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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】PCUケース
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20240813BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20240813BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20240813BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20240813BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20240813BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240813BHJP
【FI】
H02K5/22
B60K1/00 ZHV
B60K11/02
H02K11/33
H02K9/19 A
H02M7/48 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021144014
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037340
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】森 智幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊博
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-124764(JP,A)
【文献】国際公開第2020/166150(WO,A1)
【文献】特開2020-137405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
B60K 1/00
B60K 11/02
H02K 11/33
H02K 9/19
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの動力により走行する電動車両に用いられるPCUケースであって、
前記電動車両で使用される電力を制御するパワーコントロールユニットの外殻をなし、
前記モータを収容するモータ収容ケースと一体的に設けられ、
内部空間の周囲を取り囲む側壁と一体に形成され、前記内部空間における前記モータ収容ケース側の空間とその反対側の空間との間に設けられ、前記パワーコントロールユニットの構成部品のうちの一部を前記反対側の空間内に支持する隔壁を有し、
前記隔壁の前記反対側の面に、冷媒を通す冷媒通路が形成され、
前記一部の前記構成部品が前記隔壁に支持されたときに、前記冷媒通路が前記一部の前記構成部品に接し、
前記側壁の一側面に、当該一側面と前記モータ収容ケースとの間に跨がって設けられる配管であって、前記冷媒通路に流入または前記冷媒通路から流出する冷媒を通す前記配管の一端が接続され、
前記一側面に、複数のリブがそれらの間に前記パワーコントロールユニットに接続される配線を通す間隔を空けて前記モータ収容ケースに向けて延びるように形成されている、PCUケース。
【請求項2】
前記冷媒通路は、前記反対側に開放されており、前記一部の前記構成部品が前記隔壁に支持されたときに、前記一部の前記構成部品により前記反対側から閉じられるように形成されている、請求項1に記載のPCUケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に用いられるPCUケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)や電気自動車(EV:Electric Vehicle)など、モータの動力で走行する電動車両が知られている。
【0003】
電動車両には、モータの駆動のための電力を蓄える高電圧バッテリと、ウォータポンプやラジエータファンなどの補機の駆動のための電力を蓄える補機バッテリとが搭載されている。また、電動車両には、電力を制御するPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)が搭載されている。PCUには、高電圧バッテリから出力される直流電力を補機バッテリの充電のために降圧するDC/DCコンバータと、高電圧バッテリから出力される直流電力をモータを駆動する交流電力に変換するインバータとが備えられている。
【0004】
モータの動力は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の駆動輪に振り分けられる。電動車両には、モータとデファレンシャルギヤとを単一のケース内に収容した形態、いわゆるトランスアクスルの形態を採用したものがある。たとえば、特許文献1では、トランスアクスルの形態を採用した電動車両におけるPCUの搭載構造として、トランスアクスルとPCUとを一体化した構造が提案されている。
