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特許7536726無線中継装置、ゲートウェイ装置及び無線システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】無線中継装置、ゲートウェイ装置及び無線システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20240813BHJP
   H04W 76/20 20180101ALI20240813BHJP
   H04W 84/22 20090101ALI20240813BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240813BHJP
【FI】
H04W40/02
H04W76/20
H04W84/22
H04W84/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021149335
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042172
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴臣
(72)【発明者】
【氏名】小倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】平野 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】鍋谷 寿久
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-088820(JP,A)
【文献】特開2016-220102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路制御プロトコルとMACプロトコルに対応可能であり、前記経路制御プロトコルを用いて少なくとも1つのゲートウェイ装置を含むマルチホップネットワークを構成し、前記MACプロトコルに対応可能な無線装置に前記MACプロトコルにより確立された無線リンクを介して接続可能な無線中継装置であって、
前記無線中継装置に接続される前記無線装置が前記経路制御プロトコルを実行可能であるかを判定する判定部と、
前記無線装置が前記経路制御プロトコルを実行可能でないと前記判定部が判定した場合、前記無線装置を識別する情報を前記ゲートウェイ装置又は前記マルチホップネットワークにおける他の無線中継装置に通知する通知部と、
を備える無線中継装置。
【請求項2】
前記判定部は、アドレス解決テーブルに含まれる前記無線装置の状態情報に基づいて、前記無線装置が前記無線中継装置に接続されていることを検知する、請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記無線装置との前記無線リンク上のフレームを受信すると、前記無線装置が前記無線中継装置に接続されていることを検知する、請求項1に記載の無線中継装置。
【請求項4】
Internet Protocol(IP)層の経路制御プロトコルを実行して前記マルチホップネットワークの経路制御を行う経路制御部をさらに備える、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の無線中継装置。
【請求項5】
前記無線中継装置のネットワークアドレスを前記無線装置に配布するアドレス配布部をさらに備え、
前記判定部は前記ネットワークアドレスと前記無線装置のアドレスとの比較結果に応じて、前記無線装置が前記経路制御プロトコルを実行可能であるかを判定する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の無線中継装置。
【請求項6】
前記IP層の経路制御プロトコルはIPv6 Routing Protocol for Low-power and Lossy Networks(RPL)である、請求項4に記載の無線中継装置。
【請求項7】
前記通知部は、前記無線中継装置を識別する情報を前記無線装置を識別する情報に付して前記ゲートウェイ装置又は前記他の無線中継装置に通知する、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無線中継装置。
【請求項8】
前記マルチホップネットワークは工場又は倉庫のローカルエリアネットワークである、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の無線中継装置。
【請求項9】
前記無線中継装置は前記工場又は前記倉庫の内部のある位置に取り付けられ、あるいは前記工場又は前記倉庫の内部を移動するロボットに取り付けられる、請求項8に記載の無線中継装置。
【請求項10】
経路制御プロトコルとMACプロトコルに対応可能な複数の無線中継装置を含み、前記経路制御プロトコルと前記MACプロトコルに対応可能であり、前記経路制御プロトコルを用いて構成されたマルチホップネットワークを上位ネットワークに接続するためのゲートウェイ装置であって、
