(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】口腔内装着器具用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/36 20060101AFI20240813BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20240813BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20240813BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240813BHJP
A61Q 11/02 20060101ALI20240813BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240813BHJP
C11D 1/04 20060101ALI20240813BHJP
C11D 3/36 20060101ALI20240813BHJP
C11D 3/06 20060101ALI20240813BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20240813BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20240813BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20240813BHJP
C11D 1/66 20060101ALI20240813BHJP
C11D 1/88 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/24
A61K8/365
A61K8/44
A61Q11/02
A61K8/34
C11D1/04
C11D3/36
C11D3/06
C11D3/33
C11D3/20
C11D1/02
C11D1/66
C11D1/88
(21)【出願番号】P 2022007421
(22)【出願日】2022-01-20
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2021075192
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】千葉 厚子
(72)【発明者】
【氏名】園井 厚憲
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-174860(JP,A)
【文献】特開2011-126868(JP,A)
【文献】特表2019-509353(JP,A)
【文献】特開2018-087161(JP,A)
【文献】特開2014-005457(JP,A)
【文献】特開2010-168352(JP,A)
【文献】特開2022-007953(JP,A)
【文献】特開2022-007954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C11D 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、及び(B):
(A)炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩 脂肪酸換算量で0.1質量%以上20質量%以下
(B)分子量が80以上600未満のキレート剤
を含有し
、
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、0.05以上20以下であ
り、かつ25℃におけるpHが8.5以上14以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(B)が、リン酸、ホスホン酸、アミノカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量が、0.1質量%以上20質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、成分(A)以外のアニオン界面活性剤(c1)、ノニオン界面活性剤(c2)、及び両性界面活性剤(c3)から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(C)を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項5】
さらに、炭素数2以上6以下の1価又は2価のアルコール、並びに芳香族基を有するアルコールから選ばれる1種又は2種以上の溶剤(D)を含有し、
成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))が1以上20以下であり、かつ成分(D)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((D)/(B))が0.5以上20以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項6】
さらに、水(F)を50質量%超99質量%以下含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【請求項7】
泡状の形態である、請求項1~6のいずれか1項に記載の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における超高齢化の進展に伴い、義歯のような口腔内装着器具の装着を余儀なくされる人々が加速的に増加している。こうした口腔内装着器具は、装着中に付着したデンチャープラークや食物残渣等の汚れが残存しやすい。そのため、口腔内装着器具を取り外した後においても、かかる口腔内装着器具がデンチャープラークの温床となりやすい。その結果、そのまま口腔内装着器具を再装着すれば、口臭やう蝕、歯周病等を引き起こすおそれもあるため、日々の細やかな手入れが不可欠となる。
【0003】
こうしたなか、義歯の手入れの実行に寄与すべく、種々の組成物が開発されている。例えば、特許文献1には、炭素数8~22の脂肪酸又はその塩を15~45質量%と、特定の脂肪酸グリセリド、及びスルホコハク酸エステル等を特定量で含有する義歯用抗菌剤が開示されており、細菌及び真菌の殺菌や消毒に効果を発揮している。
一方、特許文献2には、界面活性剤、亜硫酸塩及び水溶性ポリリン酸塩が特定の含有量かつ質量比であり、かつpHが特定の値である義歯洗浄用液状組成物が開示されており、また特許文献3には、界面活性剤、亜硫酸塩、特定のポリリン酸塩、及び特定の配合量の多価アルコールを含有し、かつ特定の水分量でpHが特定の値である義歯洗浄用液状組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-195496号公報
【文献】特開2010-168352号公報
【文献】特開2011-126868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、もっぱら抗菌活性を高めようとするに留まる。また上記特許文献2~3に記載の技術は、亜硫酸イオン濃度の経時安定性と低温保存における外観安定性を検討するのみである。
【0006】
一方、特定の脂肪酸又はその塩は、低温で保存すると、例えば液状の形態下であれば、一旦白濁して構造が不安定化するものの、しばらくすると構造が安定化して透明に戻るところ、この安定化に至るまでに時間を要するという課題があることを本発明者は見出した。
