IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本航空電子工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図1
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図2
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図3
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図4
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図5
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図6
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図7
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図8
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図9
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図10
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図11
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図12
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図13
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図14
  • 特許-金型、調整ユニットおよびプレス加工機 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】金型、調整ユニットおよびプレス加工機
(51)【国際特許分類】
   B21D 37/14 20060101AFI20240813BHJP
   B30B 15/06 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
B21D37/14 K
B30B15/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021019764
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122499
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】天口 洋
(72)【発明者】
【氏名】小沼 学
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-167289(JP,A)
【文献】特開2019-076910(JP,A)
【文献】実開平1-080237(JP,U)
【文献】実開平4-098341(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/14
B30B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工される複数の製品を寸法調整するための複数の調整器が前記複数の製品の配列間隔と等しい間隔で第1の方向に配列され且つ前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って挿入されている金型であって、
前記複数の調整器は、それぞれ、前記第2の方向に沿って延びるネジ溝を有し、
前記複数の調整器に対応して前記第1の方向に配列され、それぞれ、前記第2の方向に沿った回転軸の回りに回転可能に配置され、前記第2の方向に沿った一端に対応する調整器の前記ネジ溝にネジ込まれたネジ部を有し、他端に歯車が取り付けられた複数のシャフトと、
前記複数のシャフトに対応して配置され、それぞれ、対応する前記シャフトの前記歯車に噛み合う突起を有し且つ前記突起を前記第1の方向に直線運動させることにより対応する前記シャフトを前記回転軸の回りに回転させる複数の駆動装置と
を備え、
前記複数の駆動装置は、前記第1の方向における前記複数の調整器の配列間隔よりも広い間隔で前記第2の方向に配列され、
それぞれの前記駆動装置が、対応する前記シャフトを前記回転軸の回りに回転させることにより、対応する前記調整器の前記第2の方向に沿った挿入長さが調整されることを特徴とする金型。
【請求項2】
