(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-09
(45)【発行日】2024-08-20
(54)【発明の名称】スマートグリッドの情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240813BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240813BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240813BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240813BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240813BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 301A
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/00 180
(21)【出願番号】P 2022033687
(22)【出願日】2022-03-04
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中村 昂章
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 克史
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀幸
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169137(JP,A)
【文献】特開2002-230308(JP,A)
【文献】特開2021-036762(JP,A)
【文献】特開2020-177602(JP,A)
【文献】特開2020-107200(JP,A)
【文献】特開2019-197425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00- 5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スマートグリッドの情報処理装置であって、
前記スマートグリッドの複数のユーザに紐付けて当該複数のユーザの仮想貯電量がそれぞれ記録された第1記憶部を有し、
ここで、前記第1記憶部は、
前記ユーザの仮想貯電量が0より大きい場合には、0より大きい電力量に応じてプラスの量として、前記ユーザの仮想貯電量が0より小さくなる場合には、0より小さくなる電力量に応じてマイナスの量として記録されるように構成されており、
前記第1記憶部に記憶されるユーザの仮想貯電量は、
当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力された電力量に応じて加算され、かつ、
当該ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッドから出力された電力量に応じて減算されるように構成され
ており、
前記ユーザの仮想貯電量は、マイナスの許容量が予め定められており、
前記ユーザの仮想貯電量が、前記マイナスの許容量を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器に前記スマートグリッドから出力された電力量に応じて買電処理が実行されるように構成された、
スマートグリッドの情報処理装置。
【請求項2】
前記マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器から前記スマートグリッドに出力される電力量に応じて定められる、請求項
1に記載された情報処理装置。
【請求項3】
前記マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器から前記スマートグリッドに出力される電力量の予測値に応じて定められる、請求項
1に記載された情報処理装置。
【請求項4】
前記スマートグリッドに接続された蓄電装置のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置がユーザに紐付けて記憶された第2記憶部をさらに有し、
前記第1記憶部に記憶されたユーザの仮想貯電量は、
当該ユーザに紐付けられた蓄電装置に蓄電された電力量に応じて加算され、かつ、
当該ユーザに紐付けられた蓄電装置から出力された電力量に応じて減算されるように構成された、
請求項1
から3までの何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項5】
前記ユーザの仮想貯電量は、プラスの許容量が予め定められており、
前記ユーザの仮想貯電量が、前記プラスの許容量を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器から前記スマートグリッドに出力された電力量に応じて売電処理が実行されるように構成された、請求項1から
4までの何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項6】
前記プラスの許容量は、前記スマートグリッドに接続された蓄電装置のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置に蓄電可能な容量に応じて定められる、請求項
5に記載された情報処理装置。
【請求項7】
前記スマートグリッドの複数のユーザ間の、前記仮想貯電量の貸し借りが記録されるように構成された、請求項1から
6までの何れか一項に記載された情報処理装置。
【請求項8】
前記仮想貯電量の貸し借りに対して利息が設定されるように構成された、請求項
7に記載された情報処理装置。
【請求項9】
ユーザの仮想貯電量の情報が、ブロックチェーンに記録されるように構成された、請求項1から
8までの何れか一項に記載された情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートグリッドの情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-118618号公報は、複数の需要家に適切に電力の削減目標量を割振ることができるエネルギー管理システムが開示されている。同公報で開示されるエネルギー管理システムは、対象時間帯の各需要家の発電設備の発電量を、気象情報に基づいて予測する発電量予測部と、対象時間帯の各需要家の電力需要量を予測する需要量予測部と、電力需要量の予測値から発電量の予測値を差し引いた実需要量の予測値に基づいて、電力削減量創出指令の電力削減量の各需要家への割振りを決定する割振り決定部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者は、より自由度のある電力の取引を実現し、再生エネルギーを利用した電力に関し、ユーザの電力利用の利便性を向上させたい、と考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示されるスマートグリッドの情報処理装置は、スマートグリッドの複数のユーザに紐付けて当該複数のユーザの仮想貯電量がそれぞれ記録された第1記憶部を有している。
ここで、第1記憶部は、ユーザの仮想貯電量が0より大きい場合には、0より大きい電力量に応じてプラスの量として、前記ユーザの仮想貯電量が0より小さくなる場合には、0より小さくなる電力量に応じてマイナスの量として記録されるように構成されている。
第1記憶部に記憶されるユーザの仮想貯電量は、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッドから出力された電力量に応じて減算されるように構成されている。
【0006】
この情報処理装置によれば、仮想貯電量がマイナスの量として記録される。仮想貯電量がマイナスの量として記録されることによって、ユーザは、電力が足らないときはスマートグリッドから電力を借りることができ、余剰電力が生じた後で返すことができる。これにより、再生エネルギーを利用するユーザの電力利用の利便性が向上する。
【0007】
情報処理装置は、スマートグリッドに接続された蓄電装置のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置がユーザに紐付けて記憶された第2記憶部をさらに有していてもよい。この場合、第1記憶部に記憶されたユーザの仮想貯電量は、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置に蓄電された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置から出力された電力量に応じて減算されるように構成されていてもよい。
【0008】
ユーザの仮想貯電量は、マイナスの許容量が予め定められていてもよい。ユーザの仮想貯電量が、マイナスの許容量を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッドから出力された電力量に応じて買電処理が実行されるように構成されていてもよい。マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量に応じて定められてもよい。また、マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量の予測値に応じて定められてもよい。
【0009】
ユーザの仮想貯電量は、プラスの許容量が予め定められていてもよい。この場合、ユーザの仮想貯電量が、プラスの許容量を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器から前記スマートグリッドに出力された電力量に応じて売電処理が実行されるように構成されていてもよい。プラスの許容量は、スマートグリッドに接続された蓄電装置のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置に蓄電可能な容量に応じて定められてもよい。
【0010】
また、情報処理装置は、スマートグリッドの複数のユーザ間の、仮想貯電量の貸し借りが記録されるように構成されていてもよい。この場合、仮想貯電量の貸し借りに対して利息が設定されるように構成されていてもよい。ユーザの仮想貯電量の情報は、ブロックチェーンに記録されるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、スマートグリッド10を示す模式図である。
【
図2】
図2は、スマートグリッド10の情報処理装置100の概略図である。
【
図3】
図3は、仮想蓄電容量をユーザに紐付けて記憶する記憶部の構成例を示す構成図である。
【
図4】
図4は、発電装置51~55をユーザに紐付けて記憶する記憶部の構成例を示す構成図である。
【
図5】
図5は、蓄電装置61~65をユーザに紐付けて記憶する記憶部の構成例を示す構成図である。
【
図6】
図6は、購入処理m5の一例である処理m51,m52を示す模式図である。
【
図7】
図7は、売却処理m6の一例である処理m61,m62を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第1記録処理m1で記録されるテーブルの他の形態を示す模式図である。
【
図9】
図9は、第2記録処理m11および共用設定処理m12によって実現される仕組みを示す模式図である。
【
図10】
図10は、ここで開示される情報処理装置140を含むスマートグリッド10の構成例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、ユーザの電力需給の推移を示すシミュレーションのデータの例を示す図である。
【
図12】
図12は、ユーザの電力需給の推移を示すシミュレーションのデータの例を示す図である。
【
図13】
図13は、ユーザの電力需給の推移を示すシミュレーションのデータの例を示す図である。
【
図14】
図14は、ユーザの電力需給の推移を示すシミュレーションのデータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ここで開示の実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特にここでの開示を限定することを意図したものではない。ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、ここで説明される実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
《スマートグリッド10》
図1は、スマートグリッド10を示す模式図である。スマートグリッド10は、
図1に示されているように、送電網20と通信網40とを備えている。スマートグリッドの送電網20には、複数の電力機器が接続されている。ここで、電力機器は、電気を利用するために必要な、様々な機器類の総称である。電力機器には、発電、電気エネルギーから他のエネルギーへの変換、蓄電、電圧変換・力率調整、電力の接続・遮断など機器が含まれうる。スマートグリッド10の送電網20には、例えば、電力会社が運営する火力発電所や水力発電所や原子力発電所などの大規模発電設備22の電力を送る既設送電線24や、太陽光発電や風力などの自然エネルギーを利用した発電事業者26や、太陽光発電装置やコージェネレーション発電装置を設置した住宅28や、工場に太陽光発電装置を設置した工場事業者30や、ビルなどに太陽光発電装置を設置したビル事業者32などの種々の電力機器が接続されている。また、送電網20には、車載電池が搭載された電動車両も接続されうる。また、太陽光発電所や風力発電所などを含む地域の独立した小型の系統は、小型の電力の配電系統とも考えられ、マイクログリッド35と称される。これらスマートグリッドの送電網20に接続された電力需要家や発電事業者などは、それぞれ通信網40に接続されており、送配電のデータが双方向に通信されて管理されうる。
【0014】
ここで、送電網20に接続可能な電動車両には、送電網20に接続されて充放電が可能なプラグイン機能を備えたいわゆるプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、プラグインレンジエクステンダー式のEV(RexEV:Range Extender Electric Vehicle)、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)、電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などのいろいろな種類がある。また、送電網20に接続されて車両が発電した電力を送電網20に供給できる機能を備えたハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)やレンジエクステンダー式のEVや燃料電池車なども含まれる。ハイブリッド車両やレンジエクステンダー式のEVには、ガソリンや軽油を利用して発電するものだけでなく、水素エンジンを搭載して発電するものでもよい。
【0015】
