(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】信号再生のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H04B 17/30 20150101AFI20240813BHJP
【FI】
H04B17/30
(21)【出願番号】P 2021546898
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(86)【国際出願番号】 GB2020000005
(87)【国際公開番号】W WO2020165550
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-12-07
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】390040604
【氏名又は名称】イギリス国
【氏名又は名称原語表記】THE SECRETARY OF STATE FOR DEFENCE IN HER BRITANNIC MAJESTY’S GOVERNMENT OF THE UNETED KINGDOM OF GREAT BRITAIN AND NORTHERN IRELAND
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】メイソン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ボーイズ スティーブン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤネティ ジェハン
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514961(JP,A)
【文献】特表2009-543051(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102638290(CN,A)
【文献】国際公開第2017/195842(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/087948(WO,A1)
【文献】特開2014-165832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号再生方法であって、
受信信号をサンプリングして、それぞれが関連する振幅を有する複数のサンプルを取得するステップと、
前記振幅に従って前記サンプルをソートして、前記振幅の統計的分布を取得するステップと、
フィッティング操作を使用して前記統計的分布に複数の既知の分布を当てはめ、いずれの場合にも類似性尺度を取得するステップと、
前記複数の既知の分布から、前記類似性尺度の最適値に対応する整合分布を決定するステップと、
前記整合分布を使用して再生信号を合成するステップと、
前記再生信号を出力するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記整合分布から位相分布を決定するステップをさらに含み、前記整合分布及び前記位相分布を使用して前記再生信号を合成することができる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルをソートする前記ステップは、前記振幅をビニングして前記統計的分布を生成するステップを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記振幅をビニングする前記ステップは、スコットの基準ルールに従ってビン幅を選択するステップを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記既知の分布は、複数の異なる分布を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記既知の分布は、正規分布、ワイブル分布、レイリー分布及び仲上分布を含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルをソートする前記ステップは、前記振幅を正規化するステップをさらに含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
複数の既知の分布を当てはめる前記ステップは、仮説検定を適用するステップを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の仮説検定が適用される、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記仮説検定は、コルモゴルフ・スミルノフ検定、アンダーソン・ダーリング検定、カイ二乗検定及びリリーフォース検定である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
再生信号を合成する前記ステップは、前記整合分布に対応する確率分布で動作するように乱数発生器を構成し、該乱数発生器から複数の合成サンプルを生成するステップを含む、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
