陽極化成処理の際に、基板表面で発生した気体(例えば水素)や副生成物(例えばSiF6
2-)を基板表面から効率よく排出できる。更に、陽極化成装置1は、基板110を回転させることにより、基板表面における第1電解液の流速を増加させ、基板110の表面近傍に形成される電界二重層の厚みを薄くすることができる。従って、陽極化成装置1は、基板表面に供給されるイオンの均一性を向上でき、形成される多孔質層の面内均一性(多孔質層の膜厚均一性及びポーラス度(空孔率)の面内均一性)を向上できる。
【0060】
更に、本実施形態に係る構成であれば、陽極化成装置1は、陽極化成処理の際に、陽電極112と陰電極102との間に、基板110と平行となるように拡散板104を配置できる。これにより、基板110の面内における電流密度の均一性を向上できる。よって、形成される多孔質層の面内均一性を向上できる。
【0061】
更に、本実施形態に係る構成であれば、陽極化成装置1は、第1電解液供給システムを有する。これにより、陽極化成槽10内の第1電解液の濃度を一定に保つことができるので、陽極化成処理中、及び基板毎の第1電解液の濃度の変化を抑制できる。よって、基板110に形成された多孔質層の深さ方向の膜質の均一性、及び基板間の膜質均一性を向上できる。
【0062】
更に、本実施形態に係る構成であれば、陽極化成装置1は、陽電極112と基板110との間に第2電解液を供給できる。これにより、陽電極112と基板110との接触を防止できる。従って、陽電極112による基板110の金属汚染を低減できる。
【0063】
更に、本実施形態に係る構成であれば、陽電極112と基板110との間に第2電解液を供給することにより、陽電極112または基板110の反り等に起因する陽電極112と基板110との間の導通不良を抑制できる。
【0064】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態で説明した陽極化成槽10を複数搭載した陽極化成処理システムの具体例について説明する。
【0065】
2.1 陽極化成処理システムの構成
陽極化成処理システムの一例について、
図4を用いて説明する。
図4は、陽極化成処理システム300の構成を示す平面図である。
【0066】
図4に示すように、陽極化成処理システム300は、プロセスモジュール301、トランスファーモジュール302、ロードポート303、及びロードモジュール304を含む。
【0067】
プロセスモジュール301は、基板110の各種処理を行うためのモジュールである。
図4の例では、例えば、プロセスモジュール301は、3つの陽極化成槽310~312及び2つの洗浄槽313及び314を含む。陽極化成槽310~312は、第1実施形態で説明した陽極化成槽10に相当する。例えば、異なる条件で陽極化成処理が実行できるように陽極化成槽310~312内の第1電解液の組成はそれぞれ異なっていてもよい。洗浄槽313及び314は、陽極化成処理の前洗浄または後洗浄に用いられる。例えば、洗浄槽313及び314は、枚葉式のスピン洗浄装置であってもよい。なお、プロセスモジュール301の構成は、これに限定されない。例えば、陽極化成槽及び洗浄槽とは異なる処理ユニットが搭載されていてもよい。なお、陽極化成槽及び洗浄槽の個数は任意である。
【0068】
トランスファーモジュール302は、プロセスモジュール301内に配置される。トランスファーモジュール302は、ハンドラ320を含む。ハンドラ320は、プロセスモジュール301内の各槽へ基板110を搬送できるように駆動可能に構成されている。
【0069】
ロードポート303は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)330の開閉を行う。ロードポート303上には、FOUP(Front Opening Unified Pod)がセットされる。FOUP330は、基板110搬送用の密閉容器である。FOUP330は、複数の基板110を収納可能である。なお、
図4の例は、ロードポート303が4つ配置されている場合を示しているが、ロードポートの個数は1個以上であればよい。
【0070】
ロードモジュール304は、ハンドラ340を含む。ハンドラ340は、FOUP330とトランスファーモジュール302との間で基板110を搬送できるように駆動可能に構成されている。
【0071】
2.2 本実施形態に係る効果
本実施形態の陽極化成処理システムに、第1実施形態で説明した陽極化成処理装置を適用できる。
【0072】
3.変形例
上記実施形態に係る陽極化成装置は、基板の陽極化成処理が可能な第1処理槽10と、基板を保持可能なホルダー11と、第1処理槽に第1電解液を供給可能な第1電解液供給システム13と、を含む。ホルダーは、基板が第1電解液の液面に対して傾斜した状態で、基板を第1電解液に浸漬させる。基板が第1電解液の液面に対して傾斜した状態で陽極化成処理が実行される。
【0073】
なお、実施形態は上記説明した形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0074】
例えば、基板は、半導体ウェハ、ヘテロジニアスコンピューティング用基板、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用基板、三次元集積回路用半導体ウェハ、生体・医療用基板、光導波路用基板等であってもよい。
【0075】
また、上記実施形態における「接続」とは、他の何かを介在させて間接的に接続されている状態も含む。
【0076】
また、上記実施形態における「概略同じ」または「平行」とは、陽極化成処理を実行するにあって、多孔質層の形成に影響を与えない程度の誤差を含む。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1…陽極化成装置、10…陽極化成槽、11…陽極ホルダー、12…陽極ホルダー駆動機構、13…第1電解液供給システム、14…濃度調整部、15…温度調整部、16…第2電解液供給システム、17…電流源、18…制御回路、101…陰電極槽、102…陰電極、103…フィルタ、104…拡散板、110…基板、111…ベース、112…陽電極、113…ウェハクランプ、131…原料供給部、132…混合槽、133…ポンプ、141…濃度センサ、151…温度センサ、161…原料供給部、162…混合槽、163…ポンプ、201~204…配管、300…陽極化成処理システム、301…プロセスモジュール、302…トランスファーモジュール、303…ロードポート、304…ロードモジュール、310~312…陽極化成槽、313、314…洗浄槽、320、340…ハンドラ