(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 5/378 20150101AFI20240813BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20240813BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
H01Q5/378
H01Q1/24 Z
H01Q9/42
(21)【出願番号】P 2021575578
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004928
(87)【国際公開番号】W WO2021157084
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼田 聡史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 学
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋平
(72)【発明者】
【氏名】伴 泰光
(72)【発明者】
【氏名】殿岡 旅人
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-124355(JP,A)
【文献】特開2013-059108(JP,A)
【文献】特開2013-229823(JP,A)
【文献】特開2004-064282(JP,A)
【文献】特開2004-201278(JP,A)
【文献】特開2003-168916(JP,A)
【文献】国際公開第2006/090673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/378
H01Q 1/24
H01Q 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電点と、接地されたグランド部材と、第1モノポールアンテナと、第2モノポールアンテナと、を備え、
前記第1モノポールアンテナは、前記第2モノポールアンテナと前記グランド部材との間に配置され、第1の一端が前記給電点と接続し、第1周波数の電波の波長の3/4の電気長を有し、
前記第2モノポールアンテナは、第2の一端が前記グランド部材と接続し、隙間を介して前記第1モノポールアンテナと容量結合し、前記第1周波数より低い第2周波数の電波の波長の1/4の電気長を有し、
前記第1モノポールアンテナは前記第2周波数の電波の波長の1/4となるように設定される、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1モノポールアンテナは、前記第1の一端とは反対側の一部分と前記グランド部材との距離が
前記第1周波数の電波の波長の1/50以下となるように配置される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1モノポールアンテナは、前記第1の一端とは反対側の開放端と前記グランド部材との間がコイルとコンデンサとを含む集中定数回路で接続される、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
給電点と、接地されたグランド部材と
、第2モノポールアンテナと、分岐導体と、
前記第2モノポールアンテナと前記グランド部材との間に配置され、第1周波数の電波の波長の1/4の電気長を有する第1モノポールアンテナと、を備え、
前記第1モノポールアンテナは、
前記第2モノポールアンテナと前記グランド部材との間に隙間を空けて配置され、前記第2モノポールアンテナから前記グランド部材に向けて延びるように配置される第1導体部と、
前記第1導体部の前記第2モノポールアンテナ側の端部に接続されて前記第2モノポールアンテナに沿って配置される第2導体部と、を有するとともに、
前記第1導体部の途中部分において前記給電点
に接続
され、
前記第2モノポールアンテナは、第2の一端が前記グランド部材と接続し、隙間を介して前記第1モノポールアンテナと容量結合し、前記第1周波数より低い第2周波数の波長の1/4の電気長を有し、
前記分岐導体は、第3の一端が前記第1
導体部の前記グランド部材側の端部に接続されるとともに少なくとも一部が前記グランド部材から
前記第1周波数の電波の波長の1/50以下の距離に配置され、前記第2周波数の電波の波長の1/4の電気長に設定される、
アンテナ装置。
【請求項5】
前記給電点と前記第1モノポールアンテナとの間には、コンデンサを含む整合回路が設けられる、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置を実装する、
無線通信装置。
【請求項7】
前記アンテナ装置の周囲を囲む筐体が金属で形成される、