前記複数の無線中継装置の中の第1無線中継装置に前記MACプロトコルにより確立された無線リンクを介して接続された前記MACプロトコルに対応可能な無線装置と前記第1無線中継装置の間の第1経路情報と、前記マルチホップネットワークの第2経路情報と、を保持する経路情報保持部と、
前記複数の無線中継装置の中の第2無線中継装置から経路情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した経路情報が前記第1経路情報又は前記第2経路情報であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記経路情報保持部が保持する前記第1経路情報又は第2経路情報を変更する経路変更部と、
を備えるゲートウェイ装置。
【請求項11】
送信先を識別する情報を用いて前記経路情報保持部が保持する前記第2経路情報を探索し、経路を決定する経路決定部と
前記経路に基づいて生成された送信パケットを送信するパケット送信部と、
をさらに備える請求項10に記載のゲートウェイ装置。
【請求項12】
経路制御プロトコルとMACプロトコルに対応可能である複数の無線中継装置と前記経路制御プロトコルと前記MACプロトコルに対応可能なゲートウェイ装置とを備え、前記経路制御プロトコルを用いてマルチホップネットワークを構成する無線システムであって、
前記複数の無線中継装置の各々は、
前記MACプロトコルにより確立された無線リンクを介して前記無線中継装置に接続される前記MACプロトコルに対応可能な無線装置が前記経路制御プロトコルを実行可能であるかを判定する判定部と、
前記無線装置が前記経路制御プロトコルを実行可能でないと前記判定部が判定した場合、前記無線装置を識別する情報を前記ゲートウェイ装置又は前記マルチホップネットワークにおける他の無線中継装置に通知する通知部と、
を備え、
前記ゲートウェイ装置は、
前記複数の無線中継装置の中の第1無線中継装置に前記無線リンクを介して接続された前記無線装置と前記第1無線中継装置の間の第1経路情報と、前記マルチホップネットワークの第2経路情報と、を保持する経路情報保持部と、
前記複数の無線中継装置の中の第2無線中継装置から経路情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した経路情報が前記第1経路情報又は前記第2経路情報であるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記経路情報保持部が保持する前記第1経路情報又は第2経路情報を変更する経路変更部と、
を備える、無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線マルチホップネットワークに関し、特に中継経路の構築に関する。
【背景技術】
【0002】
無線マルチホップネットワークの経路制御プロトコルとしてRPL(IPv6 Routing Protocol for Low-power and Lossy Networks)が知られている。RPLでは、ゲートウェイ装置がネットワークの情報を管理する。無線中継装置は、RPLを用いて無線中継装置間のリンク上で経路制御を実行し、マルチホップネットワークを構築できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-88574号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】村上貴臣、添谷みゆき、鍋谷寿久、「統合MAC層による無線LANマルチホップネットワーク構築手法の提案」、電子情報通信学会通信ソサイテエティ大会、2020年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経路制御プロトコルに対応していない無線装置が無線中継装置に接続された場合、無線中継装置は無線装置との経路情報を得ることができず、経路情報を他の無線中継装置に送信できない。そのため、無線中継装置は、無線中継装置間のリンク上で経路制御を実行できず、マルチホップネットワークを構築できない。
【0006】
この発明の目的は、無線マルチホップネットワークを構築する経路制御プロトコルに対応していない無線装置に対してもマルチホップネットワークを構築できる無線中継装置、ゲートウェイ装置及び無線システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る無線中継装置は、経路制御プロトロコルとMACプロトコルに対応可能であり、経路制御プロトコルを用いて少なくとも1つのゲートウェイ装置を含むマルチホップネットワークを構成し、MACプロトコルに対応可能な無線装置にMACプロトコルにより確立された無線リンクを介して接続可能である。無線中継装置は、無線中継装置に接続される無線装置が経路制御プロトコルを実行可能であるかを判定する判定部と、無線装置が経路制御プロトコルを実行可能でないと判定部が判定した場合、無線装置を識別する情報をゲートウェイ装置又はマルチホップネットワークにおける他の無線中継装置に通知する通知部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る無線マルチホップネットワークを含む通信ネットワークの一例を示すブロック図。
