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特許7536721キナーゼを修飾する1H-ピロロ[2,3-B]ピリジン誘導体の合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】キナーゼを修飾する1H-ピロロ[2,3-B]ピリジン誘導体の合成
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021131707
(22)【出願日】2021-08-12
(62)【分割の表示】P 2019093379の分割
【原出願日】2016-05-05
(65)【公開番号】P2021185163
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/157,902
(32)【優先日】2015-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/241,040
(32)【優先日】2015-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】524060522
【氏名又は名称】ダイイチ・サンキョー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Daiichi Sankyo, Inc.
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】プラブハ・エヌ・イブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】神 将吉
(72)【発明者】
【氏名】松浦 伸治
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-510321(JP,A)
【文献】国際公開第2008/064265(WO,A1)
【文献】芦澤一英,塩・結晶形の最適化と結晶化技術,Pharm Tech Japan,2002年,Vol. 18, No. 10,pp. 81-96
【文献】プロセス化学 第2版 医薬品合成から製造まで,2014年03月30日,p.405-413,420-429,446-451
【文献】長瀬博監訳, C.G.WERMUTH編,最新 創薬化学 下巻,株式会社テクノミック,1999年09月25日,pp. 347-365
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,pp. 17-23,37-40,45-51,57-65
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II
【化1】
の化合物の結晶形Cを調製するプロセスであって、
(1)式IIの化合物を、0.4%v/v湿潤メチルt-ブチルエーテル~1.5%v/v湿潤メチルt-ブチルエーテルに添加して、反応混合物を提供することと、
(2)前記反応混合物を還流することと、
(3)前記反応混合物を室温にまで冷却することと、
(4)式IIの化合物の前記結晶形Cを前記反応混合物から単離することと、を含む、プロセスであり、
式IIの化合物の前記結晶形Cが、Cu-Ka線を利用する回折計で決定された、7.1、16.5、20.8、23.2、及び28.1°2θのピーク(±0.2°)を含む粉末X線回折ディフラクトグラム(XRPD)を特徴とする、プロセスであり、
ステップ(1)で用いられる式IIの化合物が式IIの化合物の結晶形Cではない、プロセス。
【請求項2】
ステップ(1)が、式IIの化合物を、0.5%v/v湿潤メチルt-ブチルエーテルに添加して、前記反応混合物を提供することを含
ステップ(2)が、前記反応混合物を、52~53℃の温度にまで加熱することをさらに含む、
請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年5月6日に出願された米国仮出願第62/157,902号、及び、2015年10月13日に出願された米国仮出願第62/241,040号の35U.S.C.第119条に基づく利益を主張し、本明細書の一部を構成するものとして両出願の全内容を援用する。
【0002】
本開示は、一般に、キナーゼ及びそれらの合成中間体を調節する化合物の調製のための有機合成方法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
名称、[5(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミン、別名、ペキシダルチニブの化合物は、c-Kit及び/またはc-Fms及び/またはFlt3媒介疾患または病態に罹患しているか、または、その危険性がある対象を治療する上で有効である。ペキシダルチニブまたはその塩など、このような疾患及び病態の処置のための適切な化合物は、米国特許第7,893,075号、米国公開第2014-0037617号、及び、米国公開第2013-0274259号に開示されており、これらの全開示は、本明細書の一部を構成するものとして援用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
とりわけ、ペキシダルチニブ及び他の同様の分子の工業的規模での効率的な調製のための新規の多用途でかつ簡便なプロセスの開発が待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ある実施形態において、[5-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミンと命名された式Iの化合物、
またはその塩を製造するためのプロセスを提供する。
【0006】
別の実施形態において、本開示は、[5-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミン塩酸塩と命名された式IIの化合物、
を製造するためのプロセスを提供する。
【0007】
別の実施形態において、本開示は、式IIIの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
式Aの化合物またはその塩と、式Bの化合物またはその塩とを、
付加条件下で接触させて、式IIIの化合物を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0008】
別の実施形態において、本開示は、式IVの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
式IIIの化合物、
【0009】
またはその塩を、N-脱保護及びアルコール還元条件に供して、式IVの化合物またはその塩を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。別の実施形態において、本開示は、式Iの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
