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特許7536706排水処理部材、及びドレイン水の排水処理構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】排水処理部材、及びドレイン水の排水処理構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20240813BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
E03C1/12 A
F16L11/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021069928
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164435
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 尭彦
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-204607(JP,A)
【文献】特開2001-289459(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021234(WO,A1)
【文献】実開昭53-002355(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
F16L 11/12
F16L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部及び両土手部によって形成された長溝であってドレインホースから出るドレイン水を流す長溝を有する溝部材と、前記長溝の上方を覆う本体部を有する蓋部材と、を有する排水処理部材において、
前記溝部材の一方又は両方の土手部には、受入れ空間部が設けられ、
前記蓋部材の本体部の幅方向一方の端部又は両方の端部には、前記受入れ空間部に嵌入脱可能な差込み部が設けられており、
前記蓋部材の差込み部が、前記蓋部材の本体部よりも硬度が大きい、排水処理部材。
【請求項2】
前記受入れ空間部が、前記溝部材に突設された2つの突出部によって形成されており、
前記蓋部材の差込み部が、前記溝部材の突出部よりも硬度が大きい、請求項1に記載の排水処理部材。
【請求項3】
前記2つの突出部が、上方向に立ち上げられており、
前記2つの突出部のうち少なくとも一方の突出部の上方に、前記差込み部に係合する係止部が形成されている、請求項に記載の排水処理部材。
【請求項4】
前記受入れ空間部が前記溝部材の一方の土手部に設けられ、且つ、前記差込み部が前記蓋部材の本体部の幅方向一方の端部に設けられ、
前記溝部材の反対側の土手部と前記蓋部材の本体部の幅方向反対側の端部が連結されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排水処理部材。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の排水処理部材と、ドレインホースを挿入可能な筒部と前記ドレインホースからのドレイン水を排水処理部材側へと流す通水口を有するホース接続具と、を有し、
前記排水処理部材が、床面に敷設され、
前記ホース接続具が、ドレインホースからのドレイン水が前記通水口から前記排水処理部材の長溝へと流れるように、前記排水処理部材に取付けられている、ドレイン水の排水処理構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレインホースから出るドレイン水を所定の箇所へ導く排水処理部材及びそれを用いた排水処理構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機などのドレインホースから出るドレイン水が、マンションの共同廊下やベランダ、その他構造物の下地などの各種床面上を流れると、その床面に汚れやシミが生じる。
これを防止するため、従来、ドレインホースから出るドレイン水を雨樋や側溝などの所定の箇所へ導く排水処理構造が床面に構築されている。
このような排水処理構造を構築する際には、例えば、特許文献1に記載のような排水処理部材が使用されている。
特許文献1には、床面に敷設された溝部材と前記溝部材の上方を覆う開閉可能な蓋部材とを有する排水処理部材と、前記排水処理部材に取り付けられたドレインホース取付具と、を有する排水処理構造が開示されている。前記排水処理部材の蓋部材の一方側端は溝部材に一体的に連結されており、蓋部材の他方側端は、自由端とされている。この蓋部材の他方側端(差込み部)を、溝部材の幅方向に延びて凹設された嵌入用溝(受入れ空間部)に嵌入することにより、溝部材の上方が蓋部材によって覆われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-203603号公報
【発明の概要】
【0004】
上記排水処理部材の施工時には、一般に、溝部材を床面に敷設した後に蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部に嵌入して蓋部材を溝部材に取り付ける作業が必要となる。また、排水処理部材を施工後に、蓋部材を外して溝部材の長溝を清掃する場合があり、この場合にも、蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部に嵌入して蓋部材を溝部材に取り付ける作業が必要となる。よって、蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部に対して容易に嵌入脱できることが望ましい。