図2】実施形態に係る無線装置の一例を示すブロック図。
図3】実施形態に係る無線中継装置の一例を示すブロック図。
図4】実施形態に係るARP(Address Resolution Prorocol)テーブルの一例を示す図。
図5】実施形態に係るNDP(Neighbour Discovery Protocol)テーブルの一例を示す図。
図6】実施形態に係る無線中継装置の経路情報生成処理の一例を示すフローチャート。
図7】実施形態に係る第1経路情報の一例を示す図。
図8】実施形態に係る第2経路情報の一例を示す図。
図9】実施形態に係る無線中継装置がゲートウェイ装置に送信した第1経路情報の一例を示す図。
図10】実施形態に係るゲートウェイ装置が作成したゲートウェイ装置から無線装置までの伝送経路に関する経路情報の一例を示す図。
図11】実施形態に係るゲートウェイ装置の一例を示すブロック図。
図12】実施形態に係るゲートウェイ装置の経路情報受信処理の一例を示すフローチャート。
図13】実施形態に係る経路情報保持部が保持する更新前の第2経路情報の一例を示す図。
図14】実施形態に係るゲートウェイ装置が受信した第2経路情報の一例を示す図。
図15】更新された第2経路情報の一例を示す図。
図16】実施形態に係る経路情報保持部が保持する第1経路情報の一例を示す図。
図17】実施形態に係るパケット送受信部が受信した第1経路情報の一例を示す図。
図18】追加処理後に実施形態に係る経路情報保持部が保持する第1経路情報の一例を示す図。
図19】実施形態に係るゲートウェイ装置のパケット送信方法の一例を示すフローチャート。
図20】実施形態に係る経路ヘッダの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書によって開示される実施形態は、技術的思想の創作を具体化するための装置、及び方法等を例示するものである。そのため、本明細書によって開示される構成要素の構造、形状、配置等は、当該開示に限定されず、当業者が本開示から容易に想到し得る変形は、当然に、当該開示に含まれる。また、本明細書において参照される図面は、実施形態の説明を容易にするためのものである。そのため、図面は場合に応じて、実施される際に用いられる各要素より、抽象的、模式的に示される場合がある。従って、図面に示される各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等はこれに限定されない。なお、以下の説明において「接続」は、直接接続のみならず、他の要素を介した接続も含む場合もある。
【0010】
以下、図面を参照しながら実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る無線マルチホップネットワーク10を含む通信ネットワークの一例を示すブロック図である。図1はあるタイミングでの無線マルチホップネットワーク10の構成を示す。無線装置14が無線マルチホップネットワーク10に接続される。無線装置14の数は単数でもよいし、複数でもよい。無線マルチホップネットワーク10は上位ネットワーク12に接続される。
【0012】
無線マルチホップネットワーク10は、少なくとも1つのゲートウェイ装置、ここでは1つのゲートウェイ装置16と少なくとも1つの無線中継装置、ここでは6つの無線中継装置18a、18b、18c、18d、18e、18fを含む。個別に区別する必要が無い場合は、無線中継装置18a-18fを無線中継装置18と称する。複数の無線中継装置18が直接的に又は他の無線中継装置18を介して間接的にゲートウェイ装置16に接続される。無線装置14が複数の無線中継装置18のいずれかに接続される。
【0013】
ゲートウェイ装置16と無線中継装置18は基本的には同じ無線通信機能を備えるので、共に無線中継装置と称してもよい。ゲートウェイ装置16は上位ネットワーク12との通信機能を備える点が無線中継装置18とは異なる。
【0014】
ゲートウェイ装置16は上位ネットワーク12に接続される。ゲートウェイ装置16と上位ネットワーク12との接続は、信号線を介する有線接続でもよいし、無線回線を介する無線接続でもよい。
【0015】
ゲートウェイ装置16と複数の無線中継装置18が協働して経路制御プロトコルを実行し、無線マルチホップネットワーク10の伝送経路を生成する。このような多段中継の伝送経路は、例えばRPLを用いて生成してもよいし、IEEE 802.11sを用いて生成してもよいし、さらにその他の経路制御プロトコルを用いて生成してもよい。その他の経路制御プロトコルの例は、IP(Internet Protocol)層やMAC(Media Access Control)層の経路制御プロトコルである。この多段中継の伝送経路が生成されると、無線装置14と無線中継装置18との間、複数の無線中継装置間、及び無線中継装置18とゲートウェイ装置16との間でパケット送受信が可能な状態となる。