プレス加工される複数の製品を寸法調整するための複数の調整器が前記複数の製品の配列間隔と等しい間隔で第1の方向に配列され且つ前記第1の方向に直交する第2の方向に沿って挿入された金型における前記複数の調整器の挿入長さを調整する調整ユニットであって、
前記複数の調整器は、それぞれ、前記第2の方向に沿って延びるネジ溝を有し、
前記複数の調整器に対応して前記第1の方向に配列され、それぞれ、前記第2の方向に沿った回転軸の回りに回転可能に配置され、前記第2の方向に沿った一端に対応する調整器の前記ネジ溝にネジ込まれたネジ部を有し、他端に歯車が取り付けられた複数のシャフトと、
前記複数のシャフトに対応して配置され、それぞれ、対応する前記シャフトの前記歯車に噛み合う突起を有し且つ前記突起を前記第1の方向に直線運動させることにより対応する前記シャフトを前記回転軸の回りに回転させる複数の駆動装置と
を備え、
前記複数の駆動装置は、前記第1の方向における前記複数の調整器の配列間隔よりも広い間隔で前記第2の方向に配列され、
それぞれの前記駆動装置が、対応する前記シャフトを前記回転軸の回りに回転させることにより、対応する前記調整器の前記第2の方向に沿った挿入長さが調整されることを特徴とする調整ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の金型を用いたプレス加工機であって、
前記金型によりプレス加工された製品の形状を測定する画像検査装置と、
前記画像検査装置により測定された形状と設計形状とのズレに基づいて前記金型の前記複数の駆動装置を制御する制御装置と
を備えることを特徴とするプレス加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金型、調整ユニットおよびプレス加工機に係り、特に、プレス加工される複数の製品を寸法調整するための複数の調整器が挿入されている金型に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、図15に示されるように、プレス加工に用いられる金型が開示されている。金型は、上下方向に延びるダイス1と、ダイス1を保持するリテーナ2と、ダイス1の高さ調整を行う調整機構3を備えている。調整機構3は、ダイス1の頭部に接触するように配置された可動カム4と、可動カム4の傾斜面に接触し且つリテーナ2に固定された固定カム5を有している。可動カム4および固定カム5は、それぞれ傾斜面を有し、傾斜面同士が接触するように配置されている。また、リテーナ2に形成された雌ネジ部に調整ボルト6がねじ込まれており、可動カム4の一方の側面に調整ボルト6の先端部が接触し、可動カム4の他方の側面にスプリング7により押されているプッシュピン8が接触している。
【0003】
調整ボルト6を回転させると、可動カム4が、ダイス1の長さ方向に対して直交する左右方向に移動し、可動カム4と固定カム5の双方の傾斜面に起因してダイス1の高さが調整される。
このようにしてダイス1の高さを調整することにより、プレス加工される製品9の寸法調整を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-87683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダイス1の高さを調整するために、作業者により調整ボルト6の頭部6Aを回転させる必要がある。
特に、コネクタの複数のコンタクトのように狭いピッチで配列されている複数の製品9に対してプレス加工を行う金型においては、複数の製品9に対応して複数のダイス1と複数の調整ボルト6が狭いピッチで配列されている。このため、作業者は、ドライバ等の工具を用いて複数の調整ボルト6をそれぞれ回転させなければならず、複数の製品9の寸法調整の作業に時間と手間がかかるという問題がある。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、プレス加工される複数の製品の寸法調整を容易に行うことができる金型を提供することを目的とする。
また、この発明は、このような金型に用いられる調整ユニットを提供することも目的としている。
さらに、この発明は、このような金型を用いたプレス加工機を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る金型は、プレス加工される複数の製品を寸法調整するための複数の調整器が複数の製品の配列間隔と等しい間隔で第1の方向に配列され且つ第1の方向に直交する第2の方向に沿って挿入されている金型であって、
複数の調整器は、それぞれ、第2の方向に沿って延びるネジ溝を有し、
複数の調整器に対応して第1の方向に配列され、それぞれ、第2の方向に沿った回転軸の回りに回転可能に配置され、第2の方向に沿った一端に対応する調整器のネジ溝にネジ込まれたネジ部を有し、他端に歯車が取り付けられた複数のシャフトと、
