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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】定電圧回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
G05F1/56 310K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021117164
(22)【出願日】2021-07-15
(65)【公開番号】P2023013178
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 暁生
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06157176(US,A)
【文献】特開2018-185617(JP,A)
【文献】特開2018-128868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を分割した分割電圧と、参照電圧との差分を増幅した第1電圧を出力する第1利得段と、
一端が入力電圧端子に接続され、他端が出力電圧端子に接続され、ゲートに印加された前記第1電圧に基づいて、前記出力電圧を制御する第1トランジスタと、
前記出力電圧を遅延させた第2電圧を出力する第1回路を含み、前記第2電圧と、前記出力電圧に基づく第3電圧との電圧差に基づいて、第1信号を制御する第2回路と
前記出力電圧を遅延させた第4電圧を出力する第4回路を含み、前記第4電圧と、前記出力電圧に基づく第5電圧との電圧差に基づいて、第3信号を制御する第5回路と
を備え、
前記第1信号が第1論理レベルの場合、第1動作モードが選択されて、前記第1利得段には、第1電流が流れ、前記第1信号が第2論理レベルの場合、第2動作モードが選択されて、前記第1利得段には、前記第1電流よりも大きい第2電流が流れ
前記第1信号及び前記第3信号が前記第1論理レベルの場合、前記第1動作モードが選択されて、前記第1利得段には、前記第1電流が流れ、
前記第1信号及び前記第3信号の少なくとも1つが前記第2論理レベルの場合、前記第2動作モードが選択されて、前記第1利得段には、前記第2電流が流れる
定電圧回路。
【請求項2】
前記第3電圧が前記第2電圧以上である場合、前記第2回路は、前記第1信号を前記第1論理レベルとし、
前記第3電圧が前記第2電圧未満である場合、前記第2回路は、前記第1信号を前記第2論理レベルとする、
請求項1記載の定電圧回路。
【請求項3】
前記第1トランジスタに流れる電流に対応する第3電流と閾値電流との電流差に基づいて、第2信号を制御する第3回路
をさらに備え、
前記第1信号及び前記第2信号が前記第1論理レベルの場合、前記第1動作モードが選択されて、前記第1利得段には、前記第1電流が流れ、
前記第1信号及び前記第2信号の少なくとも1つが前記第2論理レベルの場合、前記第2動作モードが選択されて、前記第1利得段には、前記第2電流が流れる、
請求項1または2記載の定電圧回路。
【請求項4】
前記第3電流が前記閾値電流以下である場合、前記第3回路は、前記第2信号を前記第1論理レベルとし、
前記第3電流が前記閾値電流よりも大きい場合、前記第3回路は、前記第2信号を前記第2論理レベルとする、
請求項3記載の定電圧回路。
【請求項5】
前記第5電圧が前記第4電圧以下である場合、前記第5回路は、前記第3信号を前記第1論理レベルとし、
前記第5電圧が前記第4電圧よりも大きい場合、前記第5回路は、前記第3信号を前記第2論理レベルとする、
請求項1乃至4のいずれか1項記載の定電圧回路。
【請求項6】
前記第1信号が前記第2論理レベルから前記第1論理レベルに移行するタイミングを遅延させた第4信号を生成する第6回路
をさらに備える、
請求項1乃至のいずれか1項記載の定電圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定電圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
定電圧回路の1つとして、リニアレギュレータが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-128868号公報
【文献】特開2012-43259号公報
【文献】特開2010-256990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高速応答及び低消費電力を実現できる定電圧回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る定電圧回路は、出力電圧を分割した分割電圧と、参照電圧との差分を増幅した第1電圧を出力する第1利得段と、一端が入力電圧端子に接続され、他端が出力電圧端子に接続され、ゲートに印加された第1電圧に基づいて、出力電圧を制御する第1トランジスタと、出力電圧を遅延させた第2電圧を出力する第1回路を含み、第2電圧と、出力電圧に基づく第3電圧との電圧差に基づいて、第1信号を制御する第2回路と、出力電圧を遅延させた第4電圧を出力する第4回路を含み、第4電圧と、出力電圧に基づく第5電圧との電圧差に基づいて、第3信号を制御する第5回路とを備える。第1信号が第1論理レベルの場合、第1動作モードが選択されて、第1利得段には、第1電流が流れ、第1信号が第2論理レベルの場合、第2動作モードが選択されて、第1利得段には、第1電流よりも大きい第2電流が流れる。第1信号及び第3信号が第1論理レベルの場合、第1動作モードが選択されて、第1利得段には、第1電流が流れる。第1信号及び第3信号の少なくとも1つが第2論理レベルの場合、第2動作モードが選択されて、第1利得段には、第2電流が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図2図2は、第1実施形態に係る定電圧回路に含まれる第1電圧モニタ回路内の遅延回路の一例を示す回路図である。
図3図3は、第1実施形態に係る定電圧回路のモード選択動作を示すフローチャートである。
図4図4は、第1実施形態に係る定電圧回路の効果を説明する図である。
図5図5は、第1実施形態の変形例に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図6図6は、第2実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図7図7は、第2実施形態に係る定電圧回路のモード選択動作を示すフローチャートである。
図8図8は、第2実施形態に係る定電圧回路のモード選択動作を示すフローチャートである。
図9図9は、第2実施形態に係る定電圧回路の効果を説明する図である。
図10図10は、第3実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図11図11は、第3実施形態の変形例に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図12図12は、第4実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図13図13は、第4実施形態に係る定電圧回路のモード選択動作を示すフローチャートである。