再生信号を合成する前記ステップは、前記合成サンプルを波形として編成するステップをさらに含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
受信信号をサンプリングする前記ステップは、
前記受信信号のスペクトログラムを生成するステップと、
所定の周波数に対応する複数のサンプルを選択するステップと、
を含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
信号再生装置であって、データ処理手段に接続された、信号を送受信するためのトランシーバ手段を備え、前記データ処理手段は、
前記トランシーバ手段からの受信信号をサンプリングして、それぞれが関連する振幅を有する複数のサンプルを取得し、
前記振幅に従って前記サンプルをソートして、前記振幅の統計的分布を取得し、
フィッティング操作を使用して、前記統計的分布に複数の既知の分布を当てはめ、いずれの場合にも類似性尺度を取得し、
前記複数の既知の分布から、前記類似性尺度の最適値に対応する整合分布を決定し、
前記整合分布を使用して再生信号を合成し、
前記トランシーバ手段を使用して前記再生信号を送信する、
ように構成される、ことを特徴とする装置。
【請求項15】
前記データ処理手段は、前記整合分布から位相分布を決定し、前記整合分布及び前記位相分布を使用して前記再生信号を合成するようにさらに構成される、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
コンピュータプログラムであって、該プログラムがコンピュータによって実行された時に、前記コンピュータに請求項1から13の1項に記載の方法を実行させる命令を含む、
ことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項17】
請求項16に記載のコンピュータプログラムを記憶する、
ことを特徴とするコンピュータ可読データキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号再生の分野に関し、具体的には、統計的に代表的な電磁信号を再生する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置(over the air communications equipment)は、信号送信との競争がますます激化してきている電磁環境で動作する必要がある。開発中の通信装置は、目的に適うものとみなされるために、このような環境で機能することが示されなければならない。これらの保証は、1つの装置を現場で試験することによって達成することができるが、このような試験はコストが掛かり、周囲条件の変化に対して制御できない場合がある。
【0003】
代替案は、信号分析器などの信号捕捉装置(signal capture devices)を使用して代表的な電磁環境を一定期間にわたって記録し、その後に適切な無線実験室試験構成で試験中のユニットに対して時間ベースの波形を再生することである。このような手法には固有の限界があり、とりわけ管轄によっては記録された信号データの使用に対する法的制約が存在し、競争対象の電磁環境における信号バックグラウンド(signal background)を記録するための記憶要件は相当なものである。実際に、あらゆる統計的に変動する信号の記録及び再生は、記録装置上の利用可能な記憶容量によって本質的に制限されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、統計的に代表的な信号を再生するための代替方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、受信信号をサンプリングして、それぞれが関連する振幅を有する複数のサンプルを取得するステップと、サンプルをソートして、振幅の統計的分布を取得するステップと、フィッティング操作(fitting operation)を使用して統計的分布に複数の既知の分布を当てはめ、いずれの場合にも類似性尺度(measure of similarity)を取得するステップと、複数の既知の分布から、類似性尺度の最適値に対応する整合分布(matched distribution)を決定するステップと、整合分布を使用して再生信号を合成するステップと、再生信号を出力するステップと、を含む信号再生方法が提供される。サンプリング時の信号の振幅は、信号が送信されている信号環境の結果としてサンプル毎に異なる。例えば、これは無線信号環境におけるマルチパス効果の結果とすることができる。本発明者らは、受信信号振幅を一定期間にわたってプロファイリングし、このプロファイルデータに既知の統計的分布を当てはめることで、時変受信信号をその後の再生のために直接記憶する必要なく、元々の複素受信信号に統計的に一致する信号を合成できるようになることを明らかにした。これにより、無線受信機を代表的な信号環境の実験室内で試験することができる。これにより、実際の受信信号は記録されず、代わりにその統計的挙動が記録されて統計的に代表的な信号を再生するために使用されるので、無線信号の記録に関するいくつかの問題を軽減することもできる。さらに、信号に関する統計情報のみを記憶することによって、記憶の負担を大幅に低減することができる。
【0006】
