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特許7536794入射放射線の固体デジタル検出器を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】入射放射線の固体デジタル検出器を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20240813BHJP
   G01T 1/164 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G01T1/20 D
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/164 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021568019
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2020063244
(87)【国際公開番号】W WO2020229499
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】1904952
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515004577
【氏名又は名称】トリクセル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベランジェ,ミュリエル
(72)【発明者】
【氏名】ゼフニニ,モハメド
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013572(JP,A)
【文献】特開2012-052965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/167-7/12
G01T 1/164
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光センサ(11)及びシンチレータ(13)を含む入射放射線の固体デジタル検出器(10)を製造する方法であって、前記方法は、
a.前記入射放射線を前記センサ(11)が敏感な第2の放射線に変換することができるシンチレーション物質(14)を第1の基板(12)から前記第1の基板(12)上に成長させる工程(100)であって、前記シンチレーション物質(14)は、前記入射放射線の伝搬の方向に上流側前面(15)(前記入射放射線が通過する)と前記上流側前面(15)に対向する、前記入射放射線の伝搬の方向に下流側前面(16)とを含む、工程(100);
b.前記シンチレーション物質(14)の前記下流側前面(16)において前記シンチレータ(13)を保持する工程(101);
c.前記第1の基板(12)を前記シンチレータ(13)から分離する工程(102)
を含み、
前記第1の基板(12)を前記シンチレータ(13)から分離する工程(102)は、前記シンチレータ(13)の第1の領域(25)を占めるシンチレーション物質の第1の部分を除去する工程を含み、シンチレーション物質の前記第1の部分が所定名目厚さ(27)未満の厚さ(26)を有し、
前記第1の領域がシンチレータの端にある、ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
反射器(17)を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)へ貼り付ける工程(103)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1の基板(12)を前記シンチレータ(13)から分離する工程(102)は、剥離することにより、又は前記シンチレータ(13)と前記第1の基板(12)との間の固着を弱めることができる手段を使用することにより行われる、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
反射器(17)を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)へ貼り付ける工程(103)を含む、請求項2又は3に記載の製造方法であって、
前記反射器(17)を前記シンチレータ(13)へ貼り付ける工程(103)は、
a.前記反射器(17)を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)上に置く工程;又は
b.所定圧力により前記反射器(17)を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)上へ押し付ける工程;又は