したがって、本発明は、低温保存安定性を有効に高めることのできる口腔内装着器具用洗浄剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、極限られた量の特定の脂肪酸又はその塩に対して、特定のキレート剤を特定の質量比で含有することにより、脂肪酸塩の低温安定化までの時間を短縮することが可能となるという優れた低温保存安定性を備える口腔内装着器具用洗浄剤組成物を見出した。また、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、義歯等の口腔内装着器具に堅固に付着したデンチャープラークを効果的に除去することもでき、泡立ち性にも優れることも判明した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、及び(B):
(A)炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩 脂肪酸換算量で0.1質量%以上20質量%以下
(B)分子量が80以上600未満のキレート剤
を含有し、かつ
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、0.05以上20以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物によれば、炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩(A)の低温安定化までの時間を短縮することが可能となるという優れた低温保存安定性を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「口腔内装着器具」とは、全部床義歯、部分床義歯、歯列矯正器具、リテイナー(以下、これらを総称して「義歯等」ともいう。)、或いはマウスピース、マウスガード等の、いわゆる口腔内にて着脱を要する歯科用装着器具を意味する。具体的には、例えば、全部床義歯(総入れ歯)とは、無歯顎に装着するための義歯であって、人工歯と義歯床から構成されてなる。一方、部分床義歯(部分入れ歯)とは、部分的に歯が失われた顎に装着するための義歯であって、人工歯、義歯床、及びクラスプやレスト、アタッチメント等の支台装置から構成されてなり、歯列矯正器具やリテイナーもこれに類する構成を有する。義歯床の材質としては、一般的にアクリルレジン等の樹脂が挙げられ、人工歯や支台装置の材質としては、かかる樹脂のほか、チタン等の金属やセラミック等が挙げられる。マウスピースやマウスガードの材質としては、一般的にエチレン酢酸ビニル等の樹脂が挙げられる。
また、本明細書において、「デンチャープラーク」とは、口腔内装着器具に付着した菌と菌が生産する細胞外物質の集合体を意味する。
【0011】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(A)として、炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩を脂肪酸換算量で0.1質量%以上20質量%以下含有する。本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、成分(A)の低温安定性を有効に高めることができる。また、成分(A)によりデンチャープラークの凝集構造を崩壊させて、口腔内装着器具からデンチャープラークを効果的に根こそぎ脱離させることができるため、優れたデンチャープラーク除去効果を発揮して、高い洗浄性能を保持するものと考えられる。
また、良好な泡立ちを発現することができるため、口腔内から取り外した口腔内装着器具の隅々まで剤を有効に密着させることが可能となる。
【0012】
成分(A)の脂肪酸、及び成分(A)の脂肪酸塩を構成する脂肪酸は、その炭素数が10以上20以下であって、好ましくは12以上20以下であり、より好ましくは14以上20以下であり、さらに好ましくは16以上20以下である。かかる脂肪酸は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有するものであってよく、デンチャープラーク除去効果の観点から、不飽和の直鎖を有するものがより好ましい。
【0013】
成分(A)の脂肪酸、及び成分(A)の脂肪酸塩を構成する脂肪酸としては、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、イソステアリン酸、及びアラキジン酸、並びにこれらの混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、及びパーム油脂肪酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、デンチャープラーク除去効果を充分に発揮させる観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、及びエイコセン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、及びエイコセン酸から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、オレイン酸がより好ましい。
成分(A)の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びアンモニウム塩から選ばれる無機塩;モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、及びトリエタノールアンモニウム塩等の有機アミン塩;アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、デンチャープラーク除去効果を充分に発揮させる観点から、ナトリウム塩、又はカリウム塩が好ましく、とりわけカリウム塩が好ましい。
【0014】
成分(A)の含有量は、低温安定性を有効に保持しつつ、良好な泡立ちを発現して優れたデンチャープラーク除去効果を発揮する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、脂肪酸換算量で0.1質量%以上であって、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、成分(A)によるデンチャープラーク除去効果を確保しつつ、低温安定性の低下を有効に抑制する観点、及び適用後の口腔内装着器具を装着した際における、不快な風味の発現を防止する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、脂肪酸換算量で20質量%以下であって、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、脂肪酸換算量で0.1質量%以上20質量%以下であって、好ましくは0.2~15質量%であり、より好ましくは0.3~10質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
【0015】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(B)として、分子量が80以上600未満のキレート剤を含有する。これにより、成分(A)により低下しがちな低温安定性を良好に確保しつつ、優れた泡立ちを発現することができる。
なお、成分(B)の分子量とは、化学式量から求められる値を意味する。
【0016】
成分(B)としては、より具体的には、リン酸、ホスホン酸、アミノカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。なお、これらの塩には、水和物(含水塩)も含まれる。
リン酸又はその塩としては、具体的には、ピロリン酸又はその塩、トリポリリン酸又はその塩、メタリン酸又はその塩、フィチン酸又はその塩等が挙げられる。