請求項6に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンに例示される小型の無線通信装置が利用されている。このような小型の無線通信装置では、小型の筐体に収容可能なアンテナ装置が利用されている(例えば、特許文献1-4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2005/109569号
【文献】特開2013-51501号公報
【文献】特開2012-212960号公報
【文献】特許第3775795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の無線通信装置では、スマートフォンに例示されるように、小型化、薄型化及び表示部の大画面化が進められていることから、アンテナ装置を筐体内に収容するスペースは減少傾向にある。さらに、デザイン性の向上や筐体の強度確保等を目的として筐体が金属で形成されることが多くなっており、アンテナ装置の特性が低下しやすい。このような環境で整合回路が接続されると、アンテナ装置がさらに狭帯域化する虞がある。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、整合回路が接続されることによる狭帯域化を抑制可能なアンテナ装置及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のようなアンテナ装置によって例示される。本アンテナ装置は、給電点と、接地されたグランド部材と、第1モノポールアンテナと、第2モノポールアンテナと、を備え、前記第1モノポールアンテナは、前記第2モノポールアンテナと前記グランド部材との間に配置され、一端が前記給電点と接続し、第1周波数の電波の波長の3/4の電気長を有し、前記第2モノポールアンテナは、一端が前記グランド部材と接続し、隙間を介して前記第1モノポールアンテナと容量結合し、前記第1周波数より低い第2周波数の1/4の電気長を有し、前記第1モノポールアンテナの前記第2周波数における電気長が前記第2周波数の電波の波長の1/4となるように設定される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術は、整合回路が接続されることによる狭帯域化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、スマートフォンの構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るアンテナ装置を
図2に例示するスマートフォンに実装した場合の実装例を示す図である。
【
図4】
図4は、整合回路のバリエーションを模式的に示す第1の図である。
【
図5】
図5は、整合回路のバリエーションを模式的に示す第2の図である。
【
図6】
図6は、比較例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、比較例に係るアンテナ装置を
図2に例示するスマートフォンに実装した例を示す図である。
【
図8】
図8は、自由空間における比較例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。
【
図9】
図9は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における比較例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。
【
図10】
図10は、比較例に係るアンテナ装置から無給電アンテナである第2アンテナを外した状態を例示する図である。
【
図11】
図11は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における
図10に例示するアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートを模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における比較例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートを模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における実施形態に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。
【
図14】
図14は、第1変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第2変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、第2変形例に係るアンテナ装置を
図2に例示するスマートフォンに実装した場合の実装例を示す図である。
【
図17】