c.前記反射器(17)を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)へ固着する工程;又は
d.反射器として働く薄膜を蒸着するための技術を実施する工程を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
前記シンチレータ(13)は以前に画定されたエリアへ適用されるように意図されていることと、前記第1の基板(12)を前記シンチレータ(13)から分離する工程(102)はその前記下流側前面(16)が前記以前に画定されたエリアの外に位置する第2の領域(28)を前記シンチレータ(13)から除去する工程を含むこととを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記シンチレータ(13)を前記シンチレーション物質(14)の下流側前面(16)において保持する工程(101)は、
a.前記シンチレータ(13)を前記感光センサ(11)へ固着する工程;又は
b.真空吸引工程;又は
c.機械保持又は静電相互作用工程を含む、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
反射器(17)を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)へ貼り付ける工程(103)を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の製造方法であって、前記反射器(17)は200マイクロメートル未満の厚さを有することを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
非反射吸収表面を前記上流側前面(15)において前記シンチレータ(13)へ貼り付ける工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、X線撮像器の分野であり、具体的には、シンチレータによるX線の可視光への変換の分野である。本発明は、放射線変換器に関連付けられた感光センサを含むX線放射の固体デジタル検出器のための転写式(transferred)シンチレータを用意する方法に関する。このタイプの検出器の応用分野は、特に放射線学、放射線写真術、蛍光透視法、マンモグラフィだけでなく無破壊試験でもある。
【背景技術】
【0002】
感光センサは通常、マトリクスで用意される固体感光素子で作製される。感光素子は半導体材料(通常はCCD又はCMOSセンサのための単結晶シリコン、多結晶シリコン、又は非晶質シリコン)で作製される。感光素子は少なくとも1つのフォトダイオード、フォトトランジスタ又はフォトレジスタを含む。これらの素子は、基板(通常はガラス、プラスチック(ポリマー)又は金属、又は別の合成材料(炭素、合金、セラミックなど)又はシリコンで作られたキャリアである)上に配置される又は前記基板内へ集積化される。
【0003】
これらの素子は通常、X線又はガンマ線などの極短波長放射に対し直接的感受性が無い又はほぼ無い。この理由のため、感光センサは、シンチレーション物質の層を含む放射線変換器と組み合わせられる。この物質は、このような放射線により励起されると、センサが敏感である長い波長の放射線(例えば可視光又は半可視光)を放射する特性を有する。放射線変換器により放射された光はセンサの感光素子を照射し、この感光素子は光電変換を行いそして好適な回路により使用可能な電気信号を供給する。放射線変換器は本明細書の残り部分ではシンチレータと呼ばれる。
【0004】
シンチレータは、X線を光に変換するその特性のために使用され得るガドリニウムオキシ硫化物(GADOX又はGOS:gadolinium oxysulfide)、又はタリウムドープ沃化セシウム(CsI:Tl:thallium-doped cesium iodide)、又は任意の他の同様な材料で作製され得る。CsI:Tlシンチレータの場合、CsI:Tlがフォトダイオードアレイ上へ直接蒸着され得る又は蒸着後に転写され得る。
【0005】
転写式シンチレータバージョンでは、シンチレータ(例えばCsI:Tl)は、基板上へ蒸着され、次にフォトダイオードアレイへ固着される。基板は、真空蒸着により行われるシンチレータ製造方法に適合可能でなければならない。これは、取り扱いを可能にする機械的剛性、真空耐性、温度などの観点での制約を課する。したがって、基板の選択はシンチレータを製造するための制約により制限される。フォトダイオードアレイへ固着した後、この基板は検出器の不可欠部分を形成する。この基板は入射X線の一部吸収を行うが、これは望ましくない。この基板は、シンチレータにより発射される光の一部を反射し、したがって検出器の性能(感度、分解能)に影響を及ぼす。この基板は検出器の全重量に寄与する。しかし、ポータブル用途にとっては重量を可能な限り低く維持することが望ましい。最後に、基板はフォトダイオードアレイとシンチレータとの間の熱膨脹差を生じ、これは(保管中及び動作中の両方の)温度の観点での検出器の使用を制限する。
