(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】タービンハウジングおよびターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20240813BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B39/00 S
F02B39/00 T
F02B39/00 U
F01D25/24 E
(21)【出願番号】P 2021056837
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡 信仁
(72)【発明者】
【氏名】金子 大地
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 歩
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/174533(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/109933(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/127531(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
F01D 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンホイールを収容するためのタービンハウジングであって、
排ガスを導入するための排ガス導入口が形成された筒状の排ガス導入部と、
前記排ガス導入部に少なくとも一部が収容される入口スリーブと、
前記排ガス導入部と一体的に形成され、渦状空間が内部に形成されたスクロール部と、
前記スクロール部に少なくとも一部が収容される板金製の内側スクロール部材と、
を備え、
前記入口スリーブは、周方向に分割された板金製の複数の分割体が組み合わされることで構成され、
前記入口スリーブの下流側端部は、前記内側スクロール部材の内面側に挿入され
、
前記複数の分割体の夫々は、
第1円弧面を含む第1円弧部と、
前記第1円弧面よりも下流側に位置するとともに、前記入口スリーブの中心線からの距離が前記第1円弧面よりも短い第2円弧面を含む第2円弧部と、
前記第1円弧面と前記第2円弧面とを繋ぐ傾斜面であって、前記下流側に向かうにつれて前記中心線からの距離が短くなるように傾斜する傾斜面を含む接続部と、を周方向における少なくとも一部に有する、
タービンハウジング。
【請求項2】
タービンホイールを収容するためのタービンハウジングであって、
排ガスを導入するための排ガス導入口が形成された筒状の排ガス導入部と、
前記排ガス導入部に少なくとも一部が収容される入口スリーブと、を備え、
前記入口スリーブは、周方向に分割された板金製の複数の分割体が組み合わされることで構成され、
前記複数の分割体の夫々は、
第1円弧面を含む第1円弧部と、
前記第1円弧面よりも下流側に位置するとともに、前記入口スリーブの中心線からの距離が前記第1円弧面よりも短い第2円弧面を含む第2円弧部と、
前記第1円弧面と前記第2円弧面とを繋ぐ傾斜面であって、前記下流側に向かうにつれて前記中心線からの距離が短くなるように傾斜する傾斜面を含む接続部と、を周方向における少なくとも一部に有し、
前記複数の分割体の夫々は、
前記第1円弧面の上流縁から下流縁までの距離が、周方向に沿って連続的に変化するように構成された、
タービンハウジング。
【請求項3】
前記複数の分割体は、
前記タービンホイールの軸線に直交する方向に延在し、且つ、前記排ガス導入口の中心を通過する平面、に対して一方側に前記第1円弧面および前記第2円弧面の最深部が位置する第1の分割体と、
前記平面の他方側に前記第1円弧面および前記第2円弧面の最深部が位置する第2の分割体と、を含む、
請求項
1又は2に記載のタービンハウジング。
【請求項4】
タービンホイールを収容するためのタービンハウジングであって、
排ガスを導入するための排ガス導入口が形成された筒状の排ガス導入部と、
前記排ガス導入部に少なくとも一部が収容される入口スリーブと、を備え、
前記入口スリーブは、周方向に分割された板金製の複数の分割体が組み合わされることで構成され、
前記複数の分割体の夫々は、
第1円弧面を含む第1円弧部と、
前記第1円弧面よりも下流側に位置するとともに、前記入口スリーブの中心線からの距離が前記第1円弧面よりも短い第2円弧面を含む第2円弧部と、
前記第1円弧面と前記第2円弧面とを繋ぐ傾斜面であって、前記下流側に向かうにつれて前記中心線からの距離が短くなるように傾斜する傾斜面を含む接続部と、を周方向における少なくとも一部に有し、
前記複数の分割体は、
前記タービンホイールの軸線に直交する方向に延在し、且つ、前記排ガス導入口の中心を通過する平面、に対して一方側に前記第1円弧面および前記第2円弧面の最深部が位置する第1の分割体と、
前記平面の他方側に前記第1円弧面および前記第2円弧面の最深部が位置する第2の分割体と、を含み、
前記第1の分割体および前記第2の分割体の夫々は、
前記タービンホイールの前記軸線に沿って一方側から視認した平面視において、前記第1円弧面の上流縁から下流縁までの距離が、前記第1円弧面の外周縁から内周縁に亘って連続的に短くなるように構成された、
タービンハウジング。
【請求項5】
タービンホイールを収容するためのタービンハウジングであって、
排ガスを導入するための排ガス導入口が形成された筒状の排ガス導入部と、
前記排ガス導入部に少なくとも一部が収容される入口スリーブと、を備え、
前記入口スリーブは、周方向に分割された板金製の複数の分割体が組み合わされることで構成され、
前記複数の分割体の夫々は、
第1円弧面を含む第1円弧部と、
前記第1円弧面よりも下流側に位置するとともに、前記入口スリーブの中心線からの距離が前記第1円弧面よりも短い第2円弧面を含む第2円弧部と、
前記第1円弧面と前記第2円弧面とを繋ぐ傾斜面であって、前記下流側に向かうにつれて前記中心線からの距離が短くなるように傾斜する傾斜面を含む接続部と、を周方向における少なくとも一部に有し、
前記複数の分割体は、
前記タービンホイールの軸線に直交する方向に延在し、且つ、前記排ガス導入口の中心を通過する平面、に対して一方側に前記第1円弧面および前記第2円弧面の最深部が位置する第1の分割体と、
前記平面の他方側に前記第1円弧面および前記第2円弧面の最深部が位置する第2の分割体と、を含み、
前記第1の分割体は、
前記第1の分割体の前記第1円弧部を周方向の少なくとも一部に含む第1部位の周端部から外側に突出する第1鍔部と、
前記第2の分割体に向かって前記第1鍔部の先端から突出する第1凸部と、を含み、
前記第2の分割体は、
前記第2の分割体の前記第1円弧部を周方向の少なくとも一部に含む第1部位の周端部から外側に突出して前記第1鍔部に当接する第2鍔部と、