図17は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における第2変形例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。実施形態に係るアンテナ装置は、例えば、以下の構成を備える。
本実施形態に係るアンテナ装置は、
給電点と、接地されたグランド部材と、第1モノポールアンテナと、第2モノポールアンテナと、を備え、
前記第1モノポールアンテナは、前記第2モノポールアンテナと前記グランド部材との間に配置され、一端が前記給電点と接続し、第1周波数の電波の波長の3/4の電気長を有し、
前記第2モノポールアンテナは、一端が前記グランド部材と接続し、隙間を介して前記第1モノポールアンテナと容量結合し、前記第1周波数より低い第2周波数の1/4の電気長を有し、
前記第1モノポールアンテナの前記第2周波数における電気長が前記第2周波数の電波の波長の1/4となるように設定される。
【0010】
第1モノポールアンテナはモノポールアンテナであるため、その電気長を第1周波数の波長の1/4とすれば第1周波数の電波で動作可能である。しかしながら、本実施形態では、第1モノポールアンテナの電気長を第1周波数の電波の波長の3/4とし、第1モノポールアンテナのインピーダンスを適宜設定することで、第2周波数における第1モノポールアンテナの電気長を第2周波数の電波の波長の1/4とすることを可能とする。このような第1モノポールアンテナは、第2周波数の電波で共振可能である一方で、第2周波数の電波を通信可能な出力では発信しない。本実施形態に係るアンテナ装置は、このような構成を採用することで、整合回路がアンテナ装置に接続されても、アンテナ装置の狭帯域化を抑制することができる。
【0011】
本実施形態に係るアンテナ装置は、前記第1モノポールアンテナは、前記一端とは反対側の一部分と前記グランド部材との距離が第1周波数の電波の波長の1/50以下となるように配置することで、第1モノポールアンテナのインピーダンスを設定してもよい。また、本実施形態の第1変形例に係るアンテナ装置は、前記第1モノポールアンテナの前記一端とは反対側の一部分と前記グランド部材との間がコイルとコンデンサとを含む集中定数回路で接続することで、第1モノポールアンテナのインピーダンスを設定してもよい。なお、前記一端とは反対側の一部分は開放端であってもよく、開放端以外の部分であってもよい。
【0012】
また、本実施形態の第2変形例に係るアンテナ装置は、以下の構成を備えてもよい。第2変形例に係るアンテナ装置は、
給電点と、接地されたグランド部材と、第1モノポールアンテナと、第2モノポールアンテナと、分岐導体と、を備え、
前記第1モノポールアンテナは、前記第2モノポールアンテナと前記グランド部材との間に配置され、一端が前記給電点と接続し、第1周波数の電波の波長の1/4の電気長を有し、
前記第2モノポールアンテナは、一端が前記グランド部材と接続し、隙間を介して前記第1モノポールアンテナと容量結合し、前記第1周波数より低い第2周波数の1/4の電気長を有し、
前記分岐導体は、一端が前記第1モノポールアンテナに接続されるとともに少なくとも一部が前記グランド部材から第1周波数の電波の波長の1/50以下の距離に配置され、前記第2周波数における前記分岐導体の電気長が前記第2周波数の電波の波長の1/4である。
【0013】
第2変形例では、第1モノポールアンテナに接続される分岐導体が設けられる。第2変形例では、分岐導体の第2周波数における電気長が、第2周波数の電波の波長の1/4に設定される。また、分岐導体の少なくとも一部がグランド部材から第1周波数の電波の波長の1/50以下の距離に配置されることで、分岐導体は、第2周波数の電波で共振可能である一方で、第2周波数の電波を通信可能な出力では発信しない。このような分岐導体を設けることで、上記実施形態に係るアンテナ装置と同様に整合回路が第1モノポールアンテナと給電点との間に接続されても、アンテナ装置の狭帯域化を抑制することができる。また、分岐導体を設けることで、第1モノポールアンテナの電気長を実施形態に係るアンテナ装置の第1モノポールアンテナよりも短くすることができる。
【0014】
実施形態や各変形例に係るアンテナ装置では、第1モノポールアンテナと給電点との間にコンデンサを含む整合回路が接続されてもよい。実施形態や各変形例に係るアンテナ装置は、上記の通り、整合回路が接続されることによるアンテナ装置の狭帯域化を抑制することができる。
【0015】
上記アンテナ装置は、例えば、無線通信装置に実装することができる。無線通信装置としては、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルコンピュータ、携帯電話、ノートブック型パーソナルコンピュータ等を挙げることができる。
【0016】
以下、図面を参照して実施形態についてさらに説明する。
図1は、実施形態に係るアンテナ装置の一例を示す図である。
図1に例示されるアンテナ装置1は、給電点11、給電線12、第1アンテナ13、第2アンテナ14、グランド線15およびグランド部材16を含む。以下、本明細書において、