式IVの化合物、
またはその塩と、
式Vの化合物、
またはその塩とを、還元的アミノ化条件下で接触させて、式Iの化合物またはその塩を提供する、プロセスを提供する。
【0010】
別の実施形態において、本開示は、式Iの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
a)式Aの化合物またはその塩と、式Bの化合物またはその塩とを、
付加条件下で接触させて、式IIIの化合物、
またはその塩を提供すること、
b)式IIIの化合物またはその塩を、N-脱保護及びアルコール還元条件に供して、式IVの化合物、
またはその塩を提供すること、ならびに
c)式IVの化合物またはその塩を、式Vの化合物、
またはその塩とを、還元的アミノ化条件下で接触させて、式Iの化合物またはその塩を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0011】
別の実施形態において、本開示は、[5-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミン塩酸塩と命名された式IIの化合物、
の調製のためのプロセスであって、
a)式Aの化合物またはその塩と、式Bの化合物またはその塩とを、
付加条件下で接触させて、式IIIの化合物、
またはその塩を提供すること、
b)式IIIの化合物またはその塩を、N-脱保護及びアルコール還元条件に供して、式IVの化合物、
またはその塩を提供すること、
c)式IVの化合物またはその塩を、式Vの化合物、
またはその塩とを、還元的アミノ化条件下で接触させて、式Iの化合物
を提供すること、ならびに
d)式Iの化合物と塩酸とを反応させて、式IIの化合物を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、式IIIの化合物、
またはその塩を提供するものであって、式中、各々のPGが、独立して、保護基である。
【0013】
別の実施形態において、本開示は、式IIIaの化合物、
またはその塩を提供する。
【0014】
別の実施形態において、本開示は、式IVの化合物、
またはその塩を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
さらに具体的な実施形態は、以下に記載した通りである。
【0016】
定義
本明細書において、特に断りのない限り、以下の定義の適用を受ける。
【0017】
本明細書に記載の式内にあるすべての原子は、提示された構造、または、構造に関する変形についての定義の範囲内で、該当するものでないことが明らかでない限りは、あらゆる同位体を含む。対象となるあらゆる原子について、その同位体は、自然界に存する割合で本質的に存在し得るものであり、または、1つ以上の特定の原子が、当業者に既知の合成方法を用いて1つ以上の同位体にまで拡大し得るものと解する。したがって、水素は、例えば、H、H、Hを含み、炭素は、例えば、11C、12C、13C、14Cを含み、酸素は、例えば、16O、17O、18Oを含み、窒素は、例えば、13N、14N、15Nを含み、硫黄は、例えば、32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sを含み、フルオロは、例えば、17F、18F、19Fを含み、クロロは、例えば、35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clを含む、などがある。
【0018】
本開示に従った使用を考慮した幾つかの化合物は、非溶媒和物形態ならびに水和物形態などの溶媒和物形態で存在することができる。「水和物」とは、水分子と溶質の分子またはイオンと組み合わせて形成される複合物のことを意味する。「溶媒和物」とは、溶媒分子と溶質の分子またはイオンと組み合わせて形成される複合物のことを意味する。溶媒は、有機化合物、無機化合物、または、両者の混合物とすることができる。溶媒和物とは、水和物、半水和物、チャネル水和物などを含むことを意味する。溶媒の幾つかの例として、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、及び、水などがあるが、これらに限定されない。一般的には、溶媒和物形態は、非溶媒和物形態と等価であり、また、本開示の範囲内に包含される。本開示に従った使用を考慮した幾つかの化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態にて存在し得る。一般的には、すべての物理形態は、本開示により考慮される使用について等価であり、また、本開示の範囲内のものである。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「塩」とは、酸付加塩類及び塩基付加塩類のことを指す。酸付加塩類として、硫酸塩、塩化物、塩酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、及び、キナ酸塩がある。塩類は、塩酸、マレイン酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、フマル酸、及び、キナ酸などの酸から得ることができる。塩基付加塩類として、カルボン酸またはフェノールなどの酸性官能基が存在する場合に、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、t-ブチルアミン、エチレンジアミン、メグルミン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アンモニウム、アルキルアミン、及び、亜鉛を含有する塩類がある。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、19th ed.,Mack Publishing Co.,Easton、PA、Vol.2、p.1457,1995を参照されたい。そのような塩類は、適切な対応する塩基類を用いて調製することができる。
【0020】
用語「USPウォーター」とは、水が、現行の米国薬局方での公式モノグラフの対象であることを意味している。
【0021】
化合物は、医薬として許容される塩類を含む塩の形態で製剤することができ、または、製剤し得る。意図される塩類の形態として、モノ、ビス、トリス、テトラキスなどがあるが、これらに限定されない。用語「医薬として許容される」とは、対象となる物質が、事情に精通した医師が、治療すべき疾患または病態及び各々の投与経路を考慮して、その物質を患者に投与することをためらう特性を有しないことを示す。例えば、そのような物質は、通常は、本質的に滅菌済のもの、例えば、注射可能なものであることが、必要とされている。
【0022】
医薬として許容される塩は、標準的な技術によって調製することができる。例えば、遊離塩基形態の化合物は、適切な酸を含有する水性または水性アルコール溶液のような適切な溶媒に溶解し、次いで、溶液を蒸発させることによって単離することができる。別の例では、遊離塩基と酸とを有機溶媒において反応させることによって塩を調製することができる。
