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特許7536753前面取付タイプのフラットパネルスピーカ組立品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】前面取付タイプのフラットパネルスピーカ組立品
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240813BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20240813BHJP
   H04R 7/04 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H04R1/02 105A
H04R1/00 310F
H04R7/04
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021517922
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 GB2019051588
(87)【国際公開番号】W WO2019234445
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】1809382.3
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1813621.8
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520479087
【氏名又は名称】アミナ・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Amina Technologies Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ニューラブ
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-064726(JP,A)
【文献】特開2010-208433(JP,A)
【文献】特開2004-320265(JP,A)
【文献】実開昭57-072696(JP,U)
【文献】特開昭63-036932(JP,A)
【文献】特開昭62-171399(JP,A)
【文献】特開2017-073648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/02
H04R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面内の開口に取り付けるように構成されたフラットパネルスピーカであって、
上記フラットパネルスピーカは、
上記取付面内の開口の中に挿入可能で、前面を有する平面状の共振パネルを備え、上記前面は、上記取付面内に上記フラットパネルスピーカが取り付けられたとき、上記取付面内で外側を向くようになっており、上記共振パネルは、上記前面の反対側の後面をさらに有し、
上記共振パネルの上記後面に結合された励振器を備え、上記励振器の動作により上記共振パネルを振動させて音を発生させ、
上記取付面内での取り付けのための支持フレームを備え、この支持フレームに対して、上記共振パネルの後面が、上記共振パネルの外側境界の実質的に全周にわたって固定され、その結果、上記取付面内に取り付けられた状態で、上記励振器の動作によって上記共振パネルの振動が引き起こされるとき、上記共振パネルの外側境界が上記取付面に対して固定され、
少なくとも1つのタブを備え、このタブは、上記スピーカが上記取付面に取り付けられるべきとき、上記取付面と平行なタブ方向に上記支持フレームから離れて延在し、かつ、上記共振パネルの前面と実質的に面一になるように構成され、その結果、上記タブが上記取付面に抗しているとき、上記共振パネルの上記前面が上記取付面と実質的に面一になるように維持され
上記少なくとも1つのタブは上記共振パネルおよび上記支持フレームとは異なる部材であり、上記少なくとも1つのタブは上記支持フレームまたは上記共振パネルに取り付けられている
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項2】
請求項1に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記少なくとも1つのタブは複数のタブを含み、上記複数のタブのうち1つ以上のタブは、上記共振パネルの上記前面の実質的にコーナーに設けられている
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項3】
請求項2に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記1つ以上のタブは、そのタブが実質的に設けられている上記コーナーから30ミリメートルを超えない間隔を空けている
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項4】
請求項3に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記1つ以上のタブの各々の外縁は、そのタブが実質的に設けられている上記コーナーから少なくとも10ミリメートルの間隔を空けている
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記共振パネルの上記前面は、2つの短辺と2つの長辺とを有する実質的に長方形であり、上記少なくとも1つのタブは、上記短辺の1つを越えて上記タブ方向に延在している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項6】
請求項5に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記少なくとも1つのタブは、上記長辺を越える如何なる第2の延在量よりも大きい第1の延在量だけ、上記短辺を越えて上記タブ方向に延在している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記少なくとも1つのタブは、上記短辺から実質的に延在している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項8】
請求項5から7までのいずれか一つに記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記少なくとも1つのタブは、上記短辺を越えてのみ延在している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記タブは、1ミリメートル未満の厚さを有する
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記タブは、そのタブの中に、取付中にそのタブを上記取付面に固定するための頭付き固定具によって係合可能な、少なくとも部分的に窪んだ境界を有する貫通凹部を画定している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項11】
請求項10に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記貫通凹部は、開いた凹部である
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項12】
請求項10または11に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記貫通凹部は、皿穴である
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項13】
請求項12に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記貫通凹部は、そのタブの前面の第1の凹部から、そのタブの後面へ延在する第2の凹部まで画定しており、
上記第2の凹部は、上記タブの上記前面から上記タブの上記後面への上記凹部の軸に対して、上記第1の凹部よりも鋭く先細りになっている
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一つに記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記取付面内での取り付けのための取付ユニットをさらに備え、その取付ユニットに設けられた上記共振パネルと励振器を有する
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項15】
請求項14に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記少なくとも1つのタブは、上記取付ユニットから延在している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項16】
請求項14または15に記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記取付ユニットの表面は、その表面内に、上記取付ユニット内から上記スピーカの外に出て、上記取付面の後方に画定された取付キャビティへ、音が通過するのを容易にするように配置された少なくとも1つの穴を画定している
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか一つに記載のフラットパネルスピーカにおいて、
上記少なくとも1つのタブは、上記支持フレームと上記共振パネルの少なくとも1つに対してフランジ状に接続されている