複数のシャフトに対応して配置され、それぞれ、対応するシャフトの歯車に噛み合う突起を有し且つ突起を第1の方向に直線運動させることにより対応するシャフトを回転軸の回りに回転させる複数の駆動装置と
を備え、
複数の駆動装置は、第1の方向における複数の調整器の配列間隔よりも広い間隔で第2の方向に配列され、
それぞれの駆動装置が、対応するシャフトを回転軸の回りに回転させることにより、対応する調整器の第2の方向に沿った挿入長さが調整されるものである。
【0008】
この発明に係る調整ユニットは、プレス加工される複数の製品を寸法調整するための複数の調整器が複数の製品の配列間隔と等しい間隔で第1の方向に配列され且つ第1の方向に直交する第2の方向に沿って挿入された金型における複数の調整器の挿入長さを調整する調整ユニットであって、
複数の調整器は、それぞれ、第2の方向に沿って延びるネジ溝を有し、
複数の調整器に対応して第1の方向に配列され、それぞれ、第2の方向に沿った回転軸の回りに回転可能に配置され、第2の方向に沿った一端に対応する調整器のネジ溝にネジ込まれたネジ部を有し、他端に歯車が取り付けられた複数のシャフトと、
複数のシャフトに対応して配置され、それぞれ、対応するシャフトの歯車に噛み合う突起を有し且つ突起を第1の方向に直線運動させることにより対応するシャフトを回転軸の回りに回転させる複数の駆動装置と
を備え、
複数の駆動装置は、第1の方向における複数の調整器の配列間隔よりも広い間隔で第2の方向に配列され、
それぞれの駆動装置が、対応するシャフトを回転軸の回りに回転させることにより、対応する調整器の第2の方向に沿った挿入長さが調整されるものである。
【0009】
この発明に係るプレス加工機は、上記の金型を用いたプレス加工機であって、
金型によりプレス加工された製品の形状を測定する画像検査装置と、
画像検査装置により測定された形状と設計形状とのズレに基づいて金型の複数の駆動装置を制御する制御装置と
を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、複数の調整器に対応して第1の方向に配列された複数のシャフトの一端に配置されたネジ部が対応する調整器のネジ溝にネジ込まれ、複数のシャフトに対応して第2の方向に配列された複数の駆動装置が、対応するシャフトの他端に取り付けられた歯車に噛み合う突起を第1の方向に直線運動させて、対応するシャフトを回転軸の回りに回転させることにより、対応する調整器の第2の方向に沿った挿入長さを調整するので、プレス加工される複数の製品の寸法調整を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る金型を示す斜視図である。
図2】実施の形態1の金型により製品をプレス加工する状態を概略的に示す平面図である。
図3】実施の形態1の金型の金型本体を示す斜視図である。
図4】金型本体に挿入される複数の調整器を示す斜視図である。
図5】調整器とダイスを示す側面図である。
図6】ダイスにより製品の寸法調整を行う例を示す側面図である。
図7】ダイスにより製品の寸法調整を行う他の例を示す平面図である。
図8】ダイスによりポンチングされた連結部を示す側面図である。
図9】実施の形態1の金型における調整ユニットを模式的に示す平面図である。
図10】シャフトが接続された調整器を示す側面図である。
図11】調整器に接続されたシャフトと駆動装置を示す斜視図である。
図12】突起により回転する歯車を示す正面図である。
図13】プレス加工される複数の製品としての複数のコンタクトを示す平面図である。
図14】実施の形態2に係るプレス加工機の構成を示す図である。
図15】従来の金型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、実施の形態1に係る金型11を示す。金型11は、例えば、材料となる金属板に対して複数の工程を含むプレス加工を単一の型内で連続的に実行することによりコネクタの複数のコンタクトを製造する、いわゆる順送型の金型であり、金型本体12と、金型本体12の側部に連結された調整ユニット13とを備えている。
【0013】
図2に示されるように、金型本体12は、材料Mの搬送路Tに沿って等ピッチで区画された複数の領域R1~R3を有している。領域R1において、材料Mとなる金属板から、コンタクトとなる複数の製品Wを打ち抜く抜き工程が行われ、隣接する領域R2において、複数の製品Wにそれぞれ所望の曲げ加工を加える曲げ工程が行われ、さらに領域R3において、複数の製品Wを寸法調整する調整工程が行われる。
調整ユニット13は、金型本体12の調整工程が行われる領域R3における搬送路Tの側方に配置されている。
【0014】