電力需要家は、家庭や工場など電力を消費する者であり、適宜に買電しつつ電力の供給を受けている。太陽光発電や風力などの自然エネルギーを利用した発電事業者は、発電された電力を売電する。自社工場や自社ビルなどに太陽光発電装置を設置した事業者や自家発電を行なう電力利用者などは、太陽光発電装置で余剰電力が生じた場合に売電し、太陽光発電装置で賄えない電力を適宜に買電する。
【0016】
このうち、家庭内のエネルギー管理システム28aは、HEMS:Home Energy Management Systemと称される。工場内のエネルギー管理システム30aは、FEMS:Factory Energy Management Systemと称される。ビル内のエネルギー管理システム32aは、BEMS:Building Energy Management Systemと称される。太陽光発電所や風力発電所やバイオマス発電などの地域の発電所での電力供給量と地域内での電力需要の管理を行なうマイクログリッド35のエネルギー監理システム35aは、CEMS:Cluster/Community Energy Management Systemと称される。CEMSは、スマートグリッドの要になるシステムであり、HEMSやBEMSやFEMSを含めた地域全体のエネルギーを管理するシステムである。スマートグリッド10には、これらから情報を収集する情報処理装置100が設置される。スマートグリッド10とは、通信網40を通じてIT技術を利用し、送電網20の電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できるように構成されている。
【0017】
図2は、スマートグリッド10の情報処理装置100の概略図である。スマートグリッド10には、
図2に示されているように、アグリゲーションコーディネータ11と、リソースアグリゲータ13とが存在しうる。アグリゲーションコーディネータ11は、リソースアグリゲータ13が制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者である。アグリゲーションコーディネータ11は、例えば、電力会社がこれを担う。リソースアグリゲータ13は、一般には、電力の需要家とVPPサービス契約を直接締結してリソース制御を行う事業者である。
【0018】
アグリゲーションコーディネータ11は、
図2に示されているように、リソースアグリゲータ13にデマンドレスポンスに対してこれを調整する制御を要求する(D1)。リソースアグリゲータ13は、アグリゲーションコーディネータ11との契約に沿って、かかる制御要求に応える(R1)。リソースアグリゲータ13に対して求められる調整は、電力需要を減らす(抑制する)「下げDR」、電力需要を増やす(創出する)「上げDR」の2つである。下げDRでは、例えば、HEMSやBEMSやFEMS(
図1参照)に対して、電力消費を抑える制御を実行させる。また、送電網20に接続されて電力の出力が可能な蓄電装置や電動車両を備えている場合には、下げDRでは、蓄電装置や電動車両に溜められた電力が送電網20に供給されるように制御されてもよい。上げDRでは、例えば、HEMSやBEMSやFEMSに対して、電力消費を促す制御を実行させる。例えば、BEMSによって空調の設定温度を抑制する制御が解除されてもよい。FEMSによって工場の稼働率が上げられてもよい。また、送電網20に接続されて電力の出力が可能な蓄電装置や電動車両を備えている場合には、上げDRでは、蓄電装置や電動車両に積極的に電力が溜められるように蓄電装置や電動車両の車載電池が制御されてもよい。
【0019】
ところで、現状、電力の授受は、都度、売電、買電で処理されている。送電網20に供給した電力は売電され、送電網20から受電した電力は買電となる。この場合、例えば、太陽光発電装置および蓄電装置を有する住宅では、蓄電装置の蓄電能力を超えるような太陽光発電装置に余剰の電力があれば、都度、売電される。夜間や天候が不良な場合などでは、蓄電装置に電力が貯まっていない場合や蓄電装置の出力能力に制限があり、蓄電装置の出力のみでは家庭の消費電力を賄えない場合がある。このため、ユーザは、都度、不足する電力を買電する必要がある。しかし、住宅に設置された太陽光発電装置で発電された電力がいつでも使えるならば、家庭の消費電力を全て太陽光発電装置で賄えるかもしれず、また買電する電力を少なくできるかもしれない。また、売電行為は、電力が金銭に交換される行為であり、買電行為は金銭で電力を買う行為である。金銭を介するため、売電価格と買電価格との差によって、金銭的には差損が生じうる。つまり、このような場合でも、自家で発電された電力を、最大限にユーザが自家消費したと思えうる仕組みを構築したい、と本発明者は考えた。
【0020】
ここで提案されるスマートグリッド10の情報処理装置100は、
図2に示されているように、スマートグリッド10の通信網40に接続されている。スマートグリッド10は、複数の発電装置51~55と複数の蓄電装置61~65とが接続された送電網20と、少なくとも送電網20で送られた電力量の情報が送られる通信網40とを有する。
【0021】
図2に示された例では、発電装置51~55には、太陽光発電装置やコージェネレーション発電装置や風力発電装置やバイオマス発電装置などの種々の発電装置が含まれる。また、発電装置51~55には、家庭用の発電装置や大規模な発電装置なども含まれる。
【0022】
蓄電装置61~65には、定置型の蓄電装置やスマートグリッド10に接続可能な電動車両の車載電池などが含まれうる。定置型の蓄電装置には、家庭用の定置型の蓄電装置や大規模な蓄電装置なども含まれる。
【0023】
図2に示された例では、蓄電装置61,62は、住宅A1,A2に設置された家庭用の定置型蓄電装置である。また、住宅A1,A2には、充放電スタンドが用意されており、適宜に電動車両71,72が接続される。電動車両71,72は、車載電池を備えており、充放電スタンドを通じて充放電可能である。このため電動車両71,72は、適宜に蓄電装置として機能する。また、住宅A1,A2の屋根には、発電装置51,52としての太陽光パネルがそれぞれ取付けられている。住宅A1,A2は、戸建て住宅でもよいし、マンションやアパートのような集合住宅でもよい。
【0024】
工場A3は、太陽光パネルなどの再生可能エネルギーを利用した発電装置53と定置型の蓄電装置63が設置されている。
図2に示された例では、工場A3には、充電スタンドが用意されている。充電スタンドには、例えば、電動車両で通勤する従業員の電動車両73が接続される。ここで従業員の電動車両73は、勤務時間中は工場A3の充電スタンドを通じてスマートグリッド10に接続される。また、在宅時間中は、住宅に設置された充電スタンドを通じてスマートグリッド10に接続される。
【0025】
例えば、住宅A1の住人は、工場A3の従業員でありうる。この場合、住宅A1の住人が工場A3に電動車両71で通勤するような状況が考えられる。電動車両71は、住宅A1と工場A3とで適宜にスマートグリッド10に接続されうる。このため、平日でも電動車両71は、駐車されている時間帯では概ねスマートグリッド10に接続されている。なお、電動車両71~73は、住宅や勤務先だけでなく、商業施設や観光地や地域の充電スポットA6などでも、充電スタンド81を通じてスマートグリッド10に接続されうる。そして、充電スポットA6の機能あるいは電動車両71~73の機能において、スマートグリッド10からの充電やスマートグリッド10への放電が適宜に制御されるように構成されうる。スマートグリッド10からの充電やスマートグリッド10への放電は、例えば、リソースアグリゲータ13によって制御されてもよい。
【0026】
発電事業者A4は、太陽光パネルが多数設置された発電装置54を備えている。発電事業者A4は、太陽光パネルで発電された電力をスマートグリッド10に放電する。発電事業者A4の発電装置には、太陽光発電に限らず、風力発電やバイオマス発電や小型水力発電など、種々の発電装置が採用されうる。発電事業者A4は、所要の定置型の蓄電装置64を備えていてもよい。蓄電事業者A5は、蓄電装置を多数設置した大規模な蓄電装置65を用意した事業者である。
図2に示された形態では、蓄電事業者A5の施設には、太陽光パネルのような発電装置65も併設されている。蓄電事業者A5が用意する大規模な蓄電装置65には、車載電池の再利用品や電池メーカーの規格外品を組み合わせた定置型蓄電池などでもよい。このような定置型蓄電池は、比較的安価でかつ大容量で安定した蓄電池が実現できるとされている。
【0027】
スマートグリッド10に接続された蓄電装置全体の総容量は、多ければ多いほど、蓄電の自由度が高くなる。スマートグリッド10に接続された蓄電装置全体としての総容量として、例えば、マイクログリッドで必要とされる電力の半日分以上の蓄電容量、より好ましくは2~3日分以上の蓄電容量、さらに好ましくは1週間分以上の蓄電容量が用意されており、かつ、十分な充電が行なわれているとよく、さらにスマートグリッド10に接続された蓄電装置全体としてマイクログリッドの域内で発電される発電量に対して十分な空き容量が確保されているとよい。これによって、スマートグリッド10の蓄電や給電の自由度が高くなり、ユーザの利便性が向上する。ここで提案される情報処理装置100によって管理されるスマートグリッド10においては、
図2に示されているように、大規模な蓄電能力を備えた蓄電装置を有し、スマートグリッド10を通じた蓄電を主たる事業とする蓄電事業者A5なども成り立ちうる。
【0028】
《情報処理装置100》
スマートグリッド10の情報処理装置100は、スマートグリッド10の情報を処理する装置である。情報処理装置100は、例えば、組み込まれたプログラムに沿って所定の処理を実行するコンピュータで実現されうる。
図2に示された形態では、情報処理装置100は、スマートグリッド10の通信網40に接続されたリソースアグリゲータ13のクラウドサーバの一機能として組み込まれている。情報処理装置100の各処理は、予め定められたプログラムに従って所定の演算処理を行う処理モジュールとして具現化されうる。
【0029】
ところで、スマートグリッド10に接続された発電装置51~55で発電された電力は、自家消費される他、自家の蓄電池や電動車両に蓄電される。余剰の電力が生じた場合には、スマートグリッド10に供給される。これに対して、都度、売電処理されるように構成されてもよい。また、電力が不足する場合には、スマートグリッド10から不足の電力が供給される。これに対して、都度、買電処理されるように構成されてもよい。
【0030】
例えば、住宅A1のユーザは、自家の発電装置51によって発電された電力を蓄電装置61に貯えることができる。自家の発電装置51によって発電された電力は、スマートグリッド10に供給することもできる。スマートグリッド10に供給された電力は、都度、電力事業者に売電されている。スマートグリッド10に供給された電力は、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10に接続された需要家によって消費される。需要家は、スマートグリッド10から電力を受給する際に、都度、電力事業者から買電している。
【0031】
他方で、スマートグリッド10には、複数の蓄電装置61~65が接続されている。複数の蓄電装置61~65は、例えば、リソースアグリゲータ13の指令に従って充放電が制御できるように構成されうる。このようなスマートグリッド10において、本発明者は、住宅A1のユーザは、スマートグリッド10を通じて、自家の余剰電力を蓄えることができると考えている。例えば、住宅A1のユーザの余剰電力は、スマートグリッド10を通じて、スマートグリッド10に接続された複数の蓄電装置61~65にスマートグリッド10の余剰電力を貯えられるように制御されてもよい。この場合、住宅A1のユーザが自家の発電装置51によって発電された電力がスマートグリッド10に供給された場合には、リソースアグリゲータ13の制御を通じて、スマートグリッド10に接続された複数の蓄電装置61~65に電力を貯えるように制御することもできる。
【0032】
この場合、住宅A1のユーザは、自家の発電装置51によって発電された電力をスマートグリッド10に供給した場合に、スマートグリッド10に接続された複数の蓄電装置61~65に貯めることができる。スマートグリッド10に接続された複数の蓄電装置61~65に貯められた電力は、スマートグリッド10を通じて好きなときに受給できる。このような制御も、送電網20と通信網40を有し、IT技術によって制御されるスマートグリッド10であれば可能である。この場合、余剰電力は、都度、売電として処理される代わりに、スマートグリッド10に電力として貯めることを選択できるようになる。
【0033】
かかる観点で、本発明者は、スマートグリッド10から受給できる電力量に相当する電力量として定義される仮想蓄電容量をユーザに紐付けてスマートグリッド10の情報処理装置100に記憶することを考えた。これにより、ユーザがスマートグリッド10に放電した電力を、スマートグリッド10に貯められた電力として、また、スマートグリッド10から受給できる電力として記録できる。つまり、ユーザは、スマートグリッド10を通じて余剰電力を貯めることができる。貯められた電力は、スマートグリッド10から受給できる電力量に相当する仮想蓄電容量として記録される。かかる仮想蓄電容量がユーザに紐付けてスマートグリッド10の情報処理装置100に記録されることによって、ユーザが紐付けられて記憶された仮想蓄電容量に応じた相当量の電力を受給できるように、スマートグリッド10を制御できる。これにより、ユーザは、自家で発電された電力を、スマートグリッド10を通じて貯めて、いつでも使えるようになり、都度、売電する必要がなくなる。
【0034】
《情報処理装置100によって実行される処理m1~m12》
この実施形態では、情報処理装置100によって実行される処理には、第1記録処理m1と、預け入れ処理m2と、引き出し処理m3と、譲渡処理m4と、購入処理m5と、売却処理m6と、価格設定処理m7と、交換処理m8と、交換設定処理m9と、送信処理m10と、第2記録処理m11と、共用設定処理m12とがある。各処理m1~m12は、情報処理装置100に組み込まれたプログラムに沿った処理で具現化される。なお、ここでは、情報処理装置100によって実行される処理の一例を示しており、情報処理装置100によって実行される処理はここで例示されるものに限定されない。
【0035】
〈第1記録処理m1〉
第1記録処理m1は、スマートグリッド10から受給できる電力量に相当する仮想蓄電容量をユーザに紐付けて記録する処理である。仮想蓄電容量は、情報処理装置100において扱うことが可能なデータであり、スマートグリッド10から受給できる電力量に相当する電力量がユーザに紐付けて情報処理装置100に記録されたものである。スマートグリッド10から相当量の電力を受給できる権利とも考えられる。また、仮想蓄電容量は、ユーザがスマートグリッド10に貯えた電力量とも考えられる。仮想蓄電容量は、ユーザがスマートグリッド10に貯えた電力であり、スマートグリッド10を通じて相当量の電力を受給できる権利であるとも考えられる。なお、ユーザが、スマートグリッド10を通じて、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に実際に貯められている電力量と、情報処理装置100に情報として記録される仮想蓄電容量とは、必ずしも一致しているか否かは問わない。
【0036】
