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特許7536727工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法
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  • 特許-工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法 図1
  • 特許-工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法 図2
  • 特許-工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法 図3
  • 特許-工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240813BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021152583
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044522
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚登
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-041387(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074064(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムに従って所定の工程を実行する産業機械から、前記プログラムの手順を示す手順記号を時系列で受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記手順記号が前記所定の工程の完了を示す特定の記号に変わったとき、前記所定の工程が完了したと判定する判定部と、
を備える工程完了判定装置。
【請求項2】
プログラムに従って所定の工程を実行する産業機械から、前記プログラムの手順を示す手順記号と前記産業機械の稼働状況とを示す情報を時系列で受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記手順記号が前記所定の工程の完了を示す特定の記号に変わり、かつ、前記稼働状況が自動運転から停止に変わったとき、前記所定の工程が完了したと判定する判定部と、
を備える工程完了判定装置。
【請求項3】
前記手順記号は、前記プログラムの行番号であり、
前記特定の記号は、特定の行番号、又は、特定の行番号域内の行番号である、
請求項1又は2に記載の工程完了判定装置。
【請求項4】
前記特定の行番号域は、行番号が0以上、かつ、前記プログラムの全行数の所定の割合に対応する行番号以下である、
請求項3に記載の工程完了判定装置。
【請求項5】
前記手順記号は、前記プログラムのシーケンス番号であり、
前記特定の記号は、特定のシーケンス番号である、
請求項1又は2に記載の工程完了判定装置。
【請求項6】
プログラムに従って所定の工程を実行する産業機械と、
前記プログラムの手順を示す手順記号を時系列で受信する通信部と、
前記通信部が受信した前記手順記号が前記所定の工程の完了を示す特定の記号に変わったとき、前記所定の工程が完了したと判定する判定部と、
を備える工程完了判定システム。
【請求項7】
プログラムに従って所定の工程を実行する産業機械から、前記プログラムの手順を示す手順記号を時系列で受信することと、
受信した前記手順記号が前記所定の工程の完了を示す特定の記号に変わったとき、前記所定の工程が完了したと判定することと、
を備える工程完了判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プログラムに従って、被加工物に所定の工程を実行する産業機械が知られている。プログラムとしては、NC(Numerical Control)プログラムが代表的である。
【0003】
特許文献1では、産業機械を備えるシステムにおいて、サーバーが産業機械から各種情報(工具情報、加工条件など)を自動的に収集する手法が提案されている。
【0004】
ところで、生産数やサイクルタイムをサーバーにおいて正確に管理するには、産業機械から送信される工程完了信号に基づいて、所定の工程が完了したことを逐次検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-41387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に、産業機械から送信される工程完了信号は、サーバーが産業機械から各種情報を収集するサンプリング周期より短いパルス波である。そのため、産業機械から各種情報を収集することはできても、工程完了信号を検出できない場合がある。
【0007】
本開示は、産業機械において所定の工程が完了したか否かを判定可能な工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る工程完了判定装置は、プログラムに従って所定の工程を実行する産業機械から、プログラムの手順を示す手順記号を時系列で受信する通信部と、通信部が受信した手順記号が所定の工程の完了を示す特定の記号に変わったとき、所定の工程が完了したと判定する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、産業機械において所定の工程が完了したか否かを判定可能な工程完了判定装置、工程完了判定システム及び工程完了判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る工程完了判定システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係るNCプログラムの構成の一例を示す模式図である。