【0005】
その提案に係る構造では、モータを収容するトランスアクスルケースの上部の開口を覆うように、固定台座が設けられ、固定台座の上方に、冷却器が配置されている。冷却器は、その下面から延出する脚が固定台座にボルトで固定されることにより、固定台座に支持されている。冷却器の上面には、支持台が設けられ、その支持台に、インバータの基板が支持されている。冷却器の下面には、DC/DCコンバータが配置されている。また、固定台座には、端子台が設けられ、端子台から上方および下方に、それぞれインバータに接続されるバスバーおよびモータに接続されるバスバーが延びている。固定台座の上方に配置される各部は、トランスアクスルケースに着脱可能に取り付けられるカバーで覆われており、カバーが取り外されると、インバータとバスバーとの結線部が露出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-170177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる構造は、インバータとバスバーとの結線作業が容易であるという利点を有しているが、固定台座上に冷却器、支持台および端子台を設けているため、構成が複雑であり、また、それらの各部を固定台座に直接または間接的に固定するための締結部の数が多いので、コスト(部品コスト、組立コスト)が高くつく懸念がある。
【0008】
本発明の目的は、パワーコントロールユニットをモータと一体化できながら、コストの低減を図ることができる、PCUケースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係るPCUケースは、モータの動力により走行する電動車両に用いられるPCUケースであって、電動車両で使用される電力を制御するパワーコントロールユニットの外殻をなし、モータを収容するモータ収容ケースと一体的に設けられ、内部空間の周囲を取り囲む側壁と一体に形成され、内部空間をモータ収容ケース側とその反対側とに分断する隔壁を有している。
【0010】
この構成によれば、電動車両には、走行用の動力を発生するモータと、電力を制御するパワーコントロールユニットとが搭載される。モータは、モータ収容ケースに収容されている。パワーコントロールユニットは、その外殻をなすPCUケースがモータ収容ケースと一体的に設けられることにより、モータと一体化されている。PCUケース内には、内部空間の数位を取り囲む側壁と一体に、その内部空間をモータ収容ケース側とその反対側とに分断する隔壁が形成されている。そのため、パワーコントロールユニットの構成部品の一部を隔壁に対してモータ収容ケース側と反対側に配置して、その構成部品を隔壁で支持することができる。そのため、構成部品を支持する部材の数を削減することができ、その部材をPCUケースまたはモータ収容ケースに直接または間接的に固定するための締結部の数を減らすことができる。その結果、コストの低減を図ることができる。
【0011】
よって、パワーコントロールユニットをモータと一体化できながら、コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、隔壁により、モータ収容ケース内からの熱を遮断でき、隔壁に対してモータ収容ケース側と反対側に配置される構成部品に熱害が及ぶことを抑制できる。
【0013】
隔壁の一方面に、冷媒を通す冷媒通路が形成されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、隔壁に対してモータ収容ケース側と反対側に配置された構成部品と冷媒通路を通る冷媒との間で熱交換が行われる。また、隔壁に対してモータ収容ケース側に配置された構成部品と冷媒通路を通る冷媒との間で隔壁を介して熱交換が行われる。したがって、隔壁に対するモータ収容ケース側およびその反対側にそれぞれ配置された構成部品を冷却することができる。その結果、それらの構成部品を熱害から保護することができる。
【0015】
側壁の一側面に、冷媒通路に流入または冷媒通路から流出する冷媒を通す配管が接続され、当該一側面に、リブが形成されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、側壁の一側面に接続された配管から冷媒通路に冷媒を流入またはその配管に冷媒通路から冷媒を流出させることができる。ところが、側壁の一側面に配管が接続されていると、たとえば、配管とPCUケースの周囲に配置されている他部材との間に、パワーコントロールユニットに接続される配線などが挟まり、配線などがダメージ(劣化、破損など)を受けるおそれがある。また、配線の配策の際に、配線が配管と他部材との間に挟まると、配策しにくくなり、配策作業に手間がかかる。側壁の一側面にリブが形成されていることにより、その側壁の強度を増すことができながら、配管と他部材との間に配線などが挟まることを抑制できる。
【0017】
リブは、複数形成されていてもよい。
【0018】