【0016】
無線マルチホップネットワーク10は、IEEE802.11規格に準拠した無線LANに応用可能であるが、その他の無線ネットワークにも応用可能である。無線マルチホップネットワーク10は工場や倉庫内の無線LANとして実現可能である。その場合、無線中継装置18は敷地内に固定されていてもよいし、Autonomous Mobile Robot(AMR)、Automatic Guided Vehicle(AGV)、マニュピュレータ等のロボットに搭載されてもよい。
【0017】
従来は、無線装置14が経路制御プロトコルに対応していないと、無線マルチホップネットワーク10の伝送経路が生成できなかった。実施形態では、無線装置14が経路制御プロトコルに対応していなくても、無線マルチホップネットワーク10の伝送経路が生成される。以下、無線マルチホップネットワーク10に外部から接続される無線装置14が経路制御プロトコルに対応しない場合、無線装置14を無線マルチホップネットワーク10に組み込み、無線装置14とゲートウェイ装置16が無線マルチホップネットワーク10を介してパケット送受信を可能とする手順を説明する。無線装置14が経路制御プロトコルに対応しないとは、無線装置14が経路制御プロトコルを実装していない場合、又は実装していてもその機能が停止している場合である。
【0018】
図2は、実施形態に係る無線装置14の一例を示すブロック図である。無線装置14は、入力部44、表示部46、無線送受信部48と、これらを制御するプロセッサ42を含む。入力部44は指示を入力したり、データを入力するキーボード等からなる。入力部44と表示部46は別々に設けるのではなく、タッチパネルにより兼用されてもよい。無線装置14の例はスマートフォン、パーソナルコンピュータである。無線装置14は、入力データや、プロセッサ42が処理した入力データを無線マルチホップネットワーク10を介して上位ネットワーク12へ送信したり、無線マルチホップネットワーク10を介して上位ネットワーク12から受信したデータを受信する。
【0019】
図3は、実施形態に係る無線中継装置18の一例を示すブロック図である。無線中継装置18は、判断部22、通知部24、経路制御部26、アドレス配布部28及び無線送受信部30で構成される。判断部22が通知部24、経路制御部26及びアドレス配布部28に接続される。無線送受信部30が通知部24、経路制御部26及びアドレス配布部28に接続される。判断部22は、ARPテーブル32aとNDPテーブル32bを保持する。ARPテーブル32aとNDPテーブル32bの詳細は図4図5に示す。経路制御部26は無線中継装置18のネットワークプレフィックス34を保持する。無線中継装置18のネットワークプレフィックス34は、無線マルチホップネットワークのネットワークプレフィックスとは異なる。
【0020】
無線中継装置18は、無線装置14が接続されることを検知すると、MACプロトコルを用いて無線装置14との無線リンクを接続し、無線装置14との間のデータフレームの送受信を可能とする。MACプロトコルは、例えばIEEE802.11で規定されているアソシエーションである。
【0021】
無線中継装置18の判断部22は無線装置14が接続されたことを検知する。判断部22は、MACプロトコルの受信フレームを監視することにより無線装置14の接続を検知してもよいし、無線中継装置18が管理する無線装置14の状態を監視することにより接続を検知してもよい。無線装置14の状態の例は、MACプロトコルのアソシエーション状態や、IPアドレスを解決するARPのキャッシュ情報の状態や、IPv6アドレスを解決するNDPのキャッシュ情報の状態がある。この監視のために、判断部22は、ARPテーブル32aとNDPテーブル32bを保持する。
【0022】
図4は、実施形態に係るARPテーブル32aの一例を示す図である。ARPテーブル32aは、判断部22がARPによって無線装置14のIPアドレスから得たMACアドレスとIPアドレスとの対応関係と無線装置14の状態を示す。状態REACHABLEは到達可能な状態、すなわち接続された状態を示し、状態FAILEDは接続失敗を示す。
【0023】
図5は、実施形態に係るNDPテーブル32bの一例を示す図である。NDPテーブル32bは、判断部22がNDPによって無線装置14のIPv6アドレスから得たMACアドレスとIPv6アドレスとの対応関係と無線装置14の状態を示す。状態DELAYと状態STALEは、状態REACHABLEになってから所定時間経過し、接続可能かわからない状態である。状態DELAYは、NDPによる確認までの待ち状態である。状態STALEは新たなパケットが送信されるまで確認しない状態である。
【0024】