情報処理装置100は、仮想蓄電容量をユーザに紐付けて記憶する記憶部を備えているとよい。ユーザには、ユーザを識別するIDが付与されているとよい。仮想蓄電容量がユーザに紐付けて情報処理装置100に記憶されていることによって、情報処理装置100では、ユーザが任意に処分できる電力量として仮想蓄電容量を扱える。つまり、仮想蓄電容量は、実際上は、コンピュータで扱うことができるデータであり得る。
図3は、仮想蓄電容量をユーザに紐付けて記憶する記憶部の構成例を示す構成図である。ユーザIDと仮想蓄電容量は、情報処理装置100において、
図3に示されているように、ユーザIDと仮想蓄電容量を並べて記録できるテーブルに記録されているとよい。仮想蓄電容量は、電力量と同様に扱えるように、例えば、電力量に対して用いられる単位、例えば、Whが付与されていてもよい。
【0037】
また、この実施形態では、
図3に示されているように、情報処理装置100において金銭残高がユーザIDに紐付けて記録できるように構成されている。金銭残高は、例えば、モバイル決済と同様の仕組みが用いられ、例えば、モバイル決済に利用される銀行口座決済(即時払い)やクレジットカード決済(後払い)やチャージ(先払い)決済やポイント決済(ポイント払い)などと連動していてもよい。例えば、銀行口座決済(即時払い)では、金銭残高をチャージするのに応じて、予め定められたユーザの銀行口座から利用額が即時引き落とされる。クレジットカード決済(後払い)では、ユーザが使用するクレジットカードが予め登録されており、金銭残高をチャージするのに応じて、クレジットカードで決済される。チャージ(先払い)決済では、現金を端末やレジでチャージする他、クレジットカードや銀行口座から一定額のチャージも可能である。また、ポイント決済(ポイント払い)では、サービスや商品の購入や利用に応じて付与されたポイントを金銭残高に置き換えて、ここで提供される仮想蓄電容量を利用したサービスの対価の支払いに利用できるようにしてもよい。また、ポイントをそのままここで提供される仮想蓄電容量を利用したサービスの対価の支払いに利用できるようにしてもよい。
【0038】
具体的には、
図2に示された形態では、住宅A1は、発電装置51としての太陽光パネルでの発電や、電動車両71での蓄電、電動車両71からスマートグリッド10への放電によって、スマートグリッド10の電力需給調整に寄与しうる。住宅A1の住人は、所定の契約に基づいてこのスマートグリッド10のユーザとなりうる。発電装置51としての太陽光パネルで発電された電力は、住宅A1の電力として利用されるだけでなく、余剰の電力はスマートグリッド10に供給される。この際、スマートグリッド10で電力が余っていたら、デマンドレスポンス(DR)の調整において、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に充電されうる。この実施形態では、情報処理装置100は、住宅A1から供給される余剰の電力は、売電されたものとして扱うのではなく、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に蓄えられたものとして扱う。この際、情報処理装置100は、住宅A1からスマートグリッド10に供給された余剰の電力に相当する電力量を、仮想蓄電容量として計量される。ここで計量された仮想蓄電容量は、住宅A1の住人をユーザとして紐付ける。住宅A1からスマートグリッド10に供給された余剰の電力に相当する電力量は、住宅A1に取付けられたスマートメータによって計測されうる。
【0039】
〈発電装置ID〉
情報処理装置100は、スマートグリッド10に接続された発電装置51~55をユーザに紐付けて記憶する記憶部を備えているとよい。
図4は、発電装置51~55をユーザに紐付けて記憶する記憶部の構成例を示す構成図である。この実施形態では、発電装置51~55には、それぞれ識別番号として発電装置IDが付与されている。発電装置IDとユーザIDとは、
図4に示されているように、発電装置IDとユーザIDを並べて記録できるテーブルに記録されているとよい。例えば、スマートグリッド10に接続される発電装置51~55のうち、仮想蓄電容量を用いた本仕組みを利用する場合には、ユーザとリソースアグリゲータとの契約などによって、スマートグリッド10に接続可能な発電装置51~55に発電装置IDが付与されてユーザIDと紐付けて記録されているとよい。
【0040】
〈蓄電装置ID,電動車両ID〉
情報処理装置100は、スマートグリッド10に接続可能な蓄電装置61~65をユーザに紐付けて記憶する記憶部を備えているとよい。
図5は、蓄電装置61~65をユーザに紐付けて記憶する記憶部の構成例を示す構成図である。この実施形態では、蓄電装置61~65には、それぞれ識別番号として蓄電装置IDが付与されている。蓄電装置IDとユーザIDとは、
図5に示されているように、蓄電装置IDとユーザIDを並べて記録できるテーブルに記録されているとよい。例えば、ユーザは、仮想蓄電容量を用いた本仕組みを利用する場合には、ユーザとリソースアグリゲータとの契約などによって、スマートグリッド10に接続可能な蓄電装置61~65に蓄電装置IDが付与されてユーザIDと紐付けて記録されているとよい。電動車両71~73は、適宜にスマートグリッド10に接続されて蓄電装置となりうる。この実施形態では、
図5に示されているように、電動車両71~73には、蓄電装置IDが付与されてユーザIDと紐付けて記録されている。電動車両71~73は、定置型の蓄電装置61~65と区別できるとよく。
図5に示されているように、電動車両には、蓄電装置IDとは別に、電動車両IDが付与されていてもよい。なお、電動車両IDは、蓄電装置IDとは別のテーブルでユーザIDと紐付けられて記録されていてもよい。
【0041】
〈預け入れ処理m2〉
預け入れ処理m2は、ユーザに紐付けられた電力機器から送電網20に出力された電力量に応じて、ユーザの仮想蓄電容量を増加させる処理である。ユーザに紐付けられた電力機器には、例えば、発電装置51~55や蓄電装置61~65や電動車両71~73などでありうる。また、電力機器としての発電装置51~55や蓄電装置61~65や電動車両71~73から送電網20に出力された電力量は、例えば、スマートメータで測定されうる。
【0042】
例えば、預け入れ処理m2では、発電装置51~55から送電網20に出力された際に、出力された発電装置およびユーザが特定される。そして、発電装置51~55から送電網20に出力された電力量に応じて、第1記録処理m1において記録されたユーザの仮想蓄電容量を増加させる(
図3参照)。送電網20に電力を出力する電力機器は、発電装置51~55に限定されない。例えば、蓄電装置61~65や電動車両71~73もスマートグリッド10に電力を出力しうる。その場合も、預け入れ処理m2では、出力された電力機器およびユーザが特定される。そして、電力機器から送電網20に出力された電力量に応じて、第1記録処理m1において記録されたユーザの仮想蓄電容量が増加される(
図3参照)。
【0043】
預け入れ処理m2は、例えば、
図2に示されているように、住宅A1で余剰電力が生じ、住宅A1からスマートグリッド10の送電網20に電力が放出された場合、住宅A1の住人(ユーザ)の仮想蓄電容量を増加させる。預け入れ処理m2において、送電網20に出力された電力量に応じて仮想蓄電容量をいくら増加させるかは、予め設定されているとよい。例えば、発電装置51からスマートグリッド10に出力された電力量と同じ量、仮想蓄電容量が増加するように構成されていてもよい。
【0044】
この場合、預け入れ処理m2では、例えば、仮想蓄電容量は、以下の式f1で更新される。
仮想蓄電容量=仮想蓄電容量(0)+放出電力量・・・・(f1)
ここで、仮想蓄電容量(0)は、預け入れ処理m2前の仮想蓄電容量であり、放出電力量は、住宅A1からスマートグリッド10の送電網20に放出された電力量である。例えば、住宅A1から1kWhがスマートグリッド10に放出された場合、住宅A1のユーザの仮想蓄電容量が1kWh増加するように構成されているとよい。
【0045】
預け入れ処理m2で電力量に応じて仮想蓄電容量をいくら増加させるかは、上述した式(f1)のように、単純に放出電力量を加算することでもよい。式(f1)に限らず、予め設定された量としてもよい。例えば、預け入れ処理m2は、ユーザに紐付けられた発電装置51~55から送電網20に出力された電力量に予め定められた割合を増加または減少させて、仮想蓄電容量を増加させるように構成されていてもよい。つまり、スマートグリッド10に出力された電力量と、仮想蓄電容量が増加する量とに差があってもよい。例えば、送電ロスが考慮されて、ユーザがスマートグリッド10に出力した電力量に対して仮想蓄電容量が増加する量を減らしてもよい。
【0046】
例えば、電力需給が逼迫している際には、スマートグリッド10に住宅A1の蓄電装置61などに貯められた電力が放出されると、スマートグリッド10の電力の逼迫が緩和される。このため、蓄電装置61からスマートグリッド10に出力された電力量から、予め定められた量を足して仮想蓄電容量を増加させるように構成されていてもよい。この場合、蓄電装置61からスマートグリッド10に出力された電力量の5%を加算する場合には、蓄電装置61から1kWhがスマートグリッド10に出力されると、仮想蓄電容量が1.05kWh増加するように構成されているとよい。これにより、スマートグリッド10にとっては電力の逼迫が緩和され、ユーザにとっては仮想蓄電容量が効率良く貯められるとのメリットが得られる。また、例えば、スマートグリッド10の電力が余剰である際には、スマートグリッド10に住宅A1の蓄電装置などに貯められた電力が放出されると、スマートグリッド10の電力逼迫が緩和される。このように、預け入れ処理m2で仮想蓄電容量を増加させる量を調整することは、電力の需給調整することに利用されうる。
【0047】
また、預け入れ処理m2は、例えば、予め定められた手数料分を仮想蓄電容量から差し引くように構成されていてもよい。手数料分は、任意に設定でき、情報処理装置100において予め定められているとよい。例えば、ユーザの電力機器からスマートグリッド10に出力された電力量のうち一定の割合を手数料分として、加算されるべき仮想蓄電容量から差し引いてもよい。具体例として、発電装置51からスマートグリッド10に出力された電力量の5%を手数料分とする場合には、発電装置51から1kWhがスマートグリッド10に出力されると、仮想蓄電容量が0.95kWh増加するように構成されているとよい。このように、仮想蓄電容量を利用したサービスに対する手数料分が仮想蓄電容量から差し引かれるように処理されることによって、仮想蓄電容量を利用したサービスに対する手数料が、仮想蓄電容量によって清算できる。このため、仮想蓄電容量を利用したサービスに対する手数料を、金銭やポイントによって清算する処理が不要あるいは減る。
【0048】
〈引き出し処理m3〉
引き出し処理m3は、ユーザが送電網20から受給した電力量に応じて、当該ユーザの仮想蓄電容量を減少させる処理である。
【0049】
引き出し処理m3では、ユーザが送電網20から電力を受給した際に、受給した装置によってユーザが特定される。例えば、住宅A1で送電網20から電力を受給して消費される場合には、住宅A1に取り付けられたスマートメータでユーザが特定される。また、市中の充電スポットA6で電動車両に充電する場合も電動車両IDが電動車両から取得されることによってユーザが特定される。そして、ユーザが送電網20から受給した電力量に応じて、第1記録処理m1において記録されたユーザの仮想蓄電容量を減少させる(
図3参照)。
【0050】
引き出し処理m3は、例えば、
図2に示されているように、住宅A1で電力が不足し、スマートグリッド10の送電網20から電力の供給を受けて使用する場合、買電の処理に代えて、引き出し処理m3によって住宅A1の住人(ユーザ)の仮想蓄電容量を減少させる。また、ユーザが、市中の充電スポットA6で、充電スタンドを通じてスマートグリッド10から電力の供給を受けた場合も、引き出し処理m3で当該ユーザの仮想蓄電容量を減少させるとよい。このように、ユーザがスマートグリッド10から電力を受給した場合に、ユーザの仮想蓄電容量を受給した電力量に応じて減少させる。ユーザがスマートグリッド10から電力を受給した際に、引き出し処理m3によって、等価分の電力量が当該ユーザの仮想蓄電容量から引かれるとよい。この場合、ユーザは、買電処理によらず、仮想蓄電容量を利用してスマートグリッド10から電力を受給することができる。
【0051】
引き出し処理m3において、ユーザが受給した電力量に応じて仮想蓄電容量をいくら減少させるかは、予め設定されているとよい。例えば、ユーザがスマートグリッド10から受給した電力量と同じ量、仮想蓄電容量が減少するように構成されていてもよい。
この場合、引き出し処理m3では、例えば、仮想蓄電容量は、以下の式f2で更新される。
仮想蓄電容量=仮想蓄電容量(0)-受給電力量・・・・(f2)
【0052】
ここで、仮想蓄電容量(0)は、引き出し処理m3前の仮想蓄電容量であり、受給電力量は、ユーザがスマートグリッド10から受給した電力量である。例えば、あるユーザがスマートグリッド10の市中の充電スポットA6で、充電スタンドを通じてスマートグリッド10から1kWh電力の供給を受けた場合、当該ユーザの仮想蓄電容量が1kWh減少するように構成されているとよい。このように、仮想蓄電容量の引き出し処理m3によって、スマートグリッド10から電力の受給を受けても、等価分の仮想蓄電容量が減少するが、ユーザの現金資産は直接的に減らない。
【0053】
引き出し処理m3で電力量に応じて仮想蓄電容量をいくら減少させるかは、上述した式(f2)のように、単純に受給電力量を減算することでもよい。式(f2)に限らず、予め設定された量としてもよい。例えば、引き出し処理m3は、ユーザに紐付けられた発電装置51~55から送電網20に出力された電力量に予め定められた割合を増加または減少させて、仮想蓄電容量を減少させるように構成されていてもよい。つまり、スマートグリッド10から供給された電力量と、仮想蓄電容量が減少する量とに差があってもよい。例えば、送電ロスが考慮されて、スマートグリッド10からユーザに供給された電力量に対して仮想蓄電容量が減少する量を多くしてもよい。
【0054】
また、電力需給が逼迫している際には、スマートグリッド10からの放電が抑えられることで、スマートグリッド10の電力の逼迫が緩和される。この場合、スマートグリッド10からの放電を抑えたい。このため、電力需給が逼迫している際の引き出し処理m3では、スマートグリッド10から受給した電力量に電力需給の逼迫に応じた割り増し量を加算して仮想蓄電容量を減少させるように構成されていてもよい。この場合、スマートグリッド10から受給した電力量の5%を割り増し量として加算する場合には、スマートグリッド10から1kWhを受給すると、仮想蓄電容量が1.05kWh減少するように構成されているとよい。これにより、ユーザに電力消費を抑えるマインドを生じさせることができ、スマートグリッド10にとっては、電力の逼迫が緩和される。また、スマートグリッド10の電力が余剰であり、さらに、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に空き容量が少ないような場合には、スマートグリッド10から受給した電力量に対して、仮想蓄電容量を減少させる電力量を少なくしてもよい。これにより、ユーザに電力消費を増やすマインドを生じさせることができる。このように、引き出し処理m3で仮想蓄電容量を減少させる量を調整することは、電力の需給調整することに利用されうる。
【0055】
