(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20240813BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240813BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04313
G08C15/00 D
(21)【出願番号】P 2021091162
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】飼沼 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 雄介
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184219(JP,A)
【文献】特開2018-173826(JP,A)
【文献】特開2004-165138(JP,A)
【文献】特開2001-102063(JP,A)
【文献】特開2020-170596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00-25/04
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を含む燃料電池システムを制御する制御部と、
前記燃料電池システムに関するデータを取得するセンサと、
記憶部と、を備える燃料電池システムであって、
前記制御部は、
前記センサにより取得されるデータを第1の周期で前記記憶部に記憶し、
前記燃料電池システムの第1のエラーが発生していない場合には、前記
記憶部に記憶されている前記データを第
2の周期で情報収集端末へ送信し、
前記燃料電池システムの前記第1のエラーが発生した場合には、前記
記憶部に記憶されている前記データを前記第1の周期よりも
長く、かつ、前記第2の周期よりも短い第
3の周期で前記情報収集端末へ送信することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって
、
前記制御部は、
前記第1のエラーが発生した場合には、前記記憶部に記憶されている前記データのうち、前記第1のエラーが発生した時点の第1所定時間前から、前記第1のエラーが発生した時点の第2所定時間後までのデータを、前記第
3の周期で前記情報収集端末へ送信する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、
前記第1のエラーが発生した時点の前記第1所定時間前から、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までのデータを、前記情報収集端末へ送信中に、前記第1のエラーとは異なる第2のエラーが発生した場合
で、かつ、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後から前記第2のエラーが発生した時点までの時間が前記第1所定時間より短い場合には、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後から
前記第2のエラーが発生した時点までのデータと、前記第2のエラーが発生した時点から前記第2のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までのデータ
とを、追記して前記情報収集端末へ送信する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、
前記第1のエラーが発生した時点の前記第1所定時間前から、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までに取得された前記第1のエラーに関する第1のデータを、前記情報収集端末へ送信中に、前記第1のエラーとは異なる第2のエラーが発生した場合には、前記第1のエラーに関する前記第1のデータと、前記第2のエラーが発生した時点の前記第1所定時間前から、前記第2のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までに取得された前記第2のエラーに関する第2のデータと、を区別して前記第
3の周期で前記情報収集端末へ送信する
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムでは、エラー発生の原因を突き止めて、正常に動作させるために、燃料電池システムにかかわるセンサ値や、制御変数などのデータを収集して、情報収集端末へ送信する必要がある。情報収集端末では、送信されたデータを上位装置であるサーバへ送信して、異常解析や設計開発に使用される。
【0003】
例えば、燃料電池システムにおける各種計器による計測結果などのデータを情報収集端末において収集できる燃料電池システムに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃料電池システムのエラーに関係がない全てのデータを情報収集端末やサーバへアップロードすると、データ通信量が増加し、情報収集端末の消費電力の増加する場合や情報収集端末とサーバとの間の通信料金の増加する場合があるため好ましくない。