ホスホン酸又はその塩としては、具体的には、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、アミノトリメチレンホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はその塩、ホスホノブタントリカルボン酸又はその塩等が挙げられる。
アミノカルボン酸又はその塩としては、具体的には、エデト酸(EDTA)又はその塩、ニトリロ三酢酸(NTA)又はその塩、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)又はその塩、3-ヒドロキシ-2,2'-イミノジコハク酸4ナトリウム(HIDS)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)又はその塩、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)又はその塩、L-グルタミン酸二酢酸(GLDA)又はその塩、メチルグリシン二酢酸(MGDA)又はその塩等が挙げられる。
オキシカルボン酸又はその塩としては、具体的には、クエン酸又はその塩、リンゴ酸又はその塩、酒石酸又はその塩、グルコン酸又はその塩、シュウ酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、マロン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスパラギン酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩等が挙げられる。
なかでも、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、リン酸、ホスホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ホスホン酸又はその塩がより好ましく、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩がさらに好ましい。
【0017】
成分(B)の含有量は、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以上であり、よりさらに好ましくは1.5質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、優れたデンチャープラーク除去効果を保持する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下であり、よりさらに好ましくは8質量%以下であり、よりさらに好ましくは6質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.2~15質量%であり、さらに好ましくは0.4~12質量%であり、よりさらに好ましくは0.5~8質量%であり、さらに好ましくは1.5~6質量%である。
【0018】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、0.05以上であって、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.25以上であり、20以下であって、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下であり、よりさらに好ましくは3以下であり、よりさらに好ましくは2以下であり、よりさらに好ましくは1以下であり、よりさらに好ましくは0.8以下である。そして、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、0.05以上20以下であって、好ましくは0.1以上10以下であり、より好ましくは0.15以上5以下であり、さらに好ましくは0.2~4であり、よりさらに好ましくは0.25~3であり、よりさらに好ましくは0.25~2であり、よりさらに好ましくは0.25~1であり、よりさらに好ましくは0.25~0.8である。
【0019】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを兼ね備えて、デンチャープラーク除去効果を充分に発揮させる観点から、さらに、成分(A)以外のアニオン界面活性剤(c1)、ノニオン界面活性剤(c2)、及び両性界面活性剤(c3)から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(C)を含有するのが好ましい。
【0020】
成分(A)以外のアニオン界面活性剤である成分(c1)としては、具体的には、N-アシルアミノ酸、N-アシルタウリン及びα-オレフィンスルホン酸、並びにこれらの塩から選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
N-アシルアミノ酸及びN-アシルタウリンのアシル基は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数6~22のアシル基であるのが好ましく、炭素数10~20のアシル基であるのがより好ましく、炭素数12~18のアシル基であるのがさらに好ましい。
かかるアシル基としては、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、及びココイル基から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウロイル基、ミリストイル基、及びココイル基から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、ラウロイル基、及びココイル基から選ばれる1種以上がさらに好ましく、ココイル基がよりさらに好ましい。
【0022】
N-アシルアミノ酸を構成するアミノ酸部分は、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシンのいずれであってもよく、D体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。かかるN-アシルアミノ酸としては、具体的には、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ミリストイルアスパラギン酸、及びN-ココイルアスパラギン酸、N-ラウロイルグリシン、N-ミリストイルグリシン、N-ココイルグリシンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N-ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルグルタミン酸、及びN-ミリストイルグルタミン酸から選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0023】
N-アシルタウリンとしては、ココイルメチルタウリン、N-カプロイルメチルタウリン、N-ラウロイルタウリン、N-ラウロイルメチルタウリン、N-ミリストイルメチルタウリン、N-パルミトイルメチルタウリン、N-ステアロイルメチルタウリン、及びN-オレオイルメチルタウリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N-ラウロイルメチルタウリン、及びN-ミリストイルメチルタウリンから選ばれる1種又は2種がより好ましい。
【0024】
α-オレフィンスルホン酸及びその塩が有するオレフィン基は、炭素数8~18であるのが好ましく、炭素数14~16であるのがより好ましく、炭素数14であるのがさらに好ましい。
【0025】
これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛等の他の無機塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
成分(c2)のノニオン界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びアルキルグリコシドから選択される1種又は2種以上が挙げられる。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油におけるエチレンオキシ基の平均付加モル数は、好ましくは20~100モルであり、より好ましくは40~80モルである。
【0027】
成分(c3)の両性界面活性剤としては、具体的には、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;カルボキシベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等のアルキルイミダゾリンベタイン塩;ラウリルジメチルアミンオキシド等のアルキルアミンオキシドから選択される1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、ヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン、アルキルスルホベタイン、及びアルキルアミンオキシド、から選択される1種又は2種以上が好ましく、ヤシ油脂肪酸アミドアルキルプロピルベタイン、アルキルアミンオキシドがより好ましい。
【0028】
これら成分(C)のなかでも、低温保存安定性を有効に高めつつ、優れた泡立ちを確保する観点から、成分(c1)が好ましく、N-アシルアミノ酸、及びN-アシルタウリン並びにこれらの塩から選択される1種又は2種以上であるのがより好ましい。
【0029】
成分(C)の含有量は、低温保存安定性と泡立ちをともに有効に高める観点、及びデンチャープラーク除去効果を十分に発揮させる観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を高める観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.2質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.3~8質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%である。
【0030】
成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、優れた低温安定性とともに、良好な泡立ちと良好なデンチャープラーク除去効果とを有効に両立させる観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは3以下である。
【0031】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、成分(A)と成分(B)の相溶性をより高めて、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、さらに、溶剤(D)を含有するのが好ましい。
【0032】
成分(D)としては、具体的には、炭素数2以上6以下の1価又は2価のアルコール、並びに芳香族基を有するアルコールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
炭素数2以上6以下の1価又は2価のアルコールとしては、より具体的には、グリセリン、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、又はエチレングリコール等が挙げられる。
芳香族基を有するアルコールとしては、より具体的には、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
なかでも、低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、グリセリン、プロピレングリコール、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコール、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、これらを2種以上組み合わせて含有するのがより好ましい。
【0033】
成分(D)の含有量は、低温保存安定性と泡立ちをともに有効に高める観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を高める観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは1質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは2~25質量%であり、さらに好ましくは3~15質量%である。
【0034】
成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))は、成分(A)と成分(B)の相溶性を一層高めて、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下である。
【0035】
成分(D)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((D)/(B))は、成分(A)と成分(B)の相溶性を一層高めて、優れた低温安定性と良好な泡立ちとを有効に両立させる観点から、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下であり、よりさらに好ましくは10以下であり、よりさらに好ましくは6以下である。
【0036】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させる観点から、さらに、アニオン性ホモポリマー又はコポリマー(E)を含有するのが好ましい。アニオン性のホモポリマー又はコポリマーとは、アニオン性モノマー由来の構成単位を含むホモポリマー又はコポリマーであり、成分(A)の優れたデンチャープラーク除去効果を一層有効に発揮させることができる。
なお、成分(E)は、アニオン性モノマー1種のみ由来の構成単位からなるホモポリマーであってもよく、2種以上のアニオン性モノマー由来の構成単位からなるコポリマーであってもよく、或いはアニオン性モノマー由来の構成単位と、アニオン性モノマー以外の他のモノマー由来の構成単位とからなるコポリマーであってもよい。
【0037】
成分(E)の質量平均分子量は、デンチャープラーク除去効果の向上を有効に図る観点から、好ましくは2000以上であり、より好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは8000以上であり、よりさらに好ましくは10000以上である。また、成分(E)の質量平均分子量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を確保する観点から、好ましくは500000以下であり、より好ましくは350000以下であり、さらに好ましくは200000以下であり、よりさらに好ましくは100000以下である。そして、成分(E)の質量平均分子量は、好ましくは2000以上500000以下であり、より好ましくは5000~350000であり、さらに好ましくは8000~200000であり、よりさらに好ましくは10000~100000である。