また、排水処理部材を床面上に施工した後には、その排水処理部材の上を人が乗ったり、或いは、台車やベビーカーなどの車輪が通行する。車輪の通行などによって、排水処理部材に衝撃及び荷重が加わる。溝部材を覆う蓋部材は、前記溝部材との間に隙間(ドレイン水が流れる流路)を確保するため、溝部材から浮き上がった部分を有する。このため、前記車輪の通行などによって蓋部材に衝撃が加わると共に蓋部材が下方に凹み、その踏み圧が無くなると、蓋部材が上方に上がって元に戻ることを繰り返す。このような上下の変形が繰り返され、その変形が差込み部にも伝搬するので、経時的に、蓋部材の差込み部の一部又は全部が溝部材の受入れ空間部から自然に外れるおそれがある。よって、施工後に蓋部材の外れ難い排水処理部材が望まれている。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、施工時には蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部に容易に嵌入でき、且つ、施工後には蓋部材の差込み部が自然に溝部材から外れ難くなる排水処理部材及びそれを用いた排水処理構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の排水処理部材は、底板部及び両土手部によって形成された長溝であってドレインホースから出るドレイン水を流す長溝を有する溝部材と、前記長溝の上方を覆う本体部を有する蓋部材と、を有する排水処理部材において、前記溝部材の一方又は両方の土手部には、受入れ空間部が設けられ、前記蓋部材の本体部の幅方向一方の端部又は両方の端部には、前記受入れ空間部に嵌入脱可能な差込み部が設けられており、前記蓋部材の差込み部が、前記蓋部材の本体部よりも硬度が大きい。
【0007】
本発明の好ましい排水処理部材は、前記受入れ空間部が、前記溝部材に突設された2つの突出部によって形成されており、前記蓋部材の差込み部が、前記溝部材の突出部よりも硬度が大きい。
本発明の好ましい排水処理部材は、前記2つの突出部が、上方向に立ち上げられており、前記2つの突出部のうち少なくとも一方の突出部の上方に、前記差込み部に係合する係止部が形成されている。
本発明の好ましい排水処理部材は、前記受入れ空間部が前記溝部材の一方の土手部に設けられ、且つ、前記差込み部が前記蓋部材の本体部の幅方向一方の端部に設けられ、前記溝部材の反対側の土手部と前記蓋部材の本体部の幅方向反対側の端部が連結されている。
【0008】
本発明の別の局面によれば、ドレイン水の排水処理構造を提供する。
この排水処理構造は、上記いずれかの排水処理部材と、ドレインホースを挿入可能な筒部と前記ドレインホースからのドレイン水を排水処理部材側へと流す通水口を有するホース接続具と、を有し、前記排水処理部材が、床面に敷設され、前記ホース接続具が、ドレインホースからのドレイン水が前記通水口から前記排水処理部材の長溝へと流れるように、前記排水処理部材に取付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の排水処理部材は、その施工時には蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部に容易に嵌入することができる。また、施工後の排水処理部材上を車輪が通行などしても、差込み部が受入れ空間部から自ずと外れ難く、本発明の排水処理部材を使用することにより、蓋部材が自然に外れ難い耐久性に優れた排水処理構造を構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の排水処理部材の平面図。
図2図1の矢印II方向から見た拡大側面図。
図3図1のIII-III線で切断した拡大断面図。
図4】(a)は、排水処理部材の差込み部及び受入れ空間部の周辺をさらに拡大した部分拡大側面図、(b)は、前記(a)から差込み部付近を削除して表した同部文拡大側面図。
図5】排水処理部材をロール状に巻いた状態を示す斜視図。
図6】蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部から取り外した状態を示す拡大側面図。
図7】差込み部を受入れ空間部に嵌入する過程を示す拡大側面図。
図8】排水処理部材の寸法を説明するための拡大断面図。
図9】ホース接続具を前側且つ上側から見た斜視図。
図10】ホース接続具を後側且つ下側から見た斜視図。
図11図9のXI-XI線で切断した断面図。
図12】排水処理構造の参考斜視図。
図13図12のXIII-XIII線で切断し且つ上部を省略した拡大断面図。
図14図13のXIV-XIV線で切断した断面図。
図15】ホース接続具を排水処理部材に取り付ける過程を示す参考斜視図。
図16】第2実施形態の第1例に係る排水処理部材の差込み部及び受入れ空間部の周辺の部分拡大断面図。
図17】同第2例に係る排水処理部材の差込み部及び受入れ空間部の周辺の拡大断面図。
図18】第3実施形態の排水処理部材の拡大側面図。
図19】第4実施形態の排水処理部材の差込み部及び受入れ空間部の周辺の部分拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
<排水処理部材>
図1乃至図4において、排水処理部材Aは、ドレイン水が流れる長溝19を有する溝部材1と、前記長溝19の上方を覆う本体部3を有する蓋部材2と、を有する。前記長溝19は、底板部11と両土手部12,13によって形成(画成)されている。
なお、図1において、形状が異ならない排水処理部材Aの中間部を省略している。排水処理部材Aの側面視形状(端面に対して垂直な方向から見た形状)は、図2に示すような形状であり、この形状が長手方向に連続している。従って、排水処理部材Aを幅方向で切断した断面視形状は、長手方向のいかなる箇所で切断しても、図3に示す形状である。図4(a)は、差込み部6及び受入れ空間部4の周辺をさらに拡大した部分拡大側面図である。また、説明上、受入れ空間部4などの符号を判りやすく表すため、同図(a)から差込み部6付近を除いた部分拡大側面図を、同図(b)に併記している。
【0012】
溝部材1及び蓋部材2はいずれも、全体的に薄肉状の部材であって、図1に示すように、幅方向に対して直交する方向(長手方向)に細長く延びる平面視長尺帯状である。前記長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。排水処理部材Aの長手方向長さは、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、0.5m以上であり、好ましくは、1m以上200m以下であり、より好ましくは、2m以上50m以下である。排水処理部材Aは、通常、比較的長く形成され、施工場所に応じて、適宜裁断して使用される。
排水処理部材Aは、柔軟性を有する。排水処理部材Aの柔軟性の程度としては、例えば、23℃、1気圧、50%RHの標準状態下で、直径20cmの円筒状芯材Cの周囲にロール状に巻き付けることができる(図5参照)。前記比較的長い排水処理部材Aは、円筒などの芯材を用いて又は芯材を用いずに、ロール状に巻いた状態で保管・運搬することが好ましい。