前記第2鍔部の先端から前記第1の分割体から離隔する方向に突出して前記第1凸部に収容される第2凸部と、を含む、
タービンハウジング。
【請求項6】
請求項1乃至
5の何れか1項に記載のタービンハウジングを備えるターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンハウジングおよび該タービンハウジングを備えるターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに用いられるエンジンには、エンジンの出力や燃費を向上させるためのターボチャージャが搭載されることがある。ターボチャージャは、エンジンから排出される排ガスが有するエネルギーによりタービンホイールを回転させることで、タービンホイールに機械的に連結されたコンプレッサのインペラを回転させる。ターボチャージャは、インペラの回転により、気体(例えば、空気)を圧縮してエンジンに送り込むようになっている。
【0003】
ターボチャージャは、タービンホイールを収容するためのタービンハウジングを備える。タービンハウジングは、一般的には鋳造により製造されているため、鋳型内での湯流れを考慮して肉厚が厚く、熱容量が大きくなっている。近年、タービンハウジングの軽量化や熱容量低減を図るために、薄く平らに形成された金属板から板金加工することで製作される板金製のインナーハウジングが提案されている。
【0004】
特許文献1には、タービンハウジングの外殻を構成する鋳造製のアウターハウジングと、アウターハウジングの内部に排ガスを導入するための入口部の内部に一部が収容される筒状の環状体と、が開示されている。上記筒状の環状体は、板金製であり、金属板に機械的加工を施すことによりその形状が形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような筒状の環状体(入口スリーブ)を、板金加工によりその形状を形成する場合には、ヘラ絞りのような容易ではない加工が必要となるため、筒状の環状体の製造コストの高額化を招く虞がある。なお、上記筒状の環状体を切削加工によりその形状を形成する場合には、切りくずが生じるため、材料コストの高額化を招く虞がある。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、入口スリーブの製造を容易なものにすることで、入口スリーブの製造コストを低減できるタービンハウジング、該タービンハウジングを備えるターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングは、
タービンホイールを収容するためのタービンハウジングであって、
排ガスを導入するための排ガス導入口が形成された筒状の排ガス導入部と、
前記排ガス導入部に少なくとも一部が収容される入口スリーブと、を備え、
前記入口スリーブは、周方向に分割された板金製の複数の分割体が組み合わされることで構成された。
【0009】
本開示の一実施形態にかかるターボチャージャは、前記タービンハウジングを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、入口スリーブの製造を容易なものにすることで、入口スリーブの製造コストを低減できるタービンハウジング、該タービンハウジングを備えるターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングを備えるターボチャージャの構成を概略的に示す概略図である。
【
図2】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの概略断面図である。
【
図3】
図2に示される入口スリーブのA-B線矢視の断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図4】
図2に示される入口スリーブのC-D線矢視の断面を概略的に示す概略断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態における分割体のスプリングバックを説明するための説明図である。
【
図6】本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの概略断面図である。
【
図7】
図6に示される入口スリーブのE-F線矢視の断面を概略的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0013】
(ターボチャージャ)
図1は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングを備えるターボチャージャの構成を概略的に示す概略図である。
図1に示されるように、幾つかの実施形態にかかるタービンハウジング2は、ターボチャージャ1に搭載される。ターボチャージャ1は、
図1に示されるように、タービンホイール3と、インペラ11と、タービンホイール3およびインペラ11の夫々に連結された回転シャフト12と、タービンホイール3を回転可能に収容するように構成された上記タービンハウジング2と、インペラ11を回転可能に収容するように構成されたコンプレッサハウジング13と、を備える。換言すると、ターボチャージャ1は、タービンホイール3およびタービンハウジング2を有するタービン10Aと、インペラ11およびコンプレッサハウジング13を有するコンプレッサ10Bと、を含む。
【0014】
図示される実施形態では、ターボチャージャ1は、回転シャフト12を回転可能に支持する軸受14と、軸受14を収容するように構成された軸受ハウジング15と、をさらに備える。回転シャフト12は、その長手方向の一方側がタービンホイール3に連結され、その長手方向の他方側がインペラ11に連結されている。回転シャフト12は、その長手方向におけるタービンホイール3とインペラ11との間において、軸受14に回転可能に支持されている。軸受14は、軸受ハウジング15に支持されている。軸受ハウジング15は、タービンハウジング2とコンプレッサハウジング13との間に配置され、タービンハウジング2およびコンプレッサハウジング13の夫々に、例えばボルトやVクランプなどの不図示の締結部材により連結されている。
【0015】
図示される実施形態では、タービンホイール3は、内燃機関(図示例では、エンジン)16から排出される排ガスを送るための排ガス排出ライン17に設けられる。タービンハウジング2には、その内部に排ガスを導入するための排ガス導入口21と、タービンホイール3を通過した排ガスを外部に排出するための排ガス排出口22と、が形成されている。
【0016】
以下、例えば
図1に示されるように、タービンホイール3の軸線LAが延在する方向を軸線方向Xとし、軸線方向Xに垂直な方向を径方向Yとする。軸線方向Xのうち、タービンホイール3に対して排ガス排出口22が位置する側を前方側XFとし、前方側XFとは反対側、すなわち、排ガス排出口22に対してタービンホイール3が位置する側を後方側XRとする。
【0017】