なお、成分(E)の質量平均分子量(Mw)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(クロロホルム溶媒、直鎖ポリスチレンを標準として定められた較正曲線、屈折率検出器を用いる)測定によって求められる値を意味する。
【0038】
成分(E)が含むアニオン性モノマー由来の構成単位は、デンチャープラーク除去効果の発揮に大いに寄与させる観点から、カルボキシル基、スルホ基、又はリン酸基を有するアニオン性モノマー(e1)由来の構成単位であると好ましい。成分(E)を構成するモノマー(e1)としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、スルホン酸、スチレンスルホン酸、メタクリロイルオキシアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルホスフェート、及びこれらの無水物や一部がアルキル基等により置換されてなるモノマー、並びにヒドロキシ基の一部にカルボキシメチル基が結合してなるグリコピラノース等の糖由来のモノマーから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、分子構造中に芳香環又は脂環を含まないモノマーであるのが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、及びスルホン酸から選ばれる1種又は2種以上であるのがより好ましい。
【0039】
成分(E)の全構成単位100質量%中におけるアニオン性モノマー由来の構成単位の含有量は、優れたデンチャープラーク除去効果の発揮を有効に確保する観点から、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは100質量%以下である。
【0040】
成分(E)としては、具体的には、例えば、アクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、架橋型アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、アクリル酸/スルホン酸コポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸コポリマー、ホスフィン酸/アクリル酸コポリマー、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸、カラギーナン、ペクチン、及びヒアルロン酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、優れたデンチャープラーク除去効果を発揮する観点から、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/マレイン酸コポリマー、アクリル酸/メタクリル酸コポリマー、及びアクリル酸/スルホン酸コポリマーから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アクリル酸/マレイン酸コポリマー及びアクリル酸/スルホン酸コポリマーから選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、アクリル酸/マレイン酸コポリマーがさらに好ましい。
【0041】
なお、アクリル酸/マレイン酸コポリマーを構成するアクリル酸モノマー由来の構成単位とマレイン酸モノマー由来の構成単位との質量比(アクリル酸/マレイン酸)は、好ましくは0.01~99であり、より好ましくは0.05~50であり、さらに好ましくは0.1~10であり、よりさらに好ましくは0.1~5である。
【0042】
成分(E)の含有量は、優れたデンチャープラーク除去効果の発揮を確保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.07質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.3質量%以上である。また、成分(E)の含有量は、各成分の良好な溶解性又は分散性を確保する観点、及び優れた低温保存安定性の発現を担保する観点から、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは8質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは6質量%以下であり、よりさらに好ましくは5質量%以下であり、またさらに好ましくは4質量%以下であり、よりさらに好ましくは2質量%以下である。そして、成分(E)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは0.05質量%以上8質量%以下であり、より好ましくは0.07~7質量%であり、さらに好ましくは0.2~6質量%であり、よりさらに好ましくは0.2~5質量%であり、またさらに好ましくは0.3~4質量%であり、よりさらに好ましくは0.3~2質量%である。
【0043】
成分(E)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((E)/(A))は、優れた低温安定性と良好な泡立ちと良好なデンチャープラーク洗浄性を有効に両立させる観点から、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは2以下である。
【0044】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、上記各成分を良好に分散又は溶解させつつ、優れた低温保存安定性とともに良好な泡立ちを発現して、優れたデンチャープラーク除去効果の発揮を確保する観点、及び口腔内装着器具への適用後における口腔内装着器具用洗浄剤組成物の拡散性も高める観点から、さらに、水(F)を含有するのが好ましい。
【0045】
成分(F)の含有量は、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に、好ましくは50質量%超であり、より好ましくは56質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98.5質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である。
なお、本発明における水とは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物に直接配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に含まれる全水分を意味する。また、本発明における水とは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物中に予め配合されている水を意味することを含むが、そうでない場合、例えば使用前に水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりした状態である場合、その希釈や溶解に用いた水も含む意味である。
なお、水の含有量の測定方法は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することもできる。
【0046】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、炭酸塩や重炭酸塩、水酸化物、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸又はこれらの塩等のpH調整剤;上記成分以外の界面活性剤;抗炎症剤;防腐剤;香料;顔料;色素;漂白剤;酵素等を含有することができる。