フィッティング操作は、最良適合を取得するために、サンプル振幅の統計的分布に既知の分布を当てはめることを含む。例えば、最小二乗法アルゴリズムを使用して類似性尺度を生成することができる。例えば、統計的分布に異なるレイリー分布又はその他の分布を当てはめ、それぞれについて類似性尺度を生成することができる。類似性尺度の最適値は、それぞれの既知の分布が整合分布になる「最良適合」を示す最大値とすることができる。
【0007】
方法のいくつかの実施形態では、振幅情報のみから波形を再生することができる。しかしながら、好ましい実施形態は、整合分布から位相分布を決定するステップをさらに含み、整合分布及び位相分布を使用して再生信号を合成することができる。これにより、信号の同相成分及び直角成分を再生することができる。いくつかの既知の分布は、特定の位相分布を有することに関連する。例えば、(マルチパスの結果として信号がレイリーフェージングを示す時に観察される)レイリー振幅分布は、一様な位相分布を有する。従って、レイリー分布を整合分布として決定することによって、一様な位相分布を推測することができる。再生信号の合成中には、統計的に類似する信号波形を再現するために、整合分布及び対応する位相分布に従って合成サンプルを生成することができる。先行技術のスペクトル分析器は、これらが動作するように見込まれている広い帯域幅に起因して振幅情報しか捕捉しない。先行技術の信号分析器は、信号の振幅情報及び位相情報を捕捉するが、記憶要件に起因して狭い帯域幅にわたってしか捕捉しない。本発明者らは、これらの問題を軽減する、信号の完全な振幅及び位相を記録して再生する方法を明らかにした。
【0008】
サンプルをソートするステップは、振幅をビニングして統計的分布を生成するステップを含むことが好ましい。ビニングは、振幅の統計的挙動が明らかになるようにサンプルをソートすることによってフィッティング操作の実行を可能にする便利な手段を提供する。振幅をビニングするステップは、スコットの基準ルール(Scott’s Reference Rule)に従ってビン幅を選択するステップを含むことがさらに好ましい。このルールは、以下の方程式1で提供され、式中の「w」はビン幅を表し、「a」はサンプルの標準偏差を表し、「N」はサンプルの総数を表す。
w=3.49σN-1/3 方程式1
【0009】
使用されるビンの数は、サンプルの統計的挙動が確実に明らかになるように最適化されることが好ましい。ビンが少なすぎるとこのような挙動が明らかにならず、ビンが多すぎると挙動が希薄化してしまう。スコットのルールは、受信信号サンプルに適用した時に最適なビンサイズを識別する上で有用であることが本発明者らによって確認済みである。
【0010】
受信信号は、未知の環境内で伝播できたものであり、従ってどの既知の分布が信号の統計的挙動を最良に表すかは不明である。従って、真の信号挙動を発見するために、フィッティング操作を使用して複数の異なる既知の分布を評価すること必要となり得る。いくつかの実施形態では、既知の分布が、正規分布、ワイブル分布、レイリー分布及び仲上分布を含む。これらの分布は、現実的環境内での電磁信号伝播をモデル化するのに適しており、従って電磁信号の統計的挙動への当てはめにうまく適合するという理由で本発明者らが選択したものである。さらに、これらの分布は、信号再生プロセスに必要な関連する位相分布を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、振幅をソートするステップが、振幅を正規化するステップを含む。これにより、サンプルの統計的分析を実行できるようになる。さらに好ましい実施形態では、複数の既知の分布を当てはめるステップが、仮説検定を適用するステップを含む。サンプルの統計的分布に既知の分布を当てはめることは、「現実世界」の受信信号の一部に作用する結果として常に不確実性を伴う。実際には、複数の異なる既知の分布が、サンプル自体と実質的に等しい「良好な」適合をもたらすことができる。仮説検定は、正しい確率が最適(最大)である帰無仮説を決定できるように、(例えば、受信信号振幅が、割り当てられた信頼区間についてレイリー分布を示すとの)帰無仮説に確率などの類似性尺度が割り当てられることを可能にする。
【0012】
特定の既知の分布プロファイルの検定にはいくつかの仮説検定の方が適しており、処理される受信信号はその受信時に正確な形態が分からない場合があるという必然性を緩和するために、任意に複数の仮説検定を使用することもできる。仮説検定は、コルモゴルフ・スミルノフ検定、アンダーソン・ダーリング検定、カイ二乗検定及びリリーフォース検定を含むことがさらに好ましい。コルモゴルフ・スミルノフ検定は、正規分布の検定にうまく適合し、アンダーソン・ダーリング検定は、正規分布、指数分布、極値分布、対数正規分布及びワイブル分布の検定にうまく適合し、カイ二乗適合度検定は、正規分布の検定にうまく適合するが、好適な確率分布の使用を通じて他の分布の検定に適合することもでき、リリーフォース検定は、正規分布、対数正規分布、極値分布、ワイブル分布及び指数分布の検定にうまく適合する。或いは、これらの検定のいずれかの組み合わせを使用することもできる。仮説検定には、95%又は99%の信頼区間が好ましい。様々な仮説検定は、サンプルの統計的分布がそれぞれの既知の分布に従うと解釈するための信頼度を帰無仮説が提供する確率を示す、各帰無仮説のための「p値」としての類似性尺度を生成することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、再生信号を合成するステップが、整合分布と同等の確率分布で動作するように乱数発生器を構成し、そこから複数の合成サンプルを生成するステップを含む。