図14図14は、第5実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
図15図15は、第6実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に実施形態が図面を参照して記述される。以下の記述において、略同一の機能及び構成を有する構成要素は同一符号を付され、繰り返しの説明は省略される場合がある。また、ある実施形態についての記述は全て、明示的に又は自明的に排除されない限り、別の実施形態の記述としても当てはまる。
【0008】
各機能ブロックは、以下の例のように区別されていなくてもよい。例えば、一部の機能が例示の機能ブロックとは別の機能ブロックによって実行されてもよい。さらに、例示の機能ブロックがさらに細かい機能サブブロックに分割されていてもよい。どの機能ブロックによって特定されるかによって実施形態は限定されない。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、ある第1要素が別の第2要素に「接続されている」とは、第1要素が直接的又は常時あるいは選択的に導電性となる要素を介して第2要素に接続されていることを含む。
【0010】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る定電圧回路について説明する。本実施形態では、定電圧回路としてリニアレギュレータを例に挙げて説明する。
【0011】
本実施形態の定電圧回路は、動作モードとして、低消費電流モードと高速応答モードとを有する。低消費電流モードは、例えば、負荷がないときに、消費電流を抑制する際に選択される。高速応答モードは、例えば、負荷が発生し出力電圧が変動したときに、定電圧回路を高速に動作させる際に選択される。
【0012】
1.1 構成
1.1.1 定電圧回路の回路構成
本実施形態に係る定電圧回路の回路構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る定電圧回路の一例を示す回路図である。なお、以下の説明では、トランジスタのソース及びドレインを限定しない場合、トランジスタのソースまたはドレインのいずれか一方を「トランジスタの一端」と表記し、トランジスタのソースまたはドレインのいずれか他方を「トランジスタの他端」と表記する。
【0013】
定電圧回路1は、入力電圧端子T1、基準電圧端子T2、出力電圧端子T3、第1利得段10、出力段20、第1電圧モニタ回路30、並びに抵抗素子RF及びRSを含む。
【0014】
定電圧回路1は、第1利得段10及び出力段20を有する増幅器として機能する。
【0015】
入力電圧端子T1には、ノードND1(以下、「電源電圧配線」とも表記する)が接続され、外部から入力電圧VINが印加される。
【0016】
基準電圧端子T2には、ノードND2(以下、「接地電圧配線」とも表記する)が接続される。基準電圧端子T2は、例えば、接地されていてもよいし、接地電圧(VSS)が印加されていてもよい。
【0017】
出力電圧端子T3にはノードND6が接続される。出力電圧端子T3から出力電圧VOUTが出力される。例えば、定電圧回路1を使用する際には、出力電圧端子T3と定電圧回路1の外部に接続された負荷(Load)との間に、容量素子COUTが接続される。容量素子COUTは、出力コンデンサとして機能する。容量素子COUTは、例えば、出力電圧端子T3に接続された負荷(Load)の変動、定電圧回路1と負荷との間に生じる寄生インダクタンス等の影響による出力電圧VOUTの揺らぎ、発振等を抑制する。例えば、容量素子COUTの一方の電極は、出力電圧端子T3に接続され、他方の電極は、接地される(接地電圧配線に接続される)。
【0018】
抵抗素子RF及びRSは、出力電圧VOUTの分圧回路として機能する。抵抗素子RFの一端は、ノードND6に接続され、他端はノードND7に接続される。抵抗素子RSの一端は、ノードND7に接続され、他端は接地される(接地電圧配線に接続される)。ノードND7に印加される電圧をフィードバック電圧VFBとし、抵抗素子RFの抵抗値をrFとし、抵抗素子RSの抵抗値をrSとする。すると、出力電圧VOUTと電圧VFBとは、VOUT=VFB×(1+rF/rS)の関係にある。すなわち、電圧VFBは、出力電圧VOUTを分割した分割電圧である。
【0019】
第1利得段10は、差動増幅回路である。第1利得段10は、参照電圧VREFと電圧VFBとを比較し、その差分に応じた(増幅した)電圧を出力段20に出力する。第1利得段10は、pチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)(以下、「PMOSトランジスタ」とも表記する)P1及びP2、nチャネルMOSFET(以下、「NMOSトランジスタ」とも表記する)N1及びN2、電流源11及び12、並びにスイッチ回路SW1を含む。
【0020】
PMOSトランジスタP1の一端は、ノードND1に接続され、他端及びゲートは、ノードND3に接続される。
【0021】
PMOSトランジスタP2の一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND4に接続され、ゲートはノードND3に接続される。すなわち、PMOSトランジスタP1とP2とは、カレントミラーを構成している。
【0022】
NMOSトランジスタN1の一端は、ノードND3に接続され、他端はノードND5に接続される。NMOSトランジスタN1のゲートには、電圧VFBが印加される。
【0023】
NMOSトランジスタN2の一端は、ノードND4に接続され、他端はノードND5に接続される。NMOSトランジスタN2のゲートには、参照電圧VREFが印加される。参照電圧VREFは、温度または入力電圧VINに依存しない、一定の基準電圧である。
【0024】
電流源11の一端は、ノードND5に接続され、他端はノードND2に接続される。電流源11からノードND2に電流I1aが流れる。
【0025】
スイッチ回路SW1の一端は、ノードND5に接続され、他端は電流源12の一端に接続される。スイッチ回路SW1は、第1電圧モニタ回路30から受信するモード信号MS1に基づいて、動作する。例えば、モード信号MS1は、高速応答モードの場合に、“H”レベルとされ、低消費電流モードの場合に、“L”レベルとされる。例えば、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1が“H”レベルの場合、オン状態(接続状態)とされ、モード信号MS1が“L”レベルの場合、オフ状態(非接続状態)とされる。
【0026】
電流源12の他端は、ノードND2に接続される。電流源12からノードND2に電流I1bが流れる。例えば、電流I1bは、電流I1aよりも大きい電流である。例えば、動作電流I1bは、動作電流I1aの100倍であってもよい。低消費電流モードの場合、第1利得段10(差動増幅回路)には動作電流I1aが流れ、高速応答モードの場合、第1利得段10には動作電流(I1a+I1b)が流れる。動作電流I1aよりも動作電流(I1a+I1b)の方が大きい。このため、低消費電流モードよりも高速応答モードの方が、次段の出力段20を高速に駆動させることができる。
【0027】