【0013】
溝部材1は、長尺帯状の底板部11と、前記底板部11の幅方向両側から上方に突出された両土手部12,13と、を有する。前記底板部11と両土手部12,13によって形成される側面視凹状の部分が、長手方向に延びる長溝19である。前記溝部材1の長溝19は、ドレインホースから出るドレイン水を流す凹状部分である。以下、説明上、前記2つの土手部を区別する必要があるときに、便宜上、図2の側面視で紙面右側の土手部を「右土手部12」、反対側を「左土手部13」という。
後述するように右土手部12に受入れ空間部4が設けられる場合、右土手部12の突出高さH(図4(a)参照)は、特に限定されないが、例えば、2mm以上6mm以下であり、好ましくは3mm以上5mm以下である。右土手部12の突出高さHが前記範囲であることにより、長溝19を流れるドレイン水が右土手部12を越えて排水処理部材Aの外部に漏れ出ることを効果的に防止できる。
長溝19の上面、すなわち底板部11のうち両土手部12,13で挟まれた上面には、必要に応じて、長手方向に延びる凸部又は凹部が1つ又は2つ以上独立して形成されていてもよい。例えば、図示例では、長溝19の上面に、長手方向に延びる整流凸条14が設けられている。図示例では、3本の整流凸条14が、幅方向に間隔を開けて配置されている。前記整流凸条14は、ドレイン水を所定方向に導く機能を有する。
【0014】
右土手部12には、受入れ空間部4が設けられている。受入れ空間部4は、後述する蓋部材2の差込み部6を嵌入脱可能な部分である。
具体的には、右土手部12は、基底部121と、前記基底部121の両側から突出された2つの突出部122,123と、を有する。以下、説明上、前記2つの突出部を区別する必要があるときに、便宜上、図2の側面視で紙面右側の突出部を「右突出部122」、反対側を「左突出部123」という。
前記基底部121の内面と2つの突出部122,123の内面は連続した連続面を成しており、受入れ空間部4は、前記基底部121の内面と2つの突出部122,123の内面とによって形成(画成)されている。また、受入れ空間部4は、開口41を有し、その受入れ空間部4の開口41は、右突出部122の内側上端と左突出部123の内側上端との間の隙間に相当する。
【0015】
受入れ空間部4の開口41の幅41W(図4(a)参照)は、受入れ空間部4内の最大幅MWと略同じでもよいが、差込み部6を受入れ空間部4にて安定的に保持する観点から、受入れ空間部4の開口41の幅41Wは、受入れ空間部4内の最大幅MWよりも小さいことが好ましい。
前記受入れ空間部4内の最大幅よりも小さい幅を有する開口41を形成する構成としては、例えば、右突出部122の上方において内向き(左突出部123側)に延びる係止部124を形成すること、或いは、左突出部123の上方において内向き(右突出部122側)に延びる係止部125を形成すること、或いは、右突出部122の上方及び左突出部123の上方に、それぞれ内向きに延びる係止部124,125を形成すること、などが挙げられる。前記係止部124は、差込み部6を抱き込むように、前記差込み部6の上方に係合し、差込み部6が受入れ空間部4から不用意に外れることを防止する。
右突出部122及び左突出部123に前記係止部124,125が形成されている場合、受入れ空間部4の開口41は、前記係止部124,125の先端間の隙間に相当する。
【0016】
図4(b)に示すように、前記開口41の幅方向中央部L1と基底部121の幅方向中央部L2を結んだ仮想線L(仮想線を一点鎖線で示す)が略鉛直になるように、前記右突出部122及び左突出部123が突出されていてもよい。或いは、特に図示しないが、前記開口41の幅方向中央部と基底部121の幅方向中央部を結んだ仮想線が鉛直方向に対して鋭角に傾斜するように、記右突出部122及び左突出部123が突出されていてもよい。前記右突出部122及び左突出部123が前記仮想線Lが略鉛直になるように形成されていることが好ましく、これにより、施工時に蓋部材2の差込み部6を受入れ空間部4に容易に嵌入することができる。具体的には、蓋部材2の差込み部6をローラーなどの押さえ具で上方から押圧すると、押さえ具や施工者の腕の自重を利用して比較的小さな力で差込み部6を受入れ空間部4に嵌入でき、施工者の疲労を減少できる。
右突出部122及び左突出部123を基底部121から上方向に突出することにより、図4(b)に示すように、前記仮想線Lが上下方向に沿い、受入れ空間部4の開口41と受入れ空間部4が上下に配置される。受入れ空間部4の開口41と受入れ空間部4が上下に配置されることにより、差込み部6を受入れ空間部4に嵌入し易くなる。
【0017】
左突出部123の幅123W(図4(a)参照)は、特に限定されないが、受入れ空間部4にて保持する差込み部6を不用意に外れ難くする観点から、できるだけ大きいことが好ましい。幅(肉厚)が大きい左突出部123は、その幅に比例して変形し難く、従って、受入れ空間部4が変形することを防止できる。左突出部123の幅123Wは、例えば、2mm以上であり、好ましくは、3mm以上である。左突出部123の幅123Wの上限は、溝部材1(底板部11)の幅や長溝19の幅を考慮して適宜設定される。例えば、溝部材1の幅が50mm乃至60mmで、長溝19の幅が25mm乃至35mmである場合には、左突出部123の幅123Wは、10mm以下である。
なお、右突出部122の上面は、幅方向外側に向かうに従ってなだらかに下方に傾斜した、傾斜面とされている。また、左突出部123の上面は、後述する本体部3の当接面33aに当接する被当接面123aとされている。例えば、左突出部123の上面(被当接面123a)は、水平な平面状に形成されている。
【0018】
受入れ空間部4の側面視形状は、蓋部材2の差込み部6の外形と略一致していてもよく、或いは、差込み部6の外形と不一致で且つ若干大きい又は若干小さくてもよい。好ましくは、図2乃至図4に示すように、受入れ空間部4の側面視形状は、蓋部材2の差込み部6の外形と略一致し又は若干小さい。受入れ空間部4が差込み部6の外形と略同一又は若干小さいことにより、受入れ空間部4に嵌入された差込み部6が動くことを防止できる。
なお、図2乃至図4(a)では、受入れ空間部4と差込み部6を判りやすく表すために、受入れ空間部4と差込み部6を隙間を開けて表しているが、実際には、差込み部6は受入れ空間部4に実質的に密着することに留意されたい。