乱数発生器は、規定の確率分布に一致するサンプルを自動的に生成する便利なオペレータである。乱数発生器は、整合分布が決定された時点で直ぐに対応する確率分布を有するように構成することも、或いは合成サンプルを生成する前のその後の時点で構成することもできる。その後に、合成サンプルを、試験中のユニットに対して再生できる波形として(例えば、実験室内で電磁信号として)編成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、受信信号をサンプリングするステップが、受信信号のスペクトログラムを生成するステップと、所定の周波数に対応する複数のサンプルを選択するステップとを含む。現実世界の電磁バックグラウンドなどの信号環境は多くの周波数の信号を含み、試験中の通信装置は、これらの周波数のうちの1つ又は2つ以上に照らした試験を必要とすることができる。これらの周波数の一部は、スペクトログラムを閾値化(thresholding)して信号の振幅が所定値を上回る周波数からのサンプルのみを処理することによって選択することができる。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、データ処理手段に接続された、信号を送受信するためのトランシーバ手段を備え、データ処理手段が、トランシーバ手段からの受信信号をサンプリングして、それぞれが関連する振幅を有する複数のサンプルを取得し、サンプルをソートして、振幅の統計的分布を取得し、フィッティング操作を使用して、統計的分布に複数の既知の分布を当てはめ、いずれの場合にも類似性尺度を取得し、複数の既知の分布から、類似性尺度の最適値に対応する整合分布を決定し、整合分布を使用して再生信号を合成し、トランシーバ手段を使用して再生信号を送信する、ように構成された信号再生装置が提供される。この装置は、受信信号と統計的に同等の信号を記録して再生するために膨大なデータストレージを必要とせず、代わりに受信信号に関する統計的分布のみが取得されて信号再生に使用される。この装置は、電磁信号の捕捉及び再合成に特に有用である。
【0016】
好ましい実施形態では、データ処理手段が、整合分布から位相分布を決定し、その後に整合分布及び位相分布を使用して再生信号を合成するようにさらに構成される。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、コンピュータによって実行された時に、コンピュータに本発明の第1の態様の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムが提供される。本発明の第4の態様によれば、本発明の第3の態様のコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読データキャリアが提供される。コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読データキャリアは、コンピュータプログラム又はソフトウェアのインストール、或いは(CD、DVD、固定記憶装置などの)データキャリアの読み込みを可能にするコンピュータ、データ処理手段、信号分析器、スペクトル分析器上に本発明を実装する便利な手段である。これにより、本発明の方法が既存の信号捕捉装置に組み込まれることを可能にすることができる。
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態をほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】比較的単純な波形についての信号再生に関与するステップを示す図である。
【
図2A】
図1の方法を使用することに基づいて操作された比較的単純な波形を示す図である。
【
図2B】
図2Aの比較的単純な波形に対するフィッティング操作の結果を示す図である。
【
図3】複合波形についての信号再生に関与するステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に、信号再生方法10の実施形態をフロー図形態で示す。方法10は、受信信号の処理11及び再生信号の生成12という2つの段階を含む。処理段階11では、第1のステップが、受信信号をサンプリングして(13)400個の波形サンプルを取得することを含む。受信信号は時間ベースの電磁信号であり、従ってアンテナ及びトランシーバによって受信された後に、入力/出力データ収集カード(input/output data acquisition card)を使用してコンピュータシステムによってサンプリングされる。400個のサンプルは、それぞれ関連する振幅を有する。その後のステップ14において、あらゆる統計的検定が一貫して実行されることを確実にするようにこれらの波形サンプルをコンピュータシステムによって正規化し、その後にヒストグラムの形に処理し(15)、アレイとしてコンピュータメモリに記憶する。このヒストグラムは、方程式1によって設定されたビン幅を有する。このヒストグラムに既知の分布である正規分布、ワイブル分布、レイリー分布、仲上分布を当てはめて(16)、各分布の最適整合バージョン(optimally matched versions)を取得する。