出力段20は、定電圧回路1の出力電圧VOUTを制御する。出力段20は、PMOSトランジスタPpを含む。
【0028】
PMOSトランジスタPpの一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND6に接続される。PMOSトランジスタPpのゲートには、ノードND4が接続される。換言すると、PMOSトランジスタPpのゲートには、第1利得段10の出力電圧V1が印加される。PMOSトランジスタPpは、定電圧回路1の出力ドライバとして機能する。出力電圧VOUTを一定にするために、出力電圧VOUTの変動に応じてPMOSトランジスタPpのゲート電圧が変動し、PMOSトランジスタPpのオン抵抗が調整される。
【0029】
例えば、参照電圧VREFと電圧VFBとの電圧差が無い場合、すなわち、VFB=VREFの場合、出力電圧VOUTは、VOUT=VREF×(1+rF/rS)となる。出力電圧VOUTを表す式には、入力電圧VINまたは負荷に流れる負荷電流の項が含まれていない。従って、出力電圧VOUTは、入力電圧VIN及び負荷が変動しても、一定電圧を維持できる。
【0030】
第1電圧モニタ回路30は、遅延回路31及び比較器32を含む。
【0031】
遅延回路31は、出力電圧端子T3、及び比較器32の非反転入力端子に接続される。遅延回路31には、出力電圧端子T3から出力電圧VOUTが印加される。遅延回路31は、出力電圧VOUTの出力タイミングを遅延させ、遅延させた出力タイミングで出力電圧VOUTを電圧VDEL1として比較器32の非反転入力端子に出力する。遅延回路31の構成の詳細については、後述する。
【0032】
比較器32の反転入力端子は、出力電圧端子T3に接続される。比較器32の反転入力端子には、出力電圧端子T3から出力電圧VOUTが印加される。比較器32の非反転入力端子には、遅延回路31から電圧VDEL1が印加される。比較器32の出力端子からモード信号MS1が出力される。例えば、電圧VOUTが低下した場合、電圧VDEL1は、遅延回路31により電圧VOUTよりもタイミングが遅れて低下する。このため、電圧VOUTと電圧VDEL1との間に電位差が生じる。電圧VOUTが電圧VDEL1未満である期間、すなわち、高速応答モードを選択する期間、比較器32は、“H”レベルのモード信号MS1を出力する。他方で、電圧VOUTが電圧VDEL1以上である期間、すなわち、低消費電流モードを選択する期間、比較器32は、“L”レベルのモード信号MS1を出力する。
【0033】
なお、遅延回路31及び比較器32に用いられるトランジスタは、PMOSトランジスタPpと比べて素子のサイズが小さいため、寄生容量による動作遅延は比較的少ない。
【0034】
1.1.2 遅延回路31の構成
遅延回路31の回路構成について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る定電圧回路1に含まれる第1電圧モニタ回路30内の遅延回路31の一例を示す回路図である。
【0035】
遅延回路31は、NMOSトランジスタNZ、容量素子CZ、及びスイッチ回路SWZを含む。
【0036】
NMOSトランジスタNZの一端は、ノードND6に接続され、他端及びゲートは、比較器32の非反転入力端子に接続される。NMOSトランジスタNZは、例えばディプレッション型MOSFETで構成され、比較的高い抵抗成分(インピーダンス)を持つ。なお、NMOSトランジスタNZの代わりに、比較的高い抵抗成分を持つ抵抗素子が設けられてもよい。
【0037】
容量素子CZの一端は、比較器32の非反転入力端子に接続され、他端は接地される(接地電圧配線に接続される)。
【0038】
スイッチ回路SWZは、NMOSトランジスタNSW、及びPMOSトランジスタPSWを含む。
【0039】
NMOSトランジスタNSWの一端は、ノードND6に接続され、他端は比較器32の非反転入力端子に接続される。NMOSトランジスタNSWのゲートには、電圧VRSTが印加される。
【0040】
PMOSトランジスタPSWの一端は、ノードND6に接続され、他端は比較器32の非反転入力端子に接続される。PMOSトランジスタPSWのゲートには、電圧/VRSTが印加される。電圧/VRSTは、電圧VRSTの論理レベルを反転させた電圧である。
【0041】
遅延回路31は、一定期間(例えば数十マイクロ秒)前の出力電圧端子T3の出力電圧VOUTを保持する。これは、出力電圧VOUTが変動すると、NMOSトランジスタNZを通して電流が流れるが、容量素子CZにためられている電荷の放電及び容量素子CZの充電に時間がかかるため、遅延回路31が保持する電圧VOUTは、遅れて変動する(更新される)からである。このため、遅延回路31は、出力電圧端子T3から印加された電圧VOUTの出力タイミングを遅延させることができる。すなわち、遅延回路31は、一定期間前の電圧VOUTを出力することができる。
【0042】
スイッチ回路SWZは、ノードND6と比較器32の非反転入力端子とを接続可能とする。電圧VRSTを“H”レベルにしてスイッチ回路SWZをオンさせると、ノードND6と比較器32の非反転入力端子との間の電位差がなくなるため、比較器32は、“L”レベルのモード信号MS1を出力する。比較器32が頻繁にスイッチ回路SW1のオンオフの切り替えを行うと、定電圧回路1の動作の安定性を損なう可能性がある。このため、例えば、出力電圧端子T3に負荷があり、もはや無負荷ではない場合には、スイッチ回路SWZをオンさせてもよい。なお、スイッチ回路SWZは、遅延回路31から廃されていてもよい。
【0043】
1.2 モード選択動作
本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作を示すフローチャートである。以下では、定電圧回路1が低消費電流モードから高速応答モードに移行した後、高速応答モードから低消費電流モードに移行する場合を例に挙げて説明する。
【0044】
定電圧回路1は、低消費電流モードを実行する(S10)。S10の実行時、第1電圧モニタ回路30は、モード信号MS1を“L”レベルとする。スイッチ回路SW1は、“L”レベルのモード信号MS1に基づいてオフ状態とされる。
【0045】
第1電圧モニタ回路30は、出力電圧VOUTが電圧VDEL1以上である場合(S11_No)、モード信号MS1を“L”レベルに維持する。すなわち、定電圧回路1は、低消費電流モードを維持する。
【0046】
他方で、第1電圧モニタ回路30は、出力電圧VOUTが電圧VDEL1未満である場合(S11_Yes)、モード信号MS1を“H”レベルとする(S12)。換言すると、比較器32において、反転入力端子の電圧VOUTが、非反転入力端子の電圧VDEL1未満である期間、比較器32は、“H”レベルの電圧を出力する。
【0047】
スイッチ回路SW1は、“H”レベルのモード信号MS1を受信すると、オン状態とされる(S13)。この結果、定電圧回路1は、高速応答モードを実行する(S14)。
【0048】
第1電圧モニタ回路30は、出力電圧VOUTが電圧VDEL1未満である場合(S15_Yes)、モード信号MS1を“H”レベルに維持する。すなわち、定電圧回路1は、高速応答モードを維持する。
【0049】