ここで、便宜上、搬送路Tに沿って材料Mが搬送される方向を+Y方向、材料Mとなる金属板の表面上において搬送路Tに直交する方向をX方向、Y方向およびX方向に直交し且つ材料Mとなる金属板の表面に対して垂直な方向をZ方向と呼ぶものとする。
調整ユニット13は、金型本体12の+Y方向端部における+X方向側に配置されている。
【0015】
図3は、金型11から調整ユニット13を外して金型本体12のみを示す斜視図である。金型本体12は、複数の調整器14を利用して複数の製品Wの寸法調整を行うタイプの既存の金型と変わりがなく、金型本体12の+Y方向端部における+X方向側に複数の調整器14が挿入されている。
複数の調整器14は、金型本体12の領域R2において曲げ加工が加えられた複数の製品Wを、領域R3の調整工程で寸法調整するためのものであり、複数の製品Wに対応して配置され、図4に示されるように、Y方向における複数の製品Wの配列間隔と等しい間隔でY方向(第1の方向)に配列されている。
【0016】
それぞれの調整器14は、XZ面に沿って延びるL字形状の板状部材であり、-X方向に向かって延びる伸長部14Aと、伸長部14Aの+X方向端部から+Z方向に立ち上がる頭部14Bを有している。伸長部14Aの-X方向端部には、X方向に対して傾斜し且つ+Z方向を向いた傾斜面14Cが形成されている。また、頭部14Bには、X方向に沿って延びるネジ溝14Dが形成されている。
複数の調整器14は、それぞれ、伸長部14AがX方向(第2の方向)に沿ってスライド可能に金型本体12の図示しない挿入孔に挿入されている。
【0017】
調整工程が行われる金型本体12の領域R3の内部には、複数の製品Wおよび複数の調整器14に対応して、複数のダイス15が、それぞれ、Z方向に沿ってスライド可能に配置されている。図5に示されるように、それぞれのダイス15の-Z方向端部は、対応する調整器14の傾斜面14Cに接触しており、金型本体12に対して調整器14のX方向に沿った挿入長さを変化させることにより、調整器14の傾斜面14Cの上に位置しているダイス15のZ方向の高さが調整されるように構成されている。
【0018】
ダイス15は、金型本体12における調整工程時に製品Wに接触するものであり、ダイス15として、製品Wに対して行われる寸法調整の種別に応じて各種のものがある。例えば、図6に示されるように、製品Wの中間部をダイス15Aにより+Z方向に押しつけることで、製品Wの曲げ高さを調整することができる。また、図7に示されるように、製品Wに連結されている連結部Kの+Y方向側部分または-Y方向側部分をダイス15Bによりポンチングすることで、連結部KがY方向に曲がり、連結部Kの+X方向端部に連結されている製品WのY方向の位置を調整することができる。このとき、図8に示されるように、連結部Kに対するダイス15Bの食い込み量Dに応じた位置調整が行われる。
【0019】
図9は、調整ユニット13を模式的に示す平面図である。調整ユニット13は、複数の調整器14に対応して配置された複数のシャフト16と、複数のシャフト16に対応して配置された複数の駆動装置17を備えている。
複数のシャフト16は、複数の調整器14に対応してY方向に配列され、複数の調整器14の+X方向端部に接続されている。それぞれのシャフト16は、X方向に沿った回転軸Cの回りに回転可能に配置されており、Y方向に沿って延びるシャフト本体16Aを有している。シャフト本体16Aの+X方向端部には、歯車16Bが取り付けられている。
【0020】
Y方向に配列された複数のシャフト16のうち、配列の中央部に位置するシャフト16が最も長く、配列の+Y方向側および-Y方向側に向かうシャフト16ほど、短い長さを有している。このようなシャフト16の+X方向端部に歯車16Bが配置されているため、複数のシャフト16の+X方向端部に配置されている複数の歯車16Bは、Y方向の中央部に位置する歯車16Bが最も+X方向側に配置され、この歯車16Bから+Y方向側および-Y方向側に向かう位置の歯車16Bほど、相対的に-X方向側に配置されている。すなわち、複数の歯車16Bは、Z方向から見て、V字形状に配置され、互いに隣接する歯車16BのX方向位置が互いに異なるように構成されている。
【0021】
複数の駆動装置17は、複数のシャフト16の+Y方向側および-Y方向側の双方においてそれぞれX方向に配列されている。ここで、X方向における複数の駆動装置17の配列間隔P2は、Y方向における複数の調整器14の配列間隔P1よりも広い間隔に設定されている。
それぞれの駆動装置17は、対応するシャフト16の歯車16Bを介して、対応するシャフト16をX方向に沿った回転軸Cの回りに回転させるためのものである。
【0022】
