(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】マルチコアファイバのコアへの多波長レーザビームのアライメント
(51)【国際特許分類】
A61F 9/008 20060101AFI20240813BHJP
A61F 9/011 20060101ALI20240813BHJP
A61B 18/22 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61F9/008 150
A61F9/008 120Z
A61F9/008 100
A61F9/011
A61B18/22
A61F9/008 110
A61F9/008 160
(21)【出願番号】P 2021571580
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 IB2020055032
(87)【国際公開番号】W WO2020245705
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-05-17
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ラッサラス
(72)【発明者】
【氏名】マーク ハリソン ファーリー
(72)【発明者】
【氏名】アリレザ ミルセパッシ
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド ティー.スミス
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-245833(JP,A)
【文献】特開2004-105565(JP,A)
【文献】特開2013-065002(JP,A)
【文献】米国特許第05892569(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00-11/30
A61B 18/20-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用レーザシステムであって、
第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、
第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源と、
前記第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)であって、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成される、第1のDOEと、
前記第2の波長に調整された第2のDOEであって、前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに前記回折角で回折させるように構成される、第2のDOEと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタ
であって、
前記1つ又は複数のビームスプリッタは、第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタとを備え、
前記第1のビームスプリッタは、前記1つ又は複数の第1の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成され、前記第2のビームスプリッタは、前記1つ又は複数の第2の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成される、1つ又は複数のビームスプリッタと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを、前記手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成された前記レンズであって、前記ケーブルの遠位端が、前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に投影するように構成される、前記レンズと、
前記レンズに照明ビームを放出するように構成された光源であって、前記照明ビームが、前記光源によって放出されると、前記第1のビームスプリッタ及び前記第2のビームスプリッタを通過し、
前記レンズが、前記照明ビームを前記境界面に集束させるように構成される、光源と、
を備える、手術用レーザシステム。
【請求項2】
手術用レーザシステムであって、
第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、
第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源と、
前記第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)であって、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成される、第1のDOEと、
前記第2の波長に調整された第2のDOEであって、前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに前記回折角で回折させるように構成される、第2のDOEと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタであって、
前記1つ又は複数のビームスプリッタが、第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタとを備え、
前記第1のビームスプリッタが、前記1つ又は複数の第1の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成され、前記第2のビームスプリッタが、前記1つ又は複数の第2の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成され
る、1つ又は複数のビームスプリッタと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを、前記手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成された前記レンズであって、前記ケーブルの遠位端が、前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に投影するように構成される、前記レンズと、
を備え、