図示される実施形態では、排ガス導入口21は、軸線方向Xに対して交差(例えば、直交)する方向に向かって開口している。排ガス排出口22は、軸線方向Xの前方側XFに向かって開口している。
【0018】
図示される実施形態では、インペラ11は、内燃機関16において燃焼に供される気体(燃焼用気体、図示例では、空気)を、内燃機関16に供給するための気体供給ライン18に設けられる。コンプレッサハウジング13には、その内部に燃焼用気体を導入するための気体導入口131と、インペラ11を通過した燃焼用気体を外部に排出するための気体排出口132と、が形成されている。インペラ11は、軸線方向Xにおいてタービンホイール3よりも後方側XRに位置している。気体導入口131は、インペラ11よりも後方側XRに位置し、且つ軸線方向Xの後方側XRに向かって開口している。気体排出口132は、軸線方向Xに対して交差(例えば、直交)する方向に向かって開口している。
【0019】
内燃機関16から排出された排ガスは、排ガス導入口21を通じてタービンハウジング2の内部に導入される。タービンハウジング2の内部に導入された排ガスは、タービンホイール3に導かれる。ターボチャージャ1のタービン10Aは、タービンホイール3に導かれた排ガスのエネルギーにより、タービンホイール3を回転させるように構成されている。インペラ11は、回転シャフト12を介してタービンホイール3に連結されているため、タービンホイール3の回転に連動して回転する。ターボチャージャ1のコンプレッサ10Bは、インペラ11の回転により、気体導入口131を通じてコンプレッサハウジング13の内部に導入された気体を圧縮し、気体排出口132を通じて内燃機関16に圧縮気体を送るように構成されている。内燃機関16に送られた圧縮気体は、燃料とともに燃焼し、排ガスを発生させる。また、タービンホイール3を通過した排ガスは、排ガス排出口22を通じてタービンハウジング2の外部に排出される。
【0020】
(タービンハウジング)
図2は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの概略断面図である。
図2では、タービンホイールの軸線に沿って一方側(前方側XF)から視認した断面を概略的に示している。
タービンハウジング2は、
図2に示されるように、排ガスを導入するための排ガス導入口21が形成された筒状の排ガス導入部23と、排ガス導入部23に少なくとも一部が収容される入口スリーブ4と、を備える。以下の「上流」、「下流」は、タービンハウジング2の内部を流れる排ガスの流れ方向を基準としている。
【0021】
(排ガス導入部)
排ガス導入部23は、
図2に示されるように、その長手方向、すなわち入口スリーブ4の中心線CLの延在方向、に沿って夫々が延在する外面231および内面232を有する筒状に形成されている。排ガス導入部23は、内面232により排ガス導入部23の内部に入口スリーブ4を収容するための収容空間24が画定される。
【0022】
図示される実施形態では、排ガス導入部23は、鋳造によりその形状が形成される鋳物からなる。排ガス導入部23は、その上流側端部233に中心線CLに交差(図示例では、直交)する方向に沿って突出するフランジ部234を有する。フランジ部234は、中心線CLに交差(図示例では、直交)する方向に沿って延在する端面235を含む。端面235には、上述した排ガス導入口21が形成されている。
【0023】
排ガス導入部23のフランジ部234は、内燃機関16における排ガスを排出するための排出部161(図示例では、排気管)に、締結部材19により連結されている。図示される実施形態では、締結部材19は、フランジ部234と排出部161を締結するボルト19Aを含んでいる。なお、締結部材19は、フランジ部234と排出部161を外周側から挟持することで、フランジ部234と排出部161を連結するVクランプなどを含むようにしてもよい。
【0024】
(入口スリーブ)
入口スリーブ4は、
図2に示されるように、入口スリーブ4の中心線CLの延在方向に沿って夫々が延在する外面41および内面42を有する筒状の本体部43を有する。入口スリーブ4は、内面42により入口スリーブ4の内部に排ガスを送るための排ガス流路44が画定される。筒状の本体部43は、少なくとも一部が排ガス導入部23の収容空間24に収容される。排ガス導入部23の内面232と入口スリーブ4の外面41との間には、第1の断熱空間24Aが形成される。換言すると、入口スリーブ4は、外面41が第1の断熱空間24Aに面し、内面42が排ガス流路44に面している。
【0025】
図示される実施形態では、入口スリーブ4は、
図2に示されるように、本体部43の上流側端部431に中心線CLに交差(図示例では、直交)する方向に沿って突出するフランジ部45を有する。入口スリーブ4は、フランジ部45が排ガス導入部23のフランジ部234と内燃機関16の排出部161との間に挟持されることで、排ガス導入部23や内燃機関16に支持される。排ガス流路44は、内燃機関16の排出部161における排ガスを排出するための排ガス排出路162に連通している。排ガス流路44には、排ガス排出路162を通じて内燃機関16から排出された排ガスが送られる。
【0026】
第1の断熱空間24Aは、排ガス流路44を流れる排ガスの熱エネルギーが、入口スリーブ4から排ガス導入部23に伝達されるのを抑制するために設けられている。
【0027】
(第1の断熱材)
図示される実施形態では、タービンハウジング2は、
図2に示されるように、第1の断熱空間24Aに配置される第1の断熱材25をさらに備える。第1の断熱材25は、中心線CL周りの周方向に沿って延在している。
図2に示される実施形態では、第1の断熱材25は、入口スリーブ4の外面41に全周に亘り巻かれている。或る実施形態では、第1の断熱材25は、セラミックファイバー等の繊維系の断熱材を含む。かかる構成によれば、繊維系の断熱材が内部に空気を含むため、タービンハウジング2の重量の増大を抑制しつつ入口スリーブ4からの輻射熱を効果的に断熱することができる。
【0028】
(スクロール部、内側スクロール部材)
図示される実施形態では、タービンハウジング2は、
図2に示されるように、渦状空間27が内部に形成されたスクロール部26と、スクロール部26に少なくとも一部が収容される板金製の内側スクロール部材28と、をさらに備える。換言すると、タービンハウジング2は、タービンハウジング2の外殻を構成するアウターハウジング(排ガス導入部23およびスクロール部26)と、アウターハウジングの内部に配置されるインナーハウジング(入口スリーブ4および内側スクロール部材28)と、を備える。
【0029】
スクロール部26は、タービンホイール3を収容している。スクロール部26は、渦状空間27を形成する内面261を有する。渦状空間27は、タービンホイール3の軸線LA周りの周方向に沿って延在している。渦状空間27は、上述した収容空間24に連通している。
【0030】