【0006】
また、燃料電池システムと情報収集端末間をCANで接続している場合には、データ通信量の増加に伴い、燃料電池システムと情報収集端末間におけるCANのバスの負荷が増加するという問題があるため好ましくない。
【0007】
また、燃料電池システムに関する全てのデータが情報収集端末へ送信されると、情報収集端末からサーバへアップロードされるデータの通信量も多くなる。その結果、サーバのデータ蓄積量が増加し、サーバのリソースを補強しなければならず、管理費の増加が懸念されるため好ましくない。
【0008】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池システムのエラーに関するデータの通信量を必要最低限とすることにより、燃料電池システムから情報収集端末へ送信されるデータの通信量の削減を図ることができる燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一つの態様の燃料電池システムは、燃料電池を含む燃料電池システムを制御する制御部と、前記燃料電池システムに関するデータを取得するセンサと、を備える。前記制御部は、前記燃料電池システムの第1のエラーが発生していない場合には、前記センサにより取得された前記データを第1の周期で情報収集端末へ送信し、前記燃料電池システムの前記第1のエラーが発生した場合には、前記センサにより取得された前記データを前記第1の周期よりも短い第2の周期で前記情報収集端末へ送信する。
【0010】
以上の構成により、エラーが発生していない場合には、制御部は、必要最低限の周期で燃料電池システムに関するデータを情報収集端末へ送信する。これにより、燃料電池システムから情報収集端末へ送信されるデータの通信量を抑制することができる。これに対し、エラーが発生した場合には、制御部は、エラーが発生していない場合に送信される周期よりも短い周期で燃料電池システムのエラーに関するデータを情報収集端末へ送信する。すなわち、エラー発生時には、センサ値や、制御変数、エラー情報などのデータを短い頻度で情報収集端末へ送信することができ、エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるための必要十分な量のデータを供給することができる。
【0011】
また、前記燃料電池システムは、前記センサにより取得された前記データを記憶する記憶部を更に備える。前記制御部は、前記第1のエラーが発生した場合には、前記記憶部に記憶されている前記データのうち、前記第1のエラーが発生した時点の第1所定時間前から、前記第1のエラーが発生した時点の第2所定時間後までのデータを、前記第2の周期で前記情報収集端末へ送信する。
【0012】
これにより、エラーが発生した場合には、制御部は、エラーが発生した時点から遡って、エラーが発生していない場合に送信される周期よりも短い周期で、エラーに関するデータを情報収集端末へ送信する。このため、エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるために必要十分な量のデータを供給することができる。
【0013】
また、前記燃料電池システムの前記制御部は、前記第1のエラーが発生した時点の前記第1所定時間前から、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までのデータを、前記情報収集端末へ送信中に、前記第1のエラーとは異なる第2のエラーが発生した場合には、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後から、前記第2のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までのデータを、追記して前記情報収集端末へ送信する。
【0014】
これにより、第1のエラーに関するデータの送信中に新たな別の第2のエラーが発生した場合には、制御部は、各エラーに対応するデータのうち重複するデータの送信を省略して差分だけを追加して送信する。これにより、制御部は、燃料電池システムに関する必要最低限のデータを情報収集端末へ送信することができ、燃料電池システムから情報収集端末へ送信されるデータの通信量を削減することができる。
【0015】
また、前記燃料電池システムの前記制御部は、前記第1のエラーが発生した時点の前記第1所定時間前から、前記第1のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までに取得された前記第1のエラーに関する第1のデータを、前記情報収集端末へ送信中に、前記第1のエラーとは異なる第2のエラーが発生した場合には、前記第1のエラーに関する前記第1のデータと、前記第2のエラーが発生した時点の前記第1所定時間前から、前記第2のエラーが発生した時点の前記第2所定時間後までに取得された前記第2のエラーに関する第2のデータと、を区別して前記第2の周期で前記情報収集端末へ送信する。
【0016】