【0047】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、優れた低温保存安定性と良好な泡立ちの両立を図りつつ、優れたデンチャープラーク除去効果の発揮を確保する観点から、好ましくは7以上であり、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは8.5以上であり、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、さらに好ましくは12以下であり、よりさらに好ましくは11.5以下であり、よりさらに好ましくは10以下である。
【0048】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の形態は、液状、泡状、ペースト状、ジェル状、濃縮状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状であってもよく、さらに液状の本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡吐出容器に充填した形態や、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を噴霧容器に充填した形態、又はエアゾール容器に充填した形態シートに含浸させた形態であってもよい。
なお、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を濃縮状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状に適用した場合、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の低温安定性とは、水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりしたときの低温安定性を意味し、泡立ちとは、水等により希釈したり、又は水等に溶解させたりしたときにもたらされる泡立ちを意味する。
【0049】
なかでも、本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物は、本発明の効果を充分に享受する観点から、液状の形態(液体洗浄剤組成物)であるのが好ましく、さらに液状の本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡吐出容器に充填した泡状の形態とするのがより好ましく、使用時に泡吐出容器から内容物である本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡状で口腔内装着器具に吐出して洗浄するのが好ましい。
【0050】
このように、優れた低温安定性と泡立ちを兼ね備えた本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、泡状で口腔内装着器具に吐出する場合、口腔内装着器具に泡を良好に密着させ、かつ複雑な形状を伴う口腔内装着器具の隅々にわたり組成物を充分に到達させて、有効かつ効果的に優れたデンチャープラーク除去効果を発揮させることができる。その結果、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水等により漱いで洗い流すのみで、特段ブラッシング等の物理的な付加力を施すことなく、堅固に付着したデンチャープラーク汚れを簡易的かつ効果的に除去することが可能となる。
【0051】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の使用態様は、まず、義歯等の口腔内装着器具を口腔内装着器具用洗浄剤組成物に浸漬、或いは、口腔内装着器具用洗浄剤組成物を口腔内装着器具に泡吐出、塗布、滴下又は噴霧等することにより適用した後、一定時間放置する。放置時間は、通常20~30分であればよく、さらに放置時間を5~10分に短縮することも可能である。
次に、放置した後、口腔内装着器具を水等により漱いで口腔内装着器具用洗浄剤組成物を洗い流す。本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物であれば、より好ましくは、洗い流すだけでよく、ブラッシング等の物理的な付加力を特段施す必要がない。
【0052】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を液状の形態で泡吐出容器に充填してなるものとする場合、その使用態様は、泡吐出容器から泡状で吐出し、義歯等の口腔内装着器具をその泡で被覆した後、一定時間放置する。
泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、優れたデンチャープラーク除去効果を充分に享受する観点から、好ましくは1分以上であり、より好ましくは2分以上であり、さらに好ましくは3分以上である。また、泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、泡の効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは30分以下であり、より好ましくは20分以下であり、さらに好ましくは10分以下である。そして、泡で口腔内装着器具を被覆する時間は、好ましくは1分以上30分以下であり、より好ましくは2~20分であり、さらに好ましくは3~10分である。
【0053】
口腔内装着器具を被覆する泡量は、良好な泡立ちの効果を充分に発揮させて、優れたデンチャープラーク除去効果を充分に享受する観点から、口腔内装着器具の表面積1cm2あたりに、好ましくは0.05g以上であり、より好ましくは0.07g以上であり、さらに好ましくは0.1g以上であり、好ましくは3.5g以下であり、より好ましくは3.2g以下であり、さらに好ましくは3g以下である。
【0054】
形成された泡で口腔内装着器具を被覆した後、口腔内装着器具を水で漱ぐことにより、洗浄剤組成物を洗い流すのが好ましい。このように、液状の本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡吐出容器に充填して泡状の形態で適用すると、特段物理的な付加力を要することなく口腔内装着器具を水で漱ぐのみで、被覆した泡を洗い流しながら優れたデンチャープラーク除去効果を発揮することができ、かつ優れた低温安定性を保持していることから、保存環境に左右されることなくその効果を維持することができ、高齢者等の使用者にとっても常時負担が軽減され、容易に使用頻度を高めることもできる。
また、形成された泡で口腔内装着器具を被覆した後、物理的な付加力を施すことなく、組成物を適用した後の口腔内装着器具を水により漱いで洗い流すことが好ましい。これにより、簡易的かつ効果的に口腔内装着器具を洗浄することが可能である。
【0055】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を充填する泡吐出容器とは、泡形成機構を備えた容器であり、該容器より噴射又は吐出することにより泡を形成する。
泡形成機構を備えた容器とは、具体的には、容器に充填されてなる内容物を噴射口又は吐出口から容器外部へと泡形成機構を介して噴射又は吐出することにより、泡を形成することができる容器である。かかる泡形成機構を備えた容器としては、トリガー式噴射容器、ポンプ式ディスペンサー容器が挙げられる。
【0056】
トリガー式噴射容器は、内容物を充填する容器本体と、泡形成機構であるトリガー及びスプレイヤーを具備しており、使用時にトリガーを引くことにより、内容物がスプレイヤーの噴射口から外部へと噴射され、泡が形成される。かかるトリガー式噴射容器は、直圧型であってもよく、蓄圧型であってもよい。