他方で、第1電圧モニタ回路30は、出力電圧VOUTが電圧VDEL1以上である場合(S15_No)、モード信号MS1を“L”レベルとする(S16)。換言すると、比較器32において、反転入力端子の電圧VOUTが、非反転入力端子の電圧VDEL1以上である期間、比較器32は、“L”レベルの電圧を出力する。
【0050】
スイッチ回路SW1は、“L”レベルのモード信号MS1を受信すると、オフ状態とされる(S17)。この結果、定電圧回路1は、低消費電流モードを実行する(S18)。
【0051】
1.3 効果
本実施形態に係る構成であれば、定電圧回路の高速応答及び低消費電力を実現できる。以下、本効果につき、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る定電圧回路1の効果を説明する図である。
【0052】
図4は、本実施形態に係る定電圧回路1の出力電圧の変動を実線で示し、比較例の定電圧回路の出力電圧の変動を点線で示している。また、図4は、本実施形態に係る定電圧回路1における、第1電圧モニタ回路30が出力するモード信号MS1、及びモード信号MS1に基づいて定電流の加算を制御するスイッチ回路SW1の動作を示している。図4の縦軸は、出力電圧端子T3の出力電圧VOUT[V]である。横軸は、時間[μs]である。なお、定電圧回路は、3Vを出力するように設計されている、すなわち、定電圧回路の定常状態の出力電圧は3Vであるとする。また、0μs~100μsまでの間負荷はなく、100μsのときに負荷が接続されたとする。
【0053】
まず、比較例の定電圧回路について説明する。比較例の定電圧回路は、本実施形態に係る定電圧回路1から、第1利得段10の電流源12及びスイッチ回路SW1、並びに第1電圧モニタ回路30が廃された回路である。すなわち、比較例の定電圧回路は、低消費電流モードで常時動作する場合を示している。
【0054】
図4に示すように、比較例の定電圧回路の場合、負荷が接続された100μs以降、出力電圧は3Vから約0.5V低下している。170μs以降、出力電圧は徐々に上昇しているが、300μsでも、出力電圧は3Vに戻っていない。比較例の定電圧回路は、第1利得段10に動作電流I1aが流れるため、高速応答ができない。このため、出力電圧VOUTが低下した場合、比較例の定電圧回路は、設定電圧の3Vに復帰するまでの期間が比較的長くなる。
【0055】
これに対し、本実施形態に係る定電圧回路1の場合、100μsで出力電圧VOUTが低下すると、第1電圧モニタ回路30は、105μsでモード信号MS1を“H”レベルにする。これにより、スイッチ回路SW1はオン状態とされ、第1利得段10には電流(I1a+I1b)が流れる。すなわち、定電圧回路1は、高速応答モードに移行する。これにより、出力電圧VOUTが低下した場合、設定電圧の3Vに復帰するまでの期間を、比較例の定電圧回路よりも短くできる。第1電圧モニタ回路30は、遅延回路31による遅延期間が5μsである場合、110μsでモード信号MS1を“L”レベルに戻す。これにより、スイッチ回路SW1はオフ状態とされ、第1利得段10には電流I1aが流れる。すなわち、定電圧回路1は、低消費電流モードに移行する。
【0056】
このように、本実施形態に係る定電圧回路1は、出力電圧VOUTが低下すると、動作モードを低消費電流モードから高速応答モードに切り替えることができる。このため、高速応答を実現できる。
【0057】
また、本実施形態に係る定電圧回路1は、例えば、負荷がない期間、低消費電流モードで動作する。このため、低消費電力を実現できる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る定電圧回路1は、出力電圧VOUTと一定期間前の電圧VOUTとを比較するため、動作モードを切り替えるための閾値電圧を比較的高精度で生成する回路を設けなくてよい。
【0059】
1.4 変形例
第1実施形態の変形例に係る定電圧回路1について説明する。本変形例に係る定電圧回路1は、第1電圧モニタ回路30がオフセット回路33を含む点で第1実施形態と異なる。なお、モード選択動作を示すフローチャートは、第1実施形態の図3と同様である。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0060】
1.4.1 定電圧回路1の回路構成
本変形例に係る定電圧回路1の回路構成について、図5を用いて説明する。図5は、本変形例に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0061】
定電圧回路1内の第1電圧モニタ回路30は、オフセット回路33をさらに含む。
【0062】
オフセット回路33は、正の電圧源34を含む。オフセット回路33は、出力電圧端子T3、及び比較器32の反転入力端子に接続される。オフセット回路33には、出力電圧端子T3から出力電圧VOUTが印加される。オフセット回路33は、出力電圧VOUTに正の電圧源34の電圧VOSTを加算した電圧を電圧VOUT’として比較器32の反転入力端子に出力する。なお、オフセット回路33は、比較器32の中に設けられてもよい。
【0063】
比較器32の反転入力端子には、オフセット回路33から電圧VOUT’が印加される。例えば、電圧VOUT’が電圧VDEL1未満である期間、すなわち、高速応答モードを選択する期間、比較器32は、“H”レベルのモード信号MS1を出力する。換言すると、電圧VOUTと電圧VDEL1との差分が電圧源34の電圧VOSTよりも大きい期間、比較器32は、“H”レベルのモード信号MS1を出力する。他方で、電圧VOUT’が電圧VDEL1以上である期間、すなわち、低消費電流モードを選択する期間、比較器32は、“L”レベルのモード信号MS1を出力する。換言すると、電圧VOUTと電圧VDEL1との差分が電圧源34の電圧VOST以下である期間、比較器32は、“L”レベルのモード信号MS1を出力する。
【0064】
定電圧回路1の他の構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0065】
1.4.2 効果
本変形例に係る構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0066】
また、比較器32が負のオフセットを持つ場合、比較器32が持つ負のオフセットによって比較器32の反転入力端子の電圧が下がり、出力電圧VOUTに変動がない場合に比較器32が誤った比較結果を出力する可能性がある。本変形例に係る定電圧回路1は、第1電圧モニタ回路30内にオフセット回路33を含む。オフセット回路33は、正の電圧源34を含む。このため、比較器32の反転入力端子の電圧は、出力電圧端子T3から印加された出力電圧VOUTに正の電圧源34の電圧VOSTを加算した電圧となる。よって、定電圧回路1は、出力電圧VOUTと電圧VDEL1との差分が電圧源34の電圧VOST以下である場合に、低消費電力を維持できる。
【0067】
2.第2実施形態
第2実施形態に係る定電圧回路1について説明する。本実施形態に係る定電圧回路1は、電流モニタ回路40を含む点で第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0068】
2.1 定電圧回路1の回路構成
本実施形態に係る定電圧回路1の回路構成について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0069】