また、引き出し処理m3は、例えば、予め定められた手数料分を仮想蓄電容量から差し引くように構成されていてもよい。手数料分は、任意に設定できる。例えば、ユーザがスマートグリッド10から受給した電力量のうち一定の割合を手数料分として、減少させるべき仮想蓄電容量を割り増してもよい。具体例として、ユーザがスマートグリッド10から受給した電力量の5%を手数料分とする場合には、ユーザがスマートグリッド10から1kWhを受給すると、仮想蓄電容量が1.05kWh減少するように構成されているとよい。この場合も、仮想蓄電容量を利用したサービスに対する手数料分が仮想蓄電容量から差し引かれるように処理されることによって、仮想蓄電容量を利用したサービスに対する手数料が、仮想蓄電容量によって清算できる。このため、仮想蓄電容量を利用したサービスに対する手数料を、金銭やポイントによって清算する処理が不要あるいは減る。
【0056】
なお、この情報処理装置100で提供される仮想蓄電容量が用いられた仕組みは、例えば、電力事業者やリソースアグリゲータを運営者として運営されうる。仮想蓄電容量が用いられた仕組みやサービスが利用される際の手数料は、この情報処理装置100で提供される仮想蓄電容量が用いられた仕組みを利用するユーザに対して月毎や年毎など定額で運営者から請求されるようにしてもよい。この場合、預け入れ処理m2や引き出し処理m3で都度手数料が設定されなくてもよい。また、この情報処理装置100で提供される仮想蓄電容量が用いられた仕組みは、手数料を取らずにユーザに提供されてもよい。仮想蓄電容量が用いられた仕組みによれば、ユーザによる売電や買電に応じて金銭の授受を伴う処理や事務負担が減る。このため掛かる事務負担に応じた手数料を取らずに、例えば、無料でユーザに提供されることで、仮想蓄電容量が用いられた仕組みが広く利用されることが期待できる。
【0057】
以上のように、ここで開示される情報処理装置100では、仮想蓄電容量をユーザに紐付けて記録する第1記録処理m1と、預け入れ処理m2と、引き出し処理m3とが実行される。第1記録処理m1では、仮想蓄電容量がユーザに紐付けて記録される。預け入れ処理m2では、ユーザに紐付けられた電力機器から送電網20に出力された電力量に応じて、当該ユーザの仮想蓄電容量を増加させる。引き出し処理m3では、ユーザが送電網20から使用した電力量に応じて、当該ユーザの仮想蓄電容量を減少させる。これにより、発電された電力を仮想蓄電容量としてスマートグリッド10に仮想的に貯めることができ、仮想蓄電容量を利用して、スマートグリッド10を通じて電力を受給できる。
【0058】
第1記録処理m1で記録される仮想蓄電容量は、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に実際に貯められている電力量としても扱われうる。ユーザは、仮想蓄電容量の電力量に応じてスマートグリッド10を通じて電力受給できる。また、仮想蓄電容量は、仮想的にユーザが任意に処分できる電力と考えられる電力量である。また、仮想蓄電容量は、仮想的にユーザが任意に処分できる電力でありうる。
【0059】
預け入れ処理m2では、ユーザは、例えば、住宅A1で発電された電力を、余剰電力として売電するのではなく、仮想蓄電容量としてスマートグリッド10に仮想的に貯めることができる。引き出し処理m3では、ユーザは、スマートグリッド10を通じて好きな場所で好きな時間に仮想蓄電容量として貯めた電力を利用することできるようになる。このため、仮想蓄電容量が貯まっていれば、ユーザは、スマートグリッド10から電力を受給する際に、都度買電する必要がなくなる。
【0060】
この結果、例えば、スマートグリッド10に十分な蓄電装置が接続されており、住宅A1の余剰電力を受け入れられる状態であれば、住宅A1に定置型の蓄電装置が無い場合でも、スマートグリッド10に余剰電力を仮想蓄電容量として貯められる。このため、スマートグリッド10に余剰電力を仮想蓄電容量として貯めることによって、住宅A1に定置型の蓄電装置が無い場合でも、住宅A1に定置型の蓄電装置があるのと同様の状態を実現できる。このため、住宅A1のユーザは、定置型の蓄電装置の容量を小さくしたり、あるいは、定置型の蓄電装置の設置を廃止したりするなどして、定置型の蓄電装置に掛ける費用を低く抑えることができる。
【0061】
また、ユーザが、スマートグリッド10に接続可能な電動車両を利用している場合には、仮想蓄電容量を利用して好きな場所でスマートグリッド10を通じて電量車両に給電できる。このとき、電動車両の電動車両IDは、
図5に示されているように、蓄電装置と同様に、ユーザIDに紐付けられて記憶されている。このため、スマートグリッド10に接続できる充電スタンドを利用して充電する場合には、どの場所で利用しても電動車両が接続された際に、電動車両IDが認識されるように情報処理装置100の引き出し処理m3がプログラムされているとよい。これにより、電動車両IDが特定されると、ユーザIDが特定され、当該ユーザIDで特定されるユーザの仮想蓄電容量から、電動車両が受給した電力量に応じた電力量が引かれる。
【0062】
このようにここで提案される情報処理装置100によって実現される仮想蓄電容量を利用すれば、ユーザは、自家発電した電力を、仮想的にスマートグリッド10に貯めることができる。仮想蓄電容量としてスマートグリッド10に仮想的に貯められた電力は、住宅A1で電力が不足したときにスマートグリッド10を通じて受給できる。また、出先でも仮想蓄電容量を利用してスマートグリッド10から電動車両に電力を受給できる。
【0063】
このように仮想蓄電容量は、スマートグリッド10から相当量の電力を受給できる権利とも考えられる。つまり、仮想蓄電容量は、ユーザがスマートグリッド10に貯えた電力であり、スマートグリッド10を通じて相当量の電力を受給できる権利であるとも考えられる。例えば、ユーザが太陽光パネルを備えた住宅A1の住人であり、週末に電動車両71を利用して遠方に旅行に行った場合、太陽光パネルで発電された電力は、スマートグリッド10を通じて仮想蓄電容量として貯えられる。仮想蓄電容量は、スマートグリッド10を通じて相当量の電力を受給できる権利であるから、ユーザは旅行先の充電スポットで電動車両をスマートグリッド10に接続した場合、貯えられた仮想蓄電容量を利用してスマートグリッド10から電力を受給することができる。このとき、ユーザが受給した電力量に応じてユーザの仮想蓄電容量は減るように処理される。このように、ユーザは、自家発電した電力を仮想蓄電容量として仮想的にスマートグリッド10に貯め、好きなときに好きな場所で電力を受給できる。この結果、住宅A1のユーザは、住宅A1で発電された電力をスマートグリッド10に仮想蓄電容量として貯めておくことで、時間や場所に捕らわれず自家発電された電力を余すことなく最大限利用できるようになる。
【0064】
ユーザは、個人レベルに限定されない。例えば、太陽光パネルの発電事業者は、仮想蓄電容量を利用してスマートグリッド10に電力を放出することで、仮想蓄電容量を貯めることができる。太陽光パネルの発電事業者が他の事業で電力を使用する場合には、太陽光パネルの発電事業で貯めた仮想蓄電容量を利用してスマートグリッド10から電力を受給できる。このように、ユーザは、法人レベルでもよい。このように、発電事業を並行して行なう大規模な需要家などもユーザとして、仮想蓄電容量を一元的に管理し、電力使用量を仮想蓄電容量で清算できる。法人ユーザは、上述のように発電事業で発電した電力をスマートグリッド10に貯め、他の事業で消費することができる。このようにユーザは、個人レベルに限定されない。上述したように売電や買電でなく、仮想蓄電容量による引き出し処理m3を通じてスマートグリッド10から電力を受給する場合には、例えば、情報処理装置100は、ユーザの操作端末と通信し、ユーザの操作端末と協働で所定の処理が実行されるように構成されているとよい。この場合、電力事業者も仮想蓄電容量を通じて電力が利用されることによって、ユーザによる売電に応じてユーザに金銭を支払うことや、ユーザによる買電に応じて金銭を受け取る処理が減る。この場合、都度、売電や買電で処理される場合に比べて、金銭の授受を伴う事務負担が減る。
【0065】
情報処理装置100は、仮想蓄電容量の譲渡や購入や売却などの処理が可能なように構成されていてもよい。これらの処理において、情報処理装置100は、ユーザの操作端末と通信し、ユーザの操作端末と協働で所定の処理が実行されるように構成されているとよい。ユーザの操作端末は、例えば、パソコンやスマートフォンであるとよい。また、ユーザの操作端末は、スマートメータによる電力のやり取りを監視する設置されたHEMSなどの操作端末でもよい。情報処理装置100は、専用のwebページが開設され、webページを通じて予め定められた情報が入力されるように構成されていてもよい。また、パソコンやスマートフォンに専用のソフトウェアが組み込まれて、当該ソフトウェアの処理を通じて、予め定められた情報が入力されるように構成されていてもよい。例えば、パソコンやスマートフォンと通信し、ユーザの操作端末に各処理を実行するための操作画面を表示させ、所要の情報が入力されるように構成されているとよい。仮想蓄電容量の譲渡や購入や売却などの処理に必要な情報は、これらユーザの操作端末を通じて情報処理装置100が得られるように構成されているとよい。
【0066】
〈譲渡処理m4〉
譲渡処理m4は、仮想蓄電容量を、ユーザ間で譲渡する処理である。例えば、
図3に示されているように、発電により仮想蓄電容量を貯めやすい発電事業者A4から電力消費の多い工場A3に仮想蓄電容量を譲渡する場合には、譲渡元のユーザA4と譲渡先のユーザA3がユーザIDで特定されるとともに、譲渡する容量(譲渡量d1)が設定されるとよい。譲渡元のユーザA4や譲渡先のユーザA3や譲渡量d1の情報は、例えば、ユーザの操作端末を通じて得られるとよい。
【0067】
この場合、譲渡元のユーザA4の仮想蓄電容量から譲渡容量に相当する量を減少させ、譲渡先のユーザA3の仮想蓄電容量に譲渡量に相当する量を増加させるとよい。このように、仮想蓄電容量は、ユーザ間で譲渡することができる。この場合、売電や買電ではなく、仮想蓄電容量を譲渡する処理によって、ユーザ間で電力を融通することができる。つまり、仮想蓄電容量の譲渡を受けたユーザは、譲渡を受けた仮想蓄電容量に相当する電力を、スマートグリッド10を通じて受給できる。譲渡処理m4によって、ユーザ間で金銭の譲渡を介さずに、仮想蓄電容量の譲渡や貸し借りが可能となる。このとき、仮想蓄電容量が譲渡されるが、実際の電力はスマートグリッド10を通じてやり取りされる。このため、ユーザの蓄電装置間で譲渡量に応じた電力を実際に移動させる必要はない。
【0068】
〈購入処理m5〉
購入処理m5は、ユーザの仮想蓄電容量を購入する処理である。購入処理m5には、ユーザが、例えば、電力事業者から仮想蓄電容量を購入する態様と、ユーザが、他のユーザから購入する態様とがある。なお、電力事業者をユーザの一人として見れば両者は同じ処理で実現されうる。
【0069】
図6は、購入処理m5の一例である処理m51,m52を示す模式図である。
図6に示された例おいて、購入処理m51では、ユーザA1は、電力事業者A0から仮想蓄電容量を購入する。上述したように、仮想蓄電容量は、スマートグリッド10から電力を受給できる権利であるとも考えられる。この場合、情報処理装置100は、売却者を電力事業者A0とし、購入するユーザA1と購入量g1と購入対価g2を特定する。購入処理m5では、購入量に応じてユーザの仮想蓄電容量を増加させるとよい。他方で、購入量に応じてユーザの金銭残高を減少させるとよい。また、購入量に応じて電力事業者の金銭残高を増加させるとよい。
【0070】
ここで、情報処理装置100が管理する金銭残高は、都度、金銭的価値の記録として管理されるとよい。例えば、仮想蓄電容量が用いられた仕組みやサービスを提供する運営者は、ユーザとの間で、都度、金銭の授受を生じさせる必要はない。また、金銭残高は、適宜に商業利用可能なポイントに交換されてユーザに付与されるように構成されてもよい。ユーザは、必要に応じて金銭残高を確認でき、また、ユーザが実際に保有する銀行口座に振り込む処理やポイントへの交換処理を指示できるように構成されていてもよい。仮想蓄電容量が用いられた仕組みやサービスを提供する運営者は、銀行やクレジット会社などの決済事業者を通じて金銭の振り込み処理やポイントへの交換が実行されるように構成されてもよい。決済事業者を通じて金銭の振り込み処理やポイントへの交換が実行されるように構成されている場合、運営者は、ユーザの銀行口座やクレジットカードの情報を、必ずしも直接保持したり管理したりしなくてもよい。
【0071】
購入処理m52では、ユーザA3がユーザA4から仮想蓄電容量を購入する。この場合、情報処理装置100は、売却者をユーザA4とし、購入するユーザA3と購入量g3と購入対価g4を特定する。購入処理に必要な情報は、例えば、ユーザA3の操作端末を通じて得られるとよい。購入処理m52では、購入量g3に応じてユーザA3の仮想蓄電容量を増加させ、ユーザA4の仮想蓄電容量を減少させるとよい。また、他方で、購入対価g4に応じてユーザA3の金銭残高を減少させ、ユーザA4の金銭残高を増加させるとよい。このように、購入処理m5は、購入先と購入者との間で、購入量に応じた仮想蓄電容量を移動させるとともに、購入対価に応じた金銭残高を移動させるとよい。かかる購入処理m5に必要な情報は、例えば、購入者となるユーザの操作端末からの入力に従って処理されるとよい。例えば、購入処理m51で必要な情報は、購入者であるユーザA1の操作端末を通じて得られるとよい。例えば、購入処理m52で必要な情報は、購入者であるユーザA3の操作端末を通じて得られるとよい。
【0072】
〈売却処理m6〉
売却処理m6は、ユーザの仮想蓄電容量を売却する処理である。
図7は、売却処理m6の一例である処理m61,m62を示す模式図である。売却処理m6には、ユーザが、例えば、電力事業者から仮想蓄電容量を購入する態様(m61)と、ユーザが、他のユーザに仮想蓄電容量を売却する態様(m62)とがある。なお、電力事業者をユーザの一人として見れば両者は同じ処理で実現されうる。
【0073】
例えば、
図7に示されているように、ユーザA1が電力事業者A0に仮想蓄電容量を売却する売却処理m61では、情報処理装置100は、売却者をユーザA1とし、売却先を電力事業者A0とし、売却量h1と売却対価h2を特定する。そして、売却量h1に応じてユーザA1の仮想蓄電容量を減少させ、電力事業者A0の仮想蓄電容量を増加させる。また、売却対価h2に応じてユーザA1の金銭残高を増加させ、電力事業者A0の金銭残高を減少させるとよい。また、ユーザA4がユーザA3に仮想蓄電容量が売却される売却処理m62では、情報処理装置100は、売却者をユーザA4とし、売却先をユーザA3とし、売却量h3と売却対価h4を特定する。そして、売却量h3に応じてユーザA4の仮想蓄電容量を減少させ、ユーザA3の仮想蓄電容量を増加させる。また、売却対価h2に応じてユーザA4の金銭残高を増加させ、ユーザA3の金銭残高を減少させるとよい。このように売却処理m6によって、任意のユーザ間で、仮想蓄電容量の売却できる。かかる売却処理m6に必要な情報は、例えば、売却者となるユーザの操作端末からの入力に従って処理されるとよい。例えば、売却処理m61で必要な情報は、売却者であるユーザA1の操作端末を通じて得られるとよい。例えば、売却処理m62で必要な情報は、売却者であるユーザA4の操作端末を通じて得られるとよい。
【0074】
〈価格設定処理m7〉