【0023】
したがって、例えば、特定の化合物が塩基である場合、所望の医薬として許容される塩は、当該技術分野で利用可能なあらゆる適切な方法、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、または、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸など、α-ヒドロキシ酸、クエン酸または酒石酸など、アミノ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸など、芳香族酸、安息香酸または桂皮酸など、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸などの有機酸と、遊離塩基との処理によって調製し得る。
【0024】
同様に、特定の化合物が酸である場合、所望の医薬として許容される塩は、あらゆる適切な方法、例えば、無機または有機の塩基、アミン(第1級、第2級または第3級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などと、遊離酸との処理によって調製し得る。適切な塩類として、L-グリシン、L-リジン、及び、L-アルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級、及び、第三級アミン、及び、ヒドロキシエチルピロリジン、ピペリジン、モルフォリン、または、ピペラジンなどの環状アミンから誘導された有機塩、ならびに、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、及び、リチウムから誘導された無機塩などが例示される。
【0025】
異なる化合物の医薬として許容される塩は、錯体として存在し得る。錯体の例として、8-クロロテオフィリン錯体(例えば、ジメンヒドリナート:ジフェンヒドラミン8-クロロテオフィリン(1:1)錯体;ドラマミンの類似体)及び種々のシクロデキストリン包接錯体がある。
【0026】
特に断りのない限りは、本明細書に記載の特定の化合物は、医薬として許容されるそれら化合物の塩類を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「付加条件」とは、アリールハロゲン化物がアリールアルデヒドに付加する反応条件のことを指す。本明細書に開示された「付加条件」は、典型的に、塩基及び触媒を含む。塩基の例として、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ペントキシド、炭酸セシウム、リチウム-tert-ブトキシド、マグネシウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがあるが、これらに限定されない。付加条件は、典型的に、約0℃~約-10℃の範囲の温度、及び、約24時間の反応時間を含む。触媒の例として、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン-6、及び、15-クラウン-5があるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「還元的アミノ化条件」とは、中間体イミンの還元を介してカルボニル基がアミンに変換される反応条件のことを指す。イミンの形成及び還元は、1つのポット内で連続して起こる。本明細書で開示した「還元的アミノ化条件」は、典型的に、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。還元的アミノ化条件は、典型的には、約0℃~約-10℃の範囲の温度でのトリフルオロ酢酸の添加、それに続く、約6時間の撹拌、それに続く、トリエチルシランの添加、及び、約24時間の還流をさらに含む。還元的アミノ化条件の例として、ホウ化水素ナトリウム及び安息香酸;トリアセトキシホウ化水素ナトリウム及び酢酸;などがあるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「保護基」とは、官能基の特性または化合物全体の特性をマスクまたは変更する化合物の部分のことを指す。保護基の化学的基礎構造は、大きく異なる。保護基のある機能は、親の薬物物質の合成における中間体として役立つことにある。化学的保護基及び保護/脱保護のための戦略は、当該技術分野において周知である。“Protective Groups in Organic Chemistry”、Theodora W.Greene(John Wiley&Sons,Inc.,New York,1991を参照されたい。保護基は、所望の化学反応の効率、例えば、規則正しく計画された様式で化学結合を形成及び破壊することを補助するために、特定の官能基の反応性をマスクするためにしばしば利用されている。化合物の官能基の保護は、極性、親油性(疎水性)、及び、一般的な分析ツールによって測定することができる他の特性などの、保護された官能基の反応性以外の他の物理的特性を変える。化学的に保護された中間体は、それ自体が、生物学的に活性または不活性であり得る。アミンの保護基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「N-脱保護及びアルコール還元条件」とは、アミンから保護基が除去され、CH(OH)基がCH基へと還元される反応条件のことを指す。これらの2つの変換は、一段階または2つの別個の段階、すなわち、「N-脱保護条件」及び「アルコール還元条件」で行うことができる。本明細書に開示される「N-脱保護及びアルコール還元条件」は、一段階で行われる場合、典型的に、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。N-脱保護及びアルコール還元条件は、典型的に、約0~10℃の当初温度で、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸などのトリオルガノシランを添加すること、次いで、室温で、約24時間、撹拌すること、その後、約8時間、還流すること、をさらに含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「N-脱保護条件」とは、アミンから保護基が除去される反応条件のことを指す。アミンについての保護基の例として、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。BocについてのN-脱保護条件として、塩酸、メタンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸などの酸を使用することが含まれる。CbzについてのN-脱保護条件として、水素とパラジウムなどの触媒とを用いた水素添加がある。FmocについてのN-脱保護条件として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、ピペリジンなどの塩基を使用することが含まれる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「アルコール還元条件」とは、CH(OH)基が、CH基へと還元される反応条件のことを指す。「アルコール還元条件」として、InClを有するクロロジポフェニルシランと、トリエチルシラン、及び、触媒などがある。