図10に示されるように、シャフト本体16Aの-X方向端部には、X方向に沿って延びるネジ部16Cが配置されており、ネジ部16Cが対応する調整器14のネジ溝14Dにネジ込まれている。このため、シャフト本体16Aを回転軸Cの回りに回転させることにより、調整器14は、ネジ溝14Dと共にX方向に沿ってスライドするように構成されている。
【0023】
図11に示されるように、それぞれの駆動装置17は、対応するシャフト16の歯車16Bの+Z方向側に配置されており、YZ面に沿って延びる形状を有している。
駆動装置17は、シャフト16の歯車16Bに噛み合う後述の突起を有している。
駆動装置17は、対応するシャフト16の歯車16Bに対してZ方向(第3の方向)に配置されている。
【0024】
駆動装置17の-Z方向に突出する突起21Uは、歯車16Bの複数の歯のうち、+Z方向側に位置する歯に噛み合うZ方向高さに配置されているため、駆動装置17を駆動させると、図12に示されるように、突起21UがY方向に直線運動して歯車16Bの歯に噛み合い、歯車16Bは回転する。
【0025】
このようにして、駆動装置17を駆動することで、突起21UがY方向に直線運動して、歯車16Bが回転し、歯車16Bが取り付けられているシャフト本体16Aのネジ部16Cが回転軸Cの回りに回転する。ネジ部16Cは、対応する調整器14のネジ溝14Dにネジ込まれているため、調整器14は、ネジ部16Cの回転に伴ってX方向にスライド動作し、金型本体12に対する挿入長さが変化する。
【0026】
駆動装置17を制御することで、調整器14の挿入長さを所望の調整量だけ調整することができる。その結果、調整器14の傾斜面14Cの上に位置しているダイス15のZ方向の高さが調整され、金型本体12により、対応する製品Wの寸法調整を行うことが可能となる。
【0027】
さらに、複数の調整器14に接続された複数のシャフト16に対応して複数の駆動装置17が配置されているため、それぞれの駆動装置17を選択的に駆動することにより、金型本体12に対する複数の調整器14の挿入長さをそれぞれ変化させて、プレス加工される複数の製品Wの寸法調整を容易に行うことができる。
また、複数の駆動装置17を駆動して、複数のシャフト16を同時に回転させることもでき、これにより、複数の製品Wに対する寸法調整の作業時間を短縮することができる。
【0028】
プレス加工される複数の製品Wとしては、例えば、図13に示されるような、コネクタ用の複数のコンタクトを用いることができ、実施の形態1に係る金型11を用いることで、Y方向に配列されている複数のコンタクトに対して、それぞれ、曲げ高さの調整、Y方向の位置調整等の寸法調整が容易に行われる。
【0029】
なお、それぞれの調整器14に接続されたシャフト16を回転軸Cの回りに回転させるためには、駆動装置17の代わりにモータを利用することもできる。
ただし、図13に示される複数のコンタクトのように、Y方向に狭い間隔で配列されている複数の製品Wをプレス加工する場合には、複数の製品Wの配列間隔と等しい間隔でY方向に配列された複数の調整器14にそれぞれシャフト16が接続されるため、複数のシャフト16の配列間隔も狭くなる。従って、複数のシャフト16をそれぞれ回転させるための複数のモータを配置するスペースを確保することが困難になる。また、調整器14に接続されたシャフト16を回転させるには、所定の回転トルクを要するので、モータを利用する場合には、減速機が必要となり、さらに配置スペースを確保しなければならなくなる。
【0030】
これに対して、上述した実施の形態1における駆動装置17は、突起21UをY方向に直線運動させ、歯車16Bにより突起21Uの直線運動を回転軸Cの回りの回転運動に変換して、シャフト16を回転させる。このため、図9に示されるように、互いに隣接する歯車16BのX方向位置が互いに異なるように複数の歯車16Bを配置することにより、Y方向における複数の調整器14の配列間隔P1に関わりなく、複数の駆動装置17を複数のシャフト16のY方向側においてX方向に配列することができる。
【0031】
さらに、X方向における複数の駆動装置17の配列間隔P2を、Y方向における複数の調整器14の配列間隔P1よりも広い間隔に設定することで、それぞれの駆動装置17のX方向における厚さ寸法に関わりなく、また、互いに隣接する駆動装置17を干渉させることなく、複数の駆動装置17を配置することができる。
【0032】
なお、歯車16Bとして、X方向に長い幅広の歯車を使用すれば、互いに隣接する歯車16BのX方向位置が互いに異なっていなくても、複数の駆動装置17を複数のシャフト16のY方向側においてX方向に配列することが可能となる。
上記の実施の形態1では、複数の駆動装置17が、複数のシャフト16の+Y方向側および-Y方向側の双方においてそれぞれX方向に配列されているが、これに限るものではなく、複数の駆動装置17を、複数のシャフト16の+Y方向側および-Y方向側の一方においてX方向に配列することもできる。
