(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】3D印刷を用いてチップをトップコネクタと電気接続する方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20240813BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240813BHJP
【FI】
B29C64/112
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2021563721
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 IB2020053827
(87)【国際公開番号】W WO2020222090
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-21
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519016549
【氏名又は名称】アイオー テック グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ゼノウ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジラン ジブ
(72)【発明者】
【氏名】ネシェル ガイ
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-521331(JP,A)
【文献】米国特許第07014885(US,B1)
【文献】国際公開第2018/136480(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216002(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0197401(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00,64/112
B33Y 10/00,30/00,40/00,80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)電子デバイスを製作する方法であって、
1又は2以上のコネクタ(14、14’)と、1又は2以上の電子部品(12)とを上に有するプリント回路基板(PCB)(10)に、レーザ誘起前方転写法(LIFT)プロセスによって非導電性の液体支持材料(18、22、26)を付与するステップであって、前記PCB(10)が作業領域内のステージ(34)上にあるステップと、
冷却及び/又は紫外線(UV)放射(46)への曝露によって前記非導電性の液体支持材料(18、22、26)を固体形態に硬化させることで、印刷されることになる導電性材料の層(54)のための非導電性支持構造(20、24、28)を形成するステップと、
前記1又は2以上の電子部品(12)を前記PCB(10)上の前記コネクタ(14、14’)のそれぞれに電気接続するために、LIFTによって、前記非導電性支持構造(20、24、28)上に少なくとも部分的に前記導電性材料の層(54)を印刷し、その後、乾燥した導電性材料の層(56)を形成するために熱によって前記導電性材料の層(54)を乾燥させるステップと、
レーザビームを用いて前記乾燥した導電材料の層(56)内の金属粒子を焼結して導電層(58)を形成するステップと、
を含
み、
前記液体支持材料(18、22、26)は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート又はアクリル化モノマ若しくはオリゴマであり、
前記液体支持材料(18、22、26)は、光開始剤を含み、
前記光開始剤は、カチオン性光開始剤であり、
前記カチオン性光開始剤は、前記液体支持材料(18、22、26)の0.05~3重量%の濃度である、方法。
【請求項2】
前記導電性材料は、純金属、金属合金又は高融点金属である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記LIFTプロセスによって印刷される前記導電性材料の層(54)は、フィルム上の金属粒子を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記LIFTプロセスによって印刷される前記導電性材料の層(54)は、金属ペーストを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