ことを特徴とするフラットパネルスピーカ。
【請求項18】
フラットパネルスピーカを外向きの取付面に取り付ける方法であって、
上記方法は、
請求項1から17までのいずれか一つに記載のスピーカを、上記取付面内に画定された開口であって、上記スピーカの上記共振パネルがその開口に嵌合するように寸法設定されたものに対して、上記共振パネルの上記前面が上記取付面と実質的に面一になる態様で、上記少なくとも1つのタブが上記取付面に抗するまで、挿入し、
上記スピーカを、上記取付面内に固定する
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項10、または、請求項10に直接または間接的に従属する請求項11から17までのいずれか一つに記載のスピーカのためのタブを製造する方法であって、
上記方法は、第1のパンチヘッドを画定する第1のパンチツールを用いた第1のパンチング動作と、上記第1のパンチング動作に続いて、第2のパンチヘッドを画定する第2のパンチツールを用いた第2のパンチング動作とによって、上記貫通凹部を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、
上記第1のパンチヘッドは、上記第2のパンチヘッドの少なくとも一部よりも小さい
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の方法において、
上記第2のパンチヘッドが第2のパンチ先端へ先細りになるのに比して、上記第1のパンチヘッドは第1のパンチ先端へより鋭く先細りになっている
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルスピーカのようなデバイスを、壁のような表面に、その表面と面一に又は実質的に面一になるように取り付けるための取付構造に関する。本発明は、特に、フラットパネルスピーカ及びそれを取付面へ取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルスピーカは、建物の表面、例えば壁、床、天井の表面などに画定された開口に設置され得る。フラットパネルスピーカの共振パネルの前面は、例えば壁の表面と実質的に面一(同一平面)になるように配置される。このようにして設置されたフラットパネルスピーカの一般的な魅力の一つは、フラットパネルスピーカを目に見えないようにすることができることである。一旦このようなフラットパネルスピーカが上記表面内の開口に取り付けられると、フラットパネルスピーカのフラットパネルが上記表面の一部を形成している(または上記表面が面内に開口を画定している)ことが一般的に明らかでない限り、フラットパネルスピーカの境界を上記表面となじませることにより、フラットパネルスピーカを「目に見えない(invisible)」ようにすることができる。
【0003】
大壁(stud walls)に吊るされた石膏ボードの上など、壁の表面が石膏で形成される場所で、スピーカを「目に見えない」ようにするために、フラットパネルスピーカは、壁の表面と面一になるように塗り壁の開口に取り付けられ、それから、塗り壁を仕上げるために塗布されたスキムがスピーカのフラットパネルの上にも塗布される。それによって、フラットパネルスピーカに、面一になる壁と実質的に同じ仕上げを与えて、目に見えなくする。
【0004】
一定の市場で一般的な別の形態の壁構造は、乾式壁のライニングであり、乾式壁の石膏ボードが大壁に取り付けられて壁の表面を形成する。乾式壁のボード自体が壁の仕上げとなるため、左官塗りや仕上げ用のスキムは塗布されない。その代わり、乾式石膏ボードの目地のみが目地テープおよび目地材で隠される。
【0005】
壁の表面が乾式壁ボードで提供されている場所でスピーカを「目に見えない」ようにするために、フラットパネルスピーカは、乾式壁のライニングボードと並んで大壁に取り付けられ得る。しかし、テーピングとジョイントのせいで、ジョイントテープがスピーカ表面から誇らしげに立つことがあるため、フラット複合パネルスピーカは、より隠し難くなることがある。
【0006】
本開示が考案されたのは、上記背景においてである。
【発明の概要】
【0007】
一局面から見ると、本発明は、一側面から見ると、本発明は、取付面の開口に取り付けるように構成されたフラットパネルスピーカを提供する。上記フラットパネルスピーカは、上記取付面内の開口の中に挿入可能で、前面を有する平面状の共振パネルを備える。上記前面は、上記取付面内に上記フラットパネルスピーカが取り付けられたとき、上記取付面内で外側を向くようになっている。上記共振パネルは、上記前面の反対側の後面をさらに有する。上記スピーカは、さらに、上記共振パネルの上記後面に結合された励振器を備え、上記励振器の動作により上記共振パネルを振動させて音を発生させる。上記スピーカは、さらに、上記取付面内での取り付けのための支持フレームを備え、この支持フレームに対して、上記共振パネルの後面が、上記共振パネルの外側境界の実質的に全周にわたって固定され、その結果、上記取付面内に取り付けられた状態で、上記励振器の動作によって上記共振パネルの振動が引き起こされるとき、上記共振パネルの外側境界が上記取付面に対して固定される。また、上記スピーカは、少なくとも1つのタブを備え、このタブは、上記スピーカが上記取付面に取り付けられるべきとき、上記取付面と平行なタブ方向に上記支持フレームから離れて延在し、かつ、上記共振パネルの前面と実質的に面一になるように構成され、その結果、上記タブが上記取付面に抗しているとき、上記共振パネルの上記前面が上記取付面と実質的に面一になるように維持される。上記少なくとも1つのタブは上記共振パネルおよび上記支持フレームとは異なる部材であり、上記少なくとも1つのタブは上記支持フレームまたは上記共振パネルに取り付けられている。
【0008】
有利なことに、上記少なくとも1つのタブは、上記フラットパネルスピーカが上記取付面内の上記開口の中に押し込まれすぎないことを確実にする。特に、上記フラットパネルスピーカが上記取付面の上記開口の中に押し込まれると、上記タブが上記取付面に抗して押し付けられることになる。それゆえ、上記タブが取付面に抗して押し付けられた位置よりもさらに上記開口内に上記フラットパネルスピーカを挿入することができない。したがって、上記フラットパネルスピーカの上記共振パネルは、例えば上記取付面を提供する石膏ボードの厚さにかかわらず、取付時には常に上記取付面と面一に設けられることになる。さらに、このタイプのフラットパネルスピーカは、上記フラットパネルスピーカが上記取付面と面一に取り付けられるべき位置以外の位置に容易に取り付けられ得ない。このことは、このようなフラットパネルスピーカが、高度に熟練した専門の業者でなくても据え付け可能であり、消費者や家主によってDIYホーム改良プロジェクトの一環として取り付けられるのに適していることを保証する。
【0009】
上記共振パネルの上記前面が上記取付面内で実質的に面一であることに関連して「実質的に面一」という用語は、上記共振パネルの上記前面が上記取付面と正確に面一である場合を含むことが理解されるであろう。幾つかの例では、上記共振パネルの上記前面と上記取付面との間には、2ミリメートル未満のような小さな差があってもよい。上記共振パネルの上記前面と上記取付面との間の如何なる差も、典型的には、上記共振パネルの上記前面と上記取付面との間に、上記フラットパネルスピーカを隠すために石膏コーティングが施されるとき、許容可能なオーディオ性能の「見えない」フラットパネルスピーカを提供することが、なお可能となるような寸法である。
【0010】
上記少なくとも1つのタブが上記共振パネルの上記前面と実質的に面一になることに関連して「実質的に面一になる」という用語は、上記少なくとも1つのタブの前面、すなわち上記取付面から離れて向く面が、上記共振パネルの上記前面と正確に面一になる場合を含むことが理解されるであろう。また、「実質的に同一平面」という用語は、タブの底面、すなわち据付時に上記取付面に抗して押し付けられる面が、上記共振パネルの上記前面と正確に面一である場合を含む。幾つかの例では、上記共振パネルの上記前面と上記少なくとも1つのタブの面との間には、2ミリメートル未満のような小さな差があってもよい。上記共振パネルの上記前面と上記タブの面との間の如何なる差も、典型的には、上記共振パネルの上記前面と上記取付面との間に、上記フラットパネルスピーカを隠すために石膏コーティングが施されるとき、許容可能なオーディオ性能の「見えない」フラットパネルスピーカを提供することが、なお可能となるような寸法である。
【0011】
「タブ」という用語は、上記スピーカが上記取付面内に取り付けられるべきとき、上記取付面に平行なタブ方向に上記支持フレームから離れて、かつ上記共振パネルの上記前面と実質的に面一になるように延在する、如何なる構造的特徴をも含むことが理解されるであろう。上記タブは、上記支持フレームの一部のみから延在する必要はなく、幾つかの実施形態では、上記支持フレームの実質的に境界全体から延在してもよい。
【0012】
上記少なくとも1つのタブは、複数のタブであってもよい。上記複数のタブは、上記共振パネルの境界の周りに分布していてもよい。上記少なくとも1つのタブは、例えば4つのタブを含んでいてもよい。
【0013】
前記少なくとも1つのタブは、前記共振パネルの前記前面の実質的にコーナーに設けられてもよい。上記共振パネルの上記前面の各コーナーには、上記少なくとも1つのタブのうちの1つが設けられていてもよい。このように、上記共振パネルの上記前面の各コーナーには、タブが設けられている。
【0014】