ARPテーブル32aやNDPテーブル32bの監視で無線装置14の接続を検知するためには、先ず、無線中継装置18のアドレス配布部28が無線中継装置18のIPアドレスあるいはIPv6アドレス(両者を区別する必要が無い場合、IPアドレスと称する)を無線装置14に設定し、無線装置14と無線中継装置18の間でパケット送受信ができる状態にする。アドレスの設定方法は、DHCP(Dynamic Host Configuration Prorocol)やRA(Router Advertisement)によってネットワークプレフィックス情報や設定すべきIPアドレスそのものを配布し自動設定してもよいし、予め定めた値を無線装置14側で手動設定してもよい。判断部22は、IPパケット又はIPv6パケット(両者を区別する必要が無い場合、IPパケットと称する)の送信のためにARPテーブル32aやNDPテーブル32bを用いて宛先MACアドレスを解決すると、ARPテーブル32aあるいはNDPテーブル32bにMACアドレスを登録する。
【0025】
これらのテーブル32a、32bの状態に応じて無線装置14のMACアドレスが有効であるかがわかる。MACアドレスが有効な場合、MACアドレスに対応する無線装置14が接続されたことが検知できる。
【0026】
図6は、実施形態に係る無線中継装置18の経路情報生成処理の一例を示すフローチャートである。
【0027】
ステップS101で、判断部22は、隣接端末のアドレスリストが更新されたか否かを判定する。隣接端末のアドレスリストはARPテーブル32aやNDPテーブル32bである。ARPテーブル32aやNDPテーブル32bに無線装置14のIPアドレスが新規登録された場合、又はARPテーブル32aやNDPテーブル32b内の無線装置14の状態が変化した場合、アドレスリストが更新されたと判断できる。判断部22は、アドレスリストが更新されたと判断した場合、無線装置14が無線マルチホップネットワーク10に接続してきた(或いは参加してきた)と判断し、ステップS102の処理を実行する。判断部22は、アドレスリストが更新されたと判断するまで、ステップS101の判定を繰り返し実行する。
【0028】
ステップS102で、判断部22は、更新された隣接端末のアドレスリストから新規登録又は更新された無線装置14のIPアドレスを取得する。
【0029】
ステップS103で、判断部22は、ステップS102において取得した無線装置14のIPアドレスと無線中継装置18の経路制御部26が保持する無線中継装置18のネットワークプレフィックス34を部分的に比較する。IPアドレスはネットワークプレフィックスとノードアドレスとを結合した情報であり、判断部22はIPアドレスの先頭から一定長さのネットワークプレフィックスがネットワークプレフィックス34と一致すると、部分一致である判定する。
【0030】
ステップS104で、判断部22は、ステップS103の比較結果が部分一致であったか否かを判定する。前述したように、経路制御部26が保持する無線中継装置18のネットワークプレフィックス34は、無線マルチホップネットワークのネットワークプレフィックスとは異なる。そのため、無線装置14のIPアドレスの上位ビットが無線中継装置18の経路制御部26が保存するネットワークプレフィックス34と一致することは、無線装置14が無線マルチホップネットワークに参加していないとみなすことができる。参加していないということは、無線装置14が無線中継装置18に実装されている経路制御プロトコルに対応していない、あるいは対応していても機能がオフしていることを意味する。判断部22が、ステップS104で、無線装置14のIPアドレスとネットワークプレフィックス34が部分一致であると判定した場合、ステップS105の処理が実行される。判断部22は、ステップS104で、IPアドレスとネットワークプレフィックス34が部分一致していないと判定した場合、ステップS101の判定処理を再度実行する。
【0031】
ステップS105で、無線中継装置18の通知部24は、第1経路情報を生成する。図7は実施形態に係る第1経路情報の一例を示す図である。第1経路情報は、無線装置14-無線中継装置18(ここでは、18d)間の経路情報である。第1経路情報は、無線装置14のIPアドレスと無線中継装置18dのIPアドレスとを関連づけるIPアドレスの組である。図7は2つの無線装置が2つの無線中継装置に夫々接続された場合の例を示す。なお、IPアドレスの代わりに無線装置や無線中継装置のその他のアドレスや識別子を用いて第1経路情報を生成してもよい。
【0032】
ステップS106で、無線中継装置18の無線送受信部30は、第1経路情報をパケットとしてゲートウェイ装置16に送信する。ゲートウェイ装置16と無線中継装置18は無線マルチホップネットワーク10を構築しており、お互いのパケットは到達可能である。無線送受信部30は、送信においては、TCPやUDP等のトランスポートプロトコルを用いることができる。
【0033】
以上のように、ステップS101で、無線中継装置18は無線装置14が自身に接続されたことを検知すると、ステップS102-S106で、無線中継装置18は無線中継装置18の識別子としてのIPアドレスと、無線装置14の識別子としてのIPアドレスの対である無線中継装置18無線装置14との間の第1経路情報を他の無線中継装置18を介してゲートウェイ装置16に、あるいは直にゲートウェイ装置16に伝えることができる。ゲートウェイ装置16は、第1経路情報を受信すると、予め構成され保持している無線マルチホップネットワーク10の無線中継装置間の経路情報である第2経路情報と併せることにより、ゲートウェイ装置16から無線装置14までの多段中継の伝送経路を構築できる。