3次元(3D)電子デバイスを製作する方法であって、
1又は2以上のコネクタ(14、14’)と、1又は2以上の電子部品(12)とを上に有するプリント回路基板(PCB)(10)に、レーザ誘起前方転写法(LIFT)プロセスによって非導電性の液体支持材料(18、22、26)を付与するステップであって、前記PCB(10)が作業領域内のステージ(34)上にあるステップと、
冷却及び/又は紫外線(UV)放射(46)への曝露によって前記非導電性の液体支持材料(18、22、26)を固体形態に硬化させることで、印刷されることになる導電性材料の層(54)のための非導電性支持構造(20、24、28)を形成するステップと、
前記1又は2以上の電子部品(12)を前記PCB(10)上の前記コネクタ(14、14’)のそれぞれに電気接続するために、LIFTによって、前記非導電性支持構造(20、24、28)上に少なくとも部分的に前記導電性材料の層(54)を印刷し、その後、乾燥した導電性材料の層(56)を形成するために熱によって前記導電性材料の層(54)を乾燥させるステップと、
前記UV放射(46)を用いて、前記LIFTプロセスによって印刷される前記導電性材料の層(54)を硬化させるステップ
と、
レーザビームを用いて前記乾燥した導電材料の層(56)内の金属粒子を焼結して導電層(58)を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
3次元(3D)電子デバイスを製作する方法であって、
1又は2以上のコネクタ(14、14’)と、1又は2以上の電子部品(12)とを上に有するプリント回路基板(PCB)(10)に、レーザ誘起前方転写法(LIFT)プロセスによって非導電性の液体支持材料(18、22、26)を付与するステップであって、前記PCB(10)が作業領域内のステージ(34)上にあるステップと、
冷却及び/又は紫外線(UV)放射(46)への曝露によって前記非導電性の液体支持材料(18、22、26)を固体形態に硬化させることで、印刷されることになる導電性材料の層(54)のための非導電性支持構造(20、24、28)を形成するステップと、
前記1又は2以上の電子部品(12)を前記PCB(10)上の前記コネクタ(14、14’)のそれぞれに電気接続するために、LIFTによって、前記非導電性支持構造(20、24、28)上に少なくとも部分的に前記導電性材料の層(54)を印刷し、その後、乾燥した導電性材料の層(56)を形成するために熱によって前記導電性材料の層(54)を乾燥させるステップと、
レーザビームを用いて前記乾燥した導電材料の層(56)内の金属粒子を焼結して導電層(58)を形成するステップと、
を含み、
前記1又は2以上のコネクタ(14、14’)、前記導電層(58)及び前記1又は2以上の電子部品(12)を封止材(64)内に封止するステップをさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年5月1日出願の米国特許仮出願第62/841349号の優先権を主張するものである。
【0002】
(技術分野)
本発明は、3次元(「3D」)構造と、3D構造の電子的、電磁気的、及び電気機械的な構成要素及びデバイスの製造に関し、より詳細には、3D印刷技術を用いて3D構造内で構成要素のトップコネクタを接続する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
数多くの付加製造(3D印刷としても知られる)方法が存在し、それぞれが異なる用途を持つ。例えば、インクジェット印刷技術は、Sachs他の米国特許第5204055号に記載されるように、3次元物体を製作するために使用することができる。このような例では、プリンタヘッドを用いて、粉末ベッド内の粉末微粒子の層の上にバインダ材を吐出する。この粉末層は、作り出される物体のデジタル的に重ね合わされた区画に対応している。バインダは、粉末粒子を特定の領域で融合させる。この結果、物体の融合した断面セグメントが粉末ベッド上に形成されることになる。このステップは、所望の物体が得られるまで、連続する各層に対して繰り返される。最終ステップでは、レーザビームが物体を走査し、粉末層を焼結させて融合させる。
【0004】
Sandarsの米国特許第5506607号及び米国特許第5740051号に記載される別のインクジェット印刷プロセスでは、低融点の熱可塑性材料を1つのインクジェットプリンタヘッドから吐出して、3次元物体を形成する。第2のインクジェットプリンタヘッドは、ろう材を吐出して、3次元物体の支持体を形成する。物体が作り出された後で、ろう支持体を除去し、必要に応じて物体を仕上げる。