価格設定処理m7は、仮想蓄電容量の単位量当たりの価格を設定する処理である。価格設定処理m7は、例えば、ユーザ間で仮想蓄電容量が売買される際の流通価格を設定するものである。
【0075】
例えば、スマートグリッド10のサービス提供者は、スマートグリッド10に放出される電力を貯える十分な能力を有する大規模な蓄電装置65を備えた蓄電事業者A5を兼ねていてもよい。また、スマートグリッド10のサービス提供者は、ユーザとの契約によって、ユーザの蓄電装置61~65の空き容量を活用できるように構成できる。この場合も、スマートグリッド10のサービス提供者が、スマートグリッド10に放出される電力を貯える十分な能力を有しうる。この場合、スマートグリッド10のサービス提供者は、蓄電装置65によって、スマートグリッド10に対して供給される電力量を適宜に調整しうる。スマートグリッド10のサービス提供者は、情報処理装置100において、基準となる仮想蓄電容量の単位量当たりの価格を適宜に設定できる。ここで、設定される価格は、ユーザに広く提供されうるため、仮想蓄電容量の単位量当たりの基準価格となりうる。リソースアグリゲータ13は、スマートグリッド10を制御し、電力需給を調整できる。このため、リソースアグリゲータ13は、このようなスマートグリッド10のサービス提供者としての役割を担いうる。
【0076】
また、価格設定処理m7によって、例えば、電力事業者A0は、ユーザとの間で仮想蓄電容量を売買する際の仮想蓄電容量の単位量当たりの価格を設定できる。太陽光パネルによる発電事業者A4は、仮想蓄電容量の売却する際の単位量当たりの価格を設定できる。工場の事業者A3は、例えば、仮想蓄電容量を購入する際の単位両当たりの価格を設定できる。それらは仮想蓄電容量の売買(取引)が可能なユーザ間でオープンなwebサイトで公表されていてもよいし、特定のユーザ間のクローズドなwebサイトで公表されていてもよい。これによって、ユーザ間の仮想蓄電容量の売買が促進されることが期待できる。
【0077】
この場合、仮想蓄電容量は、スマートグリッドから電力を受給できる制限条件が設定されていてもよい。スマートグリッドから電力を受給できる制限条件が設定できれば、太陽光パネルの発電事業者A4は、スマートグリッドから電力を受給できる制限条件が設定された、仮想蓄電容量を売ることができる。例えば、晴天の日には、太陽光パネルの発電事業者A4は発電量が多くなるが、電力を利用する事業者がいなければ、デマンドレスポンスによって発電を停止せざる得ない場合がある。この場合、太陽光パネルの発電事業者は、発電される電力量を予測して、太陽光パネルの発電事業者A4で発電される電力のピークの時間帯に合わせて、スマートグリッドから電力を受給できるようにした、制限条件付きの仮想蓄電容量を安価に設定して売ることができる。
【0078】
蓄電事業者A5は、かかる安価な仮想蓄電容量を購入して、太陽光パネルの発電事業者に発電を促し、スマートグリッド10を通じて蓄電装置65に電力を貯えるようにしてもよい。また、工場の事業者A3は、工場で増産したい場合など、電力を安価に調達することができる。また、工場で増産したい時期に合わせて仮想蓄電容量を購入する価格を設定し、当該時期に合わせて利用できる仮想蓄電容量を売る発電事業者を募り、当該時期に利用できる仮想蓄電容量を予め購入してもよい。これにより、工場で増産したい時期に電力が逼迫し、デマンドレスポンスの要求により、使用電力量が抑制されるような場合でも、当該時期に利用できる仮想蓄電容量を確保しておくことでスマートグリッド10を制御し、電力を優先的に確保することができるようになる。
【0079】
かかる観点で、仮想蓄電容量は、スマートグリッドから電力を受給できる制限条件が設定されていてもよい。
図8は、第1記録処理m1で記録されるテーブルの他の形態を示す模式図である。この場合、第1記録処理m1では、例えば、
図8に示されているように、スマートグリッドから電力を受給できる制限条件毎に仮想蓄電容量が記録されてもよい。仮想蓄電容量は、上述のようにスマートグリッド10から相当量の電力を受給できる権利とも考えられる。第1記録処理m1では、
図8に示されているように、スマートグリッド10から電力を受給できる時間帯や日時や曜日が制限された権利として仮想蓄電容量が設定されていてもよい。
【0080】
このように、価格設定処理m7では、例えば、情報処理装置100の予め定められた記憶領域において、仮想蓄電容量の単位量当たりの価格が記憶されるように構成されているとよい。そして、仮想蓄電容量の売買(取引)が可能なユーザ間に公表される機能を備えていてもよい。公表先は、ユーザ間に広くオープンなwebサイトや特定のユーザ間にだけ公表されるクローズドなwebサイトでもよい。
【0081】
この場合、例えば、仮想蓄電容量の価格は、リソースアグリゲータ13が管理するスマートグリッド10の電力需給の逼迫度に連動して変動するものでもよい。また、アグリゲーションコーディネータ11からの電力供給司令に応じて価格設定がされてもよい。ユーザ間取引では、仮想蓄電容量の単位量当たりの価格は、例えば、売電や買電の価格とは、別に設定されてもよい。仮想蓄電容量は、スマートグリッド10から電力を受給できる権利でもあるが、いつ行使されるかの制約が設けられてもよい。例えば、スマートグリッド10から電力を受給できる時間帯や日時や曜日などの時期に応じて仮想蓄電容量の価格が異なるように、制限条件毎に仮想蓄電容量の価格が設定されてもよい。
【0082】
〈交換処理m8,交換設定処理m9〉
交換処理m8は、仮想蓄電容量と、商業利用可能な予め定められたポイントとを交換する処理である。交換設定処理m9は、仮想蓄電容量の単位当たりのポイントの交換数量を設定する処理である。かかる交換処理によれば、仮想蓄電容量の商業利用可能なポイント交換と交換できるように構成できる。交換設定処理m9は、仮想蓄電容量の単位当たりのポイントの交換数量を設定する処理である。また、ポイントとの交換においても、仮想蓄電容量の価格設定と同様に、基準の交換レートが設定されたり、ユーザ間での交換レートが設定されたりしてもよい。また、交換できる仮想蓄電容量には、スマートグリッド10から電力を受給できる制限条件が設定されていてもよい。第1記録処理m1では、
図8に示されているように、ユーザIDと紐付けて、ポイント残高が記録されてもよい。これにより、ユーザのポイント残高が記録され、仮想蓄電容量とポイントとの交換が記録される。
【0083】
送信処理m10は、ユーザの仮想蓄電容量を、ユーザの予め定められた端末に送信する処理である。これにより、ユーザに仮想蓄電容量を知らせることができる。情報処理装置100は、例えば、ユーザが端末によってアクセス可能なwebサイトを通じて、ユーザの仮想蓄電容量を確認できるようにしてもよい。また、定期的に、予め登録されたユーザのメールアドレスに仮想蓄電容量の情報が送信されるようにしてもよい。
【0084】
このように仮想蓄電容量は、スマートグリッド10の送電網20に電力を出力した場合だけでなく、譲渡や購入によって増やすことができる。このため預け入れ処理m2は、必ずしも実施されない場合がありうる。また、仮想蓄電容量は、基本的には、スマートグリッド10の送電網20から電力を受給することで減少する。ただし、発電事業者や太陽光パネルを多く設置している個人などは、スマートグリッド10の送電網20に電力を出力する場合が多く、預け入れ処理m2によって仮想蓄電容量が得られやすい。このようなユーザは、仮想蓄電容量を売却することやポイントに交換することで、仮想蓄電容量を処分しうる。このように、スマートグリッドから受給できる電力量に相当する仮想蓄電容量がユーザに紐付けて設定されることによって、より自由度のある電力の取引を実現し、ユーザの電力利用の利便性を大きく向上させることができる。
【0085】
〈第2記録処理m11〉
スマートグリッド10には、
図2に示されているように、複数の蓄電装置61~65が接続されている。第2記録処理m11は、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65の蓄電容量のうち、ユーザに割り当てられた割当容量をユーザに紐付けて記録する処理である。かかる第2記録処理m11によれば、例えば、スマートグリッド10に接続された少なくとも一つ蓄電装置61~65の空き容量を使って、他のユーザが専用の蓄電容量として使えるようにする、蓄電装置61~65を制御することができる。
【0086】
この場合、情報処理装置100は、
図8に示されているように、蓄電装置61~65の蓄電容量のうちユーザに割り当てられた割当容量が、ユーザに紐付けて記録されるように構成されているとよい。
図8に示された形態では、情報処理装置100に用意されたデータテーブルは、ユーザに割り当てられた割当容量が、ユーザを特定するユーザIDと横並びで記録されるように構成されている。ユーザに割り当てられた割当容量は、例えば、家庭用蓄電池の代わりにユーザ専用の蓄電容量として使える。ユーザに割り当てられた割当容量は、専用部分であるため、ユーザにおいて、余剰電力が生じた際は、スマートグリッド10を通じて放電することによって、必ず蓄電されたものとして制御される。かかるユーザに割り当てられた割当容量は、ユーザがスマートグリッド10を通じたサービスの提供を受ける際に、基本的に付随してもよいし、オプションとして付随してもよい。
【0087】
例えば、
図2に示された形態では、大規模蓄電装置65を有するユーザA5は、大規模蓄電装置65に十分な電力が貯めることができる。このため、他のユーザに対して蓄電容量を割り当てて利用してもらうサービスを提供できる。例えば、太陽光パネルの発電事業者であるユーザA4は、太陽光パネル54で発電した電力を、スマートグリッド10に放出することでいつでも電力を貯めることができる。このため、アグリゲーションコーディネータ11からのデマンドレスポンスに影響されず、太陽光パネル54で発電を継続できる。また、スマートグリッド10において電力が不足する際に、スマートグリッド10に電力を供給(売電)することで相当の利益が得られる。このように、太陽光パネルの発電事業者A4は、第2記録処理m11の処理によって、ユーザA5の大規模蓄電装置65に専用の蓄電容量を確保することができ、余剰電力を貯められようにできる。このため、太陽光パネルの発電事業者A4は、太陽光パネルの発電能力を十分に活かして発電できる。大規模蓄電装置65は、ユーザに蓄電容量を割り当てることに対して、対価を設定してもよい。
【0088】
〈共用設定処理m12〉
共用設定処理m12は、スマートグリッドに接続された蓄電装置の蓄電容量の一部を、スマートグリッドに接続されたユーザが共用できるように設定する処理である。かかる共用設定処理m12によれば、当該共用設定処理m12によってスマートグリッドに接続された蓄電装置の蓄電容量の一部が、スマートグリッド10に参加する任意のユーザによって利用できるようになる。
【0089】
図9は、第2記録処理m11および共用設定処理m12によって実現される仕組みを示す模式図である。
図9に模式的に示される例では、ユーザA~Fは、それぞれスマートグリッド10に接続された定置型の蓄電装置Ax~Fxを備えている。このうち、ユーザAの蓄電装置Axには、ユーザAが自家で専用できる蓄電容量a1と、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者が利用可能な蓄電容量a2とが設定されている。蓄電容量a2は空いている時には、他のユーザに解放される。この場合、蓄電容量a2が空いている時には、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者(他のユーザ)が発電した電力を貯めることができる。蓄電容量a2に貯められた電力は、情報処理装置100において、仮想蓄電容量として、発電した電力を貯めた他のユーザと紐付けて記憶されるとよい。共用設定処理m12では、蓄電容量a2のような容量を蓄電装置の容量の一部あるいは全部に設定できる。
図9に示された形態では、ユーザB~Eの蓄電装置Bx~Exにも、同様にユーザAが自家で専用できる蓄電容量b1~e1と、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者が利用可能な蓄電容量b2~e2とが設定されている。
【0090】
情報処理装置100は、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者が利用可能な蓄電容量の情報が専用のwebサイトなどで、スマートグリッド10に参加するユーザに開示されているとよい。スマートグリッド10に参加するユーザは、開示された情報を基に、共用設定された蓄電容量に発電した電力を貯める処理を実行するとよい。かかる処理では、情報処理装置100は、ユーザの操作処理に応じてユーザIDを特定するとともに、ユーザIDで特定される当該ユーザの電力機器からスマートグリッド10に電力を放出させる。そして、スマートグリッド10を通じて相当する電力が当該共用設定された蓄電容量に貯められるように処理されるとよい。なお、送電ロスなどが考慮され、共用設定された蓄電容量に貯められる電力量は、ユーザの電力機器からスマートグリッド10に放出された電力量よりも少なくてもよい。
【0091】
図9に示された形態では、ユーザFの蓄電装置Fxには、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者が利用可能な蓄電容量は設定されていない。この場合、蓄電装置Fxの全てを、ユーザFが自家で専用利用できる。このように、スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者が利用可能な蓄電容量を設定するか否かは、ユーザが選択的に設定できるように構成されているとよい。スマートグリッド10を通じてスマートグリッド10の参加者が利用可能な蓄電容量を設定する場合には、利用に応じてインセンティブが得られるように構成されてもよい。
【0092】
また、
図9に示された形態では、ユーザA~Fは、それぞれスマートグリッド10に接続された蓄電事業者A5の蓄電装置65に、専有できる容量a3~f3を借り受けている。この場合、蓄電事業者A5は、蓄電装置65の蓄電容量のうち各ユーザA~Fに割り当てられた割当容量をユーザA~Fに紐付けて記録するとよい。これにより、ユーザA~Fは、自家の蓄電装置Ax~Fxの容量が一杯でも、蓄電事業者A5の蓄電装置65に余剰電力を貯めることができる。そして貯められた電力は、情報処理装置100において仮想蓄電容量として管理されるとよい。これによってユーザA~Fが適宜にスマートグリッド10を通じて受給できるようになる。また、ユーザG~Jは、それぞれ自家に蓄電装置を所有していない。しかしながら、ユーザG~Jは、蓄電事業者A5の蓄電装置65に専有できる割当容量g3~j3を持っている。このため、ユーザG~Jは、自家に蓄電装置を持っていないが、自家発電した電力を蓄電事業者A5の蓄電装置65に余剰電力を貯めることができる。そして貯められた電力は、情報処理装置100において仮想蓄電容量として管理されるとよい。これによってユーザG~Jは、自家発電した電力を好きな時に好きな場所でスマートグリッド10を通じて受給できるようになる。このような処理は、第2記録処理m11によって実現できる。
【0093】
また、情報処理装置100における仮想蓄電容量、ユーザに割り当てられた割当容量、金銭残高、ポイント残高など、預け入れ処理m2や、引き出し処理m3や、譲渡処理m4や、購入処理m5や交換処理m8などの取引記録には、例えば、ブロックチェーン技術が適用されうる。