【0034】
図8は、実施形態に係る第2経路情報の一例を示す図である。
【0035】
図9は、実施形態に係る無線中継装置18がステップS106でゲートウェイ装置16に送信した第1経路情報の一例を示す図である。
【0036】
図10は、実施形態に係るゲートウェイ装置16が第1経路情報と第2経路情報から作成したゲートウェイ装置16から無線装置14までの伝送経路に関する経路情報の一例を示す図である。
【0037】
次に、ゲートウェイ装置16の経路情報の作成方法について説明する。図11は、実施形態に係るゲートウェイ装置16の一例を示すブロック図である。ゲートウェイ装置16は、経路情報保持部66、経路情報判別部68、経路情報更新部70、経路決定部72及びパケット送受信部74で構成される。経路情報保持部66は、無線装置-無線中継装置間の第1経路情報62と、無線マルチホップネットワーク10の無線中継装置間の第2経路情報64をそれぞれの形式で保持する。それぞれの形式とは、図7図8図9図10に示すような2つのアドレスを組にした情報のリストやテーブルである。経路決定部72は、無線マルチホップネットワーク10内の全無線中継装置18のIPアドレスの中のネットワークプレフィックス78を保持する。なお、経路情報保持部66が第1経路情報を保持する代わりに、無線中継装置18が第1経路情報を保持してもよい。
【0038】
図12は、実施形態に係るゲートウェイ装置16の経路情報受信処理の一例を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS211で、ゲートウェイ装置16のパケット送受信部74は無線中継装置18から送信された経路情報パケットを受信する。
【0040】
ステップS212で、ゲートウェイ装置16の経路情報判別部68はパケット送受信部74が受信した経路情報が無線装置-無線中継装置間の第1経路情報であるか無線マルチホップネットワーク10の無線中継装置間の第2経路情報であるかを判別する。無線中継装置18は、無線マルチホップネットワーク10内の経路を構築、再構築した時に、第2経路情報をゲートウェイ装置16に送信する。そのため、第2経路情報は、無線中継装置18により任意のタイミングで更新され、ゲートウェイ装置16に送信される。
【0041】
第2経路情報は、無線マルチホップネットワーク10の経路制御プロトコルに従って送信されるため、判別可能である。第1経路情報は、TCPやUDPのトランスポートプロトコルを用いて送信されるので、使用するメッセージ形式やトランスポートプロトコルのポート番号を予め定めておくことで判別可能である。
【0042】
受信した経路情報が第2経路情報である場合、ステップS213で、ゲートウェイ装置16の経路情報更新部70は、経路情報保持部66が保持する第2経路情報64を更新する。
【0043】
図13は、実施形態に係る経路情報保持部66が保持する更新前の第2経路情報64の一例を示す図である。
【0044】
図14は、実施形態に係るゲートウェイ装置16がステップS211で受信した第2経路情報の一例を示す図である。
【0045】
図15は、ステップS213で更新された第2経路情報64の一例を示す図である。更新前は、図1に示すように、無線中継装置18cの次ホップは無線中継装置18aであったが、無線マルチホップネットワーク10の更新により、無線中継装置18cの次ホップは無線中継装置18bに変更された。
【0046】
受信した経路情報が第1経路情報である場合、ステップS214で、経路情報更新部70は、受信した経路情報に記載された無線中継装置のIPアドレスを用いて経路情報保持部66が保持する第1経路情報62の無線中継装置を探索する。
【0047】
ステップS214の探索の結果、ステップS215で、経路情報更新部70は、受信した経路情報に記載された無線中継装置のアドレスに対応するアドレスを持つ第1経路情報62を経路情報保持部66は保持するか否か判定する。
【0048】
経路情報保持部66が受信した経路情報に記載された無線中継装置のアドレスに対応するアドレスを持つ第1経路情報62を保持する場合、経路情報更新部70は、ステップS216で、経路情報保持部66が保持する第1経路情報62を更新する。更新の例は、無線装置14の接続先が無線中継装置18dから他の無線中継装置18に変更された場合である。
【0049】
経路情報保持部66が受信した経路情報に記載された無線中継装置のアドレスに対応するアドレスを持つ第1経路情報62を保持しない場合、ステップS217で、経路情報更新部70は、受信した経路情報を経路情報保持部66が保持する第1経路情報62に追加する。
【0050】
図16は、実施形態に係る経路情報保持部66が保持する第1経路情報62の一例を示す図である。
【0051】
図17は、実施形態に係るパケット送受信部74がステップS211で受信した第1経路情報の一例を示す図である。