これにより、エラーに関するデータの送信中に新たな別の第2のエラーが発生した場合には、制御部は、各エラーに対応するデータを区別して情報収集端末へ送信する。このため、各エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるために必要なデータを明確に分けてデータを供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料電池システムのエラーに関するデータの通信量を必要最低限とすることにより、燃料電池システムから情報収集端末へ送信されるデータの通信量の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係わる情報収集システムの一例を示す図である。
【
図2】バッファデータと、送信データとの関係を説明する図である。
【
図3】バッファデータと、送信データとの関係を説明する図である。
【
図4】燃料電池システムと、情報収集端末との接続関係の一例を示す図である。
【
図5】燃料電池システムのFCECUと、情報収集端末の主制御基盤とのデジタル信号回路の一例を示す図である。
【
図6】燃料電池システムのFCECUで実行されるデータ送信処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係わる情報収集システムの一例を示す図である。情報収集システム1は、燃料電池ユニット100と、サーバ200とを備える。情報収集システム1は、
図1に示していない他の構成を備えていてもよい。
【0021】
図1に示す燃料電池ユニット100は、フォークリフトなどの産業車両や電気自動車などの車両に搭載され、負荷に電力を供給する。なお、負荷は、走行用モータや荷役モータ、電装部品、コンピュータやメモリなどに電力を供給するための電源などである。
【0022】
燃料電池ユニット100は、燃料電池システム10と、情報収集端末20とを備える。燃料電池ユニット100は、
図1に示していない他の構成を備えていてもよい。燃料電池システム10は、燃料電池11と、蓄電装置12と、センサ13と、メモリ14と、FC主制御基板(以下、「FCECU」と呼ぶ)15と、リレー16とを備える。燃料電池システム10は、
図1に示していない他の構成を備えていてもよい。
【0023】
燃料電池11は、水素タンクから供給される水素と、大気中から供給される空気中の酸素との化学反応により、電気エネルギーを生成する。すなわち、燃料電池11は、水素と酸素の化学反応により発電する。蓄電装置12は、燃料電池11により発電された電力を燃料電池11の発電状況や負荷の状況に応じて蓄電する。
【0024】
センサ13は、燃料電池11や蓄電装置12に関するセンサ値や制御変数を取得する。センサ値は、情報収集端末20が収集するデータの一種である。制御変数は、燃料電池システム10を制御するのに必要な変数の一つである。センサ13は、FCECU15が制御対象を制御する際に参照する参照情報を入力するセンサである。センサ13が取得するセンサ値として、例えば、電圧、電流、温度、圧力、流量、濃度などのセンサ値を取得する。センサ13が取得するセンサ値には、例えば、燃料電池11を構成するセルごとの電圧、温度、燃料電池11の排気(オフガス)の温度、外気の温度などの各種情報が含まれる。なお、FCECU15には、例えば、汎用のOS(Operating System)とは異なる専用のOSが搭載されている。
【0025】
メモリ14は、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などにより構成され、プログラム、センサ13により取得された各種センサ値や制御変数、エラー情報などのデータを記憶している。メモリ14には、センサ値や制御変数に対応する閾値を記憶してもよい。各種センサ値や制御変数、エラー情報などのデータは、メモリ14のうち、例えば、不揮発性の記憶装置に記憶してもよい。メモリ14は、燃料電池システム10の内部に備えられている。
図1では、メモリ14は、FCECU15とは別に構成されているがこの限りではなく、FCECU15の内部に構成されていてもよい。
【0026】
FCECU15は、燃料電池システム10全体の処理および動作を制御するものである。FCECU15は、制御部に対応する。FCECU15は、たとえば、汎用なICなどによって構成される。なお、FCECU15は汎用なICの代わりに、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device))などにより構成されていてもよい。FCECU15には、制御対象として、燃料電池11と、蓄電装置12と、センサ13と、メモリ14とが、それぞれ電気的に接続されている。
【0027】
FCECU15は、センサ13により取得したセンサ値や制御変数を取得する。また、FCECU15は、センサ13により取得したセンサ値や制御変数がエラーであるか否か、すなわち、燃料電池システム10にエラーが発生したか否かを判定する。エラーの判定結果は、エラー情報としてメモリ14に記憶される。センサ値や制御変数がエラーであるか否かの判定は、例えば、メモリ14に記憶されている所定の閾値との比較により判定することができる。センサ値や制御変数がエラーであるか否か、すなわち、燃料電池システム10にエラーが発生したか否かの判定は、他の方法により実施してもよい。
【0028】