上記少なくとも1つのタブが実質的に上記共振パネルのコーナーにあることに関連して「実質的にコーナーにある」という用語は、上記少なくとも1つのタブが上記共振パネルのコーナーに正確に設けられている場合を含むことが理解されるであろう。幾つかの例では、上記共振パネルの周縁を取り囲む支持フレームまたは取付ユニットが存在し得る。これらの例では、上記タブは、上記共振パネルの上記コーナーに近い位置で上記支持フレームまたは取付ユニット上に設けられ得る。上記タブの縁は、上記共振パネル、支持フレームまたは取付ユニットのコーナーから5cm以内、例えば1cm以内であってもよい。上記少なくとも1つのタブは、上記共振パネルの縁の中心よりも上記共振パネルのコーナーに近い位置にあってもよい。用語「コーナー」は、上記共振パネルの境界の曲率が増加する、上記境界の如何なる領域をも意味することが理解されるであろう。このようにして、実質的に円形の共振パネルは、典型的にはコーナーを有しないことが理解されるであろう。
【0015】
有利なことに、上記共振パネルの実質的に各コーナーに設けられたタブを有することは、それらのタブが上記取付面に抗しているとき、上記共振パネルの上記前面の全体を上記取付面内で実質的に面一に保つのに役立つ。このことは、上記取付面が完全に均一で平坦ではない場合に、特に有用である。各コーナーに設けられたタブを有することは、上記共振パネルの上記前面の全周が上記取付面と可能な限り面一になることを確実にするのに役立つ。上記タブが上記共振パネルの上記コーナーから実質的に離れて設けられている場合、例えば、上記共振パネルの各辺の略中央にある場合、上記共振パネルの上記コーナーは、他の方法で可能であるようには、上記取付面と面一には設けられないかもしれない。このことは、上記フラットパネルスピーカが上記取付面内で目に見えないようにすることをより困難にするであろう。その理由は、上記スピーカ全体を上記取付面内で隠すために、より多くの石膏の層が必要とされるからである。
【0016】
別の実施形態では、上記少なくとも1つのタブは、一般的には上記コーナーに設けられていてもよいが、それにもかかわらず、上記共振パネルの正確なコーナーから、例えば少なくとも10ミリだけ間隔を空けて設けられていてもよい。特に、上記タブの縁は、共振パネルの最も近いコーナーから少なくとも10ミリメートル離れていてもよい。したがって、上記共振パネルまたは上記組み立てられたフラットパネルスピーカの輸送中に、上記タブが上記コーナーから少なくとも僅かに離して設けられることができる。そして、輸送中に、デリケートなタブに損傷を与える可能性を減らすことができる。
【0017】
上記共振パネルの上記前面は、実質的に長方形であってもよい。全ての長方形と同様に、上記前面は、2つの短辺と2つの長辺とからなる4つの主辺を有するであろう。上記少なくとも1つのタブは、上記短辺の1つを越えて上記タブ方向に延在していてもよい。
【0018】
上記共振パネルの上記前面が実質的に矩形であることに関連して「実質的に矩形」という用語は、上記共振パネルの上記前面が正確に矩形である場合を含むことが理解されるであろう。幾つかの例では、上記前面のコーナーは、丸みを帯びていてもよく、そうでなければ正確に方形でなくてもよい。幾つかの例では、上記コーナーは、正確に90度ではなくてもよく、例えば80度と100度の間であってもよい。幾つかの例では、上記2つの短辺は、互いに異なる長さであり得、および/または、上記2つの長辺は、互いに異なる長さであり得る。上記辺における10パーセントの相違は、依然として、上記共振パネルの実質的に長方形の前面を提供し得る、ということが理解されるであろう。上記共振パネルの上記前面を正確に長方形ではなくする形状の相違は、典型的には、上記共振パネルの上記前面を長方形として認識することが依然として可能であるような寸法のものである。
【0019】
上記少なくとも1つのタブは、上記長辺を越える如何なる第2の延在量よりも大きい第1の延在量だけ、上記短辺を越えて上記タブ方向に延在してもよい。有利にも、このことは、上記共鳴パネルの上記長辺を越えて延びる方向に上記取付面のスペースが限られている場合でも、上記タブを有する上記スピーカの据え付けの実行を確実する。別の見方をすれば、第1の方向にスペースが限られている取付面について、上記少なくとも1つのタブのために上記第1の方向に犠牲になるスペースが少ないので、より大きなフラットパネルスピーカが据え付けられ得る。このようなタブの配置は、上記フラットパネルスピーカが部屋のためのダクト領域に設置される場合、例えば、上記取付面の最も狭い範囲が40センチメートル未満であり得る場合に有利である。言い換えれば、上記少なくとも1つのタブは、上記フラットパネルスピーカが幅よりも長くなるように配置されてもよい。ここで、上記共振パネルの最大寸法は長さである。
【0020】
上記少なくとも1つのタブは、上記共振パネルの上記短辺から、または実質的に上記短辺から延在していてもよい。言い換えれば、上記少なくとも1つのタブは、上記共振パネルの上記短辺にて上記フラットパネルスピーカの残りの部分に接続されていてもよい。
【0021】
上記共振パネルの上記短辺から実質的に延在する上記少なくとも1つのタブに関連して「実質的に~から」という用語は、上記少なくとも1つのタブが上記共振パネルの上記短辺から延在する場合を含む、ということが理解されるであろう。幾つかの例では、支持フレームまたは取付ユニットが、上記共振パネルの周縁を取り囲んでいてもよい。これらの場合、上記タブは、上記共振パネルの短辺に近い位置で、上記支持フレームまたは取付ユニットから延在し、その結果、上記タブが上記支持フレームまたは取付ユニットの短辺から直接延在していてもよい。
【0022】
上記少なくとも1つのタブは、上記短辺を越えてのみ延在していてもよい。このようにして、上記少なくとも1つのタブは、上記2つの長辺の間の方向に上記フラットパネルスピーカの範囲を広げることはない。
【0023】
上記少なくとも1つのタブは、1ミリメートル未満の厚さを有していてもよい。そのようなタブは、薄いタブと呼ばれることがある。
【0024】
有利なことに、目に見えないと思われるようにするために上記タブを覆うのに必要な石膏の層の数は、減らされ得る。上記タブの上記前面が、上記取付面に塗布された如何なる石膏コーティングとも面一である場合、上記タブは目に見えないように現れるかもしれない。上記タブが厚ければ厚いほど、上記タブを覆うために上記取付面と上記共振パネル上に要求される石膏の層が多くなる。上記共振パネルの上方のより厚い石膏の層は、上記フラットパネルスピーカのオーディオ性能に悪影響を及ぼすかもしれない。このように、薄いタブは、多層の石膏の存在によって上記スピーカの音質が損なわれず又は消音されない、ということを確実にする。
【0025】
さらに、上記取付面内の上記フラットパネルスピーカの据え付けの一部として上記タブが上記取付面中に沈下されるべき場合に、上記タブが薄ければ、上記タブは上記取付面と面一になるように上記取付面中にまで沈下される必要はない。したがって、薄いタブを有することは有益であり、その結果、熟練した業者の助けを借りることなしに、ユーザが上記フラットパネルスピーカを簡単かつ迅速に据え付けることができる。さらに、上記取付面内の上記フラットパネルスピーカの据え付けの一部として上記タブが上記取付面中に沈下されるべき場合、より薄いタブは一般的により可鍛性が高いため、上記取付面の形状に合いやすく、フラットパネルスピーカを上記取付面内に隠すために必要な石膏の層の数を減らすことができる。
【0026】
上記タブは、そのタブの中に、頭付き固定具によって係合可能な、少なくとも部分的に窪んだ境界を有する貫通凹部を画定していてもよい。
【0027】
貫通凹部は、上記タブ内の開口であることが理解されるであろう。上記開口は、穴のような閉じた境界を有していてもよいし、切り欠き又は溝のような開いた境界を有していてもよい。
【0028】
有利なことに、上記貫通凹部は、上記タブが、取付中に上記スピーカを上記取付面に固定するためにも使用されることを許容する。頭付き固定具は、上記貫通凹部を通過することができ、その結果、上記頭付き固定具の頭部が上記境界に隣接する上記タブと係合し、上記頭付き固定具のシャフトが上記取付面と係合する。このようにして、上記フラットパネルスピーカは、上記頭付き固定具を介して上記取付面に固定され得る。上記頭付き固定具は、ネジなどのネジ付き固定具であってもよい。上記頭付き固定具は、上記取付面中に打ち込むための釘であってもよい。上記頭付き固定具は、前述の固定具に限定されず、頭部とシャフトとを有する任意の部品であってもよく(ここで、上記頭部は上記シャフトよりも幅広である。)、上記タブと上記取付面とを一緒に繋ぐために使用され得る、ということが理解されるであろう。上記貫通凹部への窪んだ境界の使用は、上記固定具の上記頭部と上記タブとの間で利用可能な接点を増やす。
【0029】
上記貫通凹部は、開いた凹部であってもよい。言い換えれば、上記貫通凹部の上記境界は、閉じたループを形成しない。
【0030】
有利なことに、上記凹部が上記タブの端部に開いた凹部として設けられていることは、上記タブが閉じた凹部の全体を組み込むために十分大きくある必要がないので、上記タブがより小さな表面積を有することができる、ということを意味する。さらに、上記頭付き固定具を用いた上記タブの上記取付面への固定中に上記タブが撓むのに十分に薄い場合には、上記タブの上記端部が上記取付面中へ窪むことは、上記タブの別の部分が上記取付面から離れて持ち上がることを引き起こさない。このことは、上記タブの中心に設けられた凹部とは対照的であり、その場合、上記タブが薄いタブであるとき、その凹部から離れたタブの自由端部が、上記取付面から離れて持ち上がることが引き起こされる可能性がある。
【0031】
上記タブは、上記貫通凹部の両側に、斜めの切り欠きが設けられていてもよい。したがって、上記タブの鋭いコーナーは、存在しない。鋭いコーナーが設けられている場合、上記タブに対する頭付き固定具の固定中に、上記タブの撓みの結果として上記取付面から持ち上がってしまう可能性がある。
