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特許75367753D物体の積層造形における流体の貯留/吸引を防止する方法
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  • 特許-3D物体の積層造形における流体の貯留/吸引を防止する方法 図1
  • 特許-3D物体の積層造形における流体の貯留/吸引を防止する方法 図2
  • 特許-3D物体の積層造形における流体の貯留/吸引を防止する方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】3D物体の積層造形における流体の貯留/吸引を防止する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/20 20170101AFI20240813BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240813BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240813BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20240813BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240813BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20240813BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240813BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20240813BHJP
【FI】
B29C64/20
B29C64/124
B29C64/386
B29C64/379
B33Y10/00
B33Y40/10
B33Y40/20
B33Y50/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021546338
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2020059993
(87)【国際公開番号】W WO2020208064
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】19020275.4
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュタール、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バイス、ダニエル
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0136883(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355132(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170591(US,A1)
【文献】中国実用新案第207842053(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽(6)中の液体光硬化性樹脂(5a)から、徐々に上方に移動可能なプラットフォーム(4)に取り付けられた、作成されるデジタル3Dモデルに対応する3D物体(3)を生成する積層造形装置(2)と、後処理の間に前記プラットフォーム(4)に取り付けられた状態で受け取られて保持された前記3D物体(3)の洗浄、乾燥および硬化のうちの少なくとも1つを行う少なくとも1つの後処理装置(7)と、を備える積層造形システム(1)を用いて、生成および後処理に適したデジタル3Dモデルを作成する方法であって、
前記方法は、前記プラットフォーム(4)に対して所望の印刷方向で前記デジタル3Dモデルを提供するステップを備え、
前記方法は、さらに、
前記プラットフォーム(4)に対する前記所望の印刷方向について、前記デジタル3Dモデルの流体貯留ボウル状開口領域(8)および流体吸引ドーム状開口領域(9)を決定するステップと、
生成プロセスおよび後処理プロセスの間に、流体(5a、5b)の貯留を防止する目的で、少なくとも1つのドレインチャネル(10)を、および流体(5a、5b)の吸引を防止する目的で、少なくとも1つのベントチャネル(11)を、それぞれ前記デジタル3Dモデル中の前記流体貯留ボウル状開口領域(8)および前記流体吸引ドーム状開口領域(9)中に含めるステップと、を備えることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記デジタル3Dモデルをディスプレイ上でユーザに表示するステップと、