図1の右側を+X方向、左側を-X方向、上側を+Y方向、下側を-Y方向と称する。
【0017】
グランド部材16は、接地された板状の部材である。グランド部材16には、例えば、第1アンテナ13への給電を行う給電点11が設けられる。グランド部材16は、各種電子部品を実装するプリント基板であってもよい。
【0018】
第1アンテナ13は、一端が給電線12を介して給電点11に接続され、他端が開放端となっているモノポールアンテナである。第1アンテナ13は、第1周波数の電波の波長の3/4の電気長を有する。第1周波数は、例えば、5GHzである。第1アンテナ13は、第2アンテナ14とグランド部材16との間に設けられる。第1アンテナ13は、限られたスペース内においてこのような電気長を確保できるように、屈曲して形成される。また、第1アンテナ13の少なくとも一部は、グランド部材16に近接するように設けられる。
【0019】
図1に例示される第1アンテナ13は、第11導体部131、第12導体部132、第13導体部133、及び、第14導体部134を含む。第11導体部131は、一端が給電線12を介して給電点11に接続され、他端が+Y方向に延びる。第12導体部132は、第11導体部131の+Y方向の端部から+X方向に向けてグランド部材16と平行に延びる。第13導体部133は、第12導体部132の+X側の端部から-Y方向に向けて第11導体部131と平行に延びる。第14導体部134は、第13導体部133の-Y側の端部から+X側に向けてグランド部材16と平行に延びる。すなわち、第1アンテナ13のうち、第14導体部134はグランド部材16に近接する。第14導体部134とグランド部材16との距離D1は、例えば、第1周波数の電波の波長の1/50以下である。ただし、第14導体部134はグランド部材16と接触はしない。
【0020】
第2アンテナ14は、一端がグランド線15を介してグランド部材16に接続され、他端が開放端となっている無給電のモノポールアンテナである。第2アンテナ14は、少なくとも一部が第1アンテナ13と容量結合し、第1周波数より低い第2周波数の電波の波長の1/4の電気長を有する。第2周波数は、例えば、2.4GHzである。
【0021】
図1に例示される第2アンテナ14は、第21導体部141及び第22導体部142を含む。第21導体部141は、グランド部材16からグランド線15を介して+Y方向に延びる。第22導体部142は、第21導体部141の+Y方向の端部から-X方向に向けてグランド部材16と平行に延びる。第2アンテナ14の第22導体部142と第1アンテナ13の第12導体部132との距離D2は、例えば、第1周波数の電波の波長の1/50以下である。ただし、第1アンテナ13と第2アンテナ14とは、接触はしない。
【0022】
第1アンテナ13の第14導体部134を、グランド部材16との距離D1が第1周波数の電波の波長の1/50以下となるように近接させることで、第1アンテナ13の電気長を第2周波数の電波の波長の1/4とするとともに、第2周波数における第1アンテナ13のインピーダンスを第2アンテナ14よりも十分に低くすることができる。第2周波数における第1アンテナ13のインピーダンスは、例えば、第1アンテナ13が第2周波数の電波で共振可能である一方で、第1アンテナ13は第2周波数の電波の発信は行わない程度に設定される。換言すれば、第14導体部134とグランド部材16との距離D1や第14導体部134の長さは、第1アンテナ13の電気長が第2周波数の電波の波長の1/4となるとともに、第1アンテナ13が第2周波数の電波の発信を行わない程度に調整される。
【0023】
アンテナ装置1は、スマートフォン等の無線通信装置に実装することができる。
図2は、スマートフォンの構成を例示する図である。
図2では、スマートフォン300の背面側のカバーを開けた状態が例示される。スマートフォン300は板状に形成され、所定の厚みを有する。板状に形成されるスマートフォン300の側面は、金属で形成された金属フレーム310が囲んでいる。金属フレーム310に囲まれる領域内には、各種の電子部品を実装するベース基板320が設けられる。ベース基板320の金属フレーム310と面する側面は、例えば、接地されている。
【0024】
スマートフォン300は、Central Processing Unit(CPU)やメモリ等を備える可搬型の無線通信装置である。アンテナ装置1は、例えば、
図2の楕円R1で囲まれる領域内に設けられる。
図3は、実施形態に係るアンテナ装置を
図2に例示するスマートフォンに実装した場合の実装例を示す図である。
図3では、
図2の楕円R付近の拡大図が例示される。スマートフォン300では、アンテナ装置1のグランド部材16として、ベース基板320を用いる。また、インピーダンスマッチングのため、給電点11と第1アンテナ13との間には、整合回路17が設けられる。スマートフォン300にアンテナ装置1を実装すると、アンテナ装置1の近傍には、金属フレーム310が存在することになる。