【0032】
上記貫通凹部は、皿穴であってもよい。言い換えれば、上記貫通凹部の第1の側を提供する上記タブの上記前面にある開口は、上記貫通凹部の第2の側を提供する上記タブの上記後面にある開口よりも大きい範囲のものである。上記凹部は、テーパ状の凹部と称されてもよい。
【0033】
有利にも、このことは、上記凹部内に挿入された上記固定具の上記頭部を、少なくとも部分的に上記凹部内に受けることを可能にする。したがって、上記頭付き固定具の上記頭部の底が上記タブの上記前面と係合するのではなく、上記タブの上記前面よりも下方の上記凹部内の点で上記タブと係合するため、上記頭付き固定具はさらに上記取付面内へ駆動され得る。上記頭部の上記底が上記タブの上記前面よりも下方にあるので、上記頭部の頂は、上記タブの上面と面一にされ得、または、少なくとも、上記貫通凹部が皿穴でない場合よりも面一にすることができる。このことは、これらの部品を上記取付面と面一にするために上記頭付き固定具および上記タブを覆うために必要とされる石膏の層の数を減らす。また、頭付き固定具は、テーパが付けられた頭部を備えていてもよい。
【0034】
上記凹部は、上記タブの前面から延在する第1の凹部を画定してもよい。上記凹部は、第2の凹部を画定してもよい。上記第1の凹部は、上記第2の凹部まで延在してもよい。上記第2の凹部は、上記タブの後面まで延在してもよい。上記第2の凹部は、上記タブの上記前面と上記タブの上記後面との間の上記凹部の軸に対して上記第1の凹部よりも鋭く先細りになっていてもよい。このように、上記凹部は、取付面に切り込みを入れるように構成された2段の凹部であってもよい。
【0035】
上記タブは、金属、例えば板金から形成されてもよい。上記金属は、ステンレス鋼であってもよい。
【0036】
上記貫通凹部の境界は、開いた顎領域と、喉領域とを画定してもよい。上記喉領域は、上記顎領域よりも幅広であってもよい。このように、上記貫通凹部は、その貫通凹部中で、上記頭付き固定具を実質的に中心に位置するように配置されていてもよい。さらに、上記開いた顎領域の幅は、上記頭付き固定具の上記シャフトを通過させるには不十分であり、その結果、上記頭付き固定具が上記貫通凹部内で拘束されてもよい。
【0037】
上記貫通凹部の境界は、少なくとも円弧に沿っていてもよい。これにより、円形の頭部を有する頭付き固定具について、上記貫通凹部の上記境界の実質的に全ての点が上記頭付き固定具の上記頭部と接触する。これにより、上記フラットパネルスピーカの上記取付面内でのより確実な取り付けが提供される。
【0038】
上記フラットパネルスピーカは、上記取付面内での取り付けのための取付ユニットをさらに備えていてもよい。その取付ユニットは、その取付ユニット内に設けられた上記共振パネルと励振器とを有する。上記共振パネルと上記励振器との組立品が、上記取付ユニットに取り付けられていてもよい。これにより、上記取付ユニットは、上記取付面内での上記フラットパネルスピーカの取付前および取付中に、上記共振パネルおよび/または上記励振器の後部を保護することができる。一実施形態では、上記取付ユニットは、上記支持フレームとは異なるものであってもよい。
【0039】
上記少なくとも1つのタブは、上記取付ユニットから延在していてもよい。上記取付ユニットは、実質的に立方状であってもよい。上記取付ユニットは、間隔を空けられた2つの短辺を備え、各短辺が2つの長辺を接続していてもよい。上記少なくとも1つのタブは、上記取付ユニットの上記短辺から直接延在していてもよい。上記共振パネルの上記短辺が上記取付ユニットの上記短辺に実質的に隣接しているので、上記タブは、上記共振パネルの上記短辺から実質的に延在している、と考えることができる。
【0040】
上記フラットパネルスピーカの表面は、その表面内に、音が上記共振パネルから上記スピーカの外に出て、上記取付面の後方に画定された取付キャビティに通過するのを容易にするように配置された少なくとも1つの開口を、画定していてもよい。これにより、上記フラットパネルスピーカは、上記フラットパネルスピーカによって提供されるキャビティの寸法が小さい場合であっても、低域音を発生させることができる。また、上記取付キャビティは、高品質な低域音の発生に必要な共鳴室を提供するのに用いられ得る。上記音は、上記フラットパネルスピーカから上記少なくとも1つの開口を介して上記取付キャビティ内へ通過され得る。
【0041】
上記少なくとも1つの開口は、対称的に配置された少なくとも2つの開口であってもよい。上記少なくとも1つの開口は、上記取付ユニット内に画定されてもよい。上記少なくとも1つの開口は、上記取付ユニットの後面に画定されてもよい。上記少なくとも1つの開口は、音が上記共振パネルから上記取付キャビティへ後方に通過するのを容易にするように配置されていてもよい。
【0042】
上記取付ユニットの後面は、複数のファセット(facet)によって提供されてもよい。上記複数のファセットの各々は、実質的に平面状であってもよい。上記複数のファセットの各々は、上記ファセットの方向を規定する面法線を規定してもよい。上記複数の面法線は、少なくとも2つの異なる方向を規定してもよい。これにより、上記取付ユニットによって提供される上記フラットパネルスピーカの共鳴室の周波数応答は、単一の平面状の後面に比して、改善され得る。
【0043】
各面法線は、異なる方向を規定してもよい。したがって、上記複数のファセットは、それぞれ異なる方向を向くことになる。
【0044】
上記タブは、上記スピーカにフランジ状に接続されていてもよい。例えば、上記タブは、上記支持フレームにフランジ状に接続されていてもよい。上記タブは、上記共振パネルにフランジ状に接続されていてもよい。これにより、上記タブは、据付後に上記スピーカから取り外され得る。
【0045】
別の局面から見ると、本発明は、フラットパネルスピーカを外向きの取付面に取り付ける方法を提供する。この方法は、上述のフラットパネルスピーカを、上記取付面内に画定された開口に挿入することを含む。上記取付面内に画定された上記開口は、上記スピーカの上記共振パネルがその開口に嵌合するように寸法設定されている。上記フラットパネルスピーカは、上記共振パネルの上記前面が上記取付面と実質的に面一になる態様で、上記少なくとも1つのタブが上記取付面に抗するまで、挿入される。そして、上記スピーカが上記取付面に固定される。このようにして、上記フラットパネルスピーカは、効率的な方法で、上記共振パネルの上記前面が上記取付面と実質的に面一になるように取り付けられ得る。
【0046】
本発明は、フラットパネルスピーカに関連して述べられてきたが、本発明は、表面に取り付け可能な任意のデバイス、特に、上記デバイスが表面内の開口に着座し、上記開口の縁に近接して通過する場合、そして特に、上記デバイスが上記表面と実質的に面一になるように配置される場合にも適用されることが理解されるであろう。上記デバイスは、ディスプレイパネル、例えば電子ディスプレイパネルであってもよい。
【0047】
別の局面から見ると、本発明は、上述のスピーカのためのタブを製造する方法を提供する。上記方法は、第1のパンチヘッドを画定する第1のパンチツールを用いた第1のパンチング動作と、上記第1のパンチング動作に続いて、第2のパンチヘッドを画定する第2のパンチツールを用いた第2のパンチング動作とによって、上記貫通凹部を形成する。このように、上記タブの上記貫通凹部は、上記貫通凹部の互いに異なる部分についてそれぞれ異なる幾何学的特性を可能にする2段階のプロセスで形成され得る。
【0048】
上記第1のパンチヘッドは、上記第2のパンチヘッドよりも小さくてもよい。これにより、上記第2のパンチヘッドは、上記第1のパンチヘッドによって携わられない製造中の上記タブの部分に影響を与え得る。
【0049】
上記第2のパンチヘッドが第2のパンチ先端へ先細りになるのに比して、上記第1のパンチヘッドは第1のパンチ先端へより鋭く先細りになっていてもよい。これにより、上記方法は、上記第1の凹部と上記第2の凹部とを有する本明細書に記載のタブを製造するために使用され得る。
【0050】
上記貫通凹部の形成は、上記第1のパンチツールを、タブブランクを通して第1のパンチレシーバにパンチすることを含む。上記第1のパンチレシーバは、上記第1のパンチツールよりもちょうど大きく寸法設定された第1の開口をその第1のパンチレシーバ内に画定している。これにより、上記タブブランク中への上記第1のパンチツールのパンチング中に、上記タブブランクに形成される第1のタブ開口の境界の変形を、実質的に防止することができる。上記貫通凹部の形成は、上記第2のパンチツールを、第2のパンチレシーバ上に設けられた上記タブブランク中へパンチすることを含む。上記第2のパンチレシーバは、上記第2のパンチツールよりも大きな寸法の第2の開口をその第2のパンチレシーバ内に画定している。これにより、上記第2のパンチツールの上記タブブランクへのパンチング中に、上記タブブランク内に形成された上記第1のタブ開口の境界の変形を許容する。このようにして、上記貫通凹部が形成され得る。典型的には、上記取付面への取付中に、上記貫通凹部の上記境界が上記取付面に切り込む。これにより、取付中に、上記タブが上記取付面と面一に設けられることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明の実施形態は、以下、添付の図面を参照してさらに説明される。
【0052】
図1図1A図1Bおよび図1Cは、本明細書に開示されている一実施形態のフラットパネルスピーカを示す図である。
【0053】
図2】本明細書に開示されているタブを示す図である。
【0054】
図3図3Aおよび図3Bは、本明細書に開示されている別の実施形態のフラットパネルスピーカを示す図である。
【0055】
図4】本明細書に開示されているような、異なるタブを有する代替的な実施形態のフラットパネルスピーカを示す図である。