ポンプ式ディスペンサー容器は、内容物を充填する容器本体と、チューブやノズル、及びこれらの内部にメッシュ等の泡形成機構を具備し、使用時に容器の一部を押圧することにより、内容物がチューブやノズルの吐出口から外部へと吐出され、泡が形成される。
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を用いて口腔内装着器具を洗浄する場合、これら容器のなかでも、泡の効果を充分に発揮させる観点から、トリガー式噴射容器を用いるのが好ましい。
【0057】
トリガー式噴射容器を用いる場合、泡の効果を充分に発揮させる観点から、噴射距離20cmにおける噴射径を好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上、好ましくは10cm以下、より好ましくは8cm以下に設定するのが望ましい。
また、トリガー式噴射容器において、内容物である洗浄剤組成物の噴射力は、泡を有効に形成させる観点から、噴射距離 20cmにおける噴射力を好ましくは1g・f以上、より好ましくは3g・f以上、好ましくは10g・f以下、より好ましくは8g・f以下に設定するのが望ましい。
【0058】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を開示する。
[1]次の成分(A)、及び(B):
(A)炭素数10以上20以下の脂肪酸又はその塩 脂肪酸換算量で0.1質量%以上20質量%以下
(B)分子量が80以上600未満のキレート剤
を含有し、かつ
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、0.05以上20以下である口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[2]成分(A)の脂肪酸、及び成分(A)の脂肪酸塩を構成する脂肪酸の炭素数が、好ましくは12以上20以下であり、より好ましくは14以上20以下であり、さらに好ましくは16以上20以下であり、また成分(A)の脂肪酸が、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有するものであってよく、より好ましくは不飽和の直鎖を有するものである上記[1]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[3]成分(A)の含有量が、脂肪酸換算量で好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である上記[1]又は[2]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[4]成分(B)が、水和物(含水塩)も含む、リン酸、ホスホン酸、アミノカルボン酸、オキシカルボン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であり、好ましくはリン酸、ホスホン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはホスホン酸又はその塩であり、さらに好ましくはヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩である上記[1]~[3]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[5]成分(B)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上であり、よりさらに好ましくは0.5質量%以上であり、よりさらに好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは12質量%以下であり、よりさらに好ましくは8質量%以下であり、よりさらに好ましくは6質量%以下である上記[1]~[4]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0059】
[6]成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.25以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下であり、よりさらに好ましくは3以下であり、よりさらに好ましくは2以下であり、よりさらに好ましくは1以下であり、よりさらに好ましくは0.8以下である上記[1]~[5]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[7]さらに成分(A)以外のアニオン界面活性剤(c1)、ノニオン界面活性剤(c2)、及び両性界面活性剤(c3)から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤(C)を含有する上記[1]~[6]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[8]成分(C)の含有量が、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である上記[7]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[9]成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))が、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは3以下である上記[7]又は[8]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0060】
[10]さらに溶剤(D)を含有し、その含有量が、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である上記[1]~[9]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[11]成分(D)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((D)/(A))が、好ましくは1以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは5以上であり、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下である上記[10]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[12]成分(D)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((D)/(B))が、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1以上であり、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、さらに好ましくは20以下であり、よりさらに好ましくは10以下であり、よりさらに好ましくは6以下である上記[10]又は[11]の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[13]さらにアニオン性ホモポリマー又はコポリマー(E)を含有する上記[1]~[12]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[14]さらに水(F)を含有し、その含有量が、好ましくは50質量%超であり、より好ましくは56質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、好ましくは99質量%以下であり、より好ましくは98.5質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以下である上記[1]~[13]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【0061】