前記デジタル3Dモデル中に含まれる前記ドレインチャネル(10)および前記ベントチャネル(11)の入口(12)および出口(13)のそれぞれの位置を前記ユーザが手動で選択して前記ディスプレイ上に入力することを可能にするステップと、をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル3Dモデルの前記流体貯留ボウル状開口領域(8)中の最下点を見つけ出し、前記最下点を前記ドレインチャネル(10)の前記入口(12)の位置として設定するステップと、
前記デジタル3Dモデルに含まれる前記ドレインチャネル(10)の前記対応する出口(13)の位置を前記ユーザが手動で選択して前記ディスプレイ上に入力することを可能にするステップと、をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドレインチャネル(10)の前記対応する入口(12)よりも低く位置する場所に、前記ドレインチャネル(10)のための少なくとも1つの出口(13)を見つけ出すステップを備え、前記対応する手動選択および入力が省略されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ドレインチャネル(10)のための1つ以上の出口(13)は、前記ドレインチャネル(10)の傾斜が最大化されることおよび/または前記ドレインチャネル(10)の長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて見つけ出され、前記ドレインチャネル(10)は完全に前記デジタル3D物体(3)内に留まることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル3Dモデルの流体吸引ドーム状開放領域(9)中の最高点を見つけ出し、前記最高点を前記ベントチャネル(11)の前記出口(13)の位置として設定するステップと、
前記デジタル3Dモデル中に含まれる前記ベントチャネル(11)の前記対応する入口(12)の位置を前記ユーザが手動で選択して前記ディスプレイ上に入力することを可能にするステップと、を備える、請求項2から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ベントチャネル(11)の前記対応する出口(13)よりも高く位置する場所に、前記ベントチャネル(11)のための少なくとも1つの入口(12)を見つけ出すステップをさらに備え、前記対応する手動選択および入力は省略されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベントチャネル(11)のための1つ以上の入口(12)は、前記ベントチャネル(11)の傾斜が最大化されること、および/または前記ベントチャネル(11)の長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて見つけ出され、前記ベントチャネル(11)は前記デジタル3D物体(3)内に完全に留まることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ドレインチャネル(10)および前記ベントチャネル(11)の前記入口(12)および前記出口(13)の位置を見つけ出すことができる前記デジタル3Dモデルの表面積を制限する、および前記ドレインチャネル(10)および前記ベントチャネル(11)が通過できる前記デジタル3Dモデルの体積を制限するステップを備え、最低点/最高点は、前記制限を考慮して見つけ出されることを特徴とする、請求項2から8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ドレインチャネル(10)およびベントチャネル(11)の入口(12)および出口(13)の位置が見つけ出されてはならない前記デジタル3Dモデルの表面積を制限し、および前記ドレインチャネル(10)およびベントチャネル(11)が通過してはならない前記デジタル3Dモデルの体積を制限するステップを備え、前記制限を考慮して最低点/最高点が見つけ出されることを特徴とする、請求項2から8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ユーザが、前記デジタル3Dモデルの前記ディスプレイ上で、前記制限された表面積および/または前記制限された体積を選択的にマークすることを可能にするステップを備えることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記ドレインチャネル(10)または前記ベントチャネル(11)は、直線である1つ以上のセグメントまたは曲線である1つ以上のセグメントを有し、前記直線または曲線セグメントは、一定または非一定断面を有することを特徴とする、請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記デジタル3D物体(3)が歯科器具(14)に対応することを特徴とする、請求項1から12のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のうちのいずれか一項に記載の方法を前記積層造形システム(1)に実行させるためのコードを含む、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読取可能記憶手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形装置と後処理装置とを有する積層造形システムで生成および後処理するのに適したデジタル3Dモデルを作成する方法に関する。