前記第2のビームスプリッタによって反射されると、前記1つ又は複数の第2の回折ビームが、前記レンズに到達する前に前記第1のビームスプリッタを通過する、手術用レーザシステム。
【請求項3】
手術用レーザシステムであって、
第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、
第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源と、
前記第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)であって、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成される、第1のDOEと、
前記第2の波長に調整された第2のDOEであって、前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに前記回折角で回折させるように構成される、第2のDOEと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを、前記手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成された前記レンズであって、前記ケーブルの遠位端が、前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に投影するように構成される、前記レンズと
を備え、
前記ケーブルが、複数のコアを備えたマルチコア光ファイバケーブル(MCF)であり、
前記1つ又は複数の第1の回折ビームのうちの第1のビームが、前記複数のコアのうちの第1のコアに集束され、
前記1つ又は複数の第2の回折ビームのうちの第1のビームが、前記複数のコアのうちの前記第1のコアに集束され、
前記1つ又は複数の第1の回折ビームのうちの前記第1のビームの中心が、前記1つ又は複数の第2の回折ビームのうちの前記第1のビームの中心とアライメントされる、
手術用レーザシステム。
【請求項4】
前記1つ又は複数の第1の回折ビームのうちの前記第1のビームの前記中心と、前記1つ又は複数の第2の回折ビームのうちの前記第1のビームの前記中心とが、前記複数のコアのうちの前記第1のコアの中心とアライメントされる、
請求項3に記載の手術用レーザシステム。
【請求項5】
手術用レーザシステムであって、
第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、
第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源と、
前記第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)であって、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成される、第1のDOEと、
前記第2の波長に調整された第2のDOEであって、前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに前記回折角で回折させるように構成される、第2のDOEと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを、前記手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成された前記レンズであって、前記ケーブルの遠位端が、前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に投影するように構成される、前記レンズと
を備え、
前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを異なる数の回折ビームに回折させるようにそれぞれ構成された複数のセグメントを備え、
前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを異なる数の回折ビームに回折させるようにそれぞれ構成された複数のセグメントを備え、
前記第1のDOE及び前記第2のDOEがともに、キャリッジの位置を変えることにより前記第1のDOEと前記第2のDOEとの両方が対応するセグメントに設定されるように直線要素に取り付けられる、
手術用レーザシステム。
【請求項6】
手術用レーザシステムであって、
第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、
第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源と、
前記第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)であって、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成される、第1のDOEと、
前記第2の波長に調整された第2のDOEであって、前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに前記回折角で回折させるように構成される、第2のDOEと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを、前記手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成された前記レンズであって、前記ケーブルの遠位端が、前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に投影するように構成される、前記レンズと
を備え、
前記1つ又は複数のビームスプリッタが、単一のビームスプリッタを含み、
前記単一のビームスプリッタが、第1の狭帯域高磁気抵抗ノッチと第2の狭帯域高磁気抵抗ノッチとを備え、
前記第1の狭帯域高磁気抵抗ノッチが、前記1つ又は複数の第1の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成され、