【0056】
図5図5A図5Bおよび図5Cは、図4の実施形態のタブを示す図である。
【0057】
図6図6A図6Fは、上記フラットパネルスピーカ用のタブを形成するための製造方法における工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1A図1B、および図1Cは、取付面の開口に取り付けるための一実施形態のフラットパネルスピーカ100の互いに異なる図である。取付面(図示せず)は、壁、天井、空調装置などの建物の構造部品の露出した表面である。例示では、取付面の開口は、取付面の一連の切り込みによって画定され、その結果、フラットパネルスピーカを収容するのに十分な深さを有する実質的に矩形の開口が取付面に形成される。それに代えて、上記開口は、上記取付面の構造によって提供され得る。言い換えれば、上記取付面は、その取付面内に画定された開口を有するように形成され得る。
【0059】
図1Aは、フラットパネルスピーカ100の外向きの特徴を示す、スピーカ100の平面図である。スピーカ100は、平面状の共振パネル110を備えている。共振パネル110は、フラットパネルスピーカ100の前面の実質的に全体にわたって延在している。共振パネル110は、図1Aの実施形態では、矩形の前面の形態にある四辺形の前面を有するように形成されている。フラットパネルスピーカで音を発生させるために使用するための共振パネル110を製造するための適切な材料および構築方法は、当業者に知られているであろう。矩形の前面は、間隔をあけて配置され、2つの長辺によって接続された2つの短辺によって画定されている。2つの長辺も、間隔をあけて配置されている。明らかなように、短辺は、長辺よりも短く、長辺に垂直な前面の辺である。言い換えれば、共振パネル110の前面は長方形である。本開示は、矩形状の前面を有する共振パネルに限定されず、他の形状、例えば円形の前面を有する共振パネルも可能であることが理解されるであろう。
【0060】
さらに、スピーカ100は、4つのタブ120a,120b,120c,120dの形態にある少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dを備えている。タブ120a,120b,120c,120dは、以下、図1Cを参照してさらに説明するように、タブ方向に共振パネル110から離れて延在している。この実施形態では、4つのタブ120a,120b,120c,120dは、実質的に、例えば、共振パネル110の前面のコーナーに設けられている。本開示は、4つのタブを有することに限定されず、他の数、例えば2つのタブを有することも可能であることが理解されるであろう。本実施形態では、タブ120a,120b,120c,120dの各々は、共振パネル110の前面の短辺から離れて延在している。タブ120a,120b,120c,120dの各々は、この実施形態では、共振パネル110の前面の短辺及び長辺のうち、共振パネル110の前面の短辺を越えてのみ、延在している。当業者であれば、他の例では、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dは、共振パネルの長辺から実質的に離れて、例えば離れて、延在し得ることを理解するであろう。少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dは、共振パネル110の前面の長辺を越える如何なる第2の延在量よりも大きく、共振パネルの前面の短辺を越えて第1の延在量だけ延在し得る。
【0061】
さらに、スピーカ100は、このスピーカの1つ以上の内部電気部品にケーブルを接続するためのコネクタ130を備えている。
【0062】
また、上記スピーカは、励振器(図示せず)を備えている。上記励振器は、共振パネル110の後面に結合されており、動作時には、共振パネル110を振動させ、音を発生させる。上記励振器は、典型的には、コネクタ130を介して受信された1つ以上の電気信号によって作動する。上記励振器は、例えば円筒形の足のような「足」(図示せず)を介して上記共振パネルの後面に接続されている。上記励振器は、コネクタ130に接続された導電性ケーブルを介して、上記励振器の端子で例えばオーディオアンプユニット(図示せず)から受信された1つ以上の電気信号によって駆動され得る。上記励振器によって振動させられるとき、共振パネル110は、バイオリンまたはピアノの響板と同様に、これらの振動を増幅するように働き、その結果、フラットパネルスピーカ100は電気信号から音を生ずる。上記励振器および上記共振パネル110の動作に関する上記説明は、単に読者の便宜のために提供されているに過ぎない。当業者であれば、フラットパネルスピーカが典型的にどのように動作するかを理解するであろう。
【0063】
図1Bは、スピーカ100の内向きの面を示す、スピーカ100のさらなる図である。少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dおよびコネクタ130は、図1Bに再び示されているが、背面側から見られている。
【0064】
また、スピーカ100は、支持フレーム140を備えている。共振パネル110の後面は、共振パネル110の外側境界の全体(または実質的に全体)を取り囲んでいる支持フレーム140に固定されている。このことは、共振パネルが取付面に取り付けられた状態で、上記励振器の動作により共振パネルが振動するとき、共振パネルの外周境界が取付面に対して固定されることを確実にする。これにより、取り付けられたスピーカを覆う石膏層がひび割れたり、歪んだりするのを防止することができる。このようにして、スピーカ100は、取付面内で、目に見えない状態を維持することができる。
【0065】
本実施例のスピーカ100はまた、取付ユニット150を備えている。取付ユニット150は、支持フレーム140に取り付けられ、その中に上記励振器、共振パネル110、およびスピーカ100の他の部品を受けるためのものである。特に、取付ユニット150は、フラットパネルスピーカ100の据付中に、共振パネル110及び上記励振器の後部を保護することができる。さらに、取付ユニット150は、共振パネル110の後方にキャビティを画定することができる。共振パネル110が上記励振器の動作によって作動されるとき、共振パネル110から後方に発生した音は、取付ユニット150によって画定された上記キャビティ内で共振することができ、フラットパネルスピーカ100のオーディオ性能を向上させることができる。スピーカ100が取付ユニット150を含む場合、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dは、取付ユニット150から直接延在することができる。言い換えれば、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dは、取付ユニット150を介してフラットパネルスピーカ100の残りの部分に接続され得る。代替例では、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dは、支持フレーム140を介してフラットパネルスピーカ100の残りの部分に接続され得る。
【0066】
図1Cは、スピーカ100の側面図である。共振パネル110は、支持フレーム140に貼り付けられた状態で示されている。取付ユニット150は、支持フレーム140に貼り付けられて、コネクタ130を支持している。図1Cで最もよく見えるように、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dは、タブ方向に支持フレーム140から離れて延在している。タブ方向は、フラットパネルスピーカ100が取付面内に取り付けられるべきとき、上記取付面と平行である。言い換えれば、タブ方向は、共振パネル110の前面と平行である。また、フラットパネルスピーカ100が取付面内に取り付けられるべきとき、タブ方向は、共振パネル110の前面と実質的に面一になっている。この例では、タブ120a,120b,120c,120dの後面、すなわち取付面と係合する面は、共振パネル110の前面と実質的に面一になるように配置されている。別の例では、タブ120a,120b,120c,120dの前面、すなわち取付面から離れて向く面が、共振パネルの前面と面一になるように配置されてもよい。その代替的なアプローチは、タブ120a,120b,120c,120dが取付面中に沈下されるべき場合に適している。
【0067】
上記取付面内の上記開口は、共振パネル110および支持フレーム140よりも大きいが、スピーカ100を取り付ける際に、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dが上記開口内を通過せず、その代わりに上記取付面と面一に係合するように十分に小さく寸法設定されている。これにより、共振パネル110の前面が上記取付面の上記開口内へ通過するのを防ぐ。言い換えれば、少なくとも1つのタブ120a,120b,120c,120dと組み合わせた共振パネル110の寸法は、上記取付面の上記開口の範囲よりも大きい。
【0068】
以下、図2を参照してさらに説明するように、上記少なくとも1つのタブが上記取付面と面一になり、上記スピーカ100が上記取付面の上記開口内に入ると、スピーカ100は、上記少なくとも1つのタブと係合可能な固定具によって所定の位置に固定され得る。上記スピーカ100は、別の手段、例えば、スピーカ100またはその部品を上記取付面に接着することによって、上記取付面内に固定され得ることが理解されるであろう。
【0069】
取付ユニット150は、金属、例えば鋼から形成されてもよいし、カーボンファイバなどの別の材料から形成されてもよい。
【0070】