【0005】
Sun他の国際公開第2014/078537号は、ステレオリソグラフィ(「SLA」)などの、デジタルライトプロセッサ(「DLP」)プロジェクタ又は他の光ビーム照射を用いて3D歯科用デバイスを製作するための液体樹脂システムを記載する。DLP又はSLAの方法及び材料を用いて、いずれかの歯科用デバイスを作ることができる。DLP及びSLAでは、重合性の液体樹脂材料又は加熱された樹脂材料が、液体として3Dプリンタバスの樹脂槽に装填される。DLPの場合、3D物体は、液体の(又は加熱された)樹脂に連続的なボクセル面を投影することによって作り出され、次いでそのボクセル面が重合して固体形態となる。このようにして、歯科用デバイスが完全に製作されるまで、重合した材料の連続層が付加される。その後、歯科用デバイスは、必要に応じて洗浄され、仕上げられ、完全に硬化される。
【0006】
上記のような技術が様々な分野で広く利用されているにも拘らず、付加製造技術の3Dエレクトロニクスへの応用は、まだ初期段階にある。現在の低温硬化型導電性インクに基づく技術は、信頼性が低く、性能も低いため、大規模な導入は限られている。その結果として、従来のプリント回路基板(PCB)技術がエレクトロニクス産業を支配し続けている。
【0007】
付加製造(AM)プロセスを使用して(ASTM 2792-12aに記載され規定されるプロセスを用いて)3D構造の電子機器を作り出すこれまでの取り組みは、構成要素間の電気的な相互接続を提供するために、ダイレクト-プリント(DP)又は他のプロセスで吐出させた導電性インクを使用することが中心であった。米国特許第7658603号及び米国特許第8252223号は、3D回路を作り出すために液体吐出技術をSLA及び他のAMプロセスと統合することに関して詳細に記載する。これらの低温硬化型インクは、導電性と耐久性の両方に弱点があるため、AMで製造された3D構造の電子機器の用途は、機械的な衝撃、振動、大きな電流又は電力密度、極端な温度に曝されない簡単なデバイス、又は高い信頼性を必要としない用途に限定される。
【0008】
また、AMで製造された部品と射出成形で製造された部品の機械的特性にはギャップがあり、このギャップは単に引張特性だけでなく、衝撃、曲げ、圧縮、クリープ、及び疲労特性を含むものであり、これらを総合すると、AMで製造された部品の用途は試作品に限られる。
【0009】
上述の材料関連問題のほとんどを克服する3D印刷の新しい手法は、レーザ直接描画(LDW)技法の使用である。この技法では、レーザビームを用いて、制御された材料のアブレーション又は蒸着により、空間的に分解された3次元構造を持つパターン化面を作り出す。レーザ誘起前方転写法(Laser-induced forward transfer)(LIFT)は、マイクロパターンを表面に堆積する際に適用できるLDW技法の一つである。LIFTでは、レーザ光子が、ドナーフィルムからアクセプタ基板に向けて少量の材料を射出する駆動力を提供する。通常、レーザビームは、非吸収性のキャリア基板上に塗布されたドナーフィルムの内側と相互作用する。言い換えれば、入射したレーザビームは、透明なキャリア基板を伝播した後で、フィルムの内面により光子が吸収される。特定のエネルギ閾値を超えると、材料はドナーフィルムから基板の表面に向かって放出される。LIFTベースの印刷システムは、例えば、米国公開第2005/0212888号、米国公開第2009/007498号、及び国際公開第2016/020817号に記載されている。
また、Zenоu他の国際公開2018/216002号は、電子デバイスを製造する方法を記載する。この方法では、一体の接点を持つ電子部品を含むダイ(die)を誘電体基板に固定する。ダイを固定した後、基板上の導電性トレースと電子部品との間にオーム接続を作るために、導電性トレースを誘電体基板と少なくとも1つの積分接点との両方に印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5204055号
【文献】米国特許第5506607号
【文献】米国特許第5740051号
【文献】国際公開2014/078537号
【文献】米国特許第7658603号
【文献】米国特許第8252223号
【文献】米国公開第2005/0212888号
【文献】米国公開第2009/007498号