【0019】
蓋部材2は、溝部材1の長溝19の上方を覆う本体部3を有する。前記本体部3の幅方向一方の端部又は両方の端部には、前記受入れ空間部4に嵌入脱可能な差込み部6が設けられている。差込み部6は、本体部3と同様に、長手方向に直線状に延在する。以下、説明上、前記本体部3の幅方向両端部を区別する必要があるときに、便宜上、図2の側面視で紙面右側の端部を「右端部31」、幅方向反対側の端部を「左端部32」という。
蓋部材2の一部分が溝部材1と連結されていてもよく、蓋部材2と溝部材1が互いに独立していてもよい。
本実施形態では、蓋部材2の本体部3の右端部31(幅方向一方の端部)に差込み部6が設けられ、且つ、前記本体部3の左端部32(幅方向反対側の端部)と前記溝部材1の左土手部13が連結されている。
【0020】
具体的には、本実施形態では、差込み部6は、蓋部材2の本体部3の両端部のうち右端部31のみに設けられている。差込み部6を有さない本体部3の左端部32は、溝部材1の左土手部13の上面に連結され、好ましくは一体的に連結されている。本明細書において、「連結」とは、2つのもの(例えば、前記左端部32と左土手部13)が容易に分離できないほどに繋がり、且つ、施工後に人や台車などの通過により破壊されない程度に繋がっていることをいい、「一体的に連結」とは、2つのものの境界が外見上判別できない程度で、その2つのものが容易に分離できないほどに繋がり、且つ、施工後に人や台車などの通過により破壊されない程度に繋がっていることをいう。
なお、本実施形態では、本体部3の左端部32と溝部材1の左土手部13は、同一材料で一体的に成形されており、両部32,13の境界は外見上判別できないが、本体部3の左端部32と溝部材1の左土手部13は、概念上で区別できる。概念上での区別を判りやすく図示するため、左端部32と左土手部13の概念上の境界を図2及び図3に破線で表している。
【0021】
差込み部6は、溝部材1の受入れ空間部4に嵌入され、その受入れ空間部4に保持される部分である。左端部32が蓋部材2の左土手部13に連結されている本実施形態の蓋部材2の差込み部6を、受入れ空間部4に嵌入保持させることにより、溝部材1の長溝19が、蓋部材2の本体部3で覆われる。よって、本体部3と長溝19との間に、ドレイン水が流れる閉鎖的な流路が形成される。
差込み部6は、本体部3の右端部31に連結され、好ましくは、一体的に連結されている。本実施形態では、本体部3と差込み部6は、同一材料で一体的に成形されており、両部の境界は外見上判別できないが、本体部3と差込み部6は、概念上で区別できる。概念上での区別を判りやすく図示するため、本体部3と差込み部6の概念上の境界を図2及び乃至図4(a)に破線で表している。
【0022】
差込み部6の側面視形状は、特に限定されず、適宜設定できる。受入れ空間部4に差込み部6を嵌入し易くなることから、差込み部6の下端が、受入れ空間部4の開口41の幅よりも小さい部分を有することが好ましい。図示例では、差込み部6の下方部は、弧状面とされており、差込み部6の下端(前記弧状面の下端)は、開口41の幅よりも小さい。
また、受入れ空間部4に保持された差込み部6が不用意に外れ難くなることから、差込み部6の上方の幅が、差込み部6の上下方向中途部の幅よりも小さくなっていることが好ましい。図示例では、差込み部6は、側面視略円状とされている。なお、本明細書において、略円状は、略楕円状を含むものとする。側面視略円状の差込み部6の上端部が、本体部3の右端部31に連結されることにより、差込み部6の上方の幅は差込み部6の中途部の幅よりも小さい。
本体部3には、差込み部6の内側近傍位置に、左突出部123の被当接面123aに当接する当接面33aが形成されている。例えば、本体部3の当接面は、水平な平面状に形成されている。蓋部材2の差込み部6を受入れ空間部4に嵌入保持させた際には、前記本体部3の当接面33aが左突出部123の被当接面123aに当接するようになる。このため、蓋部材2の上を車輪などが通過した際に、蓋部材2の右端部31側が上下に振動し難くなり、差込み部6が受入れ空間部4から外れることを効果的に防止できる。
【0023】
本体部3の側面視形状は、直線状でもよいが、荷重によって変形した後に元の形状に戻り易いことから、図示例のように、上向きに膨らむ略弧状の部分を有することが好ましい。
また、図4(a)に示すように、本体部3の上面3cと差込み部6の上面6c及び側面6dは、それらの間に凸部を有することなく連続した連続面を成しており、好ましくは、本体部3の上面3cから差込み部6の側面6dの間は連続した弧状面を成している。このような弧状面が形成されていることにより、施工後に人や台車などの通過時の応力が分散され、差込み部6の変形や浮き上がりを効果的に防止できる。差込み部6が受入れ空間部4に嵌入保持された状態で、右土手部12の係止部124が差込み部6の前記弧状面に被さり、係止部124が、差込み部6の上面6cと側面6dとの間に生じるスペースを埋めている。
さらに、図2及び図3に示すように、差込み部6が受入れ空間部4に嵌入保持された状態で、蓋部材2の本体部3の上面と溝部材1の右土手部12(厳密には右突出部122)及び左土手部13の上面が連続してなだらかな山型曲線を描くように、本体部3並びに右土手部12及び左土手部13が形成されていることが好ましい。このように排水処理部材Aの上面が幅方向において全体的になだらかな山型曲線となっていることにより、排水処理部材A上を台車などの車輪を円滑に通過させることができる。
【0024】
なお、必要に応じて、本体部3の幅方向中間部に、補助支柱部35が下方に延出されていてもよい。前記補助支柱部35は、本体部3の下面から下方に延出され、補助支柱部35の下端は、長溝19の上面に接していてもよく、或いは、離れていてもよい。補助支柱部35は、1つ又は2つ以上独立して形成されていてもよい。図示例では、補助支柱部35の下端は長溝19の上面から少し離れる程度に、1つの補助支柱部35が、本体部3の下面から下方に延出されている。
また、必要に応じて、本体部3の上面に、滑り止め用の凹凸が形成されていてもよい(図示せず)。同様に、右土手部12(厳密には右突出部122)及び/又は左土手部13の上面に、滑り止め用の凹凸が形成されていてもよい(図示せず)。
【0025】
本発明において、差込み部6は、本体部3よりも硬度が大きい。換言すると、本体部3は、差込み部6よりも硬度が小さい。