図2は、タブ120aを分離して示す図である。図1A~1Cを参照して説明されたフラットパネルスピーカの他のタブ120b,120c,120dの各々は、実質的に類似している。タブ120aは、このタブ内に貫通凹部210を画定している。貫通凹部210は、タブ120aの遠位部分215に設けられている。貫通凹部210は、少なくとも部分的に窪んでいる境界を有する。その境界は、ネジや釘などの頭付き固定具と係合して、取付中にタブ120aを取付面に係合するためのものである。タブ120aは、タブ120aの近位部分216、特にタブの内縁220で支持フレーム140に連結されている。内縁220は、タブ120aの貫通凹部210とは反対側の端部に設けられている。
【0071】
頭付き固定具を使用して上記スピーカを取付面に固定する場合、頭付き固定具のシャフトは、上記取付面を越えて、上記取付面の材料の背後にある第2の材料の層の中へ通過することができる。上記第2の材料は、典型的には、頭付き固定具が固着するための構造片を提供し、上記タブと上記第2の材料との間に上記取付面を挟むために、上記取付面の材料よりも強い材料である。第2の材料は、第2の材料に限定されるものではないが、木片、木骨、合板層、プラスチック片、または金属フレームであってもよい。第2の材料は、据付開始時に上記取付面の背後に既に存在していてもよいし、据付工程の一部として上記取付面の背後に取り付けられてもよい。
【0072】
図2の例では、貫通凹部210は、タブの外縁221で開いている開いた凹部210であり、凹部210の境界は完全なループを形成していない。外縁221は、内縁220から離間している。上記開いた凹部は、切り欠きと呼ばれることがある。
【0073】
貫通凹部210は、貫通凹部210の開口で狭くなっている。上記貫通凹部の上記開口における距離D1は、上記貫通凹部の最も広い点における距離D2よりも小さい。これにより、テーパが付けられた頭部を有する頭付き固定具は、貫通凹部210内で実質的に中央に配置され得る。貫通凹部210の境界は、円弧を画定することができる。
【0074】
貫通凹部210は、タブ120aの貫通方向にテーパが付けられていてもよい。すなわち、貫通凹部210は、皿穴状に形成され、その結果、タブ120aの前面における凹部210の直径が、タブ120aの後面における凹部210の直径よりも大きくなっている。上記後面は、フラットパネルスピーカ100の取付中に上記取付面と係合する面である。これにより、上記凹部に挿入された頭付き固定具の頭部が上記タブと面一になるように着座することができる。疑義を避けるために、図2は、単にタブ120aを図示したものであり、貫通凹部210の上記皿穴の特徴を示していない。皿穴状の貫通凹部の例が、図5A~5Cを参照して図示されている。
【0075】
本実施形態におけるタブ120aは、例えば、ステンレス鋼であってもよい鋼からなる板金で形成されており、タブ120aを覆うために必要な石膏の層の数を最小限にするように薄くて、スピーカ100が一旦取り付けられると、タブ120aが取付面内で見えなくなるようにする。タブ120aは、カーボンファイバなどの他の材料から形成され得ることが理解されるであろう。タブ120aは、共振パネルおよび/または支持フレームと一体的に形成されてもよい。
【0076】
タブ120aは、5mm未満、例えば3mm未満、例えば2mm未満、例えば1mm未満、例えば約0.8mmの厚さを有している。タブ120aは、少なくとも約0.2mmの厚さを有し、その結果、タブ120aが、取付中にフラットパネルスピーカ100の残りの部分に取り付けられたままで、実質的に変形することなく上記取付面と係合するように、十分に頑丈である。
【0077】
図3Aおよび3Bは、取付面の開口に取り付けるための別の実施形態のフラットパネルスピーカ300を互いに異なる図である。
【0078】
図3Aは、スピーカ300をそのデバイスの後方から見た図であり、図3Bは、スピーカ300を側方から見た図である。フラットパネルスピーカ300は、以下に別段の記載がない限り、図2を参照して説明されたタブ120aを含んだ、図1A~1Cを参照して説明されたフラットパネルスピーカ100と実質的に類似している。前述したように、スピーカ300は、共振パネル310の実質的にコーナーに配置された少なくとも1つのタブ320a,320b,320c,320dからなる。共振パネル310の後面は、共振パネル310の外側境界の実質的に全体を取り囲んでいる支持フレーム340に取り付けられている。
【0079】
また、スピーカ300は、励振器(図示せず)を備えている。上記励振器は、共振パネル310の後面に結合されており、動作時には、共振パネル110を振動させ、音を発生させる。支持フレーム340は、共振パネル310を支持し、その結果、上記励振器の動作により共振パネルが振動するとき、共振パネル310の外周境界が上記取付面に対して固定される。
【0080】
スピーカ300は、さらに、本実施形態では支持フレーム340に取り付けられたコネクタ330を備えている。上記コネクタは、外部ケーブルをスピーカ300の1つ以上の内部部品に接続するために使用される。
【0081】
スピーカ300は、さらに、取付ユニット350を備えている。取付ユニットの後面は、複数のパネル352a,352b,352c,352d,352e,352f,352g,352h,352i,352j,352k,352l,352mを備えている。パネル352aは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352bに隣接する一縁と、パネル352cに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352bは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352aに隣接する一縁と、パネル352eに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352cは、支持フレーム340に設けられた第1縁と、この第1縁と平行で、パネル352dに隣接する第2縁と、第1縁と第2縁とパネル352aに隣接する第3縁と、第1縁と第2縁とを接続し、パネル352aに隣接する第3縁と、第1縁と第2縁とを接続し、パネル352fに隣接する第4縁とを有する台形パネルの形態の四角形パネルである。パネル352dは、パネル352cに隣接する一縁と、パネル352eに隣接する一縁と、パネル352hに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352eは、パネル352bに隣接する一縁と、パネル352dに隣接する一縁と、パネル352iに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352fは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352cに隣接する一縁と、パネル352gに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352gは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352fに隣接する一縁と、パネル352hに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352hは、パネル352dに隣接する一縁と、パネル352gに隣接する一縁と、パネル352lに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352iは、パネル352eに隣接する一縁と、パネル352jに隣接する一縁と、パネル352lに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352jは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352iに隣接する一縁と、パネル352kに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352kは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352jに隣接する一縁と、パネル352mに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。パネル352lは、パネル352hに隣接する一縁と、パネル352iに隣接する一縁と、パネル352mに隣接する一縁とを有するが三角形のパネルである。パネル352mは、支持フレーム340に隣接する一縁と、パネル352lに隣接する一縁と、パネル352kに隣接する一縁とを有する三角形のパネルである。
【0082】
パネル352a~352mは平面状であり、複数の互いに異なる方向に配置されている。このようにして、取付ユニット350内での音の干渉が低減され得、それにより、スピーカ300の音質を向上させることができる。この特定の例では、パネル352a~352mは各々異なる方向を向いている。
【0083】
取付ユニット350は、パネル352a~352mのうちの少なくとも1つの中に、開口360a,360bを画定することができる。本実施形態では、パネル352iに2つの開口360aがあり、パネル352lに2つの開口360bがあるが、これは単なる例示であり、少なくとも1つの開口360a,360bの数や位置はこれらの数やパネルに限定されるものではない。少なくとも1つの開口360a,360bは、共振パネル310と組み合わせて励振器によって発生され音が、上記取付面内に設けられたより大きなキャビティ内へ通過し、そのキャビティ内で共振することを可能にする。このことは、低域音が完全に共振するためにはより大きな空間を必要とするため、特に低域音について、スピーカ300のオーディオ性能を改善する。