【文献】国際公開第2016/020817号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、構造体が層ごとに作り出されるAM技術により、消費財産業、生物医学産業、航空宇宙産業、及び防衛産業向けの高価値で多機能な製品に適した製作プロセスが提供されることを認識している。そのため、本発明の一実施形態は、3次元(3D)電子デバイスを製作する方法を提供する。この方法は、1又は2以上のコネクタと1又は2以上の電子部品とをその上に有するプリント回路基板(PCB)に、レーザ誘起前方転写法(LIFT)プロセスによって液体支持材料を付与するステップを含む。PCBは、作業領域内のステージ上に置くことが好ましい。場合によっては、ステージ上にPCB(その上にコネクタ、例えば回路基板のトレース及びパッドが印刷されている)を配置し、PCBをそのように位置決めした後で電子部品をPCB上に配置することができる。付与されると、液体支持材料は、冷却及び/又は紫外線(UV)放射への曝露により、硬化して固体(又は少なくとも半固体)になる。その後、LIFTで固体(又は半固体)の支持材料上に導電性材料の層を印刷し、1又は2以上の電子部品をPCB上のコネクタのそれぞれに電気接続する。続いて、導電性材料の層を(例えば、熱によって)乾燥させ、レーザビームを用いて導電層内の金属粒子を焼結させることができる。
【0012】
様々な実施形態において、液体支持材料は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、或いはアクリル化モノマ又はオリゴマとすることができる。さらに、液体支持材料は、例えば、液体支持材料の0.1~10重量%の濃度で、光開始剤を含むことができる。場合により、光開始剤はカチオン性光開始剤とすることができ、例えば、液体支持材料の0.05~3重量%の濃度である。
【0013】
様々な実施形態において、導電性材料は、純金属、金属合金、又は高融点金属とすることができる。導電性材料は、フィルム上の金属粒子の形態で、又は金属ペーストの形態で存在し、LIFTによって電子部品をPCBボードのコネクタに電気接続するために印刷することができる。随意的に、焼結の前に、UV放射を用いて、印刷された導電性材料の層を硬化させることができる。
【0014】
焼結が完了した後、1又は2以上のコネクタ、導電層、及び1又は2以上の電子部品を含む組立体の少なくとも一部を封止材内に封止することができる。
【0015】
本発明に関する上記及びさらなる実施形態を以下で詳細に説明する。
【0016】
本発明は、限定ではなく例示として、添付図面の図に示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】PCBとその上に位置する電子部品との間における従来の電気接続の例を示す図である。
【
図1B】PCBとその上に位置する電子部品との間における従来の電気接続の例を示す図である。
【
図1C】PCBとその上に位置する電子部品との間における従来の電気接続の例を示す図である。
【
図1D】PCBとその上に位置する電子部品との間における従来の電気接続の例を示す図である。
【
図2】LIFTプロセスによる材料液滴の堆積の例を示す図である。
【
図3】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、PCBとその上に位置する1又は2以上の電子部品との間の電気接続部がその上に印刷されることになる、付与された支持材料の層に対する硬化プロセスの一例を示す図である。
【
図4A】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、PCBとその上に位置する1又は2以上の電子部品との間の電気接続用の支持層を形成する例を示す図である。
【
図4B】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、PCBとその上に位置する1又は2以上の電子部品との間の電気接続用の完成した支持構造の側面図である。
【
図4C】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、PCBとその上に位置する1又は2以上の電子部品との間の電気接続用の完成した支持構造の上面図である。
【
図5】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、1又は2以上の電子部品のコネクタをPCB上のコネクタのそれぞれのものに電気接続するために、固体(又は少なくとも半固体)の支持材料構造の上を覆って導電性材料を印刷する、乾燥させる、及び焼結させるステップを示す図である。
【
図6A】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、1又は2以上の電子部品のコネクタをPCB上のコネクタのそれぞれのものに電気接続する、完成した導電性材料の層の側面図である。