図3】実施形態に係る記憶部が記憶しているテーブルの一例である。
図4】実施形態に係る工程完了判定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(工程完了判定システム1の構成)
本実施形態に係る工程完了判定システム1の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、工程完了判定システム1の構成を示すブロック図である。
【0012】
工程完了判定システム1は、産業機械10及び管理部20を備える。管理部20は、本開示に係る工程完了判定装置である。
【0013】
(産業機械10)
図1では、産業機械10が旋盤である場合が図示されている。ただし、産業機械10としては、例えば、旋盤以外の工作機械、スポット溶接機、溶接ロボット、半導体関連装置、露光装置、化学処理装置、ワイヤボンダ、プローバ、電子部品挿入機、プリント基盤孔あけ機、組立装置、搬送装置、鍛圧機械、ワイヤソー及びシャーリングマシン等の鈑金機械などであってもよい。旋盤以外の工作機械としては、例えば、フライス盤、中ぐり盤、マシニングセンタ、ジグポーラ、ボール盤、研削盤、放電加工機、ワイヤレスカット放電加工機、パンチングプレス、レーザ加工機などが挙げられる。
【0014】
図1では、産業機械10が1つだけ図示されているが、産業機械10の数は1以上であればよい。
【0015】
産業機械10は、コントローラ11を有する。コントローラ11は、通信機能を備えており、通信機能によりネットワーク(例えば、インターネット)を介して管理部20に接続される。
【0016】
コントローラ11は、NC(Numerical Control)プログラムに従って、ワークに対して所定の工程を実行する。ここで、図2は、NCプログラムの構成の一例を示す模式図である。
【0017】
図2に示されるように、NCプログラムには、行番号とプログラムとが含まれる。行番号は、0から1ずつ増える正の整数である。プログラムは、各行に入力される。プログラムは、特別な指令がない限り、行番号の昇順で1行ずつ処理される。
【0018】
0行目には、プログラムの始まりを意味する「%」が入力されている。27行目には、プログラムの終わりを意味する「%」が入力されている。よって、0行目から27行目までが本実施形態に係るNCプログラムである。
【0019】
1行目には、NCプログラムのメインプログラム番号である「O9995」と、オペレータ向けのコメントである「(DANKI)」とが入力されている。また、4~7行目にも、オペレータ向けのコメントが入力されている。
【0020】
17行目及び21行目には、「N」に続くシーケンス番号が入力されている。17行目の「N001」はシーケンス番号1を意味し、21行目の「N10」はシーケンス番号10を意味する。シーケンス番号とは、プログラムを見やすくするための目印である。シーケンス番号は、指令の順序を把握しやすいようユーザによって適宜入力される。シーケンス番号が入力された行番号の数字が大きいほど、シーケンス番号も大きくなる。なお、17行目より前にシーケンス番号は入力されていないが、17行目まではシーケンス番号「0」と認識される。本実施形態において、行番号及びシーケンス番号それぞれは、「NCプログラムの手順を示す手順記号」の一例である。
【0021】
27行目には、所定の工程が完了したことを示す「M30」が入力されている。しかしながら、一般的に、M30は、管理部20のサンプリング周期(例えば、500ミリ秒)より短いパルス波(例えば、パルス幅10ミリ秒の単一のパルス波)であるため、管理部20においてM30を検出することは困難である。よって、本実施形態では、所定の工程の完了を検出するためにM30を用いない。
【0022】
コントローラ11は、NCプログラムに従って所定の工程を実行しながら、産業機械情報を示す信号を時系列で管理部20に送信する。産業機械情報には、日時、稼働状況、メインプログラム番号、現在のプログラム番号、行番号及びシーケンス番号が含まれる。日時は、当該産業機械情報が取得された日時を示す。稼働状況は、産業機械10がNCプログラムに従った自動運転中であるか、或いは、産業機械10が停止中であるかを示す。
【0023】
(管理部20)
管理部20は、通信部21、記憶部22及び判定部23を有する。管理部20の機能は、サーバーにより達成される。サーバーは、クラウドサーバーであってよい。管理部20は、ネットワークを介して産業機械10のコントローラ11に接続される。管理部20は、工程完了判定装置である。
【0024】
通信部21は、ネットワークを介してコントローラ11と通信可能である。通信部21は、コントローラ11から産業機械情報を時系列で受信する。通信部21は、受信した産業機械情報を時系列で記憶部22に記憶させる。
【0025】
記憶部22は、通信部21が受信した産業機械情報を時系列に記憶する。図3は、記憶部22が記憶しているテーブルの一例である。図3に示すテーブルは、図2に示したNCプログラムに対応している。
【0026】
図3に示されるように、記憶部22は、日時、稼働状況、メインプログラム番号、現在のプログラム番号、行番号及びシーケンス番号を対応付けて時系列で記憶している。メインプログラムとは、工程実行単位の最初のプログラムである。工程実行単位は、メインプログラムとサブプログラムより構成される。現在のプログラムとは、実行されている実行単位内のプログラムである。
【0027】
図3に示す例では、2021年7月27日9時4分から同日9時12分まで、産業機械10は、メインプログラム番号及び現在のプログラム番号ともに「O9995」で自動運転中である。その間、行番号は「12」から「23」まで断続的に増え、シーケンス番号は「0」から「10」まで断続的に増えている。
【0028】
そして、同日9時13分に産業機械10の稼働状況は自動運転から停止へ遷移するとともに、行番号が「23」から「0」に減り、かつ、シーケンス番号が「10」から「0」に減っている。
【0029】