その場合、複数のリブは、パワーコントロールユニットに接続されるワイヤハーネスの配線束の厚さ(幅、径)よりも大きい間隔を空けて配置され、配線束は、複数のリブの間に通されることが好ましい。これにより、電動車両の衝突時などに、ワイヤハーネスの配線束がPCUケースまたは配管とその周囲に配置される部材との間に挟まることを抑制でき、配線束がダメージを受けることを抑制できる。
【0019】
また、リブの高さは、配線束の厚さよりも大きいことがより好ましい。これにより、ワイヤハーネスの配線束がPCUケースまたは配管とその周囲に配置される部材との間に挟まることを効果的に抑制できる。
【0020】
PCUケースは、内部空間をモータ収容ケース側と反対側から閉塞するように設けられる閉塞壁を有し、その閉塞壁に、雌コネクタが設けられており、雌コネクタは、ワイヤハーネスの先端に取り付けられた雄コネクタが差し込まれる差込口を側壁の一側面側(配管側)に向けて配置されていてもよい。
【0021】
かかる構成では、ワイヤハーネスの配線束が配管と他部材との間に挟まりやすいが、リブが設けられていることにより、配線束が配管と他部材との間に挟まることを抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パワーコントロールユニットをモータと一体化できながら、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電動車両の要部構成を示す側面図である。
図2】トランスアクスルおよびPCUの分解斜視図である。
図3】PCUをトランスアクスルケースの上端部とともに示す斜視図である。
図4】PCUを上方から見た図である。
図5】PCUの内部を透視して、トランスアクスルケースの上端部とともに示す側面図である。
図6】PCUケース内の構成を示す斜視図である。
図7】PCUケース内の構成を分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0025】
<電動車両>
図1は、電動車両1の要部構成を示す側面図である。
【0026】
電動車両1は、たとえば、シリーズ方式のハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)である。電動車両1の駆動系2には、トランスアクスル11が含まれる。トランスアクスル11は、外殻をなすトランスアクスルケース12内に、エンジンの動力で発電する発電モータと、走行のための動力を発生する駆動モータ13と、駆動モータ13の動力を左右の駆動輪に振り分けるデファレンシャルギヤ14とを内蔵している。
【0027】
また、電動車両1には、電力の制御のためのPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)21が搭載されている。PCU21の外殻をなすPCUケース22は、トランスアクスルケース12の上端部31に結合されている。これにより、PCUケース22は、トランスアクスルケース12と一体的に設けられ、PCU21は、トランスアクスル11と一体化されている。
【0028】
<トランスアクスルケース>
図2は、トランスアクスル11およびPCU21の分解斜視図である。
【0029】
トランスアクスルケース12の上端部31は、平面視で略四角枠状をなし、上方に開放されている。上端部31内には、発電モータのU相巻線、V相巻線およびW相巻線にそれぞれ接続された3本のバスバー32と、駆動モータ13のU相巻線、V相巻線およびW相巻線にそれぞれ接続された3本のバスバー33とが設けられている。バスバー32は、上端部31の後側部分において、上端部31の左側壁34に沿わせて、前後方向に等間隔で並べて配置されている。バスバー33は、上端部31の前側部分において、上端部31の左側壁34に沿わせて、前後方向に等間隔で並べて配置されている。各バスバー32,33の上端部は、トランスアクスルケース12(上端部31)の上端よりも上方に突出している。
【0030】
<PCU>
図3は、PCU21をトランスアクスルケース12の上端部31とともに示す斜視図である。図4は、PCU21を上方から見た図である。図5は、PCU21の内部を透視して、トランスアクスルケース12の上端部31とともに示す側面図である。
【0031】
PCUケース22の下部41は、トランスアクスルケース12の上端部31の外形を相似拡大した形状の側壁42,43,44,45を有し、下方に開放されている。PCUケース22は、下部41の側壁42,43,44,45によりトランスアクスルケース12の上端部31の周囲が取り囲まれるように、上端部31に上方から被せられる。側壁42,43,44,45には、その下端縁部から周囲に延出する複数の固定部46が一体に形成されており、各固定部46がボルトおよびナットなどの締結具でトランスアクスルケース12の上端部31に固定されることにより、PCUケース22がトランスアクスルケース12を上方から覆うように結合される。
【0032】
PCUケース22の上部47の左側壁51は、下部41の左側壁42と一体に形成され、それらの左側壁42,51の外面(左側面)は、面一をなしている。また、上部47の右側壁52は、下部41の右側壁43と一体に形成され、それらの右側壁43,52の外面(右側面)は、面一をなしている。