【0006】
したがって、シンチレータ基板は多くの異なる機能(シンチレータを形成するシンチレーション物質の成長のための基板の機能及び検出器内の反射器の機能)を果たす。これらの機能は両立することが困難な様々な要件を有する。例えば、低X線吸収又は低重量のための要件は容易に、選択をポリマー又は薄膜の方向へ向けるだろう。しかし、ポリマーは成長基板の機能に好適でない低熱抵抗を有し、薄膜の機械的強度はシンチレータが取り扱われることを可能にするにはあまりに低い。したがって基板と反射器の両方の機能のためにうまく働く材料を発見することは難しい。
【0007】
2つの主要タイプの製造が、シンチレータとフォトダイオードアレイとの関連付け(直接蒸着及び転写式シンチレータ)のために使用される。
【0008】
タリウムドープ沃化セシウム(CsI:Tl)シンチレータはフォトダイオードアレイ上へ直接蒸着され得、この場合、基板に代わるのはガラス板である。制限された熱抵抗を有する基板を保護するために、成長速度は低くなければならなく、これは長い製造時間に至る。加えて、蒸着又は後処理中に欠陥が発生した場合、パネル全体が除去される。フォトダイオードアレイは高価であるので除去費用は高い。
【0009】
蒸着中、基板に近いCsI:Tlの初期層はニードルとして劣悪に構造化される。直接蒸着により、この層は、フォトダイオードアレイの側面に配置され、そして追加反射を生じるので検出器の性能を制限する。しかし、この構成では、反射器はCsIニードル上に配置される又はニードルへ固着され、そしてその選択はシンチレータを製造するための制約により影響を受けない。
【0010】
転写式シンチレータ解決策はシンチレータをフォトダイオードアレイ上に生成するための制約を課さないが、反射器(これまた基板である)はシンチレータを製造するための制約を満たさなければならない。最も一般的な基板はアルミニウム及び黒鉛である。
【0011】
アルミニウムは良好な熱抵抗を有するがその密度は高く、このことはかなり高い重量及びX線吸収を生じる。使用されるシートは、CsI蒸着過程中の及びフォトダイオードアレイに連結する際の取り扱いを可能にするために比較的厚く、これは検出器の全重量に好都合ではない。その反射率は高いが100%に近くない。その熱膨張率はフォトダイオードアレイとは全く異なり、このことは、熱サイクル中に、又は検出器の温度が使用時に変化すれば、故障に至り得る。
【0012】
黒鉛基板は低X線吸収と共に良好な熱抵抗を有する。その欠点は低感度に至る劣悪な反射率である。薄い厚さを有する黒鉛基板は、利用可能でなく、そしてその環境を汚染する傾向があり、接触の際に炭素の薄層を残す。
【0013】
米国特許第8779364号明細書は、シンチレータを第1の基板上に成長させる工程、第2の基板をニードル側に取り付ける工程、第1の基板を分離する工程、及び第1の基板の基部においてシンチレータの成長の第1の層を当初除去する工程を有するシンチレータパネル製造方法について説明する。この方法は、有利な光学特性を有しないシンチレータの成長の初期層を機械的作用(機械研磨又はレーザー切断など)により除去することを目的しており、第1の基板の除去前に第2の基板の貼り付けを必要とする。この第2の基板はシンチレータの保護基板として働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第8779364号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、シンチレータ蒸着基板の機能と反射器の機能とを分離する入射放射線の固体デジタル検出器を製造する方法を提案することにより上記問題のすべて又はいくつかを克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのために、本発明は入射放射線の固体デジタル検出器であって感光センサ及び放射線変換器を含む固体デジタル検出器を製造する方法に関し、本方法は、第1の基板上に第1の基板からシンチレーション物質を成長させる工程であって、シンチレーション物質は、入射放射線を、センサが敏感な第2の放射線へ変換することができ、シンチレーション物質は入射放射線の伝搬の方向に上流側前面(入射放射線が通過する)と上流側前面に対向する、入射放射線の伝搬の方向に下流側前面とを含む、工程;シンチレーション物質の下流側前面においてシンチレータを保持する工程;第1の基板をシンチレータから分離する工程を含む。
【0017】
本発明による製造方法は反射器を上流側前面のシンチレータへ貼り付ける工程を含み得る。
【0018】
一実施形態によると、第1の基板をシンチレータから分離する工程は、剥離することにより又はシンチレータと第1の基板との固着を弱めることができる手段を使用することにより行われる。