【0094】
上述のような仮想蓄電容量を利用した仕組みによれば、各ユーザがスマートグリッド10の送電網20から受給することができる電力量が、仮想蓄電容量として情報処理装置100に記録される。この場合、スマートグリッド10に接続された発電装置61~65によって発電された電力のうち余剰の電力は、スマートグリッド10に出力されるととともに、スマートグリッド10の送電網20から受給することができる電力としてユーザに紐付けられて記録される。そして、ユーザは、時間や場所に捕らわれず、好きな時に好きな場所で仮想蓄電容量に応じた電力をスマートグリッド10から受給できる。かかる仮想蓄電容量の仕組みが、スマートグリッド10に参加する全てのユーザにおいて利用されると、スマートグリッド10で繋がったユーザのコミュニティー内で、発電された電力がユーザ間で融通したり貸借されたりする。また、第2記録処理m11や共用設定処理m12によってスマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65の蓄電機能についてもユーザ間で融通し合える。これにより、スマートグリッド10に接続された発電装置51~55や蓄電装置61~65の機能がフル活用される。このため、ユーザのコミュニティー内で発電された電力がより効率良くコミュニティー内で消費されることが期待できる。自家発電自家消費を最大化させることが実現される。
【0095】
上述したように、仮想蓄電容量は、スマートグリッド10から受給できる電力量に相当する電力量として定義される。仮想蓄電容量は、スマートグリッド10に仮想的に貯えられた電力量とも考えられる。ここでは、スマートグリッド10に仮想的に貯えられた電力量との意味合いで、これに相当する電力量を、適宜、「仮想貯電量」と称する。
【0096】
ところで、スマートグリッド10で扱われるエネルギーのうち、太陽光発電や風力発電などは、天候により、発電量が変動する。このため、ユーザは、発電量が少ないときには、電力需要に対して発電量が不足し、買電を余儀なくされる。他方で、発電量が多く、自前の蓄電装置でも電力を貯え切れない場合には、余剰電力として売電を余儀なくされる。再生エネルギーで発電する場合、発電量が多いときと少ないときがあり、発電量に波がある。
【0097】
スマートグリッド10は、
図2に示されているように、複数の蓄電装置61~65を備えている。この実施形態では、スマートグリッド10には、ユーザの自前の蓄電装置61~64や、蓄電装置を多数設置した大規模な蓄電装置65などがある。スマートグリッド10は、これらの複数の蓄電装置61~65が接続されており、常時、発生する余剰電力を吸収でき、スマートグリッド10の電力需要の増減に対応できるように構成されている。
【0098】
〈情報処理装置140〉
図10は、ここで開示される情報処理装置140を含むスマートグリッド10の構成例を示す概略図である。ここで開示される情報処理装置140は、第1記憶部141と、第2記憶部142とを有している。この実施形態では、情報処理装置140は、スマートグリッド10の通信網40に接続されたリソースアグリゲータ13のクラウドサーバの一機能として組み込まれている。情報処理装置140の各処理は、予め定められたプログラムに従って所定の演算処理を行う処理モジュールとして具現化されうる。なお、情報処理装置140は、スマートグリッド10の通信網40に接続され、スマートグリッド10の情報を処理する装置であるとよい。かかる観点で、情報処理装置140は、上記の実施形態に限定されず、リソースアグリゲータ13のクラウドサーバに組み込まれていなくてもよい。
【0099】
〈第1記憶部141〉
第1記憶部141は、スマートグリッド10の複数のユーザに紐付けて当該複数のユーザの仮想貯電量がそれぞれ記録されるように構成されている。ここで、第1記憶部141は、ユーザの仮想貯電量が0より大きい場合には、0より大きい電力量に応じてプラスの量として記録されるように構成されている。また、第1記憶部141は、ユーザの仮想貯電量が0より小さくなる場合には、0より小さくなる電力量に応じてマイナスの量として記録されるように構成されている。
【0100】
ここで、情報処理装置140では、第1記憶部141に記録されるユーザの仮想貯電量は、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッド10から出力された電力量に応じて減算される。
【0101】
例えば、
図10に示されているように、ユーザA1(住宅A1)は、発電装置として太陽光パネル51と、蓄電装置61とを備えている。蓄電装置61は、発電装置として太陽光パネル51で発電された電力を蓄電することができる。また、発電装置として太陽光パネル51で発電された電力のうち余剰電力は、スマートグリッド10に出力される。また、蓄電装置61からも蓄電された電力がスマートグリッド10に適宜に出力される。ユーザA1は、家庭に設置された電力設備によって電力を消費しうる。このときユーザA1は、太陽光パネル51で発電された電力や、蓄電装置61に貯えられた電力で賄えない場合など、スマートグリッド10から適宜に電力の供給を受ける。
【0102】
この場合、第1記憶部141に記録されるユーザA1の仮想貯電量は、例えば、蓄電装置61に貯えられた余剰の電力量に相当しうる。第1記憶部141に記録されるユーザA1の仮想貯電量は、当該ユーザA1に紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力された電力量に応じて加算される。ユーザA1に紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力された電力量は、例えば、ユーザA1に紐付けられたHEMS(Home Energy Management System)を通じて得られる。ここで、ユーザA1に紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力された場合は、ユーザA1の蓄電装置61に貯えられない。ここでは、スマートグリッド10に出力された電力量は、スマートグリッド10に貯えられているものと仮想的に考え、第1記憶部141に記録されるユーザA1の仮想貯電量を加算する。
【0103】
他方で、第1記憶部141に記録されるユーザA1の仮想貯電量は、ユーザA1に紐付けられた電力機器にスマートグリッド10から出力された電力量に応じて減算される。ユーザA1に紐付けられた電力機器にスマートグリッド10から出力された電力量は、例えば、ユーザA1に紐付けられたHEMS(Home Energy Management System)を通じて得られる。ここで、ユーザA1に紐付けられた電力機器にスマートグリッド10から出力された場合は、ユーザA1の蓄電装置61に貯えられた電力量はそれにより必ずしも減らない。ここでは、ユーザA1に紐付けられた電力機器にスマートグリッド10から出力された電力量は、スマートグリッド10に貯えられているものと仮想的に考えられていた電力量が減ったものと考えて、第1記憶部141に記録されるユーザA1の仮想貯電量を減算する。
【0104】
ここで、第1記憶部141に記録されるユーザA1の仮想貯電量は、ユーザA1の仮想貯電量が0より大きい場合には、0より大きい電力量に応じてプラスの量として記録される。また、ユーザA1の仮想貯電量が0より小さくなる場合には、0より小さくなる電力量に応じてマイナスの量として記録される。ユーザA1の仮想貯電量がプラスの量である場合、ユーザA1はスマートグリッド10に電力を貯えていると考えられる。ユーザA1の仮想貯電量がマイナスの量である場合、ユーザA1はスマートグリッド10から電力を借りていると考えられる。
【0105】
つまり、ユーザA1は、発電装置として太陽光パネル51を有している。太陽光パネル51は、昼間に発電し、余剰電力を生み出しうる。このため、余剰電力をスマートグリッド10に出力した場合には、ユーザA1の仮想貯電量がプラスになる。この場合、ユーザA1は、スマートグリッド10に電力を出力したことで、売電として処理されるのではなく、ユーザA1の仮想貯電量を増加させる。このことによって、スマートグリッド10に電力を貯えたものとして処理される。
【0106】
他方で、太陽光パネル51は、夜間、発電しない。ユーザA1は、夜間、電力が不足すると適宜にスマートグリッド10から電力を受給する。この際、ユーザA1に紐付けられた電力機器にスマートグリッド10から出力された電力量に応じて、ユーザA1の仮想貯電量が減る。この場合、ユーザA1は、スマートグリッド10から電力を受給したことで、買電として処理されるのではなく、ユーザA1の仮想貯電量を減少させる。このことによって、スマートグリッド10に貯えられていた電力を消費したものとして処理される。
【0107】
このような処理によれば、自家発電された電力で余剰電力が発生し、余剰電力がスマートグリッド10に出力された場合、ユーザA1がスマートグリッド10に電力を貯えているように扱われうる。ユーザA1は、スマートグリッド10に電力が出力されたことで、仮想貯電量が増え、スマートグリッド10から電力を受給したことで、仮想貯電量が減る。スマートグリッド10への電力の供給とスマートグリッド10からの受給に応じて仮想貯電量が増減する。このため、ユーザA1は電力を仮想貯電量として貯めておき、必要な時に仮想貯電量として貯めた電力を使うという感覚になる。さらに、ユーザA1は、自家発電された電力に余剰の電力が生じると、スマートグリッド10に貯め、また、自家発電された電力が足らないときにスマートグリッド10に貯めた電力を消費するような感覚で余剰電力を扱える。このため、自家発電された電力は、全て自家消費しているように感じられるようになる。
【0108】
また、上記の処理によって、売電や買電での処理が減る。ユーザの心理として、一般的に、電力会社から電力供給を受ける際の電気料金(買電価格)に比べて、電力会社が余剰電力を買い取る価格(売電価格)は低く設定されている。これに対して、上記の処理では、ユーザにとっては、スマートグリッド10に余剰電力を貯め、また、自家発電された電力が足らないときにスマートグリッド10に貯めた電力を消費でき、ユーザにとっては自家発電された電力を無駄なく自家消費しているように感じられる。また、余剰電力が都度売電で処理される場合に比べて、金銭的にもメリットを享受し得る。
【0109】
なお、ユーザA1が、仮想貯電量としてスマートグリッド10に貯えたと仮定された電力を受給できるタイミングは、適宜に制限されるように構成されていてもよい。例えば、スマートグリッド10の電力の需要が過多である場合には、仮想貯電量としてスマートグリッド10に貯えたと仮定された電力の受給が制限されるように構成されていてもよい。仮想貯電量としてスマートグリッド10に貯えたと仮定された電力の受給が制限される場合には、買電でスマートグリッド10から電力を受給できるように構成されているとよい。この場合、ユーザのモチベーションが、電力消費を抑える方向に働き、スマートグリッド10の電力の需要が抑えられることが期待できる。
【0110】
なお、余剰電力をスマートグリッド10に出力した場合に、スマートグリッド10に出力された電力量と、ユーザA1の仮想貯電量を加算させる電力量は、一致させてもよい。他方で、スマートグリッド10に出力された電力量と、ユーザA1の仮想貯電量を加算させる電力量は、必ずしも一致させなくてもよい。例えば、スマートグリッド10に出力した余剰電力の電力量よりもユーザA1の仮想貯電量を加算させる電力量を減らしてもよいし、逆に増やしてもよい。
【0111】
例えば、スマートグリッド10で電力需要に対して電力が大きく不足しているような場合、あるいは、不足することが予測されている場合には、スマートグリッド10に出力した余剰電力の電力量よりもユーザA1の仮想貯電量を加算させる電力量を増やすように処理されてもよい。これにより、ユーザA1において、スマートグリッド10に余剰電力を出力するモチベーションが高くなる。この処理は、ユーザA1以外の他のユーザにも適用される。実際にスマートグリッド10に出力される余剰電力がスマートグリッド10全体として増えることによって、スマートグリッド10内の電力の需給のバランスが改善することが期待できる。
【0112】
また、例えば、スマートグリッド10で電力需要に対して電力が大きく余っているような場合、あるいは、余ることが予測されている場合には、スマートグリッド10に出力した余剰電力の電力量よりもユーザA1の仮想貯電量を加算させる電力量を減らすように処理されてもよい。これにより、ユーザA1において、余剰電力をスマートグリッド10に出力するよりも、自家の蓄電装置61に貯えるモチベーションが高くなる。この処理は、ユーザA1以外の他のユーザにも適用される。実際にスマートグリッド10に出力される余剰電力がスマートグリッド10全体として減ることによって、スマートグリッド10内の電力の需給のバランスが改善することが期待できる。ユーザがスマートグリッド10に出力した余剰電力の電力量に対して、ユーザの仮想貯電量をどの程度加算させるかについては、スマートグリッド10に参加するユーザに情報処理装置140から通知されるように構成されているとよい。
【0113】
スマートグリッドの情報処理装置140では、上記のようにユーザの仮想貯電量が、マイナスの状態まで管理できる。そして、ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力された電力量に応じて加算され、かつ、ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッドから出力された電力量に応じて減算される。このため、ユーザに紐付けられた電力機器と、スマートグリッドとのやり取りにおいて、ユーザの仮想貯電量の変動を都度管理できる。ユーザの仮想貯電量が、マイナスの状態である場合は、ユーザが、スマートグリッド10から一時的に電力を融通してもらっている状態、換言すると電力を借りている状態である。つまり、スマートグリッドの情報処理装置140では、ユーザが電力を借りている状態を管理できる。ユーザは、自家発電などで余剰電力が生じた際に、スマートグリッド10に電力を返すことができる。つまり、ユーザが余剰電力をスマートグリッド10に出力すると、ユーザの仮想貯電量のマイナスの状態が解消していく。
【0114】
スマートグリッド10からユーザに融通する電力は、例えば、大規模な蓄電設備65を備えた蓄電事業者A5に貯えられている電力で一括して賄うように構成されていてもよい。例えば、蓄電事業者A5がスマートグリッド10に電力を供給したり受給したりすることで、スマートグリッド10に参加する各ユーザの電力の需要と供給のバランスを調整してもよい。その際、情報処理装置140では、各ユーザの電力の受給や供給に合わせて各ユーザの仮想貯電量が第1記憶部141に記憶されるように構成されているとよい。つまり、蓄電事業者A5の協力を得て、スマートグリッド10の電力需要と供給のバランスを調整し、それに合わせて各ユーザの仮想貯電量を増減させるとよい。
【0115】
スマートグリッド10は、スマートグリッド10に参加するユーザの蓄電装置61~65に貯えられている電力で、電力の需要と供給のバランスが適宜に調整されるように構成されていてもよい。つまり、参加するユーザの協力を得て、スマートグリッド10の電力需要と供給のバランスが調整される。その際、情報処理装置140では、各ユーザの電力の受給や供給に合わせて各ユーザの仮想貯電量が第1記憶部141に記憶されるように構成されているとよい。
【0116】