【0025】
図4及び
図5は、整合回路のバリエーションを模式的に示す図である。
図4に例示する整合回路17及び
図5に例示する整合回路17aのいずれも、第1アンテナ13と直列に接続されるコンデンサ171を含む。また、整合回路17及び整合回路17aのいずれも、複数のコイル172を含む。
【0026】
図6は、比較例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。比較例において、実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6に例示されるアンテナ装置5は、第1アンテナ13及び第2アンテナ14に代えて第1アンテナ53及び第2アンテナ54を備える点で、実施形態に係るアンテナ装置1とは異なる。
【0027】
第1アンテナ53は、一端が給電線12を介して給電点11に接続され、他端が開放端となっているモノポールアンテナである。第1アンテナ53は、第11導体部531及び第12導体部532を含む。第11導体部531は、一端が給電線12を介して給電点11に接続され、他端が+Y方向に延びる。第12導体部532は、第1導体部531の+Y方向の端部から+X方向に向けてグランド部材16と平行に延びる。
【0028】
第2アンテナ54は、一端がグランド線15を介してグランド部材16に接続され、他端が開放端となっている無給電のモノポールアンテナである。第2アンテナ54は、第21導体部541及び第22導体部542を含む。第21導体部541は、グランド部材16からグランド線15を介して+Y方向に延びる。第22導体部542は、第21導体部541の+Y方向の端部から-X方向に向けてグランド部材16と平行に延びる。第1アンテナ53の第12導体部532の+X側の端部(開放端)と、第2アンテナ54の第22導体部542の-X側の端部(開放端)との距離D3は、例えば、第1周波数の電波の波長の1/50以下である。第1アンテナ53の開放端と第2アンテナ54の開放端とが容量結合することで、第2アンテナ54は第2周波数で共振可能である。
【0029】
比較例に係るアンテナ装置5では、実施形態に係るアンテナ装置1とは異なり、第1アンテナ53は第2アンテナ54とグランド部材16との間に配置されない。また、比較例に係るアンテナ装置5では、実施形態に係るアンテナ装置1とは異なり、第1アンテナ53は、グランド部材16に近接する第14導体部134を有しない。すなわち、比較例に係るアンテナ装置5では、第1アンテナ53はグランド部材16に近接する領域を有しない。
【0030】
図7は、比較例に係るアンテナ装置を
図2に例示するスマートフォンに実装した例を示す図である。
図7では、
図2の楕円R付近の拡大図が例示される。スマートフォン300では、アンテナ装置5のグランド部材16として、ベース基板320を用いる。また、インピーダンスマッチングのため、給電点11と第1アンテナ53との間には、整合回路17が設けられる。スマートフォン300にアンテナ装置1を実装すると、アンテナ装置5の近傍には、金属フレーム310が存在することになる。
【0031】
(検証)
実施形態に係るアンテナ装置及び比較例に係るアンテナ装置の特性について検証する。以下の検証では、第1周波数が5GHzであり、第2周波数が2.4GHzであるものと仮定する。
図8は、自由空間における比較例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。また、
図9は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における比較例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。すなわち、
図9では、アンテナ装置5の第1アンテナ53と給電点11との間には、整合回路17や整合回路17aが接続される。
図8及び
図9を対比すると、逆三角形で示されるポイント1から3までの間隔が自由空間における場合と比較してスマートフォン300に実装した場合には広くなっていることが理解できる。
【0032】
以下の表1は、整合回路17(または整合回路17a)の有無と比帯域幅の関係を例示する表である。
【表1】
【0033】
表1を参照すると、整合回路17(または整合回路17a)を接続することで、アンテナ装置5の比帯域幅が狭くなることが理解できる。
【0034】
比較例に係るアンテナ装置5をスマートフォン300に実装することで、帯域が狭くなる理由について検討する。
図10は、比較例に係るアンテナ装置から無給電アンテナである第2アンテナを外した状態を例示する図である。
図11は、
図10に例示されるアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートを模式的に示す図である。また、
図12は、
図6に例示される比較例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートを模式的に例示する図である。