前記第2の狭帯域高磁気抵抗ノッチが、前記1つ又は複数の第2の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成される、手術用レーザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、手術用レーザシステムに関し、より詳細には、多波長レーザビームをマルチコアファイバのコアにアライメントするように手術用レーザシステムを構成することに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な手術において、手術の補助及び/又は患者の身体の治療のためにレーザ光(例えば、照明ビーム、レーザ治療ビーム(「治療ビーム」)、及び/又はレーザ照準ビーム(「照準ビーム」))が使用される。例えば、レーザ光凝固術では、レーザプローブが治療ビームを伝播させて、網膜上でレーザ熱傷スポットにおいて血管を焼灼する。治療ビームは、通常、手術用レーザシステムから光ファイバケーブルを通して伝えられ、光ファイバケーブルは、近位側では手術用レーザシステムに接続するポートアダプタで終端し、遠位側では執刀医が操作するレーザプローブで終端する。本明細書では、構成要素の遠位端とは、患者の身体に近い方の端部を指し、構成要素の近位端とは、患者の身体から離れた方の端部、又は例えば手術用レーザシステムに近い方の端部を指すことに留意されたい。
【0003】
また、治療ビームは、レーザ熱傷スポットにおいて血管を焼灼することに加えて、網膜に存在して視覚をもたらす杆体及び錐体のいくつかを損傷させ、それにより視力に影響を与えることがある。視力は網膜の中心の黄斑において鋭敏であるため、執刀医は、網膜の周辺部においてレーザ熱傷スポットを発生させるようにレーザプローブを配置する。手術中、執刀医は、光凝固される網膜領域を照明するために、熱傷を起こさない照準ビームを用いてプローブを動作させる。低出力の赤色レーザダイオードが入手可能であるため、照準ビームは一般に低出力赤色レーザ光である。執刀医が、照準ビームで所望の網膜スポットを照明するようにレーザプローブを配置した後、執刀医は、フットペダル又は他の手段を介して治療ビームを作動させて、照明された領域(又は照明された領域を囲む領域)を治療ビームを用いて光凝固させる。網膜のスポットを焼いた後、執刀医は、照準光で新しいスポットを照明するためにプローブを再配置し、新しいスポットを光凝固させるために治療ビームを作動させ、プローブを再配置する、というようにして、網膜上に所望の数の熱傷したレーザスポットを分散させる。
【0004】
ある種のレーザプローブは、一度に複数のスポットを凝固又は熱傷させるため、光凝固はより迅速且つより効率的になり得る。例えば、光ファイバを介してそのようなレーザプローブの1つに結合される手術用レーザシステムは、単一のレーザビームを、レーザスポットパターンを呈する複数のレーザビームに分割するように構成され得る。このような例では、手術用レーザシステムは複数のレーザビームを光ケーブルに送り、光ケーブルは、対応するファイバパターンを呈する複数の光ファイバのアレイ又はマルチコアファイバを備え得る。
【0005】
糖尿病性網膜症の場合、汎網膜光凝固術(PRP)が実施されることがあり、PRPにおける必要なレーザ光凝固の回数は一般に多い。例えば、1,000~1,500個のスポットが一般に焼かれる。よって、レーザプローブが一度に複数のスポットを焼くことができるマルチスポットプローブであれば、(レーザ源の出力が十分であると仮定すると)光凝固療術がより迅速になることが容易に理解されよう。これに応じて、マルチスポット/マルチファイバのレーザプローブが開発されており、米国特許第8,951,244号明細書及び同第8,561,280号明細書、並びに米国特許出願第16/218,333号明細書に記載されている。また、網膜硝子体手術では、照準ビーム及び治療ビームに加えて、照明光又はビームを眼の中や網膜組織上に向けることも有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一般に、手術用レーザシステムに関し、より詳細には、多波長レーザビームをマルチコアファイバのコアにアライメントするように手術用レーザシステムを構成することに関する。
【0007】
本開示の特定の実施形態は、第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源とを備える手術用レーザシステムを提供する。手術用レーザシステムは、第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)と、第2の波長に調整された第2のDOEとを更に備え、第1のDOEが、第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成され、第2のDOEが、第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに同じ回折角で回折させるように構成される。手術用レーザシステムは、1つ又は複数の第1の回折ビーム及び1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタを更に備える。レンズは、1つ又は複数の第1の回折ビーム及び1つ又は複数の第2の回折ビームを、手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成され、ケーブルの遠位端が、1つ又は複数の第1の回折ビーム及び1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に放出するように構成される。
【0008】
以下の説明及び関連する図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の例示的な特徴を詳述する。
【0009】
添付の図面は、1つ又は複数の実施形態の特定の態様を示しており、それゆえ、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の特定の態様による、レーザビームのマルチスポットパターンを形成するための例示的なシステムを示す。
【
図2】
図2は、本開示の特定の態様による、レーザビームのマルチスポットパターンを形成するために使用される手術用レーザシステム及びその構成要素の一例を示す。
【
図3】
図3は、本開示の特定の態様による、手術用システムに結合されたケーブルの近位端の境界面への
図2の手術用レーザシステムの例示的な入力を示す。
【
図4】
図4は、本開示の特定の態様による、レーザビームのマルチスポットパターンを形成するために使用される、2つの回折光学素子(DOE)を備えた手術用レーザシステムの一例を示す。
【
図5】
図5は、本開示の特定の態様による、手術用システムに結合されたケーブルの近位端の境界面への
図4の手術用レーザシステムの例示的な入力を示す。
【
図6】
図6は、本開示の特定の態様による、3つのセグメントを有する例示的なDOEを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を促進するために、各図面に共通する同一の要素は、可能な限り同一の参照符号を使用して示している。一実施形態の要素及び特徴は、更なる説明を伴わずに他の実施形態に有益に組み込むことができるように企図されている。