本発明は、より詳細には、生成および後処理の間に流体貯留(fluid collection)または流体吸引(fluid suction)を防止することができるデジタル3Dモデルを作成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形では、3次元物体は、液体印刷媒体、すなわち、UV放射の影響下で選択的に硬化される液体光硬化性樹脂の光ベースの硬化を通して層ごとに印刷される。SL(ステレオリソグラフィ)またはDLP(デジタル光処理)などの積層造形の一般的に知られているバリエーションでは、3D物体は、好ましくは、プラットフォームによって液体印刷媒体から逆さまに引き出される。3D物体の幾何学的形状に応じて、未硬化の液体樹脂溜まりが、3D物体の流体貯留ボウル状開口領域内に残るかもしれない。
【0003】
従来技術では、印刷された3D物体は、印刷直後にプラットフォームから手動で解放され、貯留は、例えば3D物体をひっくり返すことを通して、処理前に手動で空にされる。
【0004】
これとは対照的に、出願番号EP19160123.6に開示されているような本出願人の積層造形解決策では、3D物体は、印刷直後にプラットフォームから除去されるのではなく、搬送容器によってプラットフォームに、その垂直方向の向きを変えることなく後処理装置中に移送され、取り付けられ、後処理装置において洗浄され、乾燥され、後硬化される。3D物体上に液体樹脂溜まりが形成されるとき、これらの溜まりに含まれる液体樹脂がさらに、後処理装置の洗浄タンクに導入される。これにより、イソプロピルアルコールなどの洗浄媒体の寿命が大幅に短縮される。加えて、印刷の間に液体樹脂で満たされた同じ溜まりは、洗浄後に液体洗浄媒体で満たされ、したがって、印刷された3D物体を乾燥させるときに液体洗浄媒体を完全に蒸発させなければならない。その結果、乾燥に要する処理時間が大幅に増加するかもしれない。
【0005】
したがって、3D物体の流体を溜めるボウル状の開口領域は、生成の間だけでなく後処理の間にも問題を引き起こす。3D物体の幾何学的形状に応じて、未硬化の液体樹脂または液体洗浄媒体もまた、3D物体の流体吸引ドーム状開口領域内に引き上げられるかもしれず、したがって、流体吸引ドーム状開口領域もまた、それぞれ、生成および後処理の間に問題を引き起こす。
【0006】
EP0757621B1は、固化可能な媒体の選択的な固化を通して層ごとに構築される3次元物体を提供する方法を開示しており、中空の大気的に閉じられた領域からの固化されていない媒体の排出が、3次元物体へのベント孔およびドレイン孔をさらに含むことを通して可能になる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、本出願人の積層造形ソリューションの文脈において、積層造形装置および後処理装置を有する積層造形システムにおいて、反転されることなく生成および後処理されるのに適したデジタル3Dモデルを作成する方法を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に規定されているような方法によって達成される。従属請求項の主題事項は、さらなる発展に関する。
【0009】
本発明は、積層造形システムを用いて、生成および後処理に適したデジタル3Dモデルを作成する方法を提供し、方法は、槽中の流体樹脂から、徐々に上方に移動可能なプラットフォームに取り付けられた、作成されるデジタル3Dモデルに対応する3D物体を生成する積層造形装置と、後処理の間にプラットフォームに取り付けられた状態で受け取られて保持された3D物体の洗浄、乾燥および硬化のうちの少なくとも1つを行う少なくとも1つの後処理装置と、を備える。方法は、デジタル3Dモデルを提供するステップと、プラットフォームに対する前記状態で方向付けられたデジタル3Dモデルの流体貯留ボウル状開口領域および流体吸引ドーム状開口領域を決定するステップと、
生成プロセスおよび後処理プロセスの間に流体を貯留することおよび流体を吸引することを防止するために、少なくとも1つのドレインチャネルおよび少なくとも1つのベントチャネルを、それぞれデジタル3Dモデル中の流体貯留ボウル状開口領域および流体吸引ドーム状開口領域中に含めるステップと、を備える。
【0010】