差込み部6の具体的な硬度は、特に限定されないが、例えば、93以上であり、好ましくは95以上である。差込み部6の硬度の上限は、特にないが、現実的な数値では、100以下である。
また、差込み部6の硬度と本体部3の硬度の差(差込み部6の硬度-本体部3の硬度の)は、例えば、10以上であり、好ましくは15以上である。前記差の上限は、特にないが、現実的な数値では、50以下である。
ここで、本明細書において、硬度は、JIS K 6253-1997に準じて、デュロメータのタイプAで測定される硬さをいう。例えば、JIS K 6253-1997に準じて測定用サンプルを作製し且つこのサンプルの硬度をタイプAデュロメータで測定する。また、これに代えた簡易的な測定方法として、排水処理部材の差込み部及び本体部にJIS K 6253-1997に準拠したタイプAデュロメータを押し込んで、それらの硬度を測定するという方法を採用することもできる。具体的な測定方法は、下記実施例を参照するものとする。
【0026】
本実施形態では、差込み部6は、右突出部122及び左突出部123よりも硬度が大きい。このように差込み部6の硬度が右突出部122及び左突出部123の硬度よりも大きい場合の、差込み部6の硬度と右突出部122及び左突出部123の硬度の差は、差込み部6の硬度と本体部3の硬度の差と同様である。
右突出部122及び左突出部123は上述のように溝部材1の受入れ空間部4を形成する部分であるところ、差込み部6の硬度が右突出部122及び左突出部123の硬度よりも大きいことにより、差込み部6を嵌入する際に、右突出部122及び左突出部123が変形し、差込み部6を受入れ空間部4に嵌入し易くなる。なお、差込み部6の硬度が右突出部122及び左突出部123の硬度が大きいことは、右突出部122及び左突出部123の硬度が差込み部6の硬度よりも小さいことと同義である。
また、差込み部6の硬度は、本体部3及び溝部材1の全部の硬度よりも大きい。なお、排水処理部材Aから差込み部6を除いたもの(以下、差込み部以外の残部という場合がある)は、全て硬度が実質的に同じとされている。本体部3が柔軟であっても、その端部に硬度が大きい差込み部6が設けられているので、蓋部材2の端部が蛇行することなく略直線状を維持し得る。このため、柔軟性に優れた本体部3を形成しつつ、蓋部材2の差込み部6の、溝部材1の受入れ空間部4への嵌入の容易化を実現できる。
【0027】
蓋部材2を図2に示す状態から上方に引き上げることにより、図6に示すように、差込み部6を受入れ空間部4から取り外すことができる。差込み部6を取り外すことにより、閉鎖的な流路が開放されて長溝19が露出し、メンテナンスなどを容易に行なうことができる。他方、取り外した差込み部6を、図7に示すように、受入れ空間部4の開口41に一致させ、上方から押圧することにより、差込み部6を開口41を通じて受入れ空間部4に嵌め入れることができる。本発明の排水処理部材Aは、差込み部6の硬度が大きいので、差込み部6を受入れ空間部4に押し込み易く、差込み部6の1箇所を押圧すると、比較的長い範囲を受入れ空間部4に嵌め入れることができる。例えば、図7に示すように、差込み部6を受入れ空間部4の開口41に位置合わせして、差込み部6の上から手又はローラーなどの押さえ具で圧力を加えると、長手方向において比較的長い範囲の差込み部6を受入れ空間部4に嵌め入れることができる。1箇所を差し込んだ後には、ローラーなどを長手方向に転がすことにより、長手方向全体に亘って差込み部6を受入れ空間部4に嵌入できる。特に、右突出部122及び左突出部123が上向きに立ち上げられているので、差込み部6を下方に押圧すると、容易に差込み部6が受入れ空間部4に嵌まるようになる。このため、差込み部6を受入れ空間部4により容易に嵌入できる。
【0028】
硬度が大きい差込み部6の形成方法としては、例えば、差込み部6の形成材料として、差込み部以外の残部の形成材料よりも硬質な材料を用いることが挙げられる。
通常、溝部材1及び蓋部材2を有する排水処理部材Aは、合成樹脂の成形品から構成されるので、例えば、差込み部以外の残部の樹脂材料よりも硬質な樹脂材料を形成材料として用いて差込み部6を形成する。
【0029】
樹脂材料は、樹脂成分と、必要に応じて添加される添加剤と、を含む。前記樹脂成分には、合成ゴムなどのゴム、エラストマーが含まれる。
前記樹脂成分は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーが用いられる。熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーとしては、塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー;スチレン系エラストマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。優れた柔軟性を有し、さらに、加工し易いことから、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とすることが好ましい。
なお、本明細書において、主成分樹脂は、樹脂成分の中で最も多い成分(重量比)をいう。ただし、前記主成分樹脂の前記樹脂成分には、添加剤を除くものとする。主成分樹脂の量は、樹脂成分全体を100重量%とした場合、50重量%を超え、好ましくは、70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。主成分樹脂の量の上限は、100重量%である。
前記塩化ビニル系樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0030】
前記添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、防黴剤、発泡剤などが挙げられる。
塩化ビニル系樹脂を主成分とする場合には、添加剤として、可塑剤及び充填剤が配合されていることが好ましい。
前記充填剤としては、特に限定されず、例えば、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、珪砂、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