【0012】
本開示の態様は、多波長レーザビームをマルチコアファイバのコアにアライメントするように構成された手術用レーザシステムを提供する。
【0013】
図1は、本発明の特定の実施形態による、網膜の表面にレーザビームのマルチスポットパターンを形成するための例示的なシステム100を示している。システム100は、眼科手術中に使用されるレーザビームを発生させるための1つ又は複数のレーザ源を有する手術用レーザシステム102を備える。例えば、手術用レーザシステム102内の第1のレーザ源は、第1の波長(例えば、約532ナノメートル(nm))で治療ビームを発生させ得る一方、第2のレーザ源は、第2の波長(例えば、約635nm)で照準ビームを発生させ得る。執刀医などのユーザが、所望の網膜スポットに照準ビームを放出するために手術用レーザシステム102を(例えば、フットスイッチ、音声コマンドなどを介して)トリガし得る。執刀医が、照準ビームで所望の網膜スポットを照明するようにレーザプローブを配置した後、執刀医は、フットペダル又は他の手段などを介して治療ビームを作動させて、目標の患者の人体を治療する(例えば、治療ビームを用いて所望の網膜スポットを光凝固させる)。
【0014】
図示のように、手術用レーザシステム102は、手術用レーザシステム102の光学ポート(図示せず)に結合するコネクタ又はポートアダプタ114を備える。
図1はまた、プローブ108に結合してプローブ108を通って延びる遠位端と、ポートアダプタ114に結合してポートアダプタ114を通って延びる近位端とを有するケーブル110を示している。
図1の例では、ポートアダプタ114は、手術用レーザシステム102からのレーザビームをケーブル110の近位端の境界面(近位入口面ともいう)に伝播させることができる開口部を有するフェルールを備える。ケーブル110の境界面は、レーザビームが導かれ得る1つ又は複数のコアの、露出した近位端を備える。
図1の例では、ケーブル110は、4つのコアを備えたマルチコア光ファイバケーブル(MCF)である。そのため、ケーブル110の近位端の境界面は、ポートアダプタ114のフェルールの開口部を介して露出している4つのコアの近位端を備える。
【0015】
手術用レーザシステム102は、レーザ源によって発生された単一のレーザビームを、レーザスポットパターンを呈する複数のレーザビームに分割するように構成され得る。例えば、手術用レーザシステム102は、単一の照準ビームを4つの照準ビームに分割し、次いで、4つの照準ビームをポートアダプタ114のフェルールの開口部を介してケーブル110の境界面に送達し得る。更に、手術用レーザシステム102は、単一の治療ビームを4つの治療ビームに分割し、4つの治療ビームをフェルールの開口部を介してケーブル110の境界面に送達するように構成され得る。そうすると、このような例では、ケーブル110のコアのそれぞれが照準ビームと治療ビームとの両方を伝えることになり、照準ビームと治療ビームとは、総称して、結合ビーム又は(照準ビームと治療ビームとが異なる波長を有するという事実に起因して)多波長ビームと呼ばれ得る。いくつかの例では、手術用レーザシステム102はまた、眼の内部、特に光凝固される網膜120の領域を照明するために、照明ビームをケーブル110の境界面(例えば、境界面はケーブル110内にコアを保持するクラッディングの近位端も含み得る)に伝播させ得る。特定の態様では、照明ビームが白色発光ダイオード(LED)によって発生され得る。
【0016】
ケーブル110は、結合ビームをプローブ108に送達し、プローブ108は、結合ビームのマルチスポットパターン(例えば、4つのスポット)を患者の眼125の網膜120に伝播させる。プローブ108は、その近位端にあるプローブ本体112と、その遠位端にあるプローブ先端140とを備える。プローブ本体112及びプローブ先端140は、ケーブル110の遠位端を収容して保護する。また、プローブ先端140の遠位端部分145は、結合ビームを網膜120に集束させるレンズを収容し得る。
【0017】
結合レーザビームのマルチスポットパターンを形成するために様々なシステムが採用され得る。
図2は、結合レーザビームのマルチスポットパターンを形成するために使用され得る手術用レーザシステム及びその構成要素の一例を示している。手術用レーザシステム202は、治療ビーム210を発生させるレーザ源204と、照準ビーム212を発生させるレーザ源206と、照明ビーム214を発生させる光源208とを備える。
【0018】
手術の最初に、執刀医は、眼球の内側を照明して網膜を見やすくするために、光源208を作動させ得る。図示のように、照明ビーム214は、光源208によって放出されると、平行な(コリメートされた)光線を持つビームを生成するように構成されたコリメーティングレンズ222によって受け取られる。特定の実施形態では、コリメーティングレンズ222は、2つの単レンズと1つの複レンズとを備える多素子色収差補正レンズであり得る。したがって、図示のように、照明ビーム214は、コリメーティングレンズ222の反対側から平行な光線で出て、ビームスプリッタ226を通過して集光レンズ224に到達する。特定の実施形態では、集光レンズ224は、2つの単レンズと1つの複レンズとを備える多素子色収差補正レンズであり得る。このような実施形態では、集光レンズ224は、組み付けが逆である(例えば、180度回転している)ことを除いて、コリメーティングレンズ222と全く同じ設計を有し、それにより、1対1の拡大結像システムを形成する。ビームスプリッタ226は、その2つの側面226a及び226bに異なるコーティングを有し得る。例えば、側面226aは、そこに伝播した光がビームスプリッタ226を通過できるようなコーティングを施される。そのため、側面226aに伝播した照明ビーム214はビームスプリッタ226を通過する。一方、側面226bは、以下に詳述するように、光又は治療ビーム210及び照準ビーム212などのレーザビームを反射させるようにコーティングを施される。ただし、照明ビーム214のわずかな部分が、側面226aによって照明ビーム214を検知するように構成されたセンサ227に反射されることに留意されたい。
【0019】
次いで、集光レンズ224は、
図1に示すケーブル110などのケーブルの近位端の境界面に照明ビーム214を収束させ、ケーブル110は、ポートアダプタ114を介して手術用レーザシステム202のポート225に結合される。