【0033】
上部47の前側壁は、下部41の前側壁44から後側にセットバックした第1前側壁53と、前側壁44から後側に第1前側壁53よりも大きくセットバックした第2前側壁54とを含む。第1前側壁53は、第2前側壁54の右側に位置し、第1前側壁53の左端縁と第2前側壁54の右端縁とは、前後方向に延びる接続壁55によって接続されている。また、下部41の左側壁42、右側壁43および前側壁44の各上端縁と、上部47の第1前側壁53、第2前側壁54および接続壁55の各下端縁とに囲まれる部分には、前天井壁56がそれらの端縁に跨がって設けられている。
【0034】
上部47の後側壁57は、下部41の後側壁45から前側にセットバックしている。下部41の左側壁42、右側壁43および後側壁45の各上端縁と、上部47の後側壁57の方年とに囲まれる部分には、後天井壁58がそれらの端縁に跨がって設けられている。
【0035】
図6は、PCUケース22内の構成を示す斜視図である。図7は、PCUケース22内の構成を分解して示す斜視図である。
【0036】
PCUケース22内には、隔壁61が設けられている。隔壁61は、前後方向および左右方向に延び、PCUケース22の上部47の左側壁51、右側壁52、第2前側壁54および後側壁57に接続され、左側壁51、右側壁52、第2前側壁54および後側壁57と一体に形成されている。PCUケース22の内部空間は、隔壁61により、トランスアクスルケース12側の空間とその反対側の空間とに分断されている。
【0037】
隔壁61の上面には、冷媒が流通する冷媒通路62が形成されている。PCUケース22の前天井壁56の上面には、配管接続部63が突出して形成されている。配管接続部63は、第1前側壁53の左端部から下部41の前側壁44の前面まで延びている。配管接続部63には、冷媒供給路64(図2参照)が前後方向に貫通して形成されており、冷媒供給路64は、第1前側壁53に貫通して形成された開口およびPCUケース22内に形成された連通路を介して、冷媒通路62と連通している。冷媒通路62は、連通路が接続される一端から後方に延び、左側に屈曲した後、前側に屈曲して延び、左側にさらに屈曲した後、後側に屈曲して延びるラビリンス状(略蛇行状)に形成されている。
【0038】
また、PCUケース22の後天井壁58の上面には、冷媒通路62の他端と左右方向で同じ位置に、配管接続部65が突出して形成されている。配管接続部65は、上部47の後側壁57から下部41の後側壁45の後面まで延びている。隔壁61および配管接続部65には、冷媒排出路66が前後方向に貫通して形成されている。冷媒排出路66は、後側壁57に形成された開口を介して、冷媒通路62と連通している。
【0039】
前側の配管接続部63には、冷却水配管71が接続される。冷却水配管71には、ウォータポンプの作用により、たとえば、ラジエータを通過した後の冷却水が流れ、その冷媒としての冷却水が冷却水配管71から冷媒供給路64を通して冷媒通路62に供給される。一方、後側の配管接続部65には、冷却水配管72の一端が接続される。冷媒通路62を流通する冷却水は、冷媒排出路66を通して冷却水配管72に排出される。冷却水配管72の他端は、トランスアクスルケース12の上端部31の後面に接続されている。トランスアクスルケース12内には、オイルクーラが設けられており、冷却水配管72からトランスアクスルケース12内に流入する冷却水は、オイルクーラを経由して、トランスアクスルケース12の上端部31の前面に接続された冷却水配管73に排出される。冷却水配管73に排出された冷却水は、ラジエータを経由して、冷却水配管71を流れる。オイルクーラでは、オイルクーラを経由する冷却水とトランスアクスルケース12内のオイルとの間で熱交換が行われる。
【0040】
PCU21は、DC/DCコンバータ81と、インバータおよびマイコン(マイクロコントローラ)が実装された制御ユニット82とを備えている。
【0041】
DC/DCコンバータ81は、PCUケース22内において、隔壁61の上方の空間に配置されて、隔壁61に支持されている。電動車両1には、駆動モータ13の駆動のための電力を蓄える高電圧バッテリと、ウォータポンプなどの補機の駆動のための電力を蓄える補機バッテリとが搭載されている。DC/DCコンバータ81の一次側は、高電圧バッテリに接続され、二次側は、補機バッテリに接続されている。補機バッテリの充電残量が低下すると、高電圧バッテリから出力される直流電力がDC/DCコンバータ81で降圧されて、その降圧された直流電力がDC/DCコンバータ81から補機バッテリに供給されることにより、補機バッテリが充電される。
【0042】
制御ユニット82は、PCUケース22内において、隔壁61の下方の空間に配置されて、トランスアクスルケース12内に設けられた支持部83(図5参照)に支持されている。制御ユニット82には、発電モータの駆動のためのインバータと、駆動モータ13の駆動のためのインバータとが実装されている。各インバータは、三相電圧形インバータであり、2個のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)の直列回路をU相、V相およびW相の各相に対応して設け、それらの直列回路をプラス配線とマイナス配線との間に互いに並列に接続した構成を有している。