【0084】
図4および図5A図5Cは、取付面の開口に取り付けるための別の実施形態のフラットパネルスピーカ400を示している。
【0085】
図4は、スピーカ400の上面斜視図である。フラットパネルスピーカ400は、以下に別段の記載がない限り、図1A図1Cを参照して説明されたフラットパネルスピーカ100および図3Aおよび図3Bを参照して説明されたフラットパネルスピーカ300と実質的に類似している。前述したように、スピーカ400は、共振パネル410の実質的にコーナーに配置された少なくとも1つのタブ420a,420b,420c,420dを備えている。共振パネル410の後面は、共振パネル410の外側境界の実質的に全体を取り囲んでいる支持フレーム440に取り付けられている。スピーカ400は、先に説明された取付ユニット150,350のような取付ユニット(図示せず)を備えてもよい。この実施形態では、各タブ420は、固定具を貫通して受けるための穴を形成している閉じた境界を有する貫通凹部470を有する。貫通凹部470は、皿穴状である。
【0086】
図4の各タブ420a,420b,420c,420dは、共振パネル410の実質的にコーナーに配置されていることが示されている。けれども、各タブ420a,420b,420c,420dが共振パネル410のコーナーから間隔を空けて配置されている別の実施形態のスピーカ400が想定される。本発明者らは、タブを共振パネルのコーナーから僅かに間隔を空けて、例えば共振パネルのコーナーから少なくとも10ミリの間隔を空けて配置することにより、共振パネル410、ひいては組み立てられたスピーカ400が、タブ420a,420b,420c、420dに損傷を与える危険性を低減した状態で輸送され得る、ということに気付いた。タブ420a,420b,420c,420dの正しい位置および形状は、スピーカ400を取付面内に正確に取り付けるために一般的に重要であるので、タブ420a,420b,420c,420dが輸送中に損傷しないようにすることが重要である。
【0087】
図5A図5Cは、それぞれタブ420aの透視図、平面図、および側面図であり、分離して示されている。図4を参照して説明されフラットパネルスピーカ400の他のタブ420b,420c,420dの各々は、実質的に類似している。図2のタブ120aに関して前述したように、タブ420aは、そのタブ中に貫通凹部470を画定している。貫通凹部470は、タブ420aの遠位部分415に設けられている。貫通凹部470は、穴を形成している円形の境界を有する。その境界は、ネジや釘などの頭付き固定具と係合して、取付中にタブ420aを取付面に係合するためのものである。タブ420aは、タブ420aの近位部分416、特にタブの内縁428で支持フレーム440に連結されている。内縁428は、タブ420aの貫通凹部470とは反対側の端部に設けられている。
【0088】
貫通凹部470は、タブ420aの貫通方向にテーパが付けられており、それにより、皿穴を備え、その結果、タブ420aの前面における凹部470の直径D3が、タブ420aの後面における凹部470の直径D4よりも大きくなっている。その後面は、フラットパネルスピーカ400の取付中に取付面と係合し得る面である。このことは、上記凹部の中に挿入された頭付き固定具の頭部がタブと面一になるように着座することを可能にする。この特定の実施形態では、タブ420aの後面の凹部470の表面は、タブ420aの後面が取付面に抗して設けられたとき、上記取付面の外皮に切り込むための切断部分を画定するように構成されている。このようにして、タブ420aは、取付面の外皮を穿刺することができ、これにより、タブ420aの貫通凹部470を画定する部分が、上記外皮の下にある上記取付面の内部構造を少なくとも部分的に押しつぶすように作用することを確実にする。このことは、取付時に、タブ420aが、取付面と実質的に面一になるように着座することを、さらに確実にする。
【0089】
本実施形態におけるタブ420aは、例えばステンレス鋼であってもよい鋼からなる板金で形成されており、タブ420aを覆うために必要な石膏の層の数を最小限にするように薄くて、スピーカ400が一旦取り付けられると、タブ420aが取付面内で見えなくなるようにする。タブ420aは、カーボンファイバなどの他の材料から形成され得ることが理解されるであろう。タブ420aは、共振パネルおよび/または支持フレームと一体に形成されてもよい。
【0090】
一例では、貫通凹部470は、パンチングプロセスによって形成される。そのパンチングプロセスは、以下に説明するように、図6A図6Fを参照してさらに示される。特に、貫通凹部470は、2段階のパンチングプロセスで形成され得る。そのパンチングプロセスの第1段階では、図6Aに示され、第1のテーパ角度を有する第1のパンチツール610が、タブブランク620に隣接して設けられる。タブブランク620は、板金から形成されており、製造プロセスの完了後、これまでに述べられたようなタブとなる。図6Bに示すように、第1のパンチツール610は、タブブランク620を通して第1のパンチレシーバ612中へ下降されて、タブブランク620を穿孔し、その後、図6Cに示すように、タブブランク620から分離されて、第1のタブブランク開口622を露わにする。第1のパンチレシーバ612は、第1のパンチツール610をその第1のパンチレシーバ内で受けるために、第1のパンチツール610よりもちょうど大きく寸法設定された第1のパンチツール開口をその第1のパンチレシーバ内に画定している。このようにして、第1のタブブランク開口622の縁は、第1のパンチツール610によるタブブランク620の穿孔中に内向きに変形することはない。分かるように、第1のパンチツール610の第1のテーパ角度は実質的にゼロであり得る。言い換えれば、第1のパンチツール610は先細りにならず、第1のパンチツール610のパンチ先端で実質的に一定の厚さを維持する。第1のパンチツール610は、典型的には、第1のタブブランク開口622を形成するために、タブブランク620に円形の開口を打ち抜くように構成された円形断面を画定する。
【0091】
図6Dに示すように、第2の段階では、第1のパンチツール610及び第1のパンチレシーバ612は、第2のパンチツール630及び第2のパンチレシーバ632に置き換えられる。第2のパンチツールは、第1のテーパ角度よりも大きい第2のテーパ角度を有するパンチ先端634を備える。言い換えれば、第2のパンチツール630のパンチ先端634は、第1のパンチツール610よりもパンチ先端に向かって先細りになっている。第2のパンチレシーバ632は、第2のパンチツール630のパンチ先端634のフットプリントよりも大きい第2のパンチツール開口636をその第2のパンチレシーバ内に画定している。第2のパンチツール630のパンチ先端634のフットプリントは、典型的には、第1のパンチツール610のパンチ先端のフットプリントに実質的に類似している。この例では、第2のパンチツール630のパンチ先端634のフットプリントは、第1のパンチツール610のパンチ先端のフットプリントよりも小さく、その結果、第2のパンチツール630のパンチ先端634は、第1のパンチツール610によって形成された第1のタブブランク開口622内に嵌合する。図6Eに示すように、第2のパンチツール630は、タブブランク620と接触して所定の量だけ下降させられて、第1のタブブランク開口622の境界を変形させ、それによって、図6Fに示すタブ開口624を形成する。第2のパンチツール開口636は、第2のパンチツール630のパンチ先端634よりも広いので、第1のタブブランク開口622の境界は、タブブランク620に対する第2のパンチツール630の移動方向に沿って変形し得る、ということが理解されるであろう。典型的には、第2のパンチツール630は、実質的に円形の断面形状を有し、それによって、タブブランク620内に実質的に円形のタブ開口624を形成する。前述したように、このようにしてタブ開口624を形成することにより、タブ開口の境界が、取付面、例えば石膏ボードに切り込んで、表皮層に直ぐ隣接する取付面の少なくとも一部を実質的に押しつぶすことができる。これにより、取付タブが取付面と実質的に面一になるように係合され得ることが保証される。
【0092】
本明細書に記載された取付タブは、本明細書に先に記載された利点のために、実質的に任意の設備を取付面の開口に取り付けるために使用され得る、ということが理解されるであろう。
【0093】
図4および図5A図5Cに戻ると、タブ420aは、5mm未満、例えば3mm未満、例えば2mm未満、例えば1mm未満、例えば約0.8mmの厚さを有している。タブ420aは、少なくとも約0.2mmの厚さを有し、その結果、タブ420aが、取付中にフラットパネルスピーカ400の残りの部分に取り付けられたままで、実質的に変形することなく上記取付面と係合するように、十分に頑丈である。
【0094】
特に、タブがステンレス鋼から作られている場合には、図2のタブ120aの近位部分216のような近位部分の比較的大きな平坦な領域に、石膏スキムを付着させることが困難であることが判明している。また、貫通凹部210および関連する固定具を、実用的である限り、取付面の開口の切断縁から空間を空けることが、切断縁での材料のひび割れおよび損傷を緩和するために重要であることが分かっている。タブ120aへの遠位部分215上の石膏の付着は、ドライバヘッドインターフェースのような皿穴状の貫通凹部210内の固定具頭部の存在によって強化されるであろう。その貫通凹部内へ、石膏スキムが、何らかの機械的な相互接続を提供するために充填される。しかしながら、内縁220,428から外縁221,429までの距離が約25mmであるタブについては、内縁428から貫通凹部470の中心までの距離は17mmであってもよく、これは、上記切断縁からの上記固定具の良好な横方向の間隔を提供する。このようなタブでは、直径4mmの貫通凹部の場合、内縁220,428から貫通凹部210,470の内縁まで延びる領域として定義される遠位部分216,416の長さは約15mmとなり、これは、その上の石膏スキムが割れやすい比較的大きな平坦な領域となるであろう。