【0019】
有利には、反射器をシンチレータへ貼り付ける工程は、反射器を上流側前面のシンチレータ上に置く工程、又は反射器を所定圧力により上流側前面のシンチレータ上へ押し付ける工程、又は反射器を上流側前面のシンチレータへ固着する工程、又は反射器として働く薄膜を蒸着するための技術を実施する工程を含む。
【0020】
一実施形態によると、第1の基板をシンチレータから分離する工程は、シンチレータから所定名目厚さ未満の厚さを有する第1の領域を除去する工程を含み得る。
【0021】
シンチレータは以前に画定されたエリアへ適用されるように意図されているので、第1の基板をシンチレータから分離する工程は第2の領域(その下流側前面は以前に画定されたエリアの外に位置する)をシンチレータから除去する工程を含み得る。
【0022】
シンチレーション物質の下流側前面においてシンチレータを保持する工程は、シンチレータを感光センサへ固着する工程;又は真空吸引の工程;又は機械保持の工程、又は静電相互作用の工程を含み得る。
【0023】
有利には、反射器は200マイクロメートル未満、好適には100ナノメートル未満の厚さを有する。
【0024】
一実施形態によると、第1の基板は反射器の代わりに非反射吸収表面により置換され得る。
【0025】
本発明はまた、本発明による製造方法を使用して取得される感光センサ及びシンチレータを含む入射放射線の固体デジタル検出器に関する。
【0026】
本発明は、添付図面により例示され一例として与えられる一実施形態の詳細な説明を読むことによりさらに良く理解され、別の利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による感光センサを含む入射放射線の固体デジタル検出器を製造する方法の工程を概略的に示す。
図2】本発明による方法の一変形形態の工程を概略的に示す。
図3】本発明によるシンチレータの少なくとも一部の除去を伴う方法の別の変形形態の工程を概略的に示す。
図4】本発明による製造方法を使用して取得される検出器を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これらの図面では、明確化のために、スケールは観測されない。さらに、同じ素子は様々な図面において同じ参照符号を有することになる。
【0029】
図1図3は本発明によるデジタル検出器を製造する方法の工程を示す。次に、工程の参照のために、関連工程に従って検出器を構成する素子の状態は本発明による方法のより良い可視化を可能にするために概略的に示される。
【0030】
図1は本発明による感光センサを含む入射放射線の固体デジタル検出器を製造する方法の工程を概略的に示す。感光センサ11(図1では可視でない)を含む入射放射線の固体デジタル検出器10を製造する方法は、第1の基板12からニードル21の形式で延伸するシンチレーション物質14を含むシンチレータ13(放射線変換器とも呼ばれる)であって入射放射線をセンサ11が敏感な第2の放射線に変換することができるシンチレータ13を第1の基板12上に成長させる工程100を含む。シンチレーション物質14は、入射放射線の伝搬の方向に上流側前面15(入射放射線が通過する)と上流側前面15に対向する、入射放射線の伝搬の方向に下流側前面16とを含む。上流側前面15及び下流側前面16は平坦であってもよいが、シンチレーション物質14の形状に依存して不規則であってもよい。したがって、シンチレータ13は、この第1の基板12が反射器としてうまく機能しなくても、成長に好適な第1の基板12上へ蒸着され得る。最も一般的シンチレータがCsI:Tlであったとしても、任意のシンチレーション物質(例えばCsI:Na、CsBr、GdO:Tb、ペロブスカイトなど)が本発明を使用し得る。シンチレータ13は裸であってもよいし有機又は無機保護層により被覆されてもよい。シンチレーション物質14は有利にはキャリア(基板とも呼ばれる)上に成長される細いニードルの形式である。これらのニードルは、このキャリアに対しほぼ垂直であり、そしてセンサの方向へ発射される光を部分的に制限する。しかし、本発明はニードル21が第1の基板12に対し垂直でない場合に同様に適用される。本発明はシンチレータがニードルの形式でない場合へも適用される。
【0031】
シンチレータ13を第1の基板12上に成長させる工程100は、蒸着方法を介し、昇華を介し、プラズマ蒸着を介し、スパッターリングを介し、又は溶剤の蒸発による液媒中の成長を介し、又は任意の手段を介し行われ得る。シンチレータ13は裸であってもよいし有機又は無機保護層により保護されてもよい。
【0032】