本発明の主な有利な効果は、ボウル状の開口領域中に貯留される流体、すなわち液体光硬化性樹脂または液体洗浄媒体が、3D物体を反転させる必要なく、印刷プロセスおよび洗浄プロセスの間に重力の作用下でドレインチャネルを介して直ちに空にされ、したがって、ユーザは流体と物理的に接触することを防止することができることである。それによって、流体の不必要な浪費も防止することができる。さらに、乾燥時間、したがって全体的な製造時間を短縮することができる。したがって、製造コストを低減することができる。本発明の別の主要な有利な効果は、ドーム状の開口領域内に吸引された流体が、印刷プロセスおよび洗浄プロセスの間に大気圧の作用下でベントチャネルを介して負圧を除去することを通して直ちに空にできることである。それによって、トルク、吸引力、重量などの積層造形システムに対する流体の機械的効果を防止することができる。これにより、積層造形システムの可動部分をより円滑に動作させることができ、脆弱な印刷部分に作用する力を低減することができる。
【0011】
本発明によれば、ユーザは、デジタル3Dモデルにそれぞれ含まれるドレインチャネルの入口および/または出口の位置をデジタル3Dモデルのディスプレイ上で手動で選択および入力することが可能であってもよい。しかしながら、方法は、手動の選択に限定されない。本発明によれば、デジタル3Dモデルの流体貯留ボウル状開口領域内の最下点は、自動的に、すなわちコンピュータプログラムのアルゴリズムを通じて見つけ出され、ドレインチャネルの入口の位置として設定されてもよい。加えて、ユーザは、デジタル3Dモデルに含まれるドレインチャネルの対応する出口の位置を手動で選択し、ディスプレイ上で入力することが可能であってもよい。代替的に、対応する出口の手動選択および入力は省略されてもよく、コンピュータプログラムのアルゴリズムを通して、ドレインチャネルの対応する入口よりも低く位置する場所に自動的に見つけ出されてもよい。
【0012】
本発明の方法にドレインチャネルを含めるためのアルゴリズムは、デジタル3Dモデルを180度回転させることを通してベントチャネルを含めるためにも使用することができる。本発明によれば、ユーザは、デジタル3Dモデルにそれぞれ含まれるベントチャネルの入口および/または出口の位置をデジタル3Dモデルのディスプレイ上で手動で選択および入力することができる。しかしながら、この方法は手動選択に限定されないので、デジタル3Dモデルの流体吸引ドーム状開口領域における最高点を自動的に見つけ出して、ソフトウェアアルゴリズムによってベントチャネルの出口の位置として設定することができる。加えて、ユーザは、デジタル3Dモデルに含まれるベントチャネルの対応する入口の位置を手動で選択してディスプレイ上に入力することができる。代替的に、対応する入口の手動選択および入力は省略されてもよく、ソフトウェアアルゴリズムによって、ベントチャネルの対応する出口よりも高く位置する場所に自動的に見つけ出されてもよい。
【0013】
本発明によれば、ドレインチャネルの入口および出口ならびにベントチャネルの入口および出口は、ドレイン/ベントチャネルの傾斜が最大化されること、および/またはドレイン/ベントチャネルの長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて見つけ出されることができる。ドレイン/ベントチャネルは、デジタル3Dモデル内に完全に留まるように任意の形状を有してもよい。例えば、ドレイン/ベントチャネルは、直線である1つ以上のセグメントおよび/または湾曲している1つ以上のセグメントを有してもよく、断面は一定または非一定であってもよい。
【0014】
本発明によれば、ドレインチャネルおよび/またはベントチャネルの入口および/または出口の位置が見つけ出されることができるデジタル3Dモデルの表面積は制限されてもよい。加えて、ドレインチャネルおよび/またはベントチャネルが通過してもよいデジタル3Dモデルの体積もまた、制限されてもよい。代替的に、相補的な方法で、ドレインチャネルおよび/またはベントチャネルの入口および/または出口の位置が見つけ出されてはならないデジタル3Dモデルの表面積が制限されてもよい。さらに、ドレインチャネルおよび/またはベントチャネルが通過してはならないデジタル3Dモデルの体積も制限されてもよい。これらの制限のケースでは、上述の最低点/最高点は、制限された表面積および制限された体積を考慮して見つけ出される。これにより、デジタル3Dモデルの臨界表面積または臨界サブ体積がドレイン/ベントチャネルを含むことを防止することができる。しかしながら、方法は、自動制限に限定されるものではない。本発明にしたがうと、ユーザが、3Dモデルのディスプレイ上で、制限された表面および/または制限された体積をデジタル選択的にマークすることができる。
【0015】
本発明の方法は、積層造形のための任意の3D物体を作成するために適用されてもよい。好ましくは、本発明の方法は、歯科治療に使用される3D物体、例えば歯科器具および歯科修復物に適用される。
【0016】
本発明にしたがうと、方法は、そのステップを実行するための適切なソフトウェアアルゴリズムおよびコードを含むコンピュータプログラムの形態で提供することができる。コンピュータプログラムは、積層造形システムとは別個に提供されてもよいし、積層造形システムと共に提供されてもよい。コンピュータプログラムのコードは、コンピュータ読取可能記憶手段中に記憶されてもよい。記憶手段は、積層造形システムとは別個に設けられてもよく、または積層造形システムとともに設けられてもよい。
【0017】