FCECU15は、センサ値や制御変数がエラーである場合には、エラーに対応するエラー情報を燃料電池システム10自身へ通知する。FCECU15は、燃料電池システム10の動作フェーズに関連したエラーに対応するエラー情報を燃料電池システム10自身へ通知してもよい。動作フェーズとして、例えば、基板電源ONフェーズ、センサチェックフェーズ、リレー・コンタクタONフェーズ、水素入れフェーズ、エア入れフェーズ、発電フェーズなどを含む複数のフェーズに分類してもよい。
【0029】
エラー情報とは、燃料電池システム10のエラーを解析するのに必要なセンサ値や制御変数が対応づけされた識別情報である。エラー情報は、燃料電池システム10の各動作フェーズに対応付けられて設定されていてもよい。したがって、例えば、動作フェーズに対応したエラー情報として、任意の識別記号などを採用することができる。FCECU15は、センサ値や制御変数がエラーである場合には、エラーに対応するエラー情報を燃料電池システム10自身へ通知する。
【0030】
図2、
図3は、バッファデータと、送信データとの関係を説明する図である。
図2(1)は、燃料電池システム10にエラーが発生していない場合のバッファデータと、送信データとの関係を示している。
図2(2)は、燃料電池システム10にエラーが発生した場合のバッファデータと、送信データとの関係を示している。
図3は、燃料電池システム10にエラーが複数回発生した場合のバッファデータと、送信データとの関係を示している。
【0031】
FCECU15は、センサ13から取得したセンサ値や制御変数の情報、通知されたエラー情報のデータをバッファデータとして、任意のサンプリング周期c1でメモリ14に記憶する。サンプリング周期c1は、例えば、1ms~数100msのうち任意の周期に設定してもよい。
図2、
図3の実施形態においては、サンプリング周期c1は、100msに設定されている。
【0032】
FCECU15は、任意のサンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータのうち、任意の送信周期で情報収集端末20へデータを送信する。以下、メモリ14に記憶されているバッファデータのうち、任意の送信周期で情報収集端末20へ送信されるデータを「送信データ」と呼ぶ。任意の送信周期は、例えば、1ms~数10s(秒)のうち任意の周期に設定してもよい。
図2、
図3の実施形態においては、エラーが発生していない場合の送信周期c2(第1の送信周期)は、1s(秒)に設定され、エラーが発生した場合の送信周期c3(第2の送信周期)は、100msに設定されている。
図2、
図3の実施形態においては、サンプリング周期c1と、エラーが発生した場合の送信周期c3と、はそれぞれ同じ周期に設定されている。サンプリング周期c1と、エラーが発生した場合の送信周期c3と、はそれぞれ異なる周期に設定してもよい。
【0033】
FCECU15は、燃料電池システム10にエラーe1(第1のエラー)が発生しているか否かに応じて、異なる周期で情報収集端末20へ送信データを送信する。燃料電池システム10にエラーe1が発生していない場合には、
図2(1)に示すように、FCECU15は、任意のサンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータから送信周期c2で選択された送信データを情報収集端末20へ送信する。これに対し、燃料電池システム10にエラーe1が発生した場合には、
図2(2)に示すように、FCECU15は、任意のサンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータから送信周期c2で選択された送信データを情報収集端末20へ送信する。送信周期c3は、送信周期c2よりも短い周期に設定されている。
【0034】
図2の実施形態では、任意のサンプリング周期c1と、送信周期c3とは同じ周期に設定されているがこの限りではなく、異なる周期に設定されていてもよい。異なる周期とする場合、送信周期c3は、任意のサンプリング周期c1よりも長く、かつ、送信周期c2よりも短い周期に設定される。
【0035】
具体的には、
図2(1)に示すように、燃料電池システム10にエラーe1が発生していない場合には、FCECU15は、100msのサンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータから1s(秒)の送信周期c2で選択された送信データを情報収集端末20へ送信する。したがって、エラーが発生していない場合には、FCECU15は、必要最低限の周期で燃料電池システム10に関するバッファデータを情報収集端末20へ送信する。これにより、FCECU15は、メモリ14に記憶されたバッファデータのうち間引かれたデータのみを送信データとして情報収集端末20へ送信することにより、燃料電池システム10から情報収集端末20へ送信されるデータの通信量を抑制することができる。
【0036】
これに対し、