本発明による方法は、シンチレータ13をシンチレーション物質14の下流側前面16に保持する工程101を含む。換言すれば、シンチレータは、第1の基板12に対向する側に、ニードル21の頭の側に、すなわちニードル21の自由端の側に保持される。シンチレータ13をシンチレーション物質14の下流側前面16に保持する工程101はシンチレータ13を感光センサ11へ固着する工程を含み得る。又はそうでなければ、シンチレータ13をシンチレーション物質14の下流側前面16に保持する工程101は、真空吸引又は任意の他の好適な手段(機械的、静電気的手段など)の工程を含み得る。図1の素子22は、保持工程101を行うために使用されるシンチレータ13を保持するための第1の素子を表す。
【0033】
本発明による方法は、第1の基板12をシンチレータ13から分離する工程102を含む。第1の基板12をシンチレータ13から分離する工程102は、剥離することにより、又はそうでなければ第1の基板12を除去することを視野に入れてシンチレータ13と第1の基板12との間の固着を弱めることを目的とする任意の他の手段により、化学的又は機械的方法を介し、機械加工することにより、又は吹き付け、吸引又は牽引を介し中間層を除去することにより行われ得るが、剥離が、実施するために単純明快な方法であるので好ましい。剥離工程中、保持すべきシンチレータ13へ印加される力は剥離力より大きいということが重要である。したがって、シンチレータ材料14のその第1の基板12への固着を最適化するための注意が払われることになり、固着は、シンチレータ13が適所に保持されるために十分でなければならないがその除去を可能にするには十分に弱い。
【0034】
本発明による方法は、反射器17を上流側前面15においてシンチレータ13へ貼り付ける工程103を含み得る。反射器17は賢明に選択される。反射器17はシンチレータ13を製造するための制約を満たす必要が無いので、軽量で、薄く、且つ比較的X線非吸収性であるということは容易かもしれない。幅広い選択肢の材料が利用可能である。
【0035】
反射器17は金属、無機、又は有機材料であり得る。反射器17はまた、CsI又は合成物(複合型の)などにより反射素子の腐食を防止するために多層化され得る。
【0036】
反射器17は必ずしも特定パーツではなく、そしてまた、検出器内に既に存在する他の部分(例えば検出器の入口窓又はパッケージなど)により形成され得る。
【0037】
反射器17を貼り付けることは厳密には必要でない。信号の邪魔になるものを多く有することを求めなければ、シンチレータ13を裸のまま残しておくことも可能であるが、反射器17の貼り付けはフォトダイオードアレイにより受信される光の量を最大化することを可能にする。感度を犠牲にして空間分解能を最適化するために吸収材を使用することも選択され得る。
【0038】
反射器17をシンチレータ13へ貼り付ける工程103は、反射器17を上流側前面15におけるシンチレータ13上に置く工程を含み得る。反射器17をシンチレータ13へ貼り付ける工程103は、反射器17を所定圧力により上流側前面15においてシンチレータ13上へ押し付ける工程を含み得る。そうでなければ、反射器17をシンチレータ13へ貼り付ける工程103は、反射器17を上流側前面15においてシンチレータ13へ固着する工程を含み得る。反射器17は、他の蒸着方法(スクリーン印刷、熱固着、蒸着、スパッターリング、又は薄層蒸着方法を使用することによる金属又はポリマーの層の蒸着)によりシンチレータに関連付けられ得る。
【0039】
本発明は反射器17をシンチレータ13上に蒸着することが望ましくない場合にも適用されるということに留意することが重要である。この場合、シンチレータ13に到達するX線の量は最大であるが、シンチレータ13により発射される光の一部は逃げ得る。反射機能は検出器の特定パーツにより必ずしも提供されない。光は入口窓又はカバー又は検出器の任意の他の部分により反射され得る。感度を犠牲にして空間分解能を促進するために反射器の代わりに吸収材をシンチレータ上に置くことを選択することも可能である。反射器17のタイプの選択は検出器の使用目的により導かれる。
【0040】
最後に、本発明による方法は、固着又は加圧することによりパネルへ連結するためにシンチレータ13を解放する工程104を含み得る。
【0041】
本発明の原理は、直接蒸着に付随する欠点により影響されないように転写式シンチレータ解決策における成長基板の機能と反射器の機能との分離に基づく。反射器17(又は吸収体)は、シンチレータ13を製造するための制約(真空、機械的、熱抵抗など)のすべてと無関係に自由に選択される。したがって、ポリマーを含む幅広い選択肢の材料を使用することが可能である。反射器17は、シンチレーション物質14のニードル21を保持する機械的機能を有しないので、非常に薄いかもしれなくそして非常に低い剛性を有し得る。例えば、反射器17は200マイクロメートル未満又はさらには100ナノメートル未満の厚さを有し得る。したがって、反射器17はポータブル用途のために軽量である可能性があり、そして低X線吸収を呈示する可能性がある。その膨張率とフォトダイオードアレイの膨張率とを整合するために、非常に薄い金属化ガラスが考えられ得る一方で、この脆弱な材料は第1の成長基板12の機能と両立するのが困難である。第1の成長基板12はまた、検出器内に最早存在しなくそして反射性且つ軽量である必要が最早無い又はX線を送信する必要が無いので単純化され得る。