図示される実施形態では、アウターハウジング(排ガス導入部23およびスクロール部26)は、鋳造によりその形状が形成される鋳物からなる。スクロール部26は、鋳造により排ガス導入部23と一体的に形成されている。或る実施形態では、排ガス導入部23およびスクロール部26の夫々は、鋳鉄やステンレス鋳鋼などの金属を材料として形成されている。
【0031】
内側スクロール部材28は、外面281と内面282とを有し、スクロール部26の渦状空間27の内部に配置されている。内側スクロール部材28は、内面282により内側スクロール部材28の内部に上述した排ガス流路44から流入した排ガスが流れる渦状流路29が画定される。渦状流路29は、排ガスをタービンホイール3に導くための流路であり、タービンホイール3の軸線LA周りの周方向に沿って延在している。内側スクロール部材28は、薄い板状部材を板金加工することによりその形状が形成される。或る実施形態では、内側スクロール部材28は、オーステナイト系ステンレス鋼などの耐熱鋼(金属)を材料とする薄い板状部材を板金加工することにより形成される。
【0032】
内側スクロール部材28は、少なくとも一部がスクロール部26の渦状空間27に収容される。スクロール部26の内面261と内側スクロール部材28の外面281との間には、第2の断熱空間27Aが形成される。換言すると、内側スクロール部材28は、外面281が第2の断熱空間27Aに面し、内面282が渦状流路29に面している。
【0033】
図示される実施形態では、入口スリーブ4は、本体部43の下流側端部432が内側スクロール部材28の内面282に挿入されている。渦状流路29が排ガス流路44の下流側に繋がり、第2の断熱空間27Aが第1の断熱空間24Aの下流側に繋がっている。タービンハウジング2の内部に導入された排ガスは、排ガス流路44および渦状流路29を流れた後に、タービンホイール3に導かれる。
【0034】
第2の断熱空間27Aは、渦状流路29を流れる排ガスの熱エネルギーが、内側スクロール部材28からスクロール部26に伝達されるのを抑制するために設けられている。
【0035】
(第2の断熱材)
図示される実施形態では、タービンハウジング2は、
図2に示されるように、第2の断熱空間27Aに配置される第2の断熱材30をさらに備える。第2の断熱材30は、内側スクロール部材28周りの周方向に沿って延在している。
図2に示される実施形態では、第2の断熱材30は、内側スクロール部材28の外面281に全周に亘り巻かれている。或る実施形態では、第2の断熱材30は、セラミックファイバー等の繊維系の断熱材を含む。かかる構成によれば、繊維系の断熱材が内部に空気を含むため、タービンハウジング2の重量の増大を抑制しつつスクロール部26からの輻射熱を効果的に断熱することができる。
【0036】
図3は、
図2に示される入口スリーブのA-B線矢視の断面を概略的に示す概略断面図である。
図3では、入口スリーブ4の中心線CLに直交する断面を中心線CLの延在方向における下流側から視た状態が概略的に示されている。
幾つかの実施形態にかかるタービンハウジング2は、
図2に示されるように、上述した筒状の排ガス導入部23と、排ガス導入部23に少なくとも一部が収容される上述した入口スリーブ4と、を備える。入口スリーブ4は、
図3に示されるように、周方向に分割された板金製の複数の分割体5が組み合わされることで構成されている。
【0037】
複数の分割体5の夫々は、
図3に示されるような入口スリーブ4の中心線CLに直交する断面において、中心線CL周りの周方向に沿って夫々が延在する外面51および内面52を有する円弧状の本体形成部53を有する。
【0038】
入口スリーブ4は、複数の分割体5を夫々の内面52同士が対向するように配置し、複数の分割体5の夫々の本体形成部53の周端面54同士を当接させることにより、その形状が形成される。すなわち、入口スリーブ4の外面41は、互いに組み合わされた複数の分割体5の夫々の外面51を含み、入口スリーブ4の内面42は、互いに組み合わされた複数の分割体5の夫々の内面52を含む。互いに組み合わされた複数の分割体5の夫々の内面52により、上述した排ガス流路44が形成される。複数の分割体5の夫々の外面51が上述した第1の断熱空間24Aに面し、複数の分割体5の夫々の内面52が上述した排ガス流路44に面している。
【0039】
図示される実施形態では、複数の分割体5の夫々は、
図3に示されるように、本体形成部53の上流側端部531(
図2参照)に中心線CLに交差(図示例では、直交)する方向に沿って突出するフランジ形成部55を有する。入口スリーブ4のフランジ部45は、互いに組み合わされた複数の分割体5の夫々のフランジ形成部55を含む。複数の分割体5の夫々は、フランジ形成部55が排ガス導入部23のフランジ部234と内燃機関16の排出部161との間に挟持されることで、排ガス導入部23や内燃機関16に支持される。また、複数の分割体5の夫々は、本体形成部53の下流側端部532が内側スクロール部材28の内面282に挿入されている。
【0040】
複数の分割体5の夫々は、薄く平らに形成された金属板をプレス加工することにより、その形状を形成できる。分割体5の製造方法は、薄く平らに形成された金属板から打ち抜き加工などにより、分割体5を展開した板形状を取り出すステップと、上記分割体5を展開した板形状をプレス加工することで、上述した円弧状の本体形成部53を形成するステップと、本体形成部53を形成後にさらにプレス加工することで、上述したフランジ形成部55を形成するステップと、を備える。
【0041】
上記の構成によれば、複数の分割体5の夫々は、入口スリーブ4を周方向に分割した円弧状部材であるため、薄く平らに形成された金属板をプレス加工することにより、その形状を形成できる。このため、複数の分割体5の夫々は、簡単に製造することができ、生産性が良好なものである。入口スリーブ4は、板金製の複数の分割体5が組み合わされることで構成されているため、簡単に製造することができ、生産性が良好なものである。これにより、入口スリーブ4の製造コストを、従来の絞り加工などにより製造する場合に比べて、低減できる。入口スリーブ4の製造コストを低減することで、入口スリーブ4を備えるタービンハウジング2の製造コストを低減することができる。なお、複数の分割体5の夫々が板金製でない入口スリーブ4に本開示を適用してもよい。
【0042】
プレス加工により分割体5の円弧形状を形成する場合において、分割体5がプレス機械の金型の荷重から解放された時に、元の板形状に戻ろうとする形状変化(スプリングバック)が生じることがある。プレス加工後の分割体5の最終形状は、スプリングバックにより変化するため、分割体の寸法精度が不安定になる虞がある。
【0043】
図4は、
図2に示される入口スリーブのC-D線矢視の断面を概略的に示す概略断面図である。
図5は、本開示の一実施形態における分割体のスプリングバックを説明するための説明図である。
幾つかの実施形態では、