図2(2)に示すように、燃料電池システム10にエラーe1が発生した場合には、FCECU15は、100msのサンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータから100msの送信周期c3で選択された送信データを情報収集端末20へ送信する。したがって、エラーが発生した場合には、FCECU15は、エラーが発生していない場合の1s(秒)の送信周期c2よりも短い100msの送信周期c3で燃料電池システム10に関するバッファデータを情報収集端末20へ送信する。これにより、エラー発生時には、センサ値や、制御変数、エラー情報などの燃料電池11に関するデータを短い頻度でより多く情報収集端末20へ送信することができる。このため、エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるための必要十分な量のバッファデータを供給することができる。
【0037】
また、FCECU15は、エラーe1が発生した場合には、メモリ14に記憶されているバッファデータのうち、エラーe1が発生した時点et1の時間t1(第1所定時間)前から、エラーe1が発生した時点et1の時間t2(第2所定時間)後までのバッファデータに対応する送信データを、送信周期c3で情報収集端末20へ送信する。
【0038】
図2の実施形態では、時間t1として3s(秒)が設定され、時間t2として1s(秒)が設定されている。具体的には、
図2(2)に示すように、燃料電池システム10にエラーe1が発生した場合には、FCECU15は、メモリ14に記憶されたバッファデータのうち、エラーe1が発生した時点et1の3s(秒)前から、エラーe1が発生した時点et1の1s(秒)後までの合計4s(秒)分のバッファデータed1に対応する送信データef1を、100msの送信周期c3で情報収集端末20へ送信する。この場合、合計4s(秒)分の送信データef1(バッファデータed1)は、100msの送信周期c3で約4s(秒)をかけて情報収集端末20へ送信される。
【0039】
これにより、エラーe1が発生した場合には、FCECU15は、エラーe1が発生した時点et1から遡って、エラーe1が発生していない場合に送信される送信周期c2よりも短い送信周期c3で、燃料電池システム10のエラーe1に関するデータを情報収集端末20へ送信する。このため、エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるために必要十分な量のデータを供給することができる。なお、合計4s(秒)分の100msの送信周期c3の送信データが送信された後、FCECU15は、再びメモリ14に記憶されているバッファデータを、送信周期c2で情報収集端末20へ送信する。
【0040】
また、FCECU15は、エラーe1のバッファデータed1に対応する送信データef1の送信中に、エラーe1とは異なるエラーe2が発生したか否かに応じて、情報収集端末20へ送信する送信データを追記して送信してもよい。例えば、FCECU15は、エラーe1が発生した時点et1の時間t1前から、エラーe1が発生した時点et1の時間t2後までのバッファデータed1に対応する送信データef1を、情報収集端末20へ送信する期間(以下、「データ送信期間dt1」と呼ぶ)中に、エラーe2が発生したか否かを判別する。
【0041】
データ送信期間dt1中にエラーe2が発生した場合には、FCECU15は、エラーe1が発生した時点et1の時間t2後の時点et3から、エラーe2が発生した時点et2の時間t2後までのバッファデータed2を、送信データef2として追記して情報収集端末20へ送信する。すなわち、この場合、エラーe2が発生した時点et2の時間t3前から、エラーe2が発生した時点et2の時間et2後までのバッファデータed2が送信データef2として追記して送信される。
【0042】
エラーe1に関するデータ送信期間dt1中に新たなエラーe2が発生した場合には、FCECU15は、エラーe1に関する4s(秒)分の送信データに加えて、エラーe2に関する4s(秒)分の合計8s(秒)分の送信データを送信しなければならないところ、重複するデータの送信を省略して差分だけ追記して送信することができる。
【0043】
具体的には、
図3に示すように、FCECU15は、メモリ14に記憶されたバッファデータのうち、エラーe1が発生した時点et1の3s(秒)前から、エラーe1が発生した時点et1の1s(秒)後までの合計4s(秒)分のバッファデータed1に対応する送信データef1に対し、エラーe1が発生した時点et1の1s(秒)後からエラーe2が発生した時点et2までの1s(秒)分、および、エラーe2が発生した時点et2から1s(秒)後までの合計2s(秒)分のバッファデータed2に対応する送信データef2を追記して送信する。
【0044】
このため、FCECU15は、送信データとして6s(秒)分だけ送信すれば足りるため、各エラーe1、エラーe2に対応する送信データのうち重複する2s(秒)分のデータの送信を省略して差分だけを追加して送信することができる。これにより、FCECU15は、燃料電池システム10に関する必要最低限のデータを情報収集端末20へ送信することができ、燃料電池システム10から情報収集端末20へ送信されるデータの通信量を削減することができる。したがって、通信に必要な情報収集端末20の消費電力の必要最低限に抑えることができる。また、燃料電池システム10と情報収集端末20とを接続するCANバスの負荷を抑えることができ、消費電力と通信料金の低減を図ることができる。