情報処理装置140のこのような情報処理によって、一時的に電力が不足するユーザには、都度、買電や売電で処理されることなく、スマートグリッド10を通じて電力が融通されるようになる。つまり、各ユーザは、余剰電力をスマートグリッド10に出力することで、情報処理装置140の第1記憶部141に記憶されるユーザの仮想貯電量を増やすことができる。そして、各ユーザは、電力が不足する際には、ユーザの仮想貯電量が減る代わりにスマートグリッド10から電力を受給できる。ユーザは、仮想貯電量がマイナスになってもスマートグリッド10から電力を受給できる。ユーザは、後で余剰電力が生じたときにスマートグリッド10に電力を返すことができ、仮想貯電量のマイナスを解消させることができる。
【0117】
このように、このスマートグリッドの情報処理装置140によれば、ユーザの仮想貯電量が、マイナスの状態まで記録される。つまり、情報処理装置140は、ユーザの仮想貯電量が0より小さくなる場合には、0より小さくなる電力量に応じてマイナスの量として記録されるように構成されている。仮想貯電量がマイナスの量として記録されることによって、ユーザは、電力が足らないときはスマートグリッド10から電力を借りることができ、余剰電力が生じた後で返すことができる。これにより、再生エネルギーを利用するユーザの電力利用の利便性が向上する。このため、ユーザは、例えば、都度売電や買電で処理されることなく、電力が不足する場合に、スマートグリッド10内の情報処理によってスマートグリッド10から必要とする電力の融通を受けることができる。
【0118】
〈第2記憶部142〉
第2記憶部142は、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置がユーザに紐付けて記憶されるように構成されている。第1記憶部141に記憶されるユーザの仮想貯電量は、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置にスマートグリッド10から蓄電された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置からスマートグリッド10に出力された電力量に応じて減算されるように構成されている。この場合、ユーザが蓄電装置に電力を貯めると加算され、ユーザが蓄電装置に貯めた電力をスマートグリッド10に出力すると減算される。
【0119】
例えば、
図9に示されているように、スマートグリッド10では、蓄電事業者A5によって大型の蓄電装置65が提供されうる。ユーザA~Fは、それぞれスマートグリッド10に接続された蓄電事業者A5の蓄電装置65に、専有できる容量a3~f3を借り受けることができる。当該ユーザが使用可能な蓄電装置には、自家の蓄電装置61~64に限らず、蓄電装置65の蓄電容量のうち各ユーザA~Fに割り当てられた割当容量が含まれうる。第2記憶部142は、スマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置がユーザに紐付けて記憶されるように構成されている。つまり、
図9に示された形態では、自家の蓄電装置61~64および蓄電事業者A5の蓄電装置65の蓄電容量のうち各ユーザA~Fに割り当てられた割当容量が、ユーザA~Fが使用可能な蓄電装置に相当しうる。自家の蓄電装置61~64および蓄電事業者A5の蓄電装置65の蓄電容量のうち各ユーザA~Fに割り当てられた割当容量に蓄電された電力は、ユーザにおいて都合の良いタイミングで消費されうる。
【0120】
第1記憶部141に記憶されたユーザの仮想貯電量は、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置に蓄電された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置から出力された電力量に応じて減算されるように構成されている。つまり、自家の蓄電装置61~64および蓄電事業者A5の蓄電装置65の蓄電容量のうち各ユーザA~Fに割り当てられた割当容量に蓄電された電力量に応じて、第1記憶部141に記憶されたユーザの仮想貯電量が加算されたり、減算されたりする。
【0121】
例えば、
図10に示された形態において、ユーザA1の余剰電力が、自家の蓄電装置61に貯えられた場合に、第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量が加算されるように構成されているとよい。そして、ユーザA1の自家の蓄電装置61からスマートグリッド10に電力が出力された場合に、出力された電力量に応じてユーザA1の仮想貯電量が減算されるように構成されているとよい。また、ユーザA1が、太陽光発電事業者A4から電力を買い、スマートグリッド10を通じて蓄電装置65の蓄電容量のうちユーザA1に割り当てられた蓄電容量に電力を貯えた場合も、第1記憶部141に記憶されたユーザの仮想貯電量が加算されるように構成されているとよい。そして、ユーザA1に割り当てられた蓄電容量からスマートグリッド10に電力が出力された場合に、出力された電力量に応じてユーザA1の仮想貯電量が減算されるように構成されているとよい。このように第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量は、スマートグリッド10においてユーザA1が使用可能な蓄電装置に貯えた電力を反映するように構成されていてもよい。
【0122】
この場合、第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量は、ユーザA1がスマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に貯えた電力の価値を示しうる。また、蓄電装置65において、ユーザA1(住宅A1)に割り当てられた蓄電容量からユーザA2(住宅A2)に割り当てられた蓄電容量に電力が移された場合も、第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量が減るとともに、第1記憶部141に記憶されたユーザA2の仮想貯電量が増える。このように、第1記憶部141に記憶されたユーザの仮想貯電量は、ユーザが使用可能な蓄電装置に貯えた電力を反映するように構成されているとよい。つまり、この情報処理装置140では、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置に蓄電された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置から出力された電力量に応じて減算されるように構成されている。スマートグリッド10内で使用可能な蓄電装置にユーザが貯めている電力量が多ければ多い分だけ、スマートグリッド10内での電力需給に対する当該ユーザの信用が高いと考えられる。それがユーザの仮想貯電量に反映される。
【0123】
なお、第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量は、スマートグリッド10においてユーザA1が使用可能な蓄電装置に貯えた電力を反映するように構成されているとよいが、現実に蓄電された電力を移動させる処理を伴わせなくてもよい。つまり、蓄電装置65において、実際に電力が移されていなくてもよい。第1記憶部141に記憶されたユーザA1,A2の仮想貯電量の情報を変更することによって、蓄電装置65の中でユーザA1に割り当てられた蓄電容量からユーザA2に割り当てられた蓄電容量に電力が移されたように扱うことができる。このように、第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量は、ユーザA1がスマートグリッド10に接続された蓄電装置61~65に貯えた電力の価値を示しうる。この場合、ユーザA1がユーザA2に、スマートグリッド10に貯えた電力を貸したり、ユーザA2がユーザA1にスマートグリッド10に貯えた電力を返したりすることが、情報処理によって実現されうる。
【0124】
情報処理装置140では、第1記憶部141に記憶されるユーザの仮想貯電量に関し、マイナスの許容量が予め定められていてもよい。情報処理装置140は、ユーザの仮想貯電量が、マイナスの許容量を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッドから出力された電力量に応じて買電処理が実行されるように構成されていてもよい。これにより、ユーザの仮想貯電量がマイナスであるのに、際限なくスマートグリッド10から電力の融通を受けられる状態が解消される。
【0125】
マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量に応じて定められるとよい。例えば、直近1週間(7日)などの決められた期間でのユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力された電力量、のような実績値を基に、マイナスの許容量が決定されてもよい。マイナスの許容量を算出するための、予め定められた期間は、適当に決められる。例えば、直近3日としてもよいし、直近2週間としてもよいし、直近1ヶ月としてもよい。また、予め定められた期間は、先週や先月としてもよし、前年の同月としてもよい。また、予め定められた期間の実績値は、予め定められた期間の一日当たりの平均値で評価されてもよい。
【0126】
例えば、直近1週間の実績値は、ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力された電力量の直近1週間の実績値を基に、直近1週間の一日当たりの平均値で評価されてもよい。このように、予め定められた期間として適切な期間が設定されることで、ユーザがスマートグリッド10に出力しうる電力量を適切に評価できる。また、予め定められた期間の実績値が、一日当たりの実績値で評価されることによって、短期間の天候による発電量の変動などに影響を受けることが小さくなる。なお、予め定められた期間をどのように設定するかは、発電装置や蓄電装置の機器の状態や家族構成の変化など、電力消費の変化が考慮されるとよい。これによって、ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量をより精度良く予測することができる。マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量に応じて定められることによって、スマートグリッド10が、当該ユーザに融通できる電力量に適切に制限を設けることができる。
【0127】
マイナスの許容量は、予め定められた期間における、ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力される電力量の予測値に応じて定められてもよい。つまり、マイナスの許容量は、ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量の将来の予測を基に定められるように構成してもよい。例えば、ユーザが太陽光発電からなる発電装置を有している場合、天気の予測に基づいて、発電量が予想されうる。この場合、発電量が大きくなることが予測される場合は、当該ユーザの仮想貯電量について、マイナスの許容量は、大きく設定されるとよい。この場合も、スマートグリッド10が、当該ユーザに融通できる電力量に適切に制限を設けることができる。
【0128】
また、ユーザの仮想貯電量は、プラスの許容量が予め定められていてもよい。ユーザの仮想貯電量が、プラスの許容量を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力された電力量に応じて売電処理が実行されるように構成されていてもよい。これにより、ユーザの仮想貯電量が際限なく蓄積される状態が解消される。つまり、スマートグリッド10で供給できる電力に応じて、ユーザの仮想貯電量に上限が設けられていることで、仮想貯電量に応じてユーザに安定して電力を供給できるようになる。このように、ユーザの仮想貯電量に上限が定められていることによって、仮想貯電量に対する信用を確保できる。
【0129】
この場合、プラスの許容量は、スマートグリッド10に接続された蓄電装置のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置に蓄電可能な容量に応じて定められていてもよい。例えば、ユーザが、スマートグリッド10に接続された蓄電装置を有している場合には、当該蓄電装置の蓄電可能な容量に応じて、ユーザのプラスの許容量が定められるとよい。この場合、当該蓄電装置の蓄電可能な容量=ユーザのプラスの許容量としてもよい。また、適当な関数を設定して、当該蓄電装置の蓄電可能な容量に基づいて、ユーザのプラスの許容量が設定されるように構成されていてもよい。例えば、当該蓄電装置の蓄電可能な容量に適当な係数を掛けて、ユーザのプラスの許容量を設定してもよい。当該蓄電装置の蓄電可能な容量に適当な量を、加算または減算して、ユーザのプラスの許容量を設定してもよい。
【0130】
例えば、プラスの許容量=(基本的な仮想貯電量)+(蓄電装置の容量)で算出されるように構成されていてもよい。この場合、ユーザの基本的な仮想貯電量のプラスの許容量が3kW・hであり、ユーザが5kWhの蓄電装置を有している場合には、ユーザのプラスの許容量が、3kW・h+5kWh=8kWhと算出される。
【0131】
また、ユーザが、蓄電事業者A5の蓄電装置65に、専有できる容量を借受けている場合も、その借受けている容量に応じて、スマートグリッド10でのユーザの蓄電能力に応じた仮想貯電量の上限量がプラスされるように構成されているとよい。これにより、ユーザが、仮想貯電量の上限量(プラスの許容量)を増やしたい場合には、例えば、蓄電事業者A5の蓄電装置65に、専有できる容量を借受けることによって、仮想貯電量のプラスの許容量を大きくすることができる。仮想貯電量のプラスの許容量が大きければ大きい程、売電で処理されず、ユーザは、スマートグリッド10に仮想貯電量として電力を貯めることができる。
【0132】
以下、情報処理装置140の具体的な処理をさらに説明する。
【0133】
図11~
図14は、ユーザの電力需給の推移を示すシミュレーションのデータである。ここで、シミュレーションの設定では、消費電力は、月曜日から金曜日は、3kWhであり、土日は、1kWhである。発電電力は、太陽光パネルによるものである。発電される電力量は、快晴の日は5kWh、晴れの日は4kWh、晴れ後曇りの日は4kWh、曇りの日は2kWh、雨の日は0kWhである。日々の売電と買電は、図に示されている通りである。括弧内の数字は、売電された電力量または買電された電力量を示しており、単位は、kWhである。
【0134】
図11では、蓄電装置がなく、ユーザの電力需給が売電と買電で処理されている。
(a)では、月曜日から日曜日までの1週間で、天気が、快晴、曇り、雨、雨、快晴、快晴、晴れと変動するパターンが示されている。このパターンでは、1週間の売買量が11kWh、買電量が7kWhとなる。
(b)では、月曜日から日曜日までの1週間で、天気が、雨、曇り、曇り、雨、雨、快晴、快晴と変動するパターンが示されている。このパターンでは、電力不足が先行し、1週間の売買量が8kWh、買電量が13kWhとなる。
(c)では、月曜日から日曜日までの1週間で、天気が、快晴、快晴、快晴、晴れ後曇り快晴、雨、曇りと変動するパターンが示されている。このパターンでは、電力が余剰となる状態が先行し、1週間の売買量が8kWh、買電量が1kWhとなる。