定電圧回路1は、電流モニタ回路40をさらに含む。
【0070】
電流モニタ回路40は、出力電圧端子T3に流れる出力電流に加えて抵抗素子RF及びRSに流れる電流、すなわち、PMOSトランジスタPpに流れる電流をモニタする。電流モニタ回路40は、PMOSトランジスタPM及び比較器41を含む。
【0071】
PMOSトランジスタPMの一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND8に接続される。PMOSトランジスタPMのゲートには、ノードND4が接続される。換言すると、PMOSトランジスタPMのゲートには、PMOSトランジスタPpと同様に、第1利得段10の出力電圧V1が印加される。例えば、定電圧回路1の出力電流(負荷電流)の変動により、電圧V1が変動した場合、PMOSトランジスタPMを介してノードND8に流れる電流(PMOSトランジスタPpに流れる電流に対応する電流。以下、「電流Ind8」と表記する)が変動する。
【0072】
比較器41の反転入力端子には、閾値電流Ithが供給される。閾値電流Ithは、ノードND8に流れる電流Ind8の判定に用いられる電流である。比較器41の非反転入力端子は、ノードND8に接続される。比較器41の非反転入力端子には、ノードND8に流れる電流Ind8が供給される。比較器41の出力端子からモード信号MS2が出力される。例えば、電流Ind8が閾値電流Ithよりも大きい期間、比較器41は、“H”レベルのモード信号MS2を出力する。他方で、電流Ind8が閾値電流Ith以下である期間、比較器41は、“L”レベルのモード信号MS2を出力する。
【0073】
スイッチ回路SW1は、第1電圧モニタ回路30から受信するモード信号MS1と、電流モニタ回路40から受信するモード信号MS2とに基づいて、動作する。例えば、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS2の少なくとも一方が“H”レベルの場合、オン状態とされる。これにより、高速応答モードが選択される。また、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS2の両方が“L”レベルの場合、オフ状態とされる。これにより、低消費電流モードが選択される。すなわち、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1とモード信号MS2とのOR演算の結果に基づいて、オン状態またはオフ状態とされる。
【0074】
定電圧回路1の他の構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0075】
なお、例えば、出力電圧VOUTが低下しているときと、負荷電流が上昇しているときとで、加算される電流I1bの値を変えてもよい。
【0076】
2.2 モード選択動作
本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作について、図7及び図8を用いて説明する。図7及び図8は、本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作を示すフローチャートである。第1実施形態の図3のS10~S18の動作に、S20~S25の動作が追加されている。S10~S18の動作は、第1実施形態の図3と同様である。以下では、S20~S25の動作を中心に説明する。
【0077】
S10~S12の実行後、モード信号MS2は、“L”レベルになっている。
【0078】
電流モニタ回路40は、電流Ind8が閾値電流Ith以下である場合(S20_No)、モード信号MS2を“L”レベルに維持する。
【0079】
他方で、電流モニタ回路40は、電流Ind8が閾値電流Ithよりも大きい場合(S20_Yes)、モード信号MS2を“H”レベルとする(S21)。換言すると、比較器41において、非反転入力端子の電流Ind8が、反転入力端子の閾値電流Ithよりも大きい期間、比較器41は、“H”レベルの電流を出力する。
【0080】
スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS2の両方が“L”レベルである場合(S22_No)、オフ状態が維持される。他方で、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS2の少なくとも一方が“H”レベルである場合(S22_Yes)、オン状態とされる(S13)。
【0081】
S13~S16の実行後、モード信号MS2は、“H”レベルになっている。
【0082】
電流モニタ回路40は、電流Ind8が閾値電流Ithよりも大きい場合(S23_Yes)、モード信号MS2を“H”レベルに維持する。
【0083】
他方で、電流モニタ回路40は、電流Ind8が閾値電流Ith以下である場合(S23_No)、モード信号MS2を“L”レベルとする(S24)。換言すると、比較器41において、非反転入力端子の電流Ind8が、反転入力端子の閾値電流Ith以下である期間、比較器41は、“L”レベルの電流を出力する。
【0084】
スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS2の少なくとも一方が“H”レベルである場合(S25_No)、オン状態が維持される。他方で、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS2の両方が“L”レベルである場合(S25_Yes)、オフ状態とされる(S17)。
【0085】
2.3 効果
本実施形態に係る構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0086】
また、本実施形態に係る構成であれば、出力電圧の変動の有無に関係なく、負荷電流が上昇しているときには高速応答モードを選択できる。以下、本効果につき、図9を用いて説明する。図9は、本実施形態に係る定電圧回路1の効果を説明する図である。図9では、モード信号MS2、及びスイッチ回路SW1の動作が第1実施形態の図4と異なる。
【0087】
図9に示すように、本実施形態に係る定電圧回路1の場合、100μsで出力電圧VOUTが低下し、負荷電流が例えば0mAから10mAに上昇すると、105μsで、第1電圧モニタ回路30は、モード信号MS1を“H”レベルにし、電流モニタ回路40は、モード信号MS2を“H”レベルにする。これにより、スイッチ回路SW1はオン状態とされ、定電圧回路1は、高速応答モードに移行する。110μsで、第1電圧モニタ回路30は、モード信号MS1を“L”レベルに戻すが、負荷電流は上昇したままであるため、電流モニタ回路40は、モード信号MS2を“H”レベルに維持する。これにより、スイッチ回路SW1はオン状態が維持され、定電圧回路1は、高速応答モードを維持する。
【0088】
このように、本実施形態に係る定電圧回路1は、出力電圧VOUTの変動の有無に関係なく、負荷電流が上昇しているときには高速応答モードを選択できる。もちろん、本実施形態は、第1実施形態の変形例に適用することもできる。
【0089】
3.第3実施形態
第3実施形態に係る定電圧回路1について説明する。本実施形態に係る定電圧回路1は、第2利得段50を含む点で第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0090】