前記可塑剤としては、特に限定されず、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、リン酸トリオクチル(TOP)、リン酸トリフェニル(TPP)、ジオクチルテレフタレート(DOTP)、ジオクチルイソフタレート(DOIP)、ジイソノニルシクロヘキシルフタレート(DINCH)などが挙げられる。
【0031】
充填剤及び可塑剤の量を調整することにより、硬質の樹脂材料と軟質の樹脂材料を調製できる。例えば、所定量の塩化ビニル系樹脂に対して充填剤の配合量を多くする及び/又は可塑剤の配合量を少なくすることにより、硬質の樹脂材料を得ることができ、所定量の塩化ビニル系樹脂に対して充填剤の配合量を少なくする又は零にする及び/又は可塑剤の配合量を多くすることにより、軟質の樹脂材料を得ることができる。なお、充填剤及び可塑剤の量を調整する方法に代えて又はこれと併用して、炭素やガラスなどの無機繊維を配合することにより、硬質の樹脂材料を調製することもできる。
【0032】
上記排水処理部材Aは、例えば、樹脂材料の押出し成形によって一体的に成形することができる。この場合、金型(押出し口)のうち差込み部6の成形箇所に硬質の樹脂材料を配置し、且つ、前記金型のうち差込み部以外の残部の成形箇所に軟質の樹脂材料を配置し、これらを共押出し(いわゆる2色成形)することにより、差込み部以外の残部よりも硬度が大きい差込み部6を一体的に有する排水処理部材Aを成形できる。
【0033】
上記説明で左突出部123の幅123Wなどの具体的な寸法範囲を例示したが、ここで、排水処理部材Aの他の部位の具体的な寸法範囲を図8を参照しつつ例示する。
図8を参照して、長溝19の幅W1は、例えば、25mm以上35mm以下であり、好ましくは25mm以上30mm以下である。溝部材1の左縁から長溝19の左縁までの幅W2は、例えば、8mm以上15mm以下である。溝部材1の左縁から長溝19の左縁までの幅W2は、左土手部13の幅に略等しい。溝部材1の右縁から長溝19の右縁までの幅W3は、例えば、18mm以上25mm以下である。溝部材1の右縁から長溝19の右縁までの幅W3は、右土手部12の幅に略等しい。溝部材1の左土手部13の厚み均等部の幅W4は、例えば、2mm以上6mm以下であり、好ましくは3mm以上5mm以下である。溝部材1の左土手部13の厚み均等部の幅W4は、例えば、2mm以上6mm以下であり、好ましくは3mm以上5mm以下である。蓋部材2の本体部3の幅方向中央部付近の肉厚Tは、例えば、0.9mm以上1.5mm以下であり、好ましくは1.0mm以上1.3mm以下である。排水処理部材Aの全高HAは、例えば6mm以上10mm以下である。
【0034】
<ホース接続具>
ホース接続具は、排水処理部材Aにドレインホースを接続するために用いられる部材である。ホース接続具としては、従来公知な接続具又は本件出願後に開発される新規な接続具を適宜用いることができる。例えば、長溝19に載せつつ排水処理部材Aに取り付けるタイプのホース接続具、端面側から排水処理部材Aの流路に差し込んで排水処理部材Aに取り付けるタイプのホース接続具などを用いることができる。前者のタイプのホース接続具としては、例えば、特開2020-180675号、特開2009-203603号などに記載されたものが挙げられる。後者のタイプのホース接続具としては、例えば、特開2013-204607号などに記載されたものが挙げられる。
ここでは、特開2020-180675号に記載のホース接続具を簡単に説明する。
【0035】
図9乃至図11を参照して、ホース接続具Dは、ドレインホースを挿入可能な筒部81とドレインホースからのドレイン水を排水処理部材側へと流す通水口82とを有するケース体8を有する。
筒部81は、例えば、2つ形成されている。従って、このホース接続具Dは、2本のドレインホースを各筒部81,81にそれぞれ挿入し且つ保持させることができる。もっとも、筒部81は、1つでもよく或いは、3つ以上設けられていてもよい。
ケース体8は、前壁部8aと、一対の側壁部8bと、一対の側壁部8bの下側に連結された底壁部8cと、一対の側壁部8b及び底壁部8cに連結された後壁部8dと、一対の側壁部8bの上側に連結された天壁部8eと、を有する中空状である。
前壁部8aは、ホース接続具Dを排水処理部材Aに取り付けた際に、ドレイン水が流れていく側に向けられる壁部であり、前壁部8aの下方には、通水口82が形成されている。通水口82は、前壁部8aの下方部の全体又は下方部の一部分を切り欠いた切欠き部によって画成される。
底壁部8cは、ケース体8の底部を閉塞する壁部であり、必要に応じて設けられる。排水処理部材Aの長溝19に整流凸条14が設けられている場合、底壁部8cの下面に、前記整流凸条14が嵌まる凹条83が前後方向に延設される。
天壁部8eの一部分には、1つの筒部81の挿入口が開口されている。また、後壁部8dの一部分には、もう1つの筒部81の挿入口が開口されている。
各筒部81には、それぞれ、軸芯方向に向かって突出したリブ部84が形成されている。筒部81は、リブ部84と協働して、挿入されたドレインホースを保持する機能を有する。
【0036】
<排水処理部材の使用及び排水処理構造>
排水処理部材Aは、床面に施工される。
図12乃至図14は、排水処理部材Aを床面に施工した排水処理構造Bを示す。
排水処理構造Bは、床面91に敷設された排水処理部材Aと、前記排水処理部材Aに取り付けられたホース接続具Dと、を有する。
床面91は、例えば、マンションやベランダなどの構造物の共同廊下などが例示できるが、これに限定されるわけではない。床面91には、側溝95に水を導くため勾配が付けられている。つまり、床面91は、側溝95に向かって徐々に低くなった傾斜平面とされている。かかる床面91の傾斜は、水勾配とも呼ばれており、通常、1/50~1/100である。従って、床面91上の水は、構造物の壁面96側から側溝95側へと水勾配に従い流れていくようになっている。
【0037】
前記排水処理部材Aは、例えば、その長手方向が側溝95に対して略直交するように床面91上に取り付けられている。
排水処理部材Aの裏面は、接着手段92を介して床面91に固定されている。接着手段92は、特に限定されず、例えば、接着剤、両面粘着テープなどを用いることが挙げられる。図示例では、接着手段92として接着剤が用いられている。
排水処理部材Aの両側端面には、床シート材93の側端面が接合されている。床シート材93は、例えば、合成樹脂を主体とする樹脂製のシート材を用いることができ、特に、少なくとも表面部分が塩化ビニル系樹脂からなるシート材を用いることができる。