判定部23は、記憶部22を参照して、行番号が、所定の工程が完了したことを示す特定の行番号に変わったか否かを判定する。本実施形態において、特定の行番号は「0」である。従って、判定部23は、行番号が「0以外の数字」から「0」に変わったか否かを判定する。図3に示す例では、9時4分から9時12分の間は、行番号が「0」に変わっていない。また、9時14分における行番号は「0」であるものの、9時13分における行番号も「0」であるため、9時14分に行番号が「0以外の数字」から「0」に変わったとはいえない。一方、9時12分における行番号は「23」であり、9時13分における行番号は「0」であるため、9時13分に行番号が「0以外の数字」から「0」に変わったといえる。よって、判定部23は、9時13分に行番号が特定の行番号に変わったと判定する。
【0030】
判定部23は、記憶部22を参照して、稼働状況が自動運転から停止に変わったか否かを判定する。図3に示す例では、9時4分から9時12分の間は稼働状況が自動運転中であり、9時13分から9時14分の間は稼働状況が停止である。よって、判定部23は、9時13分に稼働状況が自動運転から停止に変わったと判定する。
【0031】
判定部23は、行番号が特定の行番号に変わり、かつ、稼働状況が自動運転から停止に変わったとき、所定の工程が完了したと判定する。図3に示す例では、判定部23は、9時13分に所定の工程が完了したと判定する。
【0032】
判定部23は、行番号が特定の行番号に変わっていないとき、所定の工程は完了していないと判定する。また、判定部23は、稼働状況が自動運転から停止に変わっていないとき、所定の工程は完了していないと判定する。
【0033】
以上の通り、本実施形態に係る判定部23は、行番号が特定の行番号に変わったときに所定の工程が完了したと判定する。よって、産業機械10において所定の工程が完了したか否かを簡便に判定できる。
【0034】
また、本実施形態に係る判定部23は、行番号が特定の行番号に変わったことだけでなく、稼働状況が自動運転から停止に変わったときに所定の工程が完了したと判定する。よって、産業機械10において所定の工程が完了したか否かをより精度良く判定できる。
【0035】
(工程完了判定方法)
本実施形態に係る工程完了判定方法について、図4を参照しながら説明する。図4は、工程完了判定方法の流れを示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、産業機械10のコントローラ11は、日時、稼働状況、メインプログラム番号、現在のプログラム番号、行番号及びシーケンス番号を含む産業機械情報を示す信号を時系列で管理部20に送信する。
【0037】
ステップS2において、管理部20の通信部21は、コントローラ11から産業機械情報を時系列で受信して、受信した産業機械情報を時系列で記憶部22に記憶させる。
【0038】
ステップS3において、判定部23は、記憶部22を参照して、行番号が、所定の工程が完了したことを示す特定の行番号(本実施形態では「0」)に変わったか否かを判定する。行番号が特定の行番号に変わったと判定された場合、処理はステップS4に進む。行番号が特定の行番号に変わっていないと判定された場合、処理はステップS3に戻る。
【0039】
ステップS4において、判定部23は、記憶部22を参照して、稼働状況が自動運転から停止に変わったか否かを判定する。稼働状況が自動運転から停止に変わったと判定された場合、処理はステップS5に進む。稼働状況が自動運転から停止に変わっていないと判定された場合、処理はステップS3に戻る。
【0040】
ステップS5において、判定部23は所定の工程が完了したと判定し、処理は終了する。
【0041】
(実施形態の変形例)
【0042】
[変形例1]
上記実施形態において、判定部23は、行番号が特定の行番号に変わり、かつ、稼働状況が自動運転から停止に変わったときに所定の工程が完了したと判定することとしたが、行番号が特定の行番号に変わったときに所定の工程が完了したと判定してもよい。すなわち、判定部23は、稼働状況が自動運転から停止に変わったか否かを判定しなくてもよい。この場合、所定の工程が完了したか否かの判定の精度は低くなるものの、所定の工程が完了したか否かを更に簡便に判定できる。なお、この場合には、産業機械情報には稼働状況が含まれていなくてもよい。
【0043】
[変形例2]
上記実施形態において、判定部23は、行番号が特定の行番号0に変わったか否かを判定することとしたが、0より大きな行番号から行番号0までの間に設定された特定の行番号域内の行番号に変わったか否かを判定してもよい。例えば、行番号が0以上、かつ、プログラムの全行数の所定の割合に対応する行番号以下である行番号域内の行番号に変わったか否かを判定してもよい。これにより、管理部20のサンプリング周期の制約により、行番号が特定の行番号に変わっても検出できないおそれが更に軽減される。
【0044】
図2に示す例では、プログラムの全行数は27行である。例えば、所定の割合を10%と予め設定した場合、27行の10%に対応する行番号は2.7行であり、特定の行番号域は0以上2.7行以下である。よって、判定部23は、行番号が「2.7より大きな数字」から「0以上2.7以下の数字」に変わったか否かを判定する。図3に示す例では、判定部23は、9時13分に行番号が特定の行番号域内の行番号(例えば、プログラムの全行数の所定の割合に対応する行番号以下の行番号)に変わったと判定する。
【0045】
[変形例3]
上記実施形態において、判定部23は、行番号が特定の行番号に変わったか否かを判定することとしたが、シーケンス番号が所定の工程が完了したことを示す特定のシーケンス番号に変わったか否かを判定することとしてもよい。例えば、特定のシーケンス番号を「0」に設定した場合、図3に示す例では、判定部23は、9時13分にシーケンス番号が特定のシーケンス番号に変わったと判定する。なお、この場合には、産業機械情報には行番号が含まれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 工程完了判定システム
10 産業機械
11 コントローラ
20 管理部(工程完了判定装置)
21 通信部
22 記憶部
23 判定部
図1
図2
図3
図4