図11及び
図12のいずれも、アンテナ装置5aやアンテナ装置5を金属製の筐体に収容した状態における特性を例示する。
図11及び
図12では、第1周波数を「f1」、第2周波数を「f2」で表記している。また、
図11及び
図12において、第1周波数及び第2周波数夫々の帯域のうち、高域を「High」、中域を「Middle」、低域を「Low」と表記している。
【0035】
アンテナ装置5aにおける第1アンテナ53において第2周波数の帯域は、
図11に例示するように、スミスチャート上の右下(第1周波数の波長の1/8以下)から始まる円を描くようになる。そのため、
図11に例示するように、第2周波数の高域の方が低域よりもスミスチャートの下側(キャパシタンス側)に位置する。
【0036】
アンテナ装置5aに無給電アンテナを追加したアンテナ装置5では、
図12に例示されるように、第2周波数において高域よりも低域の方がスミスチャートの下側(キャパシタンス側)に位置するようになる。ここで、スミスチャートでは、アンテナ装置と直列にコンデンサが接続されると、周波数が低い方が周波数が高い方よりも大きく定抵抗円上を反時計回りに移動することになる。そのため、
図12に例示される状態でアンテナ装置5への整合回路17や整合回路17aの接続が行われると(すなわち第1アンテナ53に直列のコンデンサが接続されると)、第2周波数の高域から低域へのスミスチャート上における間隔が広くなる。すなわち、スマートフォン300に実装したことで金属フレーム310やベース基板320等の様々な金属がアンテナ装置5の近傍に存在することでアンテナの帯域が狭帯域化しやすい上に、アンテナ装置5に整合回路17や整合回路17aを接続すると、アンテナ装置5の帯域がさらに狭まることになる。
【0037】
図13は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における実施形態に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。
図13に例示されるスミスチャートを参照すると、逆三角形の「1」で示されるポイント(第2周波数の低域)が逆三角形の「3」で示されるポイント(第2周波数の高域)よりも上側(インダクタンス側)に位置している。このような状態で、アンテナ装置1への整合回路17や整合回路17aの接続が行われると(すなわち第1アンテナ13に直列のコンデンサが接続されると)、第2周波数の高域から低域へのスミスチャート上における間隔が狭くなる。すなわち、アンテナ装置1は、整合回路17や整合回路17aの接続による狭帯域化を抑制することができる。以下の表2は、整合回路17(または整合回路17a)の有無と比帯域幅の関係について、実施形態と比較例とを比較する表である。以下の表2を参照しても理解できるように、実施形態に係るアンテナ装置1は、比較例に係るアンテナ装置5よりも、狭帯域化が抑制されている。
【表2】
【0038】
実施形態に係るアンテナ装置では、第1アンテナ13の電気長を第1周波数の波長の3/4とする。第1アンテナ13はモノポールアンテナであるため、その電気長を第1周波数の波長の1/4とすれば第1周波数の電波で動作可能である。しかしながら、本実施形態では、第1アンテナ13の電気長を第1周波数の電波の3/4とすることで、第2周波数における第1アンテナ13の電気長を第2周波数の電波の波長の1/4とすることが可能となる。ここで、第2周波数における第1アンテナ13のインピーダンスは第2周波数における第2アンテナ14のインピーダンスよりも十分に小さく設定されることで、第1アンテナ13が第2周波数の電波で共振可能である一方で、第1アンテナ13は第2周波数の電波を通信可能な出力では発信しない。このような構成を採用することで、
図13に例示されるスミスチャートを基に説明したように、整合回路17や整合回路17aによる狭帯域化を抑制することができる。
【0039】
<第1変形例>
狭帯域化を抑制する構成は、アンテナ装置1のように第1アンテナ13の第14導体部134をグランド部材16に接近させる以外に、第14導体部134の開放端とグランド部材16とを集中定数回路で接続しても可能である。以下、図面を参照して第1変形例について説明する。実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0040】
図14は、第1変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。第1変形例に係るアンテナ装置1aでは、第1アンテナ13aの第13導体部133aの長さが、実施形態における第1アンテナ13の第13導体部133よりも短い。そのため、第14導体部134とグランド部材16とがアンテナ装置1における場合よりも離れている。その一方で、第14導体部134の開放端とグランド部材16との間が集中定数回路135によって接続される。
【0041】