【0045】
なお、汎用OSが搭載されている情報収集端末20は、燃料電池システム10のFCECU15よりも起動が遅い。このため、FCECU15は、情報収集端末20が起動していない場合には、情報収集端末20が起動するまで、センサ13により取得されるセンサ値や制御変数を含むデータをメモリ14に一時記憶する。その後、情報収集端末20が起動した場合には、FCECU15は、メモリ14に一時記憶していたデータを情報収集端末20へ送信する。
【0046】
リレー16は、FCECU15の制御に基づき、蓄電装置12から情報収集端末20へ供給する12Vの電力の供給を開始または停止を行う。キーONされた場合には、FCECU15は、リレー16をONにして情報収集端末20への電力の供給を開始し、情報収集端末20の稼働を開始させる。キーOFFされた場合には、FCECU15は、リレー16をOFFにして情報収集端末20への電力の供給を停止し、情報収集端末20の稼働を終了させる。
【0047】
情報収集端末20は、電源制御部21と、主制御基盤22と、携帯通信アンテナ23とを備える。
【0048】
電源制御部21は、燃料電池システム10と電気的に接続され、燃料電池システム10から供給された12Vの電力を主制御基盤22へ供給する。
【0049】
主制御基盤22は、情報収集端末20全体の処理および動作を制御するものである。主制御基盤22は、たとえば、汎用なICなどによって構成される。なお、主制御基盤22は汎用なICの代わりに、CPU、マルチコアCPU、またはプログラマブルなデバイス(FPGAやPLD)などにより構成されていてもよい。主制御基盤22には、制御対象として、電源制御部21と、携帯通信アンテナ23とが、それぞれ電気的に接続されている。主制御基盤22には、汎用のOSが搭載されているため、燃料電池システム10よりも起動に時間がかかる。また、情報収集端末20の主制御基盤22は、燃料電池システム10のFCECU15と電気的に接続されている。
【0050】
図4は、燃料電池システム10と、情報収集端末20との接続関係の一例を示す図である。
図4に示すように、燃料電池システム10(FCECU15)と、情報収集端末20(主制御基盤22)との間で、バッテリ電圧、GNDおよびデジタル信号、CAN通信のデータが通信可能に接続されている。
【0051】
デジタル信号は、情報収集端末20の主制御基盤22から燃料電池システム10のFCECU15に対し出力されるONまたはOFFの信号である。情報収集端末20の電源がONの状態、すなわち、情報収集端末20のCAN通信が可能な状態である場合には、情報収集端末20の主制御基盤22は、燃料電池システム10に対し出力するデジタル信号をOFFからONへ切り替える。情報収集端末20の電源がOFFの状態、すなわち、情報収集端末20が終了状態である場合には、情報収集端末20の主制御基盤22は、燃料電池システム10に対し出力するデジタル信号をONからOFFへ切り替える。
【0052】
図5は、燃料電池システム10のFCECU15と、情報収集端末20の主制御基盤22とのデジタル信号回路の一例を示す図である。デジタル信号回路として、例えば、プルアップ回路を採用することができる。
図5に示すように、デジタル信号回路は、コネクタ間の端子電圧により信号のON/OFF(12V/0V)により、電源がOFF状態であるのか、またはON状態でありCAN通信が可能な状態であるのかを判定することができる。
【0053】
図6は、燃料電池システム10のFCECU15で実行されるデータ送信処理の一例を示すフローチャートである。
【0054】
はじめに、FCECU15は、燃料電池システム10でエラーe1が発生したか否かを判定する(ステップS11)。燃料電池システム10でエラーが発生したか否かを判定する処理については、
図6に示すデータ送信処理とは別個独立にまたは並行して実行される。
【0055】
燃料電池システム10でエラーe1が発生していない場合(ステップS11:NO)には、FCECU15は、サンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータから1つのサンプリング周期分のバッファデータを取得する(ステップS12)。FCECU15は、取得した1つのサンプリング周期分のバッファデータに対応する送信データを送信周期c2で情報収集端末20へ送信する(ステップS13)。送信データが送信され、ステップS13の処理が終了すると、処理はステップS11に戻る。
【0056】
燃料電池システム10でエラーe1が発生した場合(ステップS11:YES)には、FCECU15は、サンプリング周期c1でメモリ14に記憶されたバッファデータから遡ってバッファデータを取得する(ステップS14)。この処理では、FCECU15は、バッファデータのうち、エラーe1が発生した時点et1の時間t1前から、エラーe1が発生した時点et1の時間t2後までのバッファデータを遡って取得する。FCECU15は、遡って取得したエラーe1が発生した時点et1の時間t1前から、エラーe1が発生した時点et1の時間t2後までのバッファデータに対応する送信データを送信周期c3で情報収集端末20へ送信する(ステップS15)。