【0095】
したがって、1つ以上の表面特徴を提供することは、近位部分216、416に対する石膏の付着性を高めることができる。この目的のために、本実施形態のタブ420aの近位部分416には、穴450の配列の形態の少なくとも1つの打抜き穴450が設けられている。使用時には、タブ420aに適用される石膏のスキムが近位部分416を覆い、穴450を満たす。石膏のスキムが一旦定着すると、穴450を充填する石膏の量は、スキム層とタブ420aの表面との間の機械的接続として作用するだろう。穴450の配列は、石膏の付着性を高めるための便利な1つの方法に過ぎない。タブ420aの一方の表面から反対側の表面への打抜き穴450は、石膏がタブ420aの厚さをずっと通して支持柱を形成することを意味するけれども、他の表面特徴、例えば、1つ以上の部分的な凹部の形態での他の表面特徴が、同様の目的のために代わりに使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0096】
タブ420aは、タブ420aの近位部分416および遠位部分415の平面と平行で、内縁428分だけ離間した平面内で、内縁428の近位に延びる支持足460を含んでいる。支持足460は、支持フレーム440と共振パネル410との間に保持される。
【0097】
タブ420aの上の領域の石膏のひび割れを回避することの審美的および構造的な利点と同様に、打抜き穴450の付加的な利点は、それらがまた、石膏スキムの背後の如何なる空隙をも避けるのに役立つことである。それは、石膏が打抜き穴を通ってタブ420aの他方の側に流れるようにすることで、その側の如何なる空洞または空隙をも埋めることによってである。追加の構造的完全性と同様に、このことは、望ましくない共振効果を避けることを可能にする。そうでなければ、そのような共振効果は、スピーカ400に近接して空隙が存在することによって発生していたかもしれない。
【0098】
スピーカ100,300,400は、取付面に開口を作ることによって取り付けられる。その開口は、共振パネル110,310,410およびスピーカ100,300,400に適合するように寸法設定されている。スピーカ100,300,400は、少なくとも1つのタブ120a-d,320a-d,420a-dが上記取付面に抗して押され、共振パネル110,310,410が上記取付面と実質的に面一になるまで、上記開口に挿入される。次に、スピーカ100、300、400は、少なくとも1つのタブ120a-d,320a-d,420a-dによって、または別の固定手段によって、上記取付面に固定される。上記開口は、共振パネル110,310,410、支持フレーム140,340,440および取付ユニット150,350がその開口内に収まるのに十分大きいが、タブ120a-d,320a-d,420a-dがその開口内を通過せず、代わりに上記取付面と係合するのに十分小さく、寸法設定されている。上記開口は、共振パネル110,310,410、支持フレーム140,340,440、励振器および取付ユニット150,350が、スピーカ100,300,400の後部が上記開口の後部に接触すること無しに、上記開口内を通過するのに十分深い。例えば、45×20×7cmの寸法(上記少なくとも1つのタブを含まない)のフラットパネルスピーカについて、上記取付面内の上記開口は、47×21×10cm、または48×22×15cmであり得る。これらの寸法は単なる例であり、上記開口の寸法はこれらの数字や比率に限定されないことが理解されるであろう。
【0099】
幾つかの例では、少なくとも1つのタブ120a-d,320a-d,420a-dは、スピーカ100,300,400が取付面に取り付けられた後に、スピーカ100,300,400から取り外し可能に構成され得る。本発明者らは、少なくとも1つのタブ120a-d,320a-d,420a-dが上記取付面に抗して押され、共振パネル110、310、410が上記取付面と実質的に面一になるまで、スピーカ100、300、400が上記開口内に挿入されるとき、スピーカ100、300、400は、例えばスピーカ100、300、400の2つの対向する縁において、スピーカ100、300、400の縁と上記取付面の上記開口の少なくとも一部の内縁との間に、接着剤、あるいは石膏を挿入することによって、上記取付面に適切に固定され得る、ということを認識した。この例では、取付タブ120a-d,320a-d,420a-dは、スピーカ100,300,400が上記取付面に石膏塗りされる前にスピーカ100,300,400から取り外されることが意図され得る。したがって、少なくとも1つの取付タブ120a-d,320a-d,420a-dは、如何なる貫通凹部470をも含まなくてもよい。少なくとも1つの取付タブ120a-d,320a-d,420a-dは、スピーカ100,300,400に着脱可能に固定されるように構成され得る。別の例では、少なくとも1つの取付タブ120a-d,320a-d,420a-dは、スピーカ100,300,400にフランジ状に固定されるように構成され得る。このようにして、少なくとも1つの取付タブ120a-d,320a-d,420a-dは、スピーカ100,300,400が上記取付面内に面一に正しく配置されると、スピーカ100,300,400から容易に取り外され得る。当業者は、少なくとも1つのタブ120a-d,320a-d,420a-dをスピーカ100、300、400に、例えば支持フレーム140、340、440に、または取付ユニット150、350に、取り外し可能に取り付けることができる多くの異なる手段および方法を知っている、ということが理解されるであろう。幾つかの例では、少なくとも1つのタブ120a-d,320a-d,420a-dは、共振パネル110,310,410に直接取り外し可能に取り付けられ、スピーカ100,300,400が上記取付面内に一旦位置決めされると、上記共振パネルから取り外されるように構成され得る。
【0100】
要約すると、取付面の開口に取り付けるためのフラットパネルスピーカ(100、300、400)が提供される。このフラットパネルスピーカは、上記取付面の開口に挿入可能で、前面を有する平面状の共振パネル(110、310、410)を備える。その前面は、上記フラットパネルスピーカが上記取付面に取り付けられたとき、上記取付面内で外側を向くようになっている。上記共振パネルは、さらに、上記前面と反対側の後面を有する。上記スピーカは、上記共振パネルの後面に結合された励振器をさらに備えて、上記励振器の動作により上記共振パネルを振動させて音を発生させる。さらに、上記スピーカは、上記取付面内での取り付けのための支持フレーム(140、340、440)を備える。この支持フレームに対して、上記共振パネルの後面が、上記共振パネルの外側境界の実質的に全周にわたって固定される。これにより、上記取付面内に取り付けられた状態で、上記励振器の動作によって上記共振パネルの振動が引き起こされるとき、上記共振パネルの外側境界が上記取付面に対して固定される。また、上記スピーカは、少なくとも1つのタブ(120a-d,320a-d,420a-d)を備える。上記タブは、上記スピーカが上記取付面に取り付けられるべきとき、上記取付面と平行なタブ方向に上記支持フレームから離れて延在し、かつ、上記共振パネルの前面と実質的に面一になるように構成されている。これにより、上記タブが上記取付面に抗しているとき、上記共振パネルの上記前面が上記取付面内で実質的に面一になるように維持される。
【0101】
本明細書の発明の詳細な説明および特許請求の範囲全体を通して、「備える(comprise)」および「含む(contain)」という語およびそれらのバリエーションは、「含むが、これに限定されない」という意味であり、他の部品、完全体またはステップを除外することを意図していない(また、除外しない)。本明細書の発明の詳細な説明および特許請求の範囲全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、本明細書は、文脈が他に要求しない限り、単数形だけでなく複数形も考慮しているものと理解される。
【0102】
本発明の特定の側面、実施形態または例に関連して記載された特徴(features)、完全体、特徴(characteristics)または群は、それと相容れない場合を除き、本明細書に記載された他の側面、実施形態または例にも適用可能であると理解されるべきである。本明細書に開示された特徴のすべて(添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)、および/またはそのように開示された方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本発明は、前述の任意の実施形態の詳細に限定されるものではない。本開示は、本明細書に開示された特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせ(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)、またはそうして開示された任意の方法またはプロセスのステップの任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせにも及ぶ。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F