図1に関連して説明したように、ケーブル110は4つのコアを備えたケーブルである。そのため、集光レンズ224は、照明ビーム214がケーブル110の4つのコアのそれぞれの全長に沿ってケーブル110に結合された手術用プローブ(例えば、
図1のプローブ108)の遠位端に伝播されるように、照明ビーム214をケーブル110の境界面に集束させる。上述のように、ケーブル110の境界面は、ポートアダプタ114のフェルール215の開口部217を介して露出しているケーブル110の4つのコアの近位端を備える。
【0020】
執刀医が眼球の内側を見ることができるようになると、執刀医は、プローブの遠位端から1つ又は複数の所望の照準ビームのスポットを網膜に投影し得る。より具体的には、レーザ源206は、執刀医によって作動された後、照準ビーム212をビームスプリッタ218に放出し、ビームスプリッタ218は照準ビーム212を回折光学素子(DOE)220に反射させる。
図6に関連して説明したように、DOE220は、ビームを異なる数のビームに回折させる又は分割するようにそれぞれ構成された異なる回折セグメント(例えば、3つのセグメント)を備え得る。また、本明細書では、回折セグメントは「セグメント」とも呼ばれ得る。
図2の例では、DOE220は、照準ビーム212がDOE220の中央のセグメントにアライメントされるように配置され、DOE220は、照準ビーム212を複数の照準ビーム(例えば、4つの照準ビーム)に回折させる。しかしながら、執刀医は、ビームを異なる数のビーム(例えば、1つ又は2つ)に回折させるために、DOE220の位置を変更し得る。例えば、音声コマンド又は手術用レーザシステム202の何らかの他の機能を使用して、執刀医は、照準ビーム212を1つ、2つ、又は他の数のビームに回折させ得るDOE220の異なるセグメントに照準ビーム212をアライメントさせるようにDOE220を配置し得る。
【0021】
回折されると、結果として得られる照準ビームはビームスプリッタ226によって集光レンズ224に反射される。次いで、集光レンズ224は、照準ビームのそれぞれがケーブル110の対応するコアの全長に沿って手術用プローブ(例えば、
図1のプローブ108)の遠位端に伝播されるように、4つの照準ビームをケーブル110の近位端の境界面に集束させる。これにより、執刀医は、プローブの遠位端から4つの所望の照準ビームのスポットを網膜に投影させることができる。
【0022】
上述のように、執刀医が1つ又は複数の照準ビームスポットを網膜に投影するようにレーザプローブを配置して作動させた後、執刀医は、フットペダル又は他の手段などを介してレーザ源204を作動させて、目標の患者の人体を治療する(例えば、治療ビームを用いて所望の網膜スポットを光凝固させる)。レーザ源204は、作動されると偏光治療ビーム210を放出し、偏光治療ビーム210の偏光軸は偏光回転子232によって変更され得る。例えば、いくつかの実施形態では、偏光回転子232が治療ビーム210をフィルタリングして、ビームスプリッタ226の入射面に対してs偏光した垂直偏光治療ビームを生成する。
【0023】
偏光治療ビーム210は、いくつかの実施形態では、ビームスプリッタ226が、例えばs偏光したビームが波長の広がりの小さい状態でビームスプリッタ226から反射し得るような、偏光に敏感なコーティングを有し得るため有利であり得る。上述のように、ビームスプリッタ226は、照明ビーム214を通過させる一方で、治療ビーム210及び照準ビーム212を反射させることができるようにコーティングを施される。したがって、執刀医に高品質且つ高スループットの照明ビーム214を提供するために、治療ビーム210を偏光させることが有利であり、これによりビームスプリッタ226は、より狭い波長帯域で治療ビーム210を分離して反射させることができる。
【0024】
偏光されると、治療ビーム210はビームスプリッタ213に到達し、ビームスプリッタ213は、治療ビーム210のかなりの部分を通過させる一方で、わずかな部分231をセンサ223に反射させることができるように構成される。センサ223は、レーザ源204がアクティブか否かを検出するように構成された光センサである。治療ビーム210は、ビームスプリッタ213を通過した後、治療ビーム210をビームスプリッタ218に反射させるように構成されたビームスプリッタ219において受け取られる。ビームスプリッタ218は、治療ビーム210のわずかな部分233をセンサ216に反射させる一方で、治療ビーム210のかなりの部分を通過させることができるように構成される。センサ216は、治療ビーム210がビームスプリッタ218に到達したか否かを検出するように構成された光センサである。
【0025】
図示のように、直線偏光治療ビーム210は、ビームスプリッタ218に対してある角度でビームスプリッタ218を通過し、その角度は、照準ビーム212がビームスプリッタ218によって反射される角度に等しい。したがって、レーザ源204が作動されると、透過した治療ビーム210と反射された照準ビーム212とが結合され(例えば、互いに重なるように)、DOE220に到達する前に結合ビーム211が作られる。次いで、DOE220は、結合ビーム211を結合ビーム211a~211dに回折させる。結合ビーム211a~211dのそれぞれが互いに重なる回折治療ビーム及び回折照準ビームを指す。
【0026】
次いで、結合ビーム211a~211dは、ビームスプリッタ226で受け取られ、ビームスプリッタ226は結合ビーム211a~211dを集光レンズ224に反射させる。集光レンズ224は、結合ビーム211a~211dのそれぞれがケーブル110の対応するコアの全長に沿って手術用プローブ(例えば、
図1のプローブ108)の遠位端に伝播されるように、結合ビーム211a~211dをケーブル110の近位端の境界面に集束させる。より具体的には、
図2の例では、ケーブル110は、コアA、B、C、及びDなどの4つのコアを備えたMCFである。このような例では、集光レンズ224は、例えば、結合ビーム211aがコアAに伝播され、結合ビーム211bがコアBに伝播され、結合ビーム211cがコアCに伝播され、結合ビーム211dがコアDに伝播されるように、結合ビーム211a~211dをケーブル110の近位端の境界面に集束させる。
【0027】
図2の例では、照準ビーム212と治療ビーム210との両方が、同じDOE220によって回折される。しかしながら、光学系では、DOEが光を回折させる角度は、光の波長に依存する。これは、DOEの回折格子は、一般に、所与の波長に対して特定の角度でのみ光を回折させるように構成又は調整されるためである。
図2の例では、DOE220は、治療ビーム210の波長(例えば、約532ナノメートル(nm))に等しい波長λ
