(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】ファンフィルタユニットにおける濾過エアの均一吹き出し装置
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20240813BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20240813BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20240813BHJP
【FI】
F24F7/06 C
B01D46/00 F
F24F8/108 120
F24F8/108 210
(21)【出願番号】P 2021090301
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】500054031
【氏名又は名称】株式会社上村工業
(74)【代理人】
【識別番号】100224487
【氏名又は名称】元吉 剛一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】永島 郁二
(72)【発明者】
【氏名】上村 佳一
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-205621(JP,A)
【文献】特開2014-181823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
B01D 46/00
F24F 8/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの外気に面す開口面にモータを中心とするファンを横架取り付け、ケーシングの室側の開口面にフィルタ濾過紙を張設してなるファンフィルタユニットにおいて、ファンの裏側に至近距離を置いて不回転の遮蔽板を設けて、回転するファンとフィルタ濾過紙の間に入りつつあるエアがその粘性によりファンに付着して外方に反転することを防止して中央に向けて直進させて、フィルタ濾過紙の中央部分を含むフィルタの全面より均一にて濾過吹き出しするようにし
、前記ファンの回転軸の延長線上から見た前記遮蔽板の外周のサイズは前記ファンの外周のサイズと同じであり、前記遮蔽板は前記ファンに重なるように配置されていることを特徴とするファンフィルタユニットにおける濾過エアの均一吹き出し装置。
【請求項2】
取付板のモータ部分に外気を循環させる流通孔を設けてモータを冷却する外気の循環通路を形成する請求項1に記載のファンフィルタユニットにおける濾過エアの均一吹き出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はクリーンルームの天井,側壁などにフィルタ面を内,ファンを外に向けて設備するファンフィルタユニットにおいて、吸い込みエアをフィルタの中央部分を含む全面より均一に濾過吹き出しするようにした装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この装置は従来より角箱形のケーシングの外気に面す外側開口面にモータを中心にして外部エアを吸引するファンを横架取付け、内側開口面にフィルタ濾過紙を張設して構成している。そしてフィルタ濾過紙を通過する濾過エアはJISの規格に順応するようにすることが求められている。
【0003】
特開2005ー3243号公報はこのファンフィルタユニットにおいてファンとフィルタ濾過紙間の間隙の中間に細孔を多設する案内板11を設けて濾過吹き出し風量を調整することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近時、ケーシングの内側開口面と外側開口面間の幅を狭くする、いわゆるケーシングを薄形とすることにより、
図3に示すようにファンとフィルタ濾過紙間の幅が狭くなることで、吸い込みエアは粘性によりファンの裏面に付着することが強まって外方向(矢印D)に反転して流れてフィルタ濾過紙より吹き出すエアに外側を速く多とし、中央に行くにしたがって遅く少となる(矢印E)という課題が生じている。
すなわち、JIS B9922 クリーンベンチの附属書 ファンフィルタユニットの要求値は、「個々の測定点(中心部から外周にかけて一定の間隔をおいて定めた位置)における風速は,平均風速の±20%以内とする。」と規定しており、
図3のファンフィルタユニットはこの規定を満たしていないことになる。
エアの粘性は粘度μとして約0.01mpa・s(ミリパスカル秒)、水の100分の1程度と小さいが、粘性による付着にて気流に変化が生ずることが知られている。
【0006】