【0033】
加えて、本明細書で使用される略語は、それぞれ、以下の意味を有する。
【0034】
プロセス
先に概説した通り、本開示は、幾つかの実施形態において、式Iの化合物を製造するためのプロセスを提供する。別の実施形態において、本開示は、式Iの化合物のための中間体を製造するためのプロセスを提供する。
【0035】
本開示は、ある実施形態において、[5-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミンと命名された式Iの化合物、
またはその塩を製造するためのプロセスを提供する。
【0036】
別の実施形態において、本開示は、[5-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミンと命名された式Iの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
a)式Aの化合物またはその塩と、式Bの化合物またはその塩とを、
付加条件下で接触させて、式IIIの化合物、
またはその塩を提供すること、
b)式IIIの化合物またはその塩を、N-脱保護及びアルコール還元条件に供して、式IVの化合物、
またはその塩を提供すること、ならびに
c)式IVの化合物またはその塩を、式Vの化合物、
またはその塩とを、還元的アミノ化条件下で接触させて、式Iの化合物またはその塩を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0037】
ステップa)の付加条件は、塩基及び触媒を含む。塩基の例として、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ペントキシド、炭酸セシウム、リチウム-tert-ブトキシド、マグネシウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがあるが、これらに限定されない。触媒の例として、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン-6、及び、15-クラウン-5があるが、これらに限定されない。
【0038】
ステップa)の付加条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、イソプロピルアルコール、トルエン、アセトニトリル、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メチル-1-ブタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、及び、キシレンがあるが、これらに限定されない。
【0039】
ステップa)の付加条件は、約15~25℃の温度をさらに含む。
【0040】
様々な保護基、PGが、式Aの化合物で使用することができる。アミン類の保護基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、PGは、Bocである。ステップb)のN-脱保護条件は、保護基、Pが除去される条件であることを意味する。ある実施形態において、PGは、Bocであり、N-脱保護条件は、塩酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの酸を含む。ある実施形態において、酸は、パラ-トルエンスルホン酸である。
【0041】
ステップb)のN-脱保護及びアルコール還元条件は、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。
【0042】
ステップb)のN-脱保護及びアルコール還元条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸ブチル、アセトン、2-ブタノン、及び、ジメチルスルホキシドがあるが、これらに限定されない。
【0043】
ステップc)の還元的アミノ化条件は、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。
【0044】
ステップc)の還元的アミノ化条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸ブチル、アセトン、アセトニトリル、2-ブタノン、及び、ジメチルスルホキシドがあるが、これらに限定されない。
【0045】
別の実施形態において、本開示は、式IIの化合物、
の調製のためのプロセスであって、
a)式Aの化合物またはその塩と、式Bの化合物またはその塩とを、
付加条件下で接触させて、式IIIの化合物、
またはその塩を提供すること、
b)式IIIの化合物またはその塩を、N-脱保護及びアルコール還元条件に供して、式IVの化合物、
またはその塩を提供すること、
c)式IVの化合物またはその塩を、式Vの化合物、
またはその塩とを、還元的アミノ化条件下で接触させて、式Iの化合物
を提供すること、ならびに
d)式Iの化合物と塩酸とを反応させて、式IIの化合物を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0046】
ステップa)の付加条件は、塩基及び触媒を含む。塩基の例として、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ペントキシド、炭酸セシウム、リチウム-tert-ブトキシド、マグネシウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、水酸化カリウム、及び、水酸化リチウムがあるが、これらに限定されない。触媒の例として、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン-6、及び、15-クラウン-5があるが、これらに限定されない。
【0047】
ステップa)の付加条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、イソプロピルアルコール、トルエン、アセトニトリル、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メチル-1-ブタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、及び、キシレンがあるが、これらに限定されない。
【0048】
ステップa)の付加条件は、約15~25℃の温度をさらに含む。
【0049】