1を有する任意の回折ビームが、入射ビーム方向に対して角度θ
1で確実に回折されるように調整され得る。したがって、DOE220は、回折ビームごとに角度θ
1で治療ビーム210を事実上回折させることができる。しかしながら、照準ビーム212は異なる波長λ
2(例えば、約635nm)を有するため、DOE220は、入射ビーム方向に対して、角度θ
1とはわずかに異なり得る角度θ
2で照準ビーム212を回折させ得る。
【0028】
しかしながら、治療ビーム210と照準ビーム212とを異なる回折角度で回折させると、
図3に更に示すように、回折ビームの1つ又は複数の中でミスアライメントが生じ得る。加えて、
図2の例では、DOE220のDOE回折格子の設計は治療ビーム201の波長に対してのみ最適化されているため、DOE220から回折された主要なビームのスポット間の出力の不均一性は、治療ビーム210の波長に対してのみ最小化され得る。スポット間の出力の不均一性は、主要ビームスポットの平均出力からの個々のスポットの出力の最大偏差である。したがって、DOE220は、4つの回折治療ビームのみにわたるスポット間の出力の不均一性を最小化し得るが、4つの回折照準ビームは最小化できない。加えて、DOE220が治療ビーム210の波長にしか調整されていないため、照準ビーム212の雑然とした漏れが生じ得る。換言すれば、DOE220は、入射したビームのうち、屈折されずにそのままDOE220を透過する部分である0次スポットを含む望ましくないスポットに照準ビーム212を回折させ得る。
【0029】
照準ビームの波長における各回折ビーム211a~dと、治療波長における対応する回折ビーム211a~dとの間の角度偏差(θ
2-θ
1)は、
図3の例示的なミスアライメントにおけるように、境界面340上での各回折照準ビーム212a~dと境界面340上での対応する治療ビーム210a~dとの空間横方向位置の空間偏差r
2-r
1へと集光レンズ224によってフーリエ変換される。より具体的には、
図3は、フェルール215の開口部217を介して露出しているケーブル110の近位端の境界面340への入力を示している。上述のように、境界面340は、ポートアダプタ114を通って延びるMCFケーブル110の4つのコア344a~344dの露出した近位端を備える。図示のように、DOE220は治療ビーム210と照準ビーム212とを異なる角度で回折させるため、照準ビーム212aは治療ビーム210aの中心とはアライメントされず、治療ビーム210aの中心はコア344aの中心に対応し得る。その結果、照準ビーム212aはコア344aの中心にはない。
図3では、簡略化のため、他の3つの結合ビーム211b~211dは示されていないことに留意されたい。
【0030】
手術用レーザシステム202の場合、レーザ/プローブ光学システム全体の横方向のミスアライメントの許容範囲の積み重ねにより、境界面340の1つ又は複数の照準ビーム212a~dがそれぞれのファイバコア334に完全に結合しないことがあるが、他の照準ビーム212a~dはそれぞれのファイバコアに完全に結合することがある。これにより、プローブから投射されて網膜に集束される複数の照準ビーム212a~dのスポット間の出力の不均一性が大いに増大し得る。そのため、網膜に投影された照準ビームのスポットのうちの1つ又は複数が他のスポットに比べて薄暗くなり、執刀医を苛立たせる或いは執刀医の気を散らすことがある。更に、治療ビームと照準ビームとの間のミスアライメントは、光学的ドリフト又は他の種類の環境条件及び/若しくは外乱によって生じ得る任意の更なるミスアライメントに対する許容マージンを著しく減少させる。このため、既にミスアライメントとなっている治療ビームと照準ビームとの対の更なるミスアライメントは、対応する手術用レーザシステムの精度を更に低下させ得る。
【0031】
したがって、本開示の特定の実施形態は、回折照準ビーム(例えば、4つの回折照準ビーム)のそれぞれが、対応する回折治療ビーム(例えば、4つの回折治療ビーム)のそれぞれとより密接にアライメントされるように、治療ビーム及び照準ビームを回折させるように構成された手術用レーザシステムに関する。
【0032】
図4は、結合レーザビームのマルチスポットパターンを形成するために使用され得る例示的な手術用レーザシステム402を示している。手術用レーザシステム402は、治療ビーム210を発生させるレーザ源204と、照準ビーム412を発生させるレーザ源206と、照明ビーム214を発生させる光源208とを備える。また、手術用レーザシステム402は、λ
1の波長を有するレーザビーム(例えば、治療ビーム210)を角度θ
1で回折させるように調整されたDOE220を備える。また、手術用レーザシステム402は、λ
2の波長を有するレーザビーム(例えば、照準ビーム412)を同じ角度θ
1で回折させるように調整されたDOE421を備える。2つのDOEを使用することにより、手術用レーザシステム402は治療ビーム210と照準ビーム412との両方を同じ角度で回折させることができ、それにより、結合ビームが確実に密接にアライメントされる。また、図示のように、手術用レーザシステム402は、異なる2つのビームスプリッタ226及び427を備え、一方のビームスプリッタはDOE220によって回折されたビームを反射させるためのものであり、もう一方のビームスプリッタはDOE421によって回折されたビームを反射させるためのものである。
【0033】
レーザ源206は、執刀医によって作動されると、照準ビーム412を放出し、照準ビーム412はDOE421によって角度θ
1で回折されて、照準ビーム412a~412dになる。次いで、照準ビーム412a~412dは、ビームスプリッタ427から集光レンズ224に反射される。上述のように、ビームスプリッタ226は、側面226aに伝播した光がビームスプリッタ226を通過できるようにコーティングを施される。そのため、照準ビーム412a~412dは、レンズ224の手前のコリメート空間領域における角度方向、又は
図5の境界面340上への入射角を変えることなく、ビームスプリッタ226を効率的に透過することができる。入射角とは、入射する線又は光線が、入射点において表面に垂直な線となす角度をいう。次いで、集光レンズ224は、照準ビーム412a~412dのそれぞれがケーブル110の対応するコアの全長に沿って手術用プローブ(例えば、
図1のプローブ108)の遠位端に伝播されるように、照準ビーム412a~412dをケーブル110の近位端の境界面に集束させる。
【0034】