以下の説明では、例示的な実施形態を使用することによって、および図面を参照することによって、本発明のさらなる態様および有利な効果をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態による方法を通して作成されるデジタル3Dモデルに対応する、ドレインチャネルを有する3D物体を生成する積層造形装置の部分概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態にしたがう方法を通して作成されるデジタル3Dモデルに対応する、ベントチャネルを有する3D物体を生成する積層造形装置の部分概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態にしたがう方法を通して作成されるデジタル3Dモデルに対応する、ドレインチャネルを有する3D物体を生成および後処理するための積層造形システムの概略断面図である。
【0019】
図面に示される参照番号は、以下に列挙される要素を示し、例示的な実施形態の以下の説明において参照される。
1.積層造形システム
2.積層造形装置
3.3D物体
4.プラットフォーム
5.流体
5a.液体光硬化性樹脂
5b.液体洗浄媒体(例えばイソプロピルアルコール)
6.槽
7.後処理装置
8.ボウル状開口領域
9.ドーム状開口領域
10.ドレインチャネル
11.ベントチャネル
12.入口
13.出口
14.歯科器具
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3は、以前に作成されたデジタル3Dモデルに対応する3D物体(3)を生成(印刷)するための積層造形装置(2)を有する積層造形システム(1)を示しており、3D物体(3)は、槽(6)中の液体光硬化性樹脂(5a)から上方に徐々に移動可能なプラットフォーム(4)に取り付けられている。積層造形システム(1)はまた、後処理の間にプラットフォーム(4)に取り付けられた状態で受け取られ維持された3D物体(3)の洗浄、乾燥、および硬化のうちの少なくとも1つを実行するための後処理装置(7)を有する。3D物体(3)が製造装置(2)を通して生成された後、搬送容器(図示せず)によってプラットフォーム(4)上で、その垂直方向の向きを変えることなく後処理装置(7)中に移送される。
【0021】
本発明は、積層造形システム(1)を用いて生成され後処理されるデジタル3Dモデルを作成する方法を提供する。
【0022】
代替実施形態では、本方法は、積層造形システム(1)に入力を提供するコンピュータプログラム(図示せず)を通して実現される。コンピュータプログラムは、以下でより詳細に説明されるように、デジタル3Dモデルを作成するための手動モード、自動モードおよび/または半自動モードを含むユーザ選択可能またはプリセットモードを含んでもよい。
【0023】
最初のステップでは、オーバーワークされるデジタル3Dモデルが、プラットフォーム(4)に対して所望の印刷方向で提供される。次のステップでは、デジタル3Dモデルがプラットフォーム(4)に対して上述の取り付けられた状態で、すなわち、プラットフォーム(4)に対する3Dモデルの所望の印刷配向を規定する印刷状態で方向付けられるときに、デジタル3Dモデルの流体貯留ボウル状開口領域(8)および流体吸引ドーム状開口領域(9)が決定される。図1および図2には、2つの異なる3D物体(3)が図示されており、前者は、少なくとも1つの流体貯留ボウル状開口領域(8)を有する一方で、後者は、少なくとも1つの流体吸引ドーム状開口領域(9)を有する。本方法の次のステップでは、生成プロセスおよび後処理プロセスの間に流体(5;5a、5b)の貯留を防止するために、少なくとも1つのドレインチャネル(10)が、図1に示されるようなデジタル3Dモデル中の流体貯留ボウル状開口領域(8)中に含まれる。簡略化のために、1つのドレインチャネル(10)のみが図示されている。同様に、図2に示すように、少なくとも1つのベントチャネル(11)が、生成プロセスおよび後処理プロセスの間に流体(5;5a、5b)の吸引を防止するためのデジタル3Dモデルにおける流体吸引ドーム状開口領域(9)に含まれる。
【0024】
別の実施形態では、デジタル3Dモデルは、ディスプレイ(図示せず)上でユーザに表示される。ユーザは、決定ステップおよび包含ステップをディスプレイ上で手動で実行することができる。代替として、これらのステップは、コンピュータプログラムのアルゴリズムを通して自動的または半自動的に行われてもよい。
【0025】
別の実施形態では、ユーザは、ドレインチャネル(10)の入口(12)および/または出口(13)の位置をそれぞれ手動で選択し、ディスプレイ上に入力して、デジタル3Dモデルに含めることができる。デジタル3D物体(3)内のドレインチャネル(10)の経路は、ユーザによってディスプレイ上で手動で規定されてもよく、または自動的に計算されてもよい。
【0026】
別の実施形態では、デジタル3Dモデルの流体貯留ボウル状開口領域(8)中の最下点を自動的に見つけ出して、ドレインチャネル(10)の入口(12)の位置として設定することができる。加えて、ユーザは、デジタル3Dモデルに含まれるドレインチャネル(10)の対応する出口(13)の位置を手動で選択し、ディスプレイ上で入力することができる。