様々な保護基、PGが、式Aの化合物で使用することができる。アミン類の保護基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、PGは、Bocである。ステップb)のN-脱保護条件は、保護基、Pが除去される条件であることを意味する。ある実施形態において、PGは、Bocであり、N-脱保護条件は、塩酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの酸を含む。ある実施形態において、酸は、パラ-トルエンスルホン酸である。
【0050】
ステップb)のN-脱保護及びアルコール還元条件は、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。
【0051】
ステップb)のN-脱保護及びアルコール還元条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸ブチル、アセトン、2-ブタノン、及び、ジメチルスルホキシドがあるが、これらに限定されない。
【0052】
ステップc)の還元的アミノ化条件は、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。
【0053】
ステップc)の還元的アミノ化条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸ブチル、アセトン、アセトニトリル、2-ブタノン、及び、ジメチルスルホキシドがあるが、これらに限定されない。
【0054】
別の実施形態において、本開示は、式IIIの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
式Aの化合物またはその塩と、式Bの化合物またはその塩とを、
付加条件下で接触させて、式IIIの化合物を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0055】
付加条件は、塩基及び触媒を含む。塩基の例として、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、カリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ペントキシド、炭酸セシウム、リチウム-tert-ブトキシド、マグネシウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、水酸化カリウム、水酸化リチウムがあるが、これらに限定されない。触媒の例として、硫酸水素テトラブチルアンモニウム、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、18-クラウン-6、及び、15-クラウン-5があるが、これらに限定されない。
【0056】
付加条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、イソプロピルアルコール、トルエン、アセトニトリル、ニトロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メチル-1-ブタノール、2-メトキシエタノール、2-プロパノール、及び、キシレンがあるが、これらに限定されない。
【0057】
付加条件は、約15~25℃の温度をさらに含む。
【0058】
様々な保護基、PGが、式Aの化合物で使用することができる。アミン類の保護基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、PGは、Bocである。
【0059】
別の実施形態において、本開示は、式IVの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
式IIIの化合物、
またはその塩を、N-脱保護及びアルコール還元条件に供して、式IVの化合物またはその塩を提供することを含み、式中、各々のPGが、独立して、保護基である、プロセスを提供する。
【0060】
様々な保護基、PGが、式IIIの化合物で使用することができる。アミン類の保護基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、PGは、Bocである。
【0061】
ステップb)のN-脱保護及びアルコール還元条件は、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。
【0062】
N-脱保護及びアルコール還元条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸ブチル、アセトン、2-ブタノン、及び、ジメチルスルホキシドがあるが、これらに限定されない。
【0063】
別の実施形態において、本開示は、式Iの化合物、
またはその塩の調製のためのプロセスであって、
式IVの化合物、
またはその塩と、
式Vの化合物、
またはその塩とを、還元的アミノ化条件下で接触させて、式Iの化合物またはその塩を提供する、プロセスを提供する。
【0064】
還元的アミノ化条件は、トリエチルシラン及びトリフルオロ酢酸を含む。
【0065】
還元的アミノ化条件は、溶媒をさらに含む。溶媒の例として、アセトニトリル、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、酢酸ブチル、アセトン、アセトニトリル、2-ブタノン、及び、ジメチルスルホキシドがあるが、これらに限定されない。
化合物
【0066】
別の実施形態において、本開示は、式IIIの化合物、
またはその塩を提供するものであって、式中、各々のPGが、独立して、保護基である。
【0067】
様々な保護基、PGが、式Aの化合物で使用することができる。アミン類の保護基の例として、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)などがあるが、これらに限定されない。ある実施形態において、PGは、Bocである。
【0068】
別の実施形態において、本開示は、式IVの化合物、
またはその塩を提供する。
【0069】
別の実施形態において、式IVの化合物の塩は、トリフルオロ酢酸塩である。
【0070】
式Iの合成のためのプロセスでの中間体は、精製の有無に関係なく、次のステップにおいて使用することができる。従来の精製手段として再結晶、クロマトグラフィー(例えば、吸着剤、イオン交換、及び、HPLC)などがある。
【実施例
【0071】
本開示の化合物は、本明細書に開示された方法、ならびに、同方法に対して、本明細書の開示及び当該技術分野で周知の方法から自明である所定の改変を加えてなる方法を用いて調製することができる。本明細書の教示に加えて、従来の、及び、周知の合成方法を使用し得る。本明細書に記載の化合物の合成は、以下の例に記載したようにして達成され得る。試薬は、入手可能であれば、例えば、Sigma Aldrichまたは他の化学物質製造業者から市販品を購入し得る。特に断りのない限り、以下の反応のための出発物質は、商業的供給源から入手し得る。
【0072】
本発明に関連する実施例を以下に記載する。たいていの場合、代替技術を使用することができる。実施例は例示目的のものでしかなく、本発明の範囲の限定を意図するものではない。