3.1 定電圧回路1の回路構成
本実施形態に係る定電圧回路1の回路構成について、図10を用いて説明する。図10は、本実施形態に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0091】
定電圧回路1は、第2利得段50をさらに含む。
【0092】
定電圧回路1は、第1利得段10、第2利得段50、及び出力段20を有する増幅器として機能する。
【0093】
第2利得段50は、第1利得段10の出力電圧V1を増幅して、出力段20に出力する。第2利得段50は、PMOSトランジスタP3、電流源51及び52、並びにスイッチ回路SW2を含む。
【0094】
PMOSトランジスタP3の一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND9に接続される。PMOSトランジスタP3のゲートには、ノードND4が接続される。換言すると、PMOSトランジスタP3のゲートには、第1利得段10の出力電圧V1が印加される。
【0095】
電流源51の一端は、ノードND9に接続され、他端はノードND2に接続される。電流源51からノードND2に電流I2aが流れる。
【0096】
スイッチ回路SW2の一端は、ノードND9に接続され、他端は電流源52の一端に接続される。スイッチ回路SW2は、第1電圧モニタ回路30から受信するモード信号MS1に基づいて、動作する。例えば、スイッチ回路SW2は、モード信号MS1が“H”レベルの場合、オン状態とされ、モード信号MS1が“L”レベルの場合、オフ状態とされる。
【0097】
電流源52の他端は、ノードND2に接続される。電流源52からノードND2に電流I2bが流れる。例えば、電流I2bは、電流I2aよりも大きい電流である。低消費電流モードの場合、第2利得段50には動作電流I2aが流れ、高速応答モードの場合、第2利得段50には動作電流(I2a+I2b)が流れる。動作電流I2aよりも動作電流(I2a+I2b)の方が大きい。このため、低消費電流モードよりも高速応答モードの方が、次段の出力段20を高速に駆動させることができる。
【0098】
定電圧回路1の他の構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0099】
3.2 モード選択動作
本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作について説明する。本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作を示すフローチャートは、スイッチ回路SW2の動作が追加された点で第1実施形態の図3と異なる。以下では、図3を用いて定電圧回路1のモード選択動作について説明する。
【0100】
図3のS13において、スイッチ回路SW1及びSW2は、“H”レベルのモード信号MS1を受信すると、オン状態とされる。
【0101】
図3のS17において、スイッチ回路SW1及びSW2は、“L”レベルのモード信号MS1を受信すると、オフ状態とされる。
【0102】
モード選択動作における他の動作は、第1実施形態の図3と同様である。
【0103】
3.3 効果
本実施形態に係る構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。もちろん、本実施形態は、第1実施形態の変形例に適用することもできる。
【0104】
3.4 変形例
第3実施形態の変形例に係る定電圧回路1について説明する。本変形例に係る定電圧回路1は、電流モニタ回路40を含む点で第3実施形態と異なる。以下では、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0105】
3.4.1 定電圧回路1の回路構成
本変形例に係る定電圧回路1の回路構成について、図11を用いて説明する。図11は、本変形例に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0106】
定電圧回路1は、電流モニタ回路40をさらに含む。
【0107】
電流モニタ回路40は、PMOSトランジスタPMの接続が第2実施形態の図6と異なる。図11の例では、PMOSトランジスタPMの一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND8に接続される。PMOSトランジスタPMのゲートには、ノードND9が接続される。換言すると、PMOSトランジスタPMのゲートには、PMOSトランジスタPpと同様に、第2利得段50の出力電圧V2が印加される。電流モニタ回路40の他の構成は、第2実施形態の図6と同様である。
【0108】
定電圧回路1の他の構成は、第3実施形態の図10と同様である。
【0109】
3.4.2 モード選択動作
本変形例に係る定電圧回路1のモード選択動作について説明する。本変形例に係る定電圧回路1のモード選択動作を示すフローチャートは、スイッチ回路SW2の動作が追加された点で第2実施形態の図7及び図8と異なる。以下では、図7及び図8を用いて定電圧回路1のモード選択動作について説明する。
【0110】
図7のS13において、スイッチ回路SW1及びSW2は、モード信号MS1及びMS2に基づいて、オン状態とされる。
【0111】
図8のS17において、スイッチ回路SW1及びSW2は、モード信号MS1及びMS2に基づいて、オフ状態とされる。
【0112】
モード選択動作における他の動作は、第2実施形態の図7及び図8と同様である。
【0113】
3.4.3 効果
本変形例に係る構成によれば、第2及び第3実施形態と同様の効果を奏する。もちろん、本変形例は、第1実施形態の変形例に適用することもできる。
【0114】
4.第4実施形態
第4実施形態に係る定電圧回路1について説明する。本実施形態に係る定電圧回路1は、第2電圧モニタ回路60を含む点で第1実施形態と異なる。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0115】
4.1 定電圧回路1の回路構成
本実施形態に係る定電圧回路1の回路構成について、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0116】
定電圧回路1は、第2電圧モニタ回路60をさらに含む。
【0117】
第2電圧モニタ回路60は、遅延回路61及び比較器62を含む。
【0118】
遅延回路61は、出力電圧端子T3、及び比較器62の反転入力端子に接続される。遅延回路61には、出力電圧端子T3から出力電圧VOUTが印加される。遅延回路61は、出力電圧VOUTの出力タイミングを遅延させ、遅延させた出力タイミングで出力電圧VOUTを電圧VDEL2として比較器62の反転入力端子に出力する。遅延回路61の構成は、遅延回路31と同様である。
【0119】