【0042】
図2は本発明による方法の一変形形態の工程を概略的に示す。この変形形態では、シンチレータ13を第1の基板12上に成長させる工程100後、シンチレータ13をシンチレーション物質14の下流側前面16に保持する工程101及び第1の基板12のシンチレータ13からの分離の工程102が発生する。これらの工程は上に説明した工程と同様である。次に、本方法は、シンチレータ13及び第1の素子22からなるアセンブリを保持する工程105を含み得る。保持工程105は工程101のように様々なやり方で行われ得る。素子23は、保持工程105の実施を表す第2の保持素子を表す。次に、本発明による方法は、この変形形態では、シンチレータ13を第1の素子22から解放する工程104を含む。換言すれば、第2の素子23により保持されるシンチレータ13は第1の素子22から分離される。この変形形態では、シンチレータ13を感光センサ11に貼り付ける工程106が続く。この貼り付け工程106は、例えば接着剤24又は他の固体又は液体接着剤を使用することによりフォトダイオードアレイへ固着することにより行われる。この接着剤は基板又はシンチレータ13上に蒸着され得る。フォトダイオードアレイは、強化材へ固着される又は剛性キャリア上に機械的に保持される剛性板又は可撓板である。最後に、分離工程102は第2の素子23を分離するために発生する。本方法のこの変形形態は、反射器17をシンチレータへ速やかに固着することが望ましくない場合に有利である。したがって、第2の保持素子23(静電、真空、又は他の素子)はシンチレータ13を成長開始側に保持するために使用され、シンチレータ13をフォトダイオードアレイへ固着する前に又はそうでなければ固着又は加圧することにより反射器17へ貼り付ける前にニードルヘッド21を解放する。
【0043】
シンチレータ13を保持する工程中、ニードル21を保持する他の手段が考えられる。但し、ニードルヘッド21をそれらの基板へ固着する力は、第1の基板12の除去が可能であるようにニードル21を第1の成長基板12へ固着する力より大きい。ニードル21を保持する他の手段の観点では、静電相互作用により保持すること並びにノズルを介し又は圧力分配器を介し吸着することにより真空吸引システムにより保持することが言及され得る(非網羅的リスト内で)。次に、シンチレータ13はそのニードルヘッド21により保持素子上に置かれ、吸引又は相互作用は対応装置により実施され、そして第1の基板12は剥離される又は別の手段を使用して除去される。このとき取得されるものは、シンチレータ13のニードル21が十分に互いに連結されないので、扱うのが難しい基板の無いシンチレータ13である。次に、反射器17は、取り扱い可能シンチレータ13を取得するためにニードル21の成長開始側(すなわち上流側前面15)に貼り付けられる必要がある。次に、この新しいシンチレータ13は、フォトダイオードアレイへ固着されてもよいし、その上に単に置かれてもよいし、その上へ押し付けられてもよい。
【0044】
図3は本発明によるシンチレータの少なくとも一部の除去を伴う方法の別の変形形態の工程を概略的に示す。この変形形態では、第1の基板12をシンチレータ13から分離する工程102は、シンチレータ13から所定名目厚さ27未満の厚さ26を有する第1の領域25を除去する工程を含む。シンチレータ13は成長により生成され、この工程では、第1の基板12がフレームにより保持される。シンチレータ13の端では、シンチレーション物質14の厚さは一定勾配で零からその定格値27まで増加する。幅数ミリメートルであるこの領域25(設立領域と呼ばれる)は、検出器の端と第1の画素との間に小さな距離を維持することが望まれる場合は厄介かもしれない。保持工程101では、この領域25は保持されない。例えば、固着の場合、この領域25は接着剤により接触されない。この領域25はその除去(工程102)中第1の基板12上に残り、したがってパネル上に最早存在しない。本発明は、シンチレータ13がフレーム無しに保持されるので又は設立領域25が既に除去されたのでのいずれかのために、設立領域25を有しないシンチレータ13の場合に依然として適用可能である。
【0045】
第1の基板12をシンチレータ13から分離する工程102は第2の領域28をシンチレータ13から除去する工程を含み得る。シンチレータ13は、以前に画定されたエリアへ適用されるように意図されている。シンチレータ13の第2の領域28は、その下流側前面16が以前に画定されたエリアの外に位置するシンチレータ13の領域である。換言すれば、シンチレータ13の一形式はセンサの所定エリアを覆うことが望ましく、そしてこの形式の外側のシンチレータ13のすべての部分が除去される。