【0135】
図12では、情報処理装置140によって仮想貯電量が記録され、電力不足が生じてもスマートグリッド10から電力が融通される場合が示されている。(a)~(c)の天気の変動パターンは、
図11と同じである。
【0136】
(a)~(c)の何れの場合も電力不足の際は、スマートグリッド10から電力の融通を受ける代わりに、仮想貯電量がマイナスとなる。余剰電力が生じると、スマートグリッド10に電力を返し、仮想貯電量の収支が改善する。例えば、(b)のように電力不足が先行するパターンでは、仮想貯電量が-10kWhを記録する日がある。ユーザは、スマートグリッド10から電力の融通を受けられる。このため、1週間の買電量は0kWhである。また、(c)のように電力余剰が先行するパターンでは、仮想貯電量が+8kWhを記録する日がある。しかし、売電はされず、仮想貯電量として貯められるので、後日、電力不足となる際に備えられる。なお、蓄電装置がある場合、ユーザは、自家の蓄電装置に電力を貯めることができる。また、第1記憶部141に記憶されたユーザの仮想貯電量が、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置に蓄電された電力量に応じて加算され、かつ、当該ユーザに紐付けられた蓄電装置から出力された電力量に応じて減算されるように構成されているとよい。この場合、蓄電装置があることで、余剰電力が生じた場合に仮想貯電量もそれに応じて増える。このため、ユーザは、電力不足に陥りにくく、スマートグリッド10から電力の融通を受ける量が全体的に減る。
【0137】
図13では、
図12の場合に加えて、仮想貯電量のマイナスの許容量が-5kWhに設定されている。この場合、情報処理装置140は、マイナスの許容量(-5kWh)を越えて、仮想貯電量が低くなると、当該ユーザに紐付けられた電力機器にスマートグリッドから出力された電力量に応じて買電処理が実行されるように制御される。
【0138】
(a)のパターンでは、仮想貯電量がマイナスの許容量(-5kWh)を越えない。このため、電力不足の際では、スマートグリッド10から電力の融通を受けられる。(b)のように電力不足が先行するパターンでは、仮想貯電量が-5kWhを越える。この場合、マイナスの許容量を越える部分では、ユーザは、スマートグリッド10から電力の融通を受けられず、買電処理が発生する。このため(b)では、1週間の買電量は5kWhである。しかし、
図11のように、電力不足の際に、全て買電処理で賄う場合に比べると、買電で処理される電力量を少なくできる。また、スマートグリッド10を運営する運営者、例えば、リソースアグリゲータ13の立場では、ユーザに電力を融通し過ぎることが防止される。このため、スマートグリッド10を安定して運営できる。
【0139】
マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッドに出力される電力量に応じて定められうる。例えば、
図13に示された例では、(c)のように、電力余剰が先行する際には、ユーザの仮想貯電量が+8kWhに達する。このことから、ユーザの仮想貯電量のマイナスの許容量は、-8kWh程度に設定されていてもよい。このように、マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力される電力量に応じて定められてもよい。また、マイナスの許容量は、予め定められた期間における、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力される電力量の予測値に応じて定められてもよい。この場合、ユーザの仮想貯電量を貯める能力を基に、マイナスの許容量が適切に設定されていることによって、スマートグリッド10の安定運営を維持しつつ、スマートグリッド10からが電力を融通する量を増やすことができ、売電や買電の処理を減らすことができる。
【0140】
図14では、
図13の場合に加えて、仮想貯電量のプラスの許容量が+5kWhに設定されている。この場合、情報処理装置140は、プラスの許容量(+5kWh)を越えると、当該ユーザに紐付けられた電力機器からスマートグリッド10に出力された電力量に応じて売電処理が実行されるように制御される。
【0141】
この場合、例えば、(c)のように、仮想貯電量が+5kWhを越えると、売電で処理される。このため、仮想貯電量は+5kWhを越えて大きくならない。仮想貯電量は+5kWhを越えた場合に売電で処理されるため、この1週間での売電量は2kWhである。しかし、
図11のように、余剰電力を全て売電で処理する場合に比べると、売電で処理される電力量を少なくできる。また、スマートグリッド10を運営する運営者、例えば、リソースアグリゲータ13の立場では、仮想貯電量が際限なく大きくならないので、ユーザに電力を融通するために用意する電力量が低く抑えられる。このためプラスの許容量が適切に設定されていることによって、スマートグリッド10の安定運営を適切に維持しつつ、売電や買電の処理を減らすことができる。
【0142】
プラスの許容量は、スマートグリッド10に接続された蓄電装置のうち当該ユーザが使用可能な蓄電装置に蓄電可能な容量に応じて定められうる。例えば、ユーザが蓄電装置を有している場合には、蓄電装置で電力を貯められるので、自家の蓄電装置に電力を貯めることで、仮想貯電量を大きくできる。その分、当該ユーザのプラスの許容量が大きく設定されていても、スマートグリッド10を安定して運営できる。
【0143】
さらに情報処理装置140は、スマートグリッド10の複数のユーザ間の、仮想貯電量の貸し借りが記録されるように構成されていてもよい。例えば、ユーザAの仮想貯電量は、ユーザBから仮想貯電量を借受けることができる。この場合、情報処理装置140は、ユーザAがユーザBから借受けた仮想貯電量が記録されているとよい。また、ユーザBがユーザAに貸している仮想貯電量が記録されているとよい。このように、スマートグリッド10の複数のユーザ間の、仮想貯電量の貸し借りが相互に記録されるとよい。ユーザは、仮想貯電量が不足する場合に他のユーザから仮想貯電量を適宜に借りるとよい。
【0144】
例えば、ユーザA1は使用可能な蓄電装置に電力を貯めており、多くの仮想貯電量を有している場合、ユーザA1が仮想貯電量の貸し手となり、他のユーザA2が仮想貯電量の借り手となり得る。例えば、他のユーザA2が電力を必要とするときに、他のユーザA2は、ユーザA1から仮想貯電量を借りるとよい。情報処理装置140は、ユーザA1とユーザA2との間の仮想貯電量の貸し借りを記録するとともに、第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量を減算し、ユーザA2の仮想貯電量を加算する。この結果、ユーザA2は、ユーザA1から借りた仮想貯電量を使ってスマートグリッド10から電力を受給できるようになる。その後、ユーザA2が自家の発電装置で発電し、仮想貯電量を貯めた場合に、ユーザA2はユーザA1に仮想貯電量を返すとよい。この際、情報処理装置140は、ユーザA1とユーザA2との間の仮想貯電量の貸し借りの記録を更新するとともに、第1記憶部141に記憶されたユーザA2の仮想貯電量を減算し、ユーザA1の仮想貯電量を加算する。これにより、ユーザA2は、電力が不足する際に、都度、買電することなく、電力を調達できる。この場合、ユーザは、電力で借りて電力で返せる。このため、電力を調達するための金銭的なコストが低く抑えられる。
【0145】
なお、仮想貯電量を貸し借りする際には、ユーザA1が使用可能な蓄電装置からユーザA2が使用可能な蓄電装置に電力が実際に移動している必要はない。第1記憶部141に記憶されたユーザA1の仮想貯電量を減らし、ユーザA2の仮想貯電量を増やすだけでよい。そして、ユーザA2がスマートグリッド10から受給した電力量に応じて、ユーザA2の仮想貯電量が減る。その際、ユーザA1が使用可能な蓄電装置からスマートグリッド10に電力を出力することで、ユーザA1の仮想貯電量と、ユーザA1が使用可能な蓄電装置に貯えられた電力量とのつじつまを合わせるとよい。このように、情報処理装置140は、各ユーザの仮想貯電量を記録することができる。そして、各ユーザの仮想貯電量を適宜に増減させることで、ユーザが貯えた電力を他のユーザに提供したり、貸したり、返したりできる。ユーザは、都度、買電することなく、必要な電力をスマートグリッド10から受給できる。
【0146】
この場合、大規模な蓄電装置を備えた蓄電事業者A5は、スマートグリッド10の複数のユーザ間に仮想貯電量を貸す貸し手として機能しうる。情報処理装置140は、仮想貯電量の貸し借りに対して利息が設定されるように構成されていてもよい。仮想貯電量の貸し借りに対して利息が設定されることによって、貸し手側は、仮想貯電量を貸すことによるメリットを享受できる。
【0147】
仮想貯電量の貸し借りに対して10%の利息が設定されている場合、例えば、ユーザA1が1kWhに仮想貯電量をユーザA2に貸した場合、ユーザA2がユーザA1に仮想貯電量を返す場合に、1.1kWhとすることなど、利息を上乗せして返すように設定されているとよい。利息は、ユーザ間で適当に設定できるように構成されていてもよい。
【0148】
図10を基に、仮想貯電量の貸し借りのイメージを説明する。例えば、
図10では、スマートグリッド10のユーザA3(工場A3)と、ユーザA1(住宅A1)やユーザA4(発電事業者A4)との間で、仮想貯電量の貸し借りが生じる。ユーザA3は、工場事業者であり、工場が稼働する日は、電力が不足する傾向があり、仮想貯電量がマイナスになりがちである。しかし、工場が稼働していない日は、工場に取り付けられた太陽光パネル53で発電され、余剰電力が生じうる。これに対して、ユーザA1は、平日の日中は工場に勤務しており、住宅の消費電力が少ない。このため、余剰電力が生じる傾向がある。また、休日は在宅しており、住宅の消費電力が多く、電力が不足する傾向がある。また、ユーザA4は、太陽光発電事業者であり、電力が余る傾向がある。
【0149】
この場合、ユーザA3は、工場が稼働する日の日中は、ユーザA1やユーザA4から仮想貯電量を借りて、スマートグリッド10から電力の融通を受けるとよい。ユーザA1やユーザA4は、仮想貯電量をユーザA3に貸すことで、仮想貯電量が減る。そして、ユーザA3が借りた仮想貯電量によって、スマートグリッド10から電力の融通を受けることができる。これにより、ユーザA3は、売電処理によらず、電力を調達できる。そして、工場が稼働していない日は、ユーザA3は、余剰電力をスマートグリッド10に出力することによって仮想貯電量を得て、ユーザA1やユーザA4に仮想貯電量を返すとよい。この際、仮想貯電量に利息が設定されている場合には、利息を上乗せして返すとよい。このように、ユーザA3は、後日得られる余剰電力を利用して、電力が不足するときに、他のユーザから仮想貯電量を借りることができる。これにより、自家で発電される再生エネルギーを実質的に消費できる。
【0150】
ユーザの仮想貯電量の情報は、ブロックチェーンに記録されるように構成されてもよい。この場合、情報処理装置140は、例えば、ユーザの仮想貯電量の情報として、仮想貯電量の加算や減算の情報や、ユーザ間の仮想貯電量の貸し借りの情報が、ブロックチェーンに記録されるように構成されているとよい。これにより、情報処理装置140における一連の取引記録がブロックチェーンによって検証可能な情報として記録される。ブロックチェーンに記録される場合、情報処理装置140のユーザの仮想貯電量の加算や減算の情報やユーザ間の仮想貯電量の貸し借りの情報が一つのトランザクションとして纏められて、ブロックチェーンに記録されるとよい。ユーザの仮想貯電量の情報が、ブロックチェーンに記録されることによって、仮想貯電量の加算や減算の情報や、ユーザ間の仮想貯電量の貸し借りの情報の改竄を防ぎ、信頼性の高いシステムを構築できる。
【0151】
このように、ここで提案される情報処理装置140によれば、自家発電で得られた余剰電力がスマートグリッド10に出力された後でも、使いたいときに使えるようになる。天気の予測精度は年々向上しており、例えば、24時間以内の日照量や発電量も概ね予測されうる。このため、太陽光パネルを利用した発電では、将来の余剰電力の発生が精度良く予測できる。そして、情報処理装置140で、上述した仮想貯電量が0より小さくなる電力量に応じてマイナスの量として記録されることによって、将来発生するであろう余剰電力が、先に使いたいときに使えるような仕組みを構築できる。この仕組みによって、電力取引において、買電や売電などの金銭取引を介在させる処理が減り、電力の利便性や汎用性が高まる。また、仮想貯電量は、上述した仮想蓄電容量と同様に、例えば、他のユーザに貸したり、売ったりでき、交換性を有する資産としての価値を持ちうる。仮想貯電量を管理する情報処理装置140によって、これを管理する管理者、例えば、リソースアグリゲータ13は、元締めのような位置づけで、余剰電力を有するユーザから電力を預かったり、ユーザの電力不足に対して電力を融通したり、ユーザ間で電力を貸し借りしたりできるサービスを提供できる。
【0152】
また、ここで開示される処理は、既存の売電処理や買電処理と組み合わせてもよい。この場合、ユーザは、余剰電力を既存の売電処理で処理するか、仮想貯電量として処理するかを適宜に選択できるように構成してもよい。例えば、電力会社の発電量が不足など、限定的な条件下では、売電価格が高く設定される場合もあり得る。このような場合、ユーザは、余剰電力を積極的に売電することも選択できる。このように、上記の処理は、余剰電力の扱いについて、ユーザに選択肢を増やすことができる。仮想貯電量は、適宜に売ることができる。例えば、売電価格が高い場合や、仮想貯電量を金銭に換えたいときは、仮想貯電量を基に売電してもよい。この場合、売電に際しては、仮想貯電量のまま、仮想貯電量を、スマートグリッド10から電力を受給できる権利として捉えて、売電する電力量に相当する仮想貯電量を売電処理されたものとして、金銭を得る代わりに、消失させてもよい。また、電力会社からの買電価格が安い場合で、かつ、今後の電力消費が増えることが見込まれる場合などには、積極的に買電し、電力を自家の蓄電装置などに貯え、仮想貯電量を増やすこともできる。このように、ユーザは、任意のタイミングで、電力を売買することによって、仮想貯電量を調整してもよい。
【0153】
以上、ここで開示される発明について、種々説明した。特に言及されない限りにおいて、ここで挙げられた実施形態などは本発明を限定しない。また、ここで開示される発明の実施形態は、種々変更でき、特段の問題が生じない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適宜に組み合わされうる。
【符号の説明】
【0154】
10 スマートグリッド
11 アグリゲーションコーディネータ
13 リソースアグリゲータ
20 送電網
22 大規模発電設備
24 送電線
26 発電事業者
28 住宅
28a エネルギー管理システム(HEMS)
30 工場事業者
30a エネルギー管理システム(FEMS)
32 ビル事業者
32a エネルギー管理システム(BEMS)
35 マイクログリッド
35a エネルギー監理システム(CEMS)
40 通信網
51~55 発電装置
61~65 蓄電装置
71~73 電動車両
100,140 情報処理装置
141 第1記憶部
142 第2記憶部
A0 電力事業者
A1,A2 住宅
A3 工場
A4 発電事業者
A5 蓄電事業者
A6 充電スポット