【
図6B】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、1又は2以上の電子部品のコネクタをPCB上のコネクタのそれぞれのものに電気接続する、完成した導電性材料の層の上面図である
【
図6C】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、1又は2以上の電子部品のコネクタをPCB上のコネクタのそれぞれのものに電気接続する、完成したマルチステッププロセスの側面図である。
【
図6D】3D電子デバイスを製作するための本方法の実施形態による、1又は2以上の電子部品のコネクタをPCB上のコネクタのそれぞれのものに電気接続する、完成したマルチステッププロセスの上面図である。
【
図7A】3D電子デバイスを製作するための本方法の一実施形態による、完成した封止プロセスの側面図である。
【
図7B】3D電子デバイスを製作するための本方法の一実施形態による、完成した封止プロセスの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、3次元(3D)電子デバイスを製作するための手法を提供する。本発明の様々な実施形態では、1又は2以上の層を印刷するためにLIFTプロセスが採用される。LIFTは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国公開第2017/0189995号に記載されている。上述のように、LIFTはLDWの一形態であり、レーザ光子が、ドナーフィルムからアクセプタ基板に向かって少量の材料を射出する駆動力を提供する。LIFTプロセスを用いて、1又は2以上のコネクタと1又は2以上の電子部品とをその上に有するPCBに、液体支持材料を付与する。PCBは、作業領域内のステージ上に置くことができる。場合によっては、ステージ上にPCB(その上にコネクタ、例えば回路基板のトレース及びパッドが印刷されている)を配置し、PCBをそのように位置決めした後で、例えば従来のピックアンドプレース装置を用いて、電子部品をPCB上に配置することができる。ひとたび付与されると、液体支持材料は、冷却及び/又は紫外線(UV)放射への曝露により、硬化して固体(又は少なくとも半固体)になる。その後、LIFTで固体(又は半固体)の支持材上に導電性材料の層を印刷し、1又は2以上の電子部品をPCB上のコネクタのそれぞれに電気接続する。その後、導電性材料の層を(例えば、加熱によって)乾燥させ、レーザビームを用いて導電層内の金属粒子を焼結させることができる。
【0019】
LIFTプロセスは、受入れ基板が均一な平面である必要がないため、支持材料の付与に好適である。実例を参照して後述するように、支持材料は、PCBコネクタ及び電子部品の上に付与されると、階段状の断面を形成する。紫外線放射及び/又は熱に曝して支持材料を硬化させることで、後続の導電性材料の印刷のための固体(又は少なくとも半固体)の基礎が作り出される。導電性材料層は、支持材料の上に印刷され、次いで赤外線(IR)ランプ又は類似の構成を用いた加熱により乾燥される。随意的に、導電層内部に金属粒子が印刷されると、レーザビームは、金属粒子を焼結するために用いることができる。
【0020】
支持材料の印刷は中間ステップであるため、支持層の形成に長時間を要しないことが望ましい。従って、支持層を形成する材料は、(紫外線照射、加熱、又はその両方によって)硬化するのに短時間しか掛からず、硬化プロセス中に(あるとしても)あまり収縮しないことが必要である。硬化に過度の時間が掛かる材料は、プロセス全体の速度を遅らせることになり、硬化中に(少なくとも少量を超えて)収縮する材料は、その上に印刷された導電層に機械的なストレスを与えることになり、その層を不連続にし、間隙を横切るスパーク又は電気的な開回路につながる可能性がある。
【0021】
支持層として使用するのに好ましい材料の1つは、エポキシアクリレートである。エポキシアクリレートは、グリシジルエーテル又はシクロヘキセンオキシドのいずれかであるエポキシドをアクリル酸と反応させる、すなわち、ヒドロキシアクリレートを生成することによって調製される化合物である。例示的に、工業的に普及している芳香族系のBPA-DGE又はエポキシフェノールノボラックは、対応するヒドロキシアクリレートに反応する。これらは商業的に入手可能である(例えば、Rahn社、BASF社、Sartomer社などから)。これらの製品に共通するのは、原液状態での粘度が約500~50000Pasであることである。取り扱い又は加工の理由から、これらは一般に、HDDA、TMPTA、TPGDAなどの低粘度(5~50mPas、25℃)のアクリルモノマ、及び本技術分野で公知の他のモノマで希釈される。このような製品の放射線誘起フリーラジカル硬化により、本発明の観点から良好な機械的特性を有するフィルムが得られる。