例1.[5-(5-クロロ-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イルメチル)-ピリジン-2-イル]-(6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イルメチル)-アミンの合成:
ステップ1:AからIlIaへの変換
反応器に、化合物A(1000gm、1.0当量)、化合物B(497gm、1.05当量)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(31.6gm、0.03当量)、及び、イソプロパノール(12リットル、11.8体積)を充填した。反応混合物を、少なくとも約1時間撹拌して、ほぼ透明な黄色の溶液を得た。次いで、カリウム-tert-ペントキシド(73ml、0.04当量)を、30秒かけて、添加した。反応混合物を、約15~25℃で、約20~24時間撹拌した。反応を、HPLCでモニターした。化合物IIIaの含有量が80%を超えたときに、反応は完了したとみなした。反応混合物を、約0~10℃にまで冷却し、次いで、少なくとも約2時間撹拌した。沈殿物を濾過し、0℃に冷却した3リットルのイソプロパノールで洗浄し、乾燥して、化合物IIIaを白色固体として得た(1.34kg、収率91.2%、HPLCによる純度97.7%)。H NMR(DMSO-d6):δ(ppm)11.8(s、NH)、8.50-8.51(d、1H)、8.17(d、1H)、7.85-7.88(dd、1H)、7.82(d、1H)、7.41(S、1H)、7.29-7.31(d、1H)、6.04(s、2H)、及び、1.35(s、18H)。
【0073】
あるいは、カリウムtert-ペントキシドを、トルエンの25%溶液として、この反応で使用することもできる。
ステップ2:IIIaからIVへの変換
反応器に、化合物IIIa(1.1kg、1当量)及びアセトニトリル(8.8リットル、12.4体積)を入れ、そして、反応混合物を撹拌した。次いで、トリエチルシラン(1.35kg、5当量)を、約15~30℃で、少なくとも約10分かけて添加した。次いで、トリフルオロ酢酸(2.38kg、9当量)を、反応器に、約15~30℃で、少なくとも約30分かけて加えた。反応混合物を、約55~65℃で、少なくとも約4時間加熱した。次いで、約55~65℃で、約20~48時間撹拌した。反応を、HPLCでモニターした。化合物IIIaの含有量が約1%未満である場合に、反応は完了したとみなした。反応混合物を、約45~55℃にまで冷却し、次いで、a)真空下で3.3Lに濃縮し、b)水(8.25リットル)を充填した。ステップa)及びb)を、4回反復した。次いで、反応混合物を、約45~60℃で加熱し、そして、約1~3時間撹拌した。その後、少なくとも約2時間かけて、約0~10℃にまで冷却し、そして、約0~10℃で、約2~4時間撹拌した。沈殿物を濾過し、2.2Lの水で洗浄し、次いで、ヘプタン(1.1リットル)で洗浄し、及び、乾燥させて、灰色がかった白色の固体(673.3gm、収率77.9%、HPLCによる純度99.7%)として、化合物IVのTFA塩を得た。H NMR(DMSO-d 6):δ(ppm)11.78(s、COOH)、8.18(d、1H)、8.08-8.09(広域二重項、2H)、7.93-7.94(d、1H)、7.81-7.84(dd、1H)、7.47-7.48(d、1H)、6.90-6.93(d、1H)、3.92(s、2H)。
ステップ3:IVからIへの変換
【0074】
反応器に、化合物IV(663.3gm、1当量)、化合物V(623.2gm、2.0当量)、及び、アセトニトリル(13.3リットル)を充填した。反応混合物を、室温で、約5~10分間撹拌した。次に、トリエチルシラン(1531.6gm、7.4当量)を、反応器に、少なくとも約10分かけて、約30℃以下で添加した。トリフルオロ酢酸(1542.5gm、7.6当量)を、反応器に、少なくとも約10分かけて、約30℃以下で添加した。反応混合物を、約15~30℃で、少なくとも約30分間撹拌した。次に、少なくとも約1時間にわたって、約70~82℃に加熱し、次いで、約70~82℃で、約20~48時間撹拌した。反応を、HPLCでモニターした。化合物IVの含有量が約1%未満である場合に、反応は完了したとみなした。
【0075】
反応混合物を室温にまで冷却し、アセトニトリル層を分離し、そして、濃縮した。次に、水(7.96リットル)を入れ、そして、反応混合物を、真空下で、6.64リットルにまで濃縮して、三相混合物を得た。次に、15~25℃にまで冷却をして、酢酸エチル(10.6リットル)を入れ、そして、撹拌して二相混合物を得た。0~10℃にまで冷却し、激しく撹拌しながら約8~9のpHに達するまで25%水酸化ナトリウム水溶液を入れ、約65~75℃にまで加熱し、そして、約65~75°で、約30分間撹拌した。有機層を分離し、そして、水(3.98リットル)を入れ、及び、反応混合物を約65~75℃にまで加熱した。有機層を分離し、そして、真空下で、約5.3~5.9リットルに濃縮し、ヘプタン(11.9リットル)を加え、及び、スラリーを約55~65℃にまで加熱し、そして、約2時間撹拌した。反応混合物を、少なくとも約2時間にわたって約15~30℃にまで冷却し、次いで、約15~30℃で、少なくとも約1時間撹拌した。沈殿物を濾過し、ヘプタン(1.99リットル)で洗浄し、そして、乾燥させた。濾過ケーキを、酢酸エチル(5.31リットル、8体積)及びヘプタン(2.65リットル、4体積)と共に反応器に入れ、少なくとも約2時間かけて、約15~30℃にまで冷却し、次いで、約15~30℃で、少なくとも約1時間撹拌した。沈殿物を濾過し、ヘプタンで洗浄し、そして、乾燥させて、化合物Iを淡黄色固体として得た(648.4gm、収率89.4%、HPLCによる純度99.4%)。
ステップ4:IのIIへの変換
【0076】
反応器に、化合物I(10gm、1当量)を入れ、エタノール110mlを加え、そして、反応混合物を撹拌した。約30℃以下の温度を維持しながら、濃塩酸(4.7gm、2当量)を反応混合物にゆっくりと添加して、透明な溶液を得た。次いで、これを濾過し、メタノール(10ml)で洗浄した。再び濾過し、約28~32℃で、精製水(3ml)を加えた。混合物を、約28~32℃で、1~3時間撹拌し、及び、濾過し、約25~32℃で、そこに精製水(177ml)を加えた。反応混合物を、約0~7℃で冷却し、及び、少なくとも約2時間撹拌した。任意で、化合物IIの種結晶を、このステップで添加することができる。固体を濾過し、メタノール(6ml)とMTBE(24ml)の冷却(0~5℃)混合物、次いで、冷却(0~5℃)MTBE(30ml)ですすいだ。生成物を乾燥して、化合物IIを得た(収率90%)。
【0077】