集中定数回路135は、コイル1351とコンデンサ1352を直列に接続した回路である。例えば、第1周波数が5GHz、第2周波数が2.4GHzである場合、コイル1351の静電容量は0.5pF、コイル1351のインダクタンスは1.5nHとすればよい。
【0042】
第1変形例に係るアンテナ装置1aによっても、アンテナ装置1と同様に、第1アンテナ13の電気長を第2周波数の電波の波長の1/4とするとともに、第2周波数における第1アンテナ13のインピーダンスを第2アンテナ14よりも十分に低くすることができる。その結果、アンテナ装置1aは、アンテナ装置1と同様に、整合回路17や整合回路17aを接続することによる狭帯域化を抑制できる。
【0043】
<第2変形例>
図15は、第2変形例に係るアンテナ装置の一例を示す図である。第2変形例に係るアンテナ装置1bでは、第1アンテナ13b及び第2アンテナ14を有する。第1アンテナ13bは、実施形態に係る第1アンテナとは異なり、第13導体部133及び第14導体部134を含まない。第1アンテナ13bは、第1周波数の電波の波長の1/4の電気長を有する。すなわち、第1アンテナ13bの電気長は、アンテナ装置1の第1アンテナ13の電気長よりも短い。また、第11導体部131aは、アンテナ装置1の第11導体部131とは異なり、給電点11とはその途中部分Mにおいて給電線12を介して接続される。また、第11導体部131の-Y側の端部(グランド部材16側の端部)とグランド部材16との距離は、例えば、第1周波数の波長の1/50以下であってもよい。ただし、第11導体部131は、グランド部材16と接触はしない。
【0044】
アンテナ装置1bは、分岐導体18を備える。分岐導体18は、第1アンテナ13bの第11導体部131の-Y側の端部に一端が接続され、+X方向の向けてグランド部材16と平行に延びる導体である。分岐導体18とグランド部材16との距離は、第1周波数の波長の1/50以下である。ただし、分岐導体18は、グランド部材16と接触はしない。
【0045】
分岐導体18とグランド部材16との距離を第1周波数の波長の1/50以下とすることで、分岐導体18の電気長を第2周波数の電波の波長の1/4とするとともに、第2周波数における分岐導体18のインピーダンスを第2アンテナ14よりも十分に低くすることができる。第2周波数における分岐導体18のインピーダンスは、例えば、分岐導体18が第2周波数の電波で共振可能である一方で、分岐導体18は第2周波数の電波の発信は行わない程度に設定される。換言すれば、分岐導体18とグランド部材16との距離D4や分岐導体18の長さは、分岐導体18の電気長が第2周波数の電波の波長の1/4となるとともに、分岐導体18が第2周波数の電波の発信を行わない程度に調整される。
【0046】
図16は、第2変形例に係るアンテナ装置を
図2に例示するスマートフォンに実装した場合の実装例を示す図である。
図16では、
図2の楕円R付近の拡大図が例示される。スマートフォン300では、アンテナ装置1bのグランド部材16として、ベース基板320を用いる。また、インピーダンスマッチングのため、給電点11と第1アンテナ13bとの間には、整合回路17が設けられる。スマートフォン300にアンテナ装置1bを実装すると、アンテナ装置1bの近傍には、金属フレーム310が存在することになる。
【0047】
図17は、
図2に例示するスマートフォンに実装した場合における第2変形例に係るアンテナ装置の特性を例示するスミスチャートである。
図17に例示されるスミスチャートを参照すると、逆三角形の「1」で示されるポイント(第2周波数の低域)が逆三角形の「3」で示されるポイント(第2周波数の高域)よりも上側(インダクタンス側)に位置している。すなわち、アンテナ装置1bは、実施形態に係るアンテナ装置1と同様に、整合回路17や整合回路17aの接続による狭帯域化を抑制することができる。
【0048】
以下の表3は、整合回路17(または整合回路17a)の有無と比帯域幅の関係について、実施形態、第2変形例及び比較例を比較する表である。以下の表3を参照しても理解できるように、実施形態及び第2変形例に係るアンテナ装置は、比較例に係るアンテナ装置5よりも、狭帯域化が抑制されている。
【表3】
【0049】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b、5・・・アンテナ装置
11・・・給電点
12・・・給電線
13、13a、13b、53・・・第1アンテナ
131、531・・・第11導体部
132、532・・・第12導体部
133、133a・・・第13導体部
134・・・第14導体部
135・・・集中定数回路
1351・・・コイル
1352・・・コンデンサ
14、54・・・第2アンテナ
141、541・・・第21導体部
142、542・・・第22導体部
15・・・グランド線
16・・・グランド部材
17・・・整合回路
18・・・分岐導体
300・・・スマートフォン
310・・・金属フレーム
320・・・ベース基板