図4に示されるように、上述した複数の分割体5の夫々は、第1円弧面61を含む第1円弧部6と、第1円弧面61よりも下流側(図中上側)に位置するとともに、入口スリーブ4の中心線CLからの距離D2が前記第1円弧面61よりも短い第2円弧面71を含む第2円弧部7と、第1円弧面61と第2円弧面71とを繋ぐ傾斜面81であって、下流側(図中上側)に向かうにつれて中心線CLからの距離D3が短くなるように傾斜する傾斜面81を含む接続部8と、を周方向の少なくとも一部に有する。
【0044】
複数の分割体5は、周方向の少なくとも一部に第1円弧部6を含む第1部位60と、周方向の少なくとも一部に第2円弧部7を含む第2部位70と、周方向の少なくとも一部に接続部8を含む接続部位80と、を有する。図示される実施形態では、第1部位60の全周に亘り第1円弧部6が形成されている。また、第2部位70の全周に亘り第2円弧部7が形成されており、接続部位80の全周に亘り接続部8が形成されている。この場合には、第1円弧部6や第2円弧部7が設けられた範囲が広いため、分割体5の第1円弧部6や第2円弧部7が曲り形状から元の板形状に戻ろうとする形状変化(スプリングバック)の影響が大きなものになる。なお、図示される実施形態では、第1部位60の周端部と第1円弧部6の周端部とが同じものを意味している。
【0045】
上述した分割体5の本体形成部53は、第1円弧部6、第2円弧部7および接続部8を含み、本体形成部53の内面52は、第1円弧面61、第2円弧面71および傾斜面81を含む。排ガス流路44の入口開口441は、互いに組み合わされた複数の分割体5の夫々の第1円弧面61の上流縁62により周方向の少なくとも一部が画定される。また、排ガス流路44の出口開口442は、互いに組み合わされた複数の分割体5の夫々の第2円弧面71の下流縁73により周方向の少なくとも一部が画定される。複数の分割体5の夫々は、第2円弧部7の下流縁73を含む少なくとも一部が内側スクロール部材28の内面282に挿入されている。
【0046】
第1円弧面61の中心線CLからの距離D1は、上記距離D2よりも長い。なお、上記距離D1、D2およびD3の夫々は、中心線CLからの最短距離、すなわち、中心線CLに直交方向における中心線CLからの距離、を意味している。排ガス流路44は、複数の第1円弧面61により形成される上流側の流路面積A1が、複数の第2円弧面71により形成される下流側の流路面積A2よりも大きい。
【0047】
図示される実施形態では、傾斜面81は、中心線CLに沿った断面において、第1円弧面61に接続される上流縁82から第2円弧面71に接続される下流縁83までに亘り直線状に延在している。
【0048】
分割体5は、本体形成部53を形成する際のプレス加工により、第1円弧部6、第2円弧部7および接続部8がいちどきに形成される。具体的には、分割体5は、
図5に示されるような、プレス機械31の下型32(金型)の上に載せられて、プレス機械31の上型33(金型)により強い力を加えられることで塑性変形し、本体形成部53(第1円弧部6、第2円弧部7および接続部8)の形状が形成される。
【0049】
上記の構成によれば、複数の分割体5の夫々は、上記第1円弧面61を含む第1円弧部6と、上記第2円弧面71を含む第2円弧部7と、上記傾斜面81を含む接続部8と、を周方向の少なくとも一部に有する。第1円弧面61や第2円弧面71をプレス加工により形成する際に、第1円弧部6や第2円弧部7はプレス機械31の金型(下型32および上型33)により曲げられるので、第1円弧部6や第2円弧部7には、元の板形状に戻ろうとする曲げ応力BSが生じる。第1円弧面61と第2円弧面71とを繋ぐ傾斜面81を、第1円弧面61や第2円弧面71に対して傾斜させることで、傾斜面81を含む接続部8が第1円弧部6や第2円弧部7に生じる曲げ応力BSを受け止めることができる。これにより、分割体5がプレス機械31の金型の荷重から解放された時に、分割体5の第1円弧部6や第2円弧部7が曲り形状から元の板形状に戻ろうとする形状変化(スプリングバック)を抑制できる。分割体5のスプリングバックを抑制することで、プレス加工後の分割体5の寸法精度を安定させることができる。
【0050】
また、上記の構成によれば、入口スリーブ4は、第1円弧部6、第2円弧部7および接続部8を夫々が有する複数の分割体5を組み合わせることで、その内側に上流側よりも下流側の流路面積が減少した排ガス流路44が形成される。この排ガス流路44を流れる排ガスは、流路面積の減少により流速を増加させることができるため、タービン10Aの性能を良好なものにすることができる。
【0051】
図6は、本開示の一実施形態にかかるタービンハウジングの概略断面図である。
図6では、タービンホイール3の軸線LAに沿って一方側(前方側XF)から視認した断面を概略的に示している。
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述した複数の分割体5の夫々は、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1が、周方向に沿って連続的に変化するように構成されている。上記距離L1は、軸方向Z、すなわち、入口スリーブ4の中心線CLの延在方向、における第1円弧面61の長さを意味している。図示される実施形態では、傾斜面81の軸方向Zにおける長さは、周方向において一様になるように構成されている。
【0052】
かかる構成によれば、複数の分割体5の夫々は、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1が、周方向に沿って連続的に変化するように構成されている。この場合には、第1円弧面61の下流縁63に連なる傾斜面81の軸方向Z(入口スリーブ4の中心線CLの延在方向)における形成範囲を、分割体5の周方向に沿って連続的に変化させることができるため、分割体5の軸方向Zにおける広範囲に亘り、接続部8が第1円弧部6や第2円弧部7に生じる曲げ応力BSを受け止めることができ、スプリングバックを抑制できる。
【0053】
なお、他の幾つかの実施形態では、複数の分割体5の夫々は、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1が、周方向において一様になるように構成されていてもよい。
【0054】
図7は、
図6に示される入口スリーブのE-F線矢視の断面を概略的に示す概略断面図である。
図7では、入口スリーブ4の中心線CLに直交する断面を中心線CLの延在方向における上流側から視た状態が概略的に示されている。
図7中における二点鎖線は、タービンホイール3の軸線LAに直交する方向に延在し、且つ、排ガス導入口21の中心C1(
図6参照)を通過する平面PLを示している。
【0055】
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、上述した複数の分割体5は、上述した平面PLに対して一方側(
図7中下側)に第1円弧面61の最深部64および第2円弧面71の最深部74が位置する第1の分割体5Aと、上述した平面PLに対して他方側(