【0043】
制御ユニット82の左側面には、図2および図5に示されるように、6本のバスバー84,85が前後方向に間隔を空けて並べて設けられている。前側3本のバスバー84は、駆動モータ13の駆動のためのインバータに接続され、後側3本のバスバー85は、発電モータの駆動のためのインバータに接続されている。各インバータでは、U相、V相およびW相の各相に対応する2個のIGBTの接続点にバスバー84,85が接続されている。そして、U相、V相およびW相に対応するバスバー84がそれぞれトランスアクスルケース12の上端部31内に設けられたU相、V相およびW相に対応するバスバー33に接続されることにより、インバータが駆動モータ13に電気的に接続される。また、U相、V相およびW相に対応するバスバー85がそれぞれトランスアクスルケース12の上端部31内に設けられたU相、V相およびW相に対応するバスバー32に接続されることにより、インバータが発電モータに電気的に接続される。
【0044】
また、PCU21は、カバー91を備えている。PCUケース22の上部47は、上方に開放されており、カバー91は、その開放された上部47を上側から閉塞するようにPCUケース22に取り付けられる。
【0045】
カバー91には、隆起部92が形成されている。隆起部92は、後側ほど高くなるように傾斜して延びる前傾斜面93と、前傾斜面93の上端から後側ほど低くなるように傾斜して延びる後傾斜面94とを有している。後傾斜面94には、2個のコネクタ差込口95が左右方向に間隔を空けて設けられている。各コネクタ差込口95は、カバー91を貫通する開口として形成されている。
【0046】
隆起部92内には、高電圧コネクタ96が配置される。高電圧コネクタ96は、板金製のブラケットBを介して、PCUケース22の隔壁61に支持されている。高電圧コネクタ96は、2個のコネクタ差込口95から外部に露出している。高電圧コネクタ96には、コネクタ差込口95内において、PN(ポジティブ・ネガティブ)コネクタ97(図1参照)が接続される。PNコネクタ97は、高電圧バッテリのプラス端子およびマイナス端子に接続されたワイヤハーネス98の先端に取り付けられている。また、高電圧コネクタ96は、PCUケース22内において、各インバータのプラス配線およびマイナス配線と電気的に接続されている。これにより、各インバータのプラス配線およびマイナス配線は、高電圧コネクタ96、PNコネクタ97およびワイヤハーネス98を介して、それぞれ高電圧バッテリのプラス端子およびマイナス端子と電気的に接続される。たとえば、駆動モータ13の駆動時(力行運転時)には、高電圧バッテリから出力される直流電力がインバータで交流電力に変換され、インバータからモータに交流電力が供給される。
【0047】
また、PCUケース22の上部47の第1前側壁53には、DC出力端子99が取り付けられている。DC出力端子99は、DC/DCコンバータ81の二次側が接続されている。DC出力端子99と補機バッテリのプラス端子およびマイナス端子とがワイヤハーネスで接続されることにより、DC/DCコンバータ81の一次側と補機バッテリとが電気的に接続される。
【0048】
さらに、PCUケース22の下部41の後側壁45には、配管接続部65の右側において、2個の薄板状のリブ101が一体に形成されている。2個のリブ101は、互いの間にPNコネクタ97が取り付けられたワイヤハーネス98の配線束の厚さ(幅、径)よりも大きい間隔を空けて、上下方向および前後方向に延びている。また、各リブ101の高さ(後側壁45からの突出量)は、ワイヤハーネス98の配線束の厚さよりも大きい。そして、ワイヤハーネス98の配線束は、2個のリブ101の間を通されている。
【0049】
<作用効果>
以上のように、電動車両1には、走行用の動力を発生する駆動モータ13と、電力を制御するPCU21とが搭載される。駆動モータ13は、トランスアクスルケース12に収容されている。PCU21は、その外殻をなすPCUケース22がトランスアクスルケース12と一体的に設けられることにより、駆動モータ13と一体化されている。PCUケース22内には、内部空間の数位を取り囲む側壁と一体に、その内部空間をトランスアクスルケース12側とその反対側とに分断する隔壁61が形成されている。そのため、DC/DCコンバータ81を隔壁61に対してトランスアクスルケース12側と反対側に配置して、DC/DCコンバータ81を隔壁61で支持することができる。そのため、PCU21の構成部品を支持する部材の数を減らすことができ、その部材をPCUケース22またはトランスアクスルケース12に直接または間接的に固定するための締結部の数を減らすことができる。その結果、コストの低減を図ることができる。
【0050】
よって、PCU21を駆動モータ13と一体化できながら、コストの低減を図ることができる。
【0051】
また、隔壁61により、トランスアクスルケース12内からの熱を遮断でき、隔壁61に対してトランスアクスルケース12側と反対側に配置されるDC/DCコンバータ81に熱害が及ぶことを抑制できる。