化合物IIの結晶形Cへの結晶化は、(A)0.5%v/v湿潤メチルtert-ブチルエーテル(MTBE);(B)1.0%v/v湿潤MTBE;及び(C)1.5%v/v湿潤MTBEを用いて、下記のようにして実施した。下記の結晶化手順(A)、(B)または(C)のいずれかによって作製された結晶形Cは、Cu-Ka線を利用する回折計で決定された、7.1、16.5、20.8、23.2、及び、28.1°2θのピーク(±0.2°)を含む粉末X線回折ディフラクトグラム(XRPD)によって特徴づけた。これらのピークは、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、2015年5月6日に出願された米国特許出願第62/157,902号(±0.2°)に記載された結晶形CのXRPDピークと一致している。
手順(A):0.5%v/v湿潤MTBE(1000ml)の調製:
(1)5mLのUSPウォーターを、1000mLのメスフラスコに入れ、そして、1000mLのMTBEで希釈した。得られた溶液を、約30分間撹拌した。
(2)オーバーヘッド撹拌器、窒素注入口、及び、コンデンサーを備えた500mLの3つ口フラスコに、機械的に篩い分けられた化合物IIを入れた。化合物IIを、篩い分け機で、機械的に篩い分けた。
(3)反応混合物を、0.5%v/v湿潤MTBE(300mL、15体積)で希釈し、そして、撹拌した。
(4)反応混合物を、還流温度(52~53℃)までゆっくりと加熱し、そして、還流を約24時間続けた。反応混合物の増粘が進むにつれて、撹拌速度を上げた。
(5)試料を、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、及び、24時間の時点で、引っ張った。
(6)反応混合物を、室温にまで冷却し、そして、約6時間撹拌した。
(7)反応混合物を、濾過し、そして、ケーキを、MTBE(2体積、40mL)で洗浄した。
(8)得られた生成物を、40~45℃で、一晩乾燥させた。
(9)結晶化した生成物は、XRPDによって、結晶形Cであると決定された。
手順(B):1.0%v/v湿潤MTBE(1000ml)の調製:
(1)10mLのUSPウォーターを、1000mLのメスフラスコに入れ、そして、1000mlのMTBEで希釈した。得られた溶液を、約60分間撹拌した。
(2)オーバーヘッド撹拌器、窒素注入口、及び、コンデンサーを備えた500mLの3つ口フラスコに、機械的に篩い分けられた化合物IIを入れた。化合物IIを、篩い分け機で、機械的に篩い分けた。
(3)反応混合物を、1.0%v/v湿潤MTBE(300mL、15体積)で希釈し、そして、撹拌した。
(4)反応混合物を、還流温度(52~53℃)までゆっくりと加熱し、そして、還流を約24時間続けた。反応混合物の増粘が進むにつれて、撹拌速度を上げた。
(5)試料を、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、及び、24時間の時点で、引っ張った。
(6)反応混合物を、室温にまで冷却し、そして、約6時間撹拌した。
(7)反応混合物を、濾過し、そして、ケーキを、MTBE(2体積、40mL)で洗浄した。
(8)得られた生成物を、40~45℃で、一晩乾燥させた。
(9)結晶化した生成物は、XRPDによって、結晶形Cであると決定された。
手順(C):1.0%v/v湿潤MTBE(1000mL)の調製:
(1)15mLのUSPウォーターを、1000mLのメスフラスコに入れ、そして、1000mLのMTBEで希釈した。得られた溶液を、約60分間撹拌した。
(2)オーバーヘッド撹拌器、窒素注入口、及び、コンデンサーを備えた500mLの3つ口フラスコに、機械的に篩い分けられた化合物IIを入れた。化合物IIを、篩い分け機で、機械的に篩い分けた。
(3)反応混合物を、1.0%v/v湿潤MTBE(300mL、15体積)で希釈し、そして、撹拌した。
(4)反応混合物を、還流温度(52~53℃)までゆっくりと加熱し、そして、還流を約24時間続けた。反応混合物の増粘が進むにつれて、撹拌速度を上げた。
(5)試料を、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、及び、24時間の時点で、引っ張った。
(6)反応混合物を、室温にまで冷却し、そして、約6時間撹拌した。
(7)反応混合物を、濾過し、そして、ケーキを、MTBE(2体積、40mL)で洗浄した。
(8)得られた生成物を、40~45℃で、一晩乾燥させた。
(9)結晶化した生成物は、XRPDによって、結晶形Cであると決定された。
【0078】
本開示の別の実施形態は、化合物II
の結晶形Cを調製するプロセスであって、
(1)化合物IIを、約0.4%v/v湿潤MTEB~約1.5%v/v湿潤MTEBに添加して、反応混合物を提供すること、
(2)反応混合物を還流すること、
(3)反応混合物を概ね室温にまで冷却すること、ならびに
(4)化合物IIの結晶形Cを反応混合物から単離することを含む、プロセスに関する。
【0079】
ステップ(1)については、化合物IIを、湿潤MTBEに添加することができる、または、湿潤MTBEを、化合物IIに添加することができる、のいずれとも理解できるであろう。
【0080】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(1)は、化合物IIを、約0.5%v/v湿潤MTBEに添加して、反応混合物を提供することを含む。
【0081】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(2)は、反応混合物を、約52~53℃の温度にまで加熱するステップをさらに含む。
【0082】
本開示の別の実施形態は、化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスに関するものであって、
(a)MTBEを、USPウォーターに添加し、及び、任意で、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌すること、
(b)機械的に篩い分けた化合物IIを、約0.4%v/v湿潤MTBE~約1.5%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、任意で、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌すること、
(c)反応混合物を還流し、及び、任意で、かき混ぜ、混合、または、撹拌を強めること、
(d)反応混合物を、概ね室温にまで冷却すること、ならびに
(e)ケーキを、反応混合物から単離し、そして、ケーキをMTBEで洗浄する、ことを含む。
【0083】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(a)の化合物IIを、篩い分け機で機械的に篩い分ける。
【0084】
ステップ(a)において、化合物IIを、湿潤MTBEに添加することができる、または、湿潤MTBEを、化合物IIに添加することができる、ことは理解できるであろう。
【0085】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(b)は、機械的に篩い分けた化合物IIを、約0.5%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌することを含む。
【0086】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(b)は、機械的に篩い分けた化合物IIを、約0.6%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌することを含む。
【0087】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(b)は、機械的に篩い分けた化合物IIを、約0.7%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌することを含む。
【0088】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(b)は、機械的に篩い分けた化合物IIを、約0.8%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌することを含む。
【0089】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(b)は、機械的に篩い分けた化合物IIを、約0.9%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌することを含む。
【0090】
化合物IIの結晶形を調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(b)は、機械的に篩い分けた化合物IIを、約1.0%v/v湿潤MTBEで希釈し、及び、反応混合物を、かき混ぜ、混合、または、撹拌することを含む。
【0091】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(c)は、反応混合物を、約50~56℃の還流温度にまで加熱し、及び、還流することを含む。
【0092】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(c)は、反応混合物を、約52~53℃の還流温度にまで加熱し、及び、還流することを含む。
【0093】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(c)は、反応混合物を、約52~53℃の還流温度にまで加熱し、及び、約24時間還流することを含む。
【0094】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(d)は、反応混合物を、概ね室温にまで冷却し、及び、反応混合物を、約4~8時間撹拌することを含む。
【0095】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(d)は、反応混合物からケーキを単離し、及び、ケーキをMTBEで洗浄することを含む。
【0096】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(e)で得られた生成物を乾燥させる。
【0097】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(e)で得られた生成物を、約35~50℃で、一晩、乾燥させる。
【0098】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(e)で得られた生成物を、約40~45℃で、一晩、乾燥させる。
【0099】
化合物IIの結晶形Cを調製するプロセスの別の実施形態において、ステップ(4)またはステップ(e)から得られる結晶形Cは、Cu-Ka線を利用する回折計で決定された、7.1、16.5、20.8、23.2、及び、28.1°2θのピーク(±0.2°)を含む粉末X線回折ディフラクトグラム(XRPD)によって特徴づけた。
【0100】
明細書で引用されたすべての特許及び他の援用は、開示箇所について関係する当業者の技術レベルを示し、かつ、各々の援用が本明細書の一部を構成するものとして、それぞれの全内容が援用されるのと同じ程度にまで、表や図面を含めて全内容が援用される。
【0101】
当業者であれば、上記した目的と利点、ならびに、本発明の具体的内容を得るために、本開示が首尾よく変更される、ことは容易に認識するであろう。好ましい実施態様の代表例として本明細書に記載された方法、変法、及び、組成物は、例示目的のものであり、かつ、本開示の範囲に制限を加えることは意図していない。そこでの変化、及び、他の用途は、本開示の趣旨に包含されるものであって、当業者が想到するであろうし、また、請求項の範囲によって規定される。
【0102】
本明細書に例示的に記載された開示は、本明細書に具体的に開示されていない1つ以上のあらゆる構成要素、1つ以上のあらゆる限定事項を欠いていても、適切に実施し得る。したがって、例えば、本明細書に記載の各事例において、用語「~を含む」、「本質的に~からなる」、及び、「~からなる」のいずれもが、他の2つの用語のいずれとも互換的であり得る。このように、これらの用語の1つを用いる本開示の実施態様について、本開示は、これらの用語の1つが、これらの用語の内の他の用語と互換的である、別の実施態様も含む。各実施態様において、それらの用語は、確立された個々の意味を有している。このように、例えば、ある実施態様は、一連のステップ「を含む」方法を包含し得るものであり、別の実施態様は、同一のステップ「から本質的になる」方法を包含するであろうし、及び、第3の実施態様は、同一のステップ「からなる」方法を包含するであろう。用いられた用語及び表現は、限定を意図するものではなく、説明の用語として使われているものであって、及び、その様な用語及び表現の使用において、明示及び記載された特徴のあらゆる等価物またはそれらの一部を排除することは意図されておらず、特許請求された開示の範囲内にある多様な変形が可能であることを示唆するものである。このように、本開示は、好ましい実施態様及び任意の特徴によって具体的に記載されているが、ここで開示された概念の改良及び変更は、当業者によってなし得るものであり、及び、そのような改良及び変更は、添付した特許請求の範囲によって定義されている本開示の範囲内のものであると理解される。
【0103】
加えて、本開示の特徴または態様が、マーカッシュグループまたは他の代替要素のグループに関して記載されている場合、当業者は、本開示が、マーカッシュグループまたは他のグループのあらゆる個別の要素またはサブグループの要素に関しても、そのようにして記載されているものと認識するであろう。
【0104】
また、特に断りの無い限りは、実施態様についての様々な数値が示される場合は、追加の実施態様は、あらゆる2つの異なる数値をもってして範囲の両端として記載される。そのような範囲も、本開示に記載された範囲内のものである。
【0105】
このように、追加の実施態様は、本開示の範囲内のものであり、かつ、以下の特許請求の範囲内のものである。