図7中上側)に第1円弧面61の最深部64および第2円弧面71の最深部74が位置する第2の分割体5Bと、を含む。第1円弧面61や第2円弧面71の最深部64、74は、第1円弧面61や第2円弧面71における周端面54を含む平面から最も離れた部分を意味している。
【0056】
図示される実施形態では、上述した平面PLは、第1の分割体5Aおよび第2の分割体5Bの夫々の周端面54を含む。入口スリーブ4は、上述した平面PLを境界とする二つの分割体5(5A、5B)により構成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、二つの分割体5(5A、5B)の夫々は、上述した平面PLに対して第1円弧面61や第2円弧面71の最深部64、74が位置する側とは反対側にその周端面54が位置していてもよい。
【0057】
かかる構成によれば、複数の分割体5は、主に上記平面PLに対して一方側に位置する第1の分割体5Aと、主に上記平面PLに対して他方側に位置する第2の分割体5Bと、を含む。この場合には、第1の分割体5Aおよび第2の分割体5Bの夫々の本体形成部53(第1部位60、第2部位70および接続部位80)の形状を互いに対称な形状にすることができる。これにより、第1の分割体5Aおよび第2の分割体5Bの夫々に生じる熱伸び量の差を低減できる。また、第1の分割体5Aおよび第2の分割体5Bの夫々に生じるスプリングバック量の差を低減できる。
【0058】
幾つかの実施形態では、上述したスクロール部26は、
図6に示されるような、タービンホイール3の軸線LAに沿って一方側(前方側XF)から視認した断面において、入口スリーブ4の中心線CLに対して一方側(
図6中右側)に舌部262を有する。舌部262は、スクロール部26における巻き始め263と巻き終わり264の接続点を意味する。以下、上記断面にて中心線CLよりも舌部262に近接する側(
図6中右側)を内周側と云い、上記断面にて中心線CLよりも舌部262から離れた側を外周側と云うことがある。
【0059】
幾つかの実施形態では、上述した第1の分割体5Aおよび上述した第2の分割体5Bの夫々は、
図6に示されるような、タービンホイール3の軸線LAに沿って一方側(前方側XF)から視認した平面視において、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1が、第1円弧面61の外周縁65から内周縁66に亘って連続的に短くなるように構成されている。外周縁65は、上流縁62および下流縁63の外周端同士を繋ぐ線分である。内周縁66は、上流縁62および下流縁63の内周端同士を繋ぐ線分である。
【0060】
複数の分割体5(5A、5B)の夫々は、渦状空間27や渦状空間27に配置される内側スクロール部材28の形状に対応させるべく、上記平面視において、第2円弧面71の下流縁73が、外周端731から内周端732に向かうにつれて軸方向Zにおける上流側に位置するように傾斜している。上記平面視において、第2円弧面71の下流縁73と中心線CLとがなす角度のうちの小さい方の角度を第1傾斜角度θとする。第1傾斜角度θは、30°≦θ≦60°の条件を満たすことが好ましい。さらに好ましくは、第1傾斜角度θは、40°≦θ≦50°の条件を満たす。
【0061】
第2円弧面71の上流縁72から下流縁73までの軸方向Zにおける距離をL2とする。仮に、上記平面視において、複数の分割体5(5A、5B)の夫々の、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1を、第1円弧面61の外周縁65から内周縁66に亘って連続的に長くした場合には、上記距離L2の最大距離(外周縁75における距離L2)が長いものになるため、第2円弧部7に生じるスプリングバックを効果的に抑制できない虞がある。
【0062】
上記平面視において、第1円弧面61の下流縁63と中心線CLとがなす角度のうちの小さい方の角度を第2傾斜角度αとする。第2傾斜角度αは、30°≦α≦60°の条件を満たすことが好ましい。さらに好ましくは、第2傾斜角度αは、40°≦α≦50°の条件を満たす。
【0063】
上記の構成によれば、第1の分割体5Aおよび第2の分割体5Bの夫々は、上記平面視において、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1が、第1円弧面61の外周縁65から内周縁66に亘って連続的に短くなるように構成されている。この場合には、第1円弧面61の下流縁63に連なる傾斜面81の軸方向Z(入口スリーブ4の中心線CLの延在方向)における形成範囲を、第1円弧面61の外周縁65が位置する外周側から第1円弧面61の内周縁66が位置する内周側までに亘り連続的に変化させることができるため、上記軸方向Zにおける広範囲に亘り、接続部8が第1円弧部6や第2円弧部7に生じる曲げ応力BSを受け止めることができ、スプリングバックを抑制できる。また、上記の構成によれば、仮に、上記平面視において、第1の分割体5Aおよび第2の分割体5Bの夫々の、第1円弧面61の上流縁62から下流縁63までの距離L1を、第1円弧面61の外周縁65から内周縁66に亘って連続的に長くした場合に比べて、第2円弧面71の上流縁72から下流縁73までの最大距離を短いものにできるため、第2円弧部7に生じるスプリングバックを効果的に抑制できる。
【0064】
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、上述した第1の分割体5Aは、第1の分割体5Aの第1円弧部6を周方向の少なくとも一部に含む第1部位60の周端部91から外側に突出する第1鍔部92と、第2の分割体5Bに向かって第1鍔部92の先端921から突出する第1凸部93と、を含む。上述した第2の分割体5Bは、第2の分割体5Bの第1円弧部6を周方向の少なくとも一部に含む第1部位60の周端部94から外側に突出して第1鍔部92に当接する第2鍔部95と、第2鍔部95の先端951から第1の分割体5Aから離隔する方向に突出して第1凸部93に収容される第2凸部96と、を含む。
【0065】
図示される実施形態では、第1鍔部92は、中心線CLに対して径方向に沿って延在する第1当接面922を有する。第2鍔部95は、中心線CLに対して径方向に沿って延在する第2当接面952であって、第1当接面922に当接する面を含む第2当接面952を有する。第1凸部93は、第1鍔部92の先端921から第1鍔部92の延在方向に対して交差(図示例では、直交)する方向に沿って、第2の分割体5Bが位置する側(
図7中上側)に突出している。第2凸部96は、中心線CLに対して第1凸部93よりも径方向における内側において、第2鍔部95の先端951から第2鍔部95の延在方向に対して交差(図示例では、直交)する方向に沿って、第2の分割体5Bが位置する側(
図7中上側)に突出している。
【0066】
図示される実施形態では、第1鍔部92は、第1の分割体5Aの第1部位60(図示例では、第1円弧部6)の外周側(