比較器62の非反転入力端子は、出力電圧端子T3に接続される。比較器62の非反転入力端子には、出力電圧端子T3から出力電圧VOUTが印加される。比較器62の反転入力端子には、遅延回路61から電圧VDEL2が印加される。比較器62の出力端子からモード信号MS3が出力される。例えば、電圧VOUTが上昇した場合、電圧VDEL2は、遅延回路61により電圧VOUTよりもタイミングが遅れて上昇する。このため、電圧VOUTと電圧VDEL2との間に電位差が生じる。電圧VOUTが電圧VDEL2よりも大きい期間、比較器62は、“H”レベルのモード信号MS3を出力する。他方で、電圧VOUTが電圧VDEL2以下である期間、比較器62は、“L”レベルのモード信号MS3を出力する。
【0120】
スイッチ回路SW1は、第1電圧モニタ回路30から受信するモード信号MS1と、第2電圧モニタ回路60から受信するモード信号MS3とに基づいて、動作する。例えば、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS3の少なくとも一方が“H”レベルの場合、オン状態とされる。これにより、高速応答モードが選択される。また、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1及びMS3の両方が“L”レベルの場合、オフ状態とされる。これにより、低消費電流モードが選択される。すなわち、スイッチ回路SW1は、モード信号MS1とモード信号MS3とのOR演算の結果に基づいて、オン状態またはオフ状態とされる。
【0121】
定電圧回路1の他の構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0122】
4.2 モード選択動作
本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作について、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態に係る定電圧回路1のモード選択動作を示すフローチャートである。第1実施形態の図3のS10~S18の動作に、S30~S36の動作が追加されている。S10~S18の動作は、第1実施形態の図3と同様である。以下では、S30~S36の動作(出力電圧VOUTが電圧VDEL1以上である場合(S11_No)の動作)を中心に説明する。
【0123】
S10の実行後、モード信号MS1及びMS3は、“L”レベルになっている。
【0124】
第2電圧モニタ回路60は、出力電圧VOUTが電圧VDEL2以下である場合(S30_No)、モード信号MS3を“L”レベルに維持する。
【0125】
他方で、第2電圧モニタ回路60は、出力電圧VOUTが電圧VDEL2よりも大きい場合(S30_Yes)、モード信号MS3を“H”レベルとする(S31)。換言すると、比較器62において、非反転入力端子の電圧VOUTが、反転入力端子の電圧VDEL2よりも大きい期間、比較器62は、“H”レベルの電圧を出力する。
【0126】
スイッチ回路SW1は、“L”レベルのモード信号MS1と、“H”レベルのモード信号MS3とを受信すると、オン状態とされる(S32)。この結果、定電圧回路1は、高速応答モードを実行する(S33)。
【0127】
第2電圧モニタ回路60は、出力電圧VOUTが電圧VDEL2よりも大きい場合(S34_Yes)、モード信号MS3を“H”レベルに維持する。
【0128】
他方で、第2電圧モニタ回路60は、出力電圧VOUTが電圧VDEL2以下である場合(S34_No)、モード信号MS3を“L”レベルとする(S35)。換言すると、比較器62において、非反転入力端子の電圧VOUTが、反転入力端子の電圧VDEL2以下である期間、比較器62は、“L”レベルの電圧を出力する。
【0129】
スイッチ回路SW1は、“L”レベルのモード信号MS1と、“L”レベルのモード信号MS3とを受信すると、オフ状態とされる(S36)。この結果、定電圧回路1は、低消費電流モードを実行する(S18)。
【0130】
4.3 効果
本実施形態に係る構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0131】
また、本実施形態に係る定電圧回路1の場合、出力電圧VOUTが上昇すると、第2電圧モニタ回路60は、モード信号MS3を“H”レベルにする。これにより、スイッチ回路SW1はオン状態とされ、定電圧回路1は、高速応答モードを実行する。
【0132】
このように、本実施形態に係る定電圧回路1は、出力電圧VOUTが低下した場合だけでなく、上昇した場合にも高速応答を実現できる。もちろん、本実施形態は、第1実施形態の変形例に適用することもできる。この場合、第2電圧モニタ回路60内のオフセット回路の電圧源は、負の電圧とされる。また、本実施形態は、第2及び第3実施形態、並びに第3実施形態の変形例に適用することもできる。
【0133】
5.第5実施形態
第5実施形態に係る定電圧回路1について説明する。本実施形態に係る定電圧回路1は、ON期間延長回路70を含む点で第1実施形態と異なる。なお、モード選択動作を示すフローチャートは、第1実施形態の図3と同様である。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0134】
5.1 定電圧回路1の回路構成
本実施形態に係る定電圧回路1の回路構成について、図14を用いて説明する。図14は、本実施形態に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0135】
定電圧回路1は、ON期間延長回路70をさらに含む。
【0136】
ON期間延長回路70は、抵抗素子RX、NMOSトランジスタNX、容量素子CX、及びインバータ回路IVXを含む。
【0137】
抵抗素子RXの一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND10に接続される。
【0138】
NMOSトランジスタNXの一端は、ノードND10に接続され、他端はノードND2に接続される。NMOSトランジスタNXのゲートには、比較器32の出力端子が接続される。
【0139】
容量素子CXの一端は、ノードND10に接続され、他端は接地される(接地電圧配線に接続される)。
【0140】
インバータ回路IVXの入力端子は、ノードND10に接続される。インバータ回路IVXの出力端子からモード信号MS4が出力される。
【0141】
例えば、出力電圧VOUTが低下した場合、比較器32は、“H”レベルのモード信号MS1を出力する。これにより、NMOSトランジスタNXのゲートは“H”レベルとなり、NMOSトランジスタNXはオン状態とされる。NMOSトランジスタNXがオン状態とされると、NMOSトランジスタNXのドレインは、直ちに“L”レベルとなる。インバータ回路IVXは、NMOSトランジスタNXのドレインの論理レベルを反転させた“H”レベルの電圧をモード信号MS4として出力する。これにより、スイッチ回路SW1は、オン状態とされる。電圧VOUTが電圧VDEL1未満である期間、比較器32は、“H”レベルのモード信号MS1を出力し、インバータ回路IVXは、“H”レベルのモード信号MS4を出力する。
【0142】