執刀医が照準ビーム412a~412dで所望の網膜スポットを照明すると、執刀医はレーザ源204を作動させ、レーザ源204が治療ビーム210を放出する。治療ビーム210は、
図2に関連して説明したのと同じ経路をとり、DOE220に到達することができ、DOE220は、治療ビーム210を同じ角度θ
1で治療ビーム210a~210dに回折させるように構成される。次いで、治療ビーム210a~210dはビームスプリッタ226から集光レンズ224に反射され、集光レンズ224は、治療ビーム210a~210dのそれぞれがケーブル110の対応するコアの全長に沿って手術用プローブ(例えば、
図1のプローブ108)の遠位端に伝播されるように、治療ビーム210a~210dをケーブル110の近位端の境界面に集束させる。
【0035】
図4に示すように、治療ビーム210の経路が照準ビーム412の経路から(少なくともビームスプリッタ427、226によって反射される手前では)切り離されているため、異なる波長を有する2つのビーム210及び412の回折角は同じになり得る、又は更には互いに独立して変化させ得る。上述のように、この構成は2つのDOE220及び421を使用することにより可能になる。図示のように、DOE220及び421の両方が、ビーム210及び412を同じ数のビームに回折させるように構成又は配置される。
図4の例では、ビーム210及び412がDOE220及び421の両方の中央のセグメントにアライメントされるようにDOE220及び421の両方が配置され、DOE220及び421の両方が、それぞれビーム210及び412のそれぞれを4つのビームに回折させるように構成される。しかしながら、いくつかの実施形態では、執刀医は、ビーム210及び412が別の数(例えば、1つ又は2つ)の回折ビームに回折されるように、DOE220及び421の両方を再配置させ得る。DOE220及び421を再配置することは、いくつかの実施形態では、手術用レーザシステム402内でDOE220及び421の位置を機械的又は電気機械的に移動させることを含み得る。特定の実施形態では、DOE220及び421の両方が、線形要素を再配置することによって、DOE220及び421の両方が同時に同じ所望のセグメントに設定されるように、同じ線形要素(例えば、キャリッジ又はステージ(図示せず))に取り付けられ得る。
【0036】
特定の実施形態では、代替的に、DOE220及び421が互いに平行に配置され得ることに留意されたい。このような実施形態では、DOE220及び421は、DOE220のそれぞれのセグメントがDOE421のそれぞれのセグメントとアライメントされるように配置される。例えば、DOE220及び421は、互いに積み重ねて(例えば、垂直方向又は水平方向に)配置され得る。このような実施形態では、DOE220は治療ビーム210をいくつか(例えば、1つ、2つ、4つ)の回折治療ビームに回折させ、DOE421は照準ビーム412を同じ数の回折照準ビームに回折させる。更に、このような実施形態では、DOE220及び421は、それぞれ治療ビーム210及び照準ビーム212を単一のビームスプリッタに回折させ、次いで、ビームスプリッタは、回折治療ビーム及び回折照準ビームを集光レンズに反射させる。例えば、単一のビームスプリッタは、回折治療ビームを反射させるためのノッチと、回折照準ビームを反射させるためのノッチとの2つの狭帯域高反射ノッチを有するように設計され得る。更に、単一のビームスプリッタは、回折照準ビーム及び回折治療ビームを同時に集光レンズに反射させるのに十分な高さを(例えば、垂直方向に)有することができ、集光レンズは、治療ビームのそれぞれ及び対応する照準ビームをケーブル110の境界面に集束させる。
【0037】
図5は、フェルール215の開口部217を介して露出したケーブル110の近位端の境界面340への例示的な入力を示している。DOE220及び421は、それぞれ治療ビーム210及び照準ビーム412を同じ角度で回折させるように構成されているため、ここでは、照準ビーム412aの中心は、コア344aの中心に対応し得る治療ビーム210aの中心とアライメントされる。照準ビーム412aと治療ビーム210aとの結合は、結合ビーム511aに対応することに留意されたい。簡略化のため、他の3つの結合ビームは示されていない。
図5に部分的に示すように、照準ビーム412a~dが治療ビーム210a~dにおいてより中心に位置しているため、照準ビーム212a~dにわたるスポット間の均一性が向上する。加えて、手術用レーザシステム402は、光学的ドリフト又は他の種類の環境条件及び/若しくは外乱によって生じ得る潜在的なミスアライメントに対してより高い許容マージンを有する。また、DOE220のスポット間の出力の不均一性は治療ビーム210の波長に対してDOE220の回折格子の設計を最適化することにより最小化され、DOE421のスポット間の出力の不均一性は照準ビーム412の波長に対してDOE421の回折格子の設計を最適化することにより最小化されるため、4つの回折治療ビーム及び4つの回折照準ビームにわたるビームの出力の均一性が最適化され得る。また、照準ビーム412の波長に調整されたDOE421を使用することにより、照準ビーム412の雑然とした漏れが抑制される。
【0038】
更に、手術用レーザシステム402は、ビームスプリッタ218が照準ビーム412を反射させないため、手術用レーザシステム202と比較して、より高い角度安定性を有し、ミスアライメントになりにくい。一般に、アライメント感度は透過型よりも反射型の方がはるかに高い。手術用レーザシステム402のビームスプリッタ218は、レーザビーム(すなわち、治療ビーム210)の透過のみに使用されるため、潜在的なビームの角度安定性及びアライメントの主要な原因とはならない。なぜなら、環境条件及び/又は外乱によってビームスプリッタ218にわずかなミスアライメントが生じたとしても、治療ビーム210が透過される角度には大きな影響を与えないためである。しかしながら、手術用レーザシステム202では、ビームスプリッタ218は、反射(すなわち、照準ビーム212の反射)と透過(すなわち、治療ビーム210の透過)との両方に使用される。そのため、ビームスプリッタ218のわずかなミスアライメントが、照準ビーム212が反射される角度に著しく影響し得る。加えて、手術用レーザシステム402の構成要素の配置によって、センサ227をより最適に配置することができる。
図5に示すように、センサ227は、治療ビーム210からの散乱光を受けにくくなるように配置される。センサ227は、白色光(例えば、照明ビーム214)の存在を検知しようとするときに、緑色光(例えば、治療ビーム210)を検知することがあり、したがって、治療ビーム210からの散乱光を受けることにより、センサ227は照明ビーム214の存在を誤って判定することがある。例えば、手術用レーザシステム202におけるセンサ227の配置は、回折治療ビーム210a~dからの散乱光の一部を受けて、照明ビーム214の存在を誤って検出することがあるような配置である。