【0033】
また、駆動装置17として、リニアモータを用いて突起を+X方向および-X方向に直線運動させることもできるが、これに限るものではなく、ソレノイドのような単純な駆動装置を用いて突起を直線運動させることもできる。
金型本体12は、複数の工程を単一の型内で連続的に実行する、いわゆる順送型の金型であるが、これに限るものではなく、調整工程のみを行う、いわゆる単発型の金型にこの発明を適用することもできる。
【0034】
実施の形態2
図14に、実施の形態2に係るプレス加工機31の構成を示す。プレス加工機31は、図1に示される実施の形態1の金型11と、製品Wの形状を測定する画像検査装置32と、金型11および画像検査装置32に接続された制御装置33とを備えている。
画像検査装置32は、金型11の金型本体12によりプレス加工された製品Wの画像を取得し、取得された画像を解析することにより製品Wの形状を測定する。
制御装置33には、材料Mとなる金属板からプレス加工により製品Wを製造する際の設計形状(図面規格)が予め保存されており、制御装置33は、金型本体12により実際にプレス加工されて画像検査装置32により測定された製品Wの形状と、保存されている製品Wの設計形状とのズレに基づいて金型11の調整ユニット13に内蔵されている複数の駆動装置17を制御する。
【0035】
材料Mとなる金属板は、搬送路Tに沿って搬送され、金型本体12の領域R1において、金属板からコンタクトとなる複数の製品Wが打ち抜かれ、隣接する領域R2において、複数の製品Wにそれぞれ曲げ加工が加えられる。さらに、複数の製品Wは、金型本体12の領域R3において、寸法調整が行われる。
搬送路Tに沿って金型本体12から排出された複数の製品Wは、画像検査装置32により撮像され、取得された画像に基づいて複数の製品Wの形状がそれぞれ測定される。
【0036】
画像検査装置32により測定された複数の製品Wの形状は、画像検査装置32から制御装置33に伝送される。制御装置33は、画像検査装置32により測定された複数の製品Wの形状を、保存されている複数の製品Wの設計形状と比較し、両者のズレ量を算出し、ズレ量に応じた修正が行われるように調整ユニット13の複数の駆動装置17を制御する。
【0037】
具体的には、複数の駆動装置17のそれぞれが、算出されたズレ量に応じて駆動され、金型本体12に対する複数の調整器14の挿入長さが調整され、これに伴って、それぞれの調整器14の傾斜面14Cの上に位置しているダイス15のZ方向の高さが調整され、金型本体12により、複数の製品Wの寸法調整を行うことが可能となる。
【0038】
このように、実施の形態2に係るプレス加工機31においては、作業者が、調整ユニット13の複数の駆動装置17をそれぞれ駆動させることなく、自動的に複数の製品Wの寸法調整を行うことができる。
また、調整ユニット13においては、図9に示されるように、Y方向における複数の調整器14の配列間隔P1に関わりなく、複数の駆動装置17を複数のシャフト16のY方向側においてX方向に配列することができるので、複数の調整器14の配列間隔P1が狭い場合であっても、複数の製品Wの寸法調整を自動化することが可能となる。
【0039】
実施の形態2に係るプレス加工機31によれば、自動的に複数の製品Wの寸法調整が行われるため、設計形状の製品Wが得られるまで試行錯誤により試しのプレス加工を繰り返す場合に比べて、試しにプレス加工されて破棄されるサンプル数の削減、製品Wの寸法安定化、製品Wの生産稼働率の向上を図ることが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施の形態1および2では、プレス加工される複数の製品Wとして、図13に示されるような、コネクタ用の複数のコンタクトを示しているが、コンタクトに限るものではなく、各種の製品をプレス加工する金型およびプレス加工機にこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ダイス、2 リテーナ、3 調整機構、4 可動カム、5 固定カム、6 調整ボルト、6A 頭部、7 スプリング、8 プッシュピン、9 製品、11 金型、12 金型本体、13 調整ユニット、14 調整器、14A 伸長部、14B 頭部、14C 傾斜面、14D ネジ溝、15,15A,15B ダイス、16 シャフト、16A シャフト本体、16B 歯車、16C ネジ部、17 駆動装置、21U 突起、31 プレス加工機、32 画像検査装置、33 制御装置、M 材料、T 搬送路、R1~R3 領域、W 製品、K 連結部、D 食い込み量、C 回転軸、P1,P2 配列間隔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15