【0022】
放射線硬化性組成物は、通常、光開始剤を含む。光開始剤の含有量は、それぞれの場合に、エポキシアクリレートの総量を基準にして、0.1~10重量%であることが好ましい。適切な光開始剤は本技術分野で公知であり、また市販されている。例えば、Lambson(商標)社のSpeedCure(商標)という名称で市販されている製品を使用することができる。オキシラン化合物を含む随的な混成系組成物の場合、本技術分野で同様に公知の光カチオン重合用の開始剤がさらに使用される。カチオン重合用の光開始剤は、UV放射に曝されると強いブレンステッド酸を生成し、それによってエポキシド基の重合を開始する。この組成物は、エポキシ樹脂成分に基づいて、カチオン光開始剤(同様にLambson社から同じ商標名で入手可能)を、概して0.05~3重量%の量で含む。光開始剤の他にも適切な増感剤を有効量で使用することができる。この組成物は、UV放射で硬化されるのが好都合である。
【0023】
支持層として使用するのに好ましい材料は、非常に速く反応する傾向があるためにエポキシアクリレートであるが、ウレタンアクリレートなどの他のアクリレートに関する最近の進展により、非常に低い収縮率で急速に反応(硬化)する化合物が作り出されている。例えば、Rahn(商標)のGemoner4215、並びに他のアクリレートモノマ及びオリゴマは、速い硬化時間及び低い収縮率の両方を提供する。
【0024】
電気部品のコネクタとPCBのコネクタとの間の電気接続に使用される活性材料又は導電性材料は、一般に1又は2以上の金属を含む。後述するように、金属層は、PCB上のコネクタと電気部品上のコネクタとの間で支持材料の上に付与される。想定される金属には、純金属、金属合金、及び高融点金属などが含まれる。活性材料は、固体状態から(例えばプラスチックフィルム上に堆積された小さな金属粒子はLIFTプロセスで使用して導電層を生成することができる)、又はドナーフィルム上に担持されたペーストの形態で、LIFTを用いて付与(印刷)することができる。LIFTプロセスで使用するのに適した金属ペーストは、工業界ではよく知られており、例えば、国際公開第2014/113937号、米国特許第6537359号、及び米国特許第7198736号、並びに米国公開第2013/0224474号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0025】
ここで、
図1A~1Dを参照すると、PCB10と、その上に位置する電子部品(例えば、集積回路又は「チップ」)12との間に従来の電気接続が示されている。電気接続16は、PCB10のそれぞれの電気コネクタ(例えば、コンタクトパッド)14と電子部品12との間で行われ、典型的には細いワイヤの形態である。
図1Aは、この配置の側面図を表し、
図1Bはその上面図を示している。
図1C及び1Dは、このような接続の実例を示す写真画像である。
【0026】
ここで、
図4Aを参照して、3D電子デバイスを製作するための本方法の一実施形態について説明する。1又は2以上の電子部品12をその上に置いたPCB10(図(i))は、作業領域内のステージ(図示せず、一例として
図2を参照)の上に配置することができる。場合により、PCB10は、ステージ上に配置することができ、電子部品12はPCBをそのように配置した後にPCB10上に配置することができ、PCB10及び電子部品12の各々は、その上に印刷された又は貼り付けられたそれぞれのコネクタ14、例えば回路基板のトレース及びパッドなどを有する。通常、これらのコネクタは、それぞれのPCB10及び電子部品12の周縁部付近に位置するが、必ずしもそのように位置決めされる必要はない。また、コネクタは、PCB10及び電子部品12の表面から突出するように示されているが、実際には、それらの表面とほぼ同一平面上に印刷されることができる(例えば、
図1C参照)。さらに、電子部品12は、キャリア、ソケット、又は他の実装パッケージに位置決めされ、コネクタ14は、電子部品自体ではなく、そのパッケージに設置される場合がある。従って、本明細書で使用する電子部品という用語は、部品自体と共に、いずれかの実装パッケージも包含することが意図されている。
【0027】