【0052】
隔壁61の上面に、冷媒を通す冷媒通路62が形成されている。冷媒通路62を冷媒としての冷却水が流通することにより、DC/DCコンバータ81と冷媒通路62を通る冷却水との間で熱交換が行われる。また、隔壁61に対してトランスアクスルケース12側に配置された制御ユニット82と冷媒通路62を通る冷却水との間で隔壁61を介して熱交換が行われる。したがって、DC/DCコンバータ81および制御ユニット82をそれぞれ冷却することができる。その結果、それらのDC/DCコンバータ81および制御ユニット82を熱害から良好に保護することができる。
【0053】
PCUケース22は、内部空間をトランスアクスルケース12側と反対側から閉塞するように設けられるカバー91を備えており、そのカバー91内に、高電圧コネクタ96が設けられている。カバー91には、後側に向けて開口したコネクタ差込口95が形成されており、高電圧コネクタ96には、コネクタ差込口95を介して、ワイヤハーネス98の先端に取り付けられたPNコネクタ97が接続される。
【0054】
PCUケース22の上部47の後側壁57の左端部の後側には、冷媒通路62から流出する冷媒を通す冷却水配管72が接続される配管接続部65が形成され、PCUケース22の下部41の後側壁45には、配管接続部65の右側において、2個のリブ101が形成されている。配管接続部65に冷却水配管72が接続されていると、冷却水配管72とPCUケース22の周囲に配置されている他部材との間に、ワイヤハーネス98の配線束が挟まり、ワイヤハーネス98の配線がダメージ(劣化、破損など)を受けるおそれがある。また、ワイヤハーネス98の配策の際に、ワイヤハーネス98の配線束が冷却水配管72と他部材との間に挟まると、配策しにくくなり、配策作業に手間がかかる。後側壁45にリブ101が形成されていることにより、後側壁45の強度を増すことができながら、冷却水配管72と他部材との間にワイヤハーネス98の配線束が挟まることを抑制できる。
【0055】
また、リブ101は、2個形成されており、その2個のリブ101は、ワイヤハーネス98の配線束の厚さ(幅、径)よりも大きい間隔を空けて配置され、ワイヤハーネス98の配線束は、2個のリブ101の間を通されている。しかも、各リブ101の高さは、ワイヤハーネス98の配線束の厚さよりも大きい。これにより、電動車両1の衝突時などに、ワイヤハーネス98の配線束がPCUケース21または冷却水配管72とその周囲に配置される部材(たとえば、ダッシュパネル)との間に挟まることを抑制でき、ワイヤハーネス98の配線束がダメージを受けることを抑制できる。なお、リブ101の個数は、2個に限らず、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0056】
発電モータおよび駆動モータ13に接続されたバスバー32,33の上端部がトランスアクスルケース12(上端部31)の上端よりも上方に突出しており、その上端よりも上方の位置において、バスバー32,33と制御ユニット82のバスバー84,85とを接続することができる。そのため、トランスアクスルケース12またはPCUケース22に、バスバー32,33とバスバー84,85との接続のための開口部、その開口部を閉塞する蓋および開口部と蓋との間をシールするシール部材を設ける必要がなく、トランスアクスル11の構成の簡素化を図ることができる。
【0057】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0058】
たとえば、前述の実施形態では、冷却水配管71から冷媒通路62に冷却水が供給され、冷媒通路62を通過した冷却水が冷却水配管72に排出されるとしたが、冷却水配管72から冷媒通路62に冷却水が供給され、冷媒通路62を通過した冷却水が冷却水配管71に排出されてもよい。
【0059】
電動車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両であるとしたが、駆動モータ13を走行用の駆動源とする車両であれば、とくに限定はなく、シリーズ方式以外の方式のハイブリッドシステムを採用したハイブリッド車両であってもよいし、エンジンを搭載していない電気自動車(EV:Electric Vehicle)であってもよい。
【0060】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:電動車両
12:トランスアクスルケース(モータ収容ケース)
13:駆動モータ(モータ)
22:PCUケース
45:後側壁(側壁)
51:左側壁(側壁)
52:右側壁(側壁)
53:第1前側壁(側壁)
54:第2前側壁(側壁)
57:後側壁(側壁)
61:隔壁
62:冷媒通路
72:冷却水配管(配管)
101:リブ
図1
図2
図3
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図5
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図7