【0046】
この解決策は、第1の成長基板12をシンチレータ13から除去すること及び第1の成長基板12を反射器17と置換することを可能にし、これは検出器にとってより有利である。これは、以下の無数の利点を生じる:第1の成長基板12より高い反射係数を有する材料が使用されれば検出器の感度の増加、薄く且つ軽量な材料の使用により検出器の重量を軽くすること、より良いDQE(検出量子効率(detective quantum efficiency))を生じる少ないX線吸収、反射器の膨張率とフォトダイオードアレイの膨張率とを整合することによる検出器のより良い熱抵抗。
【0047】
新しい反射器17の光学特性は検出器のニーズへ適応化され得、そして他の機能(電気的機能、光学特性の変調など)が反射器17へ加えられ得る。第1の成長基板12はまた、検出器の制約を満たす必要が最早無いので単純化され得る。
【0048】
したがって、本発明は、転写式シンチレータ13を含むX線検出器内の成長基板12の機能と反射器17の機能とを分離することにその本質がある。成長基板12の機能は、剛性材料が扱い可能であり且つシンチレータ材料の蒸着と適合性があることを必要とする。検出器内の反射器17の機能は、光を反射するだけでなくまた一般的には基板12の機能と相容れない低X線吸収、軽量、及びフォトダイオードアレイの膨張率に整合する膨張率も呈示する材料を必要とする。従来の転写式シンチレータはこれら2つの機能に必要とされる特性間のトレードオフに基づく。本発明において提案される解決策は、このトレードオフを回避すること及び2つの機能に別々に好適な材料を選択することを可能にする。
【0049】
本発明の別の利点は第1の基板12の除去中の固着欠陥の除去である。具体的には、シンチレータ13がその第1の基板12によりフォトダイオードアレイへ固着される場合、基板12の剛性とシンチレータ13の厚さの非均質性とが固着欠陥を生じ得る。第1の基板12の除去後、CsIニードルは、最小圧力が印加されると直ちに固着材料内に降下し戻り、固着欠陥は大いに低減される又は消える。この利点は可撓又は有機基板又は可撓キャリア上に生成されるフォトダイオードアレイにも適用される。シンチレータ13の固着中に印加される圧力は応力を生じ可撓基板を変形し得るが、この変形は基板12が除去されると直ちに消える。
【0050】
シンチレータ13の除去は基板とシンチレータ13との間の差分膨張の問題に対する解決策も提供し得る。このとき、第1の基板12の機能を行う必要が最早無いので反射器17の選択に関する制約は少なく、したがって、その膨張率が基板の膨張率に整合する反射器17を選択するのはより簡単である。新しい反射器17は、蒸着されたシンチレータ材料と化学的に反応しないように選択され得る。その光学特性は、その反射係数を調整することにより又は吸収材を選択することにより、検出器の所望性能に従って自由に最適化され得る。新しい機能がまた検出器のニーズに応じて反射器へ追加され得る。
【0051】
図4は本発明による製造方法を使用することにより取得された検出器10を概略的に示す。入射放射線の固体デジタル検出器10は、上述の製造方法を使用して取得される感光センサ11及びシンチレータ13を含む。
【0052】
本発明による製造方法は、成長基板の機能と反射器の機能とを分離することにより、剛性且つ耐熱性成長基板の利点と軽量且つX線トランスペアレント反射器の利点とを組み合わせることを可能にする。
【0053】
シンチレータは、成長基板又は任意の他の好適な保持手段を除去するために、好適な接着剤内でそのニードルにより保持される。
【0054】
本発明による製造方法は、シンチレータ設立領域と所定形式の外側に在る任意の領域との分離の可能性を提供する。
【0055】
成長基板の剥離又は除去中の固着欠陥を削除することも可能である。
【0056】
反射器は、高剛性を必ずしも呈示しない又はシンチレータを製造するための制約を満たす必要が無い薄く且つ軽量な材料の中から全く自由に選択され得る。成長基板はまた、検出器の制約を考慮すること無く自由に選択され得る。
【0057】
反射器を賢明に選択することにより、本発明による製造方法は、反射器とフォトダイオードアレイとの間のいかなる差分膨張もない検出器を取得することを可能にする。
【0058】
最後に、他の可能性は、反射器無しに働くこと又は反射器として検出器内に存在するパーツを使用すること、感度を犠牲にして空間分解能を促進するために吸収材を検出器上に置くこと、成長基板がまた反射器である先行技術の方法を使用することでは達成可能でなかった新しい機能を反射器に追加することなどの方法のおかげで可能である。
図1
図2
図3
図4