LIFTプロセスを用いて(図(ii))、その後にPCBのコネクタと電子部品のコネクタとの間で電子接続が形成される領域において、液体支持材料18がPCB10に付与される。図示のように、これは、電子部品12の縁とPCB10のコネクタ14との間隙内となることが多い。支持材料18は、後続の電子接続を完全に支持するのに十分な量で付与する必要がある。図(ii)-(vii)に示すように、これは、液体支持材料の複数の層18、22、26(図(ii)、(iv)、(vi))を、上下に重ねて付与し、層の各付与後に硬化ステップ(図(iii)、(v)、(vii))を伴うことを意味することができる。硬化は、UV照明を用いて、随意的に熱(例えば、IRランプ、ヒータ、又は同様の装置による)を用いて行うことができ、固化した(又は少なくとも部分的に固化した)支持層20、24、28を形成する。支持材料の層20、24、28から構成される完成した固体支持構造は、電子部品のコネクタとPCBのコネクタとの電気接続用の完全に支持された経路を提供することになる。
【0028】
図2は、液体支持材料を付与するために使用できるLIFTプロセスの例を示す。同じプロセスを用いて、電子部品のコネクタとPCBのコネクタとの電気接続部を印刷することができるので、一般的な印刷材料30について言及する。印刷材料30は、適宜、支持材料又は電気接続を形成するために使用される金属又は他の物質とすることができることを理解されたい。
【0029】
LIFTプロセスは、透明基板32の裏面(入射レーザビーム36の観点から)に担持された(例えば、薄いフォイル又はフィルムの形態で)印刷材料30の液滴40を作り出して放出するものである。印刷材料30のフォイル/フィルムと透明基板32が一緒になって、ドナー基板50を形成する。液滴を形成するために、レーザビーム36は、光学スキャナ装置38によってドナー基板50の上を、例えばラスタスキャン又は他のパターンで走査され、その上に担持された透明基板32を介して、印刷材料30のフォイル/フィルムの小領域に焦点が合わせられる。レーザは、パルス方式で動作させることが好ましく、この文脈での走査は、アクセプタ基板(例えば、PCB10)上の小領域をカバーするために、典型的にはレーザビーム36の偏向(例えば、ミラー、プリズム、及び/又は光学スキャナ組立体38の他の光学要素を用いて)を含み、また、より広い軌跡をカバーするために、ドナー基板の及び/又は、例えば、光学組立体38に対してPCBを(又はその逆も同様)2次元又は3次元で移動させることのできるステージ34によるアクセプタ基板の並進を含むことができる。
【0030】
走査時、印刷材料30のフォイル/フィルム上でのレーザビーム36のパルス動作は、局所的な加熱をもたらし、これにより、印刷材料30の液滴40が噴出する。液滴40のサイズは、一般に、印刷材料のフォイル/フィルム30に入射するレーザビーム36の断面積に比例する。このように放出された液滴40は、間隙42(典型的には数ミクロンから数ミリメートルのオーダー)を横切って進み、PCB10などの受入れ側基板に合体する。印刷材料30の液滴の凝集により、アクセプタ基板(PCB10)上の所定の場所が所望の高さまで充填される。
【0031】
図3は、支持材料の層18、22、26の硬化プロセスの一例を示す。LIFTプロセスに使用されるのと同じ作業領域又は異なる作業領域において、支持材料の層は、UV照明システム光源44からのUV放射46に曝される。UV照明システムは、複数のUV発光体、例えばUV発光ダイオード(LED)を含むことができ、これらは、支持材料18、22、26に含まれる光開始剤が感応する1又は2以上の波長の放射線を放射する。UV放射に曝されると、これらの光開始剤は、支持材料のモノマ及び/又はオリゴマと反応する種を生成して、その中でポリマ鎖の成長を開始させ、固化をもたらす。
【0032】
支持層を形成するステップの考察に戻ると、支持材料の層、20、24、28から構成される固体支持構造が、ひとたび所望の高さ及び位置に存在すれば(
図4A図(vii))、結果として得られる支持構造52は、
図4B及び4Cに示すものと類似することになる。これらの図に示すように、支持構造52は、側面形状が階段に似た、完全に支持された経路を形成し(
図4B参照)、その上に電子部品のコネクタとPCBのコネクタとの電気接続部を印刷することができる。
【0033】
ここで
図5を参照すると、液体支持材料が固体(又は少なくとも半固体)形態に硬化すると、1又は2以上の電子部品12のコネクタをPCB10上のコネクタのそれぞれのものに電気接続するために、導電性材料54の層がLIFTによって固体(又は半固体)支持材料の上に印刷される(図(i))。上述のように、支持材料層に使用されたのと同じLIFTプロセスを用いて、導電性材料54の層を印刷することができる。続いて、導電性材料の層を乾燥させて(図(ii))(例えば、加熱により)、乾燥した導電性材料の層56を形成し、レーザビームを用いて導電層内の金属粒子を焼結させ(図(iii))、最終的な導電層58を形成することができる。これにより、非常に高導電性の接続が得られる。