なお、前記の特開2005-3243号公報はファンとフィルタ濾過紙間の間隙の中間に細孔を多設する案内板11を設けるという記載があるが、この公報はエアに粘性があることの記述が一切なく、しかも案内板11はファンの裏側から離れているために送り込まれたエアは案内板11があるにかかわらずファンに付着して外方向へ反転して流れることを阻止することができないばかりか、ファンとフィルタ濾過紙間の間隙を二分するためにフィルタ濾過紙を通る吸い込みエアの圧力エネルギーを減退させているという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決するもので、角箱形形状のケーシングの外側開口面に面すファンの裏側に至近の間隔を置いて不回転の遮蔽板を取り付けて、ファンの裏側に送り込まれるエアがその粘性によりファンの裏側に付着して外方向に反転して流れることを防止してフィルタ濾過紙の中央部分も外側と同速同量において均一に濾過エアを吹き出すようにして課題を解決する。
【0008】
本発明がファンの裏面に設ける不回転の遮蔽板はできる限りファンに近づけることが望まれるが、組立て精度、ファンの回転振動による振れなどを考慮してファンから4~5mmの間隔を置いて設けることになる。
【0009】
不回転の遮蔽板を設けることによって、モータ1の周囲のエアの入れ替えが起こらないことでモータが過熱損傷するおそれが生ずるので、モータ1とファン3の取付板3aのモータ1上の部分に数個にてエアの流通孔6を設けてモータ1の周囲のエアが圧力差に誘引され、ファン3と遮蔽板4間の隙間からモータ1の周囲に流れ込む気流(矢印C)を発生させてモータ1を冷却して過熱による損傷を防止するようにして解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のファンフィルタユニットは薄形によってファンとフィルタ濾過紙間の間隔が狭くなって吸い込みエアの粘性によるファンへの付着が強まるにかかわらず、フィルタ濾過紙の中央部分も外側と同速同量においてクリーンエアを濾過吹き出しするという効果を生ずる。
【0011】
モータの過熱損傷が確実に防止されるという効果を生ずる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の1実施例を示すファンフィルタユニットの断面図
【
図2】同、外気をモータの周囲に循環させる流通孔を設けた例を示す断面図
【
図3】吸い込みエアがその粘性により外方向に反転して流れる従来例を示す断面図
【符号の説明】
【0013】
1はケーシング
2はモータ
3はファン
3aはその取付板
4は遮蔽板
5はフィルタ濾過紙
6は流通孔
7はファンフィルタユニット
Aはエアの粘性により生ずる外方向への気流
Bは吹き出し濾過エア
Cはモータ周囲に流れる気流
Dは反転して外方向へ向かう気流
Eは外側が速く、中央に行くにしたがって遅くなる吹き出し濾過エア
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、内外の開口両面の幅を狭くして薄形とするファンフィルタユニットにおいて、外気を吸引する回転ファンの裏側に至近距離を置いて不回転の遮蔽板を設けて、ファンの吸い込みエアが粘性によりファンの裏面に付着して外方向に反転して向かう遠心気流の発生を防止するようにして、フィルタ濾過紙からの吹き出しエアの風速をJIS B9922のクリーンベンチの付属書 ファンフィルタユニットの要求値を満たすように構成する。
【0015】
本発明は回転するファンの裏面に至近の距離を置いて不回転の遮蔽板を取り付けて、吸い込みエアがその粘性によりファンに付着することを防止して吸い込みエアを中央に向けて流れるようにして、フィルタ濾過紙の中央部分も外側と同じ吹き出し風速にする。つまり中央部分も外側と同側となるのである。
【実施例1】
【0016】
以下
図1乃至
図2に基づいて本発明の実施例を説明する。
薄形とする角箱形形状のケーシング1の外気に接する開口にモータ2を中心にしてエア吸い込み用のファン3を横架取り付けする。3aはその取付板である。
【0017】
ファン3の裏側に至近の4~5mm程度の間隔を置いて不回転の遮蔽板4を取り付ける。遮蔽板4はファン3と同形の大きさである。
【0018】
ケーシング1の室内に面す側の開口にHEPAフィルタ,ULPAフィルタなどのフィルタ濾過紙5を張設する。なお6はモータ2の過熱を防止するため、取付板3aの外気に面した4箇所などに設けたエアの流通孔である。
【0019】
このようにして形成したファンフィルタユニット7はクリーンルームの天井,側壁(図示してない)などに設備する。
【0020】
ファン3の回転により外気を吸い込みしたエアは矢印Aに沿ってファン3の裏側に送られるが、ケーシング1の薄形によってファン3とフィルタ濾過紙5との間の間隔が狭いことで、送り込まれたエアはその粘性によりファンに付着することが強まるが、ファン3の裏側に至近の距離にて設けた不回転の遮蔽板4の存在によって、吸い込みエアがファン3に付着することが防止されるために吸い込みエアは中央に向けて直進して、フィルタ濾過紙5の中央部分も外側と同じ風速にて均一に濾過吹き出しすることになる。
【0021】
ファン3とフィルタ濾過紙5間の幅がケーシング1の薄形によって狭くなることでこの間隙内の吸い込みエアのフィルタ濾過エネルギーは大きく増大して速くなる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明はファンフィルタユニットにおいてフィルタの中央部分も外側と同じ風速にて濾過エアを吹き出すことで広く利用されるものである。