[15]25℃におけるpHが、好ましくは7以上であり、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは8.5以上であり、好ましくは14以下であり、より好ましくは13以下であり、さらに好ましくは12以下であり、よりさらに好ましくは11.5以下であり、よりさらに好ましくは10以下である上記[1]~[14]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
[16]口腔内装着器具用洗浄剤組成物の形態は、液状、泡状、ペースト状、ジェル状、濃縮状、粉末状、顆粒状、又は錠剤状であってもよく、液状の形態であるのが好ましく、さらに液状の本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡吐出容器に充填した泡状の形態とするのがより好ましい上記[1]~[15]いずれか1の口腔内装着器具用洗浄剤組成物。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0063】
[実施例1~26、比較例1~4]
表1及び表4に記載の各成分を混合し、各口腔内装着器具用洗浄剤組成物を調製した。得られた口腔内装着器具用洗浄剤組成物について、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1~4に示す。
【0064】
《低温保存安定性の評価》
得られた各口腔内装着器具用洗浄剤組成物を80ml満量の透明PET(ポリエチレンテレフタレート)瓶に満量充填し、-5℃で保存を開始し、7日経過ごとにPET容器の外側から内容物の口腔内装着器具用洗浄剤組成物を目視により観察して、各口腔内装着器具用洗浄剤組成物が均一に透明化するまでの日数をカウントした。
【0065】
《泡立ちの評価》
得られた各口腔内装着器具用洗浄剤組成物を泡吐出用容器(噴射距離20cmにおける噴射径:5cm、噴射力:5g・fに設定したトリガー式噴射容器)に充填し、吐出口から泡状にて200mlのメスシリンダー(ニッコー・ハンセン社製、材質:PMMA、メーカー型番:30-0106-55)へ10回噴射したときの泡の総体積(ml)を測定し、組成物1gあたりの泡の体積(ml/g)に換算して、泡立ちの評価の指標とした。なお、測定温度は25℃であった。
【0066】
《デンチャープラーク除去効果の評価》
1)デンチャープラークモデルの作製
寒天プレート(Anaero Columbia Agar with RSB, Nippon Becton Dickinson)にStreptococcus mutans JCM5705及びCandida albicans JCM1542のグリセロールストックを画線した。これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で48時間から72時間培養した。培養後の寒天プレートからシングルコロニーをピックアップし、液体培地A(SCD培地ダイゴ(日本製薬社製)3質量%、Bacto Yeast Extract (ベクトンディッキンソン社製)0.5質量%)20mLを分注した細胞培養フラスコに入れてかき混ぜた。これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で24時間培養した。この培養液をOD=0.5となるように液体培地Aで希釈した。この希釈液を液体培地B(SCD培地ダイゴ3質量%、Bacto Yeast Extract 0.5質量%、D(+)-グルコース(富士フィルム和光純薬社製)1質量%、スクロース(富士フィルム和光純薬社製)2質量%)でS. mutans OD=0.01、C. albicans OD=0.0001となるように希釈した。さらにこの希釈液に滅菌した塩化カルシウム(富士フィルム和光純薬社製)水溶液をカルシウムイオン終濃度100ppmとなるように混ぜ、デンチャープラークモデル試験液を調製した。
次に、唾液処理を施した義歯基板(杏友会社製、素材:ポリメチルメタクリレート樹脂、1cm)を24穴プレートに入れ、上記調製したデンチャープラークモデル試験液を1mLずつ添加した後、これをCO2パックとともにプラスチックケースに格納して嫌気条件下とし、37℃で16時間培養した。唾液処理はまず、健常成人より採取した刺激時唾液を遠心分離(3000rpm、25℃、10分間)し、その上清をフィルター滅菌して唾液サンプルを調製した。次に、義歯基板を24穴プレートに入れ、上記調製した唾液サンプルを1mLずつ添加した後、プラスチックケースに格納して37℃で6時間静置した。その後、減圧ポンプを用いてプレート中の唾液サンプルを吸い取った。
【0067】
2)デンチャープラーク除去効果の評価
減圧ポンプを用いてプレート中のデンチャープラークモデル試験液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振とうした。次にポンプを用いて水を吸い取り、上記得られた各口腔内装着器具用洗浄剤組成物1mLを別途24穴プレートに調製した。次いで、調製した溶液にデンチャープラークモデルを形成した義歯基板を浸漬し、5分間放置した。
その後、各組成物を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪し、この操作を3回繰り返した。振盪は、振盪機(BioShake iQ(ワケンビーテック社製))を用い、室温(25℃)、550rpmの条件で行った。次いで、水を吸い取り、0.1質量%クリスタルバイオレット(CV)溶液を750μL添加して15分間振盪した。
【0068】
さらにポンプでCV染色液を吸い取り、イオン交換水1mLを添加して5分間振盪し、これを2回繰り返した。次いで、水をポンプで吸い取り、エタノール500μLを添加してピペッティングした後、抽出液をイオン交換水で10倍希釈し、マイクロプレートレコーダー(TECAN社製 波長可変型吸光マイクロプレートリーダー サンライズレインボーサーモ)で吸光度OD595nmを測定した。
また、上記得られた組成物を用いることなく、イオン交換水で洗浄したのみの吸光度OD595nm(初期値)を基準とし、下記式(1)にしたがってデンチャープラーク除去率(%)を算出した。
デンチャープラーク除去率(%)=
100-{上記得られた組成物を用いた際のOD595nm/イオン交換水で洗浄したのみ
のOD595nm}×100・・・(1)
【0069】
得られたデンチャープラーク除去率の値が大きいほど、デンチャープラーク除去効果が高いことを意味することから、かかる値を元に下記基準にしたがってデンチャープラーク除去効果を評価した。
AA:AA:デンチャープラーク除去率が80%以上
A :デンチャープラーク除去率が70%以上80%未満
B :デンチャープラーク除去率が60%以上70%未満
C :デンチャープラーク除去率が35%以上60%未満
D :デンチャープラーク除去率が20%以上35%未満
E :デンチャープラーク除去率が20%未満
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
本発明の口腔内装着器具用洗浄剤組成物の処方例を以下に示す。
なお、※1~3は表1と同じ、※4はアクアリックGH-004、日本触媒社製である。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】