【0039】
図6は、3つのセグメント660、662、及び664を有する例示的なDOE620を示している。DOE620は、備えているセグメントの数という点でDOE220及び421と同様である。図示のように、ビーム666はセグメント660によって1つのビームに回折される一方、同じビーム666はセグメント662によって4つのビームに回折される。セグメント664はビーム666を2つのビームに回折させる。
【0040】
執刀医などのユーザは、プローブから伝播されるビームの数を所望の数だけ選択し得る。例えば、執刀医は、プローブから4つの治療ビームを伝播させるように選択し得る。執刀医の選択は、手術用レーザシステム(例えば、手術用レーザシステム102、202、又は402)においてシステムの中央処理装置(CPU)への入力として受け取られる。CPUは、次いで、システムのメモリに格納されている、特定の一式の命令を実行するように構成され、命令は、執刀医の選択に基づいてシステムのDOEをシステムに配置させる。DOE421及び220の例では、プロセッサは、照準ビーム212及び治療ビーム210が、ビームを4つの回折ビームに回折させるように構成されているDOE421及び220のセグメントにそれぞれ確実にアライメントされるように、DOE421及び220が取り付けられているキャリッジを電気機械モータに移動させ得る。
【0041】
前述の説明は、いかなる当業者が本明細書に記載の様々な実施形態を実践できるようにするために提供されている。これらの実施形態に対する様々な修正形態は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義する一般的な原理は、他の実施形態に適用され得る。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図されるものではなく、特許請求の範囲の文言に一致する全範囲が認められるべきである。
態様(1)によれば、手術用レーザシステムであって、
第1の波長で第1のレーザビームを放出するように構成された第1のレーザ源と、
第2の波長で第2のレーザビームを放出するように構成された第2のレーザ源と、
前記第1の波長に調整された第1の回折光学素子(DOE)であって、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを1つ又は複数の第1の回折ビームに回折角で回折させるように構成される、第1のDOEと、
前記第2の波長に調整された第2のDOEであって、前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを1つ又は複数の第2の回折ビームに前記回折角で回折させるように構成される、第2のDOEと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームをレンズに反射させるように構成された1つ又は複数のビームスプリッタと、
前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを、前記手術用レーザシステムに結合されたケーブルの近位端の境界面に集束させるように構成された前記レンズであって、前記ケーブルの遠位端が、前記1つ又は複数の第1の回折ビーム及び前記1つ又は複数の第2の回折ビームを目標表面に投影するように構成される、前記レンズと
を備える、手術用レーザシステムである。
態様(2)によれば、前記1つ又は複数のビームスプリッタが、第1のビームスプリッタと第2のビームスプリッタとを備え、
前記第1のビームスプリッタが、前記1つ又は複数の第1の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成され、
前記第2のビームスプリッタが、前記1つ又は複数の第2の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成される。
態様(3)によれば、前記レンズに照明ビームを放出するように構成された光源であって、前記照明ビームが、前記光源によって放出されると、前記第1のビームスプリッタ及び前記第2のビームスプリッタを通過し、
前記レンズが、前記照明ビームを前記境界面に集束させるように構成される、光源
を更に備える。
態様(4)によれば、前記第2のビームスプリッタによって反射されると、前記1つ又は複数の第2の回折ビームが、前記レンズに到達する前に前記第1のビームスプリッタを通過する。
態様(5)によれば、前記ケーブルが、複数のコアを備えたマルチコア光ファイバケーブル(MCF)であり、
前記1つ又は複数の第1の回折ビームのうちの第1のビームが、前記複数のコアのうちの第1のコアに集束され、
前記1つ又は複数の第2の回折ビームのうちの第1のビームが、前記複数のコアのうちの前記第1のコアに集束され、
前記1つ又は複数の第1の回折ビームのうちの前記第1のビームの中心が、前記1つ又は複数の第2の回折ビームのうちの前記第1のビームの中心とアライメントされる。
態様(6)によれば、前記1つ又は複数の第1の回折ビームのうちの前記第1のビームの前記中心と、前記1つ又は複数の第2の回折ビームのうちの前記第1のビームの前記中心とが、前記複数のコアのうちの前記第1のコアの中心とアライメントされる。
態様(7)によれば、前記第1のDOEが、前記第1のレーザビームを異なる数の回折ビームに回折させるようにそれぞれ構成された複数のセグメントを備え、
前記第2のDOEが、前記第2のレーザビームを異なる数の回折ビームに回折させるようにそれぞれ構成された複数のセグメントを備え、
前記第1のDOE及び前記第2のDOEがともに、キャリッジの位置を変えることにより前記第1のDOEと前記第2のDOEとの両方が対応するセグメントに設定されるように直線要素に取り付けられる。
態様(8)によれば、前記1つ又は複数のビームスプリッタが、単一のビームスプリッタを含む。
態様(9)によれば、前記単一のビームスプリッタが、第1の狭帯域高磁気抵抗ノッチと第2の狭帯域高磁気抵抗ノッチとを備え、
前記第1の狭帯域高磁気抵抗ノッチが、前記1つ又は複数の第1の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成され、
前記第2の狭帯域高磁気抵抗ノッチが、前記1つ又は複数の第2の回折ビームを前記レンズに反射させるように構成される。