この当てはめは、最小二乗法又はその他のフィッティングアルゴリズムを使用してヒストグラムデータに対して複数の各分布を試験することによって行われる。最良に適合する正規、ワイブル、レイリー又は仲上が受信信号振幅変動の真の統計的挙動を95%の信頼区間で反映するとの帰無仮説を使用して複数の仮説検定を実行する(17)。これらの仮説検定は、コルモゴルフ・スミルノフ検定、アンダーソン・ダーリング検定、カイ二乗検定及びリリーフォース検定であり、これらは全てコンピュータシステム内のアルゴリズムとして提供される。各仮説検定は、p値の形態の類似性尺度を出力する。最大p値は、真の統計的挙動である最も高い可能性を表し、この実施形態ではレイリー分布である。レイリー分布の正確な形態は、整合分布18としてコンピュータメモリに記憶される。実験室内で受信信号を再生する必要がある場合には、「生成」という第2の段階12が実行される。この段階は、整合分布18に対応する確率密度関数を使用して乱数発生器を構成することを含む(19)。次に、この乱数発生器を使用して、確率密度関数に従ってサンプルを合成する(20)。次に、これらのサンプルを波形としてプロットし(21)、例えば非正規化サンプルの最大値を乗算することによって再スケーリングすることができる(22)。非正規化サンプルの最尤推定値から取得された形状パラメータを適用することもできる。その後、トランシーバ及びアンテナを使用して、再生された波形を無線で再生することができる(23)。
【0021】
図2Aに、
図1の方法で受信され処理された比較的単純な信号24を示す。
図2Bには、
図2Aの信号24にフィッティング操作を適用した結果を示す。仮説検定前に、正規化されたビニングサンプル29に最適な正規分布25、ワイブル分布26、レイリー分布27及び仲上分布28を当てはめたものを示す。
【0022】
図3に、複素信号についての信号再生に関与する方法ステップ30を示す。方法ステップ30は、事前処理31、処理32及び生成33という3段階に分割される。各段階は、コンピュータシステム内で実行される。事前処理段階31では、電磁信号のスペクトログラムを取得する(34)。スペクトログラムは、受信信号内に存在する周波数を示す。このスペクトログラムを閾値化(35)して、所定のレベルを上回る振幅を有する周波数を識別する。これにより、受信信号の一次周波数をさらなる分析(例えば、ノイズフロアを上回る信号)のために識別できるようになる。この実施形態では、単一の周波数を分析のために選択し、この周波数ビン内の複数のサンプルをさらなる分析のためにスペクトログラムから抽出する(36)。各サンプルはそれぞれの振幅を有し、これらの振幅は処理段階32において正規化される(37)。次に、方程式1を使用して、正規化されたサンプルをビニングしてヒストグラムを生成する(38)。最小二乗法、又はヒストグラムに既知の正規分布、ワイブル分布、レイリー分布、仲上分布を当てはめるその他のフィッティングアルゴリズムを使用して、ヒストグラムにフィッティング操作39を適用する。各当てはめられた既知の分布を、コルモゴルフ・スミルノフ検定、アンダーソン・ダーリング検定、カイ二乗検定及びリリーフォース検定40における帰無仮説で使用し、いずれの場合にも類似性尺度(p値)を取得する。所与の仮説検定では、最大p値を達成する既知の分布を、選択周波数における受信信号の統計的挙動を表す分布、すなわち整合分布とみなす。整合分布をコンピュータメモリに記憶する(41)。この実施形態では、整合分布がレイリー分布である。使用されるコンピュータシステムは、対応する位相分布に既知の分布を一致させるルックアップテーブルを含む。レイリー整合分布を(各位相が所与のサンプル内に存在する等しい確率を有する)一様な位相分布に関連付けるルックアップ動作を使用して、位相分布を生成する(42)。生成段階33では、整合分布を使用して乱数発生器を構成する(43)。乱数発生器によって合成サンプルを生成する(44)。振幅成分及び位相成分の両方を有する複素信号を生成し(45)、スペクトログラムから選択された周波数で変調する。合成サンプルを使用して、複素信号の振幅成分をスケーリングする(46)。位相分布を使用して、複素信号の位相成分を調整する(46)。その後、アンテナ及びトランシーバを使用して、再生信号を電磁信号として出力する(47)。
【0023】
複素信号は、時間領域又は周波数領域で生成することができる。複素信号は多くの周波数を含むことができ、再生プロセスは複数の周波数について実行することができ、信号は再生されると重畳して、受信信号の統計的に代表的なバージョンを形成する。再生信号の出力又は送信前に、再生信号を再検定するさらなるステップを適用することもできる。この目的は、新たに生成された波形が受信信号と同じ統計的挙動を有することを確実にするためである。このステップは、生成されたサンプルを再ビニングして、受信信号を分析するために実行されたものと同様のフィッティング操作を適用するステップを含むことができる。
【符号の説明】
【0024】
10 信号再生方法
11 処理
12 生成
13 受信信号をサンプリング
14 サンプルを正規化
15 ヒストグラムを生成
16 フィッティング操作
17 仮説検定
18 整合分布を出力
19 乱数発生器を構成
20 合成サンプルを生成
21 再生波形をプロット
22 再スケーリング
23 再生信号を出力