【0027】
別の実施形態では、ドレインチャネル(10)の出口(13)は、ドレインチャネル(10)の対応する入口(12)よりも低く位置する場所に自動的に見つけ出されることもできる。
【0028】
別の実施形態では、ドレインチャネル(10)がデジタル3Dモデル内に完全に留まるように、ドレインチャネル(10)の傾斜が最大化され、および/またはドレインチャネル(10)の長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて、ドレインチャネル(10)のための1つ以上の出口(13)が自動的に見つけ出される。
【0029】
別の実施形態では、ユーザは、デジタル3Dモデルにそれぞれ含まれるベントチャネル(11)の入口(12)および/または出口(13)の位置を手動で選択し、ディスプレイ上で入力することができる。デジタル3D物体(3)内のベントチャネル(11)の経路は、ユーザによってディスプレイ上で手動で規定されてもよく、または自動的に計算されてもよい。
【0030】
別の実施形態では、デジタル3Dモデルの流体吸引ドーム状開口領域(9)中の最高点を自動的に見つけ出して、ベントチャネル(11)の出口(13)の位置として設定することができる。加えて、ユーザは、デジタル3Dモデルに含まれるベントチャネル(11)の対応する入口(12)の位置を手動で選択し、ディスプレイ上で入力することができる。
【0031】
別の実施形態では、ベントチャネル(11)に対する入口(12)を、ベントチャネル(11)の対応する出口(13)よりも高く位置する場所に自動的に見つけ出すこともできる。
【0032】
別の実施形態では、ベントチャネル(11)がデジタル3D物体(3)内に完全に留まるように、ベントチャネル(11)の傾斜が最大化され、および/またはベントチャネル(11)の長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて、ベントチャネル(11)のための1つ以上の入口(12)が自動的に見つけ出される。
【0033】
他の代替実施形態では、ドレインチャネル(10)またはベントチャネル(11)は、一定のまたは一定でない断面を有する1つ以上の直線セグメントおよび/または1つ以上の曲線セグメントを有する。
【0034】
別の実施形態では、ドレインチャネル(10)および/またはベントチャネル(11)の入口(12)および/または出口(13)の位置を見つけ出すことができるデジタル3Dモデルの表面積を制限することが可能である。加えて、ドレインチャネル(10)および/またはベントチャネル(11)が通過できるデジタル3Dモデルの体積を制限することも可能である。
【0035】
別の代替実施形態では、ドレインチャネル(10)および/またはベントチャネル(11)の入口(12)および/または出口(13)の位置が見つけ出されてはならないデジタル3Dモデルの表面積を制限することが可能である。同様に、ドレインチャネル(10)および/またはベントチャネル(11)が通過してはならないデジタル3Dモデルの体積を制限することも可能である。上述の制限が課されるケースでは、最低/最高点は、これらの制限を考慮して見つけ出される。
【0036】
別の実施形態では、ユーザは、制限された表面積および/または制限された体積をデジタル3Dモデルのディスプレイ上に選択的にマークすることができる。あるいは、表面積および/または体積は、予め定められた条件にしたがって自動的に制限される。そのような条件は、例えば、3D物体の機械的安定性、適切な動作、または視覚的外観に関連してもよい。
【0037】
別の実施形態では、デジタル3D物体(3)は歯科器具(14)に対応する。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載事項を付記する。
[1] 槽(6)中の液体光硬化性樹脂(5a)から、徐々に上方に移動可能なプラットフォーム(4)に取り付けられた、作成されるデジタル3Dモデルに対応する3D物体(3)を生成する積層造形装置(2)と、後処理の間に前記プラットフォーム(4)に取り付けられた状態で受け取られて保持された前記3D物体(3)の洗浄、乾燥および硬化のうちの少なくとも1つを行う少なくとも1つの後処理装置(7)と、を備える積層造形システム(1)を用いて、生成および後処理に適したデジタル3Dモデルを作成する方法であって、
前記方法は、前記プラットフォーム(4)に対して所望の印刷方向で前記デジタル3Dモデルを提供するステップを備え、
前記方法は、さらに、
前記プラットフォーム(4)に対する前記所望の印刷方向について、前記デジタル3Dモデルの流体貯留ボウル状開口領域(8)および流体吸引ドーム状開口領域(9)を決定するステップと、
生成プロセスおよび後処理プロセスの間にそれぞれ流体(5a、5b)の貯留および流体(5a、5b)の吸引を防止する目的で、少なくとも1つのドレインチャネル(10)および少なくとも1つのベントチャネル(11)を、それぞれ前記デジタル3Dモデル中の前記流体貯留ボウル状開口領域(8)および前記流体吸引ドーム状開口領域(9)中に含めるステップと、を備えることを特徴とする、方法。
[2] 前記デジタル3Dモデルをディスプレイ上でユーザに表示するステップと、
前記デジタル3Dモデル中に含まれる前記ドレインチャネル(10)および/または前記ベントチャネル(11)の入口(12)および/または出口(13)のそれぞれの位置を前記ユーザが手動で選択して前記ディスプレイ上に入力することを可能にするステップと、をさらに備えることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記デジタル3Dモデルの前記流体貯留ボウル状開口領域(8)中の最下点を見つけ出し、前記最下点を前記ドレインチャネル(10)の前記入口(12)の位置として設定するステップと、
前記デジタル3Dモデルに含まれる前記ドレインチャネル(10)の前記対応する出口(13)の位置を前記ユーザが手動で選択して前記ディスプレイ上に入力することを可能にするステップと、をさらに備えることを特徴とする、[2]に記載の方法。
[4] 前記ドレインチャネル(10)の前記対応する入口(12)よりも低く位置する場所に、前記ドレインチャネル(10)のための少なくとも1つの出口(13)を見つけ出すステップを備え、前記対応する手動選択および入力が省略されることを特徴とする、[3]に記載の方法。
[5] 前記ドレインチャネル(10)のための1つ以上の出口(13)は、前記ドレインチャネル(10)の傾斜が最大化されることおよび/または前記ドレインチャネル(10)の長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて見つけ出され、前記ドレインチャネル(10)は完全に前記デジタル3D物体(3)内に留まることを特徴とする、[4]に記載の方法。
[6] 前記デジタル3Dモデルの流体吸引ドーム状開放領域(9)中の最高点を見つけ出し、前記最高点を前記ベントチャネル(11)の前記出口(13)の位置として設定するステップと、
前記デジタル3Dモデル中に含まれる前記ベントチャネル(11)の前記対応する入口(12)の位置を前記ユーザが手動で選択して前記ディスプレイ上に入力することを可能にするステップと、を備える、[2]から[5]のいずれか1項記載の方法。
[7] 前記ベントチャネル(11)の前記対応する出口(13)よりも高く位置する場所に、前記ベントチャネル(11)のための少なくとも1つの入口(12)を見つけ出すステップをさらに備え、前記対応する手動選択および入力は省略されることを特徴とする、[6]に記載の方法。
[8] 前記ベントチャネル(11)のための1つ以上の入口(12)は、前記ベントチャネル(11)の傾斜が最大化されること、および/または前記ベントチャネル(11)の長さが最小化されることを含む1つ以上の基準に基づいて見つけ出され、前記ベントチャネル(11)は前記デジタル3D物体(3)内に完全に留まることを特徴とする、[7]に記載の方法。
[9] 前記ドレインチャネル(10)および/または前記ベントチャネル(11)の前記入口(12)および/または前記出口(13)の位置を見つけ出すことができる前記デジタル3Dモデルの表面積を制限する、および/または前記ドレインチャネル(10)および/または前記ベントチャネル(11)が通過できる前記デジタル3Dモデルの体積を制限するステップを備え、最低点/最高点は、前記制限を考慮して見つけ出されることを特徴とする、[2]から[8]のうちのいずれか一項に記載の方法。
[10] ドレインチャネル(10)および/またはベントチャネル(11)の入口(12)および/または出口(13)の位置が見つけ出されてはならない前記デジタル3Dモデルの表面積を制限し、および/または前記ドレインチャネル(10)および/またはベントチャネル(11)が通過してはならない前記デジタル3Dモデルの体積を制限するステップを備え、前記制限を考慮して最低点/最高点が見つけ出されることを特徴とする、[2]から[8]のうちのいずれか一項に記載の方法。
[11] 前記ユーザが、前記デジタル3Dモデルの前記ディスプレイ上で、前記制限された表面積および/または前記制限された体積を選択的にマークすることを可能にするステップを備えることを特徴とする、[9]または[10]に記載の方法。
[12] 前記ドレインチャネル(10)または前記ベントチャネル(11)は、直線である1つ以上のセグメントまたは曲線である1つ以上のセグメントを有し、前記直線または曲線セグメントは、一定または非一定断面を有することを特徴とする、[1]から[11]のうちのいずれか一項に記載の方法。
[13] 前記デジタル3D物体(3)が歯科器具(14)に対応することを特徴とする、[1]から[12]のうちのいずれか一項に記載の方法。
[14] [1]から[13]のうちのいずれか一項に記載の方法を前記積層造形システム(1)に実行させるためのコードを含む、コンピュータプログラム。
[15] [14]に記載のコンピュータプログラムを含む、コンピュータ読取可能記憶手段。
図1
図2
図3