図6A及び6Bは、完成した導電性材料の層58を示している。
図6Bに示すように、導電性材料の層は、支持構造52の全体に亘って印刷される必要はなく、代わりに、PCB10及び電気部品12のそれぞれのコネクタ14の間に導電性ワイヤとして存在するだけでよい。
【0034】
図6C及び6Dに示すように、同じ手順を複数回使用して、複数のワイヤを備えた非常に複雑な構造を作り出すことができる。例えば、支持構造を作り出した後でその上に導電性材料の層を印刷する上記のプロセスを多段階式手順で適用して、電気部品(複数可)12及びPCB10の付加的なそれぞれのコネクタ14’を電気接続することができる。図示の例では、電気部品(複数可)12及びPCB10の第2組のコネクタ14’は、導電層58の最上部を覆って付与される第2の支持構造60の上に印刷される第2組の導電体62によって電気接続される。第2の支持構造60は、
1又は2以上の支持材料層を作り出すために、上述した支持構造52と同じやり方で
(例えば、LIFTを用いて)付与することができ、導電要素62は、導電要素58と同じやり方で第2の支持構造60上に印刷することができる。必要に応じて、第2の支持構造及び第2の導電要素は、電気部品12全体又はその一部だけに対して構築することができる。当然のことながら、必要に応じて電気部品(複数可)12とPCB10との電気接続を完成させるために、さらなる支持構造及び導電要素を上述の方法で構築することができる。
【0035】
最終的な電子構造を保護するために、
図7A(側面図)及び7B(上面図)に示すように、構造の上にトップコート又は封止層を付与することができる。ここでも、上述のようなLIFTプロセスを用いて、封止材のトップコート64も印刷できるが、他の多くの公知の工業材料及びプロセスを用いることもできる。トップコート64用の材料の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5436083号に記載されており、塗布用の代替的な工業プロセスは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2015/192146号、特開平1-221466号、米国公開第2013/0176700号に記載されている。
【0036】
このように、3D電子デバイスを製作する方法について説明してきた。様々な実施形態において、3次元(3D)電子デバイスを製作する方法は、1又は2以上のコネクタと1又は2以上の電子部品とをその上に有するプリント回路基板(PCB)に、レーザ誘起前方転写法(LIFT)プロセスによって液体支持材料を付与するステップであって、PCBが作業領域内のステージ上にあるステップと、冷却及び/又は紫外線(UV)放射への曝露によって、液体支持材料を固体形態に硬化させるステップと、1又は2以上の電子部品をPCB上のコネクタのそれぞれに電気接続するために、LIFTによって固体支持材料上に導電性材料の層を印刷し、その後、熱によって導電性材料の層を乾燥させるステップと、レーザビームを用いて導電層内の金属粒子を焼結するステップと、を含む。本方法において、液体支持材料は、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、或いはアクリル化モノマ又はオリゴマとすることができ、液体支持材料は、例えば、液体支持材料の0.1~10重量%の濃度で、光開始剤を含むことができる。一部の実施形態では、光開始剤はカチオン性光開始剤とすることができ、例えば、液体支持材料の0.05~3重量%の濃度である。上記実施形態のいずれにおいても、導電性材料は、純金属、金属合金、又は高融点金属とすることができ、LIFTによって、フィルム上の金属粒子の形態又は金属ペーストの形態で印刷することができる。上記実施形態のいずれにおいても、焼結の前に、印刷された導電性材料の層を、UV放射を用いて硬化させることができる。上記実施形態のいずれにおいても、1又は2以上のコネクタ、導電層、及び1又は2以上の電子部品を封止材内に封止することができる。
【符号の説明】
【0037】
10:PCB
12:電子部品/チップ
14:電気コネクタ
18:液体支持材料
20:固化した支持層
22:液体支持材料
24:固化した支持層
26:液体支持材料
28:固化した支持層