床シート材93は、接着剤や両面粘着テープなどの接着手段92を介して床面91に固定されている。排水処理部材Aの側端面と床シート材93の側端面との間に、隙間埋め材94を設けて水密性を高めてもよい。前記隙間埋め材94としては、樹脂製の溶接棒、シーリング材などを用いることができる。
【0038】
排水処理部材Aの端部(壁面96側の端部)に、前記ホース接続具Dが取り付けられる。ホース接続具Dのケース体8の下面が、接着手段を介して排水処理部材Aの溝部材1の長溝19上に載置して固定されている。前記接着手段は、例えば、接着剤、両面粘着テープなどが挙げられる。
例えば、ケース体8の前壁部8aを側溝95に対向させ且つ後壁部8dを壁面96に対向させつつケース体8の下面を長溝19の上面(底板部11の上面)に載せ、ケース体8の下面を、接着剤などの接着手段(図示せず)を介して長溝19の上面に接着することにより、ホース接続具Dが排水処理部材Aに取り付けられる。上述のように長溝19の上面に整流凸条14が形成されている場合には、底壁部8cの凹条83を整流凸条14に対応させてケース体8を長溝19上に載せることにより、ホース接続具Dを排水処理部材Aに安定的に取り付けることができる。ホース接続具Dは、排水処理部材Aの溝部材1の長溝19上に載置された状態で取り付けられているので、仮に、接着手段での固定が不十分であっても、ドレイン水がその取り付け部分から長溝19外へと漏れ出ることを防止できる。
【0039】
ホース接続具Dを排水処理部材Aに取り付ける際には、図15に示すように、排水処理部材Aの蓋部材2の所定箇所を除去して、部分的に長溝19を露出させる。露出した長溝19の上面にケース体8を載せつつ接着剤などで接着することにより、通水口82を長溝19に連通させた状態でホース接続具Dを排水処理部材Aに取り付けることができる。
前記蓋部材2の除去に際しては、差込み部6を受入れ空間部4から外して蓋部材2を引き出す必要があるが、本発明の排水処理部材Aは、蓋部材2の差込み部6が本体部3に比して硬度が大きいので、上述のように、蓋部材2の差込み部6を溝部材1の受入れ空間部4から容易に取り外すことができる。
【0040】
ホース接続具Dの各筒部81には、それぞれ、ドレインホース97が挿入されている。ドレインホース97は、筒部81のリブ部84に強く密着し、筒部81内に保持される。
ケース体8の前壁部8aには通水口82が形成されているので、ホース接続具Dを排水処理部材Aに取り付けた状態で、ホース接続具Dの通水口82は長溝19に連通されている。従って、ドレインホース97から出るドレイン水は通水口82から排水処理部材Aの長溝19へと流れ、長溝19を通じて側溝95などの所定の箇所に導かれる。
【0041】
上記排水処理構造Bにおいて、蓋部材2の上面を含む排水処理部材Aの上面を人が歩行したり、或いは、台車やベビーカーなどの車輪が通行する。車輪の通行などによって蓋部材2に衝撃が加わると共に蓋部材2の本体部3が下方に凹み、踏み圧の解除によって蓋部材2の本体部3が元に戻るという変形を繰り返す。本発明の排水処理部材Aは、蓋部材2の差込み部6が本体部3に比して硬度が大きいので、前記車輪の通行などによって蓋部材2の本体部3が変形しても、差込み部6は変形し難くなる。このため、排水処理部材Aを施工後、差込み部6が受入れ空間部4から自ずと外れ難くなる。
【0042】
また、一般に、排水処理部材は、経時的に長手方向に沿って収縮することが多く、この場合、溝部材は接着剤などの接着手段によって床面に固定されているので収縮が抑制されるが、蓋部材は固定されていないのでその収縮が顕著となり得る。この点、本発明の排水処理部材Aは、蓋部材2の自由端部である幅方向一方の端部に設けられた差込み部6が本体部3の硬度よりも大きいので、その差込み部6が本体部3の収縮を規制し、蓋部材2が経時的に収縮することを抑制できる。特に、本実施形態にあっては、蓋部材2の反対側の端部が溝部材1に連結されているので、幅方向両側において本体部3の収縮が規制され、蓋部材2が経時的に収縮することをより抑制できる。
なお、溝部材1と蓋部材2が部分的に連結されている本実施形態にあっては、排水処理部材Aの施工する際などにおいて、蓋部材2を紛失するおそれがない。
【0043】
以下、本発明の第2実施形態などの他の実施形態を説明するが、その説明に於いては、主として上述の実施形態と異なる構成及び効果について説明し、同様の構成などについては、用語又は符号をそのまま援用し、その構成の説明を省略する場合がある。
【0044】
[第2実施形態]
上記実施形態において、硬質の樹脂材料を用いることによって硬度の大きい差込み部6を形成する方法を例示したが、例えば、差込み部6の一部分又は全部を、樹脂材料よりも硬度に優れた剛性棒状体によって形成してもよい。
例えば、図16に示す排水処理部材Aの差込み部6は、長手方向に延びる剛性棒状体61と、その剛性棒状体61の周囲を被覆した樹脂部62と、から形成されている。また、図17に示す排水処理部材Aの差込み部6は、剛性棒状体61と、剛性棒状体61の上方に設けられた樹脂部62と、から形成されている。なお、図16及び図17において、本体部3と差込み部6の概念上の境界を破線で表している。樹脂部62は、差込み部以外の残部を形成する上述の樹脂材料と同じものから形成されていてもよく、或いは、異なる樹脂材料(例えば、残部を形成する樹脂材料よりも硬質の樹脂材料など)から形成されていてもよい。押出し成形を簡素化できることから、樹脂部62は、差込み部以外の残部を形成する樹脂材料と同じ樹脂材料から形成されていることが好ましい。差込み部6が剛性棒状体61を含んでいることにより、仮に、その差込み部6が軟質の樹脂材料から形成された部分を含んでいたとしても、全体として差込み部6は、蓋部材2の本体部3或いは差込み部以外の残部よりも硬度が大きくなる。
【0045】
図16に示す差込み部6は、剛性棒状体61が樹脂部62にて覆われているが、図17に示す差込み部6は、その下方部において剛性棒状体61が露出されている(つまり、差込み部6の下方部が剛性棒状体61からなる)。下方部において剛性棒状体61が露出されている差込み部6は、下方部が硬いので、受入れ空間部4に嵌入し易くなる。
その他、図示しないが、差込み部6の全部が剛性棒状体61から形成されていてもよい。