図7中左側)の周端部91Aから外側に突出する第1外周側鍔部92Aと、第1の分割体5Aの第1部位60(図示例では、第1円弧部6)の内周側(
図7中右側)の周端部91Bから外側に突出する第1内周側鍔部92Bと、を含む。第1凸部93は、第2の分割体5Bに向かって第1外周側鍔部92Aの先端921Aから突出する第1外周側凸部93Aと、第2の分割体5Bに向かって第1内周側鍔部92Bの先端921Bから突出する第1内周側凸部93Bと、を含む。
【0067】
図示される実施形態では、第2鍔部95は、第2の分割体5Bの第1部位60(図示例では、第1円弧部6)の外周側(
図7中左側)の周端部94Aから外側に突出する第2外周側鍔部95Aと、第2の分割体5Bの第1部位60(図示例では、第1円弧部6)の内周側(
図7中右側)の周端部94Bから外側に突出する第2内周側鍔部95Bと、を含む。第2外周側鍔部95Aは、第1外周側鍔部92Aに当接し、第2内周側鍔部95Bは、第1内周側鍔部92Bに当接する。第2凸部96は、第2外周側鍔部95Aの先端951Aから、第1の分割体5Aから離隔する方向に突出して第1外周側凸部93Aに収容される第2外周側凸部96Aと、第2内周側鍔部95Bの先端951Bから、第1の分割体5Aから離隔する方向に突出して第1内周側凸部93Bに収容される第2内周側凸部96Bと、を含む。
【0068】
図示される実施形態では、
図6に示されるように、上述した第1の分割体5Aは、第1外周側鍔部92Aおよび第1外周側凸部93Aの夫々が、第1内周側鍔部92Bおよび第1内周側凸部93Bの夫々よりも軸方向Zにおける長さが長くなるように構成されている。上述した第2の分割体5Bは、第2外周側鍔部95Aおよび第2外周側凸部96Aの夫々が、第2内周側鍔部95Bおよび第2内周側凸部96Bの夫々よりも軸方向Zにおける長さが長くなるように構成されている。
【0069】
上記の構成によれば、第2の分割体5Bは、第1の分割体5Aの第1鍔部92に当接する第2鍔部95と、第1の分割体5Aの第1凸部93に収容される第2凸部96と、を含む。この場合には、第2凸部96を第1凸部93に収容させ、第1鍔部92と第2鍔部95とを当接させることで、第1の分割体5Aと第2の分割体5Bとの間の位置合わせを行うことができる。これにより、第1の分割体5Aと第2の分割体5Bとの組付けを容易に行うことができるため、入口スリーブ4の生産性を向上でき、入口スリーブ4の製造コストを低減できる。
【0070】
幾つかの実施形態にかかるターボチャージャ1は、
図1に示されるように、上述したタービンハウジング2を備える。かかる構成によれば、タービンハウジング2に取り付けられる入口スリーブ4の生産性を向上でき、入口スリーブ4の製造コストを低減できるため、ターボチャージャ1の生産性を向上でき、ターボチャージャ1の製造コストを低減できる。
【0071】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0072】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0073】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかるタービンハウジング(2)は、
タービンホイール(3)を収容するためのタービンハウジング(2)であって、
排ガスを導入するための排ガス導入口(21)が形成された筒状の排ガス導入部(23)と、
前記排ガス導入部(23)に少なくとも一部が収容される入口スリーブ(4)と、を備え、
前記入口スリーブ(4)は、周方向に分割された板金製の複数の分割体(5)が組み合わされることで構成された。
【0074】
上記1)の構成によれば、複数の分割体の夫々は、入口スリーブを周方向に分割した円弧状部材であるため、薄く平らに形成された金属板をプレス加工することにより、その形状を形成できる。このため、複数の分割体の夫々は、簡単に製造することができ、生産性が良好なものである。入口スリーブは、板金製の複数の分割体が組み合わされることで構成されているため、簡単に製造することができ、生産性が良好なものである。これにより、入口スリーブの製造コストを、従来の絞り加工などにより製造する場合に比べて、低減できる。入口スリーブの製造コストを低減することで、入口スリーブを備えるタービンハウジングの製造コストを低減することができる。
【0075】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記複数の分割体(5)の夫々は、
第1円弧面(61)を含む第1円弧部(6)と、
前記第1円弧面(61)よりも下流側に位置するとともに、前記入口スリーブ(4)の中心線(CL)からの距離が前記第1円弧面(61)よりも短い第2円弧面(71)を含む第2円弧部(7)と、
前記第1円弧面(61)と前記第2円弧面(71)とを繋ぐ傾斜面(81)であって、前記下流側に向かうにつれて前記中心線(CL)からの距離が短くなるように傾斜する傾斜面(81)を含む接続部(8)と、を周方向における少なくとも一部に有する。
【0076】
上記2)の構成によれば、複数の分割体の夫々は、上記第1円弧面を含む第1円弧部と、上記第2円弧面を含む第2円弧部と、上記傾斜面を含む接続部と、を周方向における少なくとも一部に有する。第1円弧面や第2円弧面をプレス加工により形成する際に、第1円弧部や第2円弧部はプレス機械の金型により曲げられるので、第1円弧部や第2円弧部には、元の板形状に戻ろうとする曲げ応力が生じる。第1円弧面と第2円弧面とを繋ぐ傾斜面を、第1円弧面や第2円弧面に対して傾斜させることで、傾斜面を含む接続部が第1円弧部や第2円弧部に生じる曲げ応力を受け止めることができる。これにより、分割体がプレス機械の金型の荷重から解放された時に、分割体の第1円弧部や第2円弧部が曲り形状から元の板形状に戻ろうとする形状変化(スプリングバック)を抑制できる。分割体のスプリングバックを抑制することで、プレス加工後の分割体の寸法精度を安定させることができる。
【0077】
また、上記2)の構成によれば、入口スリーブは、第1円弧部、第2円弧部および接続部を夫々が有する複数の分割体を組み合わせることで、その内側に上流側よりも下流側の流路面積が減少した排ガス流路が形成される。この排ガス流路を流れる排ガスは、流路面積の減少により流速を増加させることができるため、タービンの性能を良好なものにすることができる。
【0078】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記複数の分割体(5)の夫々は、
前記第1円弧面(61)の上流縁(62)から下流縁(63)までの距離(L1)が、周方向に沿って連続的に変化するように構成された。
【0079】
上記3)の構成によれば、複数の分割体の夫々は、第1円弧面の上流縁から下流縁までの距離が、周方向に沿って連続的に変化するように構成されている。この場合には、第1円弧面の下流縁に連なる傾斜面の軸方向(入口スリーブの中心線の延在方向)における形成範囲を、分割体の周方向に沿って連続的に変化させることができるため、分割体の上記軸方向における広範囲に亘り、接続部が第1円弧部や第2円弧部に生じる曲げ応力を受け止めることができ、スプリングバックを抑制できる。