【0052】
図18は、ステップS217の追加処理後に実施形態に係る経路情報保持部66が保持する第1経路情報62の一例を示す。追加前は、無線装置Aが無線中継装置Bに接続されていたが、図1に示すように、無線装置14が無線中継装置18dに接続されると、経路情報保持部66が保持する無線装置-無線中継装置間の第1経路情報は図18に示すように変更される。
【0053】
以上のように、ゲートウェイ装置16は、第1経路情報と第2経路情報を保持し、無線中継装置18から受信した第1経路情報又は第2経路情報により保持した第1経路情報又は第2経路情報を更新することによって、無線装置14が接続先の無線中継装置18を変更した場合、無線装置14からゲートウェイ装置16までのパケット中継の経路を更新することができる。
【0054】
図19は、実施形態に係るゲートウェイ装置16のパケット送信方法の一例を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS201で、先ず、ゲートウェイ装置16の経路決定部72は、送信パケットの宛先アドレスを自身が保持する全てのネットワークプレフィックス78と比較する。経路決定部72は、宛先アドレスがネットワークプレフィックス78のいずれかと一致すると判定した場合、ステップS204の処理を実行し、一致しないと判定した場合、ステップS202の処理を実行する。
【0056】
ステップS202で、経路決定部72は、経路情報保持部66が保持する第1経路情報62を宛先アドレスを用いて探索する。
【0057】
ステップS202の探索の後、ステップS203で、経路決定部72は、経路情報保持部66は宛先アドレスに対応するアドレスを持つ第1経路情報62を保持するか否か判定する。
【0058】
経路決定部72は、経路情報保持部66が宛先アドレスに対応するアドレスを持つ第1経路情報62を保持しないと判定した場合、当該宛先アドレスにパケットを送信できないので、処理は終了する。
【0059】
経路情報保持部66が宛先アドレスに対応するアドレスを持つ第1経路情報62を保持すると判定した場合、ステップS204で、経路決定部72は、経路情報保持部66が保持する第2経路情報64を当該第1経路情報62に含まれる無線中継装置のアドレス情報を用いて探索し、第1経路情報62に含まれる無線中継装置のアドレスを持つ第2経路情報64を見つける。
【0060】
ステップS205で、パケット送受信部74はステップS203で得られた無線装置-無線中継装置間の第1経路情報とステップS204で得られた無線マルチホップネットワーク10の第2経路情報とを用いて、ゲートウェイ装置16から無線装置14までの経路を決定し、経路ヘッダを生成する。経路ヘッダは例えばIPv6(RFC2460)において示される形式に従って生成できる。図20は、実施形態に係る経路ヘッダの一例を示す図である。
【0061】
ステップS206で、パケット送受信部74は経路ヘッダを参照してパケットを次ホップのアドレス(ここでは、無線中継装置18a)宛に送信する。
【0062】
このように、ゲートウェイ装置16が2つの経路情報を組み合わせて宛先アドレスまでの経路を探索することによって、経路制御プロトコルに対応していない無線装置14が無線マルチホップネットワーク10内の無線中継装置18に接続した場合でも、ゲートウェイ装置16から無線装置14までの経路を正しく探索でき、無線装置14に宛てて送信パケットを送信できる。
【0063】
無線中継装置18の判断部22は、図6のステップS101に示すように、隣接端末のアドレスリストが更新されたか否かにより、無線装置14が無線マルチホップネットワーク10に接続してきたことを判断した。無線中継装置18が無線装置14の接続を検知する他の例として、ICMP(Internet Control Message Protocol)を利用する方法がある。無線中継装置18は、無線中継装置18が配布するネットワークアドレスに対応したブロードキャストアドレスに宛ててICMPエコー要求パケットを定期的に送信する。無線装置14が無線中継装置18に接続している場合は、無線装置14がICMPエコー応答パケットを送信する。このため、無線中継装置18においてICMPエコー応答パケットを含むフレームを受信できた場合は、無線装置14が無線中継装置18に接続されたと判断できる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を生成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…無線マルチホップネットワーク、12…上位ネットワーク、14…無線装置、16…ゲートウェイ装置、18…無線中継装置、22…判断部、24…通知部、26…経路制御部、28…アドレス配布部、30…無線送受信部、66…経路情報保持部、68…経路情報判別部、70…経路情報更新部、72…経路決定部、74…パケット送受信部。
図1
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