剛性棒状体61としては、可撓性を有する細長い金属棒状体、炭素繊維やガラス繊維などの可撓性を有する無機繊維棒状体、セルロースなどの可撓性を有する有機繊維棒状体、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの樹脂にガラス繊維や炭素繊維などの繊維を複合した繊維強化プラスチック棒状体などを用いることができる。
【0046】
[第3実施形態]
上記実施形態においては、本体部3の左端部32と溝部材1の左土手部13が連結されているが、本体部3の左端部32と溝部材1の左土手部13が、非連結であってもよい。つまり、溝部材1と蓋部材2が別個独立した部材であってもよい。この場合、図18に示すように、本体部3の左端部32に差込み部6が設けられ、溝部材1の左土手部13に受入れ空間部4が設けられる。本体部3の左端部32に設けられる差込み部6及び左土手部13に設けられる受入れ空間部4は、上記実施形態の右端部31に設けられる差込み部6及び右土手部12に設けられる受入れ空間部4と同様な構成とすればよい。
【0047】
[第4実施形態]
上記実施形態においては、側面視形状が略円状の差込み部6を図示したが、差込み部6の形状は、これに限定されるものではなく、本発明の意図する範囲で様々に変更できる。例えば、図19に示すように、差込み部6が、側面視略台形状に形成されていてもよい。なお、図19に示すように、受入れ空間部4も、差込み部6の側面視形状に合わせて適宜変更することが好ましい。
【実施例
【0048】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0049】
[使用材料]
・樹脂(1)
60重量部のポリ塩化ビニル、10重量部のフタル酸ジオクチル、30重量部の炭酸カルシウムを含む混合物。
・樹脂(2)
50重量部のポリ塩化ビニル、25重量部のフタル酸ジオクチル、25重量部の炭酸カルシウムを含む混合物。
【0050】
[実施例1]
差込み部を樹脂(1)にて形成し且つ差込み部以外の残部が樹脂(2)にて形成されるように、樹脂(1)及び(2)を約150℃で共押出しすることにより、図4及び図8に示すような断面形状の排水処理部材を作製した。
この排水処理部材の寸法は、全幅(W1+W2+W3)が約55mm、長溝の幅W1が、約27mm、全高HAが約8mm、本体部の肉厚Tが、約1mm、受入れ空間部の最大幅MWが約3mmであった。また、差込み部は、直径約3.5mmの側面視円状であった。なお、図8は、作製した排水処理部材を比較的忠実に表しているので、その余の寸法は、図8から推定できる。
実施例1の排水処理部材の差込み部及び本体部の硬度を、下記測定方法によってそれぞれ測定した。その結果、差込み部の硬度は95で、本体部の硬度は85であった。
【0051】
[測定方法]
差込み部及び本体部の硬度の測定は、JIS K 6253-1997に準じて、タイプAデュロメータ(株式会社テックロック製、型式:GS-619N)を用いて測定した。具体的には、JIS K 6253-1997に準じて樹脂(1)を約150℃で厚み6mm、縦×横=10cm×10cmの板状にプレス成形することにより、差込み部に対応する測定用サンプルを作製し、このサンプルに前記タイプAデュロメータの押針を押し込んでその硬度を測定した。同様に、樹脂(2)を約150℃で厚み6mm、縦×横=10cm×10cmの板状にプレス成形することにより、差込み部以外の残部に対応する測定用サンプルを作製し、このサンプルに前記タイプAデュロメータの押針を押し込んでその硬度を測定した。
【0052】
なお、このように測定用サンプルを作製して硬度を測定する方法に代えて、排水処理部材の差込み部及び本体部を用いて直接的に硬度を測定することもできる。具体的には、排水処理部材から蓋部材を切り出し、切り出した蓋部材を平坦な机の上に載せ、差込み部の上方からJIS K 6253-1997に準拠した前記タイプAデュロメータの押針を押し込んでその硬度を測定し、同様に、その蓋部材の本体部の上方から前記タイプAデュロメータの押針を押し込むことにより、差込み部及び本体部の硬度を測定した。その結果、排水処理部材から直接的に硬度を測定した場合の結果と前述の測定用サンプルを測定した結果とは、ほとんど変わらない数値となった。従って、簡易的には、排水処理部材から直接的に硬度を測定してもよいと考えられる。
【0053】
[比較例1]
樹脂(2)のみを押出し成形することにより、排水処理部材を作製した。比較例1の排水処理部材の差込み部及び本体部の硬度を、上記測定方法によってそれぞれ測定した。その結果、差込み部の硬度及び本体部の硬度は、いずれも85であった。
【0054】
[排水処理構造及びキャスター試験]
実施例1の排水処理部材を、長さ100cmに裁断し、その溝部材をコンクリート製下地の上に、接着剤(東リ株式会社の商品名「USセメント」)を用いて固定した。次に、この溝部材の受入れ空間部の開口に、差込み部を位置合わせし、差込み部付近の上からハンドローラーを長手方向に転がすことによって、差込み部を受入れ空間部に嵌入した。このようにして作製した排水処理構造に対してキャスター試験を実施した。キャスター試験は、25kgの荷重をかけた車輪を排水処理部材の幅方向に往復させた。前記車輪は、その周面にゴムが設けられている固定式のゴム付き車輪で、直径65mm、幅27mmのもの。
比較例1の排水処理部材についても、同様にして排水処理構造を作製し、キャスター試験を行なった。
【0055】
[評価]
実施例1の排水処理部材は、ハンドローラーにて蓋部材の差込み部を溝部材の受入れ空間部に容易に嵌め入れることができたが、比較例1の排水処理部材は、差込み部がやや蛇行し、嵌め入れることがやや困難であった。
また、実施例1の排水処理部材は、車輪を1000往復させても蓋部材が溝部材から外れなかったが、比較例1の排水処理部材は、車輪を3往復させたところで、差込み部が受入れ空間部から離脱し、蓋部材が溝部材から外れてしまった。
【符号の説明】
【0056】
A 排水処理部材
B 排水処理構造
D ホース接続具
1 溝部材
11 溝部材の底板部
12,13 溝部材の土手部
121 基底部
122,123 突出部
124,125 係止部
19 溝部材の長溝
2 蓋部材
3 蓋部材の本体部
4 受入れ空間部
6 差込み部
8 ホース接続具のケース体
81 ホース接続具の筒部
82 ホース接続具の通水口
91 床面
97 ドレインホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19