【0057】
FCECU15は、ステップS15で送信した送信データのデータ送信期間dt1中にエラーe1とは異なる新たなエラーe2が発生したか否かを判定する(ステップS16)。
【0058】
ステップS15で送信した送信データのデータ送信期間dt1中に新たなエラーe2が発生した場合(ステップS16:YES)には、FCECU15は、エラーe1が発生した時点et1の時間t2後からエラーe2が発生した時点et2から時間t2後までの合計のバッファデータed2に対応する追加分の送信データef2を送信周期c3で情報収集端末20へ送信する(ステップS17)。この処理が終了すると、処理はステップS18へ進む。ステップS15で送信した送信データのデータ送信期間dt1中に新たなエラーe2が発生していない場合(ステップS16:NO)には、処理はステップS18へ進む。
【0059】
ステップS18において、FCECU15は、ステップS15で送信した送信データまたはステップS17で送信した追加分の送信データの送信が終了したか否かを判定する(ステップS18)。ステップS15で送信した送信データまたはステップS17で送信した追加分の送信データの送信が終了していない場合(ステップS18:NO)には、処理はステップS16に戻り、ステップS15で送信した送信データまたはステップS17で送信した追加分の送信データの送信が終了するまで、ステップS16からステップS18の処理が繰り返し実行される。
【0060】
ステップS15で送信した送信データおよびステップS17で送信した追加分の送信データの送信が終了した場合(ステップS18:YES)には、処理はステップS11へ戻り、処理の終了指示を受け付けるまで、ステップS11からステップS18の処理が繰り返し実行される。
【0061】
以上の構成により、エラーe1が発生していない場合には、FCECU15は、必要最低限の送信周期c2で燃料電池システム10に関する送信データを情報収集端末20へ送信する。これにより、燃料電池システム10から情報収集端末20へ送信されるデータの通信量を抑制することができる。これに対し、エラーe1が発生した場合には、FCECU15は、送信周期c2よりも短い送信周期c3で燃料電池システム10のエラーに関する送信データを情報収集端末20へ送信する。すなわち、エラーe1の発生時には、センサ値や、制御変数、エラー情報などのバッファデータに対応する送信データを短い頻度で情報収集端末20へ送信することができ、エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるための必要十分な量のデータを供給することができる。
【0062】
また、エラーe1が発生した場合には、FCECU15は、エラーe1が発生した時点et1から遡って、エラーe1が発生していない場合に送信される送信周期c2よりも短い送信周期c3で、エラーe1に関するデータを情報収集端末20へ送信する。このため、エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるために必要十分な量のデータを供給することができる。
【0063】
また、エラーe1に関する送信データの送信中に新たな別のエラーe2が発生した場合には、FCECU15は、各エラーに対応する送信データのうち重複するデータの送信を省略して差分だけを追加して送信する。これにより、FCECU15は、燃料電池システム10に関する必要最低限のデータを情報収集端末20へ送信することができ、燃料電池システム10から情報収集端末20へ送信されるデータの通信量を削減することができる。
【0064】
<変形例>
上述の実施形態においては、送信データのデータ送信期間dt1中に新たなエラーe2が発生した場合には、FCECU15は、エラーe1が発生した時点et1の時間t2後からエラーe2が発生した時点et2から時間t2後までの合計のバッファデータed2に対応する追加分の送信データef2を送信周期c3で情報収集端末20へ送信しているがこれに限られない。
【0065】
例えば、エラーe1に関する送信データのデータ送信期間dt1中に新たなエラーe2が発生した場合には、FCECU15は、エラーe1に関する送信データsd1(第1のデータ)と、送信データsf2(第2のデータ)が発生した時点et2の時間t1前から、エラーe2が発生した時点et2の時間t2後までに取得されたエラーe2に関する第2のデータと、を区別して送信周期c3で情報収集端末20へ送信してもよい。
【0066】
これにより、エラーe1に関する送信データの送信中に新たな別のエラーe2が発生した場合には、FCECU15は、各エラーに対応するデータを区別して情報収集端末20へ送信する。このため、各エラー発生の原因を突き止めて正常に動作させるために必要なデータを明確に分けてデータを供給することができる。
【0067】
また、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 情報収集システム
10 燃料電池システム
11 燃料電池
12 蓄電装置
13 センサ
14 メモリ
15 FCECU
16 リレー
20 情報収集端末
21 電源制御部
22 主制御基盤
23 携帯通信アンテナ
100 燃料電池ユニット
200 サーバ