【0080】
4)幾つかの実施形態では、上記2)又は3)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記複数の分割体(5)は、
前記タービンホイール(3)の軸線(LA)に直交する方向に延在し、且つ、前記排ガス導入口(21)の中心(C1)を通過する平面(PL)、に対して一方側に前記第1円弧面(61)および前記第2円弧面(71)の最深部(64、74)が位置する第1の分割体(5A)と、
前記平面(PL)の他方側に前記第1円弧面(61)および前記第2円弧面(71)の最深部(64、74)が位置する第2の分割体(5B)と、を含む。
【0081】
上記4)の構成によれば、複数の分割体は、主に上記平面に対して一方側に位置する第1の分割体と、主に上記平面に対して他方側に位置する第2の分割体と、を含む。この場合には、第1の分割体および第2の分割体の夫々の第1円弧部、第2円弧部および接続部の形状を互いに対称な形状にすることができる。これにより、第1の分割体および第2の分割体の夫々に生じる熱伸び量の差を低減できる。また、第1の分割体および第2の分割体の夫々に生じるスプリングバック量の差を低減できる。
【0082】
5)幾つかの実施形態では、上記4)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記第1の分割体(5A)および前記第2の分割体(5B)の夫々は、
前記タービンホイール(3)の前記軸線(LA)に沿って一方側から視認した平面視において、前記第1円弧面(61)の上流縁(62)から下流縁(63)までの距離(L1)が、前記第1円弧面(61)の外周縁(65)から内周縁(66)に亘って連続的に短くなるように構成された。
【0083】
上記5)の構成によれば、第1の分割体および第2の分割体の夫々は、上記平面視において、第1円弧面の上流縁から下流縁までの距離が、第1円弧面の外周縁から内周縁に亘って連続的に短くなるように構成されている。この場合には、第1円弧面の下流端に連なる傾斜面の軸方向(入口スリーブ4の中心線CLの延在方向)における形成範囲を、第1円弧面の外周縁が位置する外周側から第1円弧面の内周縁が位置する内周側までに亘り連続的に変化させることができるため、上記軸方向における広範囲に亘り、接続部が第1円弧部や第2円弧部に生じる曲げ応力を受け止めることができ、スプリングバックを抑制できる。また、上記の構成によれば、仮に、上記平面視において、第1の分割体および第2の分割体の夫々の、第1円弧面の上流縁から下流縁までの距離を、第1円弧面の外周縁から内周縁に亘って連続的に長くした場合に比べて、第2円弧部の上流縁から下流縁までの最大距離を短いものにできるため、第2円弧部に生じるスプリングバックを効果的に抑制できる。
【0084】
6)幾つかの実施形態では、上記4)又は5)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記第1の分割体(5A)は、
前記第1の分割体(5A)の前記第1円弧部(6)を周方向の少なくとも一部に含む第1部位(60)の周端部(91)から外側に突出する第1鍔部(92)と、
前記第2の分割体(5B)に向かって前記第1鍔部(92)の先端(921)から突出する第1凸部(93)と、を含み、
前記第2の分割体(5B)は、
前記第2の分割体(5B)の前記第1円弧部(6)を周方向の少なくとも一部に含む第1部位(60)の周端部(94)から外側に突出して前記第1鍔部(92)に当接する第2鍔部(95)と、
前記第2鍔部(95)の先端(951)から前記第1の分割体(5A)から離隔する方向に突出して前記第1凸部(93)に収容される第2凸部(96)と、を含む。
【0085】
上記6)の構成によれば、第2の分割体は、第1の分割体の第1鍔部に当接する第2鍔部と、第1の分割体の第1凸部に収容される第2凸部と、を含む。この場合には、第2凸部を第1凸部に収容させ、第1鍔部と第2鍔部とを当接させることで、第1の分割体と第2の分割体との間の位置合わせを行うことができる。これにより、第1の分割体と第2の分割体との組付けを容易に行うことができるため、入口スリーブの生産性を向上でき、入口スリーブの製造コストを低減できる。
【0086】
7)本開示の少なくとも一実施形態にかかるターボチャージャ(1)は、
上記1)から上記6)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)を備える。
【0087】
上記7)の構成によれば、タービンハウジングに取り付けられる入口スリーブの生産性を向上でき、入口スリーブの製造コストを低減できるため、ターボチャージャの生産性を向上でき、ターボチャージャの製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0088】
1 ターボチャージャ
2 タービンハウジング
3 タービンホイール
4 入口スリーブ
5 分割体
5A 第1の分割体
5B 第2の分割体
6 第1円弧部
7 第2円弧部
8 接続部
10A タービン
10B コンプレッサ
11 インペラ
12 回転シャフト
13 コンプレッサハウジング
14 軸受
15 軸受ハウジング
16 内燃機関
17 排ガス排出ライン
18 気体供給ライン
19 締結部材
19A ボルト
21 排ガス導入口
22 排ガス排出口
23 排ガス導入部
24 収容空間
24A 第1の断熱空間
25 第1の断熱材
26 スクロール部
27 渦状空間
27A 第2の断熱空間
28 内側スクロール部材
29 渦状流路
30 第2の断熱材
31 プレス機械
32 下型
33 上型
41,51 外面
42,52 内面
43 本体部
44 排ガス流路
45 フランジ部
53 本体形成部
54 周端面
55 フランジ形成部
60 第1部位
61 第1円弧面
62 上流縁
63 下流縁
64 最深部
65 外周縁
66 内周縁
70 第2部位
71 第2円弧面
72 上流縁
73 下流縁
74 最深部
75 外周縁
80 接続部位
81 傾斜面
82 上流縁
83 下流縁
91,91A,91B,94,94A,94B 周端部
92 第1鍔部
92A 第1外周側鍔部
92B 第1内周側鍔部
93 第1凸部
93A 第1外周側凸部
93B 第1内周側凸部
95 第2鍔部
95A 第2外周側鍔部
95B 第2内周側鍔部
96 第2凸部
96A 第2外周側凸部
96B 第2内周側凸部
131 気体導入口
132 気体排出口
161 排出部
162 排ガス排出路
262 舌部
A1,A2 流路面積
BS 曲げ応力
C1 (排ガス導入口の)中心
CL (入口スリーブの)中心線
D1,D2,D3,L1,L2 距離
LA (タービンホイールの)軸線
PL 平面
X 軸線方向
XF (軸線方向の)前方側
XR (軸線方向の)後方側
Y 径方向
Z 軸方向