出力電圧VOUTが電圧VDEL1以上、すなわち定常状態に戻った場合、比較器32は、“L”レベルのモード信号MS1を出力する。これにより、NMOSトランジスタNXのゲートは“L”レベルとなり、NMOSトランジスタNXはオフ状態とされる。NMOSトランジスタNXがオフ状態とされると、NMOSトランジスタNXのドレインは、ゆっくりと上昇する。これは、NMOSトランジスタNXのドレインと容量素子CXを充電する電流が、抵抗素子RXによって制限されるためである。一定期間(例えば100マイクロ秒)が経過した後、NMOSトランジスタのドレインは、“H”レベルとなる。インバータ回路IVXは、NMOSトランジスタNXのドレインの論理レベルを反転させた“L”レベルの電圧をモード信号MS4として出力する。これにより、スイッチ回路SW1は、オフ状態とされる。電圧VOUTが電圧VDEL1以上に戻ると、比較器32は、“L”レベルのモード信号MS1を出力し、インバータ回路IVXは、一定期間が経過してから“L”レベルのモード信号MS4を出力する。
【0143】
定電圧回路1の他の構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0144】
5.2 効果
本実施形態に係る構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0145】
また、本実施形態に係る定電圧回路1の場合、出力電圧VOUTが定常状態に戻った後、定電圧回路1が低消費電流モードに戻る場合に、ON期間延長回路70は、スイッチ回路SW1がオン状態とされる期間を一定期間延長させる。その後、スイッチ回路SW1は、オフ状態とされる。このため、スイッチ回路SW1の複雑なオンオフの切り替えを避けることができる。よって、定電圧回路1の安定性を高めることができる。もちろん、本実施形態は、第1実施形態の変形例、第2及び第3実施形態、第3実施形態の変形例、並びに第4実施形態に適用することもできる。
【0146】
6.第6実施形態
第6実施形態に係る定電圧回路1について説明する。本実施形態に係る定電圧回路1では、第1利得段10の入力端子にPMOSトランジスタが用いられ、第2利得段50の入力端子にNMOSトランジスタが用いられている点で第3実施形態と異なる。なお、モード選択動作を示すフローチャートは、第3実施形態と同様である。以下では、第3実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0147】
6.1 定電圧回路1の回路構成
本実施形態に係る定電圧回路1の回路構成について、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態に係る定電圧回路1の一例を示す回路図である。
【0148】
第1利得段10は、PMOSトランジスタP1及びP2、NMOSトランジスタN1及びN2、及び電流源11を含む。
【0149】
電流源11の一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND20に接続される。電流源11からノードND20に電流I1cが流れる。
【0150】
PMOSトランジスタP1の一端は、ノードND20に接続され、他端はノードND21に接続される。PMOSトランジスタP1のゲートには、参照電圧VREFが印加される。
【0151】
PMOSトランジスタP2の一端は、ノードND20に接続され、他端はノードND22に接続される。PMOSトランジスタP2のゲートには、電圧VFBが印加される。
【0152】
NMOSトランジスタN1の一端及びゲートは、ノードND21に接続され、他端はノードND2に接続される。
【0153】
NMOSトランジスタN2の一端は、ノードND22に接続され、他端はノードND2に接続され、ゲートはノードND21に接続される。NMOSトランジスタN1とNMOSトランジスタN2とは、カレントミラーを構成している。
【0154】
第2利得段50は、NMOSトランジスタN3、電流源51及び52、並びにスイッチ回路SW2を含む。
【0155】
電流源51の一端は、ノードND1に接続され、他端はノードND23に接続される。電流源51からノードND23に電流I2aが流れる。
【0156】
電流源52の一端は、ノードND1に接続され、他端はスイッチ回路SW2の一端に接続される。電流源52からスイッチ回路SW2に電流I2bが流れる。
【0157】
スイッチ回路SW2の他端は、ノードND23に接続される。スイッチ回路SW2は、第1電圧モニタ回路30から受信するモード信号MS1に基づいて、動作する。例えば、スイッチ回路SW2は、モード信号MS1が“H”レベルの場合、オン状態とされ、モード信号MS1が“L”レベルの場合、オフ状態とされる。
【0158】
NMOSトランジスタN3の一端は、ノードND23に接続され、他端はノードND2に接続される。NMOSトランジスタN3のゲートには、ノードND22が接続される。換言すると、NMOSトランジスタN3のゲートには、第1利得段10の出力電圧V1が印加される。
【0159】
出力段20のPMOSトランジスタPpのゲートには、ノードND23が接続される。換言すると、PMOSトランジスタPpのゲートには、第2利得段50の出力電圧V2が印加される。
【0160】
定電圧回路1の他の構成は、第3実施形態の図10と同様である。
【0161】
6.2 効果
本実施形態に係る構成によれば、第3実施形態と同様の効果を奏する。もちろん、本実施形態は、第1実施形態の変形例、第2実施形態、並びに第4及び第5実施形態に適用することもできる。
【0162】
7.変形例等
上記のように、実施形態に係る定電圧回路(1)は、出力電圧(VOUT)を分割した分割電圧(VFB)と、参照電圧(VREF)との差分を増幅した第1電圧(V1)を出力する第1利得段(10)と、一端が入力電圧端子(T1)に接続され、他端が出力電圧端子(T3)に接続され、ゲートに印加された第1電圧(V1)に基づいて、出力電圧(VOUT)を制御する第1トランジスタ(Pp)と、出力電圧(VOUT)を遅延させた第2電圧(VDEL1)を出力する第1回路(31)を含み、第2電圧と、出力電圧に基づく第3電圧(VOUT/VOUT')との電圧差に基づいて、第1信号(MS1)を制御する第2回路(30)とを備える。第1信号(MS1)が第1論理レベル(L)の場合、第1動作モード(低消費電流)が選択されて、第1利得段(10)には、第1電流(I1a)が流れ、第1信号が第2論理レベル(H)の場合、第2動作モード(高速応答)が選択されて、第1利得段には、第1電流よりも大きい第2電流(I1a+I1b)が流れる。
【0163】
なお、実施形態は上記説明した形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0164】
上記実施形態で説明したフローチャートは、その処理の順番を可能な限り入れ替えることができる。
【0165】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0166】
1…定電圧回路、10…第1利得段、11、12…電流源、20…出力段、30…第1電圧モニタ回路、31…遅延回路、32…比較器、33…オフセット回路、34…電圧源、40…電流モニタ回路、50…第2利得段、51、52…電流源、60…第2電圧モニタ回路、61…遅延回路、62…比較器、70…ON期間延長回路、N1~N3、NZ、NSW、NX、P1~P3、Pp、PM、PZ、PSW…トランジスタ、SW1、SW2、SWZ…スイッチ回路、RF、RS、RX…抵抗素子、COUT、CZ